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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


734: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 22:47:40 ID:zzTcWJdqRE
―――廃墟の地下(廊下)―――

ガキンッ キンッ ギギッ ギャリィィンッ

バッ バッ

団長「はぁ…!はぁ…!」

ラキア「どうしました?この程度で息切れなさるとは貴方らしくもない?」ニヤッ

団長「(小童を発見し、王都に送り届け、警護してきたこの2週間弱…。
ほとんど睡眠を取らずに気を張り巡らせてきたのが仇となったか…!
目が霞む…!身体が思うように動かん…!)」ゼェゼェ

ラキア「それとも貴方の見ぬ間に俺が腕を上げすぎたか…?」ニヤニヤ

団長「うぬぼれるな…!悪に心奪われるような半人前の分際で…!」

ラキア「悪を見過ごしてきた貴方に言われる筋合いはない」ジャキッ

団長「何を聞かされたか知らんが…いい加減にせねば息子とて容赦せんぞ!?」ジャキッ

ラキア「一端に父親ヅラですか…?イイ気なもので?」フフンッ

団長「お前を救った彼の想いを無下にしおって…!?」

ラキア「彼…?」

団長「刺された傷がなぜ塞がったと思う!?」

ラキア「そ、そういえば…不思議には感じてましたが?」

団長「お前の命を救う為に先ほど連れていかれたホビットが治癒を施したのだ!?」

ラキア「え…?」ピクッ

団長「今、彼はお前の身代わりとなっているのだぞ!!」

ラキア「なっ…!」

団長「ワシが悪を見過ごしていると言うのなら…悪を助長するお前はなんなのだっ!?」

ラキア「ま、マドラスさんは…フィクサー軍長に紹介された方だ!俺に国の現実を教えてくれた!」アセアセ

団長「あの男は金の為なら人殺しもいとわん悪人だ!!南の領土で大量殺人を犯し、救い主の首を付け狙ってきたんだぞ!?」

ラキア「そ、そんな…嘘だ!この計画は…堕落した憲兵団の意識を再生する…正義の行いだ!!」

団長「ほう!?人質になり、あわや命を奪われかけ、助けに駆け付けた父を騙して襲い掛かり、無関係の者の首を賞金稼ぎの悪党に引き渡すのが貴様の正義か!?」

ラキア「ぐっ…!くっ!」タジッ
735: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 22:50:08 ID:zzTcWJdqRE
団長「そんな息子に育てた覚えはないぞ!?」カッ

ラキア「あ、あ…あんたが言うな!?」

団長「!?」

ラキア「俺だって育てられた覚えなんかねぇよ!?ほとんど家にもいなかった…あんたなんかに!?」キッ

団長「…ら、ラキア」

ラキア「あんたが家にいないのは国の平和を守ってるからだって母上が言ってた…!
寂しかったし、修道院でも片親だってからかわれたけど…正義の為に戦い続ける父上を小さい頃から尊敬してたんだ!!」

団長「……」

ラキア「だけど実際は…何も守れてなんかいなかった!
俺や母上をほったらかすだけじゃなく…正義や責任までほったらかして国王に尻尾振ってたんだろ!?」

ラキア「あんたは出世欲に駈られた意地汚い奴だ!!
母上は今もあんたを信じて孤独に耐えてるのに…お前はそれを踏みにじってきたんだ!!」

団長「…そんな風に思われていたのか」

ラキア「あんたの言葉なんか信じてたまるか!!偽善者め!!」

団長「すまなかった…!」ペコリ

ラキア「っ……!」

団長「お前の言う通りだ。ワシは親としての責任を放棄し、なにもかも妻に任せきりにしていた…」

ラキア「今更どういうつもりだ!わざとらしいんだよ…!」ギリッ

団長「…また今度、ゆっくりと話せる時間を作ろう。すまんが今はこれ以上…彼を危険にさらしたくない」ザッ

ラキア「あんたと話す事なんかない!ここで縁も命も断ってやるよ!?」ジャッ

ヒュンッ シュバッ ガインッ!

ラキア「(俺の剣が…弾かれた!?)」ビリビリ

団長「過ちは教訓なり。これからも精進するがいい?」ググッ

ラキア「わ…わっ…わわっ!?」ビクッ

団長「ふんっ!!」ブンッ

ゴキィンッ!!

ラキア「ぶきゃらっ!?」ズサァァァ
736: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 22:53:22 ID:zzTcWJdqRE
団長「…父の拳は重かろう?」コキッコキッ

ラキア「ぶっ…く…く……」ブクブク

団長「初めて真正面からお前と語り合えた気がするな…」ニコッ

団長「また話す機会が楽しみでならんよ…。さて?」クルッ

団長「…奥の部屋に入っていったな」ダッ

ダダダッ

ガチャッ ガチャッ ガチャッ ガチャッ

団長「くっ…!この地下、元は大量にホビットを押し込めておく為に造られたのだったな?
独房と思わしき扉が無数に混在しておる…!これではどの扉にいるか特定が……」

ゴキィッ ギャアアアアアアアアア!

アアアアアアア………

アアアアア………

団長「小童っ!?」ダッ

ダダダダッ
737: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 22:54:41 ID:zzTcWJdqRE
―――廃墟の地下(独房)――

カロル「っ……っ……」ポロポロ

マドラス「おいおい、泣くなよぉ?可哀想過ぎてこっちまで泣きたくなるじゃねぇか?」ガッ

カロル「はぁ……あう…」ダラーン

マドラス「手足や指はあらかた折ったしなぁ…?殴る蹴るは飽きたし芸がねぇ?
かといってどっか切り落としても気ぃ失われて、いつの間にか失血死もつまんねぇ?」ウーン

カロル「っ…うぅ…」

マドラス「そろそろやりたかったアレ…いってみっか!なぁ?」

手下4「は、はぁ…」

カロル「……」

マドラス「オメーの歯をぶち砕いてよぉ…瓶一杯の油を飲まして火を放つんだ?」ニヤニヤ

カロル「……」クタァッ

マドラス「反応しろや?おもしろくねぇ…なっ!!」ブンッ

カロル「はぐっ!」ベシャァッ

手下4「あ、あの!ダンナ!んなことして顔に大火傷負わしちまったら判別付かなくなって首の価値が無くなるんじゃ…?」

マドラス「ン?なんか言った?」チラッ

手下4「い、いや、ですからね?」アセアセ

マドラス「なんか言ったか…?」ギョロリ

手下4「な、なんでもござんせん…」ゴクリ

マドラス「すぐ消火するさ?なぁ?」

手下4「うっす…」シブシブ

マドラス「その後は…そうさなぁ?手足ちょん切って頭の皮剥いで目ん玉潰して……」

手下4「(目的が変わってんじゃねぇか…!こっちは金になるってぇからやってんだぞ…!?)」ギリッ
738: 名無しさん@読者の声:2015/5/20(水) 22:57:56 ID:FJZjMsKbIA
マドラス貴様アアアアアッ!!
CCC
739: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 22:58:44 ID:zzTcWJdqRE
ガチャッ バァンッ!

マドラス「ン…?」

団長「〜〜〜!?」ワナワナ

マドラス「なんだよ、もう息子をぶっ殺したのか?仕事が早いなぁ〜?正義の憲兵様はよぉ〜?」

カロル「ひゅっ…ひゅっ…」グッタリ

団長「き…さま!小童にな、何を……」ガチガチ

マドラス「何をも何もまだ始まってすらねーだろうが?な……」

ジャッ ヒュンッ ズバババババッ

手下's「」プシャアアアアアアア

マドラス「あ?」キョトン

バタバタバタバタッ

団長「…ワシの不始末だ!」ギリッ

マドラス「ン?ン?」キョロキョロ

団長「彼が傷付くという事は…すなわち陛下を傷付ける大罪だ。
切羽詰まった状況だったとはいえ、危険だと分かっておりながら、ここに連れてきてしまったのはワシだ」

マドラス「…やるねぇ〜?噂は伊達じゃねぇ…ってか?」スラッ

団長「そもそも貴様のような悪党に息子が付け入られたのも言うなればワシの教育不足に他ならん!」

マドラス「だが…俺も南の賞金王と呼ばれた男だ。死線は何度も越えてきた?」ジャキッ

団長「この件を終えたらありのままを陛下に報告するとしよう。場合によっては…自決も覚悟せねばな」フッ

マドラス「昨日今日と連戦を強いられたんじゃ疲労困憊だろうが?なぁ?」ジリッ

団長「しかし貴様だけは許さん…!存分にやらせてもらうぞ…!?」ジャキッ

マドラス「ちっ…会話が噛み合わねぇなぁ?ボケてんのか?」

団長「かかってくるがいい…!」ジリッ

マドラス「…おっさんはもう休んでなぁ!?」ダッ

団長「抜かせっ!!」ダッ
740: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:06:36 ID:zSdvgd11Jg
ガキィッ ギャリンッ キンッ キキンッ

団長「(や、やはり疲労は隠せんな…!平常時であれば、この程度の使い手など…クッ!)」シュバッ

マドラス「(この親父…手強いな!年寄りの冷や水も大概にしろや!)」ギィンッ

団長「せあぁっ!!」ブォンッ

マドラス「けっ…こんな重てぇ一撃、いちいち止めてられるか!」サッ

団長「ぬっ!?」バッ

マドラス「しゃらっ!!」ビュンッ

スカッ

団長「ふん!素振りか?稽古熱心なことだ?」ニヤリ

マドラス「へっ…片目はやりづれーな…!距離感も外すわ、視界が狭いわ……」ストッ

団長「ぬああああ!!」ダッ

ピシャッ ズルッ

団長「なっ…!?」ドタッ

マドラス「お!床の血溜まりで滑ったか?マヌケ親父が!?」ニタニタ

団長「(ま、まずい!)」

マドラス「もらったぁぁぁあああ!!!」バッ

ガッ コケッ

マドラス「ぁぁあわがふっ!?」ドサッ

団長「ぐおっ!?ど、どけっ!?」ズシッ

マドラス「し、死体に足引っ掛けちまったい!クソが…だがこのまま乗っかって串刺しに……」スッ

ピトッ

マドラス「うおっ!?」ビクッ

団長「(なんだ…!?まぁいい!奴が飛び退いた隙に体勢を整える!)」ムクッ

マドラス「だ、誰だ!俺の右目を塞ぎやがった……」バッ

カロル「」チョコン

マドラス「のは……ン!?」ギョギョッ
741: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:14:30 ID:zzTcWJdqRE
マドラス「は!?お前、両手両足へし折ってやったよな!?なぁ!?」チンプンカンプン

カロル「うん。痛かった!」コクッ

マドラス「……は?なんだ、これ?意味が分からねーわ?夢か?」ポカーン

カロル「夢じゃないよ?ホント?」

マドラス「じゃあなんでてめぇはピンピン……」

団長「だぁああっ!!」ブォンッ

バシュッ

マドラス「し…でっ……!?」ドバッ

団長「トドメだ!!」バッ

カロル「待って!」バッ

団長「小童…どけ!?そいつを許す必要はなかろうが!?」

カロル「…ボクの為にしてくれてるならいいよ?もうやめよ?」ジーッ

団長「き、君は…あれだけの拷問を受けて…それでも許すのか!?」

カロル「痛みの大きさは関係ないよ。小さな痛みだから許していいわけじゃないでしょ?」

団長「…だがこいつは君だけでなく息子をも傷付けたのだ!親として許す訳には……」

カロル「そうしたいの?」

団長「なっ…!」

カロル「やり返してみたらスッキリするかも?
だけどそうやってスッキリさせるのに慣れちゃったらやり返さないとスッキリできなくなっちゃうよ?」

団長「その理屈は間違っている…!過ちを繰り返してきた者に罰は必要だ!どけ!?」

カロル「どかないよ?」

団長「〜〜〜!!」ワナワナ
742: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:21:18 ID:zSdvgd11Jg
カロル「罪を犯した人間なら殺していいの?それとも殺さなくちゃいけないの?」

団長「うっ…!?」タジッ

カロル「ボクね、自分が血に慣れてるんだなって気付いた時にすごくイヤな気持ちになったの」

団長「血…!?」

カロル「いろんなことがあって…自分のも他の誰かのもいっぱい見てきたから…いつの間にか血を見ても平気になっちゃったみたい」

団長「それがどうした?成長した証ではないか!?」

カロル「一つ一つの出来事が慣れっこになって…なにも感じなくなるのは成長なのかな」

団長「無知よりはマシだ!」

カロル「…団長さんは怖くならないの?」

団長「……?」

カロル「理由があったらいいって…誰かの命を奪ってしまうことに自分がなにも感じなくなってたら…ボクはこわいよ。
お母さまも悲しませちゃうから、そんな風になりたくない」

団長「ぐむ…!?」

カロル「それに…団長さんにもそんな風になってほしくないな?」ニコッ

団長「……!」スッ
743: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:33:08 ID:zSdvgd11Jg
団長「(そんな考え、世の中を生きていく上で絶対に通用せんと言いたいが…なぜだか言葉に重みがある)」

カロル「」ピトッ

フワッ

マドラス「あ…!?」ムクッ

団長「(しかし小童の考えや行動は常軌を逸しておるな…。
以前にも増して…いや、雰囲気そのものが変わっているような…)」

転がった死体「」ピトッ ピトッ ピトッ

カロル「…助けてあげられなくてごめんなさい」シュン

団長「(元々変わり者ではあったが……忠告してやらねば)」

カロル「団長さん…?」

団長「…小童、この2年でいったい何があった?」

カロル「へ?」

団長「聖堂での一件もそうだが…君の中で何か大きな変化があったのではないか?」

カロル「……?」キョトン

団長「はっきり言おう。今の君は異常だ!」

カロル「いじょう……って?」

団長「そこまでして許す理由はなんだ?こいつを助けてどうなる?君の行動は善行どころか偽善とすら呼べんぞ!?」

カロル「難しいことはわかんないけど…」オロオロ

団長「今のままでは必ず致命的な窮地に陥る日が来るぞ…!」

カロル「そうかな…。でもね、いろんなのを失くしてみて思ったんだ。
大事にしてても手放しちゃう物ってたくさんあるから…もっともっとがんばって大事にしようって?」ニコニコ

団長「それは…離れた友人達の事か?」

カロル「それだけじゃないよ。たくさん…たくさんあるの」

団長「…分かった。異常だなどと罵ってすまなかったな」

カロル「ううん、だいじょうぶ?"いじょう"とか"ののしる"がなにか分かんないから気にしてないよ?」ニコニコ

団長「(離れていた期間、小童もまた…陛下や宣教師たちと同様に悩み続け、自分の中で何か定めたのだな。ならばワシからはもう何も言うまい)」

マドラス「あ……あ…あぁああ!?」パッパッ
744: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:36:42 ID:zSdvgd11Jg
カロル「?」チラッ

団長「ふん!」ジロッ

マドラス「て、て…てて……てめぇはなんなんだよ?なぁ!?」ガタガタ

カロル「なんなんだよ…って聞かれても?」

マドラス「斬られたよなぁ?俺は?斬ったんだろ!おっさん!?」アタフタ

団長「……」

マドラス「左目もだ…。バンブルで仲間に斬られてくっついた瞼がパッカリ開いてすこぶる見えやがる!
顔中にザラザラした古傷までツルツルに…なんなんだよ、こりゃよぉ…!?」ガチガチ

カロル「……」

マドラス「ひぃ…!」ゾクッ

カロル「びっくりさせてごめんなさい。こうしないと死んじゃうと思ったから」

マドラス「気味がわりぃンだよ!?」

カロル「……」シュン

マドラス「クッソ!!こんな化け物、相手にしてられっか!?」ダッ

ガチャッ

団長「ま、待て!?」ダッ

カロル「追わなくちゃ!」ダッ
745: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 23:40:32 ID:zzTcWJdqRE
>>738
おぉ!マドラスに怒りを抱いてくださってる!?
自分の中でお気に入りの場面だったので嬉しいです!
支援ありがとうございました!
746: 遅くなってすみません! ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 21:54:33 ID:QXDk5G3aL6
―――城下裏通り(通路)―――

団長「くっ…!見失ったか?」キョロキョロ

カロル「どこに行っちゃったんだろう?」キョロキョロ

ザッ

団長「む!?」バッ

ラキア「あ、頭がジンジンする…」ヨロヨロ

団長「ラキア!?」

カロル「気が付いたんだ!よかった?」ニコッ

ラキア「…貴方が救い主様ですか」

カロル「すくいぬし…なのかな?まだ慣れないや?」テレッ

ラキア「俺の怪我を癒したというのは本当ですか?」

カロル「え…と…いいのかな?」チラッ

団長「大丈夫だ」コクンッ

ラキア「どうなのです?」

カロル「ボクが癒しました!」

ラキア「」ザザッ

カロル「へ?」オロオロ

団長「お、おい!なにも跪かんでも…?」

ラキア「父上は黙っていてください」

団長「なっ…!」

カロル「?」
747: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 21:57:32 ID:LvDIsWFtb.
ラキア「申し訳ない。命の恩人である貴方を危うく死地へ導いてしまうところでした」

カロル「いいよ!」アッケラカン

団長「あれだけされたんだぞ!さすがに少しは気にしろ!?」

ラキア「どうか俺に罰をお与えください」

カロル「バツ?」

団長「何を言っとるんだ、お前は…?」

ラキア「貴方は黙っていてください」ジロッ

団長「な、なんだと…さっきから父親に対して!?」

ラキア「悪は許せない性分なのです。たとえそれが自分自身であっても…」

団長「……?」

ラキア「俺は貴方とは違う。悪を見過ごして正義を曲げるような行いはしない…!」

団長「ら、ラキア……」

カロル「仲悪いの…?」コショコショ

団長「そ、そういう訳ではないが…」マゴマゴ

カロル「……」ジッ

ラキア「救い主様!俺に償う機会を…!」

カロル「…うーん」
748: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:02:28 ID:LvDIsWFtb.
カロル「じゃあ団長さんと仲直りして!」

ラキア「は…?」

団長「な、なにを言っとるんだ…?」

カロル「すぐにじゃなくていいよ。少しずつでいいから、ちゃんと団長さんを見てあげて?」

ラキア「……?」

カロル「きっと良いところ、たくさん見えてくるよ!
だってボク、団長さんの良いところ、いっぱい知ってるもん?」ニコッ

団長「……!」

ラキア「…み、見ようにも」

カロル「?」

ラキア「この人は…俺の事なんか見ちゃいない!出世の為に国王のそばを取り巻くのに必死なんですよ!」キッ

団長「……」

ラキア「家族も職務も人任せにする無責任な人だ!あんたは!?」

団長「(…何を言われても仕方ない。実際、家よりも城におった期間の方が長いしな)」

団長「(頭を下げ、許しを乞うたところで二度と溝は埋まるまい。時を戻せでもしない限りは……)」
749: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:03:46 ID:QXDk5G3aL6
ラキア「息子にここまで悪し様に罵られて何も言い返せませんか?当然でしょうがね?」ケッ

団長「マドラスを追っている最中だ。どうでもいい話は後にしろ」

ラキア「…あぁそうですか?何も言い返せず一刻も早く逃げ出したくてひねり出した言い訳がそれなんですね?」

団長「小童、一旦屋敷に戻るぞ」

カロル「……」

ラキア「どうです?救い主様?この人はね、そういう人なんですよ!」

団長「……」

ラキア「そうだろう?父上よ!」

カロル「うーん…そうかなー?」

ラキア「?」

カロル「ここに来る途中、ずっとお話を聞かされたって憲兵の人たちが言ってたよ?」

団長「なっ…!?」ギョギョッ

カロル「忙しくて会えなかったから心配してたんだって?ね?団長さん?」

団長「う、うぅん…!ぅおっほん!」ゲフンゲフン

ラキア「い、今さらになって……」

カロル「それにラキアさんが捕まったって聞いて、すぐに来てくれたじゃない!」ニコニコ

ラキア「そ、それは…」

カロル「団長さんはラキアさんのこと大事に思ってるもの。そうでしょ?」

団長「う、うぅん…?」ポリポリ

カロル「ふふ…!恥ずかしがっちゃダメ?言ってみないと伝わらないよ!」ポンポン

団長「(くっ…!どいつだ!小童に余計な事を吹き込んだのは…!?)」カァァ
750: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:05:29 ID:QXDk5G3aL6
団長「…ら、ラキア」

ラキア「な、なんです…?」

団長「……!」

カロル「ほら、団長さん!」

団長「う、うるさい!」カァァ

ラキア「……」オロオロ

団長「っ…!」ググッ

ラキア「ち、父上……」

団長「…さ、先ほどの太刀合わせで感じたが振り下ろす瞬間の踏み込みが若干甘かったぞ!?」

ラキア「はぁ…?」イラッ

団長「腕力は申し分ないが体さばきにも多少の難があった。
重心を一定にし、構える際は深く腰を落とすよう心掛けろ?」

ラキア「な、なにぃ…!?」イライラ

団長「それにだな…振りかぶる時、狙い目ばかりに集中し過ぎだ。
相手の動きを見ないから無様に剣を手放す事になるのだ。無様にな!」

ラキア「ぐっ…くくく…!」ワナワナ

団長「父を越えたくばなお一層、稽古を積むんだな!今のお前などワシから見ればひよっ子同然だ!」

ラキア「な・ん・だ・とぉおお〜〜〜…!!」ギリギリ

団長「己の剣に自信が付いたら、いつでも声を掛けろ?相手になってやる?」

ラキア「の、望むところだぁっ!!絶対あんたを越えてやるからな!?」

団長「あぁ、楽しみにしているぞ」ニヤリ

ラキア「くそっ…!こうなったら早速、兵営に戻って訓練再開だ!」ダッ

カロル「あっ…!」

ダダダッ………

団長「……」
751: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:08:59 ID:QXDk5G3aL6
カロル「…いいの?」

団長「うむ。あれでいい。父とは越えるべき壁…馴れ合いなど不要だ」

カロル「そっか…」

団長「…さぁ屋敷に戻ろう。まずは君の安全が最優先だ」

カロル「あ…!」

団長「む?」

ラキア「」ダダダッ キィィィィ!

カロル「わっ!?」

団長「ど、どうした?まだ何かあるのか?」

ラキア「はぐらかされるところでした!救い主様!俺に罰を!!」ズイッ

カロル「え?だ、団長さんと仲直り……」

ラキア「しません!!他の罰を!?」ズズイッ

カロル「ほ、他のって言われても…」オロオロ

団長「ではマドラスが逃げた先に心当たりはないか?」

ラキア「なんであんたなんかに!?」

団長「悪は見過ごせんのだろう?」

ラキア「うっ…!」

カロル「じゃ、じゃあそれがバツね!教えてくれたら全部なしでいいよ?」アセアセ

ラキア「そ、そうおっしゃるなら…」

カロル「」ホッ

ラキア「お、おそらくですが…フィクサー軍長が関わってます」

団長「…先ほども言っていたな」

ラキア「ちょ、直接軍長から紹介されたのではなく奴が王印の押された密書を手にフィクサー軍長の名を出してきただけですが……」

団長「なるほどな。だいたい把握出来た」

ラキア「え…い、今の情報だけで!?」

団長「ご苦労だったな。後はこっちでやっておく。お前は戻っていいぞ」
752: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:12:35 ID:QXDk5G3aL6
ラキア「お、お待ちください!もしやこの件には何か大きな巨悪が絡んでいるのでは!?」

団長「大きな巨悪…?お前はまず剣より座学を身に付けろ!バカ者!?」

ラキア「余計なお世話だ!父上では話にならない!救い主様!?」ガシッ

カロル「は、はい!?」ビクッ

ラキア「もし何かとてつもない陰謀に巻き込まれているのでしたら俺もお力添えさせてくれませんか!?」

カロル「……!」チラッ

団長「ならん。邪魔だ。帰って稽古と勉強に励め」

ラキア「父上は黙っていてください!?俺は救い主様に聞いてるんだ!?」カッ

カロル「な、なんで…そう思うの?」オロオロ

ラキア「よくよく考えてみれば軍の幹部が救い主様を強引な手段まで用いて狙うなんて…!
しかも同じ君主に仕える父上から奪おうとしている…つまり内部抗争!
これは大きな巨悪の匂いがプンプンします!是非、俺も加えてください!!」ハァハァ

カロル「う、うーん…」オロオロ

団長「…お、お前な?勝手に想像を広げすぎだ?絵本の世界ではないのだぞ?」

ラキア「フッフッフ…何を隠そう俺の愛読書は『正義の美学』『正義とは何か』『正義を貫く100の法則』『正義の味方・ヒーローマンシリーズ全五巻』etc...なのですよ!!」フフンッ

団長「(し、しばらく見ぬ間に息子がおかしな方向に……)」

ラキア「どんな困難も乗り越え、一途に使命をまっとうし、立ちはだかる悪を砕く勇猛果敢な正義!!正義!!正義!!
いつしか英雄と呼ばれ、人々に讃えられ、それでもなお傲らず正義に生きる男!そんな人に俺はなりたい!!」ウオオオオオ

ザワザワ ジロジロ ヒソヒソ

団長「お、おい…通りすぎる民衆の冷めた眼差しが刺さらんのか?一度、落ち着け?」アセアセ

ラキア「俺は間違ってますか!救い主様!?」バッ

カロル「よくわかんないけど夢があるのって素敵だと思うよ?」ニコニコ

ラキア「ほら、聞きましたか!父上!?」

団長「やはりお前もワシらと屋敷に戻れ。今夜は家族会議だ」

ラキア「同行させてもらえるんですね!絶対、お役に立ってみせます!共に悪を倒しましょう!!」パシッ

カロル「誰も倒したりしないけど、よろしくね!」パシッ

団長「はぁ…親が目を離すとこうなってしまうのか。やはりもっと家庭を大事にするべきだったな」ゲンナリ
753: ◆WEmWDvOgzo:2015/6/5(金) 22:27:10 ID:LvDIsWFtb.
〜〜〜夕方〜〜〜

―――団長の屋敷(居間)―――

ラキア「母上!おかわりを!!」バッ

団長の妻「はいはい、おかずも足さなきゃね。急に帰ってきたと思ったら、よく食べるんだから?」カチャッ スタスタ

ラキア「粗食では強くなれませんからね!」ガツガツ

母「たくましい息子さんですわね?」ニコニコ

ラキア「た、たくましいだなんて…俺なんかまだまだですよ!」テレテレ

母「そんなことありませんよ?体つきも立派ですし?」ニコニコ

ラキア「(救い主様の母君は若くてキレイだなぁ…。瞳の色なんか気にならない…。
普段むさ苦しい兵営で過ごしてるからか、いろいろと新鮮な気分だ)」ドキドキ

団長の妻「お父さんは一緒ではなかったの?」

ラキア「父上は本部に立ち寄って所用を済ませると言ってました」

団長の妻「ふーん…はい?」コトンッ

ラキア「かたじけない!」ガツガツ

カロル「いいなー?ボクもラキアさんみたいにおっきくなりたい…」ジーッ

ラキア「ハハハ!そんな?救い主様はまだ幼いですから!これからですよ!」

団長の妻「そうそう?今にお母さんを越えるくらい伸びていきますよ?」

カロル「そうかなー…」ウーン

母「それはどうかしら…」

カロル「?」

母「あたしたちホビットの成長は10歳くらいで止まっちゃうから…老いてはいくけど身長は伸びないかもしれないわ?」

カロル「え……」ガーン

ラキア「救い主様はおいくつなのですか?」モグモグ

カロル「…じゅ、16歳」モジモジ

ラキア「えっ」

団長の妻「えっ」
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