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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


667: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/3(日) 13:52:49 ID:Oe/tkJ1HxY
―――採掘場の地下道(廃棄処理場)―――

ズル…… ズル……

労働者1「お…もっ……ちから…はいんねぇよ」ゼェゼェ

コポコポ シュコォォォオ

労働者1「はぁ…はぁ……はぁ…」

労働者1「(相変わらずスゲー臭いだな……)」ツーン

労働者3「」ダラァーン

労働者1「……」スッ ゴソゴソ

労働者1「ちっ…処分する前に持ち物だけくすねときたかったがなんもねぇな」

労働者3「」バッ

労働者1「ひっ…!?」ギョッ

労働者3「しっ!静かにしろ?」

労働者1「お、おま…死んだんじゃ…?」

労働者3「演技だよ、演技?なかなかいい芝居だったろ?」ニヤリ

労働者1「な、なんで…?」

労働者3「おー痛ってぇ…!この生臭い穴蔵を抜ける為さ」ヒリヒリ

労働者1「あんたナニモンだ?こんなムチャして見つかったらヤバいよ!」

労働者3「俺かい?俺は勇気ある民"イアマン"の一員さ!」

労働者1「い、イアマン……過激な反逆者集団じゃないか!?」

労働者3「これも一つの縁だ?あんたも行こう!準備は済ましてある!」

労働者1「……!ここを出られるのか!?」

労働者3「あぁ、脱出口は用意した。あとは出て外の仲間と合流するだけだ」

労働者1「脱出口なんてどこにあるんだ!?」

労働者3「ふふっ!」
668: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/3(日) 13:54:40 ID:Oe/tkJ1HxY
労働者3「死体や廃棄物の処理に使うこの硫酸の泉を……」

労働者1「バカ言うな!?そんな恐ろしいこと出来るか!?」

労働者3「まだ何も言ってないだろ?」

労働者1「だいたい分かるよ!こん中に潜るんだろ!?」

労働者3「潜らないよ。死ぬだろ。頭おかしいんじゃないのか、お前?」

労働者1「な、なに…!?じゃあ他にどうやって!?」カチンッ

労働者3「泉から硫酸を汲んで最奥にあるアルトマリン鉱石の採掘現場に行く」

労働者1「!?」

労働者3「そこに地上への出口をこさえたんだが見つからないように蓋をしてあってな。その蓋を溶かすのに使う」

労働者1「で、でも硫酸なんてどうやって…?」

労働者3「これを使え」つ【瓶】

労働者1「え…!」パシッ

労働者3「安心しろ。溶けない材質の物だ。だが汲む時は慎重にな?
手を滑らして指先から肘まで溶けちまったら外に出られても格好が付かないぞ?」

労働者1「……」ゴクリ

労働者3「ふっ…なぁに大丈夫さ!俺を信じろ!こんな地の底とはおさらばしようぜ?」

労働者1「け、けど…バレたら……」ブルッ

労働者1「バレたら……あ、あぇぅあ……ふ、ふっ…うあぁぁぁああ!!」ガクガク

労働者3「」チャポッ

労働者1「……!?」

労働者3「この硫酸は幾千の同志の命を吸ってきた。言ってしまえば死者の無念そのものさ」カパッ ギュッ

労働者3「同志達の念が詰まったコイツで魔性のファルージャの手下共に一泡吹かすんだ!最高にイカすぜ?」

労働者1「……!」ブルブル
669: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/3(日) 13:57:18 ID:O9RlS5K6h6
―――採掘場の地下道(最奥の採掘場)―――

労働者1「ここだな…!」ザッ

ガラガラ ガラガラ

ガキーンッ ガキーンッ ガキーンッ

労働者1「(蓋なんてどこにある…?聞いといたらよかったな…)」キョロキョロ

『先に行っててくれ。実は他にも仲間がいてな?迎えに行かなきゃならないんだ』

労働者1「(二人じゃ不安だったしありがたいな…。
にしてもこんなギリギリでレジスタンスに出会えるなんて…俺もまだ捨てたもんじゃないみたいだ)」ホッ

労働者1「(あいつが戻るまで、しばらくは物陰に隠れてやりすごそう。見つかったってとぼければいい)」

「作業中止!!」ピーッ

ピタッ ピタッ ピタッ ピタッ

監視員3「この中に逃亡を企てた者がいると密告があった!!
したがってお前らにはこれより身体検査を受けてもらう!!」

労働者1「へっ…?」

ゾロゾロ ダダダッ

労働者1「(み、密告…!?あ、あいつまさか…!?)」ハッ

ヒュンッ ピシィッ

労働者1「ひっ…ひぁっ…」ブルッ

監視員4「そんなとこでなにしてる?」ギロッ
670: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/3(日) 13:59:52 ID:Oe/tkJ1HxY
労働者1「あ、や…その…?」ガクガク

監視員4「逃亡者か……」ググッ

労働者1「ちがいまひゅっ!!!わ、わら…わたし…ぼ、ぼくは……」アタフタ

監視員4「その瓶はなんだ?」ジッ

労働者1「こ、これは…!」

監視員4「逃亡者は硫酸を所持してると聞いたが?」

労働者1「み、水…です」ブルブル

監視員4「あぁ、水か。疑って悪かったな」

労働者1「(し、信じたのか…?バカだ、こいつ!)」

監視員4「働きづめで喉が渇いたから作業中に隠れてこっそり水分補給してたんだな?」

労働者1「そう…!そうです!!」コクコク

監視員4「へー…そいつはすまん?どうぞ飲んでくれ?」

労働者1「え…?」

監視員4「水だろ?飲んでいいぞ?内緒にしてやるよ?」ニヤリ

労働者1「あ、いや!もう…飲みました!十分、潤ってます!」アセアセ

監視員4「その瓶、満タンじゃないか?」ニヤニヤ

労働者1「」ドキンッ

監視員4「飲めよ」ニヤニヤ

労働者1「む、ムリ…!」

監視員4「じゃあ逃亡者決定だな!死より恐ろしい拷問にかけて硫酸の泉にぶちこんでやる!?」ピシィッ

労働者1「ひぃぃっ!!!」ビクッ

監視員4「今すぐ決めろ?飲むか…拷問か…?」ニヤニヤ

労働者1「〜〜〜!」ガクガク
671: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/3(日) 14:02:33 ID:Oe/tkJ1HxY
―――採掘場の外―――

労働者3「(彼はどうなっただろうか……悪いことをしてしまったな)」コソコソ

労働者3「(国家救済の為には犠牲もしかたない。
イアマンの礎となれば神の寵愛に恵まれ、浄化された魂は遥かなる約束の地"ザリオン"へと昇る……)」スタスタ

労働者3「(そうだ。彼もまた救われたのだ…。なにを悔いることがある?)」ガシッ

労働者3「(この汚れた世界を洗い清める道の者……陽は陰りに照らされる。この現世に光を灯せるのはイアマンのみ…!)」ヨジヨジ

サァァァァァ

労働者3「おぉ……目が焼けるように眩しい?」ゴシゴシ

???「待ちかねたぞ。イアマンのしもべよ?」

労働者3「同志よ!そこにいるのか!?」ジーッ

???「ヌハハハハハ!目を凝らすがいい!」

労働者3「………!?」ハッ

ズォォォオオン

労働者3「こ、れ…は」パクパク
672: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/3(日) 14:03:31 ID:Oe/tkJ1HxY
将軍「なにゆえ押し黙るのだ!待ち望んだ再会ではないか!」

労働者3「どう…し……」ポカーン

将軍「歓喜せよ!感動に打ち震え、泣き叫んでいいのだぞ!?」ニタァァ

参謀「閣下はお優しゅうございますね」クスクス

将軍「当然よ?我輩は慈悲に満ち溢れた武人、カカドゥーラぞ!?ヌハハハハハ!!!」ゲラゲラ

労働者3「カカドゥーラ…?悪魔の三銃士…!?」ワナワナ

参謀「逃亡者は貴方で最後になりましょうか?
その穴から這い出てまいった者らをかれこれ60匹は駆除しましたが?」

労働者3「……」プルプル

参謀「救出なさるおつもりだったのでしょうね。外からやってきたお仲間も同様です?
閣下のお慈悲もあることですから、もしよろしければ地に寝そべる骸にお別れをどうぞ?」

労働者3「あく…ま……」ボソッ

将軍「あぁん?」ギロッ

労働者3「悪魔ぁああ!!!殺してヤルァァァアアアア!!!!」ダッ

将軍「者共!!」サッ

ザッ バババッ

参謀「始末なさい」

西の兵士's「ははぁっ!!!!!」ダダダッ

バシュッ ズドッ ザクッ ブシャッ ドッドスッ
673: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/3(日) 14:06:08 ID:Oe/tkJ1HxY
―――西の国(城内、地下牢獄)―――

女装家「とくべつなスープぅぅをあーなたーにぃあぁぁげるぅぅ…」ジャボジャボ

レジスタンス1「ひっ…ひぐ…」モガモガ

女装家「あったかいんだからぁ〜!!」ザバァッ

レジスタンス1「ぶきぃあぎゅぎゅぐょぉぇええうあああ!!!!」バタバタ

女装家「あっつ!!飛沫跳んだ!あっつ!?」ピョンッ

バタバタ バタバタ

女装家「キャッ…?この子ったら背中の皮がベロベロ……べろんちょ〜〜〜!?」

官吏3「…」シュルッ

レジスタンス2「ぶはぁっ…あぅ…あはぁ」ゲホゲホ

官吏3「イアマンはどこに隠れている?」

レジスタンス2「同志よ!?大丈夫かぁ!!」ハラハラ

官吏3「質問に答えろ!?」

女装家「なぁーによぅ?アツアツの油をぶっかけただけじゃなぁい?」

レジスタンス2「うおお!!許さんぞ、悪魔めぇ!?」

女装家「やだ、こわい!悪魔いるの?ちょっとお会計してぇ〜〜〜!!」
674: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/3(日) 14:07:52 ID:O9RlS5K6h6
官吏3「シャルウィン様!遊んでいる場合ではございませんぞ!?」

女装家「こんなん遊びよ?こんなチンチクリンブラザーズになにが出来るの?」

官吏3「イアマンの過激派がファルージャ様を暗殺しようと狙っているのですぞ!?」

女装家「それって今に始まったことぉ〜?」

官吏3「し、しかし……」

女装家「平気よぉ〜?それよりどう?今日のネイルお洒落だと思わない?」キラン

官吏3「……!」

女装家「アンタってすっごいおバカちゃんだからさぁ〜?分かってないわよねぇ〜?」

女装家「たとえアタシ達が一人残らず殺されて万の兵士が攻めてきてもオネェ様を殺せるヤツなんかいないんだからぁ〜?」

官吏3「な、なぜそう断言でき……」

女装家「あんな美しいお方を殺せる?」ジッ

官吏3「は…?」

女装家「無理じゃなぁーい?てかムリィー!?」

レジスタンス2「愚かな悪魔め!!ファルージャのような邪悪を許す者など我らイアマンには一人としておらぬ!!」

女装家「はぁ〜……オネェ様ったら最近、全然構ってくれない。アタシが失敗しちゃったからかしら」

女装家「あんなガキに……ホビットの……クソガキに…!」ワナワナ

官吏3「」ハッ

女装家「んならっしゃあ!!!」ブンッ

レジスタンス2「ぅんばっ!?」ゴシャアッ

ピシッピシッ メリィッ

女装家「んぐっ…うぅぅ…!ムッカつくわぁぁぁぁん…!?」ギリッ

官吏3「」オロオロ
675: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/3(日) 14:09:53 ID:O9RlS5K6h6
―――西の国(魔導研究所)―――

ピシャッ ピシャッ

研究用のホビット1「ぴゃっ!びゃびゃびゃ!?」ジュウウウ

魔導師「んふ…これもイマイチ」トクトク

研究用のホビット1「あつ…痛いよぉ…こわい…帰りたいよぉ」シクシク

魔導師「……」チラッ

研究用のホビット1「もう…ゆるしてよぉ…!ぼくが…なにしたの…!?」

魔導師「んふふ…なにしたんだろうねぇ?」ヒュッ

研究用のホビット1「びゃっ!?」ザバァッ

魔導師「ただ偶然、こうなった。それだけ」

研究用のホビット1「っ……ッッッ!?」

研究用のホビット1「おっ…ごえぇぇうええ!!」ブバァッ

ゴロゴロ ジタバタ

魔導師「…イイのが出来た。褒めてもらえるかな」カラカラン

ビャアアアアアアアア!!

魔導師「こないだの陛下すごかったなぁ。アァ……思い出すだけで……」トロォン

ピクッピクッ ピクッピクッ

魔導師「…褒められたら、またアレをおねだりしてみよう。んふふ!」ルンルン
676: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/3(日) 14:12:47 ID:Oe/tkJ1HxY
―――西の国(王宮)―――

ファルージャ「申してみよ?そなたらはなんじゃ?」

美男's「はっ!!私達はファルージャ皇帝陛下のおやつにございます!!!」ピシィッ

ファルージャ「ンゥ〜…誰からでも良いぞ。おいでなさいな?」

美男?「では…私が」ザッ

ファルージャ「名と階級を?」

美男?「名はティゴン、階級は……誇り高きイアマンの尖兵だ!」ダッ

西の衛兵1「き、貴様!?」バッ

ファルージャ「威勢のよいことよ…」ニヤリ

ティゴン「死ねぇえええ!!!魔性のファルージャぁああああ!!!」ブンッ

西の衛兵1「陛下ぁあああ!!!」ダッ

ピタッ

ファルージャ「……振り切らぬのかえ?」ジーッ

ティゴン「っ……!う、腕が…動かん!?なぜっ…!?」ギュゥゥ

ファルージャ「…哀れよなぁ?」ピトッ

ティゴン「あっ…うぐ…触るな!」

ファルージャ「冥土の土産にくれてやろう?」チュッ

ティゴン「っ…!?」ビクッ

ジュルッ レロレロ クチャッ ピチュッ クニュクニュ

ファルージャ「んっ…ハァン……」パッ

ティゴン「」ズルッ バタッ

西の衛兵1「おのれぇ!!貴様、よくも陛下と口付けを!?」ブンッブンッ

ズドッ ザクッ

ファルージャ「クスス!美を知る者に妾は討てまい?」ニヤニヤ

ファルージャ「では…次はそなたをいただこうか?」ペロッ

美男4「は、ははぁっ!!」ザッ
677: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 21:48:30 ID:F/VxIXCkFs
―――王国(謁見の間)―――

ジロジロ ヒソヒソ

カロル「……」モジモジ

母「……」ドキドキ

カロル「(見られてるね、お母さま?)」コショコショ

母「(えぇ、それにしてもすごい人の数……国王様はどこにいるのかしら?)」コショコショ

カロル「(うーん…まだ来てないみたいだよ?)」コショコショ

「あれが救い主…とうとう姿を見せたか」

「2年もの空白はなんだったんだ…」

「陛下の親友だとは言うが…」

ザワザワ ザワザワ

軍長2「どう思うね?」

フィクサー「なにが?」

軍長2「俺達のような軍部の人間まで呼び立てて…政務官はどういうつもりだろうか?」

フィクサー「…ドレッド軍長」

軍長2(ドレッド)「ん?」

フィクサー「それは我々が考えなければならないことか?」

ドレッド「…そうだが気にはならないか?」

フィクサー「ならないね」キッパリ

ドレッド「はっきりしてるな…」

フィクサー「不要な考えに費やす時間が無駄でしょう」

ドレッド「ただボケッと事を眺める時間のが無駄じゃないか?」

フィクサー「労力を使わないだけマシだ」

ドレッド「しかし国王も留守にしてる今、何故わざわざ救い主を謁見の間に通したのか見物だな」

フィクサー「……」

ドレッド「貴族、上級役人、軍部…国の中心人物を召集して何をしようと言うのか…?」ニヤリ
678: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 21:50:27 ID:F/VxIXCkFs
―――城(回廊)―――

政務官「よくぞ探し当てた。ご苦労だったな。陛下もさぞかし喜ばれることだろう」

団長「どういうことだ?」

政務官「ん?」

団長「陛下がまだ戻っておらんとはどういうことだ!?」ガッ

政務官「…離してくれないか?痛いんだが?」ギブギブ

団長「ふん…!」パッ

政務官「陛下は東の国と交渉中だ」パッパッ

団長「予定では既に戻っておられる筈だ!」

政務官「長引いているのだろう。護衛や親い役人も付けてある。問題あるまい?」

団長「…彼をどうする気だ?」ギロッ

政務官「彼には陛下に代わって私から話そう」

団長「何を話すと言うのだ?彼を抹殺しようと画策してきた分際で……」

政務官「言いがかりはよしてくれ?」

団長「城中の人間を集めた理由を説明してもらおうか?」

政務官「なぜお前を通す必要がある?」

団長「なにぃ…!?」イラッ

政務官「私は陛下の後見人であり最高位の役人だ。陛下のいない間、この国の全権を預かっている?」

団長「……!」ギリッ

政務官「あまり待たせておくのも無礼だ。早速、始めてしまおう」カツンカツン

団長「…何を企もうと構わん。陛下がおらずともワシがいる限り、貴様のくだらん策略などたやすく砕いてくれるわ!」

政務官「何を勝手に息巻いてるんだ?バカが?」クルッ

団長「ぬ…!?」

政務官「企みなどないよ。私にはな」カツンカツン

団長「(私には…?)」
679: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 21:53:02 ID:YmrijqMZ4g
―――謁見の間―――

政務官「お待たせして申し訳ない?」

カロル「あっ!ヒメくんのお母さんを説得してくれた人間!」

母「そうなの?」キョトン

政務官「早速なんだが…」

カロル「えへへ…なんだか緊張するね?」モジモジ

母「そうね…。お友達と言っても国王様だからきちんとご挨拶しましょう?」

政務官「残念ながら陛下はここにはいない」

カロル「え?」

政務官「…君を王国の民として迎え入れたい。これは陛下の意思である」

母「あ、あの…国王様はいらっしゃらないんですか?」

政務官「そうだ。だがすぐに戻ってくる」

団長「……」ジッ

政務官「君たちの今後についてだが…司祭が運営する孤児院で引き取ってもらえるそうだ」

カロル「宣教師さま!」パァァ

政務官「…陛下の代理として伝える事は以上だ。
ここからは個人的に質問させてもらいたい?」ジロッ

カロル「?」

政務官「つかぬことをお伺いするが…この2年、なにをしていた?」

カロル「っ!」ドキンッ

政務官「事態が終息した直後に行方を眩ませたのは君の意思か?
それともなくば何かやむにやまれぬ事情が?」

カロル「……」

政務官「…君がもしも自分の意思で姿を消したとなれば私は許すべきではないと考えている」

団長「政務官殿、お言葉が過ぎるのではないか?」ザッ

政務官「…下がれ」ジロッ

団長「そうはいかんな?」ギロッ
680: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 21:55:13 ID:YmrijqMZ4g
団長「ここは彼の帰還を皆で祝し、快く迎えてやるべきではないのか?」

政務官「下がれと言うんだ?」

団長「貴様が陛下の代理を務めるのは認めてやるが…代理ならば代理としての立ち振舞いを心掛けよ?
陛下の意に沿わぬ言動や私情は控え、代理の役目をまっとうせんか!」

政務官「もしこの場に陛下がいたならば間違いなく言及した筈だがね?」

団長「後で陛下が個人的に聞けばいい話だ。わざわざ皆の前でする必要はなかろうが?」

政務官「国に大きな影響を与えた彼だ。説明責任が生じるだろう?」

団長「貴様ごときが出過ぎたマネをするなと言っているのだ…!」ビキビキィッ

政務官「貴様ごときが私に指図するな?」ピキィッ

ザワザワ ザワザワ

母「あ、あの!!」アセアセ

政務官「…貴方は?」

母「この子の母親です!」

政務官「お母様ですか。それで何か?」

母「実は坊やが姿を消してしまったのは……」

カロル「ボクがお母さまに旅しようって言ったんです」

母「えっ」

団長「!?」

カロル「誰もいない所で二人、静かに暮らそうって」

政務官「つまりそれは…君の意思で?」

カロル「そうです」

母「坊や…?なにを言ってるの…?」オロオロ

カロル「なんで?ホントのことじゃない?」

母「違うわよ!あたしが……」

カロル「お母さまはイヤがってたよ。ボクがムリやりわがまま言ったんだもの」

母「(こ、この子…また……)」ハラハラ
681: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 21:59:11 ID:YmrijqMZ4g
政務官「では2年間、追跡を避けてきたのも意図的に?」

カロル「はい。人間に会わないようにしてました」

母「や、やめなさい!」ガッ

カロル「……」

母「いいのよ!お母さんが本当のこと言うから!」

政務官「なんだ、君はお母様を庇っているのか?」

母「…あたしからお話します」

政務官「では2年間、陛下の心に傷を付けてきたのは君のお母様だった訳だ?」

母「……!?」

団長「政務官!貴様、いい加減に……」

政務官「以前、陛下が侍女の一人にふと漏らしたそうだ」

カロル「……」

政務官「『あいつは本当は僕達に会いたくなくて逃げているのかな』と……」

カロル「」ズキンッ

政務官「事情はどうあれ、陛下の悲しみは深い」

団長「くっ…!」ギリッ

政務官「そして陛下を悲しませた罪は重く捉えねばならない」

母「(あ、あたしの…せいで……)」ブルッ

政務官「救い主不在によるホビット族との融和は未だに難航し、陛下が君の捜索に使った労力は極めて甚大だ?
その上、教団までもが君の保護に執着し、本質的な活動をおろそかにしてしまった結果、ホビット族による襲撃事件まで発生している?」

カロル「……」

政務官「…で、姿を消した理由が単なる気まぐれか。ふふ…」クスッ

カロル「ごめんなさい…」

母「ち、違うんです!あたしが人間を嫌ったから…坊やはあたしを孤独にしたくなくて…!」アセアセ

カロル「ううん。ボクが決めたことだから…ぜんぶ」

団長「お、おい…小童!」アセアセ
682: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 22:03:00 ID:F/VxIXCkFs
政務官「まぁ安心したまえ。あくまで個人的な意見であって君たちの今後を左右するものではない」

カロル「……」キュッ

政務官「ただ私から君に言っておきたい事がある」

カロル「……?」

政務官「確かに国の歪みを修正したのは君の勇気と絆の力が大きく関わっているだろう。それについては感謝申し上げる」

政務官「しかし国はお前の為にある訳ではない。
そこに住まう大勢の民が我々の力を必要としているんだ」

カロル「……」

政務官「たった一人の為に大勢が後回しにされてきたた…。
陛下の友人だからといって何もかもが許されると思うなよ?」

カロル「…はい。ホントにごめんなさい」

母「〜〜〜!」プルプル

団長「(卑劣な男め…!)」ギリッ
683: 政務官のセリフが「きたた」になってる…orz ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 22:06:54 ID:YmrijqMZ4g
―――城(通路)―――

スタスタ スタスタ

ドレッド「あの場に俺達が揃う意味はあったのか?」スタスタ

フィクサー「どうだろうな」スタスタ

ドレッド「しかしなんだ…。あれじゃまるで公開処刑じゃないか?
救い主どころか疫病神扱いだ?政務官は本気で迎え入れる気があるのか?」

フィクサー「…あぁ、公開処刑だな」

ドレッド「なぁ、フィクサー軍長?"預言者"の異名を取る貴方から見て政務官の目的はなんだった?」

フィクサー「気になるのであれば考えてみては?」

ドレッド「…分からないから聞いてるんだ」

フィクサー「分からないのは何も考えていないからだ」

ドレッド「嫌味だな?じゃあ貴方は分かると言うのか?」

フィクサー「分からない」キッパリ

ドレッド「は!?」

フィクサー「余計な労力を使わないよう何も考えていなかった」

ドレッド「お、お前…!」カッ

政務官「お話し中申し訳ない。両軍長殿」

ドレッド「こ、これは政務官殿!我々になにか?」

フィクサー「……」

政務官「…実は折り入って相談が?」

ドレッド「は?」

フィクサー「構いませんよ。応じましょう?」

政務官「それはありがたい?ではあちらの部屋へ?」

ドレッド「はぁ…?」

フィクサー「……」

キィィィッ バタンッ
684: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 22:11:43 ID:F/VxIXCkFs
―――城(客室)―――

カロル「いいこにしてた?」ナデナデ

マルク「あんっ!」スリスリ

団長「…力及ばず申し訳ない」ペコッ

母「い、いえ!とんでもないです?」

マルク「あう?」

団長「…あれだけ人の目がある場ではワシも不用意に口を挟めなくてな」

カロル「いいよ。リルラさんの言うこと間違ってないもの?」

団長「いや、しかし…奴は明らかに君を貶めようとだな!」

カロル「そんなことないよ。ちゃんと叱ってくれて…ボクは嬉しかったな」

母「…なんであんな風に言ったの?」

カロル「へ?」

母「あ、あたしが…あたしが…悪いんじゃない。あたしが……」ブルブル

カロル「…お母さまはなんにもしてないよ?
旅をするって決めたのも静かに暮らそうって言ったのもボクでしょ?」ニコッ

団長「…あえて聞かずにいたがなぜ姿を消したのだ?」

カロル「えっとねー…」

母「…もういい。あたしが話すから…これ以上やめて」

カロル「……」

母「あなたは守ってくれようとしてるんでしょうけど…そのたびにあたしは惨めになるのよ」

カロル「…どうして?ボクはホントのことを話してるだけだよ?」

母「いいの。あたしを悪者にしたくないんでしょう?でも本当にいいから……」

カロル「考えすぎはよくないよ?」

母「え?」
685: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 22:19:59 ID:YmrijqMZ4g
カロル「誰が悪いかなんて考えてなかったもん。
それよりまたみんなで遊べるといいなってワクワクしてたの!」

母「けど…あたしがしたことは……」

カロル「楽しいこと考えよ?ね?」ニコッ

母「坊や…」

団長「なにか負い目に感じているのなら話さなくてよいのですぞ?
先ほど政務官があなた方を叱責したのは奴の策でしょうからな」

母「策?なんですか、それ…?」

団長「ここではあまり…。今夜は離れにあるワシの屋敷に泊まりなさい」

母「? こちらに案内されましたけど?」

団長「…聞き耳を立てられては敵わんのでな」

母「は、はい?」

団長「分かっているぞ!扉の外に張り付くリルラの手の者よ!?
話が気になるのなら入ってこい!聞かせてやるぞ!?」

母「え?」チラッ

ダダダッ

母「…な、なんですか?」

団長「政務官の手先だ?ああして随時、陛下やワシの身の回りを探っておってな?」

母「なぜルフィアスさんが…?お仲間なんですよね?」

団長「まぁそれもワシの屋敷で話そう……む?」

カロル「団長さん?」

団長「おい、まだおったのか!?懲りぬ連中め!?」

ガチャッ

給仕1「夕食をお持ちしました!」カラカラ

団長「」ガクッ

給仕1「あ、ルフィアス様だ?おかえりなさい!」

団長「お前は…陛下の侍女か」シラー
686: ◆WEmWDvOgzo:2015/5/6(水) 22:21:38 ID:F/VxIXCkFs
カロル「おいしそう…」ジーッ

給仕1「おいしいよ?食べて、食べて!」ニコッ

母「食べてからにしましょうか?」

カロル「うん!」

団長「…一応聞いておくが料理を作ったのは誰だ?」

給仕1「ポイズン副料理長が腕によりをかけて作りました!」

団長「…夕食はワシの屋敷で振る舞おう。行くぞ?」ガタッ

カロル「えー!」

給仕1「なんでですか!?」

団長「味見してみろ」

給仕1「いけません!お客様の料理を召し上がるなんて!」グーッ

団長「腹が鳴ってるぞ。いいから食ってみろ?」

給仕1「しょうがないなぁ、もう!食べますよ!食べたらいいんでしょう!?うまっはふっもぐもぐ!」ガツガツ

団長「言葉とは裏腹にたいした食いっぷりだな…。宮仕えが手づかみはどうかと思うが…」ウプッ

カロル「いいなー…」ジュルリ

団長「いいのか?ワシは食欲を削がれたがな…」

母「あら?あれぐらい普通よ?ねぇ、坊や?」

カロル「うん!ふつー!」

団長「……」

給仕1「」バタッ

カロル&母「」ビクッ

団長「やはり毒を盛られておったか」

カロル「えーっ!?」ビックリ

母「ぼ、坊や!はやくっ!早く癒してあげて!?」アタフタ
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