1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
747: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 21:57:32 ID:LvDIsWFtb.
ラキア「申し訳ない。命の恩人である貴方を危うく死地へ導いてしまうところでした」
カロル「いいよ!」アッケラカン
団長「あれだけされたんだぞ!さすがに少しは気にしろ!?」
ラキア「どうか俺に罰をお与えください」
カロル「バツ?」
団長「何を言っとるんだ、お前は…?」
ラキア「貴方は黙っていてください」ジロッ
団長「な、なんだと…さっきから父親に対して!?」
ラキア「悪は許せない性分なのです。たとえそれが自分自身であっても…」
団長「……?」
ラキア「俺は貴方とは違う。悪を見過ごして正義を曲げるような行いはしない…!」
団長「ら、ラキア……」
カロル「仲悪いの…?」コショコショ
団長「そ、そういう訳ではないが…」マゴマゴ
カロル「……」ジッ
ラキア「救い主様!俺に償う機会を…!」
カロル「…うーん」
748: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:02:28 ID:LvDIsWFtb.
カロル「じゃあ団長さんと仲直りして!」
ラキア「は…?」
団長「な、なにを言っとるんだ…?」
カロル「すぐにじゃなくていいよ。少しずつでいいから、ちゃんと団長さんを見てあげて?」
ラキア「……?」
カロル「きっと良いところ、たくさん見えてくるよ!
だってボク、団長さんの良いところ、いっぱい知ってるもん?」ニコッ
団長「……!」
ラキア「…み、見ようにも」
カロル「?」
ラキア「この人は…俺の事なんか見ちゃいない!出世の為に国王のそばを取り巻くのに必死なんですよ!」キッ
団長「……」
ラキア「家族も職務も人任せにする無責任な人だ!あんたは!?」
団長「(…何を言われても仕方ない。実際、家よりも城におった期間の方が長いしな)」
団長「(頭を下げ、許しを乞うたところで二度と溝は埋まるまい。時を戻せでもしない限りは……)」
749: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:03:46 ID:QXDk5G3aL6
ラキア「息子にここまで悪し様に罵られて何も言い返せませんか?当然でしょうがね?」ケッ
団長「マドラスを追っている最中だ。どうでもいい話は後にしろ」
ラキア「…あぁそうですか?何も言い返せず一刻も早く逃げ出したくてひねり出した言い訳がそれなんですね?」
団長「小童、一旦屋敷に戻るぞ」
カロル「……」
ラキア「どうです?救い主様?この人はね、そういう人なんですよ!」
団長「……」
ラキア「そうだろう?父上よ!」
カロル「うーん…そうかなー?」
ラキア「?」
カロル「ここに来る途中、ずっとお話を聞かされたって憲兵の人たちが言ってたよ?」
団長「なっ…!?」ギョギョッ
カロル「忙しくて会えなかったから心配してたんだって?ね?団長さん?」
団長「う、うぅん…!ぅおっほん!」ゲフンゲフン
ラキア「い、今さらになって……」
カロル「それにラキアさんが捕まったって聞いて、すぐに来てくれたじゃない!」ニコニコ
ラキア「そ、それは…」
カロル「団長さんはラキアさんのこと大事に思ってるもの。そうでしょ?」
団長「う、うぅん…?」ポリポリ
カロル「ふふ…!恥ずかしがっちゃダメ?言ってみないと伝わらないよ!」ポンポン
団長「(くっ…!どいつだ!小童に余計な事を吹き込んだのは…!?)」カァァ
750: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:05:29 ID:QXDk5G3aL6
団長「…ら、ラキア」
ラキア「な、なんです…?」
団長「……!」
カロル「ほら、団長さん!」
団長「う、うるさい!」カァァ
ラキア「……」オロオロ
団長「っ…!」ググッ
ラキア「ち、父上……」
団長「…さ、先ほどの太刀合わせで感じたが振り下ろす瞬間の踏み込みが若干甘かったぞ!?」
ラキア「はぁ…?」イラッ
団長「腕力は申し分ないが体さばきにも多少の難があった。
重心を一定にし、構える際は深く腰を落とすよう心掛けろ?」
ラキア「な、なにぃ…!?」イライラ
団長「それにだな…振りかぶる時、狙い目ばかりに集中し過ぎだ。
相手の動きを見ないから無様に剣を手放す事になるのだ。無様にな!」
ラキア「ぐっ…くくく…!」ワナワナ
団長「父を越えたくばなお一層、稽古を積むんだな!今のお前などワシから見ればひよっ子同然だ!」
ラキア「な・ん・だ・とぉおお〜〜〜…!!」ギリギリ
団長「己の剣に自信が付いたら、いつでも声を掛けろ?相手になってやる?」
ラキア「の、望むところだぁっ!!絶対あんたを越えてやるからな!?」
団長「あぁ、楽しみにしているぞ」ニヤリ
ラキア「くそっ…!こうなったら早速、兵営に戻って訓練再開だ!」ダッ
カロル「あっ…!」
ダダダッ………
団長「……」
751: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:08:59 ID:QXDk5G3aL6
カロル「…いいの?」
団長「うむ。あれでいい。父とは越えるべき壁…馴れ合いなど不要だ」
カロル「そっか…」
団長「…さぁ屋敷に戻ろう。まずは君の安全が最優先だ」
カロル「あ…!」
団長「む?」
ラキア「」ダダダッ キィィィィ!
カロル「わっ!?」
団長「ど、どうした?まだ何かあるのか?」
ラキア「はぐらかされるところでした!救い主様!俺に罰を!!」ズイッ
カロル「え?だ、団長さんと仲直り……」
ラキア「しません!!他の罰を!?」ズズイッ
カロル「ほ、他のって言われても…」オロオロ
団長「ではマドラスが逃げた先に心当たりはないか?」
ラキア「なんであんたなんかに!?」
団長「悪は見過ごせんのだろう?」
ラキア「うっ…!」
カロル「じゃ、じゃあそれがバツね!教えてくれたら全部なしでいいよ?」アセアセ
ラキア「そ、そうおっしゃるなら…」
カロル「」ホッ
ラキア「お、おそらくですが…フィクサー軍長が関わってます」
団長「…先ほども言っていたな」
ラキア「ちょ、直接軍長から紹介されたのではなく奴が王印の押された密書を手にフィクサー軍長の名を出してきただけですが……」
団長「なるほどな。だいたい把握出来た」
ラキア「え…い、今の情報だけで!?」
団長「ご苦労だったな。後はこっちでやっておく。お前は戻っていいぞ」
752: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:12:35 ID:QXDk5G3aL6
ラキア「お、お待ちください!もしやこの件には何か大きな巨悪が絡んでいるのでは!?」
団長「大きな巨悪…?お前はまず剣より座学を身に付けろ!バカ者!?」
ラキア「余計なお世話だ!父上では話にならない!救い主様!?」ガシッ
カロル「は、はい!?」ビクッ
ラキア「もし何かとてつもない陰謀に巻き込まれているのでしたら俺もお力添えさせてくれませんか!?」
カロル「……!」チラッ
団長「ならん。邪魔だ。帰って稽古と勉強に励め」
ラキア「父上は黙っていてください!?俺は救い主様に聞いてるんだ!?」カッ
カロル「な、なんで…そう思うの?」オロオロ
ラキア「よくよく考えてみれば軍の幹部が救い主様を強引な手段まで用いて狙うなんて…!
しかも同じ君主に仕える父上から奪おうとしている…つまり内部抗争!
これは大きな巨悪の匂いがプンプンします!是非、俺も加えてください!!」ハァハァ
カロル「う、うーん…」オロオロ
団長「…お、お前な?勝手に想像を広げすぎだ?絵本の世界ではないのだぞ?」
ラキア「フッフッフ…何を隠そう俺の愛読書は『正義の美学』『正義とは何か』『正義を貫く100の法則』『正義の味方・ヒーローマンシリーズ全五巻』etc...なのですよ!!」フフンッ
団長「(し、しばらく見ぬ間に息子がおかしな方向に……)」
ラキア「どんな困難も乗り越え、一途に使命をまっとうし、立ちはだかる悪を砕く勇猛果敢な正義!!正義!!正義!!
いつしか英雄と呼ばれ、人々に讃えられ、それでもなお傲らず正義に生きる男!そんな人に俺はなりたい!!」ウオオオオオ
ザワザワ ジロジロ ヒソヒソ
団長「お、おい…通りすぎる民衆の冷めた眼差しが刺さらんのか?一度、落ち着け?」アセアセ
ラキア「俺は間違ってますか!救い主様!?」バッ
カロル「よくわかんないけど夢があるのって素敵だと思うよ?」ニコニコ
ラキア「ほら、聞きましたか!父上!?」
団長「やはりお前もワシらと屋敷に戻れ。今夜は家族会議だ」
ラキア「同行させてもらえるんですね!絶対、お役に立ってみせます!共に悪を倒しましょう!!」パシッ
カロル「誰も倒したりしないけど、よろしくね!」パシッ
団長「はぁ…親が目を離すとこうなってしまうのか。やはりもっと家庭を大事にするべきだったな」ゲンナリ
753: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:27:10 ID:LvDIsWFtb.
〜〜〜夕方〜〜〜
―――団長の屋敷(居間)―――
ラキア「母上!おかわりを!!」バッ
団長の妻「はいはい、おかずも足さなきゃね。急に帰ってきたと思ったら、よく食べるんだから?」カチャッ スタスタ
ラキア「粗食では強くなれませんからね!」ガツガツ
母「たくましい息子さんですわね?」ニコニコ
ラキア「た、たくましいだなんて…俺なんかまだまだですよ!」テレテレ
母「そんなことありませんよ?体つきも立派ですし?」ニコニコ
ラキア「(救い主様の母君は若くてキレイだなぁ…。瞳の色なんか気にならない…。
普段むさ苦しい兵営で過ごしてるからか、いろいろと新鮮な気分だ)」ドキドキ
団長の妻「お父さんは一緒ではなかったの?」
ラキア「父上は本部に立ち寄って所用を済ませると言ってました」
団長の妻「ふーん…はい?」コトンッ
ラキア「かたじけない!」ガツガツ
カロル「いいなー?ボクもラキアさんみたいにおっきくなりたい…」ジーッ
ラキア「ハハハ!そんな?救い主様はまだ幼いですから!これからですよ!」
団長の妻「そうそう?今にお母さんを越えるくらい伸びていきますよ?」
カロル「そうかなー…」ウーン
母「それはどうかしら…」
カロル「?」
母「あたしたちホビットの成長は10歳くらいで止まっちゃうから…老いてはいくけど身長は伸びないかもしれないわ?」
カロル「え……」ガーン
ラキア「救い主様はおいくつなのですか?」モグモグ
カロル「…じゅ、16歳」モジモジ
ラキア「えっ」
団長の妻「えっ」
754: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:29:37 ID:QXDk5G3aL6
カロル「どうしよう…。ボクちっちゃいままなの?」ウルッ
母「あ、でも坊やには夫の血も入ってるから分からないわよ?
たしか人間は20歳まで成長するって聞いたし…」
カロル「じゃあまだ伸びるのかな!」パァァ
母「ごはんを残さず食べて、早く寝れば伸びるかもしれないわね」ニコッ
カロル「ボクいっぱいおかわりするよ!ちゃんと早く寝るもん!」
母「そうね?それをずーっと続けなくちゃダメよ?」ニコニコ
カロル「うん!続ける!おばさま!ボクもおかわりしていいですか?」
団長の妻「はいはい?たんと召し上がってくださいね?」ニコニコ
カロル「えへへ、ありがとう!」ニコッ
団長の妻「本当に無邪気でいい子ですね?」ニコニコ
母「まぁ…そんな?」ニコニコ
ラキア「(お、俺と二つ違い…10歳以上離れてるのかと思ってた)」
団長の妻「(ま、マリーさんっていくつなんでしょう…?ずっと20台だと思って話してたけど……)」
755: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:33:27 ID:QXDk5G3aL6
〜〜〜深夜〜〜〜
ガチャッ
団長「帰ったぞ」
団長の妻「お仕事、ご苦労様?遅かったですね?」
団長「本部に戻り、一連の後始末をしていてな。後は部下達に任せてあるが…」
団長の妻「そうでしたか。上着、預かりましょうか?」
団長「おう、すまんな。お前だけか?」ファサッ
団長の妻「ラキアもマリーさん達もぐっすり眠ってますよ?」パシッ
団長「そうか…。まぁそうだろうな」
団長の妻「救い主様をお連れしてたみたいですけど何かあったんですか?」
団長「大したことではない」
団長の妻「……。そういえばラキアがあなたに同行出来ると張り切ってましたよ?」
団長「それなんだが…いつ頃からあいつはあんな性格になってしまったのだ?」
団長の妻「はい…?」
団長「いや、正義がどうこうとのたまってな。
子供染みたというか度が過ぎているというか…少々変わった方向に進んではいないか?」
団長の妻「あなたに似たんじゃないですか?」クスッ
団長「ば、バカを言え?ワシはあんなではなかっただろうが?」
団長の妻「そっくりですよ。若い頃のあなたと?」
団長「冗談もほどほどにしろ…!?」
団長の妻「あなたもさんざん語ってくださったじゃありませんか?」
団長「な、なにぃ…!?」
団長の妻「若さ任せに途方もない夢を恥ずかしげもなく口にして私から見たら全く一緒?」
団長「む、むぅ…!」
756: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:38:05 ID:LvDIsWFtb.
団長の妻「たとえば20年以上前にまだ見習い同然だったあなたが手紙で城下の公園に私を呼び出して……」
団長「う、うぅおっふぉん!!!」ゲフンゲフン
団長の妻「なに照れてるんですか?こんな歳にもなって?」
団長「こ、こんな歳だからだ!その先は言うな…!?」アセアセ
団長の妻「そんなに恥ずかしがらなくても?情熱的で素敵な告白……」
団長「ぬおーっ!!だから言うな!?」
団長の妻「…ふふ」ニコッ
団長「まったく…」
団長の妻「あの子、本気であなたを尊敬してるんですよ?」
団長「? そうなのか?」
団長の妻「えぇ、子供の頃から『父上みたいな正義の味方になる』と口癖のように?」
団長「そ、それはいくつまでの話だ?」
団長の妻「小さい時からずーっと…あぁでも今は正義の味方じゃなくて正義の使者になると言ってますよ?」
団長「やめさせんか!恥ずかしい!」
団長の妻「心配しなくても大丈夫ですよ。あの子はあの子で決めた道がありますから…」
団長「そ、そうは言うがな…!?」
団長の妻「私もあなたの夢を支えると決意するまで時間が掛かりましたよ?正義の王国兵様?」クスッ
団長「うっ…」
団長の妻「背中を押してあげましょう?希望を閉ざすにはあの子はまだ若すぎるわ?」ニコッ
団長「……勝手にしろ!」ムスッ
757: 爆発的に投下します! ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:28:41 ID:kh6s4Xhrmc
―――王都領(王国軍の砦)―――
バッ
兵長「さぁ!赤の旗が上がったぞ!攻の陣を展開せよ!!」
ザザザザザザッ
バッ
兵長「黄色の旗だ!全軍突撃!!」
ダダダダダダダダッ
ブォォオオオン
兵長「ホラ貝の音色を聴き分けろ!!」
ザザザザザザッ
兵長「そうだ!一時撤退の合図だ!」
バッ
兵長「ふむ!緑の旗!守の陣!!」
ガガガガガガッ
モクモク モクモク
兵長「軍事演習、終了の狼煙だ!!一同、初期位置に整列!!」
ワラワラ ワラワラ
758: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:30:59 ID:SfPoNrhlRE
兵長「いかがですか!両軍長!?我が兵の統率力は!?」
フィクサー「良い見晴らしだ」
兵長「は…?見晴らしでございますか?」
フィクサー「砦の最上階に部屋を設けた甲斐がある。兵の動きがよく見渡せた?」
兵長「…おほん!ドレッド軍長はどのように思われましたか?」
ドレッド「あれで兵営上がりの見習い軍人か。号令も把握し、命令にも忠実だ?基礎はバッチリだな?」
兵長「さすが目が肥えてらっしゃる!」
フィクサー「行儀の良さだけでは戦場には立てんよ」
兵長「…おほん!訓練に訓練を重ね、完成された我が軍の指揮系統は兵を預かり、統率する指揮官によって著しく形を変える!
王国軍が誇る両軍長の特性に応じ、自由自在に兵法を扱えるのです!」
フィクサー「ほうほう、なるほど?」
兵長「両軍長にはそれぞれ5000の直属兵が備わっておられますが…。
このわたくしめが育成してまいりました2万の兵を加えて新たに一つの部隊を編成していただきます!」
ドレッド「政務官殿も豪勢に振る舞ってくれたもんだ?
こりゃ責任重大ですな?フィクサー総軍長殿?」
兵長「まこと!!勝利は総軍長殿に掛かっておりますぞ!?」
フィクサー「敗れれば責任も何もないがね」
759: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:31:23 ID:kh6s4Xhrmc
ドレッド「なんせ終わらない争い以降、全軍総出で戦闘準備なんて初の試みだ?
その全軍総指揮に任命されたとありゃこの上ない名誉だな。勲章がいくつあっても足りんわ?」
兵長「とうとう我が王国軍の力を発揮する時が訪れたのです!勝利を期待しておりますぞ!」
フィクサー「といってもな…あれらは長年お飾り同然だった訳だが血を見た事はあるのかね?」
兵長「ご安心を?和解する前はホビットで経験を高めておりました!」
ドレッド「ホビットねぇ?今さらだが哀れだよなぁ、あいつらも?和解するまでに何匹刈り取ってきたか?」
フィクサー「とうに過ぎた事だ。気に病む必要はなかろうよ?」
ドレッド「まぁな…。大仰に軍と名乗っても所詮はお役人に飼われる馬同然だ。手綱を引かれりゃそれまで…ってな」
フィクサー「怖じ気付いたか?」
ドレッド「まさか?むしろその逆だよ?」
フィクサー「……」
ドレッド「勝利を掴めば後世に名を残す英雄ってよ!俺の名が世界に轟いちゃうぜ?」
フィクサー「さぞ気持ちいいだろうな?勝者の眺めともなれば…?」
ドレッド「はッ!何者かになりたくて軍でのし上がってきたんだ?戦わなくちゃ意味がないってな?」
フィクサー「それもそうだ?西の国を生け贄に勝ち上がってやろうじゃないか?」ニヤリ
ドレッド「俄然みなぎってきたぜ…!」グッ
兵長「しかし…それは総指揮を執る貴方様に掛かっておりますぞ?」
フィクサー「まぁ任せておけ?悪いようにはせんよ?」
760: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:33:35 ID:SfPoNrhlRE
ガチャッ
騎兵1「失礼!!演習の最中に大変申し訳ございません!!」
兵長「なんだ、貴様!?」
フィクサー「わたしの部下だ」
兵長「そ、それは失礼しました!」アセッ
騎兵1「例の男が軍長を訪ねて参りまして…只今、尋問室に通してございます!!」
フィクサー「分かった」スクッ
ドレッド「ん?まだまだ打ち合わせにゃならん事は山ほどあるだろ?そんな大事な客か?」
フィクサー「先に進めてくれていい。すぐに済む用事だ」スタスタ
ドレッド「おいおい、あんたは総軍長なんだ。いきなり足並み乱されちゃたまらんぜ?」
フィクサー「…それは失礼?だが戦場に立てば貴方もわたしの右腕として責務を果たす立場だ。
わたしの不在時にろくろく兵を動かせないような指示待ち人間では困る?」
ドレッド「ぐっ…!」ムッ
フィクサー「後はよろしく?」ニヤッ
騎兵1「ではご案内を!!」スタスタ
スタスタ スタスタ ガチャッ バタンッ
ドレッド「ちっ…!なに考えてんだか?食えねぇ男だな?」
兵長「…このままフィクサー殿に任せておいてなんとかなりましょうか?」
ドレッド「…さぁね?政務官殿に聞いてくれ?」
兵長「私は少々、不安に思えますが…」
ドレッド「噂じゃ大した軍師らしいが…無能者だったら引きずり下ろして俺が指揮権を握ってやるさ!」
兵長「おぉ!なんと頼もしきお言葉!!」
ドレッド「いざともなれば覚悟はしとけよ…?総軍長さんよ?ククッ!」ニヤリ
761: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:36:59 ID:kh6s4Xhrmc
―――王国軍の砦(尋問室)―――
マドラス「あんな化け物、聞いてねぇぞ!?」ダンッ
フィクサー「無駄に時間を費やすほど暇をもて余してはいない。結果のみを速やかに報告しろ」
マドラス「ちぃっ…!」
フィクサー「どうした?報告だ?」
マドラス「失敗だ!文句あっか!?」
フィクサー「…失敗?」
マドラス「あんな化け物だとは聞かされてなかったぞ!いっぺん雇い主に会わせろや!?」
フィクサー「」パチンッ
バァンッ! ザザザッ
マドラス「うおぉ!?」ビクッ
副官「軍長、後は我々にお任せを?」ジャキッ
騎兵's「」ジャキッ
マドラス「お、お、おい?待てよ?なんだってんだ!?なぁ!?」ビクビク
フィクサー「床を汚すなよ?」スクッ
副官「承知しました」ジリッ
マドラス「おい!?」ガタッ
フィクサー「」スタスタ ガチャッ
マドラス「おいぃぃ!!」
バタンッ
副官「取り押さえろ?」
騎兵's「ははぁっ!!」ダッ
762: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:39:11 ID:SfPoNrhlRE
バババッ ガシッ ガシッ ガシッ ガシッ
マドラス「なにすんだよ!?離しゃがれ!?」ググッ
副官「ちょうど訓練用に欲しかったんだ。死んでもいい人間かホビットが?」
マドラス「ンだとぉ…!?」
副官「名誉な事だぞ?国に命を捧げられるのだから?」
マドラス「い、いのっ…ち…!?」ブルッ
副官「兵営上がりのお坊っちゃん達は、まだあまり本番に馴染みが無くてね?」
マドラス「て、てめぇ…まさかっ…!?」ハッ
副官「生の鮮血、肉感、断末魔…いぃ〜い訓練になるぞぉ〜?」ニタァァァ
マドラス「う、うぅ嘘だろぉ…?嘘だって言ってくれやぁ!?なぁ!?」ブルブル
副官「安心したまえ?なにも君一人で新兵らの刃を負えとは言わない?」
マドラス「っ…!?」
副官「こないだ大量にホビットを収穫してねぇ〜?
もちろん訓練に使用するんだが…君のようにみすぼらしく土臭い乞食にはお似合いじゃないだろうか…?」
マドラス「はぁ…!?」
副官「心中する相手としては…だよ?土臭いという辺りがしっくりクる?」ニタニタ
マドラス「ば、ばばば…ばバッカヤロー…!冗談じゃねぇぞ…!?」ガチガチ
副官「連れていけ?早速、訓練を実施しようじゃないか?」クイッ
騎兵's「ははぁっ!!」グイッ
マドラス「うああぁぁああ!!!やめっ…やめろぉ!?あぁああぁあああ!!!」ジタバタ
763: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:41:14 ID:SfPoNrhlRE
―――城下町(団長の屋敷)―――
仕立屋「ちょっと寸法測りますからね、バンザーイしてください?」
カロル「はーい!」バンザイ
仕立屋「はい、どーも。じゃあ次は腰から足首までの長さになりますよー」スッスッ
母「い、いいんですか…?あたし達の為にわざわざ仕立屋さんまで呼んでいただいて…?」
団長「ハッハッハ!いや、ワシもうっかりしておりましてな?
この前は気にもせなんだが城に入るのに薄手の布服一枚では…やはり少々、問題がある?」ポリポリ
団長の妻「かといってウチにお二人の背丈に合った礼服もないですし…。
せっかくですからこれを機会に新調してしまいましょうと相談したんですよ?」ニコニコ
母「ご、ご迷惑おかけしてすみません」ペコペコ
団長「いやいや、これくらいはさせてくれ?小童を含め、君たちホビットには償い切れぬほど迷惑を働いた?」
母「そ、そんな…ルフィアスさんが悪いわけでは?」
団長の妻「遠慮なさらなくていいんですよ?」ニコニコ
母「で、ですが…」オロオロ
仕立屋「はい、奥様も寸法計りましょうか」スッ
母「お、奥様だなんて…?」カァァ
カロル「マルクはどんなお洋服になるのかな?」ワクワク
マルク「わんっ!!」シッポフリフリ
仕立屋「え?ワンちゃんはちょっと…」
カロル「マルクはダメなの?」
母「だ、ダメに決まってるでしょ!」
仕立屋「い、犬のは扱ってないんですよねぇ?」ポリポリ
カロル「そうなんだ…」シュン
母「マルクはいい子でお留守番出来るものねー?」ナデリ
マルク「きゃんっ!?」ガガーン
764: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:42:57 ID:SfPoNrhlRE
〜〜〜夕方〜〜〜
団長「いや、実に喜ばしい!もうすぐ陛下が帰還なされるのだぞ!」ニコニコ
団長の妻「あなたったら昨夜も同じ話をなさってましたよ?」
団長「お、そうだったか?これは失敬!」ハハハハハ
カロル「ボクも王子さまに会えるの楽しみ!」ニコニコ
団長「あぁ、ワシもようやっと肩の荷が降りるというものだ!
陛下は君との再会を何よりも待ち望んでおられたからな!」
カロル「そ、そうなんだ…!」テレッ
母「よかったわね?」ニコッ
カロル「えへへ…うん!」テレテレッ
ラキア「…ふん、国王の帰還がそんなにめでたいか?」モグモグ
団長「ぬ!?」
ラキア「あーあーいいですね、国王様は?誰からも気にかけられて?」ヘッ
団長「何を子供みたいに拗ねとるんだ!?陛下はお前にとっても未来の君主となるお方であろうが!?」
ラキア「えーえーせいぜいゴマ摩ってくださいよ?出世が早まりますからねー?」
団長「このっ…!」ガタッ
カロル「だ、団長さんっ」アワアワ
母「ぼ、暴力はいけないわ!?」オロオロ
ダァンッ!!!
団長&カロル&母&ラキア「」ビクッ
団長の妻「…食事中ですよ?」ジロッ
シーン
765: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:44:59 ID:kh6s4Xhrmc
団長の妻「私の作った食事は喧嘩したくなるほど不味いと?」
団長「あ、いや…」オロオロ
ラキア「美味しい…です」オロオロ
団長の妻「なら静かに召し上がって?料理が冷めてしまわれますわよ?」パクッ
団長&ラキア「はい…」ショボン
団長の妻「みっともなくてごめんなさいね?おかわりはいかが?」ニコッ
カロル「へ、へいきですっ!」アセアセ
母「あ、あたしもお腹いっぱいで?」ヒクヒク
団長の妻「そうですか」ニコニコ
団長「…そ、そうだ!一応、こちらで必要な物は準備したが…二人はなにか個人的に支度しておきたい事などはあるか?」
母「い、いえいえ!そんなご面倒はかけられませんから…」アセアセ
カロル「あ!」ピコンッ
団長「なにかあるのか?」
カロル「アイスキャンディー!」
団長「アイスキャンディー?」
カロル「うん!王子さまとね、約束したの。また一緒に食べようって?」
団長「陛下との約束…!すぐに用意せねば!?」ガタッ
カロル「い、今じゃなくていいよ?早く買っても溶けちゃうもの?」アセアセ
団長「それもそうだな…。では城に入る直前に購入しておこう」
カロル「ありがとう!」ニコッ
766: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:46:42 ID:kh6s4Xhrmc
ラキア「……」パクッ
団長の妻「ラキアはお父さん達と同行するの?」
ラキア「そうしたいところですが…」
団長「なんだ、来ないのか?てっきり同行させろとわめき散らすかと思っていたが?」
ラキア「兵営の方からお達しがありましてね。
訓練生も王国軍の砦に集まり、軍事演習に参加するようにと?」
団長「…なぜまだ未熟な訓練生まで?」
ラキア「分かりません。ですがこれは願ってもない絶好の機会です!
これを機に己の見聞を広げ、兵としての資質を磨いてまいる所存!!」
団長「まぁ好きにするがいい?近衛のワシには無関係だしな?」
ラキア「くっ…!言われなくとも好きにしますよ!」イラッ
カロル「がんばってね!ラキアさん?」ニコニコ
ラキア「ありがとうございます。救い主様!」ニコッ
団長「(…軍事演習、か。どうせ見学止まりだろうが良い経験になるだろう)」パクッ
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