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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


629: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:41:21 ID:KmcAgQ.rhk
カロル「もう同じことしないって…アピシナさまのしたことがみんなを反省させたって言ってたもん」

番頭「あんなのは…ただの昔話だよ。本当にあったかどうかも分からない」

カロル「それでも争いは悲しいことって教えたくてお話が残ったんでしょ…?」

番頭「…そんなの誰だって分かってる。でも争いを面白がる奴が確実にいるんだよ。
そういう奴らから身を守るには隠れて逃げてばかりじゃダメなんだ!」

カロル「こんなの間違ってるよ!守るのに傷付け合うなんてヘンだもん!」

番頭「争いをやめろなんて誰にでも言えるんだよ!止められないから続くんだ!?」

カロル「あぅ…」グサッ

番頭「教訓なんて普通は数十年もしたら忘れられてくさ!三百年も我慢しただけいいじゃないか!?」

カロル「が、がまんじゃなくって…変わらないと……」マゴマゴ

番頭「じゃあ変えられるか?変わるのか!?変わらないからアピシナ様は自ら死んだんだ!」

カロル「っ……」ズキッ

番頭「族長達がいる限り、うちらの想いは死なない!必ず復讐を果たしてくれる!
そうすればお望み通り変わってくれるさ!お前らも一回勝ったくらいで調子に乗るなよ!?」

憲兵32「な、なんだと!?」

団長「言わせておけ?」

番頭「いつかホビット族が人間を滅ぼして楽園を手に入れる!その日が来るのをあの世で楽しみに待つかな!ハハハハハ!!」

団長「小童、もうよかろう?」ポンッ

カロル「はい…」シュン

憲兵32「べらべらくっちゃべりやがって!!
貨物庫ん中ですし詰めになってろ!?おら乗れ!!」グッグッ
630: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:43:26 ID:KmcAgQ.rhk
ギャーギャー グイッグイッ

団長「…ホビットの君には悪いが我々も仕事でな」

カロル「へいき…団長さんは悪くないもの」ションボリ

団長「まぁ…なんだ。元気を出せ?これからヒメ様に会わせるというのに浮かない様相では心配を掛けるぞ?」

カロル「…うん」ショボーン

団長「(この直後に気を取り直せと言われても無理な話だろうが…どうしたものか。
このままの小童を城へ送り届けてもヒメ様の心労が余計に祟るやもしれん)」

憲兵33「団長!向こうの茂みで怪しいホビットを4人捕らえました!」

団長「またか…。いい加減出発させるぞ?」

憲兵34「こら!抵抗すると罪が重くなるだけだぞ!?」グイッ

憲兵35「きびきび歩け!?」グイッ

旅のホビット1「違うんですよ!?僕達は無関係です!?」ギシギシ

旅のホビット2「たまたま通りかかっただけだって!?」ギシギシ

旅のホビット3「縄ほどいてよ…!」ギシギシ

母「あたしたちは巻き込まれないように隠れてましたの!誓って嘘じゃありません!」ギシギシ

マルク「わうっ!うぅ〜…わんっわんっ!!」グルルルル

カロル「お母さま!?」

団長「……!」ガクッ
631: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:49:45 ID:KmcAgQ.rhk
憲兵33「申し訳ない…」ズーン

旅のホビット1「ご、誤解が解けたならいいんです…?」アセアセ

旅のホビット2「やっと司祭様に会えるな!」

旅のホビット3「うん、僕達は聖堂に入るよ…。じゃあ……」

母「お世話になりました」ペコリ

カロル「宣教師さまによろしくね!」フリフリ

マルク「ワンッ!」シッポフリフリ

スタスタ スタスタ……

団長「ふぅ…これでようやく王都に帰れるな。
西領に勤務する憲兵は引き続き、各地の警備を厳重にするように!いいな?」

憲兵36「ははぁっ!!王都本部よりご協力くださいまして感謝致します!!」ピシッ

団長「勢力は弱めたが何しろ危険には変わりない。何かあれば一報入れてくれ?」

憲兵36「承知致しましたぁ!!」ピシッ

団長「うむ、では……」クルッ

母「坊やぁ…!平気?ケガとかしなかったの!?」ハラハラ

カロル「う、うん…」

母「…どうしたの?やっぱり何かされたんじゃ…」

カロル「……な、なにもないよ」オロオロ

マルク「クゥン?」ジーッ

母「…ダメ!隠し事はしないんでしょう?」

カロル「……」オロオロ

マルク「?」シッポフリフリ
632: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:53:47 ID:KmcAgQ.rhk
団長「あ、あー…おほんっ!」

母「……?」

団長「お初にお目にかかりますな。ワシは憲兵団を束ねておりますダパーシ・ルフィアスと申します」ペコリ

母「あっ…お話は伺ってますわ?たしか王子様の…?」

団長「えぇ、いかにも!ご存知いただいてましたか!」

母「もちろんですわ?いつも坊やがお世話になっているそうで…すみません、ご迷惑ばかり」ペコペコ

団長「あぁ、いやいやとんでもござらん!小わっ…おほんっ!
カロル君には非常に助けられておりますとも!」ペコペコ

母「まぁそんな?いろいろとお話は聞いていますの?
団長さんはとてもたくましく勇敢な方で…危ないところを何度も救っていただいたと…」

団長「そ、そんなことはござらん!?
あなたの息子さんの方がよほど優しさと勇気に満ち溢れ、とても子供とは思えない力を発揮してくださってますぞ!」

イヤイヤ ソンナ? マァオジョウズ? イエイエ オキヅカイナク……

団長「〜〜…とまぁそんなこんなございましてな。約束を守れなかったと悔やんでおったのですよ?」ペラペラ

母「まぁそうだったの…?気にしなくていいのに?」チラッ

カロル「だって…ボクのわがままでお母さまを泣かせちゃったから…」

母「いいのよ?無事でいてくれただけで?」

マルク「ワンッ!ワンッ!」シッポフリフリ

カロル「……」ショボン
633: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:57:46 ID:0/UU.q6Ut2
母「ギュッ!」ダキッ

カロル「っ…!?」ビクッ

母「無事に戻ってきたらギュッてしてあげる約束だったでしょ?」ニコッ

カロル「おか…さま」

母「あなたも笑顔を見せて?戻ってくる時は笑顔で…これも大事な約束よ!」ニコニコ

カロル「う…ん」ニコッ

母「もっと?引きつっちゃってるわよ?」

カロル「は、はい!」ニッコリ

母「もー!ちゃんと笑って?ほら!」コチョコチョ

カロル「っ…あ、あは!あはは!アハハハハハ!?や、やめっ…アハハハハ!!」ケラケラ

母「うんうん!良くできました!」ナデナデ

カロル「あ、あはは…?コチョコチョはずるいよ?」クシャクシャ

母「うふふ?だって約束でしょう?」ニコニコ

カロル「…ありがとう。お母さま」ニコニコ

マルク「アゥン?クーン!」ペロペロ

カロル「えへへ…マルクもありがとう?」ナデリ

母「(はぁ…本当は小言の一つも言ってあげたかったけど、いつも肝心なところで甘やかしちゃうのよね)」

カロル「あはは!よしよし?いいこいいこ!」ナデナデ

マルク「わふーん!」スリスリ

母「(…たまには厳しく叱らないとムチャばっかりしそうで怖いけど、坊やの落ち込んだ顔は見たくないもの)」

団長「(あれだけ沈んでおった小童が息を吹き返したように明るい表情を見せるとは…やはり親の愛情とは凄まじいな。
忙しさ故にトンと家族に会っておらんが…息子は寂しがっているだろうか。あぁ、なぜか急に不安になってきた…)」ハラハラ

団長「はぁ……」ズーン

憲兵30「ど、どうかなさいました?」

団長「いや……はぁ……馬車に乗り込むとするか」ズーン

憲兵30「???」チンプンカンプン
634: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 22:04:33 ID:0/UU.q6Ut2
〜〜〜夜〜〜〜

―――聖堂(談話室)―――

司教「今日はまことにお疲れ様でした。一息付いてくだされ」つ【お茶】

宣教師「ありがとうございます。いただきますね?」カチャッ ズズッ

司教「司祭様が中庭に出たと教徒から聞いた時は、いささか焦りましたが何事もなく戻られて安心致しましたぞ」ストッ

宣教師「屋上から見渡していたら、いてもたってもいられなくなりまして…ご心配おかけしました」コトンッ

司教「いやいや…なんでも救い主様が参られたとか?」

宣教師「ふふ…はい。彼に会えちゃいました?」ニコッ

司教「はは…いつになく上機嫌ですな?」

宣教師「嬉しいですよ。心の底から?今なら聖堂の周りを三周は走れそうです!」ニコニコ

司教「走る必要があるのかはさておき…よろしかったので?」

宣教師「? なにがです?」キョトン

司教「救い主様に同行したかったのではございませんか?」

宣教師「…今日のような出来事が再び起こらないとも限りません。
皆さんも疲弊しきってますから気力が回復なさるまで、しばらくは残ってとりまとめたいと考えてます」

司教「なにも司祭様が残らずとも私共で……」

宣教師「…そろそろ私も司祭という身に余る高位を受け入れないといけません」

司教「は?すでに司祭として広く活動しておられるではありませんか?」

宣教師「もしも彼が私に会いに来てくださるとしたら宣教師を名乗っていないと不便だと思い、宣教師を自負してきました…」

司教「あ、ああ…救い主様の……?」

宣教師「えぇ、ですがもうその必要はなくなりました。会えましたから?」

司教「い、いえ、ですから…そこまで会いたがっていたのなら同行しなくてもよかったのですか?」

宣教師「私情を貫くのはここまでです。大事なお役目ですからね」クイッ ズズッ

司教「よ、よろしいので…?」

宣教師「(またしばらくは会えませんが…私はいつもキミの幸福を願ってますよ。
ヒメくんや院の友達にも早く元気な顔を見せてあげてください…)」ギュッ
635: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/18(土) 21:49:02 ID:kfwKUDdq/Q
〜〜〜1週間後(夜)〜〜〜

―――西の領土(平原)―――

ゾロゾロ ゾロゾロ

イフィート「ちっ…情けねぇやな」ザッザッ

シヴァ「…正気を失い、混乱していた。すまない」ザッザッ

イフィート「お前じゃねぇ。俺自身に腹が立ってんだ」フンスッ

シヴァ「……そうか」

イフィート「だいぶ減っちまったな…。集落を出立した時より少ねぇや」ザッザッ

谷のホビット30「そ、そんなに強かったんですか?」ザッザッ

シヴァ「戦力は勝っていたが敵を侮り過ぎたようだ。今の我らではあの防衛拠点を崩す術はない」

谷のホビット30「そ、そうなんですか…」

シヴァ「数々の誤算が生じ、癒しの力も敵に渡ってしまった。
あのまま狭い聖堂内で戦いを強いられれば確実に負けていただろう」

イフィート「ったくよ…。あの怪物さえいなけりゃ…」ブツブツ

シヴァ「いや…敗因は別にあった」

谷のホビット30「別に…と言うと?」

シヴァ「あの人間の女……おそらく浚った同胞共が話していた司祭と呼ばれる教団の長であろうが……」

イフィート「あぁ、いきなり止めに入った女か。あれがどうだってんだ?」

シヴァ「…あの女が現れた途端に各地から連れ去った同胞達が寝返った。
あれほど我らを恐れ、人間への憎悪も残していた同胞達が……いともたやすく」

イフィート「…あいつらは同族の恥だ。ぜってぇーに後悔させてやらぁ」ギリッ

シヴァ「……いったい何故あそこまで人間に心酔出来るのか。あの女は…同胞に何をしたのだ」

イフィート「知るかよ!次はあんな無様な戦いはしねぇぞ!人間共を血ヘド吐かしてズタズタにしてやる…!」

シヴァ「…そうだな。振り出しには戻ってしまったが当面の目標は押さえた。
奴らを駆逐し、癒しの力を強奪する…。種族統一に移るのはそれからだ」

谷のホビット30「(種族統一……)」
636: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/18(土) 21:50:37 ID:kfwKUDdq/Q
谷のホビット30「(娘さんと息子さんの仇討ちじゃなかったのか…?種族統一ってなんなんだよ…?)」

谷のホビット31「な、なぁ」ポンポン

谷のホビット30「な、なんだよ?」クルッ

谷のホビット31「本当に大丈夫なのか?俺たち、このまんまで?」アセアセ

谷のホビット32「お、俺も不安になってきた…」

谷のホビット33「集落に残してきた女子供達はどうしてるかな…」

谷のホビット34「母ちゃんや兄弟も心配してるだろうなぁ…」

谷のホビット35「集落に帰って、また狩りでもしながら家族や仲間と暮らしたいよ…」

谷のホビット30「今さら泣き言はよせよ!族長達に付いてくって決めただろ!?」

谷のホビット31「まぁ…そうなんだけどさ」

谷のホビット30「…イフィートさんにでも聞かれてみろ?殺されるぞ?」

谷のホビット32「」チラッ

イフィート「あぁ〜ムシャクシャすんぜ!誰でもいいから殴り飛ばしてぇ気分だ!?」ガンッ

シヴァ「音を立てるな。草影に身を潜めている意味がない」

谷のホビット's「……」ズーン
637: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/18(土) 21:52:22 ID:kfwKUDdq/Q
ガガッ…… ガガッ……

シヴァ「…なんだ?」ピクッ

イフィート「おっ…どっかから音がすんな?しかしなんの音だ?」

谷のホビット30「…聞いたことのない音ですね。だんだん迫ってるように感じますが…?」

シヴァ「皆に息を潜め、武器を構えて警戒するよう伝えろ」

谷のホビット30「わかり……」

ヒュヒュヒュヒュヒュヒュヒュン

ザザザザザザザザッ

谷のホビット31「ひやっ!?辺りになんか降ってきた!?」

谷のホビット32「な、なんか赤く光っ……」

ボッ ボッ ボボボッ

イフィート「な、なんじゃこりゃ!?」

シヴァ「まずいっ…!?」ギリッ

ゴォォオオオオオ

谷のホビット33「ひ、火だぁぁぁぁあああ!!!?」ヒエー

ワアアアアアアアアア

シヴァ「一面草地の平原では盛る炎を防げぬ!火の手が迫る前に離れるぞ!!」ダッ

イフィート「は、走れおめぇら!?死にたかねぇだろ!?」ダッ

ウワアアアアアアアアア!!!

ダダダダダダダダッ
638: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/18(土) 21:53:33 ID:fiOV4b9Y6Y
ドガガガガガガガガ

イフィート「ん!?前からものすげぇ音が迫ってくんぞ!?」ダダダッ

シヴァ「っ……背後は火の海だ!引き返せぬ!このまま走り続けろ!!」ダダダッ

谷のホビット30「な、なんです!あれ!?暗がりで見えませんが大きい影が…!?」ダダダッ

ガガガガガガガガッ

シヴァ「と、止まれっ!!やはり方向を……」ハッ

イフィート「急に止まれったって無理だ!?後ろの同胞に潰されんぞ!?」ダダダッ

谷のホビット30「あ、あわっ…わわわっ……ぶ、ぶつか……」ダダダッ

ドガガガガガガガガ!!

バキッ メシャッ ミシィッ ゴゴンッ ゴロゴロゴロ

ギャアアアアアアアアア!!!

パカラッパカラッ パカラッパカラッ

ズシッ ゴリッ グシャッ ボキッ ガッガッ ガガガッ

ヒュンッ ブォンッ バババッ

バシュッ ザクッ ドスッ ズンッ

ブシャッ ドバァァァッ

バタッバタッ ドサッドサッ

シーン
639: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/18(土) 21:55:45 ID:kfwKUDdq/Q
―――平原(野営地)―――

騎兵1「報告申し上げます。殲滅は完了した模様!」ピシッ

軍長「ご苦労。火はきちっと消し止めたか?」カリカリ

騎兵2「はっ!指示通り事前に待機させていた別動隊が燃え広がる前に鎮火を済ませております!」

軍長「ふんふん、よかろう。死骸は貨物馬車に積んで回収させたまえ。
生臭いゴミはキレイに焼却、自然は尊ぶべきものだ」カリカリ

騎兵1「ははっ!」

騎兵2「しかしあっけなかったですな。もう少し手こずらされるかと思いましたが?」

騎兵1「我らがフィクサー軍長に掛かれば当然の結果だ。
地図にこれまでの襲撃地を記し、奴らの行き先を予測する手並みなど、まるで預言者のようだった!」

騎兵2「うむ!火矢で逃げ場を制限し、待ち構えた騎馬隊と衝突させる戦術はまさに鮮やかでしたな!」

軍長(フィクサー)「たかだか300程度のホビットに手こずるようでは軍とは呼べんよ。ゴマ摩りもいいが生き残りの確保は?」カリカリ

騎兵1「はっ!重装騎馬の突進に潰れ、ほぼ死に絶えましたが何匹かは確保してございます!」

騎兵2「いかがなさいましょう!」

フィクサー「確保してあればよい。報告書も仕上がった…王都に帰還するとしようか」

バサッ

騎兵3「失礼します!」

騎兵1「どうした?」

騎兵3「不審な男が軍長にお目通し願いたいと!」

フィクサー「不審な男?」

騎兵3「入れ!」ガッ

マドラス「ちっ…ンな引っ張らねぇでも何もしやしねぇよ!」ザッ

フィクサー「(なんだ、この小汚ないのは?)」ジロジロ
640: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/18(土) 21:57:36 ID:fiOV4b9Y6Y
フィクサー「……みすぼらしい放浪者がわたしになんの用だね?」ジロジロ

マドラス「クッカカカ!ずいぶんな物言いだな?」

フィクサー「…なぜこんなのを通した?」ギロッ

騎兵3「そ、それが王印の押された密書を所持しておりまして?」

フィクサー「王印?」ピクッ

マドラス「こいつよ?」ガサッ ピラッ

フィクサー「…ほうほう、なるほど?いかにも本物ですね?それをどこで?」ジッ

マドラス「フールブレンっつー役人から依頼を請けてンだ?救い主を殺せとよ?」ニヤニヤ

フィクサー「(フールブレン……確か数ヶ月前に辞職した中級役人か)」

マドラス「とりあえずこのおっかねー兄ちゃんらを外してくんねーか?」

騎兵1「バカ言え!軍長を怪しい奴と二人になどしておけるか!?」

フィクサー「いいですよ。外してもらいましょう」

騎兵's「えっ」

フィクサー「テントの外に待機だ。くれぐれも聞き耳は立てないように」

騎兵1「い、いやしかし!?」

フィクサー「1000の兵が留まる駐屯地で妙な気は起こすまいよ。
イカれた死にたがりか理性なきケダモノでもない限りはね」

騎兵1「承知しました…」シブシブ

スタスタ スタスタ

バサッ カランカラン

マドラス「はっ…疑り深い連中だ?こんな善良な1市民のどこが怪しいってンだ?」

フィクサー「無駄な時間は嫌いでね。要件を聞こうか?」

マドラス「…気短な性分はモテねぇぜ?まぁいいわな……」

カクカクシカジカ
641: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/18(土) 22:25:58 ID:fiOV4b9Y6Y
マドラス「〜〜…とまぁいろいろあってな?単独行動もやむを得なくなっちまった?
そこで…確実に救い主を探してぇんだが協力してもらえねぇか?」

フィクサー「協力?」

マドラス「どうせあんたもこの件に関わってんだろ?フールブレンみてぇな間抜けな小役人一人の企てたぁ思えねぇからな?」

フィクサー「なにが言いたい?」

マドラス「どうせ裏で手引きしてやがる黒幕は同じだっつってんだよ?」

フィクサー「……」

マドラス「クッカカカカ!その目!誰を思い浮かべたんだぁ?」ニヤニヤ

フィクサー「万一にもありえない話だが…キサマに協力したとして相応の見返りはあるのか?」

マドラス「報酬の半分をくれてやる?」

フィクサー「報酬…?」

マドラス「救い主の首を取りゃ金2000枚…そういう契約でな?」

フィクサー「金2000……」

マドラス「あんたは国の命令で動いてる以上、一定の給金しか支払われねぇだろ?
どうだ?一発でけぇヤマ当ててみねぇか?なぁ?」ニヤニヤ

フィクサー「……」

マドラス「それとも…国の為にタダ働きするか?よっぽどの忠誠心がありゃそうするだろうがなぁ?」

フィクサー「…事情は理解した」

マドラス「お?」

フィクサー「ホビットの襲撃によって行き場を失った難民としてキサマの身柄を引き取ってやろう」

マドラス「建前作りか…?大変だな、お偉いさんは?」クククッ

フィクサー「くれぐれも勝手な行動は慎むように?」

マドラス「あぁ、途中で抜け出して救い主の首を取る…なんてマネはしねぇと誓おう?」ニヤニヤ

フィクサー「…分かればよろしい」

マドラス「短い付き合いになるが以後よろしくな?」

フィクサー「…あぁ、よろしく」
642: 名無しさん@読者の声:2015/4/22(水) 17:18:44 ID:cvH7ITjDUw
追いついたー!!
更新待ってます!
643: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:13:04 ID:/5.FhTrlCQ
〜〜〜2週間後〜〜〜

―――王国領(中央平原地帯)―――

馭者1「馬を休ませますので乗車中の皆さんもおくつろぎください」 ブルルルル ヒヒーン

カロル「ねぇ、あれなぁに?」

クエックエッ クエックエッ

母「なんの群れかしらねぇ…?大きい鶏みたい?」

憲兵7「リックルモアです。王都領にしかいない貴重な鳥で指定保護動物にも認定されてるんですよ」

カロル「おっきい!背中乗ってみたい!」キラキラ

マルク「……わふっ」ムスッ

母「マルクの背中も乗り心地いいわよねぇー?」ナデナデ

カロル「くえくえーくえー!」フリフリ

母「あらら?鳴き真似してるの?」

クエックエッ クエックエッ

カロル「あっ!こっち見たよ!おいで、おいで、くえー!」フリフリ

マルク「……」チッ

母「ぼ、坊や!マルクもかまってあげたら?」

カロル「え?」クルッ

マルク「はっ!はっ!」シッポフリフリ

クエックエッ ツンツン

カロル「あっ!いっぱいきた?わわっ!突っついてくる?あはははは!」キャッキャッ

マルク「」ケッ

母「め、珍しいものね?おほほ…?」オロオロ

憲兵7「あ、あんまり刺激しないようにね?
大男の背丈くらいあるし、こう見えて力も強いからね?」アセアセ

カロル「首長いねー?かわいい!」ナデナデ

憲兵7「(あ、全然聞いてない)」ガビーン
644: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:20:19 ID:/5.FhTrlCQ
憲兵7「(あーあ、馬車降りちゃったよ…。団長に怒られないか?)」ビクビク


カロル「見てみて!お母さま!」キャッキャッ

クエックエッ クエックエッ

母「まぁすごい?背中に乗せてもらえたのね?」パチパチ

カロル「えへへ!毛がふんわりふかふか?」ナデナデ

クエックエッ クエックエッ

マルク「」ザクッザクッ

母「ま、マルク…?地面に穴なんか掘ってどうしたの?」オソルオソル

マルク「」ザクッザクッ

母「(いじけちゃったわ…)」

カロル「マルク!」

マルク「アンッ!?」クルッ

カロル「高いでしょー?えへへ!」ニコニコ

マルク「……わんっ」ムスッ

カロル「いいなー…リッくん大きくって?ボクも背が伸びたらいいのに!」サワサワ

クエックエッ クエックエッ

マルク「!?」ガーン

母「(自分以外に名前付けられたのがショックなのね…)」

マルク「」イジイジ
645: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:29:17 ID:OTeQ/ZqiSE
母「…マルク」ホロリ

カロル「どうしたの?」

母「ううん、なんでもないのよ?そういえば宣教師様はお元気だった?」

カロル「うん!変わってなかったよ!」

母「そう。あたしもご挨拶したかったけれど…」

カロル「…大変みたい。やらなくちゃいけないこと、いっぱいなんだって?」

母「久しぶりに会えたのに残念ねぇ」

カロル「ううん、宣教師さまも王子さまと一緒に差別をなくそうとしてるんだもの。ちょっぴり寂しいけど邪魔したくないんだ」

母「…差別、ねぇ」

カロル「?」

母「…自分を分かってくれる相手と過ごせれば幸せじゃないかしら」

カロル「……」

母「差別があるかないかはそんなに重要じゃないと思うの。
そばにいる相手を大事に想えれば…なにも心配なんてない」

母「ま、それが出来れば苦労はないんでしょうけどね?」クスッ

カロル「…そうだね」シュン

クエックエッ クエックエッ

カロル「リッくんたちは同じ種族で仲良しだもんねー?」サワサワ

マルク「」イジイジ

カロル「マルク?」

マルク「わぅ〜…」ジトッ

カロル「キミもともだちだよ!」ニコッ

マルク「わ、ワゥン!」パァァ

カロル「憲兵さんはちょっぴり怖がってたけど…ふれあってみたら素直でかわいいのにね?」スリスリ

クエッ?

カロル「…信じ合えないのって悲しいね。疑ってみないと不安なのかな」
646: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:33:22 ID:OTeQ/ZqiSE
母「誰だって自分を守らないといけないから…信じたくてもなかなか踏み切れないんじゃない?」

カロル「うん、ラムくんも仲直りする時に言ってた」

『一方的に信じても…一方的に裏切られる時だってある。
だから僕たちは分かり合えるように…お互いに理解する努力をしなきゃいけないんだ』

母「…疑ってしまうのは相手を知りたい気持ちの裏返しなのかもしれないわね。
ラムくんはとても理不尽な環境にいたようだから…他人の気持ちを窺うのが苦手だったのかも?」

母「あの子も本当は誰かを疑ったりしない心優しい子だったんじゃない?
純粋な心に孤独と差別が重なって悪い方へ傾いて他人の気持ちを思いやれなくなってしまったのよ」

カロル「そうかも?でも最後には信じてくれたよ?」

母「ふふ…そうね。みんなで説得したんでしょ?」

カロル「うん!シヴァさんも今度は宣教師さまと一緒に説得するんだ!約束したの!」

母「あら、それなら早く会わせられるといいわね。宣教師様と族長さん」

カロル「うん!きっと仲直りさせてくれるよ!」ニコニコ

母「(若いっていいわね…。なんでも煌めいて見えて。ホビット族の長命からするとあたしもまだまだ小娘だけど)」

カロル「もうすぐ王子さまとも会えるね!楽しみ!」ニコニコ

母「えぇ、あたしも初めて会うからとってもドキドキするわ?どんな子なの?」ニコッ

カロル「あのね!イチゴが大好物で剣が上手なんだ!すごく頭もよくて頼りになるの!」

母「へぇ…それじゃ非の打ち所がないわね。やっぱり王子様ってそういうものなのかしら?」

カロル「ちょっぴり怒りっぽくて口が乱暴だけど、ホントは優しくて素直なんだよ?
でもあんまり褒めると嫌がるの。照れ屋さんだから?」ペラペラ

母「ふふ…そうなの。お母さんも会ってみたいわ?」ニコニコ

カロル「うん!ボクも会わせたい!」ニコニコ

母「……今度は何事もないといいけど」ボソッ
647: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:35:51 ID:/5.FhTrlCQ
団長「」ボーッ

憲兵30「団長!王都には明日の晩、到着予定だと聞きました!」

団長「む?あ、あぁそうか…」ハッ

憲兵30「どうかされましたか!?」

団長「い、いや…今夜の宿を探さねばな?道中に滞在出来そうな町はないのか?」

憲兵31「ここからだとスターリーの町が一番近いですね。先に向かわせた護送班もそこに滞在していると思われます!」

団長「そうか、そうか、折り合いが付かず見張りを交代しながら馬車で睡眠を取る日もあったが…。
さすがにそろそろ座りながら寝るのも限界だ。尻が痛くてかなわん」サスサス

憲兵33「ですねぇ…。しかし救い主様は元気だなぁ?外で野生の鳥達と遊んでおられますよ?」

憲兵31「初めてお会いしたが…本当に無邪気だよねぇ。
長い馬車移動にも文句一つ言いませんし、イメージと違いましたよ」

憲兵32「だな。もっと神秘的な…なんかちょっと謎めいていて不思議な雰囲気の方なのかなぁと想像してたら、実物はただの明るい子供って感じだ?」

団長「はぁ……まぁな」

憲兵30「団長…なんかありました?元気ないですけど?」

団長「…ワシの息子もちょうどあれぐらいでな。長らく顔を見ておらん…」

憲兵30「……」ピキーン

憲兵31「(なに重い話引き出してんだよ、このバカ…)」

憲兵32「(様子がおかしいのは知ってたが…まさかあの親子に自分の家族を投影してたのか?)」

憲兵33「(残りの道中、同じ馬車でずっと気まずいじゃんかよ…)」
648: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/22(水) 22:40:48 ID:OTeQ/ZqiSE
団長「妻から逐一便りをもらってはいるが…幼い頃の口癖が『どうしてボクにはパパがいないの?』だったと読んだ時は立ち直れなかった…」シュン

憲兵30「へ、へー…じょ、ジョークのうまい奥さんですね?」ヒクヒク

団長「修道院の初等部卒業の際、アルバムに書いた将来の夢が『兵士様になってパパに会う』だったんだと……」ウルウル

憲兵31「り、立派な夢ではないですか!近衛に入隊すれば将来は近い距離で働く事になりますし!」

団長「たまに帰った時に顔を合わせると…物凄く人見知りされるんだぞ!親子なのにだ!」プルプル

憲兵32「ま、まぁよくありますよ!反抗期とか?」

団長「確かに思春期な訳だが……剣の稽古を付けてやろうとすれば『王子様には毎日稽古を付けるのに僕は二月に一度なんですね』と目も合わさずに吐き捨てられ…!うっ…ぐぅ!」グシグシ

憲兵33「い、いやでも奥さんがちゃんとやってますから!そのうち立派に育って団長を見直しますって?」

団長「…半年前に帰った時などは妻に『え!?帰ってらしたの!?事前に言ってくださいまし!貴方の分のおかず用意してませんのよ!?』と叱られたがな」フッ

憲兵's「(なんも言えねぇ…)」ヒクヒク

団長「しかたあるまい!ワシには大事な大事な使命があるのだ!
国の為、民の為、ヒメ様の為!日夜働かなければならんのだぁっ!!」ウオオオオ

憲兵's「(こんな団長見たくなかった…)」シラー
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