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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


446: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 20:55:49 ID:WAMP9I3Be6
グツグツ コトコト

族長の妻「(…あんなに恐ろしい病を一瞬で治す力なんてどこにもない。
お二人は旅立つと言ってたけど出来れば、ここに残ってほしいわ)」

族長の妻「(夫は異常にアピシナ様の昔話を不安視しているけど悪用しなければ平気よ?
集落の住民達もケガや病に怯えずに済むし、良いことしかないじゃない?)」

族長の妻「(なんとか引き留めなくちゃ…とりあえず娘の式に参加してもらいたいから、もうしばらく滞在するようにって頼んでみましょ)」

族長の妻「夕食に招待して話そうかね。
今夜はとびきり美味しい料理で二人をもてなさなきゃ!」テキパキ

コンコンッ コンコンッ

族長の妻「どなた?橋の件なら、さっき聞いたわよ?」テキパキ

「カロルはいるかい?」

族長の妻「カロルちゃん達なら今は下のお宿で荷造りしてるわよー?」テキパキ

「あ、そう」

スタスタ スタスタ……

族長の妻「……ん?今の誰?」クルッ

タッタッ ガチャッ

シーン

族長の妻「誰も…いない?」

族長の妻「気のせい…なのかねぇ?」

グツグツ プシュー

族長の妻「あ!?お鍋が煮えちゃう!?」タッタッ
447: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 20:58:36 ID:WAMP9I3Be6
―――渓谷の温泉宿―――

カロル「お母さま!荷造り終わったよ?」

母「ふふ、大きい物もないし持っていく数も少ないから楽チンよね?」パッパッ

カロル「族長さま達に挨拶したら、またイカダで送ってくれるんだよね?」

母「えぇ。そう言ってたわね…。はぁ…酔わないか心配…」

カロル「ボクは楽しみ!すっごく早くてグラグラして面白かったよ!」

母「そう…。あたしはちょっぴり苦手かも…」

カロル「マルクも楽しみでしょ?」ナデリ

マルク「ワンッワンッ!」シッポフリフリ

母「男の子は好きねぇ、ああいうの…。
それにしても…ここの温泉、すっかり気に入ってたのに…離れるのがもったいなく感じるわ…?」

カロル「また来ようよ?みんなにも教えてあげたら、きっと喜ぶよ?」

母「ふふ…そうね。シヴァさんも少しだけ人間への認識を改めようとなさってるみたいだし今度来る時は坊やのお友達も連れてこれるかも?」

カロル「うん!みんなで入ったら、もっと楽しいよね?」

母「あ、でも泳いじゃダメよ?
あの時は真夜中で他に誰もいなかったから良かったけど…本当はお風呂で泳ぐのは行儀が悪いのよ?」

カロル「そ、そうだったの?」アセアセ

母「それにもしかしたら犬を入れるのも禁止だったでしょうし…」

カロル「え?マルクは入っちゃダメなの?」

マルク「ワゥンッ!?」ガーン

母「えぇ、たぶんね?今度来た時は普通に入りましょう?」ニコッ

カロル「はーい!」

マルク「クゥン……」シクシク
448: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:00:14 ID:M97GWVJjkM
コンコンッ コンコンッ

母「あ、はーい?」

ガララッ

番頭「」ヨロッ

母「あら、番頭さ……え?」ビクッ

カロル「っ…!?」

マルク「ワンッ!?」

番頭「」バタッ

カロル「わ、わわっ!?だいじょうぶ!?」バッ

母「こ、これって娘さんと同じ…!?」

マルク「わふっ!?」ツーン

フワッ

番頭「……あ、あれ?うちは何を…?」ムクッ

カロル「よ、よかった」ホッ

マルク「ブルルルルっ!!」ブルンブルンッ

母「…マルク?」

マルク「ウゥゥゥ……」ツーン

カロル「イヤな匂いがするの…?」

マルク「」コクコクッ

番頭「」ハッ

番頭「に、逃げてください!?」アタフタ

母「な、なにがあったんですの?」オロオロ

番頭「は、早く!?またあいつが……」

母「あいつ…?」キョトン
449: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:03:05 ID:M97GWVJjkM
シュコォォォウ

番頭「あ、あぐぅ…ま、また…!」クラッ

母「っ…な、なんなの?急に……体が重く…!?」ググッ

マルク「わ…ぅぅん!」ググッ

カロル「へ?みんなどうかしたの?」オロオロ

番頭「は…やく……に………げ…………」バタッ

母「わ…からない…。なに…が……っ」バタッ

マルク「くぅ……」ズシンッ

カロル「!?」ギョギョッ

カロル「お、お母さま!マルク?番頭さんっ!?」バッ

タンッタンッ

カロル「」ビクッ

魔導師「んふふ…見ぃつけた?」ニギニギ

カロル「お、お面した…布のおばけさん?」キョトン

魔導師「なんでもいいじゃないの?名称に価値はないさね?」クックッ

カロル「……!お母さまたちになにしたの!?」キッ

魔導師「教えてあげるから耳を貸してごらん?」チョイチョイ

カロル「え?は、はい…?」スッ

魔導師「」グワシッ

カロル「わっ…!?うむっ!?あぐっ!?」ジタバタ

魔導師「」グッグッ

カロル「うっ…えっ!ぇほっ!ぇほっ!」ウルッ

カロル「(の、喉に指が入って…き、きもちわるい!?)」オエッ

魔導師「んふふ…どうかなぁ?これでも?これでも?」グッグッ

カロル「うっ…あ…!?ぅぅん!!」カジッ

魔導師「んぅっ!?いたっ!?いたたたた!?」ズボッ
450: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:07:17 ID:M97GWVJjkM
カロル「げはっ!はぁっ…あ…はぁっ!」ゲホゲホ

魔導師「…おやまぁ、本物だねぇ。あーイタタイタイ?」ヒリヒリ

カロル「なに…するのさっ!?」キッ

魔導師「効かないよねぇ…?うん、効いてない?」ジロジロ

カロル「……!?」

魔導師「自他両方に及ぶなんて自由自在だなぁ…。これが癒しの力」ジーッ

カロル「なっ…なんで知ってるの!?」

魔導師「欲しいなぁ…。紛い物じゃない…本物の力が……」ズイッ

カロル「やっ…来ないで!?」ズザッ

魔導師「…さてさて、さてさて、さてさてと。出直そうかね」クルッ

カロル「え…?」

魔導師「腕力には自信がないもんでね。呪術が通用しないんじゃ相手がホビットの子供とはいえ、祖国まで持ってけそうにない…。
こんな事ならシャルウィンも協力させれば良かった…。あぁ…また陛下をガッカリさせてしまうなぁ…」スタスタ

カロル「ま、待ってよ!なんでボクを狙うの!?王国の人間なの!?」

魔導師「……」

カロル「や、やっぱり永遠の命が…欲しいから?」オソルオソル

魔導師「永遠の命…ねぇ」ボソッ

カロル「あれ…?ちがうの?」

魔導師「自分はなんでもいいんだよねぇ…。特別でさえあれば……。
そしてあの方もまた特別な存在になりたがってる」

魔導師「この手で叶えてあげたいのさ。愛する人の願いを」

カロル「?」

魔導師「さよなら、特別なお坊ちゃん?次は血腥い失楽園で会えるかもねぇ?」スタスタ

カロル「あぁっ!待ってよ!?」ダッ

ウゥゥ〜 ウゥゥ〜

カロル「」ハッ

カロル「お、お母さまたちを癒さなきゃ!」ピトッ
451: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:09:51 ID:M97GWVJjkM
〜〜〜回想(パカラゥロ)〜〜〜

グワシッ……ジタバタ……

西の民1「う……ぶ…ブバァッ!?」バシャッ

魔術師1「ふ、ふははは!ついに…ついに完成したぞ!我らの手でなし得たのだ!究極の禁術を…!!」

魔術師2「お、おぉ…!これこそまさしく…!」

魔術師3「アーッハッハ!!見たか!?実験台が血溜まりを残して干からびた!?」

魔術師4「これならば陛下にもお喜びいただけよう!終わらない争いの雪辱も晴らせるというものだ!!」

魔術師1「あぁ…この魔溶液は長年、研究を積み重ねて得た黒魔術の結晶だ…」ニギッ

魔術師2「ククク!機は熟した…!すぐに御披露目しよう!パカラゥロ!!」

奴隷「はい……」スッ

魔術師2「一つ大役が出来たな?」

奴隷「はぁ……」

魔術師1「うむ!陛下に御披露目する場ではお前が術を披露するのだ!」

奴隷「なぜ…自分が?」

魔術師1「なぜか…だと?」ガシッ

バサッ
452: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:11:25 ID:M97GWVJjkM
奴隷「……」ズゥゥン

魔術師1「この腕はなんだ?皮膚は醜く爛れ、魔溶液の後遺症で青く変色し、手の甲には無数の噛み痕が刻まれている?」

魔術師3「ぶふっ!いつ見ても気持ちわりーなぁ?」ニタニタ

魔術師4「どうやったらそんな気味悪くなんだよ?」

奴隷「……」サッ

魔術師1「お前は我らの生み出した黒魔術を解き放つ為の媒体だ?
他の奴隷は術を体に埋め込むのに耐えきれず、ことごとく死んでいったが…お前だけはこうして生き延びている?」

奴隷「……」

魔術師1「そしてついには究極の魔術さえも会得した…。
その術を陛下の前で披露出来るとは…これ以上ない栄誉だ!奴隷の身でありながらなんという幸運か!?」

奴隷「幸運……ねぇ」ボソッ

奴隷「(黒魔術の研究だとかで無理やり連れてこられて、どれだけ経ったか…)」

奴隷「(月日も数えられないくらい…心も身体もボロボロだ)」

魔術師1「どうした!?浮かない様子だな?」

魔術師2「緊張してるんだな?奴隷の分際で陛下に謁見が叶うとはとんだ幸福者よ!」

アハハハハッ ギャーッハッハッハ!!

奴隷「(これが幸運だってんなら…どこにも希望なんか落ちちゃないのかね)」
453: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:15:52 ID:WAMP9I3Be6
――――――

西の民2「う……ぐっ!ぐはぁっ!?」ブバァッ

バシャッ

奴隷「……」ビシャビシャ

オオオオオオオオオオオオ!!!

魔術師1「ふはは!どうですご覧になりましたか!?これぞ我らが練りに練った研究を重ね得た究極の魔術にございます!!」

側近「おぉ!?なんと!?その者が触れた途端に男が大量の血を噴き出して息絶えたぞ!?」

魔術師1「クックック……陛下の感想を伺いたく存じます」

皇帝「……これぞ余の求めてきた術、その物じゃ」

魔術師1「」ニタァァ

皇帝「グフ…グフフ…!我らを嘲り、平和などとのたまう憎き国々に血ヘドを吐かせ、余の前に跪かせてやろう…!」

将軍「その術を広範囲に渡らせたりは出来ぬか?
単体への効能は申し分ないが直接触れねばならぬという条件ではいささか使い道に困るぞ?」

魔術師1「それも問題なく…密閉された空間内…例えるなら、この王宮程度の範囲であれば丸々虐殺可能でございます?
その上、術者が不在になっても術自体の効果はしばらく留まり、瘴気を浴びた者は同様の効果を受けて死にます?」

将軍「……ではわざわざ敵を密閉された空間内に誘き寄せなければならぬのか?」

魔術師1「そうなりますな…。巻き込まれる可能性もありますので」

将軍「…あまり実用的ではないな」ウーン

皇帝「どうにかならんのか?魔術師よ?」

魔術師1「うっ…」

参謀「発言させていただいてもよろしいでしょうか?」

皇帝「…この者は?」

将軍「はっ!我が軍の参謀であります!軍略における指揮の全権をこの者に与えておりまして…我輩程ではありませぬが、そこそこの切れ者にございます!」

皇帝「…発言を許す」

参謀「はっ!」ザッ
454: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:20:56 ID:M97GWVJjkM
参謀「この魔術なる特異な力は主に屋外での作戦を基盤とする戦場において利用価値は無いに等しいでしょう」

皇帝「ふむ…」

魔術師1「くっ…!」

参謀「しかし…見方を変えればとても実用性に優れた利用法がある」

将軍「ほう、お主ならどのように使うと?」

参謀「兵ではなく…刺客として敵の内部に送り込みます」

皇帝「……?」

参謀「貿易でも友好を図る会食でも適当なイチャモンを付けるでもいい。
なんらかの理由を付けて話し合いの場を設け、各国の最高責任者を引っ張り出すのです…」

将軍「……で?なんとする?」

参謀「その場で広範囲に魔術を展開させ、事故に見せかけて殺害させます」

皇帝「グフフ!それはいい!目の前で奴らの苦しみ喘ぐ無様な姿を眺められる訳じゃな?」

側近「そう易々と成せるのでしょうか?」

参謀「我が国が他国に警戒視されているのは否めない…。
しかしこちらから出向くのであれば相手も多少の油断を見せるでしょう」

参謀「たとえばその媒体を会議の場に送り込んで敵の王をまとめて刈り取れば…各国はそれぞれ混乱に陥り、統制が効かなくなる。
そこで初めて……将軍閣下率いる軍の出番です?」

将軍「我輩が混乱に乗じて一気に叩き潰すのだな?」

参謀「やはり分かっておられますね?」クスッ

将軍「ヌハハハハ!!我輩を誰だと思っている!?」

皇帝「グフフ!貴様、名は?」

参謀「ピクスィです。以後お見知りおきを」ペコッ

皇帝「フッフッ…覚えておこう?」ニヤリ
455: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:23:32 ID:M97GWVJjkM
将軍「」ハッ

参謀「」クスッ

将軍「(こ、このガキぃ…!これを機に我輩を出し抜こうと…!)」

参謀「ご心配なく」ボソッ

将軍「……!?」

参謀「僕は貴方の駒の一つ…この命が尽きない限り、盤上からはみ出る事はございません…?」ボソボソ

将軍「」ニヤリ

参謀「(バカは扱いやすくて助かる…。将軍閣下も…この皇帝という鎧を纏った愚か者も…所詮はただの人)」

参謀「(この作戦には大きな穴がある。それは……各国の王が集う場に陛下も含まれている事だ)」

参謀「(なるべく最善の策を用意し、表向きは陛下の安全を磐石に固める…。その上で起こる悲劇は……不慮の事故としか言いようがない)」

参謀「(軍の指揮系統を握っているのは僕だ。統制機関は恙無く進行出来る。けれど…こいつらは陛下の死に混乱するだろう)」

参謀「(その最中で諸国を殲滅し、功績を上げたとなれば…僕は国の英雄だ。誰にも疑われず西の国の頂点に君臨出来る)」

参謀「(つまり……列国の脅威も無くなり、必然的に世界を牛耳れる。僕がこの世界を支配するんだ)」

皇帝「よぉし…早速、その方向で取りかかれ」

参謀「お待ちを」

皇帝「なんだ?」

参謀「僕が申し上げた作戦はあくまで不安要素を除いた理想的な展開にございます。この段階ではまだまだ準備が必要かと」

皇帝「……?」

参謀「その媒体は他に作れないのか?」

魔術師1「は、はっ!いずれは民間人の3割に仕込ませ、媒体の大量生産も視野に入れております!」

参謀「そうか。ではその術を広範囲に展開した場合、効果を防ぐ方法は?」

魔術師1「ご安心を…もしもの時は我らの作った"防術の仮面"を装着していただけば…」スッ

参謀「(やっぱりな…)」

魔術師1「なにか?」

参謀「いや、問題ない」コホンッ
456: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:32:35 ID:M97GWVJjkM
参謀「(黒魔術だとか神秘性を持たせて特異な力に仕立て上げてるが、要は毒薬の精製か……。
原理は不明だが手ぶらで猛毒を放てる媒体を作っているだけだ)」

参謀「(媒体の数に限りがあるのは数え切れない失敗例があるから…というよりたまたま成功したんだろうな。
もし作戦を実行に移すとなれば1体じゃ心許ないな)」

参謀「(何も持たせず毒を放出させられる人間兵器……応用次第でどうにでも扱えそうだが二度は使えない手だけに慎重に策を練らないと)」

皇帝「グフフ!先が見えたな!なんと素晴らしい日か!者共よ!パレードを行うぞ!すぐさま用意させろ!」

側近「ははぁっ!」

将軍「(ムフフ…暗殺はあくまで通過点に過ぎぬ。決め手となるは我輩の軍による敵国の殲滅よ!
これで一つ、我輩の武勇に箔が付き、忌まわしき過去を清算出来るぞ!)」ニィィッ

魔術師1「(ふ…ふ…ふ…!作戦が成功すれば我らに充てられる研究資金が跳ね上がるぞ!
それに他国の領地を一部、壌土されるかもしれん!ウッハウハだ!)」ワクワク

参謀「(踊らされろ、バカ共め。僕の創る新たな世界にお前達の出る幕はないよ)」クスッ

奴隷「(何を話してるんだかさっぱり分からないけど…一つだけ確かな事がある)」

奴隷「(たぶん自分は死ぬ。そしてこいつらは笑う)」

奴隷「(…いっそ死んじゃおうか。もうたくさんだ)」

奴隷「(………こんな考え、何回も繰り返した。でも結局、踏みとどまってしまう)」

奴隷「(怖いのもあるけど…期待してしまうんだ)」

奴隷「(もしかしたら…もう少し…あと少し頑張れば…何か良い事があるんじゃないかって)」

奴隷「(きっと何もない所に向かってるんだろうけど……)」
457: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:38:55 ID:WAMP9I3Be6
――――――

カツンカツン カツンカツン

西の衛兵1「ふぁ、ふぁふぁ…!?なぜこのような場所に!?」

???「どこに来ようと妾の勝手じゃ?」

西の衛兵2「し、しかし…ここは牢獄ですぞ!?貴方様が来るような場所では…!?」

ウオオオオオ!!

西の罪人1「久々に生の女を見たが…どえらいべっぴんさんじゃねーか!?」ガシャッ

西の罪人2「はぁ…はぁ…ヤベェ!おいら興奮してきちゃった!」ヌギヌギ

西の罪人3「ウオオー!!ヤらせろー!!いっぺんでいいからヤらせやがれー!?」ガシャガシャッ

西の衛兵1「お、おい!騒ぐな!罪人共!?」ガンッ

西の衛兵2「処刑前に串刺しにされたいか!?」

???「フゥ〜?これはまた精の強そうな?クスス…悪くはないぞ。でも…今はお預け?」クスッ

???「パカラゥロなる奴隷はおるかえ?」

西の衛兵1「はぁ!?」

西の衛兵2「ぱ、パカラゥロでしたら…!?」チラッ

???「…ほう、最奥の固く閉ざされた独房がそうかえ?」チラッ

西の衛兵2「お、恐れながら…あの者は大変、危険にございます!
常日頃より陛下のそば近くにおわすファルージャ様は…特に関わりを持ってはなりません!」

ファルージャ「クスス!妾が陛下とお近付きになれるのは肌を重ねし夜のみよ…。あの男は身体目当ての薄汚いケダモノじゃ……」

西の衛兵1「ぶ、無礼な!?」

ファルージャ「ほう?無礼とな?」

西の衛兵1「この国では発言一つが命取りとなるのはよくご存知の筈…先の失言を側近殿に申し立てさせてもらう!」

ファルージャ「はんっ…?むさい顔に似合わず几帳面なことよ…。じゃが失言をしたのはそなたの方じゃ?」

西の衛兵1「なんだと…宮女と言えば聞こえはいいが…平民上がりの愛人だろうが…!」

カツンカツン カツンカツン

西の衛兵2「ま、また誰か来たぞ!?」
458: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:41:25 ID:M97GWVJjkM
カツンカツン カツンカツン

西の衛兵1「だ、誰だ!ここは勝手に入っていい場所で、は……なっ…!」

西の衛兵2「え?しょ…将軍閣下!?」

ブォンッ

西の衛兵1「ぶっ!?」ボクシャァッ

将軍「お通しせぬか?」ギロッ

西の衛兵2「あ、あぁう…!?」ガチガチ

ファルージャ「」ピトッ

将軍「」ビクッ

ファルージャ「はぁん…?ほんにそなたは頼もしい…?」サスッ

将軍「お、おほっ!ムフフフフフフ…!」デレデレ

ファルージャ「これからもそのたくましき腕を妾の為に振るってたもれ…?」ジッ

将軍「ふぁ、ふぁふぁ…ファルージャ様!わ、わわ…我輩のよ、嫁に……」プルプル

ファルージャ「さぁパカラゥロとやらに会ってみましょうか」カンッカンッ

将軍「は、はっ…!」カンッカンッ

西の衛兵2「な、なぜ閣下が…うっ!チビっちゃった」ジョォォー

西の罪人's「」ブルブル
459: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:43:33 ID:M97GWVJjkM
――――――

奴隷「」ボーッ

ギギィィィィィ……

奴隷「」ビクッ

ファルージャ「フゥ〜…これはまた…なんと形容しがたい醜さか?」ジッ

奴隷「……?」

奴隷「(わぁ……こんなに美しい人…は、初めて見た…)」ポォォッ

ファルージャ「…そなたの眼はとても濁っておるな?」

奴隷「は、はぁ…?」

ファルージャ「汚らわしい肌じゃ。皮が剥がれ落ちて青く変色しておるわ…。
体毛もろくに生えておらぬな。それにしてもたまらぬ…ひどい臭いよな」ジロジロ

ファルージャ「そなたはまことに人間かえ?一体どうしたらそうなるんじゃ?」クスクス

奴隷「……」ズーン

ファルージャ「どれ?触らせてみろ?」ピトッ

奴隷「……!?」

ファルージャ「クスス…怯えることはなかろうて?しかし…見ていて飽きが来ぬな?
醜さと美しさは表裏一体、深く興味をそそるではないか?」スリスリ

奴隷「(な、なんで…自分に触れるんだ?こんなに…醜い自分に…?)」ビクビク

ファルージャ「ふむ…初めての感覚じゃ?なんというか…シナシナしておるな?」スリスリ

奴隷「…あ、あの」オドオド
460: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:51:46 ID:M97GWVJjkM
ファルージャ「ふむ、稀な感触、堪能したぞ。ところでそなた?」パッ

奴隷「え?」

ファルージャ「黒魔術なる面妖な力を使うそうではないか?一度、妾にも見せておくれな?」ニヤリ

奴隷「む、無理…」アセアセ

ファルージャ「……なぜ?」ジロッ

奴隷「使ったら…死ぬから」

ファルージャ「クスス!いらぬ心配じゃ?将軍?」

将軍「はっ!拝借して参りましたぞ?」グイッ ブンッ

西の罪人4「あたっ!」ドサッ

奴隷「……だれ?」

ファルージャ「取るに足らぬ命よ。さぁ見せてごらんな?」

西の罪人4「な、なにを…!?」

奴隷「…たしか隅に魔溶液が残ってた」ゴソゴソ

奴隷「(本当はいつでも死ねるように隠れてくすねておいた物だけど…)」パカッ

奴隷「」ゴポッ ピチャッ

ファルージャ「…その液体は?」

奴隷「知らない…」ニギニギ

ファルージャ「…意味があるのかえ?」

奴隷「液体に込められた魔力を…掌に馴染ませてる…って聞いた」ニギニギ

ファルージャ「……ふぅん」

奴隷「こんなもんかな…」スッ
461: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:54:54 ID:M97GWVJjkM
奴隷「」バッ グワシッ

西の罪人4「ひぃっ!?ま、まってく…むがっ!?ぶっ…ふぐむ!!」モガモガ

ジタバタ ジタバタ

西の罪人4「っ……っ……」ガクガク

奴隷「」パッ

西の罪人4「あっ…あっ…ぎ……ぎひぃ!?」ブバァッ

ドバドバ ボチャボチャ

西の罪人4「んっぐ…ぶぇはぁ!………ぐはっ」バシャンッ

ファルージャ「……」ジッ

奴隷「…これが…黒魔術…」

ファルージャ「その力…そなた以外には使えぬのか?」

奴隷「分からない…。増やそうとしてるけど…魔術師たちは失敗ばかりしてる」

ファルージャ「…ほう?」ジッ

奴隷「」ドキンッ

ファルージャ「……そなた、性別は?」

奴隷「……わ、忘れた」プイッ

将軍「囚人服を剥いで確かめますか?」

ファルージャ「必要ない。こやつは女よ」

将軍「は?」

奴隷「」ギクッ
462: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 21:57:41 ID:WAMP9I3Be6
ファルージャ「見た目はもちろん、ろくに栄養も取れておらぬせいか胸は無く、声もしゃがれて判別は付きにくいが……。
先ほどから見掛けや性別を言及される度に見せる微かな恥じらいは女特有のモノ?」

奴隷「だ、だったら…なに?」ジロッ

ファルージャ「無様よな?お前のような化け物にだけはなりとうないわ?」

奴隷「」ピクッ

ファルージャ「それでは女の幸せなど永久に訪れまい?残ったのは己すら理解せぬ液体の染み込んだ薄汚い身体のみよ?」

奴隷「……!」プルプル

将軍「こ、これが女か…!世の中、不思議な事もあるものだ…?」マジマジ

ファルージャ「そなた、そのような身体でよく生きていられるな?
よほど図太いのか…それとも化け物である事に誇りを持っておるのかえ?」

奴隷「だま…れっ…」ギリィッ

ファルージャ「なんじゃ?妾はなにか間違っておるか?」

奴隷「だまれぇっ!?」スクッ

ファルージャ「……」

奴隷「自分だって好き好んでこうなったんじゃないよ!!あいつらにこうさせられたんだ!!」

奴隷「小さい頃…何歳だったかも覚えてない…!
兵に拐われて、ここに連れてこられて…あいつらに訳の分からない液体を浴びせられたり飲まされたりして悶え苦しんでる内に……気付いたら、こうなってたんだ!!」

ファルージャ「クスス…それにしてはそなた…ずいぶんと余裕があるな?」

奴隷「……」

ファルージャ「妾だったなら…とても耐えられぬ。なぜ精神を保てるのだ?」

奴隷「…飲まされる液体には三つの種類がある」

奴隷「一つは魔力が込められた液体、もう一つは傷や病を癒す液体、最後の一つは…精神を落ち着かせる液体だ」

ファルージャ「フゥ〜……完璧な対応じゃ?」

奴隷「……!あんたみたいに恵まれた人間には分からないだろ!」

ファルージャ「うむ。分からぬな。分かりたくもない?」

奴隷「くっ…!」ワナワナ
463: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 22:00:58 ID:M97GWVJjkM
奴隷「死にたくなかったら消えな…!」

ファルージャ「クスス……」

将軍「ヌハハ!消えなときたか?」

奴隷「なんだよ…!本当に殺すぞ…!?」ニギニギ

将軍「やれるモノならやってみろ?化け物が?」ズイッ

ファルージャ「よいよい?」サッ

将軍「……?」

ファルージャ「将軍、一度席を外しておくれな?」

将軍「なっ!?し、しかし…!」

ファルージャ「牢の役人、衛兵共の口封じを?」

将軍「ぐぬぅ…か、かしこまりました。どうかお気をつけて」ザッ

カツンカツン カツンカツン
464: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 22:02:29 ID:M97GWVJjkM
ファルージャ「さて…?」ジッ

奴隷「ま、まだ何か用があるのか…!い、いい加減にしないと殺……」

シュルッ ハラリッ

奴隷「っ…!?」ビクッ

スルルッ パサッ

奴隷「い、イカれたか…?なんで脱ぐんだ!?」アセアセ

ファルージャ「女の喜びを教えてやろう?とくと味わうがいい?」ヒタッヒタッ

奴隷「や、やめろ!近寄るな!殺すぞ!?」ズサッ

ファルージャ「ではなぜさっさとそうせぬ?」

奴隷「はっ…!?」ドキドキ

ファルージャ「快楽はよいぞ?身悶え、喘ぎ、全身に痺れを感じれば…そなたの苦悩がいかに無意味なモノか理解出来ような?」クスッ

奴隷「か、かいらく…あえぎ…?」キョトン

ファルージャ「そうか?そなたは無知であったな?」

奴隷「い、意味が分からない」オロオロ

ファルージャ「…なんと愛らしい?無垢なる心身を汚す背徳感…たまにはこういった嗜好もよいな?」

奴隷「やめろ…!なんか分からないが…とにかくやめろ…!?」ビクビク

ファルージャ「案ずるな?知って損はなかろうよ?」ジリジリ

奴隷「〜〜〜!?」
465: ◆WEmWDvOgzo:2015/2/8(日) 22:09:33 ID:WAMP9I3Be6
奴隷「っ…っ…」ビクンビクン

奴隷「(な、なんだこれ…なんだこれ…なんだこれ…?)」フニャァ

ファルージャ「フゥ〜…その身体では指先しか使ってやれぬのが口惜しいが…満足出来たかえ?」ナデリ

奴隷「あ、あんた…なんなんだよ…?」ハァッハァッ

ファルージャ「妾に仕えぬか?」ジッ

奴隷「はぁ…?な、なに言ってんの?」

ファルージャ「妾に仕えれば…この快楽を幾度も味わえるのだぞ?」クスクス

奴隷「はぁっ…あぁ…」

ファルージャ「それに…今より自由になれる」

奴隷「」ピクッ

ファルージャ「妾はそなたを狭く薄暗い独房に追いやったりはせぬ?望むのであれば…快楽以外の物も与えてやれる?」ジッ

奴隷「……ウソだ」プイッ

ファルージャ「まことじゃ?」

奴隷「自分みたいな醜い化け物が人前に出られるか」

ファルージャ「妾は構わぬ?」

奴隷「あんたは美しいからいいさ…。人前に出たって誉めそやされるんだろ?自分は違う!」

ファルージャ「確かにそなたは醜い?同じ人間とは思えぬ変貌を遂げた化け物よな?」

奴隷「っ…そうだよ!化け物だ!化け物は狭く薄暗い独房でいいんだ!」

ファルージャ「…しからばなぜそなたは化け物と揶揄されるのか?」

奴隷「普通じゃないからだろ!どの人間と比べたって明らかに違う!」

ファルージャ「クスス…そうさな?だからこそ妾はそなたに心惹かれておる…?」ナデリ

奴隷「は、はぁ…!?」ドキドキ

ファルージャ「他の誰とも似付かない。それはつまり特別である証と言えよう?」ナデナデ

奴隷「……!」ドキドキ

ファルージャ「濁り腐った眼…淡白な青い肌…全身の体毛が抜け落ちて、所々皮膚は剥がれ、焼け爛れたように蝕まれ…それでもなお妾はそなたを愛せるぞ?」クスッ

奴隷「あ、頭おかしいだろ…?こんな気持ち悪い身体……」ブルッ
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sage:


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