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愛憎の狭間でお煎餅を焼いたけど君には結局届かずに一週間寝込んだ話
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1: 名無しだぜひゃっほう!:2013/3/16(土) 23:56:00 ID:0JIt4J9r32


を、だれかしてくれません?


23: 名無しだぜひゃっほう!:2013/3/17(日) 11:28:25 ID:9limrKU9n6
あいつが悪いんだ

いつものように煎餅を焼きながら考えていた
今日は日曜日なので本来は稼ぎ時のはずなのだが、何故だかお客さんが全然来ない
いつもにも増して暗い気持ちで煎餅を焼いているせいで、この古びた屋台がますます不気味に感じるからだろう
そう思って無理やり笑顔をつくってみたが、結局お客さんは増えなかった

あいつが悪いんだ

まただ
また考えてしまう
一週間前のあの日のことを――
24: 名無しだぜひゃっほう!:2013/3/17(日) 11:28:58 ID:9limrKU9n6
あの日は雨だった
じめじめとした空気がまとわりつき、煎餅もすぐに湿気てしまう
最近売上が少なくなってきていたが、この日はダントツで過去最低記録を更新した
家に帰ると彼女がいた
「おかえり」
「ただいま」
「今日はどうだった?」
「ダメだった」
「そう…」
しばしの沈黙
俺は乱雑に靴を脱ぎ捨て部屋の中に入っていった
「もう煎餅屋なんてやめて普通に就職すれば?」
背中から声がした
彼女の冷たい声がチクリと胸を痛めつけた
無視して机の前に座った
上着を脱いでいると彼女が机のそばまで来て、俺を見下ろしていた
「聞いてる?煎餅屋、やめなよ」
「…」
「最近、全然稼げてないんでしょ」
「…」
「ねぇ、ちゃんと考えてよ。貯金もないんだよ?どうするつもりなの?」
「煩い」
彼女の眉間にしわが寄った
はぁ、と大きな声で当てつけがましくため息を吐いた彼女は椅子にかかっていた自分のコートを引ったくり、ずんずんと玄関の方に歩いて行った
「おい、どこ行くんだよ」
俺の質問に"煩い黙れ"とでも答えるかのように、バタンッと大きな音を出してドアが閉まった
それから彼女とは連絡がとれなくなった
25: 名無しだぜひゃっほう!:2013/3/17(日) 11:29:34 ID:9limrKU9n6
彼女が悪いんだ

だってそうだろ?
昔はあいつも煎餅が好きで、家でもよく煎餅を焼かされたものだ
焼きたての煎餅を頬張りながら世界で一番可愛い笑顔で美味しいと言っていた
なのにいつからだか彼女は売上ばかりを気にするようになった
あいつがお金お金言うのが悪いんだ
世の中金じゃないだろうに

いつも通り、残った煎餅をゴミ箱に突っ込んでから家に帰った
廃棄煎餅が出た最初の頃は心が痛んだものだが、今ではなんとも思わない
誰にも必要とされなかったから捨てられた、それだけのことだ

次の日も煎餅を焼いた
また売れなかった
あいつのせいだ
彼女が俺に冷たく接するから気持ちが沈んで煎餅が売れない
全部彼女が悪いんだ
ふと手もとに目をやると煎餅が焦げていた
生ゴミ入れに捨てた
26: 名無しだぜひゃっほう!:2013/3/17(日) 11:30:31 ID:9limrKU9n6
次の日も煎餅を焼いた
日に日に焦げる煎餅の数が増えていった
彼女のことばかり考えてしまい、煎餅に集中出来ないのだ

あいつが悪いんだ

でも、本当に?
昔はあんなに楽しかったじゃないか
彼女と一緒に食べた煎餅はこの世で一番うまかった

ああ、俺はまだ彼女が好きなのだ
だからこそ以前のように優しくない彼女に腹が立つ

前を向いた時、遠くに彼女がいた
遠すぎて顔も見えないがあれは彼女だと確信した
なのに彼女はそのまま去っていった
ちらりともこちらを見ずに――
「おい、てめぇっ!!」
一気に怒りがわいてきた
俺はトングで煎餅を掴んだまま走りだした
27: 名無しだぜひゃっほう!:2013/3/17(日) 11:30:55 ID:9limrKU9n6
あいつが悪いんだ
あいつが悪いんだ
あいつが悪いんだ

俺はお前が好きなのにお前は金が好きだから

あいつが悪いんだ
あいつが悪いんだ
あいつが悪いんだ

お前が金金煩いから俺の煎餅も売れないんだ

本当に?
28: 名無しだぜひゃっほう!:2013/3/17(日) 11:31:22 ID:9limrKU9n6
彼女の後を追っていたはずなのにいつの間にか見失っていた
怒りが収まらない
俺は彼女の家に向かった

彼女の家のチャイムを押した
ピーンポーン
反応はなかった
俺はドアを開けた
中には誰もいなかった
いや、中には何もなかった
一緒にご飯を食べた机も、一緒に笑いながら見ていたテレビも、一緒に寝ていたベッドも、何一つ残ってはいなかった

トングから煎餅が落ちた
29: 名無しだぜひゃっほう!:2013/3/17(日) 11:31:56 ID:9limrKU9n6
それから俺は一週間寝込んだ
何も考えたくなかった
煎餅を焼くのもやめた
本当は俺が悪かったんだ

ピンポーン
チャイムがなった
ボサボサのままドアを開けると煎餅を持ったあいつがいた
ああ、彼女が煎餅を持って帰ってきた――
神様、ありがとう
これからは彼女も煎餅も大事にするよ

俺がおかえり、と言う前に彼女が言った

「餞別の煎餅っていう駄洒落のつもり?くそつまんない。もう関わらないで」




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