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【適当】小説書きスレ其の弐【万歳】
[8] -25 -50 

1: 名無しさん@読者の声:2014/6/12(木) 23:18:52 ID:YDoKF2wKiU
ここは主に小説を書くスレです!
自由に書いてよろし!

・他人に迷惑を書けるのは駄目です!
・喧嘩は喧嘩スレへGO
・必要なら次スレは>>980さんがお願いします。無理なら早急に代理を!

不備がありましたらすみません。楽しく書けることを祈ります。


31: 名無しさん@読者の声:2014/6/25(水) 23:29:35 ID:Mw1dBIcCw.


山田「いけっ!ヒッキー!!」

ヒッキー「カゲカゲ!」

矢部「ええと、なんやったかな…まあええわ!いけっ!なんとかガメ!」

アブクゼニ「ゼニゼニ」

山田「ヒッキー、たいあたり!」



山田「いけっ!ヒッキー!!」

ヒッキー「カゲカゲ!」

矢部「ええと、なんやったかな…まあええわ!いけっ!なんとかガメ!」

アブクゼニ「ゼニゼニ」

山田「ヒッキー、ひっかく!」

アブクゼニ「ゼニィ!?」

矢部「ああ!!山田お前何すんねん!」.

山田「だってバトルってそういうもんだってあのおじさん言ってたじゃないですか」

矢部「でもな…!いいことと悪いことがあるやろ!」

山田(名前覚えてなかったくせに…)


ポッポ は 逃げ出した ▽


32: 名無しさん@読者の声:2014/6/25(水) 23:30:48 ID:Mw1dBIcCw.




山田「上田さんー、おーいー、おい上田」

矢部「上田せんせぇー?」

上田「こ、ここは…」

山田「上田教授は気絶なさってたのでありますか」

上田「ば、馬鹿言うもんじゃない!」

矢部「ポッポとやらには逃げられましたし、先に進むとしましょ」

山田「そうだな、それに腹が減った」

矢部「せやな」

33: 名無しさん@読者の声:2014/6/25(水) 23:34:40 ID:Mw1dBIcCw.


上田「それにしても私はさっきまでの記憶が全くないんだが、何でだろうな。ハハッ」

山田(やっぱり気絶か)

矢部(気絶っちゅーやつやな)

山田「それにしてもこの森はなんでこんなに暗いんでしょうか」

上田「それはだな、木g」

矢部「うわ、なんや!めっちゃブンブン音するで!!」



というトリックとポケモンのやつ考えてたけど諦めました。
34: 名無しさん@読者の声:2014/6/25(水) 23:41:33 ID:Mw1dBIcCw.
(同じ文が二回も…そしてたいあたりではなくひっかくです……ミスが…すいません)
35: 名無しさん@読者の声:2014/7/4(金) 20:22:28 ID:XLIMSCAJag

 今でこそコミュ障野郎だけど、大学時代は結構顔が広くていろんな知り合いがいた。その中には同じ大学生もいれば、そうじゃない人もたくさんいて、なかなか豊富なネットワークだったと自分でも思う。

 その知り合いの一人に、ヒシギさんという男の人がいた。
 ヒシギさんは駅前に現れる露天商で、結構怪しい身なりのお兄さんだ。扱っている商品もかなり怪しい。その所為からか、そう言った体験を良くするらしく、あの人は俺にしょっちゅうオカルトな話をしてくれた。

 俺に天狗坂の婆さんの話をしてくれたのも、ヒシギさんだったと思う。

 天狗坂と言うのは駅の南口から市街地に向かう大きな坂だ。市街地に向かって上り坂になっている。なんで天狗坂と言うのだかはよく知らないが、近所の爺ちゃん婆ちゃんはその昔この山に天狗がいたからなんとか、と言っていた。まぁ、そんな坂である。

 駅通りから市街地に向かう坂なので、どうも坂の上に向かうにつれて人気もなくなるし、電灯の数も減っていく。昔から変質者が出るとかで、夜はちょっと危ない場所として有名だった。

 だからヒシギさんが天狗坂の名前を出した時点で、俺はまた変質者でも出たんだと早合点をした。それにヒシギさんはゆったりと笑って、違う違うと首を振る。

「天狗坂の婆さんは変質者でもなきゃボケた婆さんでもない。ま、一度見てみたらわかるべ。暇なときに行ってみな。夜だぞ」

「そう言われて誰が行くんすか」

俺が思わず言い返すと、確かにそうだとヒシギさんは笑った。俺はそう言う話を聞くのは好きだったが、実際に自分が関わるのは嫌なタイプの人間だ。心霊スポットだって行かない。

「万が一行くことがあったらさ、弟連れてけよ」

ヒシギさんは心霊スポットを勧める時、いつも俺にそう言った。理由は聞かなかったが、俺は素直にいつも頷く。

 ヒシギさん以外にもオカルトに強い人には結構会ったが、本物の人たちは大体俺に弟のことを言った。彼ら曰く、弟は強いらしい。


 そんな話を暇していた弟にうっかり話したのが悪かった。嬉々として見に行こうと弟に誘われて、結局弟に話した祖の晩、俺たちはアイスを咥えて自転車で天狗坂を目指した。

 蒸し暑い夜だった。長い坂の途中から俺たちは自転車を押して天狗坂の天辺を目指して歩いていた。

「あのさぁ、兄ちゃん。ヒシギさんどの辺で出るって言ってた?」

「あー、聞いてないわ。悪い」

「したら天辺までいかなきゃいけないんかぁ」


だるいなぁ、と言い出しっぺの弟が言うので、俺はちょっと奴を睨んだ。弟はへらへらと笑ってごまかす。

36: 名無しさん@読者の声:2014/7/4(金) 20:23:49 ID:XLIMSCAJag

「つーか、この辺本当……」

 暗いなぁ。そう言おうとした俺は黙りこくった。兄ちゃん? 弟が呼ぶ声が響く。俺は首を振って弟に反対車線の方を見ろ、と顎をしゃくった。アイスを咥えたままの弟が、間抜け面をそちらに向ける。

 反対車線にはガードレールに腰かける小さな人影が一つ。暗くてよく見えないが、背丈からして老人か子どもくらいだろう。

「あれかな」

近づいてきた弟がこっそりと耳打ちした。よく考えればヒシギさんから婆さんの詳細も聞いていないから、あれが天狗坂の婆さんなのか判断も出来ない。そもそも暗くて人間なのかもわからなかった。

「近く行ってみる?」

「やめろよ、あぶねぇだろ」

「でも、気になるじゃん」

まぁ、気にならないことはない。俺が結論を出すより先に、弟がケータイを取りだして明かりを婆さんの方に翳した。闇夜にケータイの白い光の中で老婆の姿が浮かび上がる。びくっと肩を震わせた俺の隣で、弟も顔をひきつらせて老婆を見ていた。

「おい、やめろよ」

俺の批難の声にハッとして、弟はケータイを急いで閉じた。俺の声に反応したのか、それともケータイの明かりに反応したのか。ともかく老婆の視線を感じた。俺たちを見ている。ただ文句も言わずにじっと。

「あ、すいません、落し物しちゃって。探してたんです」

適当な言い訳を弟が取り繕った。俺もそれに合わせて、すいませんと謝る。

「もう見つかったんで、僕ら行きますね」

俺がそう続けて弟を帰ろうと促した時、

「お名前は何かね」

老婆が突然訪ねた。

「えっ」

つい弟と二人反応し、顔を見合わせてしまう。当然こんな怪しい婆さんに名前なんて教えない。いやぁ、と適当に誤魔化す俺たちに婆さんはもう一度訪ねた。

「お名前は何かね」

「訊かれても普通言いませんけど」

困惑気味の俺が答えるも、婆さんはもう一度名前を尋ねるだけだった。弟が俺の服を引っ張る。耳を寄せると、早く行こうと言われた。

「なんかやべーよ、帰ろうや」

俺は頷いて自転車に跨った。今日ほど天狗坂が駅に向かって下りになっていることに感謝した日は無かったかもしれない。俺たちは全力で自転車を漕いで、明るい駅前に向かってほとんどノンブレーキで自転車を走らせる。

37: 名無しさん@読者の声:2014/7/4(金) 20:24:53 ID:XLIMSCAJag

 兄ちゃん、と弟が俺を呼んだのは5分も経たないうちだった。なんだと叫び返すと、弟は前方を見ている。電灯の下、ガードレールに腰かける老婆の姿が一つ。

「なんでいるんだよ!」

「俺が知る訳ないっしょ!」

俺たちはもはやパニックだった。逃げたはずなのにこれじゃ逃げられない。とにかくがむしゃらに自転車を漕ぐしかすることが無かった。俺はとにかく駅を目指そうと弟に言った。

 駅に行けば、ヒシギさんがいるかもしれない。ヒシギさんなら何とかしてくれるかもしれない。俺の頭は駅前に行くことで一杯で、それ以外考える余裕がなかった。

 だから弟が叫んだ時、俺は本気でビビったんだ。

「にいちゃん! 信号!」

「は? あっ」


目の前に迫る赤信号を、俺はすっかり忘れていたのだ。慌てて弟が後ろを気にしながらブレーキをかけ始める。俺もブレーキに手をかけ、その感触の無さに更にビビった。

「ブレーキ壊れてる! ブレーキかかんねぇ!」

足でどうにか止めようとしても、下り坂な上に全力で漕いできたのだ。どうにも歯が立たず、逆に履いていたサンダルが脱げて吹き飛んだ。兄ちゃん! と弟の叫ぶ声が聞こえる。

 俺はハッとして前を見据えた。夜だと言うのに妙に交通量が多い。いつもはこんなはずじゃないのに。ダメかもしれない。そう思った時、俺は目の前で笑う婆さんの姿を見た。

「うわああああああああああああ!」

弟の叫び声と共に何かが横からぶつかってきた。俺はそのはずみで横ののっぱらに吹き飛ばされる。俺も何かを叫んだ気がする。あちこち全身を擦り剥きながら起き上った俺は、その時初めてぶつかってきたのは弟だったのだと気が付いた。奴は自転車ごと、俺にタックルして来たらしい。

「兄ちゃん、大丈夫か!」

俺を下敷きにしたおかげか、弟は元気だった。あちこち痛いけれども大丈夫だと俺は頷く。涙目の弟がホッとしたようにその場に座り込んだ。俺もしばらく動けなかった。

「なまら痛いんだけど」

「生きてんだから文句言うなや!」

泣き声の弟の呟きに、俺もしおらしく頷く。本当に婆さんを見たときは死ぬかと思った。帰ろうと落ち着いた弟を促して、今度は自転車を押して俺たちは家に向かって歩いた。

38: 名無しさん@読者の声:2014/7/4(金) 20:25:33 ID:XLIMSCAJag

 それからすぐ後、駅前でヒシギさんに会った。俺のボロボロの姿を見てあの人は容赦なく爆笑し、なぜか大はしゃぎをする。大まかな出来事を話せばさらにヒシギさんは笑った。

「なんかもう、お前ら本当にわやだな」

「笑い事じゃないっすよ。何なんですか、あの婆さん」

腹を立てる俺を諌めて、ヒシギさんはさあなぁ、と肩を竦める。

「俺も知らんよ。まぁ、あんまり関わらないことに越したことはないってのは確かだな」

ヒシギさんの結論に俺はがっくりとした。ヒシギさんならばあの婆さんの正体を知っていると思ったのに。それを言うと、ヒシギさんはあまりいい顔をしない。俺は何でも知っている訳じゃないんだ、とヒシギさんは言った。

「でも、ま、弟を連れてってよかっただろ?」

俺は複雑な気持ちでその言葉に頷く。アイツがいなかった俺は間違いなく死んでいたわけだ。そしてふと、思い出した。

「いやそもそも、俺が連れてかれたんっすよ!」

俺はアイツに行こうなんて誘っちゃいない。それなのになんで俺が酷い目に合うんだ。俺の嘆きを聞いたヒシギさんはやっぱり爆笑した。

どっとはらい。
39: 名無しさん@読者の声:2014/7/8(火) 20:45:55 ID:McmnjR3JuM
理想と現実の狭間に惑う臆病で無垢な羊達よ
哀れ哀れガラス玉の眼には映らぬ真実の影模様

騙し騙すのが私の仕事 光浴びる庭園に咲き誇る
トゲも汚れも微かな匂いもまやかしに包む隠し事
私を映す瞳が獲物
甘い蜜を求め寄る羽音
等しく愛しく抱いてあげる
視界を彩る花びら捧げる

Show Time 華麗に舞うのです
着飾る花瓶に咲くドレス
煌びやかな舞台に客の列
無限に形変えるアクトレス

遊女 悪女 清純な子まで色付く華は形を変える
ステージの奥の幕が上がれば、もうすぐそこに彼女は見える
何者にも変えがたい衝撃
近付こうにも分厚い障壁
さもしい心を癒す声に耳を傾けてWheel Call Lady

ハリウッド ボリウッド ブロードウェイ パテック・フィリップ ブルガリ時計
Gorgeous Royal Life Style
Too Stimulus Give It Inspiration

浅ましい世界に自戒の惨禍
新しい役になりきるMiranda
『もう手遅れなんだ どうせ僕でなんか!』
夢と幻と自由な空虚
Search Around A Misay Real Lady
果てしなく遠い距離感は画面の外見る勇気も腐んだ

いただけないのは身曝せないなら、こんな所にいるべきじゃないわ
低い場所で上を見るラマダーン
簡単な気持ちじゃKnockdown
反骨の色身 ロックなメロディ
ミュージカルカーニバルを照らすわ
写し出して離れられぬ永久に絡み付く常にそばに

心地よいだけの言葉に踊らされる悲しいその価値
当たり前に測るものさし
頭はガキ 体は大人に
Ah イメージはとてもおとなしい
だけど本当の顔は大人び
俺の道記す脳のナビ
は今も君だけを指す愚かに

理想と現実の狭間に惑う臆病で無垢な羊達よ
哀れ哀れガラス玉の眼には映らぬ真実の影模様
40: 『初恋』 ◆iN.l3npE8U:2014/7/12(土) 21:33:18 ID:V8ce98FZSU
あたしが享と初めて会ったのは、中学2年の春だった。
始業式の日、新しい教室で、座席表を見て自分の席を探すと、そこに享が座っていた。
席を間違えたのかと思ってもう一度黒板に貼ってあった座席表を確認しに行った。だけどあたしは間違っていない。
あたしの名前のまわりは女の子ばかりで、あたしが座るはずの席にいる男の子は、どうやら隣の席の『神田享』という人らしかった。

「あの…神田くん?」
頬杖をついて目を閉じた彼に、あたしは恐る恐る声をかけた。
目が開いて、睨むように見上げられた。一瞬ひるむ。
「そこ、たぶんあたしの席だと思うんだけど。神田くん、隣じゃないかな」
二、三度ぱちぱちと目瞬きをして、「え、マジで?」と呟いた。
ごめんな、といって立ち上がると、照れたように笑った。
怖そうだなんて思ったのに、その笑った顔は何だか幼くて、あたしもふと緊張が緩んだ。
それがつまりは、始まりだった。

「享、とーおーる、2時間目終わったよ?」
社会の授業が終わって、あたしは隣の席で寝息を立てていた享を起こす。
5月の連休明けから、いつもこんな調子だった。
「あんた最近毎日寝てんじゃん。何やってんのよ」
「来月大会あるんだよ・・・先輩たちは最後だし、練習きつくなっててさ・・・」
そうか。よくは知らないけれど、うちの学校のバスケ部は市内でもかなり強いほうだと聞いたことがある。
「悪い、都、後でノート見せて・・・」
そう言いながら、享はまた机に沈み込んでいった。
その姿を横目に見ながら、頼りにされているようで嬉しくなる。
「享くん、頑張ってるらしいねー。兄ちゃんも褒めてたよー」
後ろの席から、利沙が言った。
利沙は1年の時から同じクラスで、部活も一緒だった。利沙のお兄さんはバスケ部の副キャプテンだ。
「兄ちゃんたちも来月の試合で負けりゃ引退だし、次期キャプテンとか考えてんだって。享くん、有力候補らしいよー」
へぇ、と気のなさそうな返事をしてみるけれど、内心なんだか嬉しかった。
べつに利沙に言われなくとも、享が頑張ってるのは知っていた。
バレー部の練習中にも、あたしは同じ体育館で練習する享の姿をつい追ってしまう。
バスケのことなんか知らないけど、享が上手いのかどうかもわからないけど、がんばっているのは見ていてわかる。
そんなことは口には出さないけれど。

テスト期間も享は毎朝自主練を続けていたらしい。部活はないはずなのに相変わらず授業は聞いていなかった。
あたしは享ががんばる姿を追い続けた。
享がバスケ部のキャプテンになったと、嬉しそうに話してくれたのは、6月半ばの蒸し暑い日だった。
41: 『初恋』2/4 ◆iN.l3npE8U:2014/7/12(土) 21:38:49 ID:lPY4JRkEVs
「なんか都、今年はマジメだね。うるさい先輩たちもいなくなったってのに」
夏休みのある日、部活に向かう道すがら、利沙が言った。
「去年はしょっちゅうサボってさー、なんで連れてこないのってあたしが怒られたりしてたのに」
「利沙だってサボってたじゃん。・・・あたしよりは行ってたけど」
去年のあたしは享に比べて(比べるまでもなく一般的に見てもそうなのだけど)かなり不真面目だった。
それが今年の夏は心を入れ替えてすっかりまじめに練習に通っている。
享がいるからだった。
バスケ部とバレー部は同じ体育館でコートを二分して練習しているし、練習に行けば休み中にも享に会える。
それに享はキャプテンに選ばれるほど実力もあって、それだけがんばっている。
休み前に享と交わした会話を思い出す。
「おまえバレー部入ったの、『なんとなく』だったの?!」
享は呆れたようにため息をついて首を振った。
「はー!『なんとなく』でもさ、入ったからにはちょっとはやる気出そうぜ?俺みたく寝る間も惜しんでがんばれとは言わねぇけどさ、せめて練習まじめに出よーや。
そんで練習終わった後、みんなで花火とかしよーぜ」
この些細な会話だけで、あたしは毎日のようにきちんと練習に出ているのだ。
我ながら単純だと思う。
だけど、そんな自分が嫌いじゃあなかった。単純すぎて笑い飛ばされそうで、利沙にさえ言えなかったけれど。

享は有言実行派で、あたしたち女子バレー部と、享たちの男子バスケ部とで、何度か花火をしたり、海へ行ったりした。
キャプテンという立場はなかなか大変なようで、愚痴のような相談のような話を何度も聞かされた。
「都にだとなんか、なんでも話しちゃうな」と照れくさそうに笑った。
みんなといる時の享と、あたしと話す時の享はどことなく違う。それはあたしも感じていた。
あたしにだけ弱いところを見せてくれているのだと思うと、たまらなく嬉しかった。

2年も終わりに近づいて、進路を考える時期になった。
「享、どうするー?高校なんか考えてないよ、あたし」
あたしがそう呟くと、享はにやりと笑ってあたしを見下ろした。
「だと思った。俺はもう決めてるし」
「えっ・・・どこ?!」
「北高。あそこバスケ強いし。ただなぁ、頭のレベルも高くて・・・」
バスケがやりたくて高校を選ぶ。享らしいと思った。
そしてそんな享と、同じ高校に行けたら。
北高なら家から近いし、制服も可愛い。言い訳はいくらでも出来る。利沙の志望校も北高らしい。
あたしもこの日、あまりにもあたしらしい単純な理由で、進路を決めた。

42: 『初恋』3/4 ◆iN.l3npE8U:2014/7/12(土) 21:45:53 ID:lPY4JRkEVs
冬になって雪が降って、凍えそうな体育館で、それでも享は相変わらずがんばっていた。
そんな享を見ながらあたしも、それなりにだけれどがんばっていた。
享に見合う女の子になりたかった。
毎日この体育館でボールと享の姿を追う。
あと半年もしたらあたしたちは部活を引退して、この日常もなくなってしまう。
だけど春には同じ高校へ、行けたらいいなと思った。
それまでにあたしは、この気持ちを伝えられるだろうか。

「利沙ー、先行くよ」
学年末のテストを終え、久しぶりの部活の後。部室で制服に着替えると、いつもより少し疲れた体を持ち上げる。
あたしを呼ぶ利沙の声がしたけれど、玄関で待ってるから、とそのまま部室を出た。
今日は珍しく練習が長引いて、享の姿はもう体育館にはなかった。
外に出ると冷たい空気はやけに澄んでいて、星がきれいに見えた。
「・・・都?」
暗闇から突然声をかけられて、思わずあたしは飛び上がる。
玄関脇の暗がりに、享が立っていた。吐き出す息は白くて、ほっぺたは真っ赤だった。
「やっとバレー部終わったかぁ・・・寒かったぁー・・・」
まるで誰かを待っていたかのように、凍えた体を縮めて手をすり合わせた。
・・・誰を?
勝手に心臓が跳ね上がる。もしかしたら、あたしを?
みんなで遊びに行く時も、真っ先に誘ってくれたのはあたしだった。
部活のこと、キャプテンとしての悩み、いつも話してくれるのはあたしにだけだった。
もしかして享もあたしのことを、と、思わなかったわけじゃない。
とおる、と口を開きかけたその時、一瞬早く享が言った。
「利沙は?まだ?」
何を言われたのか、瞬間、理解できなかった。
「・・・え、何?」
「利沙。一緒に帰ろうって言ってたんだけど。」
あたしは享の言葉を飲み込めず、ただ呆然と享を見つめた。
「・・・あれ?聞いてない?昨日、つきあい始めたんだ、利沙と。」
じわじわとその言葉が染み込んでいくのを感じながら、あたしはゆっくりと首を振った。
部室を出てくるとき、利沙はあたしを呼び止めた。その理由がわかった。
必死で笑顔を取り繕って、じゃあね、とだけ呟いて、あたしはやけに冷たい風の中を、走って帰った。

その翌朝、半分照れたような、半分申し訳なさそうな利沙が、事の顛末を報告してくれた。テストが終わった日、享のほうから告白されたらしい。
すぐに言わなくてごめん、と俯く利沙に、そんなの気にしなくていいって、と笑ってみせた。
あたしは利沙にも誰にも、享を好きだって話してはいなかった。
もしも利沙があたしの気持ちを知っていたらどうなっていたのだろう。
もしも享が利沙に言うより先に、あたしが享に気持ちを伝えていたらどうなっていたのだろう。
考えても仕方のないことだけど。
43: 『初恋』4/4 ◆iN.l3npE8U:2014/7/12(土) 21:50:25 ID:lPY4JRkEVs
あたしは志望校を変えた。
少し遠くの、北高よりも一つレベルの高いところを目指すことにした。
それを理由に部活は辞めた。もともとそんなに真剣だったわけじゃない。享のいる体育館にも未練はなかった。
3年になってクラス替えがあって、ありがたいことにあたしは享とも利沙とも違うクラスになった。
極力普通にしているつもりだったけれど、いつのまにか距離は広がり、廊下ですれ違えば挨拶ぐらいは交わす、という程度になった。
利沙が悪いわけでも享が悪いわけでもないのに、なんとなく距離を置き続けて、卒業してからは連絡も取らなくなった。
胸の痛みだけは、棘が刺さったようにずっと残っていた。


「・・・あ」
すれ違ったセーラー服の女の子に、あたしは思わず立ち止まって振り返る。
「どうした?」
手をつないで歩いていた亮も、足を止めてあたしを覗き込んだ。高校に入ってつきあい始めた、あたしの初めての彼氏。
亮には答えず、あたしは遠ざかる2人を見つめていた。
2年ぶりに見る、利沙と享の姿だった。
どうやらまだ仲良くやっているらしい。ほっとしたような、寂しいような、複雑な気分だった。
「おい、都?」
亮があたしを呼ぶ。
「知り合いか?」
2人が見えなくなるまで見送って、それからあたしは笑ってみせた。
「・・・初恋の人」
「え、どんな男だよ、くそー、よく見とけば良かった」
悔しそうに亮は目を凝らしていた。
違うよ、とあたしは心の中で付け加えた。
男のほうだけじゃない、2人ともだよ、と。
享のことが好きだった。だけど利沙も同じくらい大好きで大切な親友だった。2人を同時に失くしたようで、だからあんなに寂しくなってしまったのだと、気づいたのはずっと後になってからだった。
きっと今なら、心から2人を祝福できたのだろう。
そしてどちらも手放さずにすんだのだろう。
離れたのは2人が悪いわけじゃない、あたしが幼かっただけだ。それに気づけるだけ、あたしは大人になったんだ。
黙ってしまったあたしを、亮が心配そうに覗き込んでいた。
大丈夫。もう大丈夫。
あたしは微笑んで、亮の手を強く握り直した。
もしまた会うことがあれば、今度は笑って声をかけよう。そして幼かったあたしを謝ろう。
いつのまにか、胸の痛みはなくなっていた。


44: 1/7 ◆iN.l3npE8U:2014/7/13(日) 21:24:22 ID:izIk0DwNI.
気がつくと私は、暗い森の中で、ひとり必死に穴を掘っている。
どうやって掘ったのか、底が見えないほど深い深い穴を、息を切らせながら見下ろしている。
傍らには、大きな錆びたシャベルが投げ出されていた。
ぽたりと穴の底に落ちていくのは、私の汗か、それとも涙か。

どうしてこの穴を掘ったのか、どうしてこんなに深く掘ったのかわからない。
ただ、飲み込まれそうな暗い深い穴が、そこにはある。

 * * * 

まただ。
またこの夢を見てしまった。
夢の中の自分と同じに汗をかいて目が覚める。
あの穴を掘った理由も、あの森がどこなのかも、現実にいてさえわからない。
じっとりとした不快感だけが、胸を浸食していく。
45: 2/7 ◆iN.l3npE8U:2014/7/13(日) 21:35:13 ID:4KR0fcTPFw
その夜も私は『穴』の傍らで、真っ暗な穴を見下ろしていた。

私はなぜか、左手を固く握りしめていた。
強ばった指をそっと開くと、小さな羽根の形をした、銀のネックレスがあった。

机の引き出しのずっと奥に、鍵をかけて仕舞い込んだはずのネックレス。もう見たくない、颯太にもらったネックレス。

―――あれは私の19歳の誕生日。
大学のそばの公園、薄暗くなったベンチに、2人並んで座って。簡素な包装の小さな袋を、「こんなんでごめん」と照れた様子で颯太が差し出した。
どんなでもいい、颯太に初めてもらったプレゼントだから、私は嬉しかった。
はしゃぐ私を、颯太は笑って見ていた。
―ありがとう。
何度も何度も、私は颯太にそう言った。

颯太と別れてから、私はあの公園のそばを通ることさえできないで、まわり道をして大学へ行くようになった。

ネックレスをもう一度強く握りしめて、それから暗い深い穴の上で、手を離した。
小さな羽根は、暗い穴の底に吸い込まれるように、消えた。
―さよなら。
その深い闇に向かって、私は小さく呟いた。

 * * * 

目を覚ますと、いつもとは違う、なにか不思議な違和感があった。
部屋を見渡して、その正体に気づく。
机の引き出しが、ほんのわずかに開いている。
鍵のかかる引き出し、颯太との思い出を封印した引き出し。鍵はかけてあったはずなのに、開いている。

どうして?

私はふらふらと起き上がると、机の前まで行ってその引き出しを開けた。
一番奥に仕舞っていた、蓋のついたお菓子の缶を取り出す。颯太との思い出を封印した缶。

恐る恐る、蓋を開けてみた。
羽根の形のネックレスが、なくなっていた。

その日私は、あの公園のそばを通って学校へ行った。
胸を刺す痛みも、こみ上げる哀しみも、もうなかった。
46: 3/7 ◆iN.l3npE8U:2014/7/13(日) 21:37:25 ID:4KR0fcTPFw
その夜も、いつもと同じ穴を見下ろしていた。
昨夜はこの穴に、何かを捨てたような気がする。
それが何だったのか、もう思い出せないけれど。

傍らには錆びたシャベル、そしていつのまにか右手には小犬のぬいぐるみを持っていた。

―――あれはまだ初夏、海へ行った日。
車の中に無造作に置かれていたそれを、「おまえに似てる」と、突然くれたものだった。
颯太が好きで好きで仕方なくて、シッポを振って駆け寄る小犬のようだと。
何よそれ、と私は怒ったけれど、頭を撫でられて機嫌が直ってしまった。単純なところも犬みたいだと、颯太は笑った。

颯太は海が好きだと言って、春の海にも冬の海にも連れて行ってくれた。
思い出してしまうから、海辺の街に住みながら、私は颯太と別れてから、一度も海を見ていない。

右手にぶら下がるぬいぐるみを、私は真っ暗な穴の上にかざす。
―さよなら。
手を離すと、ゆっくり、ゆっくり、その犬は穴の中へ落ちた。

 * * * * 

目を覚ますと、また部屋の中に違和感を覚えた。
何かが足りない。
何か。
部屋を見渡して、本棚の上に目を止める。そこに並べて置いていたいくつかのぬいぐるみの真ん中が、まるで誰かがひとつだけ持ち去ったように、ぽっかりと空いていた。

あそこには何があったんだっけ。
数秒の間考えて、そして小さな犬がいたことを思い出す。
だけどそれがどんな意味をもつものだったのか、どんな犬だったか、大事にしていたものだった気がするのに、思い出せない。
47: 4/7 ◆iN.l3npE8U:2014/7/13(日) 21:43:39 ID:izIk0DwNI.
暗さを増したような気がするその深い穴の傍らに、その夜私はアルバムを持って立っていた。
颯太と一緒に買った、青空模様の表紙のアルバム。ふたりで撮った写真を、大切に納めていった。

ページをめくる。春の海、冬の海、遊園地、颯太の車の中、そして颯太の部屋。最後の写真まで丁寧に辿ると、あとは黒い台紙が続く。
黒く寂しいアルバムをめくっていって、裏表紙に辿り着く。
そして閉じたアルバムを、両手でそっと穴の上に差し出して、捨てた。

 * * *

ゆっくりと目を開ける。
何かが起こっている。それはもうわかっていた。
起き上がって、棚の一角に目をやる。
中学時代、高校時代、家族と旅行したときのもの、丁寧に整理して並べていたアルバムが、ちょうど一冊分抜けていた。
だけどそこに何色のアルバムがあって、何の写真が入っていたのか、私にはもう、わからなかった。

それはもう、『捨てた』ものだから。

天気の良い日だった。授業もないので、自転車に乗って出かけることにした。

海へ。

どうしてだろう、何年か前まではよく来ていた気がするのに、家から一番近いこの海岸に来るのは、とても久しぶりのような気がした。
自転車を5分も走らせれば海があるのに、波の音も海の色も、ずいぶん長いこと見ていなかった気がする。

防波堤に腰かけて、海を見る。
なんだか左手が、手持ちぶさたな気がした。
何かを―――誰かの手を、私はいつもここで、握っていた気がする。
48: 5/7 ◆iN.l3npE8U:2014/7/13(日) 21:49:48 ID:izIk0DwNI.
その夜はいつもより森が明るく見えた。
その理由はすぐにわかった。
私は携帯を持っていた。画面の明かりが、暗い深い森を照らしていた。

颯太とお揃いで買ったストラップを、私は今も外せずにいる。
消すことのできない颯太からのメール、2人で撮った写真。
そしてもう使うことなどないのに、残されたままの颯太のメモリー。

私はゆっくりとその小さな機械を持った手を振り上げて、そして深い深い穴の底に、叩き付けるようにして、投げた。

 * * *

怖い夢にうなされた子供のように、私は飛び起きた。
夢の中の私は、携帯を『捨て』た。
今まであの穴に『捨て』たものは、(何だったか思い出せないけれど)全部私の現実からもなくなった。
慌ててベッドの枕元、いつも携帯を置いている場所を探る。

予想に反し、携帯はちゃんとそこにあった。
ただ、何かが足りない気がした。
飾り気のない、買ったときのままの携帯に、妹の修学旅行土産と、姉がくれた水色のビーズのストラップがついている。
ほかにも何か、ついていたような気がするのだけど。

それよりも妙な胸騒ぎがして、メールボックスを開ける。
受信メールが、やけに少なくなっていた。颯太からのメールがない。送信メールも画像も、残っていなかった。
アドレス帳で『竹田颯太』を検索する。

『該当するデータはありません』

私の携帯から、颯太だけが消えていた。
私が捨てたのは、携帯じゃなく、携帯の中の『颯太』だった。

そこでようやく私は、あの『穴』の意味に気づいた。
どうして今まで気づかなかったのか。
私は夢のなかで、『穴』に颯太との思い出をひとつひとつ『捨て』ていく。
その作業をすべて終えたとき、きっと私は颯太を忘れられるんだ。
颯太を忘れて、前に向かって、歩き出せるんだ。

それから私は色んなものを『穴』に捨てた。
颯太がくれたピアス、薬指には少しゆるくて中指につけていた指環、初めて2人で旅行へ行ったときの思い出。

その度私の現実から何かが消え、そして私は喪失感に包まれた。
だけどすぐに『それ』が何だったのか忘れてしまい、喪失感も虚無感も日常に埋もれてしまう。

私は立ち直るんだ。
半年も颯太のことをひきずって、前を向けなかった。
だけどこの作業を終えたら、すっかり立ち直って、前へ進むんだ。
49: 6/7 ◆iN.l3npE8U:2014/7/13(日) 21:53:21 ID:4KR0fcTPFw
最後の日がやってきた。
なぜか私はそれを知っている。
―今日の『作業』を終えたら。
不思議な決意に満たされて目を開いて、そして私は思わず声を上げた。

目の前に颯太が立っていた。
『穴』と私の間のわずかな空間に、浮かぶように、颯太が居た。

〔夏実〕

颯太が私を呼ぶ。
懐かしい声。
颯太はそっと私を抱き寄せた。
ふわりと漂う香水の香り。
ああ、颯太。

〔夏実、もうだいじょうぶ、今日で終わりだよ〕

颯太が言って、私の身体を離した。
―さぁ。
―終わらせるんだ。
颯太が私の目を見て笑った。
この笑顔も、声も、香水のにおいも、すべて好きだった。

だけど迷いはなかった。
やるべきことはわかっていた。

微笑み返して、颯太の肩をとん、と押す。

 ふわり。

颯太の身体は浮いて、それからゆっくり、ゆっくり、
深い深い『穴』の底へ、吸い込まれていった。
50: 7/7 ◆iN.l3npE8U:2014/7/13(日) 21:55:30 ID:izIk0DwNI.
テレビには朝のニュース。
母さんはぱたぱたと忙しく動き回っていて、父さんは食卓でコーヒー片手に新聞を広げている。
お姉ちゃんの爪は今日もきれいに整えられていて、妹は自分の寝坊を何かに責任転嫁している。
いつもと同じ朝だった。

「あら…」
テレビの画面を見て、母さんがふいに眉をひそめた。
「ねぇこれ、この近くじゃない?」
思わず皆が、そのニュースを見た。
確かに、見覚えのある風景と、見たことのあるマンションが映っていた。

アナウンサーの生真面目な口調が言った。
『…今日未明、こちらのマンションの駐車場で遺体が発見されました。
死亡したのはこのマンションの6階に住む、竹田颯太さん…』
その名前とともに、画面の端に顔写真が映し出される。
それを見て、お姉ちゃんが言った。
「あれ?この人、どっかで見たことある気がする…。
夏実、あんたの同級生とかじゃなかった?」
お姉ちゃんに言われて、私も画面をじっと見つめる。
―どこかで。どこかで会ったことが、あるような。
私もそう思ったけれど、どれだけ記憶を手繰ってみても、それが誰だったのか思い出せない。

あるいはバイトしている居酒屋によく来るとか、大学へ行く途中によくすれ違うとか、その程度の人なのかもしれない。

「ううん、知らない。よくいる顔なんじゃない?」
私は首を振って、テレビから目を離した。
そうかな、と首を傾げて、だけどお姉ちゃんも気にしたふうもなく、朝食の箸を持つ。
そうだよ、と私も言って、堅焼きの目玉焼きをつつく。

いつもと同じ、朝だった。


『…なお、竹田さんは6階の自宅ベランダのほぼ真下に、仰向けに倒れた状態で発見されており、ベランダから後ろ向きに転落、背中や後頭部を強く打ち、死亡したと見られています。
遺書などは見つかっておらず、警察は事故と事件の両面から、捜査を進める方針です…』


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