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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


739: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 22:58:44 ID:zzTcWJdqRE
ガチャッ バァンッ!

マドラス「ン…?」

団長「〜〜〜!?」ワナワナ

マドラス「なんだよ、もう息子をぶっ殺したのか?仕事が早いなぁ〜?正義の憲兵様はよぉ〜?」

カロル「ひゅっ…ひゅっ…」グッタリ

団長「き…さま!小童にな、何を……」ガチガチ

マドラス「何をも何もまだ始まってすらねーだろうが?な……」

ジャッ ヒュンッ ズバババババッ

手下's「」プシャアアアアアアア

マドラス「あ?」キョトン

バタバタバタバタッ

団長「…ワシの不始末だ!」ギリッ

マドラス「ン?ン?」キョロキョロ

団長「彼が傷付くという事は…すなわち陛下を傷付ける大罪だ。
切羽詰まった状況だったとはいえ、危険だと分かっておりながら、ここに連れてきてしまったのはワシだ」

マドラス「…やるねぇ〜?噂は伊達じゃねぇ…ってか?」スラッ

団長「そもそも貴様のような悪党に息子が付け入られたのも言うなればワシの教育不足に他ならん!」

マドラス「だが…俺も南の賞金王と呼ばれた男だ。死線は何度も越えてきた?」ジャキッ

団長「この件を終えたらありのままを陛下に報告するとしよう。場合によっては…自決も覚悟せねばな」フッ

マドラス「昨日今日と連戦を強いられたんじゃ疲労困憊だろうが?なぁ?」ジリッ

団長「しかし貴様だけは許さん…!存分にやらせてもらうぞ…!?」ジャキッ

マドラス「ちっ…会話が噛み合わねぇなぁ?ボケてんのか?」

団長「かかってくるがいい…!」ジリッ

マドラス「…おっさんはもう休んでなぁ!?」ダッ

団長「抜かせっ!!」ダッ
740: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:06:36 ID:zSdvgd11Jg
ガキィッ ギャリンッ キンッ キキンッ

団長「(や、やはり疲労は隠せんな…!平常時であれば、この程度の使い手など…クッ!)」シュバッ

マドラス「(この親父…手強いな!年寄りの冷や水も大概にしろや!)」ギィンッ

団長「せあぁっ!!」ブォンッ

マドラス「けっ…こんな重てぇ一撃、いちいち止めてられるか!」サッ

団長「ぬっ!?」バッ

マドラス「しゃらっ!!」ビュンッ

スカッ

団長「ふん!素振りか?稽古熱心なことだ?」ニヤリ

マドラス「へっ…片目はやりづれーな…!距離感も外すわ、視界が狭いわ……」ストッ

団長「ぬああああ!!」ダッ

ピシャッ ズルッ

団長「なっ…!?」ドタッ

マドラス「お!床の血溜まりで滑ったか?マヌケ親父が!?」ニタニタ

団長「(ま、まずい!)」

マドラス「もらったぁぁぁあああ!!!」バッ

ガッ コケッ

マドラス「ぁぁあわがふっ!?」ドサッ

団長「ぐおっ!?ど、どけっ!?」ズシッ

マドラス「し、死体に足引っ掛けちまったい!クソが…だがこのまま乗っかって串刺しに……」スッ

ピトッ

マドラス「うおっ!?」ビクッ

団長「(なんだ…!?まぁいい!奴が飛び退いた隙に体勢を整える!)」ムクッ

マドラス「だ、誰だ!俺の右目を塞ぎやがった……」バッ

カロル「」チョコン

マドラス「のは……ン!?」ギョギョッ
741: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:14:30 ID:zzTcWJdqRE
マドラス「は!?お前、両手両足へし折ってやったよな!?なぁ!?」チンプンカンプン

カロル「うん。痛かった!」コクッ

マドラス「……は?なんだ、これ?意味が分からねーわ?夢か?」ポカーン

カロル「夢じゃないよ?ホント?」

マドラス「じゃあなんでてめぇはピンピン……」

団長「だぁああっ!!」ブォンッ

バシュッ

マドラス「し…でっ……!?」ドバッ

団長「トドメだ!!」バッ

カロル「待って!」バッ

団長「小童…どけ!?そいつを許す必要はなかろうが!?」

カロル「…ボクの為にしてくれてるならいいよ?もうやめよ?」ジーッ

団長「き、君は…あれだけの拷問を受けて…それでも許すのか!?」

カロル「痛みの大きさは関係ないよ。小さな痛みだから許していいわけじゃないでしょ?」

団長「…だがこいつは君だけでなく息子をも傷付けたのだ!親として許す訳には……」

カロル「そうしたいの?」

団長「なっ…!」

カロル「やり返してみたらスッキリするかも?
だけどそうやってスッキリさせるのに慣れちゃったらやり返さないとスッキリできなくなっちゃうよ?」

団長「その理屈は間違っている…!過ちを繰り返してきた者に罰は必要だ!どけ!?」

カロル「どかないよ?」

団長「〜〜〜!!」ワナワナ
742: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:21:18 ID:zSdvgd11Jg
カロル「罪を犯した人間なら殺していいの?それとも殺さなくちゃいけないの?」

団長「うっ…!?」タジッ

カロル「ボクね、自分が血に慣れてるんだなって気付いた時にすごくイヤな気持ちになったの」

団長「血…!?」

カロル「いろんなことがあって…自分のも他の誰かのもいっぱい見てきたから…いつの間にか血を見ても平気になっちゃったみたい」

団長「それがどうした?成長した証ではないか!?」

カロル「一つ一つの出来事が慣れっこになって…なにも感じなくなるのは成長なのかな」

団長「無知よりはマシだ!」

カロル「…団長さんは怖くならないの?」

団長「……?」

カロル「理由があったらいいって…誰かの命を奪ってしまうことに自分がなにも感じなくなってたら…ボクはこわいよ。
お母さまも悲しませちゃうから、そんな風になりたくない」

団長「ぐむ…!?」

カロル「それに…団長さんにもそんな風になってほしくないな?」ニコッ

団長「……!」スッ
743: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:33:08 ID:zSdvgd11Jg
団長「(そんな考え、世の中を生きていく上で絶対に通用せんと言いたいが…なぜだか言葉に重みがある)」

カロル「」ピトッ

フワッ

マドラス「あ…!?」ムクッ

団長「(しかし小童の考えや行動は常軌を逸しておるな…。
以前にも増して…いや、雰囲気そのものが変わっているような…)」

転がった死体「」ピトッ ピトッ ピトッ

カロル「…助けてあげられなくてごめんなさい」シュン

団長「(元々変わり者ではあったが……忠告してやらねば)」

カロル「団長さん…?」

団長「…小童、この2年でいったい何があった?」

カロル「へ?」

団長「聖堂での一件もそうだが…君の中で何か大きな変化があったのではないか?」

カロル「……?」キョトン

団長「はっきり言おう。今の君は異常だ!」

カロル「いじょう……って?」

団長「そこまでして許す理由はなんだ?こいつを助けてどうなる?君の行動は善行どころか偽善とすら呼べんぞ!?」

カロル「難しいことはわかんないけど…」オロオロ

団長「今のままでは必ず致命的な窮地に陥る日が来るぞ…!」

カロル「そうかな…。でもね、いろんなのを失くしてみて思ったんだ。
大事にしてても手放しちゃう物ってたくさんあるから…もっともっとがんばって大事にしようって?」ニコニコ

団長「それは…離れた友人達の事か?」

カロル「それだけじゃないよ。たくさん…たくさんあるの」

団長「…分かった。異常だなどと罵ってすまなかったな」

カロル「ううん、だいじょうぶ?"いじょう"とか"ののしる"がなにか分かんないから気にしてないよ?」ニコニコ

団長「(離れていた期間、小童もまた…陛下や宣教師たちと同様に悩み続け、自分の中で何か定めたのだな。ならばワシからはもう何も言うまい)」

マドラス「あ……あ…あぁああ!?」パッパッ
744: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:36:42 ID:zSdvgd11Jg
カロル「?」チラッ

団長「ふん!」ジロッ

マドラス「て、て…てて……てめぇはなんなんだよ?なぁ!?」ガタガタ

カロル「なんなんだよ…って聞かれても?」

マドラス「斬られたよなぁ?俺は?斬ったんだろ!おっさん!?」アタフタ

団長「……」

マドラス「左目もだ…。バンブルで仲間に斬られてくっついた瞼がパッカリ開いてすこぶる見えやがる!
顔中にザラザラした古傷までツルツルに…なんなんだよ、こりゃよぉ…!?」ガチガチ

カロル「……」

マドラス「ひぃ…!」ゾクッ

カロル「びっくりさせてごめんなさい。こうしないと死んじゃうと思ったから」

マドラス「気味がわりぃンだよ!?」

カロル「……」シュン

マドラス「クッソ!!こんな化け物、相手にしてられっか!?」ダッ

ガチャッ

団長「ま、待て!?」ダッ

カロル「追わなくちゃ!」ダッ
745: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:40:32 ID:zzTcWJdqRE
>>738
おぉ!マドラスに怒りを抱いてくださってる!?
自分の中でお気に入りの場面だったので嬉しいです!
支援ありがとうございました!
746: 遅くなってすみません! ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 21:54:33 ID:QXDk5G3aL6
―――城下裏通り(通路)―――

団長「くっ…!見失ったか?」キョロキョロ

カロル「どこに行っちゃったんだろう?」キョロキョロ

ザッ

団長「む!?」バッ

ラキア「あ、頭がジンジンする…」ヨロヨロ

団長「ラキア!?」

カロル「気が付いたんだ!よかった?」ニコッ

ラキア「…貴方が救い主様ですか」

カロル「すくいぬし…なのかな?まだ慣れないや?」テレッ

ラキア「俺の怪我を癒したというのは本当ですか?」

カロル「え…と…いいのかな?」チラッ

団長「大丈夫だ」コクンッ

ラキア「どうなのです?」

カロル「ボクが癒しました!」

ラキア「」ザザッ

カロル「へ?」オロオロ

団長「お、おい!なにも跪かんでも…?」

ラキア「父上は黙っていてください」

団長「なっ…!」

カロル「?」
747: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 21:57:32 ID:LvDIsWFtb.
ラキア「申し訳ない。命の恩人である貴方を危うく死地へ導いてしまうところでした」

カロル「いいよ!」アッケラカン

団長「あれだけされたんだぞ!さすがに少しは気にしろ!?」

ラキア「どうか俺に罰をお与えください」

カロル「バツ?」

団長「何を言っとるんだ、お前は…?」

ラキア「貴方は黙っていてください」ジロッ

団長「な、なんだと…さっきから父親に対して!?」

ラキア「悪は許せない性分なのです。たとえそれが自分自身であっても…」

団長「……?」

ラキア「俺は貴方とは違う。悪を見過ごして正義を曲げるような行いはしない…!」

団長「ら、ラキア……」

カロル「仲悪いの…?」コショコショ

団長「そ、そういう訳ではないが…」マゴマゴ

カロル「……」ジッ

ラキア「救い主様!俺に償う機会を…!」

カロル「…うーん」
748: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:02:28 ID:LvDIsWFtb.
カロル「じゃあ団長さんと仲直りして!」

ラキア「は…?」

団長「な、なにを言っとるんだ…?」

カロル「すぐにじゃなくていいよ。少しずつでいいから、ちゃんと団長さんを見てあげて?」

ラキア「……?」

カロル「きっと良いところ、たくさん見えてくるよ!
だってボク、団長さんの良いところ、いっぱい知ってるもん?」ニコッ

団長「……!」

ラキア「…み、見ようにも」

カロル「?」

ラキア「この人は…俺の事なんか見ちゃいない!出世の為に国王のそばを取り巻くのに必死なんですよ!」キッ

団長「……」

ラキア「家族も職務も人任せにする無責任な人だ!あんたは!?」

団長「(…何を言われても仕方ない。実際、家よりも城におった期間の方が長いしな)」

団長「(頭を下げ、許しを乞うたところで二度と溝は埋まるまい。時を戻せでもしない限りは……)」
749: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:03:46 ID:QXDk5G3aL6
ラキア「息子にここまで悪し様に罵られて何も言い返せませんか?当然でしょうがね?」ケッ

団長「マドラスを追っている最中だ。どうでもいい話は後にしろ」

ラキア「…あぁそうですか?何も言い返せず一刻も早く逃げ出したくてひねり出した言い訳がそれなんですね?」

団長「小童、一旦屋敷に戻るぞ」

カロル「……」

ラキア「どうです?救い主様?この人はね、そういう人なんですよ!」

団長「……」

ラキア「そうだろう?父上よ!」

カロル「うーん…そうかなー?」

ラキア「?」

カロル「ここに来る途中、ずっとお話を聞かされたって憲兵の人たちが言ってたよ?」

団長「なっ…!?」ギョギョッ

カロル「忙しくて会えなかったから心配してたんだって?ね?団長さん?」

団長「う、うぅん…!ぅおっほん!」ゲフンゲフン

ラキア「い、今さらになって……」

カロル「それにラキアさんが捕まったって聞いて、すぐに来てくれたじゃない!」ニコニコ

ラキア「そ、それは…」

カロル「団長さんはラキアさんのこと大事に思ってるもの。そうでしょ?」

団長「う、うぅん…?」ポリポリ

カロル「ふふ…!恥ずかしがっちゃダメ?言ってみないと伝わらないよ!」ポンポン

団長「(くっ…!どいつだ!小童に余計な事を吹き込んだのは…!?)」カァァ
750: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:05:29 ID:QXDk5G3aL6
団長「…ら、ラキア」

ラキア「な、なんです…?」

団長「……!」

カロル「ほら、団長さん!」

団長「う、うるさい!」カァァ

ラキア「……」オロオロ

団長「っ…!」ググッ

ラキア「ち、父上……」

団長「…さ、先ほどの太刀合わせで感じたが振り下ろす瞬間の踏み込みが若干甘かったぞ!?」

ラキア「はぁ…?」イラッ

団長「腕力は申し分ないが体さばきにも多少の難があった。
重心を一定にし、構える際は深く腰を落とすよう心掛けろ?」

ラキア「な、なにぃ…!?」イライラ

団長「それにだな…振りかぶる時、狙い目ばかりに集中し過ぎだ。
相手の動きを見ないから無様に剣を手放す事になるのだ。無様にな!」

ラキア「ぐっ…くくく…!」ワナワナ

団長「父を越えたくばなお一層、稽古を積むんだな!今のお前などワシから見ればひよっ子同然だ!」

ラキア「な・ん・だ・とぉおお〜〜〜…!!」ギリギリ

団長「己の剣に自信が付いたら、いつでも声を掛けろ?相手になってやる?」

ラキア「の、望むところだぁっ!!絶対あんたを越えてやるからな!?」

団長「あぁ、楽しみにしているぞ」ニヤリ

ラキア「くそっ…!こうなったら早速、兵営に戻って訓練再開だ!」ダッ

カロル「あっ…!」

ダダダッ………

団長「……」
751: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:08:59 ID:QXDk5G3aL6
カロル「…いいの?」

団長「うむ。あれでいい。父とは越えるべき壁…馴れ合いなど不要だ」

カロル「そっか…」

団長「…さぁ屋敷に戻ろう。まずは君の安全が最優先だ」

カロル「あ…!」

団長「む?」

ラキア「」ダダダッ キィィィィ!

カロル「わっ!?」

団長「ど、どうした?まだ何かあるのか?」

ラキア「はぐらかされるところでした!救い主様!俺に罰を!!」ズイッ

カロル「え?だ、団長さんと仲直り……」

ラキア「しません!!他の罰を!?」ズズイッ

カロル「ほ、他のって言われても…」オロオロ

団長「ではマドラスが逃げた先に心当たりはないか?」

ラキア「なんであんたなんかに!?」

団長「悪は見過ごせんのだろう?」

ラキア「うっ…!」

カロル「じゃ、じゃあそれがバツね!教えてくれたら全部なしでいいよ?」アセアセ

ラキア「そ、そうおっしゃるなら…」

カロル「」ホッ

ラキア「お、おそらくですが…フィクサー軍長が関わってます」

団長「…先ほども言っていたな」

ラキア「ちょ、直接軍長から紹介されたのではなく奴が王印の押された密書を手にフィクサー軍長の名を出してきただけですが……」

団長「なるほどな。だいたい把握出来た」

ラキア「え…い、今の情報だけで!?」

団長「ご苦労だったな。後はこっちでやっておく。お前は戻っていいぞ」
752: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:12:35 ID:QXDk5G3aL6
ラキア「お、お待ちください!もしやこの件には何か大きな巨悪が絡んでいるのでは!?」

団長「大きな巨悪…?お前はまず剣より座学を身に付けろ!バカ者!?」

ラキア「余計なお世話だ!父上では話にならない!救い主様!?」ガシッ

カロル「は、はい!?」ビクッ

ラキア「もし何かとてつもない陰謀に巻き込まれているのでしたら俺もお力添えさせてくれませんか!?」

カロル「……!」チラッ

団長「ならん。邪魔だ。帰って稽古と勉強に励め」

ラキア「父上は黙っていてください!?俺は救い主様に聞いてるんだ!?」カッ

カロル「な、なんで…そう思うの?」オロオロ

ラキア「よくよく考えてみれば軍の幹部が救い主様を強引な手段まで用いて狙うなんて…!
しかも同じ君主に仕える父上から奪おうとしている…つまり内部抗争!
これは大きな巨悪の匂いがプンプンします!是非、俺も加えてください!!」ハァハァ

カロル「う、うーん…」オロオロ

団長「…お、お前な?勝手に想像を広げすぎだ?絵本の世界ではないのだぞ?」

ラキア「フッフッフ…何を隠そう俺の愛読書は『正義の美学』『正義とは何か』『正義を貫く100の法則』『正義の味方・ヒーローマンシリーズ全五巻』etc...なのですよ!!」フフンッ

団長「(し、しばらく見ぬ間に息子がおかしな方向に……)」

ラキア「どんな困難も乗り越え、一途に使命をまっとうし、立ちはだかる悪を砕く勇猛果敢な正義!!正義!!正義!!
いつしか英雄と呼ばれ、人々に讃えられ、それでもなお傲らず正義に生きる男!そんな人に俺はなりたい!!」ウオオオオオ

ザワザワ ジロジロ ヒソヒソ

団長「お、おい…通りすぎる民衆の冷めた眼差しが刺さらんのか?一度、落ち着け?」アセアセ

ラキア「俺は間違ってますか!救い主様!?」バッ

カロル「よくわかんないけど夢があるのって素敵だと思うよ?」ニコニコ

ラキア「ほら、聞きましたか!父上!?」

団長「やはりお前もワシらと屋敷に戻れ。今夜は家族会議だ」

ラキア「同行させてもらえるんですね!絶対、お役に立ってみせます!共に悪を倒しましょう!!」パシッ

カロル「誰も倒したりしないけど、よろしくね!」パシッ

団長「はぁ…親が目を離すとこうなってしまうのか。やはりもっと家庭を大事にするべきだったな」ゲンナリ
753: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:27:10 ID:LvDIsWFtb.
〜〜〜夕方〜〜〜

―――団長の屋敷(居間)―――

ラキア「母上!おかわりを!!」バッ

団長の妻「はいはい、おかずも足さなきゃね。急に帰ってきたと思ったら、よく食べるんだから?」カチャッ スタスタ

ラキア「粗食では強くなれませんからね!」ガツガツ

母「たくましい息子さんですわね?」ニコニコ

ラキア「た、たくましいだなんて…俺なんかまだまだですよ!」テレテレ

母「そんなことありませんよ?体つきも立派ですし?」ニコニコ

ラキア「(救い主様の母君は若くてキレイだなぁ…。瞳の色なんか気にならない…。
普段むさ苦しい兵営で過ごしてるからか、いろいろと新鮮な気分だ)」ドキドキ

団長の妻「お父さんは一緒ではなかったの?」

ラキア「父上は本部に立ち寄って所用を済ませると言ってました」

団長の妻「ふーん…はい?」コトンッ

ラキア「かたじけない!」ガツガツ

カロル「いいなー?ボクもラキアさんみたいにおっきくなりたい…」ジーッ

ラキア「ハハハ!そんな?救い主様はまだ幼いですから!これからですよ!」

団長の妻「そうそう?今にお母さんを越えるくらい伸びていきますよ?」

カロル「そうかなー…」ウーン

母「それはどうかしら…」

カロル「?」

母「あたしたちホビットの成長は10歳くらいで止まっちゃうから…老いてはいくけど身長は伸びないかもしれないわ?」

カロル「え……」ガーン

ラキア「救い主様はおいくつなのですか?」モグモグ

カロル「…じゅ、16歳」モジモジ

ラキア「えっ」

団長の妻「えっ」
754: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:29:37 ID:QXDk5G3aL6
カロル「どうしよう…。ボクちっちゃいままなの?」ウルッ

母「あ、でも坊やには夫の血も入ってるから分からないわよ?
たしか人間は20歳まで成長するって聞いたし…」

カロル「じゃあまだ伸びるのかな!」パァァ

母「ごはんを残さず食べて、早く寝れば伸びるかもしれないわね」ニコッ

カロル「ボクいっぱいおかわりするよ!ちゃんと早く寝るもん!」

母「そうね?それをずーっと続けなくちゃダメよ?」ニコニコ

カロル「うん!続ける!おばさま!ボクもおかわりしていいですか?」

団長の妻「はいはい?たんと召し上がってくださいね?」ニコニコ

カロル「えへへ、ありがとう!」ニコッ

団長の妻「本当に無邪気でいい子ですね?」ニコニコ

母「まぁ…そんな?」ニコニコ

ラキア「(お、俺と二つ違い…10歳以上離れてるのかと思ってた)」

団長の妻「(ま、マリーさんっていくつなんでしょう…?ずっと20台だと思って話してたけど……)」
755: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:33:27 ID:QXDk5G3aL6
〜〜〜深夜〜〜〜

ガチャッ

団長「帰ったぞ」

団長の妻「お仕事、ご苦労様?遅かったですね?」

団長「本部に戻り、一連の後始末をしていてな。後は部下達に任せてあるが…」

団長の妻「そうでしたか。上着、預かりましょうか?」

団長「おう、すまんな。お前だけか?」ファサッ

団長の妻「ラキアもマリーさん達もぐっすり眠ってますよ?」パシッ

団長「そうか…。まぁそうだろうな」

団長の妻「救い主様をお連れしてたみたいですけど何かあったんですか?」

団長「大したことではない」

団長の妻「……。そういえばラキアがあなたに同行出来ると張り切ってましたよ?」

団長「それなんだが…いつ頃からあいつはあんな性格になってしまったのだ?」

団長の妻「はい…?」

団長「いや、正義がどうこうとのたまってな。
子供染みたというか度が過ぎているというか…少々変わった方向に進んではいないか?」

団長の妻「あなたに似たんじゃないですか?」クスッ

団長「ば、バカを言え?ワシはあんなではなかっただろうが?」

団長の妻「そっくりですよ。若い頃のあなたと?」

団長「冗談もほどほどにしろ…!?」

団長の妻「あなたもさんざん語ってくださったじゃありませんか?」

団長「な、なにぃ…!?」

団長の妻「若さ任せに途方もない夢を恥ずかしげもなく口にして私から見たら全く一緒?」

団長「む、むぅ…!」
756: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:38:05 ID:LvDIsWFtb.
団長の妻「たとえば20年以上前にまだ見習い同然だったあなたが手紙で城下の公園に私を呼び出して……」

団長「う、うぅおっふぉん!!!」ゲフンゲフン

団長の妻「なに照れてるんですか?こんな歳にもなって?」

団長「こ、こんな歳だからだ!その先は言うな…!?」アセアセ

団長の妻「そんなに恥ずかしがらなくても?情熱的で素敵な告白……」

団長「ぬおーっ!!だから言うな!?」

団長の妻「…ふふ」ニコッ

団長「まったく…」

団長の妻「あの子、本気であなたを尊敬してるんですよ?」

団長「? そうなのか?」

団長の妻「えぇ、子供の頃から『父上みたいな正義の味方になる』と口癖のように?」

団長「そ、それはいくつまでの話だ?」

団長の妻「小さい時からずーっと…あぁでも今は正義の味方じゃなくて正義の使者になると言ってますよ?」

団長「やめさせんか!恥ずかしい!」

団長の妻「心配しなくても大丈夫ですよ。あの子はあの子で決めた道がありますから…」

団長「そ、そうは言うがな…!?」

団長の妻「私もあなたの夢を支えると決意するまで時間が掛かりましたよ?正義の王国兵様?」クスッ

団長「うっ…」

団長の妻「背中を押してあげましょう?希望を閉ざすにはあの子はまだ若すぎるわ?」ニコッ

団長「……勝手にしろ!」ムスッ
757: 爆発的に投下します! ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:28:41 ID:kh6s4Xhrmc
―――王都領(王国軍の砦)―――

バッ

兵長「さぁ!赤の旗が上がったぞ!攻の陣を展開せよ!!」

ザザザザザザッ

バッ

兵長「黄色の旗だ!全軍突撃!!」

ダダダダダダダダッ

ブォォオオオン

兵長「ホラ貝の音色を聴き分けろ!!」

ザザザザザザッ

兵長「そうだ!一時撤退の合図だ!」

バッ

兵長「ふむ!緑の旗!守の陣!!」

ガガガガガガッ

モクモク モクモク

兵長「軍事演習、終了の狼煙だ!!一同、初期位置に整列!!」

ワラワラ ワラワラ
758: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/10(水) 22:30:59 ID:SfPoNrhlRE
兵長「いかがですか!両軍長!?我が兵の統率力は!?」

フィクサー「良い見晴らしだ」

兵長「は…?見晴らしでございますか?」

フィクサー「砦の最上階に部屋を設けた甲斐がある。兵の動きがよく見渡せた?」

兵長「…おほん!ドレッド軍長はどのように思われましたか?」

ドレッド「あれで兵営上がりの見習い軍人か。号令も把握し、命令にも忠実だ?基礎はバッチリだな?」

兵長「さすが目が肥えてらっしゃる!」

フィクサー「行儀の良さだけでは戦場には立てんよ」

兵長「…おほん!訓練に訓練を重ね、完成された我が軍の指揮系統は兵を預かり、統率する指揮官によって著しく形を変える!
王国軍が誇る両軍長の特性に応じ、自由自在に兵法を扱えるのです!」

フィクサー「ほうほう、なるほど?」

兵長「両軍長にはそれぞれ5000の直属兵が備わっておられますが…。
このわたくしめが育成してまいりました2万の兵を加えて新たに一つの部隊を編成していただきます!」

ドレッド「政務官殿も豪勢に振る舞ってくれたもんだ?
こりゃ責任重大ですな?フィクサー総軍長殿?」

兵長「まこと!!勝利は総軍長殿に掛かっておりますぞ!?」

フィクサー「敗れれば責任も何もないがね」
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