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【参加自由】1レス勝負【2章】
[8] -25 -50 

1: 脳田林 ◆N6kHDvcQjc:2014/10/16(木) 20:04:50 ID:7lTINYd4eE
日程
月…題目候補をあげてもらう
火…題目投票と題目決定
水、木(20時まで)…参加募集、参加発表
金、土(20時まで)…レス投下
土、日…投票
ルール(暫定)
月…題目候補の日
火…題目決定投票(20時締切1人1票です)
水、木…木曜の20時までに参加表明を、時間過ぎたら参加不可。参加表明は匿名でも作者名でも作品名でも可
木の20時過ぎに参加者発表します
金、土…出来た人から順次レス投下。名前のとこに参加レス番号が有ると嬉しい。土曜の20時までに投下する。過ぎたら失格。
土、日…投票はレス番のみ、それ以外は無効票になります。
月曜日に結果発表。
>>2に続きます


308: 名無しさん@読者の声:2015/2/6(金) 23:34:32 ID:0zJ27ZSICE
 死に方は凍死と決めていた。昔テレビで、もっとも痛みが少ないと云っていたから。
 私は震えながら、とぼとぼ歩く。
 街はいつも通りに灰色で、なんの面白味もなかった。

 この世に生まれ落ちた瞬間から、私は色を失っていた。極彩色の名画も絶景も、この両目を通りぬければガラクタに変わる。すべてが白黒の濃淡で塗りつぶされる世界なんて、もううんざりだった。
 16歳になった朝、こっそり家を抜け出した。
(死ぬには絶好の日だ)
 覚悟はできていた。あとは行動に移すだけだ。

公園の中央にあるドーム型の遊具を、死に場所として選んだ。中の空洞でうずくまっていれば誰にも気づかれることなく逝けるだろう。
 一歩一歩近づいていく。北風がごうっと髪をかき混ぜた。
「おはよう」
 明るい声が体を硬直させた。ドームにぽっかりと空いた穴から、十歳くらいの少女の顔が覗いている。
 先客がいるとは予想だにしていなかった私は、人形のように固まったままだった。
 女の子はしばらくこちらを眺めていたが、不思議そうな表情で再度口を開いた。
「あなた、とっても暑がりなのね」
「え?」
「私なら冬に半袖は着ないわ。凍えちゃうもの」
 それが目的なの、とは言えなかった。
「中に入らない? 外よりは暖かいわよ」

 打ち明け話をする気になったのは、少女があまりにも大人びていたからだ。彼女なら、真剣に聞いてくれるという確信があった。
「他の人にとってはくだらない理由だと思う。色が分からない位で死を選ぶなんて。でも、私には耐えられなかった」
「……もっとくだらない理由で、人はいくらでも死ぬわ。それに比べたら、あなたのはかなり「真っ当」ね」
 少女はしばらく黙って下を向いていたが、何かを思いついたのだろう、急にぱっと表情が輝いた。
「ね、私があなたに色を解説するっていうのはどう?」
「どういうこと?」
「色を通訳するの。たとえば、あれ」
 丸い穴越しに広がる空を指した。
「冬の空は、とても冷たくて高潔な色。さわれば指先が凍ってしまうのは分かってるのに、それでもふれずにはいられない……凶悪なほど美しい冬の色よ」
「それじゃ、あのひとつだけ浮いてる雲は?」
「孤独で気高い色。自分を分かってくれる奴なんて誰もいない。だけど一人でも生き抜いてみせる。……そんな、寂しさの中に強さを秘めた色」
 私はいつのまにか、彼女のつむぐ色彩に魅了されていた。 
「あの痩せた枯れ木は?」
「静かな生命の色。葉っぱなんて一枚もないけど、あの樹皮の内側には、生きようとする力が無限につまってるの。この世でもっとも暖かい色よ。そして……」
 意志を秘めた目が、私を正面から見据えた。
「あなたは、あの木と同じ色をしてる。たくさん傷ついて死を決意するほど絶望しているのに、それでも心の隅では生きたいと願ってる、とても強い色」 
「……そんなことない! 私は、」
「ほら」
 冷たい指が目元を拭う。そのとき初めて、自分が泣いていることに気づいた。
「これから先、いっぱい悲しいことや苦しいことがあるでしょう。だけどそれと同じくらい、楽しいこともあるかもしれない」
「……本当?」
「さあ」
「えっ」
「答えっていうのは、自分で見つけるから価値があるのよ」
 片目をつぶり、少女はいたずらっぽく微笑んだ。

 帰り道は前と同じ、無機質な風景。でも私の眼は、そこにある新しい何かを映していた。
(ああ、寒いな)
 歩みは次第に早くなり、ついに私は走り出す。
 灰色の街並を、たった独りで。
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