ここは主に小説を書くスレです!
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不備がありましたらすみません。楽しく書けることを祈ります。
75: ドロテア ◆yyFykaECOY:2014/9/18(木) 23:24:20 ID:tTo33X2Amg
こんなこと繰り返して、一体何になるのかなあ。
彼女はそう呟いて、小さく息を吐いた。
膝上三センチのスカートが、夕方の冷めた風に揺れる。
空気には少しだけ排ガスの匂い。
大通りをバス停に向かって歩く俺らの影は、一定の距離を置いたまま伸びていく。
「知るかよ。
そういうことは頭でっかちの先公どもに言え」
「やだよ、成績下げられんじゃん」
あたしこれでも大学推薦希望なんだから、と彼女は続ける。
俺もはあ、と小さくため息を吐いた。
俺らの毎日は、学校に行って、授業を受けて、家に帰って、課題をやる、ただそれだけ。
毎日授業と試験と再試験と、講習と課題ばっか繰り返している。
勉強ばっかで、いくら勉強しても足りなくて、それ以外に必要とされることなんかなくて。
楽しいと思えることが消えて、早一年。
高校二年生となった俺達の日常はただ多忙を更に極めただけで、また去年と同じかそれ以上に辛い一年が過ぎることだろうと俺は予感する。
そして、予感は何れ事実に変わるだろう。
76: ドロテア ◆yyFykaECOY:2014/9/18(木) 23:25:14 ID:a5CI6Rgw5w
「あーあ。
あたし何で生きてんのか分かんなくなりそう」
重そうに鞄を背負う小さな背が、そう強い嫌悪感を持って毒付いた。
伸びる影は細く、脆い。
どうせその鞄の中にだって、今日出た課題が詰まっているのだ。
家に帰っても課題と予習復習に追われるのは、この学校が詰め込みゃいいという短絡的な考えの進学校だからだろう。
しかもそれなのにこの学校の進学率が高いもんだから、俺らの毎日に終わりはない。
先公の野望も、尽きはしない。
「絶対さあ、先生って進学率上がればそれでいいって感じだよね。
生徒の負担とか考えてくれないし」
「ならストライキでもすればいいだろ」
身も蓋もない返事に、彼女の横目がじろりと俺を睨む。
「…カズってさー頭いいけど成績大丈夫なの?
先生の前でも普通にそういうこと言ってるでしょ」
「構やしねーよ。
どうせ俺大学行かねーし」
刹那、彼女の靴音が止まったと同時、目と口を開いた間抜け顔が振り返る。
驚きとしか表現のしようがない、そんな表情。
どうせ俺みたいな自由人以外に、この学校に大学を志望しない人間なんていないのだ、きっと。
そもそも大学を志望しないというのが、彼女らには先ず存在しない選択肢なのであろう。
案の定彼女は信じられない!と喚き出した。
77: ドロテア ◆yyFykaECOY:2014/9/18(木) 23:26:02 ID:tdDkSZWvHM
「ウッソ!ウソでしょ!?
模試でもあんな点数取ってた癖に、大学行かないの?
もったいないよ、あんな頭いいのに!」
「お前、馬鹿?」
「ちょっ、何よそれ」
「大学に入れる人間は入らなきゃいけないとか、そういう馬鹿な前提作ってんじゃねーよ。
大学ってのはもっと専門的な勉強したいヤツが行くんだろ」
「そりゃ…そうだけど」
小さくうつ向き頷いた彼女を尻目に、するりと彼女の横を通り抜ける。
一瞬重なった影が、また遠く。
俺と彼女のポジションが入れ替わり、俺は後ろを気にせずに先をずかずかと歩いた。
「…そっか。
…そうなんだ」
ゆっくりと彼女の靴音が俺を追いかける。
独り言のような呟きが、自動車音にかすれて耳を抜けた。
成績はいいけど、頭の悪い女だ。
勉強ばかりやって生きてきて、勉強とそれ以外の全てが酷くアンバランスな…現代高校生の悲しい性(さが)。
でも今はそれが当たり前で、きっとイレギュラーなのは俺の方で。
教科書の紙の匂いが排ガスに混じったような気がして、俺は不愉快になってぶんぶんと頭を振った。
俺の嫌いなものばかりが、茶渋のように頭から離れないでいる。
78: ドロテア ◆yyFykaECOY:2014/9/18(木) 23:26:44 ID:cz7cfSsS7w
「…お前、なんで大学行くのよ」
「………別に、給料の高い仕事に就くため。
後、親に行けって言われたから」
「働きたいって願望ある?」
「……………そんなの、ないよ」
短い沈黙の後に、そう―――俺の予想通りの言葉が、返る。
背後で彼女がどんな表情をしているのか俺には分からなかったが、酷くばつの悪そうな顔をしているのだろうと思った。
けれど、でもさ、と言葉は続く。
「でもさ、どうせ働かなきゃいけないなら、お金いっぱい欲しいでしょ。
それだけだよ。
働かないで生きていけるなら、それが一番いいけどさ」
まるで何かの弁解のように彼女は言うけれど、それも俺の予想通りの言葉でしかなくて。
「ねえ、カズもそう思うでしょ?」
でも、きっと、それが普通の感覚。
正しいとか正しくないとかそんな次元にすら届かない、馴染み過ぎた当たり前のもの。
この世に本当にただ就きたい職業があるヤツなんて、どのくらいいるのか俺には分からない。
少なくとも、そんなヤツを俺は知らない。
79: ドロテア ◆yyFykaECOY:2014/9/18(木) 23:27:41 ID:89y5NMfb82
夕日がゆっくりと落ちていく中で、アスファルトが無駄にきらきらと光って見えた。
その上を自動車が何台も走る、走っては信号に足止めを喰らう、苛立ちのままに灰色の煙を吐き出す。
眼前にはコンクリートビルの影が、大きく俺らの影を呑み込んで倒れていた。
ふと視線を向けるとそこの看板には『○○塾』なんて書いてあって、また教科書の紙の匂いを思い出す。
中には受験勉強に明け暮れているらしい、中学生の背が見えた。
こいつらには、本当に行きたい高校とかあるんだろうか。
高校に入らなきゃいけないから、ただ机に向かっているんだろうか。
何のためにそうしているんだ。
「…嗚呼」
馬鹿みたいだ。
本当に、馬鹿みたいだ。
俺らだって純粋に、幼稚園の頃は叶えたい夢を言えたんだ。
今の俺らは夢見ることすらも出来なくなったけれど、仕事はただお金のためになり下がったけれど、あの頃は。
将来の夢に宇宙飛行士って、何の疑問もなく書けたのに。
それを恥ずかしげもなく人に話すことが出来たのに。
俺らは、いつからこうなったのだろう。
俺らは、何を失ったのだろう。
それすらも分からない中で、俺らは一体何を学んでいるのだろう。
「…なんか、お前の言う通りな気がしてきた」
「何が?」
「こんなこと繰り返して何になるのかなってさっき言ったじゃん」
「…いきなりそんなに話戻されても分かんないよ」
80: ドロテア ◆yyFykaECOY:2014/9/18(木) 23:28:48 ID:/MjnvKgbOA
彼女は息を吐きながら、苦笑する。
いつの間にか隣を歩く彼女の、固いローファーの音が耳に響く。
いつも通りの夕焼けが今日はやけに眩しくて、目が熱く痛むのを感じた。
きっと、俺は今、酷く泣きたいのだ。
そんなことには気付かずに、彼女は言う。
「…でも、繰り返して行けば、何か見えてくるのかな」
「…さあな」
俺は、曖昧に言う。
見えてきたバス停には既に何人もの人がバスを待っていて、夕焼けの中で揺らいでいた。
聞こえるのは、車道の喧騒と、靴音だけ。
「…でも、繰り返されるって保証があるのは、そこまで悪くはないと思うよ」
「うん?」
「どんなにつまんない毎日でも、辛い毎日でも、繰り返されるなら明日は来るでしょ。
明日が来るなら、いいじゃない」
彼女は、そう言って薄く笑った。
表情筋など使わない、冷めた瞳で世界を見据えた時のような、そんな笑い方。
俺はそれを横目で見ながら、ただ町並みに呑まれていく夕日を前に、歩く。
「…そんなの、慰めにもなんねーよ」
「うん、そうだね。
でも、慰めて欲しくもないんでしょ?」
「…まあ、そりゃな」
涙が出ても、悲しい訳じゃない。
日常を嘆いても、慰めて欲しい訳じゃない。
81: ドロテア ◆yyFykaECOY:2014/9/18(木) 23:29:38 ID:NKK3Q3K4qM
夢がなくても、大人にはなる、働かなくてはいけなくなる、お金は必要になる。
そうして、また明日がくる。
明日もまた、学校に行く。
「…課題、明日写させて」
「えっ、なんで?
カズの方が頭いいのに!」
何の気なしにそう言うと、隣から抗議の声が上がった。
あたしが写させて欲しいくらいだよっ、とキーキー喚く馬鹿に、俺は嫌味なくらいの笑顔を向けて。
「じゃ、よろしく頼むわ」
ホラ、結局仕方ないなぁと嫌な顔をしながらも、きっとコイツは写させてくれるから。
明日もきっと、今日と変わらない明日に、なるから。
理不尽な感情を抱え込んでも、矛盾だらけの毎日に退屈しても、例え今日一日が無意味でも。
アンバランスな自分を、パッチワークで繕って。
俺らは、今日を生きていく。
―――アンバランス、了。
82: 爆発した:2014/12/10(水) 23:04:56 ID:aQBQVC/2pA
スラム街は今日も薄暗い。
屋台がぎゅうぎゅうと寿司詰になって並んだ通りに、そのアッシュブロンドの男はいた。仲間と適当な話に興じながら、買ったシーフードヌードルをずるずるとやっている。遅い昼飯だった。仲間はバイト先の同僚で、彼と同じように大体皆頭も素行も悪そうな身形をしている。そう言う奴らが集まると、大抵話の内容は女か酒かギャンブルの話だった。一人が酷いヘビースモーカーなので、彼は時折渋い顔をしてその煙を払いのけつつ、ぼんやりと通りを見やる。
スラム街は何とも薄汚い。街も人も建物すら、粉塵なのかうっすらと灰色がかって見えていた。そのくせ、今日は太陽すら遠い曇りの日で、しかも冬の近い寒い日であったから、その陰鬱さは余計に増していた。
ぼんやりとする彼に仲間が話を振った。適当に応じて、またヌードルをずるずるとし始めた彼は、不意に何かの予感を感じてどんぶりから顔をあげた。その時、最初の一音だけを彼は確かに聞いたと思う。いや、むしろ最初の一音だけしか、聞くことができなかった。
一瞬で辺りが無音に包まれた。呆然と彼は目の前のヌードルが、どんぶりごとゆっくりと浮遊し、ひっくり返っていくのを見つめていたと思った。しかしながら本当は自分自身も道に大きく投げ出されていたのである。それに気が付いたのは、実際にアスファルトの上に投げ出されてからだった。細かな瓦礫やら何やらが振ってくるのを腕で防ぎ、唖然として辺りを見回した。
通り一杯に並んでいた屋台はそこからごっそりと消え失せていた。妙な耳鳴りがして、耳を抑えればそこに血の感触を知る。ぬめりけを指先で拭い、全身頭から真っ白に埃を被った彼はくしゃみをした。
初めに思ったのはヌードルのことだった。訳の分からない状況を、だんだんと把握していくごとに妙な苛立ちを感じた。辺りでちらほら、人の姿が見えるようになる。呆然と通りを見つめている人や、必死で何かを探している人もいた。彼はため息をついて俯いた。履いていたはずのビーチサンダルが一つなくなっていて、舌打ちをし、それをも放り捨てた。
「やってらんねぇな」
一人呟き、アッシュブロンドの髪を掻き上げる。仲間を探す気にはとてもならなかった。スラム街は変わらずこんな調子なのである。昨日隣にいた神さまが、今日はいないなんてことくらい平気である。
ひどい有様の通りを一人歩きはじめる。血の流れる右腕を庇いながら両手をジーンズのポケットに詰め込む。爆心地から少しずつ遠ざかり、彼は情報を集めるために都市部に向かった。
83: 横入りすみません:2014/12/23(火) 01:10:05 ID:zSrTtecpdQ
今日は楽しいことが起こったの!部屋の中に同じ歳ぐらいの子がいたんだ。初めて見る顔だった。
「こんにちは。里沙」って笑って言ったの!彼女と話すのは楽しい。真っ白な部屋ばかり見てたからつまんなかったんだ。
今日は楽しいことが起こったの!部屋の中に同じ歳ぐらいの子がいたんだ。初めて見る顔だった。
「こんにちは。里沙」って笑って言ったの!彼女と話すのは楽しい。
今日はびっくりしたことが起こったの!部屋の窓際に同じ歳ぐらいの子がいたんだ。初めて見る顔だった。「こんにちは。里沙」って笑って言ったのよ!嬉しい!
今日はびっくりしたんだ!突然、同じ歳ぐらいの子が目の前の椅子に座っていたの!里沙を見て「こんにちは。里沙」って笑って言った!笑い顔なんて久しぶり!知らない顔だった。
今日は『ママ』がきた。なんで泣いてるの?
知らない子が里沙を見て「こんにちは。里沙」って笑ってた。『』みたいに泣いた顔じゃなかった。『』って誰だっけ?
「こんにちは。里沙」って誰かが笑ってた。
「こんにちは。里沙」って何かが言った。
「こんにちは。里沙」って…
「おやすみなさい。里沙」
うん。おやすみなさい×××
また××しようね。だから…ないで。
私の親友が入院した。入院する前に聞いた症状は「忘れる」ということ。入院して数日は笑い話だった。里沙も笑って「まだ二十代なのにねー」って言っていた。段々笑えなくなってきた。病室を自分の部屋だと思い始めた所で私は限界だった。まだ私を覚えていた里沙は、笑って欲しいと願いを言ってきた。きっと彼女の最後の願い。それからは毎日遊びに行った日に日に里沙は悪くなった。もう私を誰とは認識出来なくなっていたようだった。
でも私は笑って「こんにちは。里沙」と言い続けた。彼女が永遠に寝続けるまで。
「おやすみなさい。里沙」
頑張ったね。里沙
「うん。おやすみなさい。香織」
私は泣いた。泣かないでと彼女は言って息を引き取った。
84: 1レスのとこのやつ:2015/1/3(土) 10:12:46 ID:BJjW.wFx9Y
だれも書かなかったみたいだしここでやってみる。
題目 布団
ん、うぅ
目が覚めて、布団の中で一つ大きく伸びをする。
羽毛布団に包まれた体は暖かいが、はみ出ている顔は冷たい。時節柄を考えると、当然といえば当然だ。
昨日も寝る前に携帯をいじっていたが、そのいじる手すら冷たかったのだから。部屋の中だというのに。
部屋の中に張り詰める冷たい空気に押さえ込まれ、私は布団からでられない。
低気圧だものな、しかたない。
などと何のいいわけにもなっていないような言い訳を誰とも無く言い聞かせ、私はまた暖かい布団に潜り込む。
やはり、人間を一番だめにするのはパチンコでも酒でも、煙草でもなく、布団だと思う。
85: 家庭内裁判1/4:2015/1/26(月) 22:42:16 ID:VVKVuKSt26
「なんてことだ……この世の終わりだ」ガーン
「……別にいいじゃない、誰にも迷惑かけてないもん」
「ゆ、許しません、お父さんは許しませんよ!
家庭内裁判の開廷だーっ!」
―
「これより家庭内裁判をはじめます。原告はパパ・裕太郎」
「うむ」
「被告人はお姉ちゃん・周(あまね)」
「……」ブスッ
「裁判長は僕、海斗がつとめますっ。
ではさっそく審理を−−」
「くぅーん」フリフリ
「フシャーッ」
「あ、ごめん。
検事ポチ、弁護士タマもいるよ」
「お前だけが頼りだポチ。一緒に周をやっつけるぞ」
「わんっ」
「ちょっと待って、ぜんぜん納得いかないんですけど。
なんでメイクくらいで裁判起こされなきゃなんないの?」
「お姉ちゃん、発言は許可を求めてからにして」
「……」
「はいはーい、裁判長!」ブンブン
「どうぞパパ」
「いいか周、問題は化粧をしたことではなく、年齢だ。
お前はまだ中学生だろう?」
「だから?」
「えっ」
86: 家庭内裁判2/4:2015/1/26(月) 22:43:54 ID:VVKVuKSt26
「中学生がお化粧しちゃ駄目っていう法律でもあるわけ?」
「それは……」
「わうんっ」ビシッ
「はい、検事ポチ」
「わん!」バン
「それは……生徒手帳?」
「わん、わうわうわう、わうんっ!」パララ…
「なるほど〜」
「え? な、なにが分かったんだ海斗」
「ちゃんと翻訳しなさいよ」
「ポチはこう言ってます。『華美な服装・装飾、化粧等は禁止と、校則にバッチリ書いてあるでござる』」
「ほれみろ、やっぱり禁止じゃないか!」
「う……」
「にゃああーご」タシッ
「はい、弁護人タマ」
「にゃーん……にゃーご」
「なるほど。タマいわく『校則が適用されんのは学校にいるときだけだろーが』」
「そっか。私がお化粧したのは夏休み、友達と遊びに行った時だもんね」
「うぅ……」
「判決を言い渡します。被告人は……無罪!」
「やったー!」
「無念……娘を思う父の気持ちが敗れるとは」クク…ッ
「くぅーん」シューン
ガチャッ
87: 家庭内裁判3/4:2015/1/26(月) 22:45:13 ID:VVKVuKSt26
「あきらめるのはまだ早いわよ、パパ」
「! あ、あなたは……ママ!」
「えっ、なんで? 今日は遅くまで仕事のはずじゃ……」
「なんだか胸騒ぎがしてね。速攻で終わらせてやったわ」
(ママかっこいい……はっ! いけない。敵に呑まれてはだめ)フルフル
「裁判長、審理の続行を求めます」
「許可します。……ところでママ、今日の晩ご飯何?」
「ありがとう、ハンバーグよ。
さて、周。そろそろ下手な演技はやめたらどう?」
「え? ど、どういう意味だママ」
「……」
「わかってるんでしょう? この裁判は、あなたの負けだってこと」
「な、なんのこと?」
「ふ、ふにゃあ! ……ふにゃん」
「『証拠もねえのに、適当なこと言いやがっ……言わないでください』だそうです」
「証拠なら、ポチが持ってるわ」
「わうん!?」
「生徒手帳5ページ3行目『長期休暇中は本校の生徒であるという自覚を持ち、校則を守って勉学に励むこと』……つまり、夏休み中も校則は適用されるのよ」ビシッ
「……っ」
「判決を言い渡します。被告人お姉ちゃんを有罪とする!」
「やった、やったよポチ。パパの愛が勝ったんだ!」ワーイ
「わうん!」
「……くっ」ドサッ
「顔をあげなさい、周」
「ほっといてよ!
メイクは私の、唯一の生きがいだったのに……」グスン
「いつも言ってるでしょう、最後まで諦めては駄目。
まだ道は残されているわ」
88: 家庭内裁判4/4:2015/1/26(月) 22:46:22 ID:VVKVuKSt26
「え……?」
「お、おいママ? 一体どっちの味方なんだ!」
「決まってるでしょう。私はいつだって家族の味方よ」
「(まだ抜け道があるの? でも、未成年である以上校則には逆らえない、……!)そうかっ」バッ
「わうんっ」ヒョイ
「16ページ7行目『保護者・または監督者がいる場所ではその指示に従うこと』!」
「それが……どうしたんだ?」キョトン
「つまり、校則より保護者の権限のほうが強いってことよ。
……お願いママ! ママと買い物に行くときだけは、お化粧させて!」ペコッ
「だだだだめに決まってるだろう、これ以上可愛くなったらどんな男が寄ってくるか――」
「いいわよ」
「ママ!?」
「ついでにナチュラルメイクも教えてあげる」
「やった」
「ママぁ!?」
「判決を言い渡します。今回の裁判は、引き分け!」
ぐううう……
「……おなか空いたぁ」
「じゃ、ご飯にしましょうか。手伝ってね周」
「はーい」
「こら、まだパパは納得してないんだからね! もう一度家庭内裁判を――」
「あなた、サラダお願い」
「はい」
終
89: 雪の子供たち1/4:2015/2/1(日) 21:28:37 ID:9oxLjZmJw6
血の気の引いた顔色で、悪い知らせだと分かった。
「そうですか。わざわざ有り難うございます」
受話器を戻したあと、おばあちゃんは両手で耳を塞いだ。哀しいときや恐ろしいことがあったときの癖だ。
「何かあったの?」
おばあちゃんはゆっくりとこちらを振り向いた。
「よくお聞きアヤ。
優菜ちゃんがね、「雪逃げ」になっちまったよ……」
「よーアヤ、今日も変な髪型だな」
教室で帽子を脱いでいると、大輝が話しかけてきた。
反射的に顔を上げる。でも言い返そうとしたセリフは、口まで届かずに喉の奥で消えてしまった。
―
「髪型なんて直せばいいじゃない。それに比べてあんたの顔は大変ね、直しようがないから」
「なんだと!」
「二人とも悪口なんてやめて。仲良くしよう?」
―
いつも優しくて、のんびり屋だった優菜。昨日までそばにいた親友は二度と戻ってこない。
心臓が凍りついた気分だった。
「お……おい、なんで何も言い返さねーんだよ」
90: 雪の子供たち2/4:2015/2/1(日) 21:29:27 ID:9oxLjZmJw6
大輝はこちらを戸惑ったように見つめていたが、先生の足音が聞こえると慌てて席に戻っていった。
「みんなおはよう。今日は残念なお知らせがある」
老眼鏡ごしの視線が、私の隣の空席に注がれた。
「はるかぜ小学校2年3組七原優菜が、「雪逃げ」になった」
息を呑む音が教室に満ちた。
「昨日から家に帰っていないそうだ。
みんなも優菜のことは早く忘れるように。それじゃ、授業を始めよう」
(誰が忘れるもんか)
私はぎゅっと目を閉じる。柔らかい笑顔が瞼の裏に浮かんできた。
吹雪は真っ白ではなく、少し灰色がかっている。
赤ちゃんのころから見慣れた景色。どこもかしこも雪に埋もれ、しんと静まりかえっていた。聞こえるのは私の、ぎゅ、ぎゅ、という足音だけだ。
この村ではときどき行方不明の子供が出る。家族にも誰にも告げず、ふらりといなくなってしまうのだ。彼らは「雪逃げ」と云い、不吉な存在とされた。
(着いた)
目の前には巨大な壁。村の周囲をぐるりと囲む土壁だ。
ゆっくりとしゃがみ、そのくぼんだ部分に手を当てた。
「なにしてんだ」
ぱっと振り向くと、少年がこちらを睨みつけている。 私はほっと息を吐き、立ち上がって大輝と向かい合った。
「なんでもいいじゃない。何か用?」
「下校は必ず二人一組だろ」
「……そうだね」
優菜がいた、昨日までは。
91: 雪の子供たち3/4:2015/2/1(日) 21:30:24 ID:9oxLjZmJw6
「今日は俺が一緒に帰ってやるから。ほら、早く行くぞ」
歩き始めた大輝の背中を、ただ見ていた。
「……おい」
「放っといて。私いま忙しいの」
「優菜のことか」
「……」
「お前も知ってるだろ。「雪逃げ」になったら二度と戻ってこない」
「私の、せいなの」
「え?」
「優菜がいなくなったのは、私の……せい」
彼女も私も空想や物語が好きで、いつも様々なことを話しながら帰り道を歩いた。
昨日、優菜がふと呟いた。「この村の外がどうなってるか、アヤちゃん知ってる?」と。
私の祖母は長老で、この村の誰よりも知識が豊富だった。優菜の疑問に答えるのは簡単だった、教えられていたから。
でも私は言葉に詰まった。真実はあまりにも救いがなかったからだ。
仕方なく、大事な部分を避けて話し始めた。
「この村の外にはね、素敵な世界が広がってるの。本や新聞はもちろん、エイガやゲキジョウがあるんだって」
「エイガ? ゲキジョウ?」
「物語を上演する場所。それから、たくさんの人が住んでるの」
92: 雪の子供たち4/4:2015/2/1(日) 21:31:09 ID:9oxLjZmJw6
「この村に住んでる人の、3倍くらい?」
「もっとだよ。百倍くらいかな。
それでね。この村と違って、お店は一年中、どんな時間でも開いてるの。好きなときに買い物ができて、たくさんの品物があるんだって」
「へえー、素敵!」
目を輝かせる優菜に合わせて作り笑いを浮かべながら、私は罪悪感に支配されていた。
「私は、大切なことを優菜に言わなかった」
大輝から視線を外し、再び壁に向き直る。
「確かにこの向こうには素晴らしい世界が広がってる。……だけど」
「アヤ、やめろ」
「私たちは、絶対にここから出られないんだって」
脆くなっていた部分からレンガを引き抜くと、黄金色の光が差し込んできた。右手に当たったそれは暖かく、心がほどけていくようで。
「アヤ!」
すごい力で引っ張られ、大輝と一緒に倒れた。
「馬鹿やろう、死にたいのか!」
彼の視線の先に、私の手があった。指は半分溶けていた。
「……帰ろう、アヤ」
彼の冷たい手のひらが私の手を包むと、指すような痛みとともに指が治っていく。
それを、絶望的な気分で眺めていた。
優菜は戻ってこない。だって、呼ばれてしまったから。
あの美しく輝く光には、
誰もあらがえない。
終
93: 直接恋愛作法:2015/2/2(月) 22:14:05 ID:VHu0RcpVjQ
「リモコンが嫌いなんです。
だってずるいと思いませんか? ボタン一つで遠隔操作なんて卑怯者のすることですよ。
なので私は、いつも直接電源を押すことにしてます。それが使っている側の礼儀だと思うんですよね」
「君のリモコン嫌いはよく分かった。しかし僕が説明を求めたのはだね。
なにゆえ今、君が僕の上にのしかかっているか、だったのだが」
「教授が疑問に思われるのも無理はありません、なにせ、話はまだ途中ですから」
「それは失礼した。拝聴しよう」
「私はリモコンに限らず、回りくどいやり方が性に合わないんです。ネット通販なんて意味が分からないし、遠距離恋愛にいたっては寒気がします。
どんなことにも体当たりで、ダイレクトに挑む。それが信条なんです」
「うっ……話をさえぎってすまないが、少しずれてもらえないか。君の膝が腹部を圧迫している」
「申し訳ありません……これでいかがですか?」
「だいぶ楽になった。続けてくれたまえ」
「はい。
昨日私は、教授が遠方に出張なさるという噂を耳にしました。海外の有名な大学に招かれ、十年は戻られないとか。
その瞬間、心に決めました。一刻も早く教授に会おう、と」
「それで深夜のマンションに忍び込み、ノンレムの深海を漂っていた僕を浮上させたというわけか。
ちなみにどうやって部屋に入ったのかね? 玄関の鍵は閉めていたはずだが」
「ベランダは空いていましたよ」
「地上20メートルの外壁をよじ登ったのか、驚異的な体力だ。
誰かに見られなかったかね?」
「おそらく。ただ、壁に張り付いて呼吸を整えているとき、後ろの方で悲鳴が聞こえたような」
「向かいのアパートに住む天体青年だろうな。星ではなく、闇夜の蜘蛛女を観測してしまったわけか。
最後の質問だ。こうまでして私に会いたかった理由は?」
「どうしても、直接言いたいことがあったんです」
「拝聴しよう」
「さよなら、教授」
「ああ」
「……」
「……」
「……それだけを言いに来たのかね?」
「はい。
夜分に大変失礼いたしました。では」
「ああ待ちたまえ、帰りは玄関からにしなさい。純朴な青年に二度も恐怖を植え付けるのは気の毒だ」
「分かりました」
「……待ちたまえ」
「なんでしょうか」
「君は一番重要なことを、最後まで言わないつもりかな?」
「……」
「体当たりが信条なんだろう?」
「……好きです、教授」
「ああ、僕もだ」
94: 脳田林 ◆N6kHDvcQjc:2015/2/8(日) 03:36:44 ID:47iqrsgDzM
失礼します。
>>84
落選お題による作品、お見せいただきました。
よもや、違うスレで1レスに関わる作品を見れるとは思いもしませんでした。
ありがとうございます。
もし、落選お題をお書きに成られるのでしたらカタリ様&ヘタッピ様のスレに投下されるのがオススメでございます。
長々と失礼いたしました。これからもどうぞ、1レス勝負をご贔屓に……
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