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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


575: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:37:45 ID:JWS0.T.mIE
団長「こん棒を使う敵はお前たちで相手しろ!長槍はワシが引き受けた!!」

憲兵's「はっ!!」

団長「なりふり構うな!大網、革手錠、投げ縄、使えそうな物はとにかく活用しろ!!」

憲兵's「ははぁっ!!」ダダダッ

ワァーワァー ワァーワァー

ガッ ビシッ バキッ ボカッ ガンッ

イフィート「お、おい!シヴァ!?」

シヴァ「……」

イフィート「なんとかしろよ!?あの野郎が加わってから敵がヤル気満々になっちまったじゃねぇか!?」

谷のホビット1「し、敷地内にいる同胞はせいぜい150くらい…敵も同じくらいいますからヘタしたら…!?」アワアワ

シヴァ「…退く訳にはいかぬ」ザッ

イフィート「ったりめぇだ!だからなんとかしろってんだよ!?」

シヴァ「接近戦では分が悪い。外に待機させてある弓隊を呼べ」

イフィート「お、おう!!」ダッ

ビュッ ビュッ ビュッ ビュッ

団長「」シャッ ビュバババッ

ポトッ ポトッ ポトッ ポトッ

谷のホビット13「な、長槍が切られた…!?」アワアワ

谷のホビット14「一斉に攻撃してるのに…なんで!?」アワアワ

団長「ふん…。バカの一つ覚えみたいに単調な刺突を繰り返したところでワシには通用せん?」チャッ

谷のホビット15「く、くっそっ…!」ワナワナ

団長「棒切れ遊びはおしまいか?それでは…そろそろ本気でいかせてもらうぞ?」ジリッ

谷のホビット's「うぅ…!」ブルッ
576: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:40:29 ID:JWS0.T.mIE
ズダダダァンッ

団長「どうした!もう終わりか!?」ジャキッ

憲兵9「ははは!どうだ、団長にかかれば、ザッとこんなもんさ!?」ドヤァッ

団長「む?なぜお前が威張るんだ…?」

谷のホビット's「」オロオロ

シヴァ「長槍隊、退けぃ!!弓隊、並べ!!」

ザザザッ バラバラ

団長「」ハッ

イフィート「へへっ!さすがに矢には敵わねぇだろ!?サボテンになりやがれ!?」ゲラゲラ

団長「(ま、まずいな…。あれだけの手勢に一斉掃射されてしまえば…いくらなんでも防ぎようがない!)」ギリッ

シヴァ「……」サッ

弓使い's「」グググッ

団長「(ここまでか…!)」

シヴァ「はな……」

「やめてっ!!」

ザワッ

シヴァ「?」クルッ

イフィート「あぁ!?誰だ、今言ったのは!?」クワッ

「ごめんなさい!通して!?」ギュゥギュゥ

ザワザワ ザワザワ
577: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:41:52 ID:JWS0.T.mIE
シヴァ「」ハッ

団長「あ…あ……!?」ワナワナ

カロル「シヴァさん!もうやめて!こんなことしたら娘さんが悲しむよ!」

シヴァ「…少年」ジッ

イフィート「へっ…誰かと思えば?」ジロッ

団長「こ、小童!小童なのか!?」

カロル「あ、団長さんだ!久しぶり!」パァァ

団長「生きていたのだな…!そうか…そうかっ…!」ウルッ

カロル「…どうしたの?」キョトン

シヴァ「構わぬ。弓隊、放て」

ビュビュビュッ

カロル「あぁっ!!」

憲兵9「団長!?」

カッカッカッ キンッ ザスッ

団長「ふっ…ハハハハハ…!」タラー

イフィート「は、はぁ…!?あ、あんだけの矢を……剣一本で弾きやがっただとぉ…!?」ギョギョッ

団長「やっとヒメ様に良い報告が出来るというものだ…。ここからのワシは更に手強いぞ…?ハハハハハ!!!」

シヴァ「…急所は外したが左肩を射抜いた。次の射撃は防げぬだろう」

イフィート「そ、そうか!?何発でも射ちゃいいんだ!?うっし!弓隊……」

団長「させるかぁ!?」ダッ

憲兵9「だ、団長に続け!!」ダッ

ドドドドドッ

弓使いのホビット1「わ、わわっ…!?」アタフタ

イフィート「や、やべぇ!次の矢がまだ準備出来てねぇぞ…!?」

シヴァ「長槍隊!こん棒隊!食い止めろ!!」サッ

カロル「あ、あう…どうしよう…?」アセアセ
578: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:44:10 ID:t4n1WC4cYA
ワァーワァーギャーギャー

ガガンッ バコッ ドカッ ビシッ

憲兵9「くらえ!この野郎!?」ブンッ

谷のホビット23「あだっ!?」ボカッ

憲兵10「団長!どうぞお先に!」ガッ

憲兵11「なんとか我々で道を切り開くんだ…!」ガガッ

団長「その必要は…ないっ!!」バッ

谷のホビット1「と、飛んだ…!?」ギョギョッ

ワァーワァーギャーギャー

団長「」ストッ

イフィート「と、飛び越えて来やがった…どうなってんだ、ちくしょうめ!?」ギリッ

弓使いのホビット1「じゅ、準備が整いました!」

イフィート「おっ!?そうか!?」パァァ

カロル「ダメっ!!」バッ

イフィート「はぁ!?なにしてんだ!?邪魔だからどけ!?怪物オヤジと一緒にサボテンになりてぇのか!?」

カロル「ここで射ったら戦ってる仲間にも当たっちゃうよ!?いいの!?」

イフィート「うっ…!」チラッ

ワァーワァーギャーギャー

弓使いのホビット1「ど、どうします!?」

団長「どうもこうもなかろう」ザッ

弓使い's「」ビクッ

団長「この距離まで来ればワシの間合いだ。防げずとも…最初に弓を引き絞った者を狙い殺すくらいは出来る」ギロッ

弓使い's「」ブルブル

団長「さぁ引いてみせろ?死と引き換えにワシの命を奪うがいい!?」カッ

弓使い's「……!?」ガクガクブルブル
579: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:45:58 ID:JWS0.T.mIE
イフィート「シヴァ!シヴァ!?」

シヴァ「……」

谷のホビット1「だ、黙ってないでなんとかしてくださいよ!?」

団長「小童!!離れていろ!?そこにいては格好の的だ!?」

カロル「…や、やだ!」ブルブル

団長「お前に死なれたらヒメ様に合わせる顔がない!!中に避難している宣教師にもだ!?」

カロル「せ、宣教師さま…!やっぱり宣教師さまもいるの!?」

団長「あぁ!!あの娘も…ヒメ様も…友人たちも…皆、お前を待っている!!」

カロル「みんなも…?」

団長「そうだ!!だから…こんな所で命を張るな!!自分の身を一番に考えろ!?」

カロル「っ……でも…」

ビュンッ

団長「ぬっ!?」サッ

シヴァ「ふむ…かわしたか」スッ

団長「ちぃっ…!先ほどから指示を出しているが…首領は貴様か!?」ギリッ

シヴァ「手負いの獣一匹だ。儂とお前で仕留めるぞ」

イフィート「…やるっきゃねぇな」ザッ

カロル「もうやめてよ!意味ないよ…こんなの!」

シヴァ「…ここを滅ぼし、同胞を引き入れた暁には大樹へと赴き、君の力で果実を実らせる」ジッ

カロル「……!」タジッ

シヴァ「我らの復讐は終わらぬ…。永遠にだ!?」ビキィッ

カロル「そ、そんなの…絶対にさせないもん!!」キッ
580: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:47:47 ID:t4n1WC4cYA
―――聖堂(展望台)―――

見張り1「…下はとんでもない事になってるな」

見張り2「あぁ…まだ中に侵入されてないが時間の問題かもな。
外壁に囲われた中庭で食い止めてるから今のところ数の差がそんなに出てないけど…門の外には所狭しとホビットの群れがひしめいてる」

見張り1「…とてもじゃないけど勝てないよ」

カツンカツン

見張り1「ん…!?誰か階段を上がってくるぞ!?」クルッ

見張り2「ま、まさか憲兵の目を盗んで侵入してきたんじゃ…!?」ビクビク

宣教師「ご苦労様です?」カツンカツン

見張り1「し、司祭様!?」

見張り2「ど、どうしてここに!?」

宣教師「あなた方も礼拝堂に避難なさってください。ここは危ないですから?」

見張り1「し、しかし……」

宣教師「見張りが必要でしたら私が代わりに見ておきましょう。どうぞ遠慮なく?」

見張り2「司祭様を危険な場所に置いて避難なんて出来ませんよ!?」

宣教師「司祭ではありません。宣教師です」

見張り1「は?」キョトン

宣教師「本当にいいんですよ?私に構わず避難してください?」

見張り2「…そ、そういう訳にもまいりませんよ」

宣教師「心配なさらずとも私も後から避難しますよ。
とりあえず下の様子を見ておきたいので申し訳ありませんが場所を譲っていただけますか?」ニコッ

見張り1「…そ、それなら」

見張り2「司祭様に頼まれちゃ…しょうがないか」

宣教師「ありがとうございます?」ニコニコ
581: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:49:47 ID:t4n1WC4cYA
宣教師「……」ジーッ

ワァーワァーギャーギャー

宣教師「っ……!」ギュゥゥッ

宣教師「…えっ」

宣教師「……!?」

教徒「あ、やっぱりいた…!?」カツンカツン

宣教師「〜〜〜!!」グッ

教徒「し、司祭様!いつまでそこにいるんですか!?
もう全階回りましたから僕達も避難しましょうよ!?」アセアセ

宣教師「こうしてはいられません!!」ダッ

教徒「えっ」

宣教師「」ダダダッ

教徒「あ、あぶなっ!?」ササッ

宣教師「」カツンカツン

カツンカツン カツンカツン………

教徒「ど、どうしたんだろ…?あんなに慌てて……」

教徒「」ハッ

教徒「(も、もしかしたら中庭に出るつもりじゃ…!?)」

教徒「お、追わなきゃ!?」カツンカツン
582: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:51:37 ID:JWS0.T.mIE
―――聖堂(中庭)―――

イフィート「んにゃろうめっ!?」ブンッ

団長「そんな大振りが…当たるかっ!?」サッ シュバッ

ビュンッ

団長「っ…!」バッ

シヴァ「……」ジャッ

団長「(やりにくい連携だな…。片方に攻撃を仕掛ければもう片方に死角から狙われる…!)」

イフィート「らぁっ!?」ブンッ

団長「(だが…その程度の小細工に翻弄される程、この腕は安くないぞ…!)」ビュバッ

ガインッ!!

イフィート「おったったっ!?」スカッ トットッ

シヴァ「っ……」サッ

谷のホビット1「ぎえっ!?」ゴカッ

バタッ

イフィート「お、俺のこん棒を弾きやがっただと…!?」ビリビリッ

団長「はぁぁぁ!!」ダダダッ ブォンッ

シヴァ「なんっ…!?」ハッ

ザシュッ!!

シヴァ「くっ…!」ポタポタ

団長「ぬっ…うぅ……」ブシュッ
583: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:52:45 ID:t4n1WC4cYA
カロル「団長さん、だいじょうぶ…!?」ハラハラ

団長「あ、あぁ…傷口が開いたようだが…も、んだいない…!」ニヤリ

カロル「い、癒してあげるね…!痛いかもしれないけど…肩の矢も抜いていい?」オロオロ

団長「いや、自分で抜こう…。君は不器用だから心配だ」グッ

カロル「」ガーン

団長「っ……ぬぅぅ…くっ!」ググッ ギュポッ ブシャアアアアア

カロル「はい…」ピトッ

フワッ

団長「おぉ…!久々だが…やはり効くな!?」ピンピン

カロル「……」シュン

団長「む?」

カロル「あ、ううん!どういたしまして!」ニコッ

団長「ハッハッハ!いや助かったぞ!」

カロル「(…ヤだなぁ、ボク)」ハァッ

カロル「(あんなに血が出てたのに…もうなんとも思わなくなってる。慣れちゃったのかな…)」ズーン
584: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:54:32 ID:t4n1WC4cYA
イフィート「し、シヴァ!?大丈夫かよ、おい!?」オロオロ

シヴァ「く…く、く、くぁっ…!うぅっ…!」ボタボタ

カロル「あっ…」

イフィート「て、てめぇら…よくもやりやがったな…!?」ワナワナ

シヴァ「案ず…るな…!儂はまだ…戦える……」ヨロッ

イフィート「ば、バカ言ってんじゃねぇよ!?んな深い傷…くたばってもおかしかねぇぞ!?」

シヴァ「…この身尽きぬ限り…終わらぬ……。うぶぉっ…!ぶふっ」ボチャボチャ

カロル「……」スタスタ

団長「…小童」

カロル「」ビクッ

団長「ふん…そう強張るな?止めはせん?」ニヤッ

カロル「……」

団長「そいつは何度でも続けるだろうが…任せておけ?
争いなど懲り懲りだと言うまでワシが何度でも切り伏せてやる?」

カロル「あはは…痛いのはダメだよ…?」ヒクヒク

団長「ふふっ…信じた甲斐があった。まさかこんな場に現れるとは思わなかったがな」

カロル「へ?」

団長「ヒメ様の友人である君を悲しませまいと…ワシも色々と考えていたのだ?」

カロル「そうなの…?」

団長「この場に倒れているホビットは皆、死んではおらん?
刃を当てんよう最大限に注意を払っておいたからな?」

カロル「……!」ビックリ

団長「気絶にとどめておいたが…骨折くらいはしておるかもな。全てが終わったら、ついでに癒してやれ?」

カロル「…うん、ありがとう!そうするね?」ニコッ
585: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:57:57 ID:JWS0.T.mIE
カロル「シヴァさん」スッ

シヴァ「しょ…ねん…」ゼェゼェ

イフィート「こ、この裏切りモンが…なんだ、その手は!?」

カロル「指切りしよ?」ニコッ

シヴァ「……?」ボタボタ

イフィート「…なにノンキこいてんだ?このクソガキがぁっ!?」ブンッ

パシッ!!

イフィート「うっ…!て、てめぇ…!」ググッ

団長「邪魔立ては許さん…!」ググッ

カロル「知ってる?小指と小指をね……」

シヴァ「なにが…したい…?」ゼェゼェ

カロル「…約束してほしいの。もう復讐なんてしないって?」

ビュンッ

カロル「わっ…!?」サッ

シヴァ「…フゥーッ!フゥーッ!」ビキビキィッ

カロル「……」ジッ

シヴァ「軽々しく口に…するな…!うっぶふっ」ボチャボチャ

カロル「……!?」

シヴァ「」バタッ

カロル「…いいよ。何回だって説得するから」ピトッ

フワッ
586: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/18(水) 00:01:02 ID:JWS0.T.mIE
シヴァ「…………なっ!?」ガバッ

カロル「ねぇ、シヴァさん」

シヴァ「こ、れが…いや…し?」マジマジ

カロル「ボクの力がそんなに欲しい?」

シヴァ「っ……!当然だ!」

カロル「ホント?」

シヴァ「感じて分かった…!その力は渇れた砂漠に雨を降らせ、荒れ果てた野に草木を育み、闇夜に陽光をもたらす……不可能を取り払う至上の力だ!!」

カロル「えと…よく分かんないけどちがうと思うよ?」アセッ

シヴァ「違うものか!?その力を寄越せ!?儂に戦う力を……」ガシッ

カロル「…ボクはこんな力、ホントはいらないんだ?」

シヴァ「は……!?」

カロル「あげれるならあげちゃいたいかも?ふふふ?」クスッ

シヴァ「……!!」イラァッ

ガシッ グイッ

カロル「えっ…?」グンッ

シヴァ「…儂は真剣だぞ!?」ギロッ

カロル「……く、苦しいよ。はなして?」ケホッ
587: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/18(水) 00:04:51 ID:t4n1WC4cYA
シヴァ「こんな儂でもな…掟に縛られず娘を一心に愛した時期があった…!」ググッ

カロル「……」

シヴァ「あの子を初めて抱えた時に…自然と頬が緩んだ。小さな両手で力強く儂の指を握る姿に…涙を流した…!」プルプル

シヴァ「非情な差別と理不尽な抑圧が当たり前にある世界で……儂はこの子に何をしてやれるだろうか?
そう考えただけで…止めどない感情が湧いては溢れた…!」

カロル「…うん」

シヴァ「娘はプレーンナッツが大の好物でな…。狩りに出れば欠かさず採って帰ったものだ」

シヴァ「そんな事でしか満足させてやれないが…屈託のない笑顔を向けてもらえる。それだけが儂の生き甲斐だった」

シヴァ「……いつしか物心付いた頃には儂の言うことなど聞かなくなってしまったが…それでも娘は娘だ。
たった一人の……何にも代えられぬ……」ボソッ

カロル「すてきだね?」

シヴァ「…許せぬ。人間を…娘を奪った人間を…!?」ギリッ

カロル「…思い出ならボクにもあるよ?」

シヴァ「……?」

カロル「お母さまとの思い出、マルクとの思い出、宣教師さまとの思い出……」

シヴァ「…なにが言いたい?」

カロル「思い出すと恥ずかしいことも…笑っちゃうこともたくさんあるんだ?」ニコッ

シヴァ「知ったことか…」フンッ

カロル「でもね、悲しいことも…忘れたいこともたくさんあるの」

シヴァ「それがなんだ…?普通の事だろう…?」

カロル「うん。普通だよね…?」ニコニコ
588: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/18(水) 00:09:41 ID:JWS0.T.mIE
カロル「…」チラッ

シヴァ「?」スッ

ワァーワァーギャーギャー

ガガッ ビシッ バシッ グサッ

カロル「これも…ここにいるみんなの思い出になるんだね?」

シヴァ「……」

カロル「争ったりしなかったら、もっと楽しい思い出を作れたのに…」

シヴァ「勝てば、この上なく誇らしい記憶となる…」

ドカスカギャーギャー

谷のホビット25「いてぇっ!!?う、腕が…腕が折れ…たぁぁ…!!」ドタバタ

谷のホビット26「うわあああ!!あああぁぁ!!!来るな!来るなぁぁ!!?」ブンッブンッ

憲兵12「おらっ!おらっ!死ね!おらぁっ!!」ガンッガンッ

谷のホビット27「ぐばっ!ぶっ!あ、あぐぅぅ…た、たのむ…!もう…ゆるしっ…ぶへっ!?」ボスッボスッ

谷のホビット's「やめろぉっ!!」バッ

憲兵14「今だ!!両脇から大網を広げて畳め!!」

憲兵15「っさぁ!!」バッ

憲兵16「来い来い、ほら!?」バッ

谷のホビット's「うわぁぁっ!!!?」バウンッ

バサッ ジタバタ ワァーワァー!!

憲兵14「よーし!網の四方に杭を打って閉じ込めろ!!」

カンッカンッ カンッカンッ

ジタバタ ワァーワァー!!

憲兵14「これでこいつらは身動き取れないぞ!?このまま網の上から踏んづけてくたばるまでぶん殴れ!!」ズシッ

ズシッズシッ ガスッ ボカッ バキッ

ギャアアアアアアアアア!!!
589: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/18(水) 00:14:43 ID:JWS0.T.mIE
カロル「っ…!」ギュッ

カロル「(ダメダメ…今はシヴァさんを説得しなくちゃ)」ズキンッ

カロル「シヴァさんたちも誰かにあんなことしてたんだもんね?あれっていい思い出になるの?」

シヴァ「…勝てばいい。確実に勝てるのだ。今は外壁に行く手を阻まれ、邸内に同胞を入れられず苦戦しているが…だとしても数の差は圧倒的だ」

カロル「外に仲間がいても…ここで戦ってる仲間はどうするの?あのままにしたら……」

シヴァ「しかたないだろう。そういうものだ。誰しも覚悟していた筈だ。今を耐えしのげばどうにでもなる」

カロル「なにがどうにでもなるの?」キッ

シヴァ「は…?」

カロル「もうっ!はなしてよっ!!」バッ

シヴァ「っ…な、なんだ?急に?」タジッ

カロル「シヴァさんはこんなことがしたかったの!?」

シヴァ「……?」

カロル「あんなにぶたれて、ツラくて泣いて謝ってるホビットもいるじゃない!?
あのホビットたちはもう戦いたいなんて思ってないよ!?」カッ

シヴァ「ふむ…」

カロル「傷の痛みはボクが癒してあげられるけど心の傷は癒せないんだよ!?」

シヴァ「……」

カロル「みんながしてきた覚悟なんて、こんなのじゃなかったはずだよ!」

シヴァ「なんだと…?」ピクッ

カロル「みんな自分が傷付くなんて思ってない!
人間を倒して自分たちが幸せになれるって…それしか考えてないよ!」

カロル「だからツラくなるんでしょう!?
ツラい想いをするのも…相手を傷付ける痛みも想像してなかったから…!」

シヴァ「……!」

カロル「人間を滅ぼすって言ってたよね…。あと何回、戦わなくちゃいけないの…?
こんなことがずっと続いてもホントに戦い続けていられるの…!?」

シヴァ「続けられる…!すべての戦いが終われば希望が…」

カロル「こんな戦いに勝ったってホントに笑える日なんか絶対に来ないよ!!」
590: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/18(水) 00:17:39 ID:JWS0.T.mIE
シヴァ「っ……儂は娘の為に…」

バタッ

シヴァ「!?」クルッ

イフィート「ぐ…へっ…ちくしょ……」ピクピク

団長「ふん…」パッパッ

シヴァ「イフィート…!」

団長「悪いがこちらも必死だ?情けや容赦はかけられんぞ?」ジロッ

シヴァ「おのれぇ…!!」ワナワナ

カロル「…」ピトッ

フワッ

イフィート「っ……お!?お!?おぉぉ!?」ガバッ

シヴァ「なっ…」

カロル「娘さんも…シヴァさんの気持ちはすごく嬉しいと思うよ」ジッ

シヴァ「お前は…いったいなにがしたい…!?」

カロル「でも争いに傷付くお父さんなんて見たくないはずだよ…」

シヴァ「……!?」ズキンッ

カロル「ちょっぴり頑固だけど頼もしくて…一緒に暮らしてたみんなを大事にしてた。娘さんはそんなシヴァさんが大好きだったんじゃないかな…」

シヴァ「……フゥーッ」グッ

イフィート「へへっ…なんか知らねぇがガキも味方に付いたみたいだな?癒しの力でやり放題だぜ!」スクッ

シヴァ「フゥーッ…!フゥーッ…!」プルプル

カロル「シヴァさん…!」

シヴァ「ダァァマレェェエエ!!!」ブンッ

カロル「っ……!」バキッ

ズサッ ゴロゴロ

団長「小童!?」ギョッ

カロル「はっ…はぁ…ど……して」ヨロッ
591: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/18(水) 00:20:49 ID:JWS0.T.mIE
シヴァ「アァァアグゥイイイアアアア!!!」ワシャワシャ

イフィート「お、おう!どうした、おい!?」

弓使い's「」ビクビク

シヴァ「考えさせるな!!悩ませるなぁぁ!!?」ジダンダ

シヴァ「儂がっ!間違っている!!そんな事は初めから分かっていた!!」ブルンブルン

シヴァ「忘れたいと言った筈だ!!この悲しみを!!悔しさを!!すべて忘れ去りたいだけだぁ!!!」ガリガリガリガリ

団長「(氷のように冷たい雰囲気を醸していた奴が…豹変した!?)」

シヴァ「ふんなぁっ!!」ビュンッ

団長「む…!?」サッ

シヴァ「ハァァあああぁ!!」ビュンッ

団長「(つ、突きが鋭くっ…!?)」ガキンッ ズリリリ

イフィート「っしゃあ!!もらったぁああ!!」ブンッ

団長「し、しまっ…!?」ハッ

ボコンッ!!

団長「がふっ…」ドタッ

カロル「だんっ…ちょうさん…!」ムクッ

シヴァ「何をボーッとしている…!?」ギロッ

弓使い's「」ビクッ

シヴァ「射て!!敵目掛けて矢を放たぬか!?」

弓を使うホビット1「で、でも仲間が……」オロオロ

シヴァ「……!」ビキビキィッ

弓を使うホビット1「あ、やっ…やっややや……す、すいません!射ちます!射ちます!?」アタフタ

イフィート「お、おい!!なに言ってんだ!?」アセアセ

シヴァ「勝つのだ…!勝てばいい!!」

イフィート「仲間だぞ!?巻き添えにすんのかよ!?」アセアセ
592: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/18(水) 00:26:38 ID:t4n1WC4cYA
シヴァ「さぁ射てぇぇい!!?」

イフィート「」オロオロ

団長「っ…?」ゴロッ

弓使い's「」グググッ

カロル「やめっ……」タタタッ

「やめなさい!!」

弓使い's「」ビクッ

カロル「え…?」ピタッ

「この場に立つ全ての者に告げます!!武器を捨て、争いを中止しなさい!!」

ザワザワ ザワザワ

憲兵's「」オロオロ

谷のホビット's「」ザワザワ

イフィート「な、なんだぁ…!?」

シヴァ「……」ギロォッ

カロル「こ、この声って…!」ドキドキ

カロル「!」バッ

宣教師「ここは人とホビットの融和を叶えるサダメの地、聖堂です!
希望をもたらすべき場において一切の争いを赦しません!!」ザッ

カロル「あっ…あ……」ドキドキ

カロル「っ…」ウルッ

カロル「……!」タタタッ
593: 名無しさん@読者の声:2015/3/22(日) 10:31:42 ID:xO6A91O4tk
キャラの絵描いてもいいですか?
594: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/22(日) 12:18:32 ID:GsOJlfxRj6
>>593
本当ですか!?描いてくださるんですか!?
ものすごく嬉しいです!
是非是非お願い致します!m(__)m
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うpろだ
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