1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
598: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/22(日) 21:58:35 ID:QPpqian0i6
〜〜〜回想(イフィート)〜〜〜
イフィート「あいつらを逃がしただとぉ!?どういうこった!?」ガッ
谷のホビット17「ぐっ…!お、お前らが戦うとか言い出すからだろ?」ググッ
イフィート「あんだとぉ!?」ユサユサ
谷のホビット20「乱暴はよさぬか、イフィートよ!シヴァ!お前もじゃ?黙っとらんで止めぬか?」
シヴァ「……」
谷のホビット20「お前達の悲しみはよく分かる。悔しいじゃろうよ?」
イフィート「だったらなんで逃がしたぁ!?」
谷のホビット20「あんな力に頼るべきではない。そう教えた筈じゃ」
イフィート「まぁたアピシナ様か!?昔話は聞き飽きたぜ!?」
谷のホビット20「冷静になれぃ!それでなくともお前達のやり方は強引すぎる!」
シヴァ「…先代よ。儂は教訓を忘れてはいない。族長として集落に住まう皆を想い、辿り着いた答えこそが人間の駆逐だ」
谷のホビット20「抜かせ!衝動に駈られての行動は明白!
皆それぞれの暮らしがあるのじゃ!争いに加えようなど言語道断!長という立場を利用するのは許さんぞ!?」
イフィート「くっ…!?」
シヴァ「……なにが暮らしだ」
谷のホビット20「はぁ!?なんじゃ?なにか言いたい事でもあるのか?」
谷のホビット18「俺達だってなぁ!妻や子供がいるんだよ!」
谷のホビット19「ここでの暮らしを豊かにする為に環境作りして農作だって増やしてきたんだ!積み上げた努力を無駄にする気か!?」
シヴァ「……分かった。明日の晩、集会所で改めて話そう」
谷のホビット20「…いいじゃろう。お前達の気が済むまで話し合ってやる」
599: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/22(日) 22:01:57 ID:QPpqian0i6
ワラワラ ワラワラ
谷のホビット20「ウンウン!よく集まってくれたのう?」
谷のホビット19「反対派をめいっぱい募ってやりましたよ!こんだけの人数がいれば十分、族長達を押し切れます!」
谷のホビット20「これでよい。復讐など虚しいだけじゃ」
谷のホビット17「それにしても族長たち…おっそいなぁ」
谷のホビット20「はて…とうに日も暮れておるのじゃが?」
モクモク モクモク
谷のホビット18「け、煙!?」
谷のホビット19「えっ!?ひ、火なんかどこに!?」アセアセ
ワァァァァアアアア!!!
ボォォォォォオオオ
谷のホビット17「や、やばっ!?屋内にまで火の手が…!?」
谷のホビット20「い、いったん出るんじゃ!?」
ガララッ
谷のホビット18「」ハッ
ズドッ ズドッ ズドッ
谷のホビット18「ぶっ…ぐはぁ!?」ドシャッ
谷のホビット's「」ビクビクゥッ
600: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/22(日) 22:10:53 ID:HR7UqS6rQg
谷のホビット20「な、なにが……お、お前達!?」
イフィート「そぅら!出てくる奴らは長槍で突き殺せ!?」
オォォォォォオオオ!!!
谷のホビット17「あっ…あぁ……」ガクッ
谷のホビット19「な、なんでみんな武器なんか…話し合いは…!?」
シヴァ「…賛成派を募り、出した結論だ」ザッ
谷のホビット20「し、シヴァ…!」
シヴァ「焼け死ぬか、刺殺されるかは好きにしていい。同胞の死を見過ごすような薄情者はいらぬ」
谷のホビット20「考え直せ…!まだ間に合う…!アピシナ様にした過ちを繰り返す前にっ…!」
シヴァ「たしかに許されぬ過ちだ。アピシナ様は人間に情を傾けてしまった」
谷のホビット20「…そうではない!アピシナ様を利用しようとした先人達が愚かだったのだ!」
シヴァ「儂に任せて安らかに眠れ。ホビット族の未来はここから始まる」
谷のホビット20「お、お前を族長に据えてしまったことが最大の過ちじゃった…!」ギリッ
ゴォォォォォオオオ ガラガラッ ドーン ガシャッ
メラメラ メラメラ
シヴァ「……」
イフィート「……もう後戻り出来ねぇな」
シヴァ「これでいい。あとは前進あるのみだ」
イフィート「…だな!」
……………………
601: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/22(日) 22:13:40 ID:HR7UqS6rQg
名もなき村のホビット1「あんた達に何があったかなんて知ったこっちゃないけどさ。
その恨みに僕達や司祭様を巻き込むのはやめてくれよ?」
イフィート「……」
ビュンッ
名もなき村のホビット1「っ…!?」ドスッ
シヴァ「くっ…クク!ハハハハハハ!!!」グンッ
名もなき村のホビット1「あっ…がっ!がっあぁぁぁ!!」ズブズブ
シヴァ「ふんっ!!」ズボッ
名もなき村のホビット1「お゙え゙ぇぇっ……」バタッ
名もなき村のホビット2「わっ…!?」
名もなき村のホビット3「な、な、なに…をっ」ガクガク
シヴァ「」ビュンッ
ズドッ ギャアアアアアアアア
イフィート「シヴァ……」
イフィート「(…立ち止まれねぇよな。俺もお前も…?)」ニヤッ
名もなき村のホビット3「や、やめろよっ!まだ分かんないのか!?」ビクビク
イフィート「知るかよぉぉ!!」ブンッ
名もなき村のホビット3「おごっ!?」グシャッ
イフィート「俺達の戦いに腰抜けはいらねぇ!!どこまでもやってやんぜぇ!!」ブンッ
ズドッ バキッ ゴンッ
ウワアアアアアアアア!!!
602: 投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/3/22(日) 22:23:07 ID:HR7UqS6rQg
ピトッ フワッ
団長「う、む…!す、すまんな?ワシとした事が不覚だった…!」ムクリ
カロル「…ううん?ボクがちゃんと説得できなかったから…ごめんなさい」
団長「気にするな…。君はよくやった?」ポンッ
カロル「……」シュン
団長「宣教師の所へ行き、中に避難するといい?」
カロル「…で、でもこのままじゃ」
団長「…争いの解決法は大きく二つに分かれておってな」
カロル「……?」ジッ
団長「一つは頃合いを見計らって和解を申し入れる方法だ。これは時間と犠牲を大いに伴う上に成功例も少ない」
カロル「…うん」
団長「もう一つは…敵の長を殺し、残りの戦意を失わせるという方法だ」
カロル「……!」ドクンッ
団長「…戦況や武力差によっては最も速やかに犠牲を少なく終えられる方法かもしれん?」
カロル「」ドクンッドクンッ
団長「可能であれば…命を奪わずに終えさせてやりたかったんだがな。さすがにこれ以上は見過ごせんよ」スクッ
カロル「(む、むねが…くるしっ……)」ドクンッドクンッ
団長「非情な決断と思われてもしかたないが……許せ」スタスタ
カロル「ま、待って!だっ…ん…!?」ギュッ
ワァーワァーギャァーギャァー
カロル「はっ…はっ…はっ…」ガクッ
カロル「く、くるしっ…はっ……」ドクンッドクンッ
憲兵24「ホビットめ…!」ザッ
カロル「」ハッ
憲兵24「死ねぇっ!!」ブンッ
バキィッ ドシャッ
603: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/22(日) 22:31:18 ID:HR7UqS6rQg
>>595
とんでもないです!
焦らずご自分のペースでお願いします!
自分は治まらない胸の高鳴りと戦いながら待っておりますのでw
604: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 22:57:52 ID:NfyRtADP/E
ワァーワァーギャァーギャァー
宣教師「やめなさいと言ってるでしょう!怒りますよ!?」プンスカ
ギィィィィィ
教徒「やっぱり…!司祭様!!」ガシッ
宣教師「え?」グイッ
教徒「なにしてんですか!戻りますよ!」グッグッ
宣教師「な、なにするんですかっ!」バッ
教徒「っ…司祭様は教団の長なんですよ!あなたがいないと我々の活動も……」
宣教師「…私は宣教師です。司祭ではありません!」
教徒「…ま、またそれですか!どうだって……」
宣教師「よくありません!!」キッ
教徒「」ビクッ パッ
宣教師「彼の中では…私は宣教師なのです」
教徒「か、彼…?」
宣教師「…争うホビットの皆さんの中には見知った顔もちらほらとありますね」
教徒「あっ…」
宣教師「私の力が足りなかったばかりに彼らを復讐に溺れさせてしまった…」
教徒「も、もしかして…今まで融和を説いて人間と共存させてきたホビット達が…?」
605: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 22:58:47 ID:NfyRtADP/E
宣教師「……」
教徒「そん……な」フラッ
宣教師「…私は彼らに償わなければなりません。より良い日々を約束しておきながら…叶えてあげられなかったのですから」
教徒「つ、償う……!?」バッ
宣教師「間違った争いは正しく諌めます。あなたは戻っていなさい」
教徒「……ぼ、僕も!」
宣教師「いいえ、結構です」キッパリ
教徒「え……」ガビーン
宣教師「中に避難している方々を励まして差し上げなさい。
外の様子を見てきたあなたから大丈夫だと説明すれば皆さんも安心するでしょう」
教徒「わ、分かりました!しさ……宣教師様もお気をつけて!」ダッ
宣教師「(とは言ったものの……)」
ワァーワァーギャァーギャァー
宣教師「答えが出ないのなら迷うだけ無駄ですね…。飛び込んでみますか」クスッ
宣教師「」ダッ
606: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:00:18 ID:veAOTz.xXc
憲兵14「くそぉっ!!はなせチビ共!?」ジタバタ
憲兵15「な、なんつー数だ!もうどうにもならないぞ!?」ジタバタ
名もなき村のホビット6「だ、だから武器を捨ててくれないからしょうがなくやってんの!?」ググッ
名もなき村のホビット7「司祭様が言うんだから攻撃やめろって!」ググッ
憲兵26「騙されるか!油断させようって魂胆が見え見えだ!?」ジタバタ
名もなき村のホビット8「お前らもやめろよ!」ガシッ
谷のホビット28「な、なんなんだよ!どっちの味方だ!?」ジタバタ
キャーキャー
名もなき村のホビット9「ん…?」クルッ
宣教師「う、動けないですね!?」モミクチャ
名もなき村のホビット9「司祭様だ!?」
名もなき村のホビット10「あ、危ないよ!なにしてんの!?」ガシッ
宣教師「あ、あなたは…ラルドさん!イペーさんにコウルさんも!?」グイッ
名もなき村のホビット10「覚えててくれたの?」ビックリ
宣教師「当然ですよ!お久しぶりですね?」ニコッ
名もなき村のホビット9「嬉しいなぁ。やっぱり司祭様は変わらないや」クスッ
名もなき村のホビット11「なんでこっちまで来ちゃったの?危ないから下がってなよ?」
宣教師「あ、あなた達が憲兵と争っているものですから…なんとかして止めようと?」
名もなき村のホビット9「僕達が?ちがうちがう!その逆だよ!」
名もなき村のホビット10「司祭様が屋上にいたのを見つけたら、いてもたってもいられなくって?」
名もなき村のホビット11「みんなで司祭様を守ろうって話になったんだ!
外にいる連中は僕達が待ちくたびれて無理やり攻め入ったと思ってるだろうけど?」
宣教師「そ、そうだったんですか?」パチクリ
名もなき村のホビット9「うん。僕らだけじゃないよ?他の町から連れてこられた仲間も同じ気持ちさ!」
宣教師「……!」
607: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:04:35 ID:NfyRtADP/E
宣教師「う…」モジモジ
名もなき村のホビット9「?」
宣教師「す、すみ…ません。皆さんを疑ってしまって……」シュン
名もなき村のホビット9「…大丈夫だよ。慣れてる?」ニコッ
宣教師「」ズキンッ
名もなき村のホビット9「でもその一生懸命さを見るとイヤな気持ちにはならないな?
だから僕達はあなたが好きなのかもしれないね?」ニコニコ
宣教師「っ…!」ジーン
憲兵29「だ、大丈夫ですか!司祭様!?くそっ!離れろ、ホビットめ!?」モミクチャ
宣教師「平気です!彼らは敵ではありません!」
憲兵29「は…!?」
宣教師「憲兵の皆さんも力を貸してください!」
憲兵29「……わ、我々はどうすれば!?」
名もなき村のホビット9「じゃあ…お仲間に呼び掛けてもらえる?争いをやめるようにさ?」
憲兵29「……」
名もなき村のホビット9「嫌だったらいいよ?僕達だけでやるから?」
宣教師「私も協力しますよ!」
名もなき村のホビット9「心強いなぁ。司祭様は?女性なのに?武器も何も持ってないのに?」ジーッ
憲兵29「くっ……わ、分かった!協力してやる!」
宣教師「」ホッ
608: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:12:33 ID:NfyRtADP/E
名もなき村のホビット9「…司祭様は戻りなよ」
宣教師「へ?」
名もなき村のホビット9「危ないから僕達に任せて?」
宣教師「…危ないからといって私が逃げる訳にはいきません」
名もなき村のホビット9「いいんだって!司祭様が無事じゃなかったら意味ないから!」
宣教師「…お気持ちだけありがたく?」ニコッ
ダッ ギュウギュウ グイグイ
名もなき村のホビット9「あぁっ!!」
名もなき村のホビット10「いいよ。行かせれば?」
名もなき村のホビット9「なに言ってんだよ!ダメに決まってんじゃん!」
名もなき村のホビット10「止めたって聞かないよ。あの人は僕達を大事に思ってくれてるから」
名もなき村のホビット9「……!」
名もなき村のホビット10「2、3回しか会ってないのに名前をちゃんと覚えてくれてた。あんな人……初めてだ」
名もなき村のホビット9「…早く終わらせて司祭様を止めよう!」
名もなき村のホビット11「とりあえず動きにくいから武器を奪った同族は中に入れちゃおうよ」
名もなき村のホビット9「そうだな!」
名もなき村のホビット10「じゃあ暴れないように憲兵さん達に縛り上げてもらおうか」
名もなき村のホビット9「そっちは頼んだ!こっちはこのまま武器を奪っていくから!」
名もなき村のホビット10「わかった!」
609: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:19:35 ID:NfyRtADP/E
カロル「うっ……うぅ…」グッタリ
宣教師「ここにいましたか」ザッ
カロル「……?」ヨロッ
宣教師「やっと会えましたね?」ニコッ
カロル「……!」ブルッ
宣教師「まだ諦める時ではありませんよ?共に立ち上がりましょう?」
カロル「」プルプル
宣教師「さ、立てないのでしたら手を貸しますよ?」スッ
バッ ダキッ
宣教師「ッ…!?」ドキッ
カロル「……!」ギュゥゥッ
宣教師「か、かか…カロルくん?」ドキドキ
カロル「ごめんなさい…!」ギュッ
宣教師「え…?」
カロル「ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさーい!!」グスッ
宣教師「な、なぜ謝るのですか…?」ハラハラ
カロル「……!だって…!」キュッ
宣教師「……」
カロル「みんなに…なんにも言わないでいなくなったから」シュン
宣教師「ふふ…そんなことですか」ニコッ
カロル「へ……」ジッ
宣教師「〜〜〜!!」ギュゥゥゥゥッ
カロル「っ…!っ……!?」ムギュッ
宣教師「おかえりなさい…!カロルくん…!」ジワァ
カロル「」ピクッ
宣教師「おかえりなさい…!」ポロッ
610: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:21:51 ID:veAOTz.xXc
宣教師「悪い人たちに追われて大変だったでしょう?よく頑張りましたね…?」ツツー
カロル「……!?」ビックリ
宣教師「全部知っていますよ…。私もヒメくんも…ずっとキミを探してましたから?」グシッ
カロル「せん…きょうしさまぁ…!」プルプル
宣教師「…はい、なんでしょう?」ニコッ
カロル「っ……ひっく!ボク…ボクね…!また…たくさん…まきこんじゃった…」グズッ
カロル「おじいさんも…神父さんも…憲兵長さんたちも……シヴァさんたちも…みんな……みんな…っ!」フルフル
カロル「ボクがいなかったら誰も傷付かなかった…!でも…宣教師さまたちには会いたくて…!
だからっ……ふぇっ…!うぅ……ボク…誰も傷付かないように…したかったの…!」ポロポロ
カロル「でも…!で…も!どうして…!みんな…ボクに関わる人…みんな不幸になるっ…!」バッ
カロル「ボクは…ホントにいていいの…?ホントは……いなくなった方が……」ポロポロ
宣教師「おやおや…?」
カロル「……」ポロポロ
宣教師「前にも言いましたが…キミは決して誰かを巻き込んだりなどしていません?」
カロル「……!」ブンブンッ
宣教師「自分を責めてしまうのはどうしてだと思います?」
カロル「ボクが…わるいから」ヒック
宣教師「いいえ?」
カロル「……?」グズッ
宣教師「誰かを悪者にしたくないから自分を責めてしまうのですよ?」
カロル「?」ポカン
宣教師「他人の痛みを自分のことのように感じ、罪を庇おうとしてしまう…。
誰も悲しませずに済むのなら傷付くのは自分だけでいいと…」
カロル「そ、そんなこと…ないよ」オロオロ
宣教師「…そのままではどこまでも自分を追い詰めてしまいますよ?」
カロル「っ……」
611: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:24:54 ID:NfyRtADP/E
カロル「ち、ちがうよ…ボクは……」
宣教師「それではなぜ倒れていたのです?力を使えば立ち上がれたのに?」
カロル「」ドキッ
宣教師「このままいなくなってしまえば争いが治まるとでも思ったのですか?」
カロル「……」
宣教師「…どうなんです?」
カロル「…お母さまと約束してたの。後悔しないようにするって」
カロル「でも…約束守れなかった。シヴァさんたちを止められなかった…!」ググッ
宣教師「カロルくん…」
カロル「…そう思ったら胸が苦しくなって…悲しくて…こわくて…わかんなくなっちゃったんだ」ブルッ
宣教師「……」
カロル「…だから…もう、いいかなって」ポツリ
宣教師「なにがですか?」
カロル「……」プイッ
宣教師「なにがもういいのですか?」
カロル「ボク…なんか……いなくなっても…」ブルブル
宣教師「……」
カロル「っ…」キュッ
宣教師「」ゴソゴソ
カロル「」ビクッ
宣教師「どうぞ使ってください?」つ【ハンカチ】
カロル「あ、はい…」パシッ
カロル「」ゴシゴシ キュッキュッ
宣教師「…一つ聞いていいですか?」
カロル「え?」
612: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:26:40 ID:NfyRtADP/E
宣教師「たとえば私がいなくなってしまったら…キミは悲しんでくれますか?」
カロル「っ…当たり前じゃない!もう絶対離れたくないよ!」
宣教師「嬉しいですが…複雑ですね」
カロル「…なんで?」
宣教師「そう思ってくださるのなら、なぜ自分なんていなくなった方がいいなどと言えるんですか…?」ジッ
カロル「へ…?」
宣教師「キミが姿を消してしまった期間……私達がどういう想いで過ごしていたか分かりますか…?」
カロル「」ハッ
宣教師「みんながキミを心配していたんです。
どうしていなくなってしまったのか…なぜ戻ってこないのか…分からないまま苦しんできたんです」
カロル「ご、ごめんなさ……」シュン
宣教師「…謝る事はありませんよ。押し付けがましくてすみません」
カロル「……ホントにごめんなさい」
宣教師「……」
カロル「……」
613: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:28:19 ID:NfyRtADP/E
宣教師「…ところでカロルくん、気付いてますか?」
カロル「……?」
宣教師「ふふ?争いの最中にしては静かなものですね?」チラッ
カロル「あっ……」キョロキョロ
ワイワイガヤガヤ
カロル「みんな…戦ってない」
宣教師「ホビットの皆さんが立ち上がってくださったんですよ?」
カロル「ど、どうして…?だってさっきまで……」
宣教師「ふしぎですよね。本当に?」
カロル「う、うん…」
宣教師「…ですがこのふしぎな出来事をキミは以前に体験してるんですよ?」
カロル「……?」
宣教師「一つ一つ…大事に繋いできた絆が生んだ力です」
カロル「……!」
宣教師「キミもそう。そして私も…こうして誰かと繋がりを共有している」
宣教師「いなくなって良かったと思えるような相手は一人としていません」
カロル「〜〜〜!」ジワァ
614: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:34:46 ID:NfyRtADP/E
カロル「でも…やっぱり……」
宣教師「?」
カロル「シヴァさんは癒しの力を欲しがってるもの…。ボクが…使っちゃったから」
宣教師「…たしかにキミの力は間違った方向に進ませる事も可能でしょう。
ですがその力自体は誰も傷付けたりしません?」
宣教師「癒しの力の持ち主がキミである限り、間違いは起こりませんよ?」
カロル「で、でも…ボクがいたら……わるいこと…かんがえて……っ…」ポロポロ
宣教師「……」
カロル「もう…やなの…!癒しの力が…心をわるくしちゃうんだ…!
ボクが…いたから……シヴァさんたちも…」ブルブル
宣教師「関係ありませんよ」
カロル「!」ドクンッ
宣教師「お金や才能、豊かな実りに潜在的な信仰、恨み妬み、単純な好き嫌い……まだまだありますが結果として言えるのは……」
カロル「」ブルブル
宣教師「癒しの力が無くとも心に悪は芽生えます」
カロル「……」ポロポロ
宣教師「そして誰もが違う形で心に悪を芽生えさせています。
分かりやすい例で言えば…以前の差別がそうですね」
カロル「どうにも…ならないの…?」グシッ
宣教師「……難しいでしょうね」
カロル「そんな…」シュン
615: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/27(金) 23:36:55 ID:veAOTz.xXc
宣教師「…しかし方法がない訳ではありませんよ?」ニコッ
カロル「どうしたらいいの…?」グスンッ
宣教師「悪い心を取り除いてあげたらいいんです。キミが今までしてきたように?」
カロル「ボクが…今まで?」
宣教師「山間の村でクーペさん達を助けてあげたそうですね?」ニコニコ
カロル「……!」
宣教師「バンブルの港では神父様の為に町の人達を説得して回ったのでしょう?
漁師さんからの手紙に書いてありましたよ?」
カロル「」パチクリ
宣教師「全部知っていると言いましたよね?」ニコニコ
カロル「そう…だっけ?」グシッ
宣教師「キミが出会った方々は少なからず問題を抱えていたみたいですが…どの方も救われたと書いていましたよ?」
カロル「」グスンッ
宣教師「悪い心を取り除いてあげられるのは…悪い心を持たない者だけです?」
宣教師「大丈夫ですよ?何度挫けてもキミの心は決して悪に染まりません?私が保証します?」
カロル「……っ…!」グッ
宣教師「…さぁ行きましょうか?」
カロル「シヴァさんの…ところ?」
宣教師「はい。その方をもう一度説得しましょう?今度こそ争いを止めるんです?」
カロル「……うん!」パァァ
616: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 21:43:05 ID:26oY.cM9v2
―――聖堂(中庭の門)―――
ズォォォオオオオン
ドカッ ガンッ ズダァンッ
弓使いのホビット's「」バタバタッ
憲兵30「よし…!なんとか…倒しきったぞ!」ハァッハァッ
団長「…奴らがおらんな」キョロキョロ
ウゥゥゥゥ〜 ウゥゥゥゥ〜
団長「む?なんだ、あの重傷のホビット達は?我々は一匹たりとも切っておらん筈だが?」
憲兵30「ち、血を流して倒れてますな?打ち所が悪かったのか…?」
弓使いのホビット1「」ボーッ
団長「おい、貴様?」バッ
弓使いのホビット1「うっ…ぐっ……」グイッ
団長「奴はどこだ?」
弓使いのホビット1「し、シヴァさん達なら……も…いない」
団長「どういう事だ!?」
弓使いのホビット1「はは…ひどいや…族長なのに……見捨てるなんて?」ヘラッ
団長「見捨てる?」キョトン
弓使いのホビット1「ふふ…アハハハハ!」ケラケラ
団長「なにがおかしい!?」
弓使いのホビット1「バカだなぁ…?僕らは捨て石だよ…?」ヘラヘラ
団長「!?」
617: ◆WEmWDvOgzo:2015/4/10(金) 21:46:52 ID:26oY.cM9v2
弓使いのホビット1「ふ…ふふ。置いてかれちゃった…?」ヘラヘラ
団長「置いていかれた…?」
弓使いのホビット1「族長達は僕らを置いて逃げたのさ…。お前らを食い止めろって…?」ヒクヒク
団長「に、逃げただとぉ…!?」ググッ
弓使いのホビット1「嫌がって抵抗した仲間はあれさ…?」ビッ
ウゥゥゥゥ〜 ウゥゥゥゥ〜 ウゥゥ〜 ウゥゥ〜
憲兵30「うぷっ!む、むごいな…メッタ刺しだ…?」ドンビキ
弓使いのホビット1「うっ…ふぅぅ……ふふ」プルプル
団長「……」
弓使いのホビット1「オレ……なんでこんなとこに来ちゃったんだろ。
族長達がかわいそうで……人間の好きにされるのが悔しくて…力を合わせたら…きっとあんな思いしなくていいんだって……ふふ、ふ」ブワッ
弓使いのホビット1「ふえぇぇ……ふぐっ!あ、あんなの…族長達じゃない!
あんな…簡単に仲間を切り捨てるようなこと…絶対しなかったのに…!」ポロポロ
団長「……」パッ
弓使いのホビット1「う…あぅぅぅ……!」ドタッ シクシク
憲兵30「団長……どうしますか?なんか…このままじゃこいつらが不憫ですよ」
団長「不憫なものか。各地であれだけの人間を殺しておいて?」
憲兵30「そ、そうでしたね」
団長「…だがこいつの話が本当であれば急がねばならんな」
憲兵30「お、追うのですか?」
団長「いや、野外戦では多勢に無勢だ。どう転んでも勝ち目はない」
憲兵30「で、ではいったい…?」
団長「奴らの戦力は想像を遥かに越えていた…。
こうなれば近辺の警戒体勢を更に強化せねばならん。
他領の支部からも増援を呼び掛け、住民の安全確保に努めよう」
憲兵30「い、今からですか?」
団長「む?」
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