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【適当】小説書きスレ其の弐【万歳】
[8] -25 -50 

1: 名無しさん@読者の声:2014/6/12(木) 23:18:52 ID:YDoKF2wKiU
ここは主に小説を書くスレです!
自由に書いてよろし!

・他人に迷惑を書けるのは駄目です!
・喧嘩は喧嘩スレへGO
・必要なら次スレは>>980さんがお願いします。無理なら早急に代理を!

不備がありましたらすみません。楽しく書けることを祈ります。


101: 名無しさん@読者の声:2015/7/26(日) 19:05:47 ID:SDq54OENlQ
ありがとうございます
出来上がったらキャラを自由に書くスレにあげさせていただきます
102: 1レスに納まらなかったのでこちらに。:2015/10/9(金) 21:51:19 ID:qw9Iuv5tHY
 
 気配を消す。「奴」に気づかれないように。

 部屋の向こうではズルズル、ズルズルと、まるで墓場を這いずるゾンビのような足音がしていた。少しずつ、けれど確実に音楽室に近づいてくる。
 奴がこの世界の住人でないことは明らかだった。全身に立った鳥肌が警告を発している。「あいつに気づかれたら面倒なことになる」と。
(どうしてこんなことに……)
 冷えた夜気から身を守るように、窓枠の下で膝を抱え込む。三日月の放つ銀光が、古ぼけたピアノに鈍く反射していた。

――

 その夜、私は学校の廊下を歩いていた。昼間の暑さの名残からか、肌はわずかに汗ばんでいる。時刻は深夜零時をまわったところ。目的の一つは、ピアノを弾くことだ。
 廊下の窓から見える丸い月は十分な光を地上に注いでいる。出がけにトイレに手間取って時間をくったせいで雲に隠れているのではと心配していたが、杞憂だったようだ。
 ベートーベンの「月光」を、本物の月明かりを浴びながら弾くこと。それが幼い頃からの夢だった。今夜はそれを叶える絶好の日だ。
 目当ての部屋に着いた。木製の重厚な扉を開けると、乾燥した空気が鼻をくすぐる。私は盛大にくしゃみをした。

103: 名無しさん@読者の声:2015/10/9(金) 21:52:11 ID:qw9Iuv5tHY
「……おっと」
 あわてて口元を押さえる。しばらく耳をすましてみるが、何の物音も聞こえない。ほっとして部屋に入ると、防音樹脂が足元を柔らかく受け止めた。
 視線を部屋の中央に向け、私は感嘆のため息をつく。よく磨かれた漆黒のグランドピアノが、冷たい月光をまとって輝いていた。
「さて、と」
 鞄をおろし、革靴を脱いで丁寧にそろえた。
 一人きりのコンサートの幕が、いよいよ上がる。

――

(来るな来るな来るな! 頼むからそっとしておいてくれ!)
 気味の悪い足音は続いている。そして私の願いもむなしく、奴はこの部屋の前まで来ると、ぴたりと足を止めた。
(……まさか、入っては来ない……よな?)
 息を止める。スライド式扉の向こうからは、明らかに異質な気配が漂ってきていた。間違いない。奴の目的は、この私だ。
 それからしばらくの間、私も奴も微動だにしなかった。長針の奏でる規則正しい音以外、なにも聞こえない。
 そして――その瞬間が訪れた。
「ユーキさんユーキさん、ピアノを聴かせてください」
 少し間を空けたあと、もういちど。
「ユーキさん……ピアノを……聴かせてください」
 それは、扉の向こうにいる少女の声だった。不安と緊張と、どこか諦めをにじませた。
 私は深々とため息をつく。また面倒くさいのがきた、と。
 
 二十年前の夏。私はこの音楽室で月光を弾いたあと、ピアノの真上で首を吊った。遺書もなく、世間はピアニストの夢破れたすえの自殺だろうと結論づけた。
 しばらくして、母校にはこんな伝説が囁かれるようになった――「音楽室の幽霊にピアノ演奏を請い、何もなければ天国へいける。しかし少しでもピアノの音がすれば、その人は地獄に落ちる」。
 なんともくだらない噂だが、閻魔大王扱いされてはたまらない。私はただ、静かに死後の世界を楽しみたいだけなのに。その噂を聞いて以来、一切ピアノに触らないよう、今日まで細心の注意をはらってきた。

 しかし、今夜だけはそうもいかないらしい。私は勢いよく立ち上がり、ピアノに向かって歩き出した。
 扉の向こうでうつむいているであろう少女は、おそらく自殺しようとしている。床に引きずるほど長いロープで、屋上から首でもくくるつもりなのだろう。その瞬間を迎える前に、どうしても確認しておきたかったこと。
 それは自分が死んだ後、天国に行けるか否か。
「まったく、甘ったれた後輩め」
 椅子に腰を下ろし、両手の指先の腹を合わせて集中する。幽霊の良いところは、ブランクがあっても演奏の腕がなまらないところだ。
「思いっきり弾いてやるよ。地獄行きが確定すれば、二度と死ぬ気なんか起きないだろう?」

 私はニヤリと笑い、埃のかぶった鍵盤を力強く押した。
104: バービーの嘆息:2015/10/30(金) 12:31:07 ID:mwmYgxfDQI
「バービーみたいになりたい」

ぽつりとつぶやいた言葉に顔を上げたのは、あたしのノートを写している隣の席の男子。
こいつが毎回数学の時間寝ているせいで、あたしは度々放課後まで残されるはめになる。

「なに、バービーって」

「まさかバービーを知らないんですか?バービー人形って知らないんですか?」

いつもなら学校が終わると真っ先に帰る帰宅部のあたしは、たっぷり皮肉のこもった口調で言ってやる。すると彼はああ、と思い当たった顔をして、ハッと馬鹿にしたように鼻を鳴らした。

「そんな平たい顔でオコガマシイな。おまえはリカにもなれねぇよ。とりあえずバービーに謝れ」

こいつ腹立つ。どうせあたしは日本人顔ですよ。しょーゆ顔でございます。

「大体さ、あいつらの目、顔の半分くらいあるじゃん。実際いたら化けモンだろ」

「いいんですー。女のコの基本は目がおっきいことなんですー。少女マンガだってみんなでかいじゃん」

「じゃあますます無理だろ。おまえの目ぇ線だから。少女マンガにも謝れよ。てか世の中の女に謝れ」

おまえはあたしに謝れ。
ぎろりと睨みつけてやったが、ただでさえ細い目がさらに線になってしまうのに気づいて見られないうちにやめた。

「あーあ、あたしがバービーみたいに可愛かったら、こんな冷たい仕打ちだって受けなかっただろうなー」

嫌味ったらしく言ってやり、ぼすんと机の上のかばんに倒れこむ。
バービーみたいに目がおっきくて、スタイル良くて、何着ても似合って、きらきらしてて。
性格だってきっと可愛い。そんな女のコになってみたい。

「そうだな。おまえが『バービーみたいに』可愛かったら、放課後残したりしないしノート写さしてとか言わねぇよ」

その言葉に、あたしは机に伏せたまま彼のほうに顔を向けて頬を膨らませる。
しかしそれを奇麗に無視し、彼はノートを写しながら続けた。

「それでもいいの?おまえ、俺にかまってほしくないの?」

ぱたんとノートを閉じて、彼があたしの目を見てニヤリと笑う。
あたしは目を丸くして、ぽかんと口を開けた。

「はいどうも。またよろしくね」

ぽんっとあたしの頭を叩いてノートを返すと、そいつはさっさと帰る準備をして部活に行ってしまった。

じゃあな、と手を振って教室を出た彼を見送った後、ノートで隠していた赤くなった顔を慌ててかばんに埋める。

まさかバレてたんだろうか?
彼があたしからノートを借りてくのが、ちょっと嬉しかったりしただなんて。

あたしは大きく溜息をついた。
もちろん、彼にかまってもらえるならバービーじゃなくてもいいか、なんて思ってしまった単純な自分に対して、だ。
105: 名無しさん@読者の声:2016/2/15(月) 22:17:08 ID:USoInx.tjQ
World NEET da music yeah 誤解争いの絶えないニートに必要なこの音
World NEET da music yeah 2次元最高 この言葉でなら分かり合えるだろう

外に出るにこしたこたない でも実際ありえないアニメがいっぱい
親が子を、子が親を 犯してしまう事実に真っ青
3次元よりアニメキャラのがまし けどいつかは俺もレイプ魔に
ならいずれ生まれ来るキャラクターに 明るい画質用意したい

生きとし生ける命あるものは 家族仲良く愛し合うもの
それこそ自然 当たり前のこと 忘れちまったのはずっと前のこと

World NEET da music yeah 誤解争いの絶えないニートに必要なこの音
World NEET da music yeah 平野綾ヤリてぇ この言葉でなら分かり合えるだろう

元は一個のテレビなのに 無理に線引き奪い合い
やれ他の兄弟といがみ合い どうすれば見れる凉宮ハルヒ
ひきこもりという名の王者なら YouTubeで見ればモーマンタイ
時間かかってもNever give up 就職活動より精子部屋中にまく

またリア充がパラサイト どうかしてるぜプレジデント
ネットで遊べる毎日を 無駄な日々を邪魔なんてさせねえぞ
「どうやって仕掛ける?トロイの木馬」なんて頭痛めてるならいっそググりませんか
部屋に鍵掛け 独りで よっAKB!! 握手したら上げたくなるよ 金使って100票

World NEET da music yeah 誤解争いの絶えないニートに必要なこの音
World NEET da music yeah 2chじゃ番長 この言葉でなら分かり合えるだろう

キモオタのボカロ ニコニコから 君の耳元まで届けるから
希望の無い朝 信じてただ 大声張り上げて歌うから

Oh Oh 会社に縛られた社畜乙
Oh Oh 飯は部屋の前に置いとけよ
Oh Oh 魔法使い飛び越えもう魔神さ
Oh Oh ここから俺らで世界を変えよう

World NEET da music yeah 誤解争いの絶えないニートに必要なこの音
World NEET da music yeah 恋愛するなら妹 この言葉でなら分かり合えるだろう

夢や幻に逃げる 俺らが叶えるこの願い
生活保護受けた偉大なニートから繋げ役所に寄生ラリー
夢や幻に逃げる 俺らが叶えるこの願い
ブサイクで売れたAKBから繋げやすしスカウトラリー


World NEET da music yeah 誤解争いの絶えないニートに必要なこの音
World NEET da music yeah おじゃ魔女ドレミ萌え この言葉でなら分かり合えるだろう

World NEET da music yeah 誤解争いの絶えないニートに必要なこの音
World NEET da music yeah ネットが現実 この言葉でなら分かり合えるだろう
106: 名無しさん@読者の声:2016/3/23(水) 11:27:37 ID:vQLgWd1lHk
薄暗い。
彼女が口にしたのはその一言だ。

古都ヤーナム。
その名の通り歴史を感じさせ、どこか壮大な印象を受ける、汚くも美しい街。

しかし、そんな風情のある街も彼女にとっては他の戦場と変わらないモノにしか見えなかった。
彼女は薄暗いと言ったが、本人には特に問題にはなっていない。
それもそのはず、彼女の瞳は間が抜けているようで鋭く光っている。
だが、光っているのは彼女の瞳だけではない。

彼女自身、光っているのだ。

これは誇張でも、まして比喩でもない。
彼女の体が、青白く発光している。
どこか幻想的なその光は、ひどく醜悪なモノと紙一重だ。

そんな彼女にも、ヤーナムの街は牙を剥く。
いや、剥いてしまったと言ったほうが正しいだろう。

彼女の目立つその身体に惹きつけられたか、数匹の獣が彼女の周りに集まり、あっという間に包囲した。
そして、リーダー格の一匹が彼女に向かって吠えると同時、全ての獣が彼女に向かって飛び込んだ。

圧倒的なまでの死の洗礼。
しかし彼女に死が訪れることはなかった。

息を1つ吐き、右手に持つハルバードを一薙する。
それだけでリーダー格の一匹を除き、全ての獣が一蹴されてしまった。
そして、彼女が振り返り獣を睥睨する。

そのギラついた視線にリーダー格の一匹が記憶の底から引っ張り出す。
身体の震えが止まらない、喉からうまく鳴き声もでない。
あの視線、あの光。
なぜ気づかなかったのだろう、最も恐るべき存在に。

かの者はツダである。

その残酷な事実に。
107: 4人の兄弟の話:2016/3/23(水) 21:47:54 ID:TgHhulT0tk
「大変だ!またあいつ死んだって!」

「嘘、今月何回目だよ」

「あーあ、ほんと馬鹿なヤツ」

4人兄弟のうちのひとりが今日事故で亡くなった。長男は知らせを聞いてため息をつく。

「あいつ馬鹿だから死んだこともすぐ忘れるんだよな〜」

次男は肘をついて不機嫌そうに話す。

「今月6回目だぞ」

三男はにこりと笑って答える。

「また回収して新しいの持ってこなくちゃね」

そういえば、と長男は口を開く。

「お前らはまだ死んでないの?」

次男と三男は笑って答える。
「何言ってるんだ兄さん、俺達はもう死んでるぞ」

長男は首を締められたような感覚になり、ひゅっと喉を鳴らす。

そうだった、次男も三男も四男も、みんな事故で死んでしまった。

生きているのは長男の俺だけだ。

次男は長男を見て笑う。

「そろそろ現実を受け止めろよ」

暗転

静かな部屋に残ったのは遺書とロープ、それだけ。

長男もまた、兄弟のあとを追ったようだ。

おわり

108: ナイト・ロマンチスト・マーダー:2016/3/26(土) 20:30:08 ID:6kosZxQPU2
 ある都市伝説をご存知だろうか。深夜二時頃、白黒映画を観ていると殺人鬼が現れるというものだ。殺人鬼が現れるときの映画は、「サイコ」のようなサスペンスでもなければ、「吸血鬼ノスフェラトゥ」のようなおどろおどろしいものでもない。どちらかというと、「ローマの休日」や「アパートの鍵貸します」のようなラブロマンスや、ロマンスコメディだという。どうやら、殺人鬼はロマンチストのようだ。

 現在、午前一時四十分過ぎた頃。私はおどろおどろしいものでもなければ、ラブロマンスでもないものを観ていた。

『Osgood, I'm gonna level with you. We can't get married at all.(オズグッド、本当の事を話すわ。アタシ達、結婚出来ないのよ)』
『Why not?(どうしてだい?)』

 女装した男、ダフネがヨットの上で想いを寄せられている相手、オズグッドに自分は実は男だと伝えるシーンが淡々と続いていく。

『Well…ln the first place, I'm not a natural blonde.(えっと……まず、アタシ、本当はブロンドじゃないの)』
『Doesn't matter.(気にしないさ)』

 その時、すっと背後のドアが開く感覚がした。振り返るが、ドアが薄く開かれているだけで、他には何もない。
 気のせいだろう。そう考え、再び映画に戻る。

『l have a terrible past. For three years. I've been living with a saxophone player.(アタシ酷い過去があるのよ? 三年間サックス奏者と住んでたんだから!)』
『l forgive you.(許すよ)』

「"Some Like It Hotお熱いのがお好き"か」

 部屋には私しかいないはず。なのに背後から男の声がした。低いけれど、不快にならない、背中がゾクゾクするような魅力的な声だ。

「あなた、誰?」
「シッ。……上映中はお静かに」

 振り返ろうとしたところ、背後から手が回され、口元を覆う。仕方ない、終わってから聞こう。大方、男が誰だか予想はついているけど。

『You don't understand, Osgood.(あなた、何もわかってないわね、オズグッド)』

 ダフネがかつらを取る。

『I'm a man.(俺は男なんだよ)』
「I'm a murderer.(私は殺人鬼なんだよ)」

 男は素早くナイフを取り出すと、女の首を掻き切った。血が勢い良くほとばしる。

『Well, nobody's perfect.(なるほど、完璧な人間なんていないさ)』
「確かに」

 男はナイフについた女の血を、指でつぅとなぞると、それを口に含んだ。口角がキュッと上がる。

「不味い」





 ある都市伝説をご存知だろうか。深夜二時頃、白黒映画を観ていると殺人鬼が現れるというものだ。殺人鬼が現れるときの映画は、「サイコ」のようなサスペンスでもなければ、「吸血鬼ノスフェラトゥ」のようなおどろおどろしいものでもない。どちらかというと、「ローマの休日」や「アパートの鍵貸します」、「お熱いのがお好き」といった、ラブロマンスやコメディといったものだという。
 殺された被害者は全て心臓を抉り抜かれており、さらに、頬には被害者の血液によってつけられた殺人鬼と思わしき唇の跡がつけられているそうだ。その事から、世間では彼の事をこう呼んでいる。

ナイト・ロマンチスト・マーダー
109: 名無しさん@読者の声:2016/4/5(火) 20:46:09 ID:j7z.aJWS3I
昔1レス勝負で『男の娘の日』が題材だった時に書いたものですが、結局投稿出来ずに終わってしまったのでこちらで……。




『西暦2XXX年X月X日土曜日。今日は第11回目の男の娘の日です。皆さん、元気に過ごしましょう』

午前八時。けたたましいサイレンと共に日本国内に向けて放送されるアナウンス。
街を歩いていた女性達は皆一様に笑顔を貼り付けながら辺りを見回した。
各々が手に持つは、今日のこの日の為に家から持参してきた女性服や化粧道具一式である。

その時、街の中心から一刻もはやく逃れるように走り出した背広の男が三名、女性達の視界に映った。
途端に「居たわ!!男が居たわよ!!!商店街の方に逃げていくわ」「誰か捕まえて!!」と甲高い声が上がる。

その言葉を合図に、その場に居た女性達が一斉に男三名に向かって突進していく。
「ひぃやめてくれえええ」
「後生だからどうか俺たちはぁああ」

悲惨な声が全速力で逃げる男達から上がるが、逃走劇は一分とかからず幕を下ろした。
彼らにとっては街中の女性全てが敵なのである。更に、場所は人通りが多い街中。逃げ切れるわけがない。
女性達に捕まった三名は手際よく拘束され、群がる女性達にされるがままその容姿を彩っていく。
あれよあれよと気が付いた時には、街には新たに三人の女性が誕生していた。



「だから今日一日は外出するなと言ったのに……」
ビルの一室から街中を見下ろしていた男が、たった今女性――否、男の娘に成り代わった三人の男達を眺めて呟く。
そんな男の背後で独りでに開かれる扉。男が忍び寄る気配に気付くまであと数秒。男の娘の日は始まったばかりである。



110: ロンリーバレンタイン:2017/2/22(水) 14:05:19 ID:4UVZj/rlsA
今日はバレンタインデー。
この日の力を少し借りて、勇気を出して大好きなあの人に告白するんだ。

なんて
「そもそも相手いないっつーのおおお!」

誰だよ。2月14日は「女性が男性に親愛の情を込めてチョコレートを贈与する日」(W*ki引用)だとか決めたやつは。
そして何みんなちゃっかり告白とかしてやんのさ。
そもそもバレンタインはローマ帝国時代の女神様の誕生日とかなんかで、15日のなんちゃら祭の先日祭みたいなので男女がうんぬんかんぬんするっていう、ローマ帝国の風習的なもの。
日本のバレンタインデー文化に、そのような起源、普及過程、社会的機能、歴史的意義とかないっつーのさ。
てゆーか、日本のバレンタインデーも1958年ころから流行しただけであって、それも流通業界や製菓業界によって販売促進のために普及されたようなものだし。
そのおかげで、バレンタインデーは日本のチョコの年間消費量の2割程度を消費するという、製菓業界にとっては、うへへーな結果になっちゃってるんだよね。

みんな製菓業界の手のひらで踊らされているのにか気付いていないんだよ!
「バレンタインデーはチョコレート業界の陰謀」(W*ki引用)なんだよ!
みんな! 目を覚まして!

「くそっチョコレート業界め。 わたしにもチョコ恵んでくれっての。」
「なに独りでぶつくさ言ってんだよ。 弥生。」




バレンタインデーの裏事情について(脳内で)語っていたら、わたしの頭に腕を乗っけてきやがった誠。
何様だよ。

「俺様だよ。」
「あんたまだ中二なの? え、末期なの? 末期なの?」
「うぜえ。独りでW*ki引用しまくってるやつに言われたかねえわ。」

なぜバレたし!
W*kiとっても役に立つんだよ!
ってか独りって・・・

「独り言うな! 1人と言え!」
「事実じゃねえか。 認めろよ。」
「ぬ、ぐ、あんたも! あんたもどーせ誰にももらってないんでしょ! あーかわいそう!」
「残念。」

そう言って誠はニヤリと笑った。
そして、紙袋いっぱいに詰められた、可愛いラッピングが施されたものを、わたしに見せつけてきた。





「・・・っ!」
「生憎、俺顔はいい方だから、この日は困らないんだよねー。」

くそっ! 美味しそう!
最近の女子高生の手作りチョコってハイレベルなんだよね!
111: ロンリーバレンタイン:2017/2/22(水) 14:06:26 ID:4UVZj/rlsA


「だけど俺は誰にもお返しするつもりはない・・・。 だって俺は弥生が」
「神様俺様ナルシ誠様・・・! わたしにチョコを恵んでおくれ・・・!」

なんかぶつくさ言ってる誠のうざさは放っておいて、チョコを恵んでもらおうと試みた!
・・・が。

「・・・っ。」
「まこと・・・?」
「・・・やらねえ。」
「は」
「ああ?」

なんか急に怒っちゃってるよ。 まこっちゃん。

「・・・なんでよ。てかなんでおこぷんしてんのよ。」
「古いわぼけ。」
「そんなのどーでもいいよ! はよチョコくれ!」
「こんなのいくらでもくれてやるわ!」

え、意味分からんよ。
てか、なんかこちらを凝視してるし。
あれ? なんか顔赤いですよ誠くん。





「女の子が悲しむよ。」
「どうでもいいわ。」
「うわー罪な男ー」
「お、俺はただ!」
「うおっ! なんだよ」
112: ロンリーバレンタイン:2017/2/22(水) 14:07:41 ID:4UVZj/rlsA
急に大声出して、私の両肩をがっちりホールドしてきたよ。
ま、まさか・・・
「お、お金なんて持ち合わせてませんよ」
「恐喝じゃねえっての!」
「じゃあなにさ!」
「気づけよ!」
「なにを!」
「だから、俺が弥生を好き・・・あ。」
「それがどうした! ・・・え。」

なんか今・・・
好きって聞こえたような・・・。

え、誠が? わたしを?


「あ、いや、ちが」
「・・・」
「・・・弥生?」
「俺は弥生のチョコにしか興味ねえ」
「は」
「とか言っちゃう系?」
「え、あ、うん・・・」
「・・・」
「弥生? 弥生さーん」
「なにそれ」
「え」
「チョーウケるんですけどおおお!」
「え・・・」
「誠ってば顔真っ赤にしちゃって!
そんなお茶目なとこあったの? ばくわら!」
「や、弥生てめ・・・」
「なにさ。 ぷ、ぐふふふっ」
「人が勇気出して告ってんのに・・・」
「あーごめんごめん」
「思ってねえだ・・・」
「わたしも好きだよ」
「え・・・」
「うそだけど。」
「・・・」

この子、目輝かせたと思えば死んだ魚みたいな目したり・・・
わたしの言葉で一喜一憂しちゃって・・・。
こんな可愛かったっけ!

「あーもう! きみそんな可愛かったっけ」
「・・・もうなんとでも言えよ」
「拗ねない拗ねない。 はい」

拗ねてる誠にチロルチョコあげた。
そしたらまた、ぱって明るくなっちゃってるし。
113: ロンリーバレンタイン:2017/2/22(水) 14:08:03 ID:4UVZj/rlsA


「チロルチョコでごめんね」
「え、でも弥生が俺のために・・・」
「友たちにもらったやつだけど。」

また落胆してる・・・!
やばい! ハマってしまう・・・!

「・・・べつに」
「ん?」
「それでも・・・弥生からもらえたからいい」
「あら」
「なんだよ」
「いや、惚れるようなこと言うよね」
「え、まじ・・・?」
「惚れないけどね」
「・・・」
「そんなあからさまに落ち込むなよ乙女!」
「・・・俺は男だ」
「はいはい。 ま、」


「ホワイトデーまで考えといてあげるから、せいぜい頑張ってよ」


少女マンガでありそうなセリフ言ってみたら、誠くんが威勢のいい声でおうっ!って言ってた。
ま、こんな独り身バレンタインデーもアリかもね。
114: ワスレズ:2017/4/25(火) 10:44:24 ID:aeiPKD4Roo

 亡くなってしまった人のことで、最初に忘れてしまうのは『声』らしい。じゃあ逆に、最後まで覚えていられるものって、いったい何なんだろう。




 葬儀が終わって家に帰って来る頃には、すっかり暗くなっていた。私は着ていた黒い服を脱ぎ捨てて、ドサリ、とソファーに倒れこんだ。なんだかどっと疲れた気がする。明日も仕事だと考えるとますます気が重い。支度をした時に出しっぱなしにしていた鏡のせいで、自分と目が合う。アイラインがにじんでしまっている。あんなに泣いたのだから無理もないか。

 実家を出て一人暮らしをして数年。自炊にも仕事にも慣れて、順調に生活していた中での突然の祖母の訃報だった。病気をした、とは聞いていたけれど、こんなにあっけなくいなくなってしまうとは思っていなかった。もっと顔出しに行けばよかった、なんて後悔は今更すぎた。昔はよく会いに行ってたのに。世話焼きだったから、ちょっと遊びに来ただけのつもりなのに、結局夕飯までご馳走になって帰ったっけ。

「……お婆ちゃんの料理、大好きだったなぁ」

 主婦歴の差なのか、やっぱり母が作る料理よりも美味しかった祖母の料理。私があまりに美味しい美味しいって食べるから、母が拗ねたこともあった。それからというもの、たまに鍋ごと持ってきてくれるようになったんだけど。……あの料理、なんて言ったっけ? 喉元まで出かかっているのに、料理名が出てこない。耐えきれなくなって、私は母に電話をかけた。

《はい?》

「あ、お母さん? あのさ、昔、よくお婆ちゃんが作ってくれた料理なんだっけ? ほら、里芋とかごぼうとかがたくさん入ったお汁……」

《あー、けんちん汁?》

「そうだ、それそれ」

 思い出した。思い出してすっきりするとともに、久々に食べたくなってしまった。材料はまるでないが、今から行けばスーパーには間に合う。疲れているけど、お腹は空いてるし。
 少し迷って、私は母に尋ねたのだった。


「……ね、それ、どうやって作るの?」




 材料はわかるけど、分量は全部曖昧なレシピを元に、けんちん汁を作った。見た目はそれっぽくできたけど、味はどうだろうか。お椀に盛ったけんちん汁をまじまじと眺めて、意を決して箸を持つ。

 里芋を一つ、頬張る。
 咀嚼して、飲み込む。

 汁を啜る。
 少し舌で転がして、飲み込む。

───あぁ。
 わかってはいたけれど。主婦歴50年以上の祖母の味が、自炊歴たかだか数年の若造に出せるわけがない。材料は一緒のはずなのに、どうして違うのだろう。その答えはきっと、祖母にしか出せない。私にあの味は作れない。

 亡くなってしまった人のことで、最初に忘れてしまうのは『声』らしい。祖母のことを少しずつ忘れていって───いつか、祖母のけんちん汁の味も忘れてしまうのだろうか。
 それはなんだかとても嫌だなぁと、あんまり美味しくないけんちん汁を食べながら、ぼんやり思った。
115: 滑り込みセーフ?:2017/4/30(日) 23:35:14 ID:NDGbZRwiy.

「君って2回目でしょう?」

高校の入学式、オリエンテーションが全て終わって、はじめましての友人と帰ろうと玄関に向かう途中、紫の目が俺を呼び止めた。白衣を着た教諭にそう突きつけられる。言葉の意味は誰にもわからないだろう。周りの生徒が怪訝な顔で俺たちを見守る中、俺にだけは問いかけの意味がはっきりとわかった。そしてようやくそう問いかけてくれる人に出会えたのだと、かすかな喜びに震えていた。

生白い教諭の整った顔立ち、そこに埋め込まれたスミレ色の瞳が鈍く光を放つ。


【21g】


この体に生まれて、16年目の春だった。

意識の中の自分は、板垣蘇芳准尉であり、明治24年生まれの男である。年齢は最後の記憶で言えば、おおよそ30を迎える手前だった。
死んだのは1919年の秋、第一次世界大戦が終わった年である。

そう、そもそもの話だが、俺は一度死んだはずだった。どのようにして死んだのかもいつ死んだのかもはっきり覚えている。なのに再び目を覚ましたその時には、全くちがう人間として生まれ変わっていた。知識も記憶も、ましてや思い出すらそのまま残して、俺は草壁蒼太となっていたのだ。

理由も何もわからなかった。当然周りにそんなものはおらず、見知らぬ世界に体もうまく動かせぬ状態で放り込まれた気がした。一生孤独にこの秘密を抱えて生きていくのだと思っていた。−−今日までは。


目の前の物言わぬ瞳を見返す。16年、秘密を知るものには一度も出会えなかった。だったら、この男はいったい?

「あれ、藤咲先生と蒼太って知り合いなのかよ?」

無邪気な声が俺たちの間に割って入った。ハッとして友人たちを振り返れば、不思議そうではありながらもどことなく面白がった子供の顔が迎えてくれる。黒田が俺に手を伸ばし、なぁ、と言いながら肩を引き寄せた。

「藤咲先生みたいな得体の知れないやつとどういう知り合いだよ」

こそっと囁かれ、きょとんとする。

「それはどういう……?」

「だーかーら、藤咲先生って謎が多すぎるって有名なんだぜ。俺の兄貴の代からさぁ……」

ニヤニヤと黒田が笑いながら次の句を続けようとしたが、それは急に伸びてきた腕に阻まれた。それは俺のカバンを引っ張り込むと、強引に黒田から引き離し、自分の隣にまで連れていく。

すみません、と頭上から聞こえた声には一ミリも謝意が込められていない。

「お察しの通り僕と彼には少しつながりがありまして、彼をこれから借りても?」

「何を……」

強引さにムッと眉をひそめて抗議すれば、冷たい一瞥で黙らされる。文句を飲みこんな俺を目の前にして、黒田をはじめとする友人たちは何もすることができなかった。戸惑いながらも、わかったと了承せざるをえない。何せ今日からの付き合いなのだ。当然の反応だろう。

藤咲と俺に別れを告げ、彼らが去っていく。呆然と他の生徒たちに紛れ込むのを見ていた俺に、黒田だけが振り返った。連絡しろよという彼に俺は手を振り返した。

「さてと、いきましょうか。蒼太くん?」

悪魔然として俺を見下ろし笑みを浮かべた藤咲を前に、俺は憮然としてうなづいた。
116: スペースないのはiPadちゃんのせい:2017/4/30(日) 23:38:38 ID:NDGbZRwiy.


「お前一体何者だ」

生物準備室に連れ込まれた俺は、ドアに鍵がかけられた途端に詰め寄った。藤咲はこちらを振り返り、不愉快そうに片眉を持ち上げる。キザな仕草に苛立ちが募り、つい舌打ちが漏れた。

「ずいぶんな言い草だね、こっちは君の味方だっていうのに」

「何が味方だ。あんなふうに人前で……」

「いいじゃないか、どうせ誰にもわからない。これまでだって何度も頭のおかしいやつだと思われてきたんだろう?」

「貴様っ……!」

挑発に頬に怒りがさした。歯を剥いた俺を見て藤咲は肩をすくめる。すまなかったとあっけなく吐かれた謝罪を前に俺も勢いを削がれた。藤咲はそんな俺を認めると、狭い室内に無理やりはめ込まれたソファを指で刺す。荷物と埃の積もった場所だ。

「とりあえず座って落ち着くといい。君をここに連れ込んだのは、何も喧嘩がしたかったわけじゃないさ」

言われて意識がソファから藤咲に戻った。

「それじゃあ何を」と思わず尋ねる。確認だよ、とやつは素直に答え、「コーヒーでいいかい?」と的外れなことを尋ねた。


入れたてのインスタントコーヒーを抱えて、俺はソファに、藤咲はデスクチェアに腰を下ろした。どちらも古いのだろう。座った瞬間にギシリと軋む音がする。

そうして俺は対角線上に座った男を眺めた。すらりと細長い体躯を白衣で包んだ彼の顔は童顔で、正直年齢がわからない。二十代と言われればそう見えるし、四十間近と言われればそのようにも見えるのだから不思議なものだ。

ゆるりと癖についた茶に近い髪がまた彼を若く見せているもだろう。そしてその美しい顔立ちによく似合う紫の瞳。先ほどはスミレだと思ったが、こうして影を落とせばあやめの方が近いのかも知れない。

「僕の顔に何かついている?」

少しばかり困った顔で藤咲がこちらを見返した。いや、と答えて薄味のコーヒーをすする。

「得体が知れないと思っていただけだ。それより用はなんなんだ」

瞳の色のことなど、考えていたというのも恥ずかしい。追求を恐れて話題を変えれば藤咲は苦笑したのち、やや真面目な顔つきでマグカップをにらんだ。まるで俺から意図して目を背けているようだ。

「君は、自分が死んだその瞬間を覚えているね?」

一瞬、息が止まった。予期していたとはいえ、考えたくもなかったことだ。少しの沈黙の後におれは素直にうなづく。

「覚えている、忘れられるわけがない」

それもそうだ、と藤咲が相槌を打った。そうでなければ「二度目」を味わうことなどあり得ないとも。
117: あと二つほど:2017/4/30(日) 23:40:09 ID:NDGbZRwiy.

どうやら藤崎の方がこの件に関しては詳しいらしい。どういうことかと聞くより先に、藤咲が大きなため息をついた。

「もう二度と会えないかと思った……」

「は?」

意味のわからない言葉につい怪訝な声が出る。それで藤咲も、自分がどれだけ恥ずかしいことを言ったのか思い知ったのだろう。しばしの沈黙の後、頬を赤くして拗ねたような顔でこちらを見た。

「べ、別に君にってわけじゃない。話のわかる人にってことだよ。……この体になってから、初めてなんだ。話が通じる人に会えたのは。やっぱり精神医学が進化しすぎなのか、前世の記憶なんて言ったら心の病って思われるんだろうな……」

最後の方は哀愁を含んだ独り言になっていった。はぁ、と半端に口を開けたまま聞いていた俺は、ふと湧いた疑問に眉をしかめる。

「おい、お前は『この体になってから』と言ったよな。と、いうことは、もっと以前の記憶も持っているということか? 何度目なんだ貴様」

うろんだった藤咲の目がこちらに戻ってくる。しっかりと俺を見ると、解けるように笑って見せた。

「そりゃあまあ、秘密だよ」

得体の知れない男はそうのたまい、やはりこれは人ではないのでは、と俺を警戒させる。なんだろう、もののけを彷彿とさせる紫の瞳が、実に楽しそうに俺の目の前で笑みをかたどった。
118: これで最後!ありがとうございました:2017/4/30(日) 23:42:57 ID:NDGbZRwiy.

21グラムだよ、と真面目な調子に戻った藤咲が俺に告げた。21グラム? 聞き返した俺にやつはうなづいて見せる。

「君は自信家そうだから心配してないけど、君の体も頭も正常で、人と違うのはここだけ」藤咲は胸を手で抑えた。「魂だ」

人は死ぬとそれを失うと言う。通常であればそれは長い期間をかけて真っ白になるまで洗われて、そしてまた違う入れ物にと移される。つまり、体は死ねば朽ちるだけだが、魂は最初に生まれた時から同じ、と言うことらしかった。

「だから、たまにあるでしょう。行ったこともないのに懐かしい風景とか、初めて聞く歌のに歌えることとか。それは体じゃなくて魂が覚えているんだ。そしてそれは本来、残ったとしても聴覚とか視覚だとか五感による本能的なところだけのはず。でも、僕らは違う」

藤咲は俺をまっすぐに見つめて言った。

「こんなことはあっちゃいけないんだよ。でも僕らは忘れられない。それだけの記憶を持っている。それが魂に傷をつけてしまって、それが癒えるまでは……」

何度でも繰り返す。低い、藤咲の声に、彼であって彼ではない何かを垣間見た。細められた紫の瞳が、じっとりと質量のある闇を纏い出す。

死んだ時のことを覚えているか。

そう尋ねられた瞬間、その時をありありと思い出した。忘れられるわけがないのだ。いや、忘れてはいけないのだ。

「ま、そう言うわけでお互い協力しようよ。僕は君に教えることができるだろうし」

「ああ、そうだな」

我に返ってそう答えた。藤咲に協力して損をするようなことはなさそうだ。そう思った瞬間、細められた瞳に身震いする。軍人としての本能が、俺に警告を与えたがその目はすぐに緩められてしまった。

ところで、とまた違う雰囲気で藤咲は俺を見つめた。どことなく不貞腐れた表情が童顔に磨きをかけている。

「一応僕先生なのにさ、蒼太くんずいぶんな態度じゃない?」

「は? 何がだ」

「いや、何がじゃなくて、敬語じゃないし? むしろちょっと圧を感じるし?」

ふむ、と少しばかり悩む。そういえば普段は気をつけているが、今日は完全に気を抜いていて昔のままの口調になっていた。

「しようがないだろう、癖だ。そもそも貴様がその腑抜けた話し方を治す方が先ではないのか」

「む、……腑抜けた……。僕の方が年上なのにー……」

ぶつくさという藤咲を鼻先で笑う。

恨めしい顔をしていた藤咲だったが、やがて諦めて最後に俺の名前を尋ねた。今のものではない、かつてそう呼ばれていた俺の真の名前だ。

蘇芳、と答えた俺に、ふしぎと藤咲は懐かしげに目を細めた。帰ろうと腰を上げた俺を、藤咲の目が追いかけてくる。

「蘇芳准尉ーーその家には気をつけたほうがいい」

唐突に呟かれ、振り返った。そこにあったスミレ色の瞳は細められ、藤咲はゆっくりと舌なめずりをした。は? と言葉の意図がわからない俺の前で彼は悠然と笑う。やはり、得体の知れない彼を前に俺はなぜかくっきりと食われる予感を知った。


To be continued...(そんなわけない)
119: ◆WkDavSmAoY:2017/5/1(月) 21:14:12 ID:z3trMHcZ5.
 時間の止まったような家、そんな表現を僕は本でよく読んだ。しかし実際空き家に近寄って見ると古すぎて時間の停止を実感出来ない。恐らく僕が生まれるより前から在るものは、時に置いてきぼりを食らったかのような雰囲気がある。
 だから、家は生きているというのが、僕の持論だった。

「……──すごい」

 入り組んだ迷路のような、少しでも身動きを取れば苔だらけの塀にぶつかるほどの細い路地の中。視界が急激に広がった。
 現れたのは雑草の生い茂る空間に赤い屋根と白い壁。開け放たれた窓に揺れる白いカーテン。無遠慮に雑草を踏みしめ、窓から屋内を伺うと作りかけの料理に、先ほどまで子どもが遊んでいたのだろう点けっぱなしのテレビゲーム。おかしいのは、ただ人がいないだけ。ペットでさえ、いない。
 文字通り、忽然と生きているものが消滅したまま数年が過ぎ去ったかのような錯覚。


────
仕事で細い路地をうろついてるからこんな雰囲気の話が書きたかった
推敲してないからおかしいと思うけど流してくださいな
120: ◆WkDavSmAoY:2017/5/23(火) 08:21:03 ID:Supe.2Nvxg

「──、おいで」

 嗚呼。そんな声で私を呼ばないで。私を支配しないで。

「──」

 どうして。私を縛り付けないで。私にはもう、これ以上貴方に差し出すものなどない。

「──?」

 初めてを、燃えるような真っ赤な水を、真っ白な骨を、この身を、名前を意思を魂を存在そのものを捧げたの。
 だから、そんな哀しそうな音で私の名前を呼ばないで。

────
名前は一番短い呪だから名前を知られたら呪縛を受けるのではっていう
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名前:
sage:


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うpろだ
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