2chまとめサイトモバイル

2chまとめサイトモバイル 掲示板
カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


678: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 21:50:27 ID:F/VxIXCkFs
―――城(回廊)―――

政務官「よくぞ探し当てた。ご苦労だったな。陛下もさぞかし喜ばれることだろう」

団長「どういうことだ?」

政務官「ん?」

団長「陛下がまだ戻っておらんとはどういうことだ!?」ガッ

政務官「…離してくれないか?痛いんだが?」ギブギブ

団長「ふん…!」パッ

政務官「陛下は東の国と交渉中だ」パッパッ

団長「予定では既に戻っておられる筈だ!」

政務官「長引いているのだろう。護衛や親い役人も付けてある。問題あるまい?」

団長「…彼をどうする気だ?」ギロッ

政務官「彼には陛下に代わって私から話そう」

団長「何を話すと言うのだ?彼を抹殺しようと画策してきた分際で……」

政務官「言いがかりはよしてくれ?」

団長「城中の人間を集めた理由を説明してもらおうか?」

政務官「なぜお前を通す必要がある?」

団長「なにぃ…!?」イラッ

政務官「私は陛下の後見人であり最高位の役人だ。陛下のいない間、この国の全権を預かっている?」

団長「……!」ギリッ

政務官「あまり待たせておくのも無礼だ。早速、始めてしまおう」カツンカツン

団長「…何を企もうと構わん。陛下がおらずともワシがいる限り、貴様のくだらん策略などたやすく砕いてくれるわ!」

政務官「何を勝手に息巻いてるんだ?バカが?」クルッ

団長「ぬ…!?」

政務官「企みなどないよ。私にはな」カツンカツン

団長「(私には…?)」
679: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 21:53:02 ID:YmrijqMZ4g
―――謁見の間―――

政務官「お待たせして申し訳ない?」

カロル「あっ!ヒメくんのお母さんを説得してくれた人間!」

母「そうなの?」キョトン

政務官「早速なんだが…」

カロル「えへへ…なんだか緊張するね?」モジモジ

母「そうね…。お友達と言っても国王様だからきちんとご挨拶しましょう?」

政務官「残念ながら陛下はここにはいない」

カロル「え?」

政務官「…君を王国の民として迎え入れたい。これは陛下の意思である」

母「あ、あの…国王様はいらっしゃらないんですか?」

政務官「そうだ。だがすぐに戻ってくる」

団長「……」ジッ

政務官「君たちの今後についてだが…司祭が運営する孤児院で引き取ってもらえるそうだ」

カロル「宣教師さま!」パァァ

政務官「…陛下の代理として伝える事は以上だ。
ここからは個人的に質問させてもらいたい?」ジロッ

カロル「?」

政務官「つかぬことをお伺いするが…この2年、なにをしていた?」

カロル「っ!」ドキンッ

政務官「事態が終息した直後に行方を眩ませたのは君の意思か?
それともなくば何かやむにやまれぬ事情が?」

カロル「……」

政務官「…君がもしも自分の意思で姿を消したとなれば私は許すべきではないと考えている」

団長「政務官殿、お言葉が過ぎるのではないか?」ザッ

政務官「…下がれ」ジロッ

団長「そうはいかんな?」ギロッ
680: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 21:55:13 ID:YmrijqMZ4g
団長「ここは彼の帰還を皆で祝し、快く迎えてやるべきではないのか?」

政務官「下がれと言うんだ?」

団長「貴様が陛下の代理を務めるのは認めてやるが…代理ならば代理としての立ち振舞いを心掛けよ?
陛下の意に沿わぬ言動や私情は控え、代理の役目をまっとうせんか!」

政務官「もしこの場に陛下がいたならば間違いなく言及した筈だがね?」

団長「後で陛下が個人的に聞けばいい話だ。わざわざ皆の前でする必要はなかろうが?」

政務官「国に大きな影響を与えた彼だ。説明責任が生じるだろう?」

団長「貴様ごときが出過ぎたマネをするなと言っているのだ…!」ビキビキィッ

政務官「貴様ごときが私に指図するな?」ピキィッ

ザワザワ ザワザワ

母「あ、あの!!」アセアセ

政務官「…貴方は?」

母「この子の母親です!」

政務官「お母様ですか。それで何か?」

母「実は坊やが姿を消してしまったのは……」

カロル「ボクがお母さまに旅しようって言ったんです」

母「えっ」

団長「!?」

カロル「誰もいない所で二人、静かに暮らそうって」

政務官「つまりそれは…君の意思で?」

カロル「そうです」

母「坊や…?なにを言ってるの…?」オロオロ

カロル「なんで?ホントのことじゃない?」

母「違うわよ!あたしが……」

カロル「お母さまはイヤがってたよ。ボクがムリやりわがまま言ったんだもの」

母「(こ、この子…また……)」ハラハラ
681: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 21:59:11 ID:YmrijqMZ4g
政務官「では2年間、追跡を避けてきたのも意図的に?」

カロル「はい。人間に会わないようにしてました」

母「や、やめなさい!」ガッ

カロル「……」

母「いいのよ!お母さんが本当のこと言うから!」

政務官「なんだ、君はお母様を庇っているのか?」

母「…あたしからお話します」

政務官「では2年間、陛下の心に傷を付けてきたのは君のお母様だった訳だ?」

母「……!?」

団長「政務官!貴様、いい加減に……」

政務官「以前、陛下が侍女の一人にふと漏らしたそうだ」

カロル「……」

政務官「『あいつは本当は僕達に会いたくなくて逃げているのかな』と……」

カロル「」ズキンッ

政務官「事情はどうあれ、陛下の悲しみは深い」

団長「くっ…!」ギリッ

政務官「そして陛下を悲しませた罪は重く捉えねばならない」

母「(あ、あたしの…せいで……)」ブルッ

政務官「救い主不在によるホビット族との融和は未だに難航し、陛下が君の捜索に使った労力は極めて甚大だ?
その上、教団までもが君の保護に執着し、本質的な活動をおろそかにしてしまった結果、ホビット族による襲撃事件まで発生している?」

カロル「……」

政務官「…で、姿を消した理由が単なる気まぐれか。ふふ…」クスッ

カロル「ごめんなさい…」

母「ち、違うんです!あたしが人間を嫌ったから…坊やはあたしを孤独にしたくなくて…!」アセアセ

カロル「ううん。ボクが決めたことだから…ぜんぶ」

団長「お、おい…小童!」アセアセ
682: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 22:03:00 ID:F/VxIXCkFs
政務官「まぁ安心したまえ。あくまで個人的な意見であって君たちの今後を左右するものではない」

カロル「……」キュッ

政務官「ただ私から君に言っておきたい事がある」

カロル「……?」

政務官「確かに国の歪みを修正したのは君の勇気と絆の力が大きく関わっているだろう。それについては感謝申し上げる」

政務官「しかし国はお前の為にある訳ではない。
そこに住まう大勢の民が我々の力を必要としているんだ」

カロル「……」

政務官「たった一人の為に大勢が後回しにされてきたた…。
陛下の友人だからといって何もかもが許されると思うなよ?」

カロル「…はい。ホントにごめんなさい」

母「〜〜〜!」プルプル

団長「(卑劣な男め…!)」ギリッ
683: 政務官のセリフが「きたた」になってる…orz ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 22:06:54 ID:YmrijqMZ4g
―――城(通路)―――

スタスタ スタスタ

ドレッド「あの場に俺達が揃う意味はあったのか?」スタスタ

フィクサー「どうだろうな」スタスタ

ドレッド「しかしなんだ…。あれじゃまるで公開処刑じゃないか?
救い主どころか疫病神扱いだ?政務官は本気で迎え入れる気があるのか?」

フィクサー「…あぁ、公開処刑だな」

ドレッド「なぁ、フィクサー軍長?"預言者"の異名を取る貴方から見て政務官の目的はなんだった?」

フィクサー「気になるのであれば考えてみては?」

ドレッド「…分からないから聞いてるんだ」

フィクサー「分からないのは何も考えていないからだ」

ドレッド「嫌味だな?じゃあ貴方は分かると言うのか?」

フィクサー「分からない」キッパリ

ドレッド「は!?」

フィクサー「余計な労力を使わないよう何も考えていなかった」

ドレッド「お、お前…!」カッ

政務官「お話し中申し訳ない。両軍長殿」

ドレッド「こ、これは政務官殿!我々になにか?」

フィクサー「……」

政務官「…実は折り入って相談が?」

ドレッド「は?」

フィクサー「構いませんよ。応じましょう?」

政務官「それはありがたい?ではあちらの部屋へ?」

ドレッド「はぁ…?」

フィクサー「……」

キィィィッ バタンッ
684: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 22:11:43 ID:F/VxIXCkFs
―――城(客室)―――

カロル「いいこにしてた?」ナデナデ

マルク「あんっ!」スリスリ

団長「…力及ばず申し訳ない」ペコッ

母「い、いえ!とんでもないです?」

マルク「あう?」

団長「…あれだけ人の目がある場ではワシも不用意に口を挟めなくてな」

カロル「いいよ。リルラさんの言うこと間違ってないもの?」

団長「いや、しかし…奴は明らかに君を貶めようとだな!」

カロル「そんなことないよ。ちゃんと叱ってくれて…ボクは嬉しかったな」

母「…なんであんな風に言ったの?」

カロル「へ?」

母「あ、あたしが…あたしが…悪いんじゃない。あたしが……」ブルブル

カロル「…お母さまはなんにもしてないよ?
旅をするって決めたのも静かに暮らそうって言ったのもボクでしょ?」ニコッ

団長「…あえて聞かずにいたがなぜ姿を消したのだ?」

カロル「えっとねー…」

母「…もういい。あたしが話すから…これ以上やめて」

カロル「……」

母「あなたは守ってくれようとしてるんでしょうけど…そのたびにあたしは惨めになるのよ」

カロル「…どうして?ボクはホントのことを話してるだけだよ?」

母「いいの。あたしを悪者にしたくないんでしょう?でも本当にいいから……」

カロル「考えすぎはよくないよ?」

母「え?」
685: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 22:19:59 ID:YmrijqMZ4g
カロル「誰が悪いかなんて考えてなかったもん。
それよりまたみんなで遊べるといいなってワクワクしてたの!」

母「けど…あたしがしたことは……」

カロル「楽しいこと考えよ?ね?」ニコッ

母「坊や…」

団長「なにか負い目に感じているのなら話さなくてよいのですぞ?
先ほど政務官があなた方を叱責したのは奴の策でしょうからな」

母「策?なんですか、それ…?」

団長「ここではあまり…。今夜は離れにあるワシの屋敷に泊まりなさい」

母「? こちらに案内されましたけど?」

団長「…聞き耳を立てられては敵わんのでな」

母「は、はい?」

団長「分かっているぞ!扉の外に張り付くリルラの手の者よ!?
話が気になるのなら入ってこい!聞かせてやるぞ!?」

母「え?」チラッ

ダダダッ

母「…な、なんですか?」

団長「政務官の手先だ?ああして随時、陛下やワシの身の回りを探っておってな?」

母「なぜルフィアスさんが…?お仲間なんですよね?」

団長「まぁそれもワシの屋敷で話そう……む?」

カロル「団長さん?」

団長「おい、まだおったのか!?懲りぬ連中め!?」

ガチャッ

給仕1「夕食をお持ちしました!」カラカラ

団長「」ガクッ

給仕1「あ、ルフィアス様だ?おかえりなさい!」

団長「お前は…陛下の侍女か」シラー
686: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 22:21:38 ID:F/VxIXCkFs
カロル「おいしそう…」ジーッ

給仕1「おいしいよ?食べて、食べて!」ニコッ

母「食べてからにしましょうか?」

カロル「うん!」

団長「…一応聞いておくが料理を作ったのは誰だ?」

給仕1「ポイズン副料理長が腕によりをかけて作りました!」

団長「…夕食はワシの屋敷で振る舞おう。行くぞ?」ガタッ

カロル「えー!」

給仕1「なんでですか!?」

団長「味見してみろ」

給仕1「いけません!お客様の料理を召し上がるなんて!」グーッ

団長「腹が鳴ってるぞ。いいから食ってみろ?」

給仕1「しょうがないなぁ、もう!食べますよ!食べたらいいんでしょう!?うまっはふっもぐもぐ!」ガツガツ

団長「言葉とは裏腹にたいした食いっぷりだな…。宮仕えが手づかみはどうかと思うが…」ウプッ

カロル「いいなー…」ジュルリ

団長「いいのか?ワシは食欲を削がれたがな…」

母「あら?あれぐらい普通よ?ねぇ、坊や?」

カロル「うん!ふつー!」

団長「……」

給仕1「」バタッ

カロル&母「」ビクッ

団長「やはり毒を盛られておったか」

カロル「えーっ!?」ビックリ

母「ぼ、坊や!はやくっ!早く癒してあげて!?」アタフタ
687: 名無しさん@読者の声:2015/5/12(火) 12:54:17 ID:kJflMnSW/o
C
688: 名無しさん@読者の声:2015/5/13(水) 08:07:37 ID:oP1S4NqWyg
気長に待ってる(´・ω・`)C
689: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:02:48 ID:tvS/hVrMQc
〜〜〜夜〜〜〜

―――城下町(北区市街)―――

母「まぁ…夜なのにとても明るいんですのね?」キョロキョロ

カロル「前より灯りが増えてる!」スタスタ

マルク「わんっ!わぅん!」シッポフリフリ

団長「町並みも少し変わっただろう?」スタスタ

カロル「うん!大きいお家が並んでるね?」

団長「前はこの一帯が胡散臭げな博打場や飲み屋街だったが今ではほとんど閉店してな。
ああした図書館や学習院、兵営等の施設が建っている」

カロル「…それって何をするところなの?」

母「図書館は誰でも自由に本が読める所で学習院はお勉強をする所よ?」

カロル「へぇ!そうなんだ!じゃあへいえいは?」

団長「軍の兵士達が住まう施設だ。見てみろ?
鉄柵の向こうにいくつもの家屋が並んでいるだろう?
兵の数が多いので複数の棟に分けて住居や食堂、訓練所等を配置しているのだ?」

カロル「わぁ…!すごーい!広いんだね?」

団長「あぁ、あの敷地だけでも村6つ分はあるだろうな」

母「…あら、あれって?」

カンッカンッ ギンッ キキンッ

団長「うむ、兵達はああして夜遅くまで鍛練に励むのだ。
いついかなる場合においても戦う覚悟を持てるよう腕を磨く為にな」

カロル「戦う為なんだ…」シュン

団長「バックヤードも今では難民の保護施設やホビットの住宅地として生まれ変わっているのだぞ?」

カロル「ボクと王子さまが連れてかれちゃったとこだよね!」

団長「うむ、今は住居を分けているがいずれは境なく暮らせるよう陛下も考えてくださっておりますぞ?」

母「…楽しみにしてます?」ニコッ

団長「無論、叶いましょうぞ!救い主である小童も戻ってきたことですしな!」ニコッ

カロル「ボクがすくいぬし…まだ慣れないなぁ。ムズムズする」ムズムズ
690: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:05:19 ID:tvS/hVrMQc
ザザッ

団長「む?何者だ!」

ゾロゾロ ゾロゾロ

母「な、なに…?なんなの?」オロオロ

剣士1「そのボウズが救い主か?」スラッ

カロル「……」ポカーン

剣士1「ん?救い主じゃないのか?」

カロル「へ?あ、そっか!ボクだったんだ!」ハッ

母「い、言わなくていいの!」アセアセ

カロル「あっ…そうだよね」

団長「誰に雇われたか知らんが刃を向けられては容赦出来んぞ?」スラッ

剣士1「すっこんでな、おっさん?邪魔くせぇと切っちまうぞ?」ニヤリ

団長「鞘に納めるか、憲兵に出頭するか決めるがいい?」スラッ

剣士1「威勢がいいね?こっちは7人いるんだぜ?」

団長「7人か。馬車移動に凝り固まった身体をほぐすにはちょうどよい数だ」

剣士1「ケケ!ノコノコ歩いてくたぁアホな輩共だ?」

団長「乗り物では死角が多い上に急な事態に応じにくい。身軽であれば楽でいい」

剣士1「やっちまうぞ!切り刻んで膾にしちまえ!」ダッ

ダダダッ

母「きゃっ!?」ビクッ

カロル「……!」バッ

マルク「グルルルル!」フシューフシュー

団長「ワシの後ろでじっとしていろ!」ダッ
691: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:08:00 ID:8AFkZ.RUD6
剣士2「ぎゃっ!!」ドサッ

団長「貴様で最後か。あっけなかったな?」ジロリ

剣士1「ひっ…ひぃ…!て、てめぇ…!」ガタガタ

団長「誰の指図だ?」

剣士1「っ…!」ググッ

団長「言え?」ジリッ

剣士1「し、知らねぇよ!!」

団長「言え!!」カッ

剣士1「うっ…か、仮面をした謎の男から金を渡されて…成功したら倍やるって言われたんだよ」ブルブル

団長「そいつは何者だ?政務官の手の者か?」

剣士1「だ、だから知らねぇって!?」

団長「…ふん、まぁいい。詳しい事情は後回しだ。まずは憲兵に出頭してもらおうか」

剣士1「み、見逃してくれよ!俺達は頼まれただけで……」

団長「」ザッ ブォンッ

剣士1「」ビクッ

団長「」ピタッ

剣士1「あ、あぁぁあうぅぅ……」ジョーッ

団長「大の男がこの程度で漏らすとは情けない…。切っ先を突き出しただけだろうが?」スッ

剣士1「あ、あぁぶ…あぶね…だろ?」ガクガク

団長「得体の知れぬ男から依頼を受け、無関係の者に刃を向けるのはこれ以上に危険ではないのか?」

剣士1「ぐっ…!」

団長「あとは署で話せ?行くぞ?」ガッ グイッ

剣士1「うぐぅ……」ガクッ

母「る、ルフィアスさんってすごい方なのね…?」

カロル「うん!かっこいいよね?」

マルク「クゥン」シッポフリフリ
692: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:10:00 ID:8AFkZ.RUD6
―――物陰―――

マドラス「ククッ!やるねぇ?腐っても剣士のはしくれだった奴らを一人で返り討ちにするたぁな?」

???「あのくらい当然ですよ」

マドラス「さすがに王国最強を謳われるだけはあるな?」

???「……」

マドラス「だが…その血を引く息子が裏切りか。因果なもんだぜ?なぁ?坊っちゃん?」

団長の息子「坊っちゃんではありません。ラキアです」

マドラス「へっ…悪うござんした?で…本当にいいのか?」

団長の息子(ラキア)「フィクサー軍長から話は聞いています。何も問題ありません」

マドラス「クッカカカ!実の親子で哀れなサダメだ?」

ラキア「俺はもう…あの方を父と認めてはいない」

マドラス「ほー?」

ラキア「……!」ギリッ
693: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:12:17 ID:8AFkZ.RUD6
〜〜〜回想〜〜〜

―――城下裏通り(旧バックヤード)―――

ムオオオオオン

ラキア「どうして俺をこんな所に?」オロオロ

マドラス「まぁまぁいいからよ?なぁ?」ポンッ

ラキア「……?」オロオロ

マドラス「社会見学さ?よく見な?」

浮浪者2「ひっ…ひひっ…ひひっ…」フシューフシュー

浮浪者3「あぁもう!バッカじゃねぇの!?なんで今日はねぇの!?」ガサゴソ

浮浪者4「うひょっ…カビパン!ごちそう!うひょー!?」ウヒョウヒョ

浮浪者3「寄越せ!?」ガッ

浮浪者4「な、なにすんじゃい!?」バッ

ドカスカバキボコ

浮浪者5「おっ…シケモク…んー」ヒョイッ

マドラス「けっ!ゴミ溜めに群がる糞蝿共が…クセークセー」

ラキア「…あれは何をしてるんだ?」ジーッ

絵描き「ぐふ…ぐふふ〜」カキカキ

マドラス「なんだ、ありゃ?いい歳こいて壁に落書きか?」

絵描き「らぐがぎではなーい!かいがだぁー!?」ガーッ

ラキア「絵画?その染み汚れが?」

絵描き「げいじゅつなのだー!!わはははは!!」ウヒャウヒャ

浮浪者6「あーダンナ!またもったいないことして?
潰れたトマトや腐った卵は滅多に回ってこないんだから壁にぶちまけちゃダメだって!」スタスタ

絵描き「わたしのさいのーにシットするがいー!!わはははは!!!」ウヒャウヒャ

浮浪者6「ちっ!話の通じねぇ没落貴族が!?」

ラキア「(没落貴族…?)」
694: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:13:42 ID:8AFkZ.RUD6
絵描き「ん?こぞー!なにみてる?デッサンか!わたしのげいじゅつのモデルになりたいんだな!?」ニヒヒヒ

ラキア「あなた…もしやランベルヤ家のバルガン侯爵では?」

絵描き(バルガン)「」ピクッ

ラキア「やはり…そうでしたか」

バルガン「ウガアアアアアアア!!!!」ダンッダンッ

ラキア「おやめください!石の壁に頭を打ち付けたら……」ガッ

バルガン「」フラッ ドタッ

マドラス「お、くたばった」

バルガン「」ピクピク

ラキア「(とても同じ人とは思えない…)」

浮浪者6「ラッキー!気絶してる間に持ち物抜いちまお!」ゴソゴソ

ラキア「やめろ!?」バッ

浮浪者6「なにすんだよぅ!?」

ラキア「他人の物を盗むなんて悪党のすることだ!」

浮浪者6「こうでもしなきゃやってけねーんだよ!!」

ラキア「なら…」スッ

浮浪者6「……!」

ラキア「少ないがこれで…」ジャラッ

浮浪者6「ざけんなっ!?」バシッ

チャリンチャリン

ラキア「な、なにするんだ!?」

浮浪者6「金なんかもらったってなぁ!小汚ないナリじゃどこも入れてくんねぇわ!?鼻つまんで門前払いされんのがオチだ!?」

ラキア「うっ…」

浮浪者6「オメーもいつこうなるか分からんぞ!?善人ぶって偉そうにしてんじゃねぇや!?若僧が!?」

ラキア「……」

マドラス「」ニヤニヤ
695: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:15:24 ID:tvS/hVrMQc
ラキア「これは一体…バックヤードは生まれ変わっていたんじゃ…?」

マドラス「実質、なにも変わっちゃねぇよ。いくらお国が動いてもあーやってあぶれる奴は出てくる?」

ラキア「え…!?」

バキッ ガッ ゴッ ドカッ

裏通りのホビット1「あっ!ぐっ!や、やめっ…」ギュッ

青年1「ぎゃははははは!!」ブンッ

裏通りのホビット1「ぎゃっ!」ドフッ

青年1「おら、金だよ!金!いっちょまえに働かせてもらってんだろ!?」

裏通りのホビット1「こ、このお金は…病に伏している祖父の薬代です…。お願いします…。見逃してください…」ゼェゼェ

青年1「だってよ?ぎゃははははは!!」

青年2「いいから金だよ!出せってんだよ?」ブンッ

バキィッ

裏通りのホビット1「っ…!」ヒリヒリ

青年3「どうせ俺らじゃなくても浮浪者の集団に襲われんだから一緒だろ?」

ラキア「やめろぉっ!!」バッ

青年1「は?」クルッ

ラキア「集団でか弱いホビットから強奪するなんて君達には誇りというものがないのか!?」

青年1「誇り……だってよwwwww」ゲハハハハハ

青年2「空気中にいっぱい飛んでるよー?」ヘラヘラ

青年3「そりゃ埃だろ!」ビシッ

青年2「そうでしたwwwww」ゲハハハハハ

ラキア「こいつら…!」
696: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:16:48 ID:8AFkZ.RUD6
裏通りのホビット1「た、助けてください!お礼は必ずしますから!」アセアセ

ラキア「大丈夫だ。心配するな!」

青年1「は?なになに?なんなの、さっきから?」

青年2「いとウザし」ペッ

ラキア「やめる気がないなら憲兵に通報するぞ」

青年3「すればー!?」ベロベロバー

ラキア「は…!?」

裏通りのホビット1「け、憲兵……」シュン

ラキア「?」

裏通りのホビット1「意味ないですよ…。憲兵には何度も相談しましたけど…助けてくれないです」

ラキア「なっ…!」

青年1「そゆこと!」ドヤァッ

青年2「俺達さー?金欠の度にコレやってんだよね!」

青年3「俺達の学習院じゃみんなやってるぜ!今年のトレンド、イチオシ!」

ラキア「そんな…ウソだろ?」ガクッ

マドラス「ま、気ぃ落とすなって!」ポンッ

ラキア「マドラス…さん」

マドラス「こういう時はよ、これに限るぜ?」ポキッポキッ

青年1「な、なんだよ?暴力か?憲兵に訴えるぞ?」オロオロ

マドラス「たかだかガキ3人がボコボコにされたくらいで憲兵が動くか?」ニタァァ

青年1「……!」ゴクリ

マドラス「いっくぜー?」ダッ

青年1「や、やめっ…」

バキィッ ゴッ ボカッ ズダァンッ ドカッ
697: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/13(水) 22:21:13 ID:tvS/hVrMQc
裏通りのホビット1「助けてくれてありがとうございました…」ペコリ

マドラス「礼をするっつったよなぁ?」ニヤニヤ

裏通りのホビット1「」ビクッ

マドラス「まぁいいぜぇ?あいつらの懐から徴収してやったからよ?残りは善意から差し引いといてやらぁ?」ジャラッ

裏通りのホビット1「は、はは……」ヒクヒク

ラキア「……いつものことなのか?」

裏通りのホビット1「まぁ…そうですね。今日はマシな方です。
お金とかじゃなくて憂さ晴らしに八つ当たりする人も来ますから」

ラキア「……」

裏通りのホビット1「…王国は裏通りを僕らの住み処として提供してくれて、住み良いようにこっちにもお店や市場を作ってくれたりしてすごく助かってます」

裏通りのホビット1「だけど…表通りから難民が流れてきて…僕らをからかう人間がいじめてきて…全然…まともに…暮らせません」ウルッ

裏通りのホビット1「教団や王国も…上の人たちは頑張ってくれてるんです!
でも…その人たちがいないと…なにもしてくれません!?」ウルウル

ラキア「どうやって生活を…?」

裏通りのホビット1「働き口も少ないので…いろんなお家を掛け持って使用人みたいな事をしてます」

ラキア「……」

裏通りのホビット1「最初はお金の事とか分からなくて物々交換を申し出たら笑われちゃいました…。
今では何より大切な物だと分かってます…。みんなが欲しがるのも当たり前です」

裏通りのホビット1「慣れない家事や雑用にもたついちゃうんで叱られたり足蹴にされて…賃金も少なかったり貰えなかったりで…すごく貴重で大事にしてます」ギュッ

マドラス「よし、どうでもいいな!次の社会見学行くぞ?」

ラキア「ま、待ってください!俺を連れ回して何を……」

マドラス「フィクサー軍長に言われなかったか?俺に協力しろとよ?」

ラキア「だから何を…!?」

マドラス「お前が気持ちよく協力出来るように教えてやってんだよ?この国の現実をな?」スタスタ

ラキア「」チラッ

裏通りのホビット1「」ペコリ

ラキア「っ…!」キュッ
992.81 KBytes

名前:
sage:


[1] 1- [2] [3]最10

[4]最25 [5]最50 [6]最75

[*]前20 [0]戻る [#]次20

うpろだ
スレ機能】【顔文字