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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


603: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/22(日) 22:31:18 ID:HR7UqS6rQg
>>595
とんでもないです!
焦らずご自分のペースでお願いします!
自分は治まらない胸の高鳴りと戦いながら待っておりますのでw
604: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 22:57:52 ID:NfyRtADP/E
ワァーワァーギャァーギャァー

宣教師「やめなさいと言ってるでしょう!怒りますよ!?」プンスカ

ギィィィィィ

教徒「やっぱり…!司祭様!!」ガシッ

宣教師「え?」グイッ

教徒「なにしてんですか!戻りますよ!」グッグッ

宣教師「な、なにするんですかっ!」バッ

教徒「っ…司祭様は教団の長なんですよ!あなたがいないと我々の活動も……」

宣教師「…私は宣教師です。司祭ではありません!」

教徒「…ま、またそれですか!どうだって……」

宣教師「よくありません!!」キッ

教徒「」ビクッ パッ

宣教師「彼の中では…私は宣教師なのです」

教徒「か、彼…?」

宣教師「…争うホビットの皆さんの中には見知った顔もちらほらとありますね」

教徒「あっ…」

宣教師「私の力が足りなかったばかりに彼らを復讐に溺れさせてしまった…」

教徒「も、もしかして…今まで融和を説いて人間と共存させてきたホビット達が…?」
605: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 22:58:47 ID:NfyRtADP/E
宣教師「……」

教徒「そん……な」フラッ

宣教師「…私は彼らに償わなければなりません。より良い日々を約束しておきながら…叶えてあげられなかったのですから」

教徒「つ、償う……!?」バッ

宣教師「間違った争いは正しく諌めます。あなたは戻っていなさい」

教徒「……ぼ、僕も!」

宣教師「いいえ、結構です」キッパリ

教徒「え……」ガビーン

宣教師「中に避難している方々を励まして差し上げなさい。
外の様子を見てきたあなたから大丈夫だと説明すれば皆さんも安心するでしょう」

教徒「わ、分かりました!しさ……宣教師様もお気をつけて!」ダッ

宣教師「(とは言ったものの……)」

ワァーワァーギャァーギャァー

宣教師「答えが出ないのなら迷うだけ無駄ですね…。飛び込んでみますか」クスッ

宣教師「」ダッ
606: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:00:18 ID:veAOTz.xXc
憲兵14「くそぉっ!!はなせチビ共!?」ジタバタ

憲兵15「な、なんつー数だ!もうどうにもならないぞ!?」ジタバタ

名もなき村のホビット6「だ、だから武器を捨ててくれないからしょうがなくやってんの!?」ググッ

名もなき村のホビット7「司祭様が言うんだから攻撃やめろって!」ググッ

憲兵26「騙されるか!油断させようって魂胆が見え見えだ!?」ジタバタ

名もなき村のホビット8「お前らもやめろよ!」ガシッ

谷のホビット28「な、なんなんだよ!どっちの味方だ!?」ジタバタ

キャーキャー

名もなき村のホビット9「ん…?」クルッ

宣教師「う、動けないですね!?」モミクチャ

名もなき村のホビット9「司祭様だ!?」

名もなき村のホビット10「あ、危ないよ!なにしてんの!?」ガシッ

宣教師「あ、あなたは…ラルドさん!イペーさんにコウルさんも!?」グイッ

名もなき村のホビット10「覚えててくれたの?」ビックリ

宣教師「当然ですよ!お久しぶりですね?」ニコッ

名もなき村のホビット9「嬉しいなぁ。やっぱり司祭様は変わらないや」クスッ

名もなき村のホビット11「なんでこっちまで来ちゃったの?危ないから下がってなよ?」

宣教師「あ、あなた達が憲兵と争っているものですから…なんとかして止めようと?」

名もなき村のホビット9「僕達が?ちがうちがう!その逆だよ!」

名もなき村のホビット10「司祭様が屋上にいたのを見つけたら、いてもたってもいられなくって?」

名もなき村のホビット11「みんなで司祭様を守ろうって話になったんだ!
外にいる連中は僕達が待ちくたびれて無理やり攻め入ったと思ってるだろうけど?」

宣教師「そ、そうだったんですか?」パチクリ

名もなき村のホビット9「うん。僕らだけじゃないよ?他の町から連れてこられた仲間も同じ気持ちさ!」

宣教師「……!」
607: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:04:35 ID:NfyRtADP/E
宣教師「う…」モジモジ

名もなき村のホビット9「?」

宣教師「す、すみ…ません。皆さんを疑ってしまって……」シュン

名もなき村のホビット9「…大丈夫だよ。慣れてる?」ニコッ

宣教師「」ズキンッ

名もなき村のホビット9「でもその一生懸命さを見るとイヤな気持ちにはならないな?
だから僕達はあなたが好きなのかもしれないね?」ニコニコ

宣教師「っ…!」ジーン

憲兵29「だ、大丈夫ですか!司祭様!?くそっ!離れろ、ホビットめ!?」モミクチャ

宣教師「平気です!彼らは敵ではありません!」

憲兵29「は…!?」

宣教師「憲兵の皆さんも力を貸してください!」

憲兵29「……わ、我々はどうすれば!?」

名もなき村のホビット9「じゃあ…お仲間に呼び掛けてもらえる?争いをやめるようにさ?」

憲兵29「……」

名もなき村のホビット9「嫌だったらいいよ?僕達だけでやるから?」

宣教師「私も協力しますよ!」

名もなき村のホビット9「心強いなぁ。司祭様は?女性なのに?武器も何も持ってないのに?」ジーッ

憲兵29「くっ……わ、分かった!協力してやる!」

宣教師「」ホッ
608: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:12:33 ID:NfyRtADP/E
名もなき村のホビット9「…司祭様は戻りなよ」

宣教師「へ?」

名もなき村のホビット9「危ないから僕達に任せて?」

宣教師「…危ないからといって私が逃げる訳にはいきません」

名もなき村のホビット9「いいんだって!司祭様が無事じゃなかったら意味ないから!」

宣教師「…お気持ちだけありがたく?」ニコッ

ダッ ギュウギュウ グイグイ

名もなき村のホビット9「あぁっ!!」

名もなき村のホビット10「いいよ。行かせれば?」

名もなき村のホビット9「なに言ってんだよ!ダメに決まってんじゃん!」

名もなき村のホビット10「止めたって聞かないよ。あの人は僕達を大事に思ってくれてるから」

名もなき村のホビット9「……!」

名もなき村のホビット10「2、3回しか会ってないのに名前をちゃんと覚えてくれてた。あんな人……初めてだ」

名もなき村のホビット9「…早く終わらせて司祭様を止めよう!」

名もなき村のホビット11「とりあえず動きにくいから武器を奪った同族は中に入れちゃおうよ」

名もなき村のホビット9「そうだな!」

名もなき村のホビット10「じゃあ暴れないように憲兵さん達に縛り上げてもらおうか」

名もなき村のホビット9「そっちは頼んだ!こっちはこのまま武器を奪っていくから!」

名もなき村のホビット10「わかった!」
609: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:19:35 ID:NfyRtADP/E
カロル「うっ……うぅ…」グッタリ

宣教師「ここにいましたか」ザッ

カロル「……?」ヨロッ

宣教師「やっと会えましたね?」ニコッ

カロル「……!」ブルッ

宣教師「まだ諦める時ではありませんよ?共に立ち上がりましょう?」

カロル「」プルプル

宣教師「さ、立てないのでしたら手を貸しますよ?」スッ

バッ ダキッ

宣教師「ッ…!?」ドキッ

カロル「……!」ギュゥゥッ

宣教師「か、かか…カロルくん?」ドキドキ

カロル「ごめんなさい…!」ギュッ

宣教師「え…?」

カロル「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさーい!!」グスッ

宣教師「な、なぜ謝るのですか…?」ハラハラ

カロル「……!だって…!」キュッ

宣教師「……」

カロル「みんなに…なんにも言わないでいなくなったから」シュン

宣教師「ふふ…そんなことですか」ニコッ

カロル「へ……」ジッ

宣教師「〜〜〜!!」ギュゥゥゥゥッ

カロル「っ…!っ……!?」ムギュッ

宣教師「おかえりなさい…!カロルくん…!」ジワァ

カロル「」ピクッ

宣教師「おかえりなさい…!」ポロッ
610: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:21:51 ID:veAOTz.xXc
宣教師「悪い人たちに追われて大変だったでしょう?よく頑張りましたね…?」ツツー

カロル「……!?」ビックリ

宣教師「全部知っていますよ…。私もヒメくんも…ずっとキミを探してましたから?」グシッ

カロル「せん…きょうしさまぁ…!」プルプル

宣教師「…はい、なんでしょう?」ニコッ

カロル「っ……ひっく!ボク…ボクね…!また…たくさん…まきこんじゃった…」グズッ

カロル「おじいさんも…神父さんも…憲兵長さんたちも……シヴァさんたちも…みんな……みんな…っ!」フルフル

カロル「ボクがいなかったら誰も傷付かなかった…!でも…宣教師さまたちには会いたくて…!
だからっ……ふぇっ…!うぅ……ボク…誰も傷付かないように…したかったの…!」ポロポロ

カロル「でも…!で…も!どうして…!みんな…ボクに関わる人…みんな不幸になるっ…!」バッ

カロル「ボクは…ホントにいていいの…?ホントは……いなくなった方が……」ポロポロ

宣教師「おやおや…?」

カロル「……」ポロポロ

宣教師「前にも言いましたが…キミは決して誰かを巻き込んだりなどしていません?」

カロル「……!」ブンブンッ

宣教師「自分を責めてしまうのはどうしてだと思います?」

カロル「ボクが…わるいから」ヒック

宣教師「いいえ?」

カロル「……?」グズッ

宣教師「誰かを悪者にしたくないから自分を責めてしまうのですよ?」

カロル「?」ポカン

宣教師「他人の痛みを自分のことのように感じ、罪を庇おうとしてしまう…。
誰も悲しませずに済むのなら傷付くのは自分だけでいいと…」

カロル「そ、そんなこと…ないよ」オロオロ

宣教師「…そのままではどこまでも自分を追い詰めてしまいますよ?」

カロル「っ……」
611: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:24:54 ID:NfyRtADP/E
カロル「ち、ちがうよ…ボクは……」

宣教師「それではなぜ倒れていたのです?力を使えば立ち上がれたのに?」

カロル「」ドキッ

宣教師「このままいなくなってしまえば争いが治まるとでも思ったのですか?」

カロル「……」

宣教師「…どうなんです?」

カロル「…お母さまと約束してたの。後悔しないようにするって」

カロル「でも…約束守れなかった。シヴァさんたちを止められなかった…!」ググッ

宣教師「カロルくん…」

カロル「…そう思ったら胸が苦しくなって…悲しくて…こわくて…わかんなくなっちゃったんだ」ブルッ

宣教師「……」

カロル「…だから…もう、いいかなって」ポツリ

宣教師「なにがですか?」

カロル「……」プイッ

宣教師「なにがもういいのですか?」

カロル「ボク…なんか……いなくなっても…」ブルブル

宣教師「……」

カロル「っ…」キュッ

宣教師「」ゴソゴソ

カロル「」ビクッ

宣教師「どうぞ使ってください?」つ【ハンカチ】

カロル「あ、はい…」パシッ

カロル「」ゴシゴシ キュッキュッ

宣教師「…一つ聞いていいですか?」

カロル「え?」
612: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:26:40 ID:NfyRtADP/E
宣教師「たとえば私がいなくなってしまったら…キミは悲しんでくれますか?」

カロル「っ…当たり前じゃない!もう絶対離れたくないよ!」

宣教師「嬉しいですが…複雑ですね」

カロル「…なんで?」

宣教師「そう思ってくださるのなら、なぜ自分なんていなくなった方がいいなどと言えるんですか…?」ジッ

カロル「へ…?」

宣教師「キミが姿を消してしまった期間……私達がどういう想いで過ごしていたか分かりますか…?」

カロル「」ハッ

宣教師「みんながキミを心配していたんです。
どうしていなくなってしまったのか…なぜ戻ってこないのか…分からないまま苦しんできたんです」

カロル「ご、ごめんなさ……」シュン

宣教師「…謝る事はありませんよ。押し付けがましくてすみません」

カロル「……ホントにごめんなさい」

宣教師「……」

カロル「……」
613: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:28:19 ID:NfyRtADP/E
宣教師「…ところでカロルくん、気付いてますか?」

カロル「……?」

宣教師「ふふ?争いの最中にしては静かなものですね?」チラッ

カロル「あっ……」キョロキョロ

ワイワイガヤガヤ

カロル「みんな…戦ってない」

宣教師「ホビットの皆さんが立ち上がってくださったんですよ?」

カロル「ど、どうして…?だってさっきまで……」

宣教師「ふしぎですよね。本当に?」

カロル「う、うん…」

宣教師「…ですがこのふしぎな出来事をキミは以前に体験してるんですよ?」

カロル「……?」

宣教師「一つ一つ…大事に繋いできた絆が生んだ力です」

カロル「……!」

宣教師「キミもそう。そして私も…こうして誰かと繋がりを共有している」

宣教師「いなくなって良かったと思えるような相手は一人としていません」

カロル「〜〜〜!」ジワァ
614: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:34:46 ID:NfyRtADP/E
カロル「でも…やっぱり……」

宣教師「?」

カロル「シヴァさんは癒しの力を欲しがってるもの…。ボクが…使っちゃったから」

宣教師「…たしかにキミの力は間違った方向に進ませる事も可能でしょう。
ですがその力自体は誰も傷付けたりしません?」

宣教師「癒しの力の持ち主がキミである限り、間違いは起こりませんよ?」

カロル「で、でも…ボクがいたら……わるいこと…かんがえて……っ…」ポロポロ

宣教師「……」

カロル「もう…やなの…!癒しの力が…心をわるくしちゃうんだ…!
ボクが…いたから……シヴァさんたちも…」ブルブル

宣教師「関係ありませんよ」

カロル「!」ドクンッ

宣教師「お金や才能、豊かな実りに潜在的な信仰、恨み妬み、単純な好き嫌い……まだまだありますが結果として言えるのは……」

カロル「」ブルブル

宣教師「癒しの力が無くとも心に悪は芽生えます」

カロル「……」ポロポロ

宣教師「そして誰もが違う形で心に悪を芽生えさせています。
分かりやすい例で言えば…以前の差別がそうですね」

カロル「どうにも…ならないの…?」グシッ

宣教師「……難しいでしょうね」

カロル「そんな…」シュン
615: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:36:55 ID:veAOTz.xXc
宣教師「…しかし方法がない訳ではありませんよ?」ニコッ

カロル「どうしたらいいの…?」グスンッ

宣教師「悪い心を取り除いてあげたらいいんです。キミが今までしてきたように?」

カロル「ボクが…今まで?」

宣教師「山間の村でクーペさん達を助けてあげたそうですね?」ニコニコ

カロル「……!」

宣教師「バンブルの港では神父様の為に町の人達を説得して回ったのでしょう?
漁師さんからの手紙に書いてありましたよ?」

カロル「」パチクリ

宣教師「全部知っていると言いましたよね?」ニコニコ

カロル「そう…だっけ?」グシッ

宣教師「キミが出会った方々は少なからず問題を抱えていたみたいですが…どの方も救われたと書いていましたよ?」

カロル「」グスンッ

宣教師「悪い心を取り除いてあげられるのは…悪い心を持たない者だけです?」

宣教師「大丈夫ですよ?何度挫けてもキミの心は決して悪に染まりません?私が保証します?」

カロル「……っ…!」グッ

宣教師「…さぁ行きましょうか?」

カロル「シヴァさんの…ところ?」

宣教師「はい。その方をもう一度説得しましょう?今度こそ争いを止めるんです?」

カロル「……うん!」パァァ
616: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 21:43:05 ID:26oY.cM9v2
―――聖堂(中庭の門)―――

ズォォォオオオオン

ドカッ ガンッ ズダァンッ

弓使いのホビット's「」バタバタッ

憲兵30「よし…!なんとか…倒しきったぞ!」ハァッハァッ

団長「…奴らがおらんな」キョロキョロ

ウゥゥゥゥ〜 ウゥゥゥゥ〜

団長「む?なんだ、あの重傷のホビット達は?我々は一匹たりとも切っておらん筈だが?」

憲兵30「ち、血を流して倒れてますな?打ち所が悪かったのか…?」

弓使いのホビット1「」ボーッ

団長「おい、貴様?」バッ

弓使いのホビット1「うっ…ぐっ……」グイッ

団長「奴はどこだ?」

弓使いのホビット1「し、シヴァさん達なら……も…いない」

団長「どういう事だ!?」

弓使いのホビット1「はは…ひどいや…族長なのに……見捨てるなんて?」ヘラッ

団長「見捨てる?」キョトン

弓使いのホビット1「ふふ…アハハハハ!」ケラケラ

団長「なにがおかしい!?」

弓使いのホビット1「バカだなぁ…?僕らは捨て石だよ…?」ヘラヘラ

団長「!?」
617: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 21:46:52 ID:26oY.cM9v2
弓使いのホビット1「ふ…ふふ。置いてかれちゃった…?」ヘラヘラ

団長「置いていかれた…?」

弓使いのホビット1「族長達は僕らを置いて逃げたのさ…。お前らを食い止めろって…?」ヒクヒク

団長「に、逃げただとぉ…!?」ググッ

弓使いのホビット1「嫌がって抵抗した仲間はあれさ…?」ビッ

ウゥゥゥゥ〜 ウゥゥゥゥ〜 ウゥゥ〜 ウゥゥ〜

憲兵30「うぷっ!む、むごいな…メッタ刺しだ…?」ドンビキ

弓使いのホビット1「うっ…ふぅぅ……ふふ」プルプル

団長「……」

弓使いのホビット1「オレ……なんでこんなとこに来ちゃったんだろ。
族長達がかわいそうで……人間の好きにされるのが悔しくて…力を合わせたら…きっとあんな思いしなくていいんだって……ふふ、ふ」ブワッ

弓使いのホビット1「ふえぇぇ……ふぐっ!あ、あんなの…族長達じゃない!
あんな…簡単に仲間を切り捨てるようなこと…絶対しなかったのに…!」ポロポロ

団長「……」パッ

弓使いのホビット1「う…あぅぅぅ……!」ドタッ シクシク

憲兵30「団長……どうしますか?なんか…このままじゃこいつらが不憫ですよ」

団長「不憫なものか。各地であれだけの人間を殺しておいて?」

憲兵30「そ、そうでしたね」

団長「…だがこいつの話が本当であれば急がねばならんな」

憲兵30「お、追うのですか?」

団長「いや、野外戦では多勢に無勢だ。どう転んでも勝ち目はない」

憲兵30「で、ではいったい…?」

団長「奴らの戦力は想像を遥かに越えていた…。
こうなれば近辺の警戒体勢を更に強化せねばならん。
他領の支部からも増援を呼び掛け、住民の安全確保に努めよう」

憲兵30「い、今からですか?」

団長「む?」
618: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 21:52:39 ID:26oY.cM9v2
憲兵30「終わったばかりですし邸内のホビットは取り押さえるにしても身体を休める時間くらいは……」

団長「……ならん。部隊を分け、引き続き任務に当たるぞ」

憲兵30「そ、そんな……」

団長「…生まれはどこだ?」

憲兵30「はい?」

団長「故郷はどこかと聞いているのだ?」

憲兵30「北の領土ですが……」

団長「そうか…」

憲兵30「それがなにか…?」

団長「…北の領土にあのホビット達が侵入したらどうだ?」

憲兵30「は…?」

団長「西領の町々のように悲惨な虐殺が繰り返され、お前の身内や故郷に危険が及ぶかも分からん。
その時、お前は疲れたから休もうなどと悠長に構えていられるのか?」

憲兵30「い、いえ……」

団長「もしお前が西領に住まう民だったとして…治安を守るべく働く憲兵から先の発言を聞いたらどう感じる?」

憲兵30「……!」

団長「邸内のホビットの捕縛はお前に託す。任務に集中し、せいぜい頭を冷やすんだな?」

憲兵30「す、す…ません」ペコッ

団長「謝罪はいい。さっさと行け」

憲兵30「で、では早速…取り押さえて参ります!」ダッ

団長「うむ」
619: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 21:57:16 ID:26oY.cM9v2
弓使いのホビット1「」シクシク

団長「貴様らもおとなしく縄を受けろ?悪いようにはせんぞ?」

弓使いのホビット1「どうせ…殺すんだろ」シクシク

団長「…沙汰は追って下されるだろうがワシが決める訳ではないのでな。どうなるかは分からん」

弓使いのホビット1「いい…。もういいよ」フッ

団長「……」

弓使いのホビット1「なんだっていい…。オレなんて捨てられたんだから」

バコンッ!

弓使いのホビット1「ッッッ!?」ズッキンズッキン

団長「ふん」コキッコキッ

弓使いのホビット1「な、なにすんだよ!?」ガッ

団長「いい加減にしておけよ?」パシッ ギュゥゥゥ

弓使いのホビット1「い、いたっ…!」ミシッ

団長「お前達に連れ去られたホビットや殺された人達は…皆、必死に生きようとしてきたのだ。
差別を無くし、互いを許し合い、健全な道を歩もうと努力していたっ…!」ギリッ

弓使いのホビット1「い、いたいっ…いたいって!」ミシッミシッ

団長「あれだけ無関係の者を巻き込んでおいて今さら被害者ぶるな!?
貴様らに同情する余地など微塵もないわっ!?」パッ

弓使いのホビット1「っ…!なんだよ、お前らが族長達の娘夫婦を殺したりしなけりゃこんなことにならなかったんだぞ!?」ヒリヒリ

団長「理由など関係あるか!?その話を聞いたとして殺された者達が納得出来るとでも言うのか!?」

弓使いのホビット1「はぁっ!?開き直るなよ!?」

宣教師「そう怒鳴ってはいけませんよ?」スタスタ

弓使いのホビット1「……!?」

宣教師「興奮してしまっては互いに冷静さを欠いてしまいます。穏やかに話し合いましょう?」
620: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 22:00:21 ID:sc.r7pX8oI
団長「避難したのではなかったのか…?」

宣教師「屋上の展望台からカロルくんの姿が見えましてね。急ぎ駆け付けました」

団長「いや、小童に君と避難するよう言っておいたのだが…」

宣教師「すでに合流しましたよ。彼でしたら今は傷付いた方々を癒して回っています」

団長「…そうか」

宣教師「襲撃を起こした族長がいると聞きましたが…」

団長「奴らはもうおらんぞ。門外の連中を連れて逃亡したらしい」

宣教師「…そうですか。先に見つけて説得を試みるとカロルくんに約束してしまったのですが」

団長「ムチャをするな…!まったく…お前も小童も目を離せば危険も顧みない行動ばかりしおって……」ブツブツ

宣教師「ふふ。団長さんが何度でも説得させてくれるとおっしゃったんじゃありませんか?」

団長「なっ…なぜお前がそれを!?」

宣教師「カロルくんが話してくれました?おかげで私が先に一人で行くと言っても心配ない様子でしたよ?」

団長「お、お前達な……ワシも万能ではないんだぞ?状況によっては守ってやれない可能性も……」

宣教師「あなたを信頼してるんですよ。私もカロルくんも?」ニコッ

団長「ぅ…き、気恥ずかしいからよせ!」

宣教師「ところで…この方も襲撃してきたホビット族の?」チラッ

弓使いのホビット1「なんだよ?」ジロッ

団長「…こいつめ、全然反省しとらんな」

宣教師「まぁまぁ…頭ごなしに叱ってもなんにもなりませんから?」

621: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 22:04:00 ID:26oY.cM9v2
弓使いのホビット1「〜〜…だからお前らが悪いんだ!分かったか!薄汚い人間!」ペラペラ

宣教師「なるほど…事情は飲み込めました」

団長「いかなる理由があっても許されんものは許されん。裁かれるのは当然だ」

弓使いのホビット1「…じゃあ何をされても我慢しろって言うのかよ?」

団長「報復に打って出られた以上、こちらが迎え撃つのは自然だろう!」

弓使いのホビット1「こっちだってお前らにやられたんだ!」

宣教師「…ふむふむ」

弓使いのホビット1「なに頷いてんだよ!」ジロッ

宣教師「泣き寝入りする必要はありませんでしたが…仕返しをするにも方法を間違えてしまいましたね?」

弓使いのホビット1「はぁ…?」

宣教師「決められた境界の中で戦えるように我々人間は法を用います。
あなた方ホビット族にもそういった決め事があったのではないですか?」

弓使いのホビット1「決め事ったって…人間とどうやって!」

宣教師「今の王国は人もホビットも変わらぬ民として法に頼れるようになっていますよ?」

弓使いのホビット1「しょせんは人間が作った決め事だろ」

宣教師「えぇ、そうでしょうね。あなた方にしてみれば結局は人間に都合のいい仕組みに見えるのかもしれません。
ですが無差別に無関係の者まで巻き込んで、たった一つの命を奪い合うよりは…よほど有意義な戦いになると思いますよ?」

弓使いのホビット1「っ……」
622: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 22:11:40 ID:26oY.cM9v2
団長「…これからお前達にも法の裁きを受けてもらうぞ。
犯した罪の重大さをしっかりと確認するんだな」

宣教師「安心してください。ホビットだからといって罪の比重を変える事はしません。というよりさせませんから」

弓使いのホビット1「」プイッ

団長「こうなった事情やお前達の言い分は憲兵団の方で聞き取り、公平に審議させてやろう」

宣教師「私も証言に立ち、食い違いや不正があれば正します。
この目で見た範囲でしか語れないので力になれるかは分かりませんが…。
あなた方が真実を打ち明け、真摯に罪と向き合えば減刑も認めてもらえるかもしれません」

弓使いのホビット1「信用できるか…!」

宣教師「信用出来なくても構いません。ここは耐え、法の中で戦ってみましょう?
たとえ裁きが下されようとも法に則って戦う仲間の姿を目にすれば、これから先、人間社会で生きるホビット族にとって大きな希望となるでしょう」

弓使いのホビット1「そこでも捨て石か…。やってらんないよ」

団長「…場合によってはまた外に出てこれる可能性もあるぞ」

弓使いのホビット1「……!」ピクッ

団長「何年もの間、辛く苦しい時を過ごす事にはなるが…やり直す機会はあるのだ」

宣教師「あなた方自身が生きていく為にも必要な戦いですよ?
やってみせる価値は十分にあるのではないでしょうか?」

弓使いのホビット1「う、う……」キュッ
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