1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
613: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:28:19 ID:NfyRtADP/E
宣教師「…ところでカロルくん、気付いてますか?」
カロル「……?」
宣教師「ふふ?争いの最中にしては静かなものですね?」チラッ
カロル「あっ……」キョロキョロ
ワイワイガヤガヤ
カロル「みんな…戦ってない」
宣教師「ホビットの皆さんが立ち上がってくださったんですよ?」
カロル「ど、どうして…?だってさっきまで……」
宣教師「ふしぎですよね。本当に?」
カロル「う、うん…」
宣教師「…ですがこのふしぎな出来事をキミは以前に体験してるんですよ?」
カロル「……?」
宣教師「一つ一つ…大事に繋いできた絆が生んだ力です」
カロル「……!」
宣教師「キミもそう。そして私も…こうして誰かと繋がりを共有している」
宣教師「いなくなって良かったと思えるような相手は一人としていません」
カロル「〜〜〜!」ジワァ
614: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:34:46 ID:NfyRtADP/E
カロル「でも…やっぱり……」
宣教師「?」
カロル「シヴァさんは癒しの力を欲しがってるもの…。ボクが…使っちゃったから」
宣教師「…たしかにキミの力は間違った方向に進ませる事も可能でしょう。
ですがその力自体は誰も傷付けたりしません?」
宣教師「癒しの力の持ち主がキミである限り、間違いは起こりませんよ?」
カロル「で、でも…ボクがいたら……わるいこと…かんがえて……っ…」ポロポロ
宣教師「……」
カロル「もう…やなの…!癒しの力が…心をわるくしちゃうんだ…!
ボクが…いたから……シヴァさんたちも…」ブルブル
宣教師「関係ありませんよ」
カロル「!」ドクンッ
宣教師「お金や才能、豊かな実りに潜在的な信仰、恨み妬み、単純な好き嫌い……まだまだありますが結果として言えるのは……」
カロル「」ブルブル
宣教師「癒しの力が無くとも心に悪は芽生えます」
カロル「……」ポロポロ
宣教師「そして誰もが違う形で心に悪を芽生えさせています。
分かりやすい例で言えば…以前の差別がそうですね」
カロル「どうにも…ならないの…?」グシッ
宣教師「……難しいでしょうね」
カロル「そんな…」シュン
615: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:36:55 ID:veAOTz.xXc
宣教師「…しかし方法がない訳ではありませんよ?」ニコッ
カロル「どうしたらいいの…?」グスンッ
宣教師「悪い心を取り除いてあげたらいいんです。キミが今までしてきたように?」
カロル「ボクが…今まで?」
宣教師「山間の村でクーペさん達を助けてあげたそうですね?」ニコニコ
カロル「……!」
宣教師「バンブルの港では神父様の為に町の人達を説得して回ったのでしょう?
漁師さんからの手紙に書いてありましたよ?」
カロル「」パチクリ
宣教師「全部知っていると言いましたよね?」ニコニコ
カロル「そう…だっけ?」グシッ
宣教師「キミが出会った方々は少なからず問題を抱えていたみたいですが…どの方も救われたと書いていましたよ?」
カロル「」グスンッ
宣教師「悪い心を取り除いてあげられるのは…悪い心を持たない者だけです?」
宣教師「大丈夫ですよ?何度挫けてもキミの心は決して悪に染まりません?私が保証します?」
カロル「……っ…!」グッ
宣教師「…さぁ行きましょうか?」
カロル「シヴァさんの…ところ?」
宣教師「はい。その方をもう一度説得しましょう?今度こそ争いを止めるんです?」
カロル「……うん!」パァァ
616: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 21:43:05 ID:26oY.cM9v2
―――聖堂(中庭の門)―――
ズォォォオオオオン
ドカッ ガンッ ズダァンッ
弓使いのホビット's「」バタバタッ
憲兵30「よし…!なんとか…倒しきったぞ!」ハァッハァッ
団長「…奴らがおらんな」キョロキョロ
ウゥゥゥゥ〜 ウゥゥゥゥ〜
団長「む?なんだ、あの重傷のホビット達は?我々は一匹たりとも切っておらん筈だが?」
憲兵30「ち、血を流して倒れてますな?打ち所が悪かったのか…?」
弓使いのホビット1「」ボーッ
団長「おい、貴様?」バッ
弓使いのホビット1「うっ…ぐっ……」グイッ
団長「奴はどこだ?」
弓使いのホビット1「し、シヴァさん達なら……も…いない」
団長「どういう事だ!?」
弓使いのホビット1「はは…ひどいや…族長なのに……見捨てるなんて?」ヘラッ
団長「見捨てる?」キョトン
弓使いのホビット1「ふふ…アハハハハ!」ケラケラ
団長「なにがおかしい!?」
弓使いのホビット1「バカだなぁ…?僕らは捨て石だよ…?」ヘラヘラ
団長「!?」
617: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 21:46:52 ID:26oY.cM9v2
弓使いのホビット1「ふ…ふふ。置いてかれちゃった…?」ヘラヘラ
団長「置いていかれた…?」
弓使いのホビット1「族長達は僕らを置いて逃げたのさ…。お前らを食い止めろって…?」ヒクヒク
団長「に、逃げただとぉ…!?」ググッ
弓使いのホビット1「嫌がって抵抗した仲間はあれさ…?」ビッ
ウゥゥゥゥ〜 ウゥゥゥゥ〜 ウゥゥ〜 ウゥゥ〜
憲兵30「うぷっ!む、むごいな…メッタ刺しだ…?」ドンビキ
弓使いのホビット1「うっ…ふぅぅ……ふふ」プルプル
団長「……」
弓使いのホビット1「オレ……なんでこんなとこに来ちゃったんだろ。
族長達がかわいそうで……人間の好きにされるのが悔しくて…力を合わせたら…きっとあんな思いしなくていいんだって……ふふ、ふ」ブワッ
弓使いのホビット1「ふえぇぇ……ふぐっ!あ、あんなの…族長達じゃない!
あんな…簡単に仲間を切り捨てるようなこと…絶対しなかったのに…!」ポロポロ
団長「……」パッ
弓使いのホビット1「う…あぅぅぅ……!」ドタッ シクシク
憲兵30「団長……どうしますか?なんか…このままじゃこいつらが不憫ですよ」
団長「不憫なものか。各地であれだけの人間を殺しておいて?」
憲兵30「そ、そうでしたね」
団長「…だがこいつの話が本当であれば急がねばならんな」
憲兵30「お、追うのですか?」
団長「いや、野外戦では多勢に無勢だ。どう転んでも勝ち目はない」
憲兵30「で、ではいったい…?」
団長「奴らの戦力は想像を遥かに越えていた…。
こうなれば近辺の警戒体勢を更に強化せねばならん。
他領の支部からも増援を呼び掛け、住民の安全確保に努めよう」
憲兵30「い、今からですか?」
団長「む?」
618: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 21:52:39 ID:26oY.cM9v2
憲兵30「終わったばかりですし邸内のホビットは取り押さえるにしても身体を休める時間くらいは……」
団長「……ならん。部隊を分け、引き続き任務に当たるぞ」
憲兵30「そ、そんな……」
団長「…生まれはどこだ?」
憲兵30「はい?」
団長「故郷はどこかと聞いているのだ?」
憲兵30「北の領土ですが……」
団長「そうか…」
憲兵30「それがなにか…?」
団長「…北の領土にあのホビット達が侵入したらどうだ?」
憲兵30「は…?」
団長「西領の町々のように悲惨な虐殺が繰り返され、お前の身内や故郷に危険が及ぶかも分からん。
その時、お前は疲れたから休もうなどと悠長に構えていられるのか?」
憲兵30「い、いえ……」
団長「もしお前が西領に住まう民だったとして…治安を守るべく働く憲兵から先の発言を聞いたらどう感じる?」
憲兵30「……!」
団長「邸内のホビットの捕縛はお前に託す。任務に集中し、せいぜい頭を冷やすんだな?」
憲兵30「す、す…ません」ペコッ
団長「謝罪はいい。さっさと行け」
憲兵30「で、では早速…取り押さえて参ります!」ダッ
団長「うむ」
619: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 21:57:16 ID:26oY.cM9v2
弓使いのホビット1「」シクシク
団長「貴様らもおとなしく縄を受けろ?悪いようにはせんぞ?」
弓使いのホビット1「どうせ…殺すんだろ」シクシク
団長「…沙汰は追って下されるだろうがワシが決める訳ではないのでな。どうなるかは分からん」
弓使いのホビット1「いい…。もういいよ」フッ
団長「……」
弓使いのホビット1「なんだっていい…。オレなんて捨てられたんだから」
バコンッ!
弓使いのホビット1「ッッッ!?」ズッキンズッキン
団長「ふん」コキッコキッ
弓使いのホビット1「な、なにすんだよ!?」ガッ
団長「いい加減にしておけよ?」パシッ ギュゥゥゥ
弓使いのホビット1「い、いたっ…!」ミシッ
団長「お前達に連れ去られたホビットや殺された人達は…皆、必死に生きようとしてきたのだ。
差別を無くし、互いを許し合い、健全な道を歩もうと努力していたっ…!」ギリッ
弓使いのホビット1「い、いたいっ…いたいって!」ミシッミシッ
団長「あれだけ無関係の者を巻き込んでおいて今さら被害者ぶるな!?
貴様らに同情する余地など微塵もないわっ!?」パッ
弓使いのホビット1「っ…!なんだよ、お前らが族長達の娘夫婦を殺したりしなけりゃこんなことにならなかったんだぞ!?」ヒリヒリ
団長「理由など関係あるか!?その話を聞いたとして殺された者達が納得出来るとでも言うのか!?」
弓使いのホビット1「はぁっ!?開き直るなよ!?」
宣教師「そう怒鳴ってはいけませんよ?」スタスタ
弓使いのホビット1「……!?」
宣教師「興奮してしまっては互いに冷静さを欠いてしまいます。穏やかに話し合いましょう?」
620: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 22:00:21 ID:sc.r7pX8oI
団長「避難したのではなかったのか…?」
宣教師「屋上の展望台からカロルくんの姿が見えましてね。急ぎ駆け付けました」
団長「いや、小童に君と避難するよう言っておいたのだが…」
宣教師「すでに合流しましたよ。彼でしたら今は傷付いた方々を癒して回っています」
団長「…そうか」
宣教師「襲撃を起こした族長がいると聞きましたが…」
団長「奴らはもうおらんぞ。門外の連中を連れて逃亡したらしい」
宣教師「…そうですか。先に見つけて説得を試みるとカロルくんに約束してしまったのですが」
団長「ムチャをするな…!まったく…お前も小童も目を離せば危険も顧みない行動ばかりしおって……」ブツブツ
宣教師「ふふ。団長さんが何度でも説得させてくれるとおっしゃったんじゃありませんか?」
団長「なっ…なぜお前がそれを!?」
宣教師「カロルくんが話してくれました?おかげで私が先に一人で行くと言っても心配ない様子でしたよ?」
団長「お、お前達な……ワシも万能ではないんだぞ?状況によっては守ってやれない可能性も……」
宣教師「あなたを信頼してるんですよ。私もカロルくんも?」ニコッ
団長「ぅ…き、気恥ずかしいからよせ!」
宣教師「ところで…この方も襲撃してきたホビット族の?」チラッ
弓使いのホビット1「なんだよ?」ジロッ
団長「…こいつめ、全然反省しとらんな」
宣教師「まぁまぁ…頭ごなしに叱ってもなんにもなりませんから?」
621: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 22:04:00 ID:26oY.cM9v2
弓使いのホビット1「〜〜…だからお前らが悪いんだ!分かったか!薄汚い人間!」ペラペラ
宣教師「なるほど…事情は飲み込めました」
団長「いかなる理由があっても許されんものは許されん。裁かれるのは当然だ」
弓使いのホビット1「…じゃあ何をされても我慢しろって言うのかよ?」
団長「報復に打って出られた以上、こちらが迎え撃つのは自然だろう!」
弓使いのホビット1「こっちだってお前らにやられたんだ!」
宣教師「…ふむふむ」
弓使いのホビット1「なに頷いてんだよ!」ジロッ
宣教師「泣き寝入りする必要はありませんでしたが…仕返しをするにも方法を間違えてしまいましたね?」
弓使いのホビット1「はぁ…?」
宣教師「決められた境界の中で戦えるように我々人間は法を用います。
あなた方ホビット族にもそういった決め事があったのではないですか?」
弓使いのホビット1「決め事ったって…人間とどうやって!」
宣教師「今の王国は人もホビットも変わらぬ民として法に頼れるようになっていますよ?」
弓使いのホビット1「しょせんは人間が作った決め事だろ」
宣教師「えぇ、そうでしょうね。あなた方にしてみれば結局は人間に都合のいい仕組みに見えるのかもしれません。
ですが無差別に無関係の者まで巻き込んで、たった一つの命を奪い合うよりは…よほど有意義な戦いになると思いますよ?」
弓使いのホビット1「っ……」
622: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 22:11:40 ID:26oY.cM9v2
団長「…これからお前達にも法の裁きを受けてもらうぞ。
犯した罪の重大さをしっかりと確認するんだな」
宣教師「安心してください。ホビットだからといって罪の比重を変える事はしません。というよりさせませんから」
弓使いのホビット1「」プイッ
団長「こうなった事情やお前達の言い分は憲兵団の方で聞き取り、公平に審議させてやろう」
宣教師「私も証言に立ち、食い違いや不正があれば正します。
この目で見た範囲でしか語れないので力になれるかは分かりませんが…。
あなた方が真実を打ち明け、真摯に罪と向き合えば減刑も認めてもらえるかもしれません」
弓使いのホビット1「信用できるか…!」
宣教師「信用出来なくても構いません。ここは耐え、法の中で戦ってみましょう?
たとえ裁きが下されようとも法に則って戦う仲間の姿を目にすれば、これから先、人間社会で生きるホビット族にとって大きな希望となるでしょう」
弓使いのホビット1「そこでも捨て石か…。やってらんないよ」
団長「…場合によってはまた外に出てこれる可能性もあるぞ」
弓使いのホビット1「……!」ピクッ
団長「何年もの間、辛く苦しい時を過ごす事にはなるが…やり直す機会はあるのだ」
宣教師「あなた方自身が生きていく為にも必要な戦いですよ?
やってみせる価値は十分にあるのではないでしょうか?」
弓使いのホビット1「う、う……」キュッ
623: 投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 22:20:04 ID:sc.r7pX8oI
弓使いのホビット1「で、でもさ…やっぱり……今さらダメだろ」ブルッ
団長「なんだ、ようやく反省する気になったか?」
弓使いのホビット1「そ、そうじゃない!そうじゃないけど……」ググッ
団長「ふん…罪には罰が下る。そんなのは当たり前だ。だがそこからやり直す為に戒めるのが罰だ」
宣教師「二度と同じ過ちを繰り返さないと心から誓いましょう?」
弓使いのホビット1「そんなの誓って…どうやって証明すんだよ」
宣教師「それはあなた次第です?」
弓使いのホビット1「……」
宣教師「巻き込んでしまった方々に償い、間違った行いを懺悔すれば…きっと新たな道が拓かれますよ?」
弓使いのホビット1「本当か…?」
宣教師「…私から断言することは出来ません。あなたの意識に掛かってますから?」
弓使いのホビット1「…族長達はどうなるんだ?」
宣教師「それも本人次第です」
弓使いのホビット1「……」
団長「我々も出来る限り奴らを止める努力はする。だが最悪は覚悟しておくんだな」
弓使いのホビット1「…分かった」
宣教師「辛いでしょうが頑張りましょう。恨み辛みは精算して新たな世界を生きる為にも…?」
弓使いのホビット1「なんでオレなんかを心配するんだよ…。あんた人間だろ?」
宣教師「人間もホビットも神の目に映れば実りある大地に芽生えた一つの命に過ぎませんよ?」クスッ
弓使いのホビット1「か、神…?」
宣教師「人間だから……ホビットだから……そういった言葉を聞かなくて済む日が必ず訪れます。
ですがそれには一人一人の意識が必要不可欠になります」
宣教師「あなたの意識がほんの少し、この世界を変えてくれるんですよ…?」ニコッ
弓使いのホビット1「…!」ポッ
624: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:30:09 ID:KmcAgQ.rhk
―――聖堂(礼拝堂)―――
ワイワイガヤガヤ
宣教師「皆さん、ご安心ください!事態は無事に収束しました!」
オォォオオオオオオオォォオオオオオオ!!!
修道女「ほら!ね?そうでしょ?そうだったでしょ!?司祭様ならやるって!?」ユサユサ
教徒「な、なにが!?揺らすなってば!?」アタフタ
司教「まったくハラハラさせられたが…なんとか被害なく終わったか。幸運に感謝しなければな」
宣教師「襲撃に加わった方々は憲兵団がこれから王都に送致し、司法に則って裁きます!」
ザワッ
難民1「ちょ、ちょっと待てよ」アセアセ
宣教師「はい?」キョトン
難民1「もちろん処刑するんだよな?」
聖堂のホビット1「え!?」
宣教師「公平な審議を願い出た上で正当な結論を出してもらいます」
難民1「そ、それって場合によっちゃ、またそいつらが出てくる事もある…のか?」
宣教師「更生の余地ありと見られれば十分にあり得るでしょうね」
難民1「はぁ…!?そんなんおっかなくてしょうがねーよ!?」
難民2「そ、そうだ!そうだ!早く殺しちまったらいいじゃないか!」
聖堂のホビット1「なんだよ!人間だって法律で罪の重さを決めるんだろ!」
聖堂のホビット2「そうだ!そうだ!」
難民1「お前らなんかに法律がどうとか言われたくねぇよ!?」
難民2「意味分かって言ってんのか?」
聖堂のホビット1「こ、このっ…!」キッ
聖堂のホビット2「暴力振るったりバカにしたり…イヤなヤツら!」
ギャーギャー ギャーギャー
625: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:32:16 ID:0/UU.q6Ut2
宣教師「」パンッパンッ
難民's「」ピタッ
聖堂のホビット's「」ピタッ
宣教師「お静かに?」シーッ
シーン
宣教師「王国領に住まうホビットを正式に民と認め、人と変わらぬ権利、ならびに尊厳の保証を確約する。
これは国王自らが提示し、高官及び役人の方々と吟味に吟味を重ね、話し合って可決された法案です。
すでに第1369条に記された法律ですから覆りませんよ?」ペラペラ
難民1「……!」アングリ
宣教師「公正な判断が下され、今後彼らがもう一度、外に出られたなら私は喜んで歓迎致します」
聖堂のホビット1「……!」パァァ
宣教師「ですが彼らの罪が重く問われ、過酷な刑に処されたとしても庇うような事はしません」
ザワザワ ザワザワ
宣教師「私はあくまで人もホビットも平等であると認めているだけです。
どちらかを贔屓にはしませんし、差別することもしません」
難民1「……」
聖堂のホビット1「……」
宣教師「お分かりいただけたでしょうか?」
難民's「っ…!」ググッ
聖堂のホビット's「……」シュン
宣教師「それでは安全になったので解散しましょうか?それぞれ元の持ち場にお戻りください!」パンッパンッ
バラバラ バラバラ
626: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:33:50 ID:0/UU.q6Ut2
―――聖堂(門外)―――
憲兵30「おら!おとなしくしろ!暴れんな!」ガッ
憲兵7「往生際の悪いやっちゃな!この!さっさと貨物庫に入れ!」グッグッ
谷のホビット1「くそっ!くそぉっ!!」ジタバタ
谷のホビット2「やだぁ!!行きたくない!!助けて族長ー!!」ギャーギャー
団長「貨物馬車の数は足りそうか?」
憲兵14「はっ!先ほど司祭様に許可を頂き、聖堂で管理している馬と貨物車を5台分お借りしました!」
団長「うむ…それならいいが」
憲兵31「団長!隠れていたホビットを捕まえてきました!」
団長「む?まだおったのか?」
憲兵31「ほら、お前もだ!来い!?」ガッ
カロル「うわーん!ボクじゃないったらぁー!?」ズルズル
団長「」ガクッ
627: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:36:10 ID:0/UU.q6Ut2
憲兵31「す、すみません!なにやら死体を漁っていたので…つい怪しいと」
団長「あぁ…助かりそうな仲間を探していたのだな。小童は怪我人の手当てをしていただけだ」
カロル「」グスンッ
憲兵14「ではそろそろ…」
憲兵32「待ってくれ!」スタスタ
憲兵14「まだいましたか?」
憲兵32「逃げようとしやがって図々しいヤツだ!?」グイッ ブンッ
番頭「くっ…!」ドタッ
カロル「あっ!」
番頭「あっ」
憲兵32「ん?」
団長「知り合いか?」
カロル「う、うん…温泉宿の……」
番頭「……」ジロッ
カロル「っ……!」ゴクリ
番頭「……」
カロル「あ、あの…」オロオロ
番頭「」ペッ
カロル「わっ…!」ビチャッ
番頭「結局は君もそっち側か…」ボソッ
カロル「……」ゴシゴシ
番頭「強い方に付くのが安全だもんな?人間にうちらを売ったのも君だろ?
そうじゃなきゃこんなに周到に待ち構えてたりする訳がない」
カロル「そんなことしないよ…。ボクが来たら、もう始まってたもの」
番頭「いかにもお人好しヅラしといて腹黒いヤツだよ…」チッ
628: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:39:54 ID:KmcAgQ.rhk
憲兵32「あ、あ〜…いいでしょうか?」
団長「連れていけ」
憲兵32「はっ…来い!」ガッ
番頭「」スタスタ
カロル「…ありがとう!」バッ
番頭「」ピタッ
憲兵32「……」ピタッ
カロル「宿の温泉!あったかくて気持ちくてボクもお母さまもマルクも大好きだったよ!」
番頭「……」
カロル「だから忘れないよ。大事な思い出いっぱいくれて…ありがとう」
番頭「…なんのつもりだ?」
カロル「ずっとお礼したかったの。助けてもらってなかったら宣教師さまにも会えなかったから…」
番頭「…だったら族長達を助けてくれよ」ボソッ
カロル「……」
番頭「族長達の為に力を使ってくれよ!大樹を実らせろよ!?」ガバッ
憲兵32「きゅ、急に動くな!?」ガッ
団長「連れていけ!!」
カロル「待って!」バッ
憲兵32「うっ……」
番頭「……!」ハァッハァッ
カロル「力は使わないよ」
番頭「使え!そうしなきゃホビット族は苦しめられたままだぞ!?」
カロル「シヴァさんはあんなことしたくないって思ってるよ!」
番頭「族長が始めた事だぞ!?」
カロル「言ってたもの!アピシナさまのお話してくれた時に!」
番頭「あ、アピシナ……様…」ハッ
629: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:41:21 ID:KmcAgQ.rhk
カロル「もう同じことしないって…アピシナさまのしたことがみんなを反省させたって言ってたもん」
番頭「あんなのは…ただの昔話だよ。本当にあったかどうかも分からない」
カロル「それでも争いは悲しいことって教えたくてお話が残ったんでしょ…?」
番頭「…そんなの誰だって分かってる。でも争いを面白がる奴が確実にいるんだよ。
そういう奴らから身を守るには隠れて逃げてばかりじゃダメなんだ!」
カロル「こんなの間違ってるよ!守るのに傷付け合うなんてヘンだもん!」
番頭「争いをやめろなんて誰にでも言えるんだよ!止められないから続くんだ!?」
カロル「あぅ…」グサッ
番頭「教訓なんて普通は数十年もしたら忘れられてくさ!三百年も我慢しただけいいじゃないか!?」
カロル「が、がまんじゃなくって…変わらないと……」マゴマゴ
番頭「じゃあ変えられるか?変わるのか!?変わらないからアピシナ様は自ら死んだんだ!」
カロル「っ……」ズキッ
番頭「族長達がいる限り、うちらの想いは死なない!必ず復讐を果たしてくれる!
そうすればお望み通り変わってくれるさ!お前らも一回勝ったくらいで調子に乗るなよ!?」
憲兵32「な、なんだと!?」
団長「言わせておけ?」
番頭「いつかホビット族が人間を滅ぼして楽園を手に入れる!その日が来るのをあの世で楽しみに待つかな!ハハハハハ!!」
団長「小童、もうよかろう?」ポンッ
カロル「はい…」シュン
憲兵32「べらべらくっちゃべりやがって!!
貨物庫ん中ですし詰めになってろ!?おら乗れ!!」グッグッ
630: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:43:26 ID:KmcAgQ.rhk
ギャーギャー グイッグイッ
団長「…ホビットの君には悪いが我々も仕事でな」
カロル「へいき…団長さんは悪くないもの」ションボリ
団長「まぁ…なんだ。元気を出せ?これからヒメ様に会わせるというのに浮かない様相では心配を掛けるぞ?」
カロル「…うん」ショボーン
団長「(この直後に気を取り直せと言われても無理な話だろうが…どうしたものか。
このままの小童を城へ送り届けてもヒメ様の心労が余計に祟るやもしれん)」
憲兵33「団長!向こうの茂みで怪しいホビットを4人捕らえました!」
団長「またか…。いい加減出発させるぞ?」
憲兵34「こら!抵抗すると罪が重くなるだけだぞ!?」グイッ
憲兵35「きびきび歩け!?」グイッ
旅のホビット1「違うんですよ!?僕達は無関係です!?」ギシギシ
旅のホビット2「たまたま通りかかっただけだって!?」ギシギシ
旅のホビット3「縄ほどいてよ…!」ギシギシ
母「あたしたちは巻き込まれないように隠れてましたの!誓って嘘じゃありません!」ギシギシ
マルク「わうっ!うぅ〜…わんっわんっ!!」グルルルル
カロル「お母さま!?」
団長「……!」ガクッ
631: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:49:45 ID:KmcAgQ.rhk
憲兵33「申し訳ない…」ズーン
旅のホビット1「ご、誤解が解けたならいいんです…?」アセアセ
旅のホビット2「やっと司祭様に会えるな!」
旅のホビット3「うん、僕達は聖堂に入るよ…。じゃあ……」
母「お世話になりました」ペコリ
カロル「宣教師さまによろしくね!」フリフリ
マルク「ワンッ!」シッポフリフリ
スタスタ スタスタ……
団長「ふぅ…これでようやく王都に帰れるな。
西領に勤務する憲兵は引き続き、各地の警備を厳重にするように!いいな?」
憲兵36「ははぁっ!!王都本部よりご協力くださいまして感謝致します!!」ピシッ
団長「勢力は弱めたが何しろ危険には変わりない。何かあれば一報入れてくれ?」
憲兵36「承知致しましたぁ!!」ピシッ
団長「うむ、では……」クルッ
母「坊やぁ…!平気?ケガとかしなかったの!?」ハラハラ
カロル「う、うん…」
母「…どうしたの?やっぱり何かされたんじゃ…」
カロル「……な、なにもないよ」オロオロ
マルク「クゥン?」ジーッ
母「…ダメ!隠し事はしないんでしょう?」
カロル「……」オロオロ
マルク「?」シッポフリフリ
632: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/17(金) 21:53:47 ID:KmcAgQ.rhk
団長「あ、あー…おほんっ!」
母「……?」
団長「お初にお目にかかりますな。ワシは憲兵団を束ねておりますダパーシ・ルフィアスと申します」ペコリ
母「あっ…お話は伺ってますわ?たしか王子様の…?」
団長「えぇ、いかにも!ご存知いただいてましたか!」
母「もちろんですわ?いつも坊やがお世話になっているそうで…すみません、ご迷惑ばかり」ペコペコ
団長「あぁ、いやいやとんでもござらん!小わっ…おほんっ!
カロル君には非常に助けられておりますとも!」ペコペコ
母「まぁそんな?いろいろとお話は聞いていますの?
団長さんはとてもたくましく勇敢な方で…危ないところを何度も救っていただいたと…」
団長「そ、そんなことはござらん!?
あなたの息子さんの方がよほど優しさと勇気に満ち溢れ、とても子供とは思えない力を発揮してくださってますぞ!」
イヤイヤ ソンナ? マァオジョウズ? イエイエ オキヅカイナク……
団長「〜〜…とまぁそんなこんなございましてな。約束を守れなかったと悔やんでおったのですよ?」ペラペラ
母「まぁそうだったの…?気にしなくていいのに?」チラッ
カロル「だって…ボクのわがままでお母さまを泣かせちゃったから…」
母「いいのよ?無事でいてくれただけで?」
マルク「ワンッ!ワンッ!」シッポフリフリ
カロル「……」ショボン
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