1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
56: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:49:21 ID:brIb.FAqgM
団長「…早く見つけてやらんとな」
政務官「ああ、ところで……前大臣の行方を知らないか?」
団長「む?追放した後の足取りは知らんが…あの豚がどうかしたのか?」
政務官「巡礼での出来事が国外に漏れたようでな」
団長「……!癒しの力と大樹の事もか!?」
政務官「あぁ…ある国から、その話について伺いたいと申し出があった」
団長「いったいどこの国なのだ…!?」
政務官「西の国だ」
団長「……!?"魔性のファルージャ"か…!」
政務官「やはり知っていたか?」
団長「世界情勢に気を配る我々、役人がファルージャを知らん訳がなかろう!?」
政務官「…確かに西の女帝ファルージャは有名だな。
妾の身でありながら夫である皇帝を殺害し、第1夫人から第11夫人までことごとく始末した挙げ句に次期皇帝になるであろう皇子達を皆殺しにした悪魔のような女だ」
団長「うむ…何より恐ろしいのはそれらの行為を全て知っていながら西の役人共が黙認している事だ…!」
政務官「凄まじい程に妖艶で…男のみならず女までも虜にしてしまう色香の持ち主らしい?」
団長「しかし国一つ支配する程の蠱惑さとは……いささか信じがたいな」
政務官「その気になれば世界全土を魅了出来るとさえ囁かれている…。
だからこそ平和条約も結ばず、同盟にも加入せず悠々と国を成せるのだろう」
団長「……まさに最悪の相手に目を付けられたな…!」
政務官「ヒメ様にはまだ報告していないが…私がなんとか穏便に取り計らってみよう」
団長「……」
政務官「もしもアントリアが思い描いたような永遠の国などを創らせれば…ファルージャは間違いなく世界を掌握しようと動き出すぞ?」
団長「…それだけはなんとしても避けねばならんな」
57: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:54:22 ID:brIb.FAqgM
政務官「ところでヒメ様が探させている友人だが……」
団長「む?小童なら未だ捜索中だが……」
政務官「そうか。発見したらどうする気だ?」
団長「無論、彼も我が国に迎え入れる!」
政務官「…出来れば発見したら即座に始末してもらいたい」
団長「なにぃ!?」
政務官「癒しの力を持っている彼が消えてくれれば…ファルージャがいくら探りを入れようと徒労に終わるだろう?」
団長「正気か、貴様…!?彼のおかげで我々はこうして…!」
政務官「きれいごとで済ませられるような問題なら私もそうしたい。
だが時には非情さを求められるのが政だ……」
団長「黙れ!ワシは認めんぞ!?」
政務官「……」
団長「貴様!ヒメ様の理想を聞いて心を入れ替えたのではなかったのか!?」
政務官「そのつもりだ。ヒメ様ならば…この国を豊かにしてくださる」
団長「だったら何故ヒメ様から大切な友人を奪おうとするのだ!?」
政務官「国の為だ」
団長「ふざけるなぁ!?歪みきった我が国を変えてくれた恩人を始末するのが国の為か!?」
58: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:56:16 ID:aMQyUdLMrI
政務官「まぁ聞け?たとえ西の国を説得出来たとしても癒しの力がある限り、利用しようと企む輩は内にも外にも現れる?
確かに彼は我が国を変えてくれたかもしれないが…今となっては争いの火種でしかない?」
団長「……!貴様はヒメ様の前でも同じ事が言えるのか!?」
政務官「…始末した後は隠せばいい。これまで通り、探してるが見つからないと……それで十分だ」
団長「この薄情者がぁ!?」ダンッ
政務官「……誰かに聞かれても困る。声を抑えろ」
団長「知るかぁ!!ホビットは今まで我々、人間の身勝手に付き合わされ、苦心してきたのだぁ!?
彼はそんな境遇を嘆いて……たった一人で道を切り開き、多くの仲間を得たんじゃないか!!」
政務官「ふん…その仲間に黙って姿を消した訳だが」
団長「何かの間違いだ!理由があるに決まってる!」
政務官「ならそう思ってればいい?」
団長「やっと…!やっとホビットは解放されたんだぞ…!?
それを貴様は…またも裏切り、踏みにじろうと言うのか!?」
政務官「ホビット族は受け入れる。癒しの力が邪魔だと言ってるだけだ」
団長「同じ事だ!彼を裏切るのに変わりはなかろう!?」
政務官「…熱い男だ?」
団長「愚かだと罵られても構わん…!たとえ西の国と戦争する事になろうと……彼を殺させはせんぞ!!」
政務官「……」
団長「彼の捜索はワシが一任されておる!貴様がなんと言おうがワシは彼を王国に迎え入れるぞ!?」
政務官「…好きにしろ」
団長「失礼する!」ダンッ
政務官「……」
ガチャッ バタァンッ!
政務官「……!」ギリッ
59: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 19:58:25 ID:aMQyUdLMrI
政務官「ふん…忠義面しているが…元を正せば奴も私もホビット族を差別してきた側だ」スッ カサッ
政務官「まるで正義はこちらにあり…とでも言いたげな口振りだったな」ピッピッ
政務官「」シュボッ
政務官「」スパー
コンコン コンコン
政務官「入れ」
役人1「はっ!失礼します!」スタスタ
政務官「どうだった?」
役人1「政務官のご命令通り、捜索隊を結成しましたが……」
政務官「使えそうなのか?」
役人1「腕は確かかと……しかしよろしいのですか?陛下や団長殿に黙って兵を動かすなど…?」
政務官「問題ない」スパー
役人1「はぁ…ではこちらで取得した情報を元に捜索隊を動かしていきます」
政務官「分かっているとは思うが……」
役人1「はっ!癒しの力を見つけたら……その場で!」
政務官「ならいい?お前は聞き分けがよくて助かる?」
役人1「…しかし、もし陛下に知れれば……」
政務官「知られたくなければ急いだ方がいいだろうな。近衛のようにダラダラやっていると間延びするぞ?」
役人1「……」
政務官「高官の席を一つ空けておく」
役人1「」ピクッ
政務官「私は有能な人間しか認めない。椅子取り合戦は熾烈だぞ」
役人1「……!」
政務官「…有能であると証明出来る人間は出世が速いのだよ。分かるか?」スパー
役人1「お任せを…!すぐに癒しの力を始末します!」
政務官「あぁ、君には期待しているよ」ジュッ
60: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:00:56 ID:brIb.FAqgM
―――王室―――
ヒメ「……」カキカキ
コンコン コンコン
ヒメ「入っていいぞ」パタンッ
団長「失礼、王子…ではなく国王」
ヒメ「…好きに呼べよ。堅苦しいのは嫌いだ」ジトー
団長「おぉ…!ではヒメ様!」
ヒメ「名前で呼ぶな」プイッ
団長「」ガクッ
ヒメ「で、なんの用だ?」
団長「おや、急かされるとは…もしや何かなされてましたか?」
ヒメ「あぁ…邪魔された?」ジロッ
団長「へ?あ、いや、かたじけない…」オロオロ
ヒメ「なんてな?返事を書いてただけだよ?」ニコッ
団長「は?」
ヒメ「これだよ?」スッ
団長「これは…?」パシッ
ヒメ「あいつらから届いた手紙だ。全部、アルバムに保管してる」
団長「あぁ!なるほど?孤児院の?」ペラッ
ヒメ「元気にしてるってさ?この前は全員で初めて海に行ったらしいぞ?」ニコニコ
団長「はっはっは…彼らとやり取りしておられたのですか?」パラパラ
ヒメ「…ともだちは大事にしないとな?あいつとの約束だ?」ニコニコ
団長「……」
61: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:05:16 ID:aMQyUdLMrI
ヒメ「」カキカキ
団長「何枚も…?」
ヒメ「ルーボイ達と宣教師、4人分の返事だからな。毎回分厚くなるよ」カキカキ
団長「……!」ホロリ
ヒメ「」カキカキ
団長「(やはり…言うべきではないか。政務官の提案を話せば…ヒメ様は即刻、処分を下されるに違いない)」
団長「(悔しいが政務官の政治手腕は確かだ。奴がいなければ現在、進めている外交は見直されてしまうだろう…)」
団長「(…きれいごとで政は成せん、か。嫌でも痛感させられる……)」ググッ
ヒメ「」ジーッ
団長「…ワシの顔になにか?」
ヒメ「働き過ぎじゃないのか…?
激務の合間に時間を取ってあいつを探してくれてるのはありがたいけど……無理はするなよ?」
団長「な、何をおっしゃいますか!?ワシは疲れてなど……」
ヒメ「……じゃあなんで泣いてんだよ?」ボソッ
団長「む?」ピトッ
団長「え…?」ハッ
ヒメ「気付いてなかったのか?やっぱり疲れてるんじゃ……」
団長「と、とんでもない!ヒメ様も日夜、政に励んでおられるのですからワシなどは……」
ヒメ「……」
団長「あっ…も、申し訳ない!国王…でしたな?」アセアセ
ヒメ「好きに呼べって言ったろ?それに僕の名前は役職じゃない?」
団長「さ、先ほどと言ってる事が違いませぬか?」
ヒメ「いいよ。お前だけは許してやる」
団長「……?」
ヒメ「お前は僕が最も信頼を置く家臣だ。だから許してやる」
団長「ひ、ヒメ…さま…!」プルプル
62: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:10:31 ID:aMQyUdLMrI
ヒメ「…ごめんな。こんな事でしか労ってやれないけど…すごく感謝してるんだぞ?」
団長「こ、こんな事なんて滅相も…!ワシには…もったいのうございます…!」グシグシ
ヒメ「……落ち着いたら、ちゃんと休暇も取らせるから。家族に会えなくて辛いだろ?」
団長「うぅ…!か、感無量にござる…!
貴方様のお気遣いくださり……それだけでワシは力がみなぎりまするぞ!」ズズッ
ヒメ「おかしな奴だな…?もっと欲張ってもいいんだぞ?なんなら捜索も中止していいし……」
団長「なりません!」
ヒメ「……?」
団長「貴方様にとってかけがえのない友人を離ればなれになど…このワシがさせませんぞ!!」
ヒメ「でも…それは……僕のわがままだ。
一部の人間からは無駄に人員を割いて国力低下を煽ってるとも囁かれてる…」シュン
団長「陰口など言わせておけばいいのです!!
我々の主である限り、貴方にはわがままを言う権利があるのです!!」
ヒメ「……」
団長「ヒメ様こそ!もっと欲張られてはいかがか!?」
ヒメ「え…?」
63: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:12:20 ID:brIb.FAqgM
団長「そうして手紙でのやり取りを続けている間も……本当は会いたくて仕方がないのでしょう!?」
ヒメ「……!」グッ
団長「我々は国を預かる責任者である前に…一人の人間なのです!
全てを国に捧げる必要などござらん!民も役人も国王も一丸となって支え合うのが国家というもの!
時には立場を忘れ、羽目を外したっていいんです!!」
ヒメ「う、うるさいな!そうもいかないから……」カッ
団長「思い出してみなされ!今、ワシが言った事は…かつての貴方がおっしゃった事ですぞ!?」
ヒメ「」ピクッ
団長「…責任に縛られ、自由を諦めるくらいなら身分などいらないと…おっしゃったではありませんか?」
ヒメ「……」
団長「いいのですよ…。わがままで…?」
ヒメ「…まだ早い」
団長「は?」
ヒメ「僕はまだ…あいつに約束した国作りを出来てない」
団長「……!」
ヒメ「わがままを言うのはきちんと約束を果たしてからだ。
そうしないと…あいつに一生会えないかもしれないじゃないか」
団長「……くっ!」ギリッ
ヒメ「…でも一つだけならいいかもな」
団長「!」
ヒメ「必ずあの親子を見つけて…僕に会わせてくれ?またあいつと他愛なく笑って話したいんだ?」ニコッ
団長「…お約束致します!このワシが絶対に見つけてみせますぞ!!」
64: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/19(水) 20:17:01 ID:aMQyUdLMrI
ヒメ「よし…」
団長「書き終えましたか?」
ヒメ「まぁな。悪いけど配達所に送ってもらっていいか?」スッ
団長「お安いご用です!」パシッ
ヒメ「…あ、そうだ」
団長「? なにか?」
ヒメ「いや、お前…なんか用があって来たんじゃないのか?」
団長「」ハッ
『癒しの力を始末してもらいたい』
団長「……!」
ヒメ「……?」
団長「いえ!何もございません!ただ久しぶりに戻って参りましたのでヒメ様のお顔を拝見したく!」
ヒメ「は…?」ススー
団長「ど、どうなさいました?」
ヒメ「い、いや…なんか言い回しが気持ち悪かったから…?」ドンビキ
団長「っ!?」ガーン
65: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:41:38 ID:zZ0LLNhnzs
―――王国(西の領土)―――
山賊1「しけてんなぁ…マジで一文無しかよ」
カロル「」ピョンピョン
山賊2「いつまで跳ねんだ!ジャラジャラ言わねぇのにうっとうしんだよ!」
カロル「飛べって言うから…?」スタッ
頭目「ガキぃ…おめぇ、なんでこんな山奥に入った?」
カロル「えっと…食べ物、探しに来たんです」マゴマゴ
頭目「けっ…山はよ、山賊のモンだ?おめぇ、税金払わずに入ったよな?」
カロル「ぜ…きん?」キョトン
山賊1「金でも食料でも女でもいいから払えや!」
山賊2「さもなきゃ町でかっぱらいでもさせるか?」
カロル「ご、ごめんなさい!ボク…なんにも分かんなくて……」
山賊1「んだとぉ!?」
頭目「よせよせ、それよか俺に考えがある」
山賊2「なんすか?考えって?」
頭目「こいつ綺麗なツラしてると思わねぇか?」
山賊1「確かに…最初メスと間違えましたぜ」
山賊2「……」ゴクリ
カロル「(あれ…?前にもこんなことあったような気がする?)」
頭目「どっかの変態に売ればいいんだよ!」
山賊1「おお!なるほど!」
カロル「やっぱり!?」ガーン
山賊2「いやいや、頭、俺たちで食っちゃうってのも……」
頭目「は?」
山賊1「おめぇそっちなの?」
カロル「……?」キョトン
66: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:43:28 ID:zZ0LLNhnzs
〜〜〜想像(カロル)〜〜〜
グツグツ グツグツ
山賊1「お、煮えてきた、煮えてきた。頭!ホビットのスープが出来ましたぜ!」
山賊2「犬の丸焼きも出来ましたぜ!」
頭目「よーし、食うか!」
ガツガツ ムシャムシャ
…………………
カロル「……!」ブルッ
マルク「くぅん?」
山賊2「これぐらい綺麗ならイケますって!」
山賊1「うーん、それもそうか」
頭目「最近、溜まってるしなぁ…」
カロル「マルク!逃げるよ!?」ダッ
マルク「あんっ!」ダッ
山賊1「あ!待て!」
頭目「取っ捕まえろぉ!!」
山賊2「たりめぇよ!!」ダッ
ダダダーッ
67: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:44:43 ID:zZ0LLNhnzs
〜〜〜〜〜〜
カロル「はぁ……危なかったね、マルク?」
マルク「わんっ!」
カロル「…キノコしか取れなかったよ。足りるかな?」
マルク「うぅ〜…」
カロル「ごめん…。マルクもお腹空いてるでしょ?」
マルク「」ブンブン
カロル「無理しなくていいのに…?そういえばマルクはなんでみんなと行かなかったの?」
マルク「?」
カロル「ボクといるよりみんなといた方がよかったと思うな?」
マルク「クゥーン」スリスリ
カロル「…ボク一人じゃマルクにひもじい思いさせちゃうもの。そんなのやだよ」
マルク「わぅんっ」シッポフリフリ
カロル「それでもいいの?」
マルク「あんっ!」コクリ
カロル「ふふ…変なの?」ニコッ
マルク「」ペロペロ
カロル「あはは!もう…マルクったら」ニコニコ
マルク「わん?」キョロキョロ
カロル「うん。もう追ってきてないよ?戻ろっか!」
68: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:46:32 ID:0fd8NEJ9sQ
―――山小屋―――
ガチャッ
カロル「ただいまー!」
マルク「わうんっ」
母「…おかえりなさい。食べ物採ってこれた?」
カロル「あ…えと…キノコしかなくて…」
母「キノコが採れたの?すごいじゃない!」
カロル「えへへ…ちょびっとだけど」テレテレ
母「…ごめんなさいね。本当はあたしが……」
カロル「ううん、いいの!外で遊ぶついでだから!ね、マルク?」
マルク「あんっ!」
母「…人間に会わなかった?」
カロル「平気だよ!誰とも会ってないから!」
母「そう…じゃあご飯にしましょうか。キノコ貸して?」
カロル「はい?」スッ
69: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:48:17 ID:0fd8NEJ9sQ
キノコ料理「」プスプス
カロル「わぁー!真っ黒けでおいしそー!」パァァ
母「そう?よかったわ?」ニコッ
マルク「……」ゼツボウ
母「マルクも体大きいんだから食べなきゃダメよ?あたし達に遠慮しないで?」
マルク「あうぅ〜ん…」シュン
カロル「」モグモグ
母「どう?」
カロル「おいしーよ!」ニパッ
母「…王都で食べたのはもっとおいしかったでしょう?」
カロル「ううん?ボクね、お母さまが作るの全部好き!」
母「……!」ジーン
カロル「お母さまが作ってくれるから毎日ご馳走なんだ?」ニコニコ
母「…ありがとう。作った甲斐があるわ?」
カロル「マルクも食べなよ?お腹ペコペコでしょ?」
マルク「……」パクッ
マルク「!?」ゲキマズ
母「やっぱりおいしくなかった…?」ハラハラ
カロル「そんなことないよ!ね?」
マルク「あ、あんっ!」シッポフリフリ
カロル「ほら!おいしーって?」
母「そう…?」ニコッ
70: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 20:51:28 ID:0fd8NEJ9sQ
カロル「お母さまー!一緒に寝ていい?」
母「毎日一緒に寝てるでしょう?」クスッ
カロル「うん!マルクもおいでよ!」
マルク「わふーん!」バッ
母「甘えんぼさんね?」クスクス
カロル「甘えんぼでいいもん!ねー?」ギュッ
マルク「わぅんっ」スリスリ
母「あらあら…?」ニコッ
71: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 21:00:11 ID:0fd8NEJ9sQ
マルク「」スヤスヤ
カロル「ねぇねぇ、お母さま」グイッ
母「なぁに?坊や?」
カロル「…明日はいっぱい食べ物取ってくるからね!」
母「いいのよ。坊やとマルクの分だけあれば…」
カロル「お母さまにもお腹いっぱい食べさせたいの!」
母「うふふ…二人がお腹いっぱいならあたしもお腹いっぱいよ?」
カロル「そんなのダメ!今日はボクが食べたから明日はお母さまが食べてね?」
母「坊やが食べないならあたしも食べないわよ…?」
カロル「えー!やだよ、そんなの!」
母「…昔みたいにあたしが取りに行けたらいいんだけど」
カロル「いいよ。ボクがいるもの?」
母「…ごめんなさい。あたしが人間を嫌がるから」
カロル「気にしなくていいってば?」
母「あれからどれくらい経ったのかしらね…」
カロル「…わかんない」
母「あたしのせいでごめんね…。ホントならみんなと幸せになれたのに…」
カロル「言ったでしょ?ボクが決めたんだって!」
母「…不幸な昔に逆戻りさせちゃったわね」
カロル「不幸じゃないもん!」
母「あたしは幸せよ?でも…坊やの幸せはこんな形じゃない筈よ」
カロル「ボクはお母さまと一緒がいいの!」
母「…優しい坊やに無理させて母親失格ね」シュン
72: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/20(木) 21:10:35 ID:zZ0LLNhnzs
カロル「お母さま、お母さま」グイグイ
母「なぁに?」
カロル「ボクを見てよ?」
母「…いつも見てるでしょう?」
カロル「じゃあいつもツラそうに見える?」
母「…あたしに気を遣ってるかもしれないじゃない?」
カロル「…ボク、お母さまにウソつかないよ?」
母「…知ってるわ?あなたは優しい子だから」
カロル「ボクね、お母さまがいると安心するんだ?」
母「あたしもよ?」
カロル「遊びに行く時、お母さまに『いってらっしゃい』って言われないと落ち着かない…」
母「……?」
カロル「帰ってきて『おかえりなさい』って言ってくれるのがお母さまじゃなかったらやだ…」
母「……」
カロル「お母さまが作ってくれる真っ黒けなご飯、食べれなくなったら悲しい…」
母「……」
カロル「どんな幸せよりもお母さまと一緒がいいんだもの?」
母「……!」ウルッ
カロル「…不幸になったって平気だよ?
お母さまがそばにいてくれたら何回でも幸せになれるもの?」ニコッ
母「〜〜〜!」ウルウル
カロル「おやすみなさい?」
母「……ゔん、おやすみなさい?」グスッ
73: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 21:51:41 ID:3wYAsB3RjM
―――山林(畑)―――
カロル「マルク、ちょっぴり重たいけど我慢してね?」ブチッ
マルク「あん!」ガッチリ
カロル「じゃあ篭に入れるよ?」ポイッ
マルク「わんっ!」
カロル「よかったー!こんな所に果物が成ってて」ブチッ ポイッ
老ホビット「ん…おい、ボウズ!儂の畑で何をしとる!?」スタスタ
カロル「え?」クルッ
マルク「わう?」
老ホビット「儂が丹精込めて育てたハグの実に何をしとると言うとるんじゃ!」
カロル「この果物…おじいさまのなの?」
老ホビット「そうじゃ!この泥棒め!」
カロル「ご、ごめんなさい!返します!」ガサゴソ
老ホビット「もいだ後じゃ遅いわ!?」
カロル「あう……」シュン
老ホビット「あ〜あ!なにしてくれとんじゃか?せっかくの実が台無しじゃ!」
カロル「……」ズーン
老ホビット「見て分からんか?どれもまだ熟しておらんじゃろうに?」
カロル「は、はい…」
老ホビット「こいつが立派に実るにはな、あと4ヶ月かかるんじゃ!老体にむち打ち世話してきたっちゅうのに」
カロル「あ…その……」
老ホビット「あぁ!?言い逃れなんぞさせんぞ!?」
カロル「」パシッ
老ホビット「ボウズ!まだ実をもぐ気か!?子供じゃからと大目に見とれば調子に……」
74: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 21:53:15 ID:3wYAsB3RjM
フワッ
老ホビット「……あ!?」
カロル「これで食べられますか?」スッ
老ホビット「ぼ、ボウズ…何をした?青い実が……一瞬で熟成してしまったじゃないか!?」
カロル「おじいさまの実を取ったお詫びに全部実らせてあげるね?」パシッ
フワッ フワッ フワッ フワッ
老ホビット「お、おぉ…!?おぉぉ……!?」ワナワナ
カロル「取った実も返しますね?ごめんなさい?」スッ
老ホビット「い、いや…そんなことより一体どうやって?」
カロル「……ナイショです?」
老ホビット「…も、もしよかったら他の作物も頼めんか?礼にいくらか分けてやるぞ?」
カロル「ホント!?」
老ホビット「あ、あぁ!世話なしに実るならそれ以上にいい事はない!」
カロル「やったー!マルク!今日は篭が重たくなるよ?」
マルク「わふーん!!」
老ホビット「…こっちじゃ。来てくれ!」スタスタ
カロル「はーい!」スタスタ
75: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/21(金) 21:57:15 ID:lBZMgJx./k
老ホビット「やあ助かったわい!ボウズのおかげでどっさり実が成った!」
カロル「ホントにいいんですか!こんなにたくさん!?」
老ホビット「あぁ、いいんじゃよ!新しい芽が出たら、また頼むかもしれんしなぁ!」
カロル「えへへ!ボクの袋いっぱいになっちゃった!マルクの篭もぎっしり?」ズシッ
マルク「う〜…あんっ!」プルプル
老ホビット「ボウズはここで暮らしとるのか?」
カロル「はい、お母さまとマルクと三人で!」
老ホビット「ふーむ…片親か。苦労しとるんじゃのう?」
カロル「ううん!お母さまはおいしいご飯作ってくれるし、マルクが山菜集めるの手伝ってくれるからちっとも大変じゃないです!」
老ホビット「はぁ…幼いのに気丈じゃなぁ。しかし風呂や寝床はどうしとるんじゃ?」
カロル「使ってなさそうな小屋があったからそこに住んでます!」
老ホビット「そうか…」
カロル「はい!」
老ホビット「…この辺は山賊や獰猛な獣も少なからずおるしな。ボウズもあまり動き回ると危険じゃぞ?」
カロル「へぇ…でもボクにはマルクがいますから。ね?」ナデナデ
マルク「うぉんっ!」エッヘン
老ホビット「むぅ…確かに体も大きく、逞しい犬じゃが…それでも精々、ボウズの背丈くらいじゃしなぁ。
グリズリー等に襲われたら一溜まりもないぞ?」
カロル「マルクは鼻がいいんです。大きい獣が近くにいたら教えてくれるもんね?」ナデナデ
マルク「わふん」ルンルン
老ホビット「ほう…そこまで鼻が効くのか。利口じゃのう?」
マルク「あうーん!」テレテレ
カロル「昨日は夢中で山賊の人間に見つかっちゃったけどね?」ナデナデ
老ホビット「なんじゃと?すでに出くわしておったのか?よく助かったなぁ?」
カロル「なんとか走って逃げたけど…もう少しで食べられちゃうとこでした!」テヘッ
老ホビット「お、おぉ…!それはよかっ……ん!?」
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