1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
522: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:36:19 ID:RCXCl5If6k
―――西の国(会議室)―――
女装家「ちょっとアンタぁぁ!?どうなってんのよぅ!?
アンタが考えた作戦、聞かしたのにオネェ様ったら全然ピンと来てなかったじゃないのよぅ!?おかげで大恥かいたんだから!?」バンッ
官吏3「わ、私は王国のパーティーで貴族や役人と親しくし、確かな情報を集めましたぞ?ど、どのように説明をなされたので?」アセアセ
女装家「えっ!?だからアレよ!アレをアレしてアレするってアレしてきたのよ!?」
官吏3「(そりゃピンと来んわなぁ…。そもそも陛下も三銃士の面々も頭脳はからっきしなのだから分かる訳がない…)」
将軍「ぬぬぬ…!」ギリィッ
女装家「アンタはいつまでイラついてんのよぅ!?暑苦しいったらありゃしない!?」
将軍「これがイラつかずにいられるかぁ!?なぜパカラゥロだけが陛下の寝室に呼ばれるのだぁ!?
我輩でさえご無沙汰だというのに…あぁ憎々しい!!」ダンッ
女装家「アタシだってムカつくわよぉ!?だけどしゃあないでしょ!?
今回一番の手柄を立てたのはパカちゃんだって言われちゃったんだから!?」
将軍「フンギギギ…!い、今頃は陛下と寝室でちちち…ち、乳繰り合ってフンギィィィ!!!」ダンッダンッ
女装家「あぁぁん!!言うんじゃないわよ!?アタシだって陛下の全身マッサージしたいぃぃ!!」ワシャワシャ
官吏3「(な、なんじゃそら!贅沢抜かしやがって…こっちなんか陛下の手を握った事さえないんだぞ…!)」イライラ
ガチャッ
参謀「遅れて申し訳ございま………」
将軍「フギィィ!!あぁクソッタレがぁ!?」ダンッダンッ
女装家「アイツばっかアイツばっかアイツばっかずるぃぃぃ!!!」ワシャワシャ
官吏3「(お、俺だって…!へ、陛下にむしゃぶり付きたいんだぞ!羨ましいな、畜生!!)」イライラ
参謀「(…煩悩の塊共め)」ハァッ
523: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/26(木) 22:46:51 ID:Zn..IGjcXM
女装家「あんのブキミ野郎…!イイとこばっか持ってきゃあがって…!」
参謀「…シャルウィン様」
女装家「んじゃゴラッ!?」ギロッ
参謀「向こうで火傷を負われたと聞いておりまするが…その後、具合の方は?」
女装家「あぁん?お化粧で隠してんのよ!アタシのコンプレックス突くなんていい度胸じゃないのぅん?」ビキィッ
参謀「あ、そうでしたか?とてもお美しい肌艶なので…すっかりと健康美を取り戻されたのかと?」ニコッ
女装家「……!あ、あぁ〜ら、そうかしらん?」デレッ
参謀「はい。本日もまことにお綺麗でございまする?火傷痕を跡形もなく消し去る美容術を持つ者など…はたしてシャルウィン様の他におりましょうや?」
女装家「ま、まぁ〜?いろいろ小まめにやってるしぃ?」デレデレ
参謀「陛下のケアをなさる美容顧問官として説得力に厚みが持たれますよ?」
女装家「ブォホホホ!アンタいいこと言うわネェン?」デレデレ
参謀「将軍閣下」
将軍「ぬぅ…!?」イライラ
参謀「先日に閣下自ら指揮なされたレジスタンス討伐の件を陛下が褒めておられましたよ?」
将軍「な、なんとおっしゃられた!?」ガタッ
参謀「鮮やかな手際だとか、そんな風な事を?」
将軍「そ、そうか!へ、陛下がな?ムフフ…!」ニヤニヤ
参謀「(手を焼かせる連中だ…)」
参謀「では会議を始めましょうか。まずは……王国孤立化に向けての外交戦術を固めましょう?
そこの官吏の意見を元に僕が考案致しました案なのですが……」
官吏3「(え!?そうなると私の手柄が参謀に……)」
参謀「なにか?」ギロッ
官吏3「い、いや…」タジッ
参謀「…この案には宝石商を営んでおられますシャルウィン様のお力が必要になりまする?」
女装家「そうよネェン、お化粧のノリも……アタシ?」キョトン
参謀「はい…?」ニヤリ
524: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 22:41:11 ID:UavECGF.sw
〜〜〜1週間後〜〜〜
―――王都(会議場)―――
ヒメ「……!」ペラッ
高官's「」オロオロ
ヒメ「本当なのか…!これ…!?」
政務官「その書類の報告に偽りはございません」
ヒメ「だとしたら…まずいぞ!」ギリッ
政務官「…してやられましたな」
高官1「な、な…何が起こっているんですか!?」オロオロ
ネバル「……」ペラッ
高官2「わ、分かるか?」ツンツン
ネバル「内容そのまんま読むと…西の国がこちらの同盟国と貿易を成立させたってなってるです?」
高官2「読めば分かる…!それがなんでまずいんだ…!?」
ネバル「なんで…?うーん……なんで?」キョトン
高官2「私に聞くなぁ!?」
政務官「要約すると…こちらが進めていた取り引きを横取りされたのだ」
高官's「えぇぇ!?」
ネバル「はー…困ったですねー…。今んとこ国内がばたついて国家予算が流れてっちゃうですし…?
国外からの物流交易、文化交流で経済効果が高まる期待してたです…」
高官1「う、うーむ…た、確かに政務官殿が以前より進めておられた国家交流の円滑化には…貿易が必要でしょうなぁ」ポリポリ
ヒメ「それだけならまだしも…結び付きまで奪われた…!」ワナワナ
高官4「結び付き?」キョトン
政務官「…全容を理解しているのは私と陛下のみか。情けない…」ヤレヤレ
高官's「???」チンプンカンプン
525: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 22:45:59 ID:YvuzyYVhZU
政務官「利害関係の結び付きを奪われた…つまり今、王国と5国の関係性は非常に希薄な物になっているという事だ」
ヒメ「あぁ、実質的には同盟なんて名ばかりの繋がりで…苦しい時に無償で手を差し伸べる国なんかない」
高官's「!?」
政務官「まさかあのファルージャが外交戦術を仕向けてくるとはな…。さすがに予想していなかった」
高官3「し、しかしですなぁ?なぜ長いこと危険視されてきた野蛮な西の国と……」
ネバル「あっ!?」
高官3「な、なんだ!?今は私が喋ってるだろ!?」
ネバル「でもそれって…同盟国からしたら、うちがそうですよね!?」
高官3「はぁ!?なにがだ!?」
政務官「そうだ」
高官3「えっ」
政務官「約1年前から西の国と貿易を結んだ我が国に対する同盟国の見方は…平和協定を崩しかねない危険因子……」
高官1「で、でも!でもですぞ?さすがにこんな急に事態が…!」
政務官「何を言っている?世界全体の流れは一分一秒の油断も許されない凄まじい速さで切り替わっていくのだ?」
高官1「…!?」ゴクリ
政務官「特に独自の繁栄を築く主要国家の判断力は極めて高い。
あらゆる流れを敏感に察知し、疑わしきは早急に排除しようと迷いなく決断する…」
ネバル「…あれ?だけど王国と同盟国は付き合いが長いですよね?
なんで王国じゃなくて危ないって分かってる西の国と?」
政務官「理由は3つある」
ザワザワ ヒソヒソ
政務官「第一に王国の弱体化、これにより西の国と貿易を結んだ我が国は…各国に対抗しようと焦ったものと思われている」
ネバル「た、たったそれだけで…?」
高官5「わ、我々が反旗を翻すとでも言うのか!馬鹿馬鹿しい!」
526: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 22:49:50 ID:UavECGF.sw
政務官「第二に…西の国の持ちかけた貿易には王国以上のメリットがある」
高官5「め、メリット…?」
政務官「宝石や貴金属の元となる鉱石資源の採掘場だ?」
高官6「はぁっ!そういえば西の国は金や宝石の生産量が世界一だ!?」
高官5「し、しかしそれなら我が国にも…」
高官6「いや!昔から宝飾品の扱いに慣れ親しんでいる国民性だけに、その加工技術は群を抜いているとか!」
政務官「あぁ、それだけに過去の戦争では…いくつもの国から集中的に狙われたと聞く。
今でも世界中が密かに西の鉱石資源に目を付けているが…。
今回の取り引きで直接、生産地ごと明け渡してしまおうと言うのだから諸国にしてみれば、この上ない好機だ」
ネバル「そ、そんなすごいのあげて西の国は大丈夫です?」オロオロ
政務官「自国の主要財産を壌土したのだ…。腹を括って挑んでいるのは間違いない」
ザワザワ ザワザワ
高官7「な、何が狙いなんだ…!?」
高官8「政務官!3つ目の理由とは!?」
政務官「……」
シーン
政務官「…この国に先はないと判断されたのだ」
ヒメ「」ピクッ
ネバル「えぇっ…!?」
高官1「ど、どういう事だ!?」ガタッ
ザワザワ ザワザワ
政務官「巡礼での深い痛手が効いてきたな…。
他国の役人が集う場での大失態もそうだが…早い段階で信頼を取り戻せなかった事が大きい」
政務官「国力低下の煽りは何よりホビットとの和解だろう。
それが民をひどく混乱させ、伝承の偽りも広めさせ、国内外の糾弾と警戒を加速させた」
政務官「そして決定的なのは…国王が子供だという事実」
ジロジロ ヒソヒソ
ヒメ「……!」ググッ
527: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 22:55:41 ID:UavECGF.sw
政務官「こうなる前に同盟国との繋がりを強くし、西の国が入り込む隙間を埋めるつもりだったんだが…ハッキリと認識されてしまった」
政務官「手詰まりになり、野蛮な国と共闘しようと企む王国…。
そして王国を足掛かりに各国との友好関係を築こうとしている西の国…どちらを取るかは明白だ?」
政務官「このままでは…同盟の中にいながら王国は孤立化してしまうだろう」
ネバル「あ、あの!なんでリルラ様は警戒されるって知ってて西の国と貿易したです?」
政務官「…同盟国に警戒される以上に西の国は危険だからだ」
ネバル「? で、でも武器の製造や軍の強化、日常的な紛争はあっても国同士の戦争は未だにないですよ?」
政務官「前皇帝の方針が常に戦争を意識したものだった」
ネバル「ぜ、前皇帝って…もう死んだんじゃ…?」
政務官「あぁ、だがファルージャに仕える配下は前皇帝時代の人間ばかりだ。
その意識は色濃く反映していると見ていいだろう」
政務官「更に言えば…ファルージャ自身が前皇帝を凌駕する極めて危険な人物だ?何をするか読めないだけに恐ろしい?」
ネバル「そ、それじゃ…万が一もありえたっていう…?」ブルッ
政務官「…」コクリ
ネバル「ひっ…!」
政務官「…巡礼での一件から間もないあの頃では西の国と揉めようと同盟国は素知らぬ顔をしただろう」
政務官「唯一の救いは西の国にファルージャが君臨してから国外への視野を狭め、情勢を把握していなかった事だ。
なので、こちらの弱味を握られる前に同盟国と利害を含む信頼を築き、牽制出来るまでに備えたかったが…残念だ」
ネバル「……どうして急に事情が漏れたです?」
政務官「ふん…西の国の役人を招いたパーティーで口の軽い上流層の人間が漏らしたんだろう?」
高官1「…せ、政務官、もしかして我々は…とんでもない危機に陥っているのでは?」
政務官「あぁ、早ければ半年内にも西の国の兵が侵攻してくる可能性が高い」
高官's「!?」ギョギョッ
ネバル「な、なんで…うちの国を狙うです?」ビクビク
政務官「……さぁな」
528: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 22:58:42 ID:YvuzyYVhZU
高官1「へ、陛下!さっきから黙ってないでなんとか言ったらどうなんです!?」バンッ
ヒメ「なんとかって…」
高官2「そ、そうだ!貴様が悪いんだぞ!?しきたりを守らずに12歳で即位なんかするから!?」
高官3「お前のせいでナメられて国々に愛想尽かされたんだ!?」
高官4「さんざん偉そうに説教してくれたな!ガキの分際で!?」
高官5「この責任はどう取るんだ!?えぇ!?」バンッ
ヒメ「…な、なんだよ、それ?余がわる…」
高官6「何が"余"だ、えらっそうに!?前国王のマネか!?」
高官7「そういえば奴も無能だったな!やはり血は争えないか!?」
高官8「無能な王族が口出しするからおかしくなった!ホビットなんか差別させておけば良かったのだ!?」
ヒメ「ふ、ふざっ……」ガタッ
ジロジロ ジロジロ
ヒメ「!?」
ヒメ「(な、なんだよ…その目は?おまえたちの方がよっぽど怠けてたじゃないか…?)」プルプル
ヒメ「(僕は…僕は父上の無念を…あいつとの約束を……みんなが素敵だって言ってくれた国を作りたくて……)」
529: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/27(金) 23:00:27 ID:YvuzyYVhZU
ギャーギャー ギャーギャー
ヒメ「おまえら……なんなん…だよ…」ジワァ
ネバル「ちょ、ちょちょちょ!おかしい!陛下悪くないです!」アワアワ
政務官「…無礼者!!」
高官's「」ビクッ
ヒメ「……?」チラッ
ネバル「り、リルラ様…!」
政務官「貴様らに陛下を責める資格などないわっ!無能役人共が!?」
高官's「……!」
政務官「陛下の唱える政策は理に敵っていて決して実現不可能な物ではなかった!これは貴様らの遅すぎる対応が招いた事態だ!?」
シーン
ヒメ「…退席、する」フラッ
ネバル「陛下!?」
ヒメ「」フラッフラッ ガチャッ
バタンッ
ネバル「……!」ダッ
政務官「追わなくていい!!」
ネバル「」ビクッ
政務官「私が行く。お前たちはこれからの対応策を協議しておけ?」
ネバル「は、はぁ…」
高官's「……」
530: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:00:28 ID:bKCYR0A6ec
―――王室―――
コンコン コンコン
ヒメ「…入るな、どっか行け」
政務官「失礼」ガチャッ
ヒメ「…入るなって言っただろ」ジロッ
政務官「会議を途中で投げ出してしまわれるとは貴方らしくもない?国王としてあるまじき行為ですな?」
ヒメ「…頼りない国王で悪かったな?」ムスッ
政務官「急を要する事態です。休む暇などございませんぞ?」
ヒメ「ふん…」
政務官「…北を筆頭に我が国への警戒を強めていた3国は…もはやどうにもなりません。中立を貫いてきた南の国も傾きかけています…」
ヒメ「…四面楚歌だな。もうおしまいか」
政務官「…そう思われますか?」
ヒメ「西の国が仕掛けてきた場合、食い止められるだけの交渉材料、もしくは王国の武力で勝てる見込みは?」
政務官「ございません」キッパリ
ヒメ「…それなら余計な血を流すより、早めに降伏した方がいいかもな」
政務官「そうなると国王である貴方の命は、まず無いでしょうな…」
ヒメ「…どうだっていいさ。誰も国王になんか興味ないし、また別の誰かが仕切るだけだ」
政務官「私個人の考えでは…この国の王は貴方以外にいないと」
ヒメ「同じだよ。誰でも?」
政務官「国王ともあろうお方がずいぶんと弱気ですな?」
ヒメ「一人で頑張ってもダメなんだ」
政務官「は?」
ヒメ「国王がいくら張り切っても役人達が渋るとダメになる…。国王と役人の目標が一致しても民に行き渡らないと意味がない」
政務官「国とはそういう物だと存じておられたのでは?」
ヒメ「ハハハ…そうだな。そんな大きな物…僕が背負っていける訳がなかったんだ…」フゥッ
政務官「これは重症だ…?」ヤレヤレ
531: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:05:33 ID:51.WaVWWTg
政務官「よいですか、陛下?国を背負うのは…その国に住まう皆でございます?」
ヒメ「そりゃそうだけど、理想論だよ…。実際は足の引っ張り合いで追い詰められてるじゃないか…?」
政務官「先ほどは無能と称しましたが…彼らも役人としての責務を全うしようと心掛けております」
ヒメ「……どうだか」
政務官「着実に変化しているのは確かです。決算を確認してみましたが…」カサッ
政務官「以前より無駄な出資や記載漏れが減り、金の流れが分かりやすくなっている?
役人達も真剣に取り組んでいると見て間違いないでしょう」
ヒメ「っ…!」キュッ
政務官「お一人で励んでおられるというのは…少々驕りが見えますな?」
ヒメ「じゃあ…どうすればいいんだ!一丸になって取り組んでも結果がこれじゃ…!?」
政務官「確かに不利な状況を押し切るには…今の王国では地力が弱いようです?」
ヒメ「…そもそもファルージャがそこまでして狙ってる物はなんなんだ?この国にそんな物があるのか!?」
政務官「……」
ヒメ「おまえ…本当に何も知らないのか?直接、交渉してきたんだろ…!?」
政務官「…未だに狙いは読めません。それに…知ったところで現状は変えられないでしょう?」
ヒメ「っ…あの国の事もよく調べた!でも恨まれるような節はないし衝突する理由もないじゃないか!」
政務官「それだけに企みが読めないと先ほどから申し上げておりますが?」
ヒメ「なんだよ、それ…!じゃあ交渉も何もないじゃないか…!?」
政務官「そのようです。なので交渉は諦め、同盟を強めようと尽力してまいりました」
ヒメ「だから…それが出来なかったんだろ!交渉も無意味で同盟も断たれたら一溜まりも……」
政務官「まだ手はございます」
ヒメ「なっ…なんだよ、手って!?」
532: 名無しさん@読者の声:2015/3/8(日) 21:08:45 ID:OGBUeoyU8o
政略結婚?
533: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:10:32 ID:51.WaVWWTg
政務官「さるお方より、こちらをお渡しするよう仰せつかってまいりました」カサッ
ヒメ「な、なんだ…その手紙?誰から受け取ったんだ?」
政務官「ご確認ください」スッ
ヒメ「……?」パシッ
『親愛なる王国第9代国王ヒメ陛下へ〜〜ますますの御盛栄お慶び申し上げます〜〜』
ヒメ「こういうのっていちいちめんどくさいんだよな…。飛ばして読もう」カサッ
『つきましてはヒメ陛下を招待し、世界初となる少年王誕生を祝して盛大なるパレード及びパーティーを催させていただきたく存じます。詳細は同封のプログラムをご確認下さい』
ヒメ「……まさかこれ」
政務官「はっ…東の国王より預かりました招待状にございます」
ヒメ「危険じゃないか…?」
政務官「と、申されますと?」
ヒメ「どうせ東の国も他の同盟国と一緒で西の国と貿易するんだろ?
警戒されてる王国に進んで取り入れば疑惑を向けられて自分の首を締めるハメになるはずだ?」
政務官「東の国は西の国の誘いを断っておられます」
ヒメ「えっ」
政務官「暗殺や謀略の影は見られません。この誘いを断る手はないかと」
ヒメ「…なんで危険を犯してまで僕にこだわるんだ?やっぱり頭おかしいんじゃないのか?」
政務官「大臣もそうでしたが…権力者という者は大概が底の知れぬ変態です?(※偏見)」フッ
ヒメ「自国の治世より自分の趣味かよ…。そんな奴に頼りたくないなぁ…」ドンビキ
534: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:19:08 ID:51.WaVWWTg
政務官「なんにしろ我々が取り入るとしたら東の国以外にはないという事になりますな」ヘッ
ヒメ「ま、まぁ願ってもない話だけどさ…」
政務官「…色々と要求されるでしょうが」ボソッ
ヒメ「!?」
政務官「どうかご辛抱くださいますよう…?国の一大事ですからな?」
ヒメ「う、うぅ……」ウルウル
政務官「落ち込まなくとも?このような逆境において一筋の幸運に恵まれたのは貴方様が即位なされたからですぞ?」
ヒメ「くっ…慰めのつもりか?さっきはさんざん役人たちを煽っておいて?」キッ
政務官「なにぶん陛下には経験が欠けておられますのでな?
彼らを出汁に器の程を確かめさせていただきました?」
ヒメ「イヤな奴だな…!それもアントリア仕込みのやり方か?」
政務官「ふっ…あの程度で絶望してしまわれるようでは先が思いやられますぞ?」
ヒメ「分かってるよ!こうなったら…もうなりふり構ってられるか!」
政務官「その意気にございます?」
政務官「……」
政務官「(ある意味、最も避けたい選択肢ではあったが…しかたあるまい)」
政務官「(幼い陛下は気付いておられないが…まさか一国の王が身売りするほどに追い込まれるとはな)」ハァッ
ヒメ「なんとしても東の国王を味方に付けて…ファルージャの思惑を打ち砕いてやる!」
政務官「(おいたわしいが…これもまた繁栄の軌跡だ。ここを越えていただくしかないな)」
535: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:24:38 ID:51.WaVWWTg
―――西の領土(畔上の道)―――
母「……ふぅ」クタァ
カロル「お母さま、お母さま?おたまじゃくしが泳いでるよ!」ピチョピチョ
母「えぇ、可愛いわね?」ニコッ
マルク「くぅ〜…!」ジュルリ
カロル「食べちゃダメ?」ジッ
マルク「あふんっ…」ジーッ
カロル「」ツンッ ピチョピチョ
チャプチャプ チャプチャプ
カロル「あはは!指先に集まってる?気になるのかな?」ピチョ
マルク「クゥン…」グゥー
カロル「お腹鳴ってるよ?」クスッ
母「平地ばかり歩いてきたから、まともに食べれてないものね?何か食べさせてあげたいけど人里には……」
ダダダッ
母「……?」クルッ
百姓「お、おめーら!おらの田んぼで何してるだ!?」ダダダッ
母「」ビクッ
百姓「ウオオオオ!!!」ブンッ
カロル「え?……わぁっ!?」ズサァッ
母「きゃあっ!?」サッ
ガスッ
536: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:26:21 ID:51.WaVWWTg
百姓「ちぃっ!外したっぺな!」ズボッ
母「い、いきなり何するんですか!?鍬なんか振り回したら危ないじゃない!?」ビクビク
マルク「ワンッわぅんっ!」プンスカ
百姓「うるせぇ!?小汚ないホビットが田んぼさ荒らすからだっぺ!?」
カロル「ぼ、ボクたち、ここで休んでただけだよ?荒らしたりしない…です?」ビクビク
百姓「嘘こくでねぇ!?村はずれの田んぼやら畑さ狙うホビットが増えてるって聞いたんだ!様子見に来て正解だったべ!」
カロル「……」シュン
百姓「どっか行け!消えちまわねぇと本当にぶっ殺すだぞ!?」バッ
母「…行きましょ、坊や」スクッ
カロル「はーい…」スクッ
マルク「わぅぅ…」グゥー
537: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:28:00 ID:bKCYR0A6ec
母「どこに行っても同じね…。なぜだか人里に入れてもらえない…」トボトボ
カロル「うん…。昔に戻っちゃったみたい」トボトボ
マルク「」グゥー
カロル「……あっ!あっちに原っぱがあるよ!」ビッ
母「この辺りは田んぼ道になってたから、もしかしたらあの原っぱに水源があるのかもしれないわ?」
カロル「……原っぱにお水があるの?」キョトン
母「たぶんね?普通は川の水を通したりするんでしょうけど近場にない場合もあるから、そういう時は管を通して湧き水を引っ張ってくるの?
この辺は川がないからひょっとしたら、そうしてるんじゃないかしら?」
カロル「へー!お母さますごーい!なんでも知ってるんだね!」パァァ
母「ふふーん!お母さんだって伊達に40年生きてないもの?坊やの知らない事もいっぱい経験してるのよ?」フフン
カロル「そうなんだー…!」キラキラ
母「うふふ!分からない事があったら、なんでもあたしに聞きなさい?」
カロル「うん!」キラキラ
マルク「あんっ!あんっ!」タタタッ
カロル「あぁっ!ずるい!ボクだって喉カラカラなんだからね!」タタタッ
母「ふふ?もう…せっかちな子たちね?」タッタッ
538: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:30:07 ID:bKCYR0A6ec
―――草藪の池―――
マルク「」パシャパシャ
カロル「んっ…」チャプッ ズズズ
母「はぁ…おいし?」ゴクッ
カロル「お水があってよかったね?」
母「えぇ、あのまま歩き続けてたら、いつか干からびちゃうわ?入れ物もあったら、もっとよかったけど…」
カロル「…海に飛び込んだ時にぜんぶ流されちゃったもんね」
母「ああしなきゃ逃げられなかったんだからしょうがないわよ?」ナデリ
カロル「牧場のおじさまにもらったミルクの瓶があったら…お水持っていけたのになぁ」シュン
母「…それはちょっぴりもったいなかったかも」ガクッ
マルク「」クンクン
母「あら、何か見つけたの?」
マルク「」ハッハッ
母「あぁ、それはシラナ草よ?害はないから食べても平気だけど水洗いして土を払っておきましょうか」ブチッ
カロル「なんでシラナ草って言うの?」
母「どこにでも生えてるから誰でも一度は目にしてるけど、意外と広く知られてないからシラナ草(そう)って言うのよ?」ジャブジャブ
カロル「えー!ヘンなの?」クスクス
母「あたしも夫に教えてもらうまで、よく知らなかったんだけど…聞いてみると面白い名前よね?」クスクス
マルク「あぅぅん…」モジモジ
母「はいはい?キレイにしたから大丈夫よ?召し上がれ?」スッ
マルク「あんっ!」パクンッ ムシャムシャ
母「うふふ?普段は草なんて食べないのに…よっぽどお腹が空いてたのね?」
カロル「1日ぶりのごはんだもん?お腹ペコペコだよね?」ナデリ
マルク「あんっ!」ペロリ
ガサガサ
母「!?」ピクッ
539: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:33:34 ID:51.WaVWWTg
旅のホビット1「同族だぞ!」ガサッ
ガサガサ
旅のホビット2「ホントに?」
旅のホビット3「」ヒョコッ
カロル「……?」キョトン
母「ま、まぁ…?」ビックリ
マルク「」ゴクゴク
旅のホビット1「あ、ごめんなさい。挨拶もしないで…分かると思うけど僕達もホビットです?」
カロル「はじめまして!カロルって言います!」ニコッ
母「母親のマリーです。あなた方もお水を?」
旅のホビット1「あ、ご丁寧にどうも…そうなんですよ。休憩がてら飲み水を補給したくて?」
旅のホビット2「まさか同族がいるなんて思わなかったよ?」
母「ふふ、そうですね。あたし達もびっくりしました?」ニコッ
旅のホビット1「よかったですよ…。また人間に出くわしたらどうしようかとヒヤヒヤして…」ホッ
母「人間がどうかなさったんですか?」
旅のホビット1「へ?」
旅のホビット2「おたくらも追い出されたんじゃないの?」
母「追い出された?うーん…まぁそうなるのかしら?」
旅のホビット1「やっぱり……」
旅のホビット2「大変だね?親子二人で野ざらしなんて…」
母「いえいえ、意外と慣れてるんです。こういうの?」
旅のホビット1「へぇ…見かけよりたくましいんですね」
旅のホビット2「あ、とりあえず水分けてもらっていい?」
母「どうぞ、どうぞ?元々あたし達の物でもないですから?」ニコニコ
540: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:38:46 ID:bKCYR0A6ec
旅のホビット2「ありがとね。じゃあちょっと失礼するよ」チャプッ
カロル「あっ!入れ物だ?」
旅のホビット1「? ウッドボトルがどうかしたのかい?」
母「実はあたし達…水を見つけたはいいんですけど入れ物を持ってなくて?」
カロル「どうしようって話してたんだよね?」
旅のホビット2「へー…じゃあ一つあげるよ?旅するのに飲み水がないと困るだろうし?」スッ
母「いいんですか!?」パァァ
旅のホビット2「うん。いいよな?」
旅のホビット1「もちろん?先客はそっちだし、ボトルのストックはあるから遠慮しないでください?」
母「催促しちゃったみたいですみません…」パシッ
カロル「ありがとうございます!」
旅のホビット2「いいよ、いいよ!困った時はお互い様だから?」
カロル「親切な仲間に会えてよかったね!お母さま!」ニコニコ
母「えぇ、ホントに助かったわ?」ニコニコ
旅のホビット1「い、いやぁ?」テレッ
旅のホビット2「それほどでも?」テレテレ
541: ◆WEmWDvOgzo:2015/3/8(日) 21:41:59 ID:bKCYR0A6ec
旅のホビット3「」シュン
カロル「? どうしたの?」
旅のホビット3「」ビクッ
旅のホビット2「あぁ、大丈夫、大丈夫。その子はちょっと臆病でさ?
追い出された時の事がトラウマになってるみたいなんだ?」
母「そうでしょうね…。あんなに乱暴な事をされたら怖くもなるでしょう?」
旅のホビット1「そうですよ…。最初はニコニコして迎えてくれたのに…急に豹変して」
旅のホビット2「…しょうがないよ。あんな事が起きちゃったら、そりゃ?」
母「あんな事って…何かあったんですか?」
旅のホビット1「え?知らないんですか?」
母「す、すみません。そういうのに疎くて…」
旅のホビット2「謝ることないけどさ。最近、大勢のホビットが人里を襲ったんだ?」
カロル&母「えぇっ!?」ビックリ
旅のホビット1「ひどいものだったと聞いてますよ。
一斉に矢を飛ばして町の住人たちを混乱させて…なだれ込んだホビットが石槍やこん棒で無抵抗の人々を執拗に攻撃したんですって?」
カロル「ど、どうして?」
旅のホビット1「実際に見た訳じゃないから分からないけど…やっぱり遺恨だろうね」
旅のホビット2「うん。正直、こっちだって全部を許した訳じゃないし…」
母「……」
カロル「そんなの…理由にしちゃダメだよ…」
旅のホビット1「……?」
カロル「昔のことを理由にしたら…いつまでも終わらないじゃない。
全部を許せる訳じゃなくても…許せるところを探さなきゃ…」
旅のホビット2「うーん…まぁね」ポリポリ
旅のホビット1「なんだかんだ言いながら僕達も人里でお世話になってましたしね」
旅のホビット3「……」
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