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百物語 第二回

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Part90
302 ::2006/08/12(土) 05:51:49 ID:l83YaXBP0
「着信ナシ」
これは私の実体験です。
6年前、当時16歳だった私は、友人の誘いを受け、地元ではちょっと有名な心霊スポットである「廃ダム」へ胆試しに行った。
胆試しと言っても、集まった5人全員で、違反行為ですが原付3台に乗り込み、ダム周囲に渡っている周回コースを一周するだけ。
霊感がある者も、ましてや心霊現象を体験したものも、そしてそれを信じる人間もいない、いわゆるおふざけ感覚だった。
最初の内は、「この周回コースのどこかに変な扉があって、開けるともう戻って来られないらしいぜ」
等と、他愛もない話をしていた面々だが、次第に飽きが来たのか、無言の中でエンジン音だけが響く。
『ビィーーーーーーーーーーーーーーーッ!』
突然、私のバイクのクラクションが鳴り出す。後部シートに乗ってる奴の悪戯だ。
その手を払いのけ、轟音が止むと周りからは見え透いた悪戯に失笑が上がり出す。
すると次の瞬間、後ろを走っていた友人が突然の転倒。驚いた私達は、その場に停車し、友人の元へ駆け寄る。
大してスピードも出さずに走っていた所為か、幸い運転者にも同乗者にも怪我はなかった。
まったく怪談にもならない笑い話だ。
しばらくの沈黙の後、物凄い音で私の携帯電話が鳴り出した。
静けさの中の電子音にさすがに驚いたのか、皆笑いながらも急ぎ気味にバイクの元へ戻り、周回コースを走り抜けた。
ダムを離れ、ふもとの公園に到着し、談笑している時、途中で携帯が鳴ったのを思い出し、着信履歴を見てみる。
すると何故か20件の履歴が残る機種なのだが、19件しか残っておらず、転倒事故のときの着信履歴は残っていなかった。
あの電話は、一体何者からの電話だったのでしょうか。そしてあの時電話に出ていたら、何が起きていたのでしょう。
大して何も起こらなかった中、ちょっとした怪談話を作ってくれた私の携帯電話。
私は、少し誇らしげに、転倒した友人とその同乗者、終始ニヤニヤと笑っていたもう一組の友人達を見渡した。
その時に気付いてしまったんです。
「俺の後ろに乗ってたの、ダレ?」
【完】

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