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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


553: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/9(月) 21:57:13 ID:XiUVsR3VT.
イフィート「おう、シヴァ?外にいた連中は殺っといたぜ?民家は今、同胞達がパーっとお片付け中だ?」ニヤニヤ

シヴァ「そうか。で、裏切り者は?」

イフィート「そこだ?囲んで地べたに座らせてある?」クイッ

シヴァ「」ジッ

名もなき村のホビット's「」ブルブル

谷のホビット4「裏切り者が…!」ジャキッ

谷のホビット5「よく人間なんかと住めたもんだな?」ジャキッ

名もなき村のホビット1「な、なんで…こんなひどい事を…」

シヴァ「ひどい…?」キョトン

名もなき村のホビット1「や、やっと…村にも馴染んで普通の暮らしが出来ると思ったのに」

谷のホビット6「はぁ!?バカ言うなよ?お前ら、それでもホビットか!?」

イフィート「なぁにが普通の暮らしだよ?浮かれやがって甘ったりぃ?」ケッ

名もなき村のホビット2「あ、あんたらは知らないけど…僕達はこれでいいと思ってたんだ!」

シヴァ「……それはすまない事をした」

イフィート「あ?」

名もなき村のホビット's「え?」ザワッ

シヴァ「だが我らにもこうしなければならない理由があった。それだけは分かってほしい」

名もなき村のホビット's「……」
554: 投下終了 ◆WEmWDvOgzo:2015/3/9(月) 22:01:29 ID:XiUVsR3VT.
シヴァ「…そしてもう一つ残酷な事実を告げねばならぬ」

名もなき村のホビット's「???」

シヴァ「我らの報復の為に君たちにも戦ってもらう」

イフィート「イヤだっつったら…分かるよな?」ジャキッ

名もなき村のホビット's「……!」ブルッ

シヴァ「これは小さな仕返しなどではない。戦争だ」

名もなき村のホビット1「せ、戦争って…いきなり言われても」ブルブル

シヴァ「失われた同胞達の無念を晴らすには…他にない」

イフィート「おめぇらだってあいつらにゃさんざんヤられた恨みがあんだろ?おう!?」

ザワザワ ザワザワ

シヴァ「手を貸してくれ。共にホビット族の無念を晴らそう」

名もなき村のホビット4「わ…かったよ」スクッ

名もなき村のホビット1「あ…ちょっ…」ハラハラ

名もなき村のホビット5「ぼ、僕も戦う。人間に…数えきれないくらい虐げられてきたし、こんな暮らし…なんか違うと思ってた」スクッ

名もなき村のホビット1「み、みんな…」

スクッ スクッ スクッ スクッ

イフィート「よーし!それでこそホビットだ!」

谷のホビット7「ほとんど脅迫ですけどね?」シシシッ

イフィート「っしゃあ!シヴァよ!次はどこをやる!?」

シヴァ「…村長の家から地図を手に入れた。ここから近い人里を襲撃しよう」

イフィート「おう!おめぇらも気合い入れろよ!?」

オオオオオオオオオオオオ!!!

シヴァ「(…娘よ。儂は間違っているだろうか?)」

シヴァ「(お前を救ってくれた少年の言葉を意に介さず、報復に反対した同胞達を始末し、全ての同族までもを巻き込もうとしている……。
…お前の為に戦う父を誇りに思ってくれるか?それとも…お前を言い訳に争う儂を蔑むか?)」

シヴァ「(父親でありながら…最後までお前の気持ちが分からないままだったな。
ただ今は…どんな形でもいい。お前の望む事をしてやりたいんだ)」フッ
555: 今夜は爆発的に投下しまくります! ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 22:26:42 ID:JWS0.T.mIE
―――西の領土(聖堂)―――

宣教師「ふぅ……」ポフッ

司教「お疲れ気味ですな?」

宣教師「いえいえ、なんのこれしき…まだまだ休んでなどいられません?」ゴロン

司教「ソファーに横たわって言われても説得力が…?」ヒクヒク

宣教師「すみません…ここ数日、寝付きが悪いもので?」ウツラウツラ

司教「それは良くありませんな…。若さに頼って無理をなさらず?お身体を労ってくだされ?」

宣教師「ご心配痛み入ります。ですが問題ありませんよ。今のところ不調は感じませんから?」ニコッ

司教「どうかご自愛ください…。それで…頼まれた件なのですが」

宣教師「…えぇ、どうなりました?」

司教「憲兵団に協力を依頼し、各支部で捜索させました。
無事に偽の王国兵と思わしき賞金稼ぎ達を捕らえる事に成功しております」

宣教師「…とりあえず一安心ですね」

司教「ところが一人、取り逃したようで…その人物がこちら西の領土に逃亡したと…」

宣教師「憲兵団の包囲を逃れて…?いったい何者ですか?」

司教「今回の件の主犯格であり、主に南の領土で賞金稼ぎをしていたマドラスという男なのですが…追っ手を切り破り、馬を奪って逃走したようです」

宣教師「凶暴な人ですね…。出来れば被害が出る前に探し出してしまいたいですが…万が一教団員の身に何かあってはいけませんし…」ウーン

司教「それだけでなく…」

宣教師「他に何か?」

司教「…いや、詳しくは団長殿が説明なされるでしょう。私も正直、把握出来ておりませんでな」

宣教師「? 団長さんが?」キョトン

司教「はい。聖堂の警護を担当する為、憲兵を率いて、こちらに向かっておられます」

宣教師「け、警護…?そのような話は伺ってませんよ?」
556: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 22:29:36 ID:JWS0.T.mIE
司教「…カーリンのみならずホビットの襲撃による町々の被害が広まっておるのです。ここも安全とは言えません」

宣教師「ま、また…!?お、王国の方で対策していなかったのですか!?」ムクッ

司教「一応、王国軍が討伐する予定だそうですが…それまで無防備でもいられません」

宣教師「と、討伐ですって!?なりません!?
そんな強引な手段では根本的に……そもそも国王が許す筈が…!」

司教「なにやら国王を始めとした役人も数名、国外へ出払っているようで…」

宣教師「!?」

司教「…確かに強引ではあるが被害を増やさない為にも必要な決断だったのではないでしょうか」

宣教師「そ、そんな…!それでは……何も変わらないじゃないですか!」

司教「しかし西の領土に住まう人々はいつ襲撃を受けるか分からない不安に怯えておりますぞ…」

宣教師「もちろん彼らの暴挙は止めなければなりません!
その上で法に則って裁き、罪を償わせるべきだと言っているのです!」

司教「し、しかし…あれだけの事をしてしまった以上、死罪は免れないでしょうから…」

宣教師「そういうことではないでしょう…!
討伐など…まるで一方的に駆除するような名目では人間とホビットの格差が埋まらない…!
あくまで人と同じように裁き、人と変わらない償いをさせなければ平等ではありません!」

司教「びょ、平等?」アセッ

宣教師「…当たり前でしょう。ホビットもこの国の民なのですから!」

司教「は、はぁ…」

宣教師「団長さんにも事情を伺わなければなりませんね…。なにかイヤな予感がします」
557: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 22:32:48 ID:JWS0.T.mIE
〜〜〜2日後〜〜〜

―――聖堂(談話室)―――

団長「ホルウィの町以来だな。元気にしておったか?」

宣教師「はい。その節はどうもお世話になりました」ペコリ

団長「いやいや、頭など下げんでくれ?ワシも力になれて良かったと思っている?」

宣教師「おかげさまで修道院の方も順調に続けられているそうですよ?」ニコッ

団長「おぉそうか!領主の不在で町の財政も苦しくなっていたようだが…。
君らが積極的に支援活動に取り組んでくれたとあって今は新しい領主を軸に持ち直しているらしい?まったく頭が下がる話だ…?」タハハ

宣教師「いえいえ、そちらも色々と込み合ってるようですから…助け合うのは当然ですよ?」

団長「まぁ…な。はぁっ…!」

宣教師「疲れが見えますが大丈夫ですか?」

団長「いや…大丈夫だ。今回は少し急だが…西の領土全体を憲兵団で警護する運びとなった。
むさ苦しい連中に囲まれて鬱陶しさを感じるかもしれんが我慢してくれ?」

宣教師「それは構いませんが…ホビットを討伐する動きがあるというのは本当なのですか?」

団長「む?あ、あぁ…そうだな?」オホンッ

宣教師「……」ジトッ

団長「…言いたい事は分かる。だがその件にワシは関われんのだ」ポリポリ

宣教師「王国軍で討伐するのであれば陣頭指揮を取るのはあなたでは…?」

団長「いや…ワシは近衛と憲兵の長だ。王国軍はまた別の軍長が仕切っている」

宣教師「? 王国軍って分かれてるんですか?」

団長「うむ。前王政のややこしい制度でな。反王族勢力が派閥を強くする為に正規軍の指揮権を奪ったのだ」

宣教師「正規軍…とは?」

団長「いわゆる軍の中枢…我ら近衛とは段違いに規模の大きい最大勢力だ。
その行使権は高官が預かっており、豚(※大臣)やアントリアが町や集落を焼き払う時に使っていたのは主にこの王国軍だな」

宣教師「え!?てっきり団長さんがやらされていたのかと!?」

団長「やってたまるか!?なぜワシが罪無き民を殺さねばならんのだ!?」ガァーッ

宣教師「す、すみません…?」アセッ
558: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 22:36:09 ID:JWS0.T.mIE
宣教師「それで近衛とは何が異なるのですか?」

団長「近衛とはいわゆる王族直属の軍…といっても前国王陛下の勢力が弱かった為、数は1000程度と少なく、民間から集められた素人同然の兵で成り立つ弱小部隊だがな」

宣教師「な、なぜ団長さん程の実力者が小さな隊に?その気になれば王国軍の方にも……」

団長「王国軍に属せば国王陛下を守る勢力が皆無になってしまうからだ。
陛下の威光を取り戻したい一心にて騎士団を破り、守衛兵を取り込み、憲兵団の長も買って出たが…それでもワシ個人で動かせる人員は5000弱……倍にしても王国軍には遠く及ばん」

宣教師「ゴクリッ…じゅ、十分すぎると思うのですが…というより巡礼の際にカロルくん達が戦えたのが不思議でなりません…」

団長「それがあの狸爺…アントリアのうまいところだ?
奴は事前に政務官を通じて連れてくる兵力を数百程度に抑え、その上で数々の誘導を仕向けて兵を分散させていた…。
おそらくホビットとの戦いを長引かせ、その間に陛下や高官をまとめて始末する気だったのだろう」

宣教師「…なぜそこまで悪知恵が働くのやら。
私には理解出来ませんが…あの方が国を支配する事にならなくて本当に良かったです」

団長「…まったくだ」

宣教師「…しかし団長さんや国王に相談なく軍を動かす権限が今の高官にあるのですか?」

団長「…一人だけ可能な人物がいる」

宣教師「ど、どなたでしょう…?」ドキドキ

団長「リルラ政務官だ」

宣教師「え…?あ、あの…たしかアントリアの言いなりになっていた方ですよね?」

団長「そうだ…。君も薄々感付いているかもしれんが…この国は今、窮地に陥っておる」

宣教師「え…!?」

団長「これは今から1年前の事なのだが……」
559: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 22:39:20 ID:t4n1WC4cYA
宣教師「えぇぇぇっ!?カロルくんが西の国の女王に狙われているんですか!?」ビックリ

団長「声を抑えんか!?聞かれたらどうする!?」アセアセ

宣教師「ど、どうりでおかしいと思いました…?急にカロルくんに賞金が付いたりするものですから?」

団長「それも政務官の仕業だ。ファルージャが狙う癒しの力を存在ごと抹消しようとしているのだ?」

宣教師「…ひ、ヒメくんというか国王様は知っているのですか?」

団長「いや…ご存知ない。この事実を伝えでもすれば国の上層が内部分解しかねんからな」

宣教師「……」

団長「ヒメ様は気丈に振る舞っておられたが…周りの使用人に聞いてみたところ、やはり心労も祟ってか落胆なされているらしい…。
捜索している友人が嫌がって逃げ回っているのではないかと考え始めているようだ…」

宣教師「私も…もしかしたらそっとしてほしいんじゃないかと思って捜索を緩めて賞金稼ぎの捕縛に尽力させていましたが…まさかそんな事情があったなんて」

団長「賞金稼ぎ連中も奴が雇った刺客だ。調書も取れている」

宣教師「……!なぜカロルくんばかりがそんな目に…!」ググッ

団長「今回の討伐に関してもワシは裏があると見ている…。
南のバンブル以降、小童の生息は不明になっているが…奴はその捜索も兼ねて軍を動かしているのではないだろうか?」

宣教師「なっ…!?」

団長「数ヶ月前に君の孤児院が西の国の刺客に襲われただろう?その件もあってか焦り……」

宣教師「えっ」

団長「む?」

宣教師「ま、待ってください。なんの話ですか?」アセアセ

団長「…まさか知らんのか?」

宣教師「知らないですよ!孤児院に何かあったんですか!?」

団長「……西の国からやってきた刺客が小童の居場所を探ろうと、ゆかりある君の院を襲撃したのだ」

宣教師「」ピシィッ

団長「一名、死者が出た上に院も火事に遭ったのだと報告を受けた」

宣教師「死っ…!?」ビクッ

団長「なんとか近場の町に助けを求めて撃退したらしいがな」

宣教師「し、知りません!知りません!私…そんなの知りません!」オロオロ
560: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 22:42:29 ID:JWS0.T.mIE
宣教師「なぜ…ミシングは黙っていたのですか…!?私だけが…知らなかったなんて」ワナワナ

団長「連絡がなかったのだとしたら多忙な君を気遣っての事だろう…」

宣教師「そ、そんな…!たったそれだけで…私に黙って…」

団長「いや、ワシも余計な事を言ってしまったようだ…。すまんな」

宣教師「こ、こうしてはいられません!すぐに戻らなければ…!」ガタッ

団長「…まぁ落ち着きなさい」

宣教師「落ち着けませんよ!?あの子たちは私にとって大切な…大切な家族なんです!!
それなのに…どうして!?なんでそんな大事な話を私に黙っていたんですか!?」

団長「……」

宣教師「院を留守にしている間…あの子たちは…怖い思いをして…かけがえのない家族を失って…ですが…私は……私は何も知らずに…何も…してあげられないなんて…!」ウルッ

団長「気持ちはよく分かる…。分かるが抑えなさい?
君が取り乱してしまえば…ミシングや子供らの想いが無駄になるぞ…?」

宣教師「どういう…ことですか?」グズッ

団長「彼女達にしてみれば君が理想の為に使命を全うし、駆け回っていたのを邪魔したくはなかったのだろう」

宣教師「でっ…も…でも…!こんな形で…知りたくなかった…!」ググッ

団長「…知れば君は嘆いて全てを投げ出し、院に戻ってきてしまう。
そう考えたからこそ黙っておいたのではないか?」

宣教師「…そうですよ!そうしますよっ!!
そうしないと…死んでしまった子を看取ってさえあげられないっ…!」ポロッ

団長「…彼女も院の子らもそれを望まなかったのだ?君の枷になるまいと…耐え忍んでいたのだ?察してやれ?」

宣教師「……!」ワナワナ

団長「ワシが全てを知っていながらヒメ様に伝えておらんのも…同様に枷を掛けたくないからだ。
深い悲しみや憤りは目指すものから目を背けさせる…」スクッ

宣教師「……」ツツー

団長「…分かってやんなさい。彼女を責めてはならん…無論、自分自身もな」ポンポン

宣教師「ひぅ…!う…っ…」ポロポロ
561: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 22:45:28 ID:t4n1WC4cYA
―――聖堂(外門前)―――

ゾロゾロ ゾロゾロ

ザッザッザッザッ

シヴァ「あれか…。同胞を大勢閉じ込めている聖堂とかいうのは?」

名もなき村のホビット1「そ、そんな言い方…!」カッ

名もなき村のホビット2「し、司祭様は閉じ込めたりなんか…!」

イフィート「るせぇよっ!人間なんぞにほだされてんじゃねぇぞ!?」ガァーッ

名もなき村のホビット's「ひぃっ!」ビクッ

シヴァ「ふむ…今回は一筋縄ではいかなそうだ」ジッ

イフィート「あぁ!?んだ、ありゃ?」ジロジロ

カンカンカン カランカンカン!

名もなき村のホビット3「み、見張りに気付かれたんだよ!聖堂には守衛さんが待機してるんだ!?」

イフィート「へっ…たかだか数十ぽっちだろ?
こちとら集落から降りて村や町の同胞もかき集めて500はいるんだぜ?」

シヴァ「…雑作もない。これまでと変わらず弓とこん棒に分かれ、飛矢で先制し、一気に叩くぞ」

谷のホビット1「あの外壁が邪魔で敵を狙えませんよ!」

シヴァ「狙いは外してもいい。中の人間共に圧力をかけるのだ」

谷のホビット1「……?」

シヴァ「刺さらずとも…脅威は感じる筈だ」

イフィート「うっし!いっちょ派手にかますかぁ!?」
562: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 22:47:48 ID:JWS0.T.mIE
―――聖堂(談話室)―――

ガチャッ

司教「し、司祭様!大変ですぞ!?」アセアセ

宣教師「グスッ……ど、どうし…ました?」グシッ

司教「……!?な、なぜ泣いておられるのですか?あ、あんた、まさかっ!?」キッ

団長「ま、まさかとはなんだ!ワシは何もやましい事などしとらんぞ!?」

宣教師「だいじょ…ぶです。どうかしたのですか?」グスンッ

司教「み、見張りの者から大勢のホビットが聖堂に迫るのを確認したと!?」

宣教師「えっ…!?」ギョギョッ

団長「な、なんだと!?」ガタッ

ダダダダダッ

憲兵7「団長!大変です!外から物凄い数の矢が降ってきました!?」

団長「くっ…例のホビット共か…!」ギリッ

司教「お、屋外に出ていた教団員や預け入れしている者達は皆、建物内に避難させるよう指示しておきましたぞ!」

団長「うむ、あとはワシらに任せろ!おい、泣いている場合ではないぞ!?」

宣教師「……!」グシグシッ

団長「中にいる者達のケアをしてやれ!突然の事でひどく混乱している筈だ!」

宣教師「は、はい!」バッ

憲兵7「団長!指示をお願いします!」

団長「うむ!行くぞ!」ダッ

ダダダダダッ………
563: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 22:53:09 ID:JWS0.T.mIE
―――聖堂(中庭)―――

ビュンビュンビュンビュン

ドスッ ドスッ ドスッ ドスッ

憲兵8「くっ…!こ、これじゃ屋根下から出られないぞ?」

憲兵9「あいつら…なんでもいいから適当に矢を飛ばしてんだな!戦術も何もねぇぜ!」

憲兵10「あぁ!こんな無駄打ちしてちゃすぐに矢も切らすだろうさ!バカな奴らだ!」

憲兵11「くあっつ…!す、脛に刺さった…!」ドスッ

憲兵8「だ、大丈夫か、おい!?」アセアセ

憲兵12「一旦建物に籠ろうぜ!回廊や入り口の屋根下ですし詰めになってたら危なくてしょうがねぇ!?」

憲兵13「おい、後ろ!中に入れよ!前列が危ないだろ!?」グッグッ

団長「待てぇい!!」バンッ

憲兵's「」ビクッ

憲兵14「だ、団長!なぜ2階の窓から…!?」

団長「貴様らが出口を塞いでいるからだ!
そんな事よりも…無駄に固まらず壁際に散れ!」

憲兵15「こ、こんな矢が飛び交う中…移動なんか出来ませんよ!?」

ザスッ

憲兵16「ひっ!あぶなっ!?」

団長「まったく世話の焼ける奴らめ…!」イラッ
564: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 22:55:02 ID:t4n1WC4cYA
団長「矢の軌道をよく見てみろ!?」

憲兵17「は…?」

団長「外壁を越えて放たれた矢は壁の外側に刺さっているだろう!
下手に奥へ逃げ、屋根に隠れるよりも壁の内側に立った方が安全だ!」

憲兵's「」ハッ

団長「奴らの狙いは矢でワシらの身動きを制限し、正門を突破する事だ!あの音が聞こえないのか!?」

ドンッドンッ ドンッドンッ

憲兵18「も、門を破ろうとしてるのか…!?」ビクッ

憲兵19「や、矢に惑わされて全然気付かなかった…」

団長「このような迎撃体制も整わぬままの固まった陣形では突入した敵に成す術もなくやられるぞ!?
急いで門周辺の壁際に散り、待ち構えて迎え撃つ準備をしろ!?」

憲兵's「ははぁっ!!!!」ザザザッ

ビュンビュンビュンビュン

憲兵20「ぐわぁっ!?」ドスッ

憲兵21「ぎゃあああ!!」ドスッドスッ

団長「ぐぬっ…!」ギリィッ

ドンッドンッドンッドンッ
565: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:02:21 ID:JWS0.T.mIE
―――聖堂(礼拝堂)―――

修道子「うわぁぁぁぁん」ビエー

修道女「うん…!うん…!怖かったね?もう大丈夫だよ?」ナデナデ

教団員3「こ、ここに入ってきたらどうしよう…!?」ガクガク

教徒「しっかりしてくださいよ!僕達が不安になってどうするんですか!?」

ワァーワァーギャーギャー

宣教師「皆さん、お静かに!建物内には守衛の方々が残っていますし、外は憲兵団が対処に当たっていますから!」

司教「し、しかしまずいですな…。見張りの話では数にしておよそ400以上と聞きましたぞ…?」

宣教師「…団長さんを信じましょう。きっとなんとかしてくれます!」

司教「そ、そうですな!あの方ならば…!」

宣教師「皆さんは扉が開かれないように椅子と机を並べてください。
私は逃げ遅れた者がいないか通路を見て回ります!」スクッ

教徒「あっ!僕も行きます!一人じゃ危ないでしょうから!」

宣教師「ありがとうございます。では行きましょうか?」ニコッ

教徒「はい!あっ…」

宣教師「どうかなさいましたか?」

教徒「目、赤くなってますけど…なにかあったんですか?」ハラハラ

宣教師「…寝不足です」

教徒「あ、なんだ…。よかった?てっきり泣いてたのかと?」

宣教師「泣いたりなんてしませんよ?」クスッ

教徒「そうですよね!」

宣教師「(今は聖堂の皆さんを守る事に集中しなければ…ミシングたちの期待に応える為にも…)」グッ
566: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:05:15 ID:t4n1WC4cYA
―――聖堂(通路)―――

ギャーギャー ガタガタッ

聖堂のホビット1「いたっ…!」ドタッ

難民1「クソォ!!お前らよくも!?」ガッ

聖堂のホビット1「うっ!」グイッ

聖堂のホビット2「な、なにすんだよ!?」

難民2「お前らの仲間が攻めてきたんだぞ!しかも色んな町を襲った悪党共だ!?」

聖堂のホビット3「う、ウチらが何をしたって言うのよ!?」

難民3「言い訳すんな!!とんでもない事態に巻き込んどいて!?」

難民1「もう許さねぇ!!ホビットなんかぶっ殺してやる!!」バッ

聖堂のホビット1「」ビクッ

宣教師「お待ちなさい!!」ピシャリッ

難民1「あぁ!?……し、司祭様…!」ピタッ

聖堂のホビット1「司祭様ぁ…!」パァァ

宣教師「その子から手を離しなさい」

難民1「っ……!」グッ

宣教師「八つ当たりするくらいなら神にでも祈っていた方が100倍マシです」

難民1「くっ…」パッ

聖堂のホビット1「ありがとう!司祭様!」

宣教師「いいえ、お気になさらず?ここは危ないですから礼拝堂に避難しましょうか?」ニコッ

聖堂のホビット's「はーい!!!」

宣教師「あなた方も八つ当たりではなく身の安全を最優先してくださいね?」

難民's「………」
567: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:07:17 ID:JWS0.T.mIE
教徒「司祭様ー!」タタタッ

宣教師「はい?」クルッ

教徒「1階には誰もいませんでした!」

宣教師「そうですか。ご苦労様です。
こちらも避難させておきましたので3階と4階を見て回りましょうか」

教徒「僕が見ておきますよ!司祭様は最上階の展望台をお願いします!」

宣教師「ありがとうございます。ではお任せしますね?」

教徒「はい!窓は閉めてありますけど…矢が飛んでくるかもしれませんから気を付けてくださいね?」

宣教師「えぇ、なるべく窓の周辺は離れて歩きますよ。キミも危険な状況に遭ったら迷わず礼拝堂に戻るように?」

教徒「は、はい!司祭様もですよ!ムチャしないでくださいね!」

宣教師「心配には及びませんよ。私は臆病ですから?」クスッ

教徒「(物音とかには敏感だけど、いざとなると怖い物知らずで大胆な人だし心配だなー…)」ハラハラ
568: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:08:59 ID:t4n1WC4cYA
―――聖堂(中庭)―――

ドンッドンッ バァンッ バッカァァン!!

ザザザザザッ

憲兵7「あぁっ!?突入されました!?」

団長「焦るな!ワシの指示通り挟み撃ちにして迎え撃て!?」

憲兵's「ウオオオオ!!!」ダッ

ダダダダダッ

ガンッ キキンッ ボカッ ガンッ


イフィート「うおっ!?なんだ、こりゃ!?正門を突破した連中が止まったぞ!?」

シヴァ「ふん…矢に怯え、縮こまっていると踏んだが…それなりに冷静な人間がいたようだ」

谷のホビット1「ど、どうすんですか!?突入した仲間が出足挫かれてやられちゃってますよ!?」

谷のホビット2「前が足止めくらってつっかえちゃってるし一旦退きますか!?」

シヴァ「…儂が行く。長槍隊は後に続け」ザッ

イフィート「よっし!こん棒隊!一旦下がれ!!」

ザザザザザザザッ

憲兵7「ハハハ!奴ら恐れを成して退きましたぞ!?」

団長「…正門から距離を取って構えろ!!何かする気だぞ!?」

憲兵7「え?」
569: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:13:53 ID:JWS0.T.mIE
ビュビュビュビュビュン

憲兵8「う、うわっ!ちょっまっ…うわああああ!?」

ザクザクザクザクザクッ

ギャアアアアアア グワアアアアアアア

谷のホビット4「やったぜ!」ヒーハー

谷のホビット5「シヴァさんの言った通りだ!あいつら短い獲物しか持ってねぇから長槍で突っ込んでやったらひとたまりもないぞ!」

シヴァ「ふむ…道は開けたな。イフィート!儂らに続け!?」

イフィート「おうよ!こん棒隊!やっちまうぞ!?」ダッ

ドドドドドドッ

団長「な、なんという事だ…!」ギリッ

憲兵7「だ、団長!奴ら違う武器で攻めてきましたよ!
あんなの出されたら警棒しか装備してない我々では太刀打ち出来ません!」

団長「弓、槍、こん棒……幾分か頼りないが実に練られた配備だ。
長距離、中間距離、短距離、全ての戦術に通用する武器を備えておる」

憲兵7「感心してる場合じゃないですって!?」

団長「(こん棒と弓はそれぞれ木製か…。長槍も木製だが刃先は石器類だな)」

ザクッ ゴスッ バキッ

団長「(しかしあの威力…容易く骨を砕く上に重量感もなく非力なホビットでさえも扱える…どうなっているんだ?
あの長槍にしろ…石の刃でありながら銅製にも劣らない鋭さはいったい…?
…いや、ホビットは元々自然界を生き抜く知恵と野生を持ち合わせた種族。未知の武具を用意していてもおかしくはない)」

団長「(…憲兵程度ではとても食い止められんな。備えが浅かったか)」

憲兵7「団長!団長!?どうするんですか!?このままじゃ……」

団長「(だが…ナメるなよ?)」ガッ

憲兵7「!? な、なにしてんですか!?窓に身を乗り出したら危ないですよ!?」

団長「はぁっ!!」バッ

憲兵7「わああああ!!!わっわあああ!?に、2階ですよ、ここ!?」アタフタ

ストッ

憲兵7「ひぃぃっ……ん?うわあスゲー!?軽々着地したよ、あの人!?」ギョギョッ
570: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:17:41 ID:JWS0.T.mIE
―――聖堂(正門前)―――

ワラワラ ワラワラ

旅のホビット1「これはまた物凄い行列ですね?」

旅のホビット2「数百人のホビットが並んでるぞ?」

カロル「みんなも宣教師さまに会いに来たのかな?」ワクワク

母「きっとそうよ?あたし達も並びましょ?」

旅のホビット3「…なんか下着みたいな格好ばっかり」ジーッ

谷のホビット16「ん?お前ら、武器も持たずに何してんだ?」

旅のホビット1「武器…?」

谷のホビット21「ったく!なにすっとぼけてんだか!聖堂を攻め落とすのに武器がないじゃ始まらねぇだろうが?」

旅のホビット2「攻め落とす?なんだ、それ?僕達は……」

谷のホビット22「これだから新参は…お前ら、ちゃんとシヴァさんの話を聞いてなかったのか?」

カロル「」ピクッ

母「……!」ハッ

谷のホビット21「この聖堂に集まってる同族を仲間に引き入れりゃ数がグッと増すからな。
ムカつく教団をぶっ殺すついでに勢力を拡大しに来たんだよ」

谷のホビット22「しっかし前がつっかえてんだよなぁ。まだ入り口で足止めくってんのかな」

旅のホビット3「も、もしかして…」

旅のホビット1「た、たぶん…噂になってる同族たちかも」

旅のホビット2「ど、どうすんだよ…!こんな事になってんなら司祭様に会えないぞ…!?」

カロル「すいません!通してください!」スッ

谷のホビット23「お、勇ましいな、ボウズ?でもダメだ?シヴァさんの指示を待ちな?」
571: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:22:26 ID:JWS0.T.mIE
母「ま、待ちなさい、坊や!なにする気なの!?」ガッ

カロル「やめさせなくちゃ!」

母「け、けど…この群衆を掻き分けて入るのなんてムチャよ?中で食い止めてる人達がいるんでしょ?その方達に任せましょ?」アセアセ

旅のホビット1「そ、そうですね。僕達は一旦引き返しましょう!」

旅のホビット2「その方がいいな。バレたら巻き込まれそうだし?」

旅のホビット3「で、でも司祭様が危ないよ…!」アセアセ

カロル「…あ、そうだっ!」ピカーン

マルク「わう?」

カロル「ねぇねぇ、おじさま」チョンチョン

谷のホビット23「ん?気持ちは分かるが待てって?まだお呼びが掛かってないだろ?」

母「ぼ、坊や…!なにしてるの…!?こ、ここを離れるわよ…!?」コショコショ

カロル「あのね、ボク癒しの力持ってるよ?」

谷のホビット23「はいはい、分かったからおとなしく……んなにぃっ!?」バッ

ザワッ ジロジロ ヒソヒソ

母「坊やぁぁ!?」ヒョエー

カロル「シヴァさんの事も知ってるよ?」

谷のホビット23「う、嘘じゃねぇだろうな?」ジロッ

母「う、嘘です!嘘!そうよね、坊や!ほら、ごめんなさいは!?」アタフタ

カロル「ホントだよ?だからおねがい?前に行かせて?」

谷のホビット23「…おい!シヴァさんの探してた例の子供だ!通せ!?」

ザザザッ

旅のホビット1「うわっ!み、道を空けましたよ!?」

旅のホビット2「い、癒しの力って本気で言ってんの!?だってあれは教団が……」

旅のホビット3「う、嘘が分かったらどうなるか…?」オロオロ

カロル「へいき。ウソじゃないもん」

母「〜〜〜!!」ワナワナ
572: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/17(火) 23:25:21 ID:JWS0.T.mIE
カロル「じゃあ行ってくるね!」スタスタ

母「……!」ガッ

カロル「え…?お、お母さま…?」グイッ

母「なんで勝手なことするの!?」

カロル「」ビクッ

母「たまにはお母さんの言う事も聞いてちょうだい!?あなたが心配だから止めてるのよ!?」

カロル「ご、ごめんなさい…」シュン

母「なんでいつもムチャして心配させるの…!?あたしがそんなに信じられない!?」

カロル「そ、そうじゃないよ!」アセアセ

母「なんでなのよ…?あたしが…どれだけあなたを大切に思ってるか…」フルフル

カロル「…分かってるよ。ボクはお母さまに愛されてたから、ずっと幸せでいられたんだもの」

母「……」

カロル「でも後悔したくないの。お母さまがボクを大切にしてくれるのとおんなじで…ボクにも大切なものがあるから」

母「っ…」

カロル「ボクにできることがあるならしておきたいんだ?
ダメでも…よくないけど…なにもしてあげられないよりいいもんね?」ニコッ

母「だからって自分から危険に踏みいるのは違うでしょ!?」

カロル「…宣教師さまも聖堂のみんなも怖い気持ちでいっぱいだと思う。
シヴァさんたちだって…ホントは別のやり方があったはずだよ」

カロル「…あの時にボクがなにか少しでも変えられてたらよかったのに…怖くなって逃げちゃったから」

母「しかたないじゃない…。あんな状況、どうにかできたと思う?」

カロル「思わない…かな。だから逃げたんだもの」

母「じゃあ分かるじゃない!?今もそうよ!?あなたが割って入ってみても…何も変わらないわ!!」

カロル「それでも…すごく胸が痛いの。ツラいよ…」ギュッ

母「……!?」

カロル「変わらないって決め付けて…シヴァさんたちを止められなくて…たくさんの人間が殺されて…ここでまた同じことをしたら…もう……ボク…」

母「…そうじゃ…ないでしょうっ…!?」
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sage:


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