1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
699: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:25:41 ID:tvS/hVrMQc
裏通りのホビット2「へへ!仲間を見下したりするからだ!」ジャラッ
裏通りのホビット3「薬代とか言ってたけど生活費、全部持ち歩いてたみたいだ。バカなヤツ?」
裏通りのホビット4「やっと食べられる!市場でおいしい物を買おう!」
裏通りのホビット5「いや、生活必需品を買おう。服も汚れて体が痒いし、湯浴みもしたい」
裏通りのホビット4「飯だ!」
裏通りのホビット5「服だ!!」
ギャーギャー ギャーギャー
憲兵37「おい、ホビット共?」スタスタ
裏通りのホビット's「え?」
憲兵37「汚い身なりだが税はちゃんと払ってるのか?」
裏通りのホビット's「」オロオロ
憲兵37「ちょっと来てもらおうか?役所で滞納金の額を確認するから?」
裏通りのホビット2「…わざとだ!」
憲兵37「は?」
裏通りのホビット2「なんで急に都合よく裏通りに来るんだよ!」
憲兵37「は?」
裏通りのホビット2「最初からタカる気で待ち伏せてたんだろ!」
憲兵37「は?」
裏通りのホビット2「お前らいつもそうだ!困った時は助けないのに奪ってばっかりだ!」
憲兵37「は?」
裏通りのホビット2「"は?""は?"じゃないよぉ!!」
憲兵37「」ブンッ
バコッ!
700: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:27:09 ID:8AFkZ.RUD6
裏通りのホビット2「いだぁっ!?」ズサァッ
憲兵37「税は払わなきゃダメだろ?国民の義務だぞ?そういう条件で迎えられたんだろ?」パシッパシッ
裏通りのホビット's「」ガクガクブルブル
憲兵37「自分たちが不甲斐ないから責任を果たせないんだろ?俺達のせいにするなよ?」
裏通りのホビット3「す、すみません!」
憲兵37「…」ブンッ
バコッ!
裏通りのホビット3「ひぎいっ!!」ドカッ
憲兵37「私だってこんな事はしたくないよぉ?お前らが反抗するからさぁ…」パシッパシッ
裏通りのホビット4「許してください…!?」ブルブル
憲兵37「有り金、全部寄越せ?そうすりゃ見逃してやるよ?」
裏通りのホビット4「え!?」
憲兵37「え?じゃなくて…はい!だろ!?」ブンッ
バコッ!
裏通りのホビット4「あぎゃあっ!?」ドサッ
701: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:28:20 ID:tvS/hVrMQc
裏通りのホビット's「」ピクピク
憲兵37「まいどあり」ホクホク
ザッ
憲兵37「ん?」
ラキア「そのお金…どうする気ですか?」ジロッ
憲兵37「…なにが?見回りの邪魔だからどいてくれる?」ジロッ
マドラス「そうやって普段から小遣い稼いでんだろ?なぁ?」ニヤリ
憲兵37「どうせ奪った金だろう?文句なんか言わせねぇよ?」
ラキア「憲兵の恥め…!」
憲兵37「なんだ、お前?偉そうに?」
マドラス「下っ端の兄ちゃんよ?こいつは団長の息子だぜ?」
憲兵37「はぁ?デタラメはよせよ?団長の息子は兵営の訓練生だ。こんなとこにはいねぇ?」
ラキア「……」
憲兵37「それとも…なんか証拠があんのか?ん?」
ラキア「」シュッ
憲兵37「は…?」カクンッ
ラキア「」ガッ グンッ
憲兵37「うげぇっ!?」ドサッ
ラキア「もういい。お前の話は聞かない。俺が裁いてやる」ギロッ
マドラス「ひゅー!やるぅ?」
憲兵37「(な、なにをされた…?なんで俺が地面に叩きつけられ……)」パクパク
マドラス「(足を引っ掛けて体勢崩したとこを襟首掴んで叩きつけたか。名付けるとしたら…"床ドン"だな)」ニヤニヤ
702: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:29:45 ID:8AFkZ.RUD6
ラキア「はっ…はっ…!」ブンッブンッ
ガッ バキッ メキッ ドフッ
マドラス「その辺にしとけ!死ぬぞ?」
ラキア「はっ…はっ……はっ…」パッ
憲兵37「」グッタリ
ラキア「マドラスさん…自分は全てに絶望しました。今まで恵まれ過ぎて視野が狭かったのだと実感しています」
マドラス「良かったな?大人の階段登れてよ?」
ラキア「はい…。あなたのおかげです」
マドラス「(バカだな。たかが強請タカり見ただけで世の中全て知った気になってよ?
この年頃はなんにでも感化されやがるから扱いやすいぜ。そういうのを視野が狭いって言うんだよ、バーカ?)」ニヤニヤ
ラキア「今まで父上が家にいないのも家族より王族を優先するのも…全ては正義を守り、秩序を正していく為なんだと思ってました。
でも結果として父上が守ってきた正義はこの程度の物だった」
マドラス「……」
ラキア「父上は…この程度の為に家族をないがしろにしてきた…!母上の苦労も…寂しさも知らないで…!」ワナワナ
マドラス「だなぁ?正義なんざバカヤローだぜぇ?」
ラキア「フィクサー軍長のご命令に従い、あなたに協力します。なんでも言ってください」
マドラス「おう、頼りにしてるぜぇ?」
マドラス「(はっ!一端に軍の正規兵気取りか?訓練期間も修了してねぇ候補生ごときが?
親父の名もなきゃてめぇに価値なんかねぇんだよ)」
……………………
703: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:33:18 ID:tvS/hVrMQc
―――城下町(団長の屋敷)――
母「…つまり坊やの力を狙って西の国が動き出した。
それを阻止する為に政務官さんが坊やを始末しようとしている…ということ?」
団長「そうなりますな」
母「そ、そんな大きすぎる話…急に言われても!」オロオロ
団長「まぁな…。信じられないのも無理はない。だが事実として君たちは狙われてきた筈だ」
母「……」
カロル「さっき狙われたばっかりだもんね?」
マルク「あんっ!」コクッ
団長「陛下の意向もあって表向きは我々の協力者を装おっているが…先刻の会話からも分かるように奴は君たちを始末する大義名分を探っている」
カロル「西の国ってなに?」チンプンカンプン
団長「大陸の西側に位置する悪評の絶えない野蛮な独裁国家だ。
人口も多く、武器の製造に掛ける資金や軍の規模も大きい」
母「お、恐ろしい国なのね…」ブルッ
団長「あぁ、恐ろしいぞ。どうやって調べたかは知らんが統計上は世界で最も餓死の率が高いとされるほど民が飢餓に見舞われている。
親が子を鍋で煮て食ってしまったという逸話さえあるのだから救いようがない」
母「……!?」
団長「民の3割は鉱石の採掘や武器の製造に駆り出され、強制労働を強いられていると聞く。
そのせいか紛争や反乱が絶えんそうだ。あんな国に生まれてしまった西の民が哀れでならんよ」
カロル「……」
704: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:35:10 ID:tvS/hVrMQc
団長「といって、まぁ…王国も胸を張って善良な国家と言えるかは別だがな。
身分の差や貧富の差、種族の差など区別したがるきらいがあり、内部では謀略の闇もはかり知れん」
団長「ワシも職業柄、口を伏せてきた経験は数知れず、だ」
母「…本当に大丈夫なんですか?あたし達を匿ったりして?」
団長「あぁ、それは全く構わんよ。心配せずとも邸内には腕利きの配下を護衛に付けてあるぞ?」
母「でもご家族がいらっしゃるんでしょう…?」
団長「憲兵の家族である以上、多少の危険は覚悟してくれているとも?」
母「……」
カロル「…団長さん」
団長「む?」
カロル「危なくなったら…ボクより家族を守ってあげてね?」ジッ
団長「……」
カロル「……」ジーッ
団長「そうなれば、な」ボソッ
母「……」
705: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:38:02 ID:8AFkZ.RUD6
―――団長の屋敷(客間)―――
カロル「ん〜!ふわふわ!ベッド大好き!」ポフッ
マルク「くぅ〜ん!」ゴロリ
ガチャッ
母「ふぅ…お風呂借りてきたわよ?坊やも入ってらっしゃい?」
カロル「うん!マルクも入ろう?」ナデリ
マルク「アンッ!アンッ!」シッポフリフリ
母「ダーメ?浴槽に毛が入っちゃうでしょ?後片付けが大変よ?」
マルク「」ガーン
カロル「そうだね。ごめん、マルク!また今度、ね?」ナデナデ
マルク「クゥン…」シュン
カロル「じゃあいってきまーす!」ガチャッ
母「いってらっしゃい?」
バタンッ
母「……」
マルク「あぅん?」
母「…なんだか身の回りがせわしなくなってきたわね。昔はこんなこと絶対になかったのに」ポフッ
マルク「わんっ!わんっ!」
母「…もう何がなんだか分からないわ。あたしは夢でも見てるのかしら」
母「坊やが国の英雄で…他の国にまで狙われてて…そしてまた王国に狙われて……全然、現実感がない」
母「あの子が求めてるのは普通の幸せなのに…なんでこんなに大きな事に巻き込まれちゃうの…?」ゴロン
マルク「わふぅー…」
母「あなたも同じよね?分かる訳がないもの?」クスリ
母「はぁ…」
706: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:40:38 ID:8AFkZ.RUD6
―――団長の屋敷(居間)―――
団長「はぁ…」
団長の妻「お疲れさまです。良かったら飲んで?」コトンッ
団長「ほう…豆コーヒーか」カチャッ
団長の妻「徹夜で見張るんでしょう?眠気覚ましにいいと思って?」ニコッ
団長「すまんな…」ズズッ
団長の妻「いいえ?お仕事なんですから?」
団長「息子はどうしてる?」
団長の妻「兵営で頑張ってるみたいですよ?あなたと働く為に?」
団長「ふふ…そうか」ニコッ
団長の妻「いつか同じ場所で働けるといいですね?」ニコニコ
団長「そうだな…。ラキアもいくつになった?」
団長の妻「今年で18ですよ?」
団長「大きくなったな?」
団長の妻「そりゃそうですよ?親が見てなくても子供は育つんですから?」ニコニコ
団長「思えばお前達には苦労をかけたな」
団長の妻「ふふ…今さらですよ?」
団長「…寂しい思いもさせたろう?」
団長の妻「……」
団長「陛下も休暇をくださると言ってくれた。この件のカタが着いたら軽く旅行にでも…」
団長の妻「いいのよ?」
団長「む…?」
団長の妻「大丈夫…私もあの子もいつでもあなたを待ってるから」
団長「……」
団長の妻「あなたがいくら忙しくしてても私達はこの家で待ってる。
だから無理しないで…やりたい事を続けて?」
707: 投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:42:42 ID:8AFkZ.RUD6
団長「……」コトンッ
団長「待ってる…か。そう言ってもらえるからこそ心置きなく職務に専念出来る」
団長「…会えない時間は待たせているワシまで寂しくなるがな」フッ
ガチャッ
団長「……?」
護衛1「団長!今しがた手紙が届きました!」つ【手紙】
団長「手紙だと?こんな夜中に誰からだ?」パシッ
護衛1「見知らぬ町人風の男で…身元を伺ったところ頼まれたから届けに来ただけだと」
団長「……?」ビリッ カサッ
団長「ふむ…ご苦労だった」スッ
護衛1「いえ!」
団長「…明日は厳重に警戒体勢を敷いてくれ。ワシは屋敷を空けるが彼らに危害が及ばんようにな?」
護衛1「どちらへ行かれるのですか?」
団長「ヤボ用だ。気にするな」
護衛1「失礼しました!」
団長「……!」ググッ
手紙『お前の息子は預かった。助けたければ明日の朝、7時にバックヤードのヘマトバザール跡地まで一人で来い』
団長「(ヘマトバザールの残党か…!よくも…!)」ギリッ
『危なくなったら…ボクより家族を守ってあげてね?』
団長「……くっ!」スクッ
708: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:46:21 ID:tvS/hVrMQc
>>687
支援ありがとうございます!頑張ります!
>>688
お待たせして申し訳ないです!
必ず完結させますので最後までよろしくお願いします!
709: 名無しさん@読者の声:2015/5/13(水) 22:47:38 ID:78/DFcHTqM
どうしよう団長さんにさりげなく死亡フラグが…カロルの為にも団長さんには死んで欲しくない
支援
710: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/14(木) 21:47:29 ID:ZxZMJt5S/g
>>709
団長がいなくなったらいよいよ主人公サイドの戦闘要員が0になりますねw
はたしてどうなってしまうやら…w
この窮地を切り抜けられるかでカロルの今後も大きく変わります!
遅くなるかもしれませんが乞うご期待!
支援ありがとうございました!
711: 爆発的に投下します! ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 21:38:50 ID:zzTcWJdqRE
〜〜〜朝〜〜〜
―――団長の屋敷(廊下)―――
護衛1「おはようございます!救い主様!」ピシッ
護衛2「救い主様!」ピシッ
護衛3「救い主様!!」ピシッ
カロル「おはようございます!」ニコッ
護衛's「」キュンッ
カロル「マルク!お庭で遊ぼ?」スタスタ
マルク「わんっ!」スタスタ
護衛1「癒されるなぁ…」ホンワカ
護衛2「普段は気難しい上級役人や貴族ばかり警護しているせいか、とても新鮮だ」ホンワカ
護衛3「しかし愛らしいな。あんな娘が欲しい」ホンワカ
母「ふわぁ…あっ…?」ハッ
護衛1「おはようございます!」
母「お、おはようございます…!」ペコッ
護衛1「よく眠れたようで!」ピシッ
護衛2「何かございましたら、いつでもお呼びだしください!」ピシッ
護衛3「すぐさま駆け付けます!!」ピシッ
母「あ、ありがとうございます…」カァァ
護衛's「」ドッキュン
スタスタ スタスタ
護衛1「あの子供にして、この親ありか…。あくびをしているところを見られて恥じらう仕草がなんとも言えん」モンモン
護衛2「着崩れた寝巻き姿が妙に色っぽかったな…」モンモン
護衛3「ホビット族と結婚も…ありだな!」ギンッ
712: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 21:40:17 ID:zzTcWJdqRE
―――団長の屋敷(庭)―――
カロル「なにしよっか?」
マルク「あんっ!」
カロル「あ、木の枝!」ヒョイッ
カロル「これで遊ぼう?」
マルク「ハッハッ!」シッポフリフリ
カロル「じゃあ投げるね!いっくよー?」
カロル「えいっ!」ブンッ
ピューン
マルク「」タタタッ
マルク「」パクッ クルリッ
マルク「」タタタッ
カロル「よしよし!おりこうさんだね!」ナデナデ
マルク「クゥン…!」スリスリ
団長「」スタスタ
カロル「あ、団長さん!おはよう!」フリフリ
団長「む?おぉ、早起きだな?感心!感心!」ニコッ
カロル「お出かけするの?」
団長「うむ。急な仕事が入ってな?すぐ戻るから心配は入らんが、あまり一人で出歩くんじゃないぞ?
庭先とはいえ、いつどこから刺客が現れるか分かったものではないからな?」
カロル「はーい!」ピシッ
団長「…では行ってくる」スタスタ
カロル「お仕事がんばってねー!」フリフリ
713: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 21:44:06 ID:zzTcWJdqRE
―――団長の屋敷(居間)―――
団長の妻「すみませんね!お客さんなのに家事手伝いみたいなことさせちゃって?」パッパッ
母「いいんです?他人様のお家で寛いでいるより、こうしてた方が気が楽になりますから?」フキフキ
団長の妻「ホント助かりますよ?この広いお家をいつも一人で掃除してますから?」
母「大変ですのね…?」
団長の妻「と言っても夫は外で働いてますし息子も兵営に住み込みで通ってますから…実際は楽をさせてもらってるんですけどね?」
母「じゃあこんな広いお家に実質一人で住んでらっしゃいますの?」
団長の妻「そうなんですよ!贅沢でしょう?ご近所の奥さん方からも羨ましがられてて?」
母「うふふ…でもちょっぴり退屈ですよね。一人だと持て余しそうですし」
団長の妻「そうですねぇ…」ピタッ
母「?」
団長の妻「近所の奥さん達を招いてお茶なんかしてますとね、言われるんですよ」
母「なにをですか?」
団長の妻「やれ『旦那や子供がいると大変だ』とか『こんな大きな家が欲しい』とか『あなたは楽でいいわね』とか……」
母「家事や育児に悩まされてる人からすると、やっぱり羨ましくなっちゃうんでしょうね?」
団長の妻「分かりますけどね…。分かるんです。恵まれてるんだなって自分でも思いますよ?」
母「そ、そんな…恵まれてるとまでは言いませんけど?」アセアセ
団長の妻「私からしますとね、あの奥さん達が羨ましいんですよ」
母「へ?」
団長の妻「1日の間に必ず誰かが家にいるんだと思うと…羨ましくてたまりません」
母「まぁ…?」
団長の妻「送り出す事も出迎える事もなく…誰もいないお家で掃除やお洗濯、食事の支度をして…」
団長の妻「広い食卓に一人前の料理を並べてみると…無気力になってしまいます。
誰もが羨む贅沢な暮らし…家での苦労がない生活…。
悠々自適だなんてお思いでしょうけど意外と面白味に欠けますよ?」
母「……」
団長の妻「もっと子育てに奔走してみたり家事に追い回されたり夫婦間で気苦労を重ねてみたかったな…とかちょこっと思うんですよね?」
714: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 21:46:43 ID:zzTcWJdqRE
団長の妻「…贅沢過ぎる悩みですよね。他の人に聞かれたら怒られちゃいそう?」クスッ
母「…そんなことないですよ?」
団長の妻「え?」
母「共感できます。あたしも家族を亡くしてから…何度も無気力になりかけましたもの?」
団長の妻「……」
母「時が空けるほど恋しくなりますものね…。
ふと思い出を懐かしんだりして…滲んだ記憶をなぞるたびにやりきれなさが募る」
母「あたしには坊やがいてくれた…。だから自棄にならずにいられたのかも…。
そうじゃなかったら今頃どうなってたか…恐ろしくなるわ?」ブルッ
団長の妻「……マリーさんのお子さん、朗らかでいい子ですね」
母「……?そうですか?」
団長の妻「はい。さっきも素敵な笑顔で元気に挨拶してくれて…とても気持ちのよい性格なんだなと?」
母「…ま、まぁ親バカなんですけど…自慢の子です?」テレッ
団長の妻「ふふ…私もね、主人と息子を愛してるんですよ」
母「えぇ、分かります?とても嫌い合ってるようには見えませんもの?」
団長の妻「そばにはいないけれど…いつも想ってます。だから辛くても頑張れるんでしょうね?」ニコッ
母「そうですよ?そうでなきゃ、こんなに広いお家を一人で清潔に保てませんわ?」
団長の妻「いつ帰ってくるか分かりませんからね。気は抜けません?」ニコニコ
母「うふふ!こっちの苦労も知らないで勝手ですものね、男って?」ニコッ
団長の妻「そうなんですよ!聞いてくださる?」
母「もちろん!聞かせてほしいです!」
ペチャクチャ ペチャクチャ
アハハハハハハ!
715: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 21:53:17 ID:zzTcWJdqRE
―――城下裏通り(廃墟)―――
団長「…来てやったぞ!?ワシも暇ではない!さっさと姿を現せ!?」
カツンカツン カツンカツン
「クッカカカ!わざわざご苦労なこったなぁ?」ザッ
団長「む!?仮面の男…?まさか昨夜の刺客は……」クルッ
「あぁ、この面が気になるか?俺もだ?視界が狭くて前が見えねぇよ?」
団長「…ならば外せばいいだろう?」ジッ
「それもそうだな…」バッ
ポトッ
団長「……!」
マドラス「クッカカカ!ザッと、こんなツラさ?」ズォォォン
団長「(ちらほらと古傷が目立つが、一際凄まじいのがあるな…)」
マドラス「そうジロジロ見るなよぉ?照れちゃうだろうが?なぁ?」ニタニタ
団長「刀傷が眉間から左目を通して頬骨まで達しておるが…よく動けるまでに回復したものだな?」
マドラス「あぁ、コレか?スゲーよなぁ?自分でも驚いちゃうぜぇ?
こんなバッサリ斬られちまって生きてんだもんなぁ?笑っちゃうよぉ?」ニタニタ
マドラス「コレよぉ…アレなんだわ?バンブルっつー南の港町でよぉ…11人とチャンバラやって付けられた傷なんだわ?」
団長「……!?」
マドラス「クク…俺様とした事が失敗だったなぁ?ありゃ良くねーわ?
賞金首は取り逃すわ、仲間に斬られて惨めにトンズラこくハメになるわ…いやぁ失敗したなぁ…」
団長「き、貴様は……」
マドラス「失敗続きで汚名を背負ってよ。自慢のツラも傷だらけで見ちゃらんねぇ?
片目を失い、犯罪者に仕立て上げられ、追う側だった筈がいつの間にか追われる側だぁ…」ブルッ
団長「やはりそうか…!」
マドラス「南の賞金王と呼ばれた、この俺様が…ホビットごときにしてやられてザマぁねぇわ…!なぁ!?」バッ
シュボッ ボッ ボッ ボッ ボッ ボッ
団長「(一斉に明かりが灯った…!?)」ピクッ
716: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 21:57:53 ID:zzTcWJdqRE
ラキア「んーっ!んーっ!」モガモガ
団長「ラキア!!」ハッ
マドラス「おっと?よく見なよ?」
手下1「」ギランッ
団長「っ…!?」
マドラス「動けば息子の命はねぇ…ってな?言ってみたかったんだ、こういうの?ククク!」ニタニタ
団長「き、貴様ぁ…!仮にも剣士だろう?誇りはないのか!?」ワナワナ
マドラス「ほー?やっぱり親子ってなぁ似るんだなぁ?おめーの息子も同じようなこと言ってたわ?」
団長「…今すぐ息子を解放しろ!?さもなくば地獄に突き落とすぞ!?」
マドラス「地下で怒鳴るなよ?響くだろうが?」
団長「たかが10人そこらのゴロツキまがいなどワシに掛かれば1分でカタが着くぞ…!?」ギロッ
マドラス「1分か…。そんだけありゃ人質を刺し殺すには余裕だぜ。なぁ?」
手下1「」ピトッ
ラキア「!?」ビクッ
団長「ぐぬっ…!?」
マドラス「ま、そう焦んなって?まずは要求を言わせてくれや?」
団長「救い主の首…か?」
マドラス「話が早くて助かるぜぇ…」ニタァァァァ
717: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 22:02:58 ID:zSdvgd11Jg
団長「やめておけ」
マドラス「あ?」
団長「たとえ首を奪ったとしても賞金など下りんぞ。辛い牢獄生活が待っているだけだ」
マドラス「……」
団長「陛下が帰国なされば彼は正式に民として迎え入れられる。遅かれ早かれ、懸賞金など取り下げられるのだ。もはや彼を付け狙う必要はなかろう?」
マドラス「…クク!」
団長「?」
マドラス「あのホビットの歯を砕いてよ?口いっぱいに油を注いで火を点けてやんだ?考えだだけで最高だろぉ?」ニタァァァァ
団長「……!?」ゾクッ
マドラス「金じゃねぇんだよなぁ…。ここまでコケにされちまったんだ…?ヤれる事ヤっとかねぇとよ?」ニシシ
団長「そんな事をしてなんになる!?罪が重くなるだけではないか!?」
マドラス「罪が重かろうがなんだろうが…ここまでくりゃ死刑だろ?」
団長「……!」
マドラス「どうせ死ぬんだ。やりてぇようにヤるさ?」
団長「は、早まるな!ワシが便宜を図ってやってもいいぞ!?」
マドラス「ヒヒヒ……」クックッ
団長「!?」
マドラス「ヒャハハハハハハ!!!」ゲラゲラ
団長「な、なんだ…?」
マドラス「おい、ラキアちゃんよ?聞いたか?親父が堂々と不正を働こうとしてやがるぜ?」
ラキア「……」モガモガ
団長「くっ…!」
マドラス「ありがたい申し出だがよぉ?いらねーわ?」ニタニタ
団長「なにぃ…!?」
マドラス「あのホビットにコケにされたまま生きてられるほど寛容じゃねぇし…そこまでこの世に未練なんざねぇよ?」
団長「(話し合いは無駄か…。隙を見てラキアを取り戻すしかなさそうだな)」
718: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/20(水) 22:06:30 ID:zSdvgd11Jg
マドラス「さぁて…そろそろ本題に入るか?」
団長「貴様の要求を呑む気はないぞ!」
マドラス「あーそう?」パチンッ
手下1「」ヒュッ
ラキア「むぐーっ!?」ズブッ
団長「き、貴様ぁぁ!?」ダッ
手下2「動くな!」バッ
手下3「止まれ!?」バッ
団長「邪魔だぁぁぁ!!!」ブンッ
ドゴッ バギィッ
手下2「ぶべらっ!?」ズザァッ
手下3「おんぐっ!?」ドシャッ
手下4「くっ…!ぜ、全員でかかるぞ!?」
マドラス「おい、よく見ろや!?」
団長「許さんぞ…!」スラッ
マドラス「ちっ…よく見ろってんだよ!?」
団長「あぁ…!?」ジッ
ラキア「うっ…むぐーっ…!」タラァァ
団長「……!」ハッ
マドラス「浅く刺しただけだろうが?大事な人質をそう簡単に手放すかよ?」
団長「よ、よくも息子に傷を…!」
マドラス「息子ったって18だろ?自立してるような歳じゃねぇか?肩を刺したぐらいでわめくなよ?」
団長「ゲスめ…!目の前で家族を痛め付けられて歳も何もあるか…!?」ギリッ
マドラス「へっ…まぁいいさ?こっからは楽しい時間だ?ちょっとした遊びをしようぜぇ?」ニヤリ
団長「なんだと…!?」
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