1スレ
少年「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10
2スレ
カロル「ボクが世界を変えてみせる」
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10
―――あらすじ―――
それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました
しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました
そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです
戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました
布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました
それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします
248: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:00:55 ID:GH7i5DEIyQ
見届け人「き、騎士長殿!?真剣は試合の意に反します!お納めください!」
騎士長「知ったことかぁ!!そこに直れ、ルフィアスぅうううう!!!」ダッ
団長「ぬんっ!」ブォンッ
騎士長「いぐぅ!?」ガゴッ
バタッ
見届け人「」ポカーン
ザワザワ ザワザワ
ヴァージス「(真剣を翳して突進する騎士長に怯む事なく頭頂部を捉え、降りおろしざま一刀の下に打ち伏せた…!)」
大臣「ほほぉ〜!これはまた予想外な?」マジマジ
国王「……!」
団長「次!!」
オロオロ オロオロ
ヴァージス「…まぐれとはいえ勝ち星を上げたか。運のいい男だ?」ザッ
団長「まぐれかどうかは己が目で確かめよ」ジャッ
ヴァージス「平民上がりが調子付くでないわ?騎士団は王国最強の部隊だ…!」
団長「……どこからでも掛かってくるがいい?」
ヴァージス「くっ…!」ギリッ
249: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:02:30 ID:dqvzbTqV8Y
ヴァージス「」ハッ
騎士「ぶぐっ!?」バコンッ
ズシャアッ
ヴァージス「(な、なにがどうなって…!?)」ムクッ
見届け人「勝者ルフィアス!この試合、近衛師団の勝利とする!」バッ
団長「」ペコリ
ヴァージス「(ま、ま、まさか……気を失って無様に倒れていたのか!?この私が!?)」
国王「大義であった!近衛師団にはこれからも誇り高き王国兵として責務を全うし、国の守護に励んでもらおう!」パチパチ
大臣「」パチパチ
貴族's「」パチパチ
ヴァージス「そん…な…バカなぁ!?」
団長「」スッ
ヴァージス「」ピクッ
団長「いい試合だった。来年の対抗戦でもまた……」
ヴァージス「ふざけるなぁっ!?」バシッ
団長「……?」
ヴァージス「近衛の平民が…!高貴な騎士に屈辱を与えて満足か!?」
団長「あぁ、満足のいく試合だった。たとえ相手が平民であろうが強者との闘いは武人として胸奮わせる物がある」
ヴァージス「武人…?元は下僕の薪割りが武人か!ハハハ!泥臭さもここまでくれば傑作だな!」
団長「…昔は昔、今は今だ。武人を名乗って何が悪い?」
ヴァージス「私は格式高いウッド家の子息だ!貴様などまた下僕に降格させてやるさ!」
団長「負け惜しみにしろみっともない…。もう少しマシな言い分はないのか?」
大臣「まったく同意見ですよぉ〜?」
ザワッ
250: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:05:39 ID:dqvzbTqV8Y
大臣「騎士と近衛の違いが身分?それはなんとも幼稚じゃございませんか?」
ヴァージス「だぃ…じん…どの?」
大臣「騎士とはすなわち王国最強の称号…それゆえに近衛とは一線を画する存在なのですよぉ〜?」
ヴァージス「ぐっ…」
大臣「しかし結果はどうです?たった一人の近衛に騎士長を含め、5人があえなく敗れましたねぇ〜?」
ヴァージス「さ、再試合を申し出る!先程は油断していたが次こそは……」
大臣「いぃ〜え、結構?敗因はただ一つ、貴方が弱いからです?」ニヤァァ
大臣「恥の上塗りはおよしなさい?潔く退くのもまた騎士道?」
ヴァージス「……!」ガクッ
政務官「しかし幼少より英才教育を受けてきた騎士が下僕上がりの平民に成す術もなく敗れ去るとは…?
これは一度、軍の制度を見直してみる必要がありそうだ?」
大臣「んぅ〜?いっそのこと騎士とかいう名ばかりの称号を剥奪しますか?」
騎士団's「」ビクッ
ヴァージス「ま、待ってくれ!それだけは……」バッ
貴族「黙れ!お前たちが敗れた事で我ら貴族の面子も潰されたのだ!」
ヴァージス「し、しかし……」
貴族「平民に遅れを取るとは貴族らしからぬ過ちよ!こうなれば取るべき手段は一つ!爵位を返上せよ!」
ヴァージス「なっ…」
貴族「平民が平民に敗れたのであれば問題ない?これ以上、我らに恥をかかせてくれるな?」
ヴァージス「〜〜〜!」ワナワナ
団長「お待ち願おう!」
貴族「なんだ、ルフィアス?」
団長「これは剣術家の試合であって身分は関係ござらん!同じ国の民同士で貶め合うなど言語道断!」
貴族「愚かな…これだから平民は?」
大臣「まぁまぁ、ルフィアスの意見も一理ありますよ?この場は幕を閉じましょうか?ねぇ、陛下?」
国王「…うむ」
251: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:07:54 ID:GH7i5DEIyQ
国王「何はともあれ両雄、共に素晴らしい健闘ぶりであった。誉めて遣わそう!」
近衛's「」ハハーッ!!
国王「特にルフィアス…貴殿の剣技の冴えは目を見張るものがあった。
無理を押して迎え入れた余の判断は間違いではなかったな」
団長「ありがたき幸せ!」ザッ
ヴァージス「ぐ…くきき…!」ギリギリ
国王「騎士団も今回は残念だったが…この敗北を期により一層、己の剣に磨きをかけるといい」
騎士団's「ははーっ!」ザッ
国王「高みを目指すには更なる高みを登る人物に教えを乞うのがよかろう」
ヴァージス「」ピクッ
国王「同国の士としてルフィアスに教えを賜るのはどうだろうか?」
ヴァージス「ルフィアスに…!?」
国王「平民の出であろうが持って生まれた才覚はそなたらを上回っておる。
つまらぬ意地は捨て、互いを高め合える程の信頼を築いてみせろ?」
ヴァージス「」プルプル
国王「余はそなたらにも期待しておるぞ?」
ヴァージス「も、もったいのう…ございます…!」ビキビキィッ
………………
252: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:09:26 ID:GH7i5DEIyQ
―――領主邸(金蔵)―――
ヴァージス「くっ…ふふ!あんなに情けない想いをさせられたのは後にも先にもあの一度きりだ…!」
団長「……」
ヴァージス「分かるか!?お前に俺の苦しみが!?」
団長「…分からん」
ヴァージス「だろうな!?平民の!しかも下僕の成り上がり風情に分かる訳がない!?」
団長「やれやれ…お前たち貴族はなぜそうまでして見栄を張りたがるのだ?」
ヴァージス「なにぃ!?」
団長「つまらん自尊心に囚われなければ今も共に剣士として働けたであろうに?」
ヴァージス「騎士の誇りは平民と違って安くないんだ!貴様の下で働くぐらいなら自害するさ!」
団長「ふん…我々の責務は国の守護であって自尊心を守る事ではない」
ヴァージス「黙れ!誇る物もない哀れな下僕が!?」
団長「国への忠誠がワシの誇りだ」
ヴァージス「抜かすな!」ジャキッ
団長「武器を捨てろと言った筈だ」
ヴァージス「貴様の指図は受けぬ!!」ジリッ
団長「…刃向かうのであれば斬らねばならなくなる」ジャキッ
ヴァージス「ほざけっ!?」ブンッ
団長「」サッ
ヴァージス「小癪な…!」ビュンッ
団長「……」ギィンッ
ヴァージス「守るばかりが貴様の剣か!臆病者め!?」ギギギッ
団長「……ぬん!」ガキンッ
ヴァージス「ぐっ…!」ザッ
253: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:15:23 ID:GH7i5DEIyQ
団長「…堕ちたな。ヴァージスよ?」
ヴァージス「なおも侮辱するか!?」イラァッ
団長「身のこなしが雑になった。剣も大振りだ?」
ヴァージス「……!」
団長「騎士だった頃の貴様の剣は飛燕の如く俊敏で…かわす事すら困難であったが……」
団長「今の貴様にはあの頃の面影がない」
ヴァージス「……!?」
団長「城を抜け、様々な地を転々とし、金で買われてきた剣では錆び付いてしまうのも当然か」
ヴァージス「黙れ…!黙れぇっ!?」ビュンッ
ギャリィンッ
団長「っ…ほう?少しはマシになったじゃないか?」ビリビリ
ヴァージス「上から物を言うなぁ!平民がぁ!?」ビュンッ
団長「はぁっ!!」ザッ
パキィィィン!
ポトッ
ヴァージス「……?」スカッ
団長「ふん…勝負は付いた。刃を折られても、まだ続けるのか?」チャキッ
ヴァージス「くっ…そぉ…!?」ブンッ
カンッカンッ
団長「貴様の愛用していた自慢の剣も主人の堕落ぶりに愛想を尽かしたのだろう…」
ヴァージス「誇りばかりでなく…剣をも…!」
254: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:17:00 ID:dqvzbTqV8Y
ヴァージス「貴様はどこまでも……憎らしい男だ…!」ワナワナ
団長「…その憎しみをワシにぶつけたくば何故、城に残らなかった!」
ヴァージス「何度も言わせるな!貴様の下でなど……」
団長「兵として鍛練を積み重ね、ワシを超えればよかろうが!?」
ヴァージス「ぐっ…!?」
団長「誇りがどうだとのたくるが…貴様はワシに敗れ、自棄になり、その誇りをホルウィのような小悪党に安売りした!!」
ヴァージス「」ハッ
団長「その時点で貴様は完全に誇りを失ったのだ!ヴァージス!!」
ヴァージス「く…く……くぅ…!」ググッ
団長「敗北を認め、罪を償え!悪あがきすれば堕落する一方だぞ!」
ヴァージス「お、俺は…確かに誇りを捨てた!だがそれは…誇りを取り戻す為だ!」
団長「……!」
ヴァージス「貴様に砕かれた誇りの欠片を広い集め、ばらまいて金を手にしてきた!
いずれまた爵位を買い、騎士として返り咲く為にな!?」
団長「もうやめにしないか…」
ヴァージス「黙れ!お前の戯れ言に屈してなるものか!
この金蔵に眠る金銀財宝を手土産に私は再び蘇る!!」
ヴァージス「邪魔をするのなら切り捨てるまでだ!」スチャッ
団長「ナイフか…。そんなチンピラの得物でワシを斬れると思うか?」
ヴァージス「死ねぇ!!ルフィアスぅぅぅ!!!」バッ
団長「むんっ!!」ビュンッ
ドバッ
255: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:19:03 ID:GH7i5DEIyQ
プシャアアアアアアアア
ヴァージス「う……かっ…」ドサッ
団長「……」ピシュッ
ヴァージス「おの……れ…」ググッ
団長「…何が騎士だ、くだらん」
ヴァージス「あがっ…ぐっ…」ズルッ
団長「名誉に浮わつくのは高官や貴族だけで十分だ。
兵である以上、ワシらの誇りは君主に捧ぐべき物……」
団長「そして剣術家の誇りは…己の剣で守ってこそ、だ。
いつまでもお坊っちゃん気分で甘ったれるな!!」カッ
ヴァージス「っ…!?」
ヴァージス「ゲハァッ!?」ブバッ
ヴァージス「……!」ピクピク
ヴァージス「」フッ
団長「……騒ぎになる前に報せるか」
団長「」スタスタ
スタスタ スタスタ………
256: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 21:36:59 ID:gTRPXbGnWE
〜〜〜朝〜〜〜
―――教会―――
院長8「すべて司祭様達のおかげです!本当にありがとうございました!」ペコッ
宣教師「いえいえ…院長さんが一生懸命に子供たちを守ろうとなさった結果ですよ?」
院長8「いやぁ…!そんなぁ…!自分なんて仮装して大恥かいただけですもん?」テレテレ
神父2「いやいや、実に立派な行いでした?
普段は引っ込み思案で頼りなく見えましたが…」
院長8「う……」ズーン
宣教師「町中を駆けずり回って院を残そうと呼び掛けていた貴方は、まるで悪に立ち向かう勇敢な騎士のようでしたよ?」ニコッ
院長8「……!そ、そうですかぁ!?」パァァ
神父2「ハハハ…さながらおとぎ話の主人公ですね?」
院長8「あ、あはは…おとぎ話に例えてもらえるなんて嬉しいなぁ。実は自分、こう見えて昔は物書きをしてまして…?」
宣教師「おや、作家さんだったんですか!」
修道女「すごーい!」
院長8「そ、そんなぁ?作家だなんて…そんないいもんじゃないです?」テレテレ
教徒「どんな本を出版されたんですか!」
修道女「興味津々だね?」
教徒「いいだろ?本が好きなんだから?」
257: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 21:38:11 ID:gTRPXbGnWE
院長8「か、カケフ地方の文学協会に送っていくつか出版しただけなんですけどね?」
神父2「カケフ地方なら丁度、ここ南の領土の主要都市部じゃないですか?」
宣教師「となると多くの人に読まれていたのでは?」
院長8「それが子供向けのおとぎ話ばかりなもんで読書好きの方々にウケなくて…すぐ廃版になっちゃいました」
神父2「それは残念ですね…」
教徒「へぇ…!見てみたいなぁ?」
院長8「あ、なんでしたら見ていきますか…?」オソルオソル
宣教師「あるんですか?」
院長8「は、はい…。当時の売れ残った在庫はほとんど各地の図書館に寄付したんですが…。
原本は院内の図書室に保管してありまして…こ、子供たちが自由に読めるように…してありまして?」モジモジ
教徒「読みたいです!」ガタッ
修道女「私も!?」ガタッ
院長8「そ、そう…ですか!で、ではご案内します!」パァァ
宣教師「…それでは孤児院に立ち寄ってから出発しましょうか?」ニコニコ
教徒&修道女「はいっ!!」
258: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 21:44:06 ID:Rbp1gb8IvI
―――孤児院(図書室)―――
教徒「」パラパラ
修道女「へぇ…!」パラパラ
院長8「」ドキドキ
修道女「面白い!どこがとか具体的に言えないけど…とにかく面白かったです!」パタンッ
教徒「ほのぼのとした雰囲気で挿し絵も可愛らしいし、読みやすいよね?」
修道女「そうそう!」
教徒「旅立ちの場面はワクワクしましたし!」
修道女「そうだよ!」
教徒「最後の勇者が悪いドラゴンを説得して仲良くなっちゃうのも素敵でした!」
修道女「そうなんだよね!」
教徒「そうしか言ってなくない?」
修道女「だ、だって…うまく言えないんだもん?」ゴニョゴニョ
院長8「感無量です…!」フルフル
教徒「そ、そんな大げさですよ?僕らは専門家じゃありませんし?
あ、そうだ?司祭様はどうでした?」
宣教師「大人向けの話ではないですが私は好きですよ?」パタンッ
院長8「う…」ガクッ
宣教師「落ち込まなくても…?童話なのですから元より子供たちに向けて書かれた本なのでしょう?」
院長8「は、はい…。でも読者層が文学好きの大人ばかりで…」
宣教師「子供たちはこれらの本を読んでなんとおっしゃいますか?」
院長8「好きとか…面白いと…?」オズオズ
宣教師「そうでしょうね?」ニコッ
院長8「……?」
宣教師「この本は子供たちに読まれて初めて光り輝くのでしょう。
営利目的であれば望み薄かもしれませんが…孤児院に置かれる本としてはこの上なく最適です?」ニコニコ
院長8「あ、あ、ありがとうございます!」ペコッ
259: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 21:55:58 ID:Rbp1gb8IvI
―――ホルウィの町(正門前)―――
修道女「院長さん、感激してましたよ!」スタスタ
教徒「今回を機にまた書いてくれるといいですね?」スタスタ
宣教師「誰しも趣味は必要ですからね。なにか楽しみがないとやる気も起こらないですし」スタスタ
修道女「子供たちもいい子ばっかりでしたよ!あれなら、すぐに里親が見つかりますよね!」
宣教師「そうですね。子供たちが幸福を得る為にも院長さんや職員の方々に頑張っていただかなければなりません」
司教「おぉ!司祭様、待ちわびましたよ?既に馬車の用意は済んでおりますぞ!」
宣教師「すみません、少し寄り道しまして?」
修道女「子供たちにホビットと仲良くしましょうねーって言ってきました!」
教徒「この町にホビットが来たら仲良くするって約束してくれましたよ!」
司教「そうでしたか。そういえば憲兵さんから伝言を承りましたよ。
団長様は昨夜の事件の後処理で身動きが取れないので代わりにと」
宣教師「領主邸は凄絶だったそうですしね…。私も団長さんにお礼をしたかったのですが…」
260: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 21:56:32 ID:gTRPXbGnWE
司教「肝心の伝言なのですが……『偽の王国兵に気を付けるように』との事です」
宣教師「偽の王国兵?」
司教「どうやら手配書を改竄して各地に流した人物がいるそうで…救い主様に懸賞金が懸かっているというデマが広まっているんだとか」
宣教師「なっ…!なぜカロルくんに懸賞金が!?
そんな事をすればお金目当ての悪党に付け狙われてしまいますよ!?」
司教「詳しくは聞いておりませんが…また何か不穏な空気が漂ってますな。
王国の内部に救い主様を始末しようとする動きが見られると」
宣教師「……!アントリア神官を封じたというのに…まだ無益な争いを繰り返したい人物がいるのですか!」
修道女「…私達が早く見つけないと救い主様が悪人の手に渡ってしまうかも?」
教徒「た、大変だ!最近になって、やっとホビットと人で共存する町も増えてきたのに!」
司教「救い主様が王国に始末されてしまったら…今度こそホビットと人間は共存出来なくなるな」
宣教師「……!司教さん、申し訳ございませんが…一度、大聖堂に戻っていただけますか?」
司教「構いませんが…私は何をすれば?」
宣教師「全教団員に報せ、偽の手配書の事実を国中に伝えさせるのです!
そして同時に不審な王国兵の情報も探らせなさい!」
司教「承りました!」
宣教師「どなたの仕業か知りませんが…カロルくんとお母様の無事は私達、教団が何に代えても死守してみせます!いいですね!?」
司教&修道女&教徒「はいっ!!!」
261: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 22:03:27 ID:gTRPXbGnWE
―――王都(城下町)―――
女装家「ハァァァ……」ゲッソリ
西の官吏3「これはまた強烈な溜め息ですね」
女装家「強烈ってなによぅ?口臭いとか言うの?」ジロッ
西の官吏3「い、いえ…お疲れ気味ですので」
女装家「そぉなのよねぇーん!シャルウィンちゃん、もうヘットヘトよ?まぼろし〜って感じ?」クタァ
西の官吏3「…ようやく話し合いも済んだ事ですし、そろそろ?」
女装家「そうねぇん…めんどくさいのも終わったし自分へのご褒美に癒しの喫茶店巡りしちゃおっかしらぁん…」
西の官吏3「…いやいや、もう4件目ですよ?何杯コーヒー飲むんですか?」
女装家「ジョーダンよ、ジョーダン!さっさ目的を済ましてオネェ様に喜んでいただかなくちゃ?」スクッ
西の官吏3「ははっ!」
女装家「ちょっと店員さーん?お会計〜!」
262: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/22(月) 22:07:29 ID:gTRPXbGnWE
西の官吏3「して、目処は付いているのですか?」スタスタ
女装家「そうねぇ?あのチョロそうな大后様にオシャレな飾り物渡したら、ちょこっとヒント聞けちゃったわよぅ?」スタスタ
西の官吏3「ほう!さすがシャルウィン様!」
女装家「おバカ!今は"トピ"でしょん!」パシンッ
西の官吏3「っ〜〜〜!(な、なんという馬鹿力…!)」ヒリヒリ
女装家「まぁずぅはぁ〜?教団の司祭が暮らしてる辺境の孤児院に向かうわよぉ〜?」
西の官吏3「そ、そこに例の…?」
女装家「さぁ〜?しっらなぁ〜い?」
西の官吏3「えっ」
女装家「でもでも〜…教団の司祭は例のホビットちゃんと仲良しこよしのただならぬ関係だったらしいわよぉ〜?
それってつまりぃ〜?かなぁ〜りお互いを知り尽くしてるって訳じゃなぁい?」クネクネ
西の官吏3「(な、なんでクネクネ揺れてるんだ、このおっさ……いや、シャルウィン様は)」
女装家「ちょと聞いてるぅ〜?」
西の官吏3「え、あ、すみません」
女装家「んもぉ〜?しょうがない子ねぇん?
他人が話してるのに上の空なんだから…ダメだゾッ?えいっ?」ツンッ
西の官吏3「」ゾワゾワゾワ
女装家「じゃ兵隊ちゃん達呼び戻してきてねん!」
西の官吏3「(うおお鳥肌が寒気が悪寒が止まらん!)」ブルブルブル
女装家「聞いてんの〜?」
西の官吏3「はっ…ただいま…!」ゲッソリ
263: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/30(火) 01:00:37 ID:IHQ0bs/URY
―――西の国(貧しい村)―――
ザシュッ ドバッ ガシュッ
ギャアアアアアア
将軍「ヌハハハ!他愛もない…」ピシュッ
西兵1「当然にございましょう?彼奴らは剣も知らぬ飢えた生ゴミ?
将軍殿の圧倒的な軍略の前にはちっぽけ、ちっぽけ?」
将軍「なにが軍略か?我輩はただ兵を率い、武器を持たせ、皆殺しにするよう命じただけぞ?」
参謀「お見事、お見事、将軍殿の才に敵うものなどありましょうや?」パカラッパカラッ
将軍「……」
参謀「長年、自国の狼藉者を始末して参りました故、我が軍の兵らは殺しの味をよぉく知っておりまする。
しかしかつての"終わらない争い"を存じてらっしゃる猛将はカカドゥーラ様、ただ一人…?」ニィィッ
将軍「…地獄絵図とはまさにあの事」
妊婦「ひ、ひあぁあ」ガクガク
西兵1「おや、まだ生き残りが?」
参謀「身籠っておりまするな」
妊婦「ど、どどどうかお助けを…!?このお腹には命が宿って…!?」ガクガク
将軍「命…か」ジロッ
妊婦「……!」フーッフーッ
将軍「はたしてその命…いかほどの価値がある?」
妊婦「え…?」
将軍「月に一度の税も賄えぬ農村で生まれ育った女が…今、滅びようとする村で子を生んだとして、この国に利はあるのかと問うておる?」
妊婦「そ…れは!」
将軍「お前のような価値なき女子の腹に収まったガキにこそ見る目が無かったのだ?」ブォンッ
バシュッ
ゴロン
将軍「腹を引き裂き、中のゴミを引きずり出して踏み潰せ?今回の目的は皆殺しだ?」
西兵1「ははぁっ!!」
264: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/30(火) 01:04:01 ID:9v4P6Xr0tU
ヒエエエエエ ギャアアアアアア
ブバッ ガシュッ ゴロン
ダダダダダダッ
将軍「クク…ヌハハハ!?なんと愚かしい?
我輩の気分次第で弱き者共が鼻水を垂らし、涙を流し、見るに耐えぬ醜態を繰り返す?」ニタァァ
将軍「それでこそ楽しめる…?だからこそ面白い?侵略とは…弱き者を惨めに死なせる武人の遊戯よ?」ニタニタ
参謀「実に同感」ウンウン
将軍「楽しみだのう?もうすぐそこに戦争の日が迫っておる?」
参謀「平和を手にして何十年……短い歴史でございました」
将軍「平和、平和ではつまらんよ…。我輩はなぁ…偽善的な王国の弱き民を……これでもかとなぶり殺してやりたいのだ?」グフフ
参謀「お二人次第…でしょうな」
西兵2「将軍!」
将軍「なんだ?」
西兵2「納屋の米俵に赤子が隠されておりました!」
赤子「ぎゃあああ!あああん!」ベーベー
将軍「ほう?これはまさしく…玉のように愛らしいではないか?我輩にも抱かせろ?」スッ
参謀「」ジーッ
赤子「ぎゃあああ……きゃ?」パチクリ
将軍「ふふ…かわいいなぁ。それ、たかいたかーい」グオッ
赤子「えへー!えへへー」キャッキャッ
将軍「たかいたかーい、たかいたかーい……」パッ
赤子「へ……」ブワッ
ゴンッ
赤子「ぃ…ぎやあああああ!ああああああ!」ベーベー
西兵2「」ビクッ
265: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/30(火) 01:07:28 ID:9v4P6Xr0tU
将軍「抱くのは飽きた」シラー
西兵2「……!?」
将軍「お前」
西兵2「は……はっ!」ピシィッ
将軍「赤子の指を潰せ」
西兵2「は…!?」
オギャアアアア オギャアアアア
西兵2「っ……」
将軍「どうした?こうすればよいのだ?」ガッ
西兵2「えっ」グイッ
将軍「親しき友と握手するように…こうして」ギュウッ
西兵2「あがっ!?」グキィッ
メキィッ ベキベキ クシャッ
西兵2「ぐっ!きぃいいいい!?」ジタバタ
将軍「参謀よ、手解きは必要か?」
参謀「…この僕が未だかつて将軍の命に躊躇した事などございましょうか?」
将軍「よくぞ言った?」ニタァァ
参謀「赤子の爪を剥がし、指を潰し、産毛も歯も抜いた上で焼き殺し…野良犬たちへのもてなしにしましょう」ザッ
オギャアアアア オギャアアアア
266: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/30(火) 01:10:15 ID:IHQ0bs/URY
将軍「あの赤子も残念だった…。我輩にも慈悲はある…。親が生きていれば、な」
参謀「えぇ、目の前で子の死をご覧いただけたのに残念です」
将軍「うむ。看取らせてやるぐらいの配慮はしたんだが…」
参謀「お優しいですな」
将軍「あぁ…戦争が待ち遠しい。パカラゥロとシャルウィンが目的に達すれば、すぐにでも始められるというのに」
参謀「楽しみになされてるのは陛下も同じ事では?」
将軍「…うむ。陛下の目の奥に輝きを見たのは皇帝一族暗殺を実行した日以来だ」
参謀「……」
将軍「永遠の命…不朽の美……あぁ、愛する陛下に捧げたい。そして願わくは我輩の妻として……」
参謀「口が過ぎます」ムスッ
将軍「…うぉほん!聞かなかった事にしてくれ」
参謀「かしこまりました」スッ
将軍「(陛下……)」ションボリ
参謀「裾が汚れました故、お先に城へ戻らせていただきまする。はっ!」パシンッ
パカラッパカラッ パカラッパカラッ
将軍「…さて、食糧と金品を回収して次なる狼藉者共を成敗しに参るか」ハァ
267: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/31(水) 14:36:23 ID:g4lCkLBiEw
―――南の領土(バンブルの港)―――
ワイワイガヤガヤ
漁師「さぁさ揚がった!月の満ち欠けに逸らされんなぃ!
おまんま食いたきゃ魚買え!んで足らねぇなら稲穂刈れ!今月の築地は見逃しちゃならねぇ!
魚はもちろん蟹に海老、貝に烏賊、蛸と目白押しだ!」
カロル「わぁー!お魚いっぱい?」マジマジ
母「この街では漁が盛んなのね?」
カロル「あはは!箱の中でお魚さんが泳いでるよ?」
母「鮮度を保つ為に生け簀に入れてあるのよ?」
マルク「」ジュルリ
カロル「飼って育てるの?」
母「ううん、後で切り刻んで食べるの」
カロル「!?」ガビーン
漁師「おぉ、嬢ちゃん、坊っちゃん、見ていきなぃ!これがバンブルの商売だ!
新鮮な魚をすぐさま味わいてぇなら遠慮しちゃならねぇ!欲張って欲張って買い漁んな!」
母「そうしたいのは山々ですけど、生憎手持ちがありませんの…」
漁師「なんでぃ!なんでぃ!親子二人の食う分も稼げねぇたぁロクな旦那じゃねぇな!」
母「おほほ…。夫はだいぶ前に他界してまして…今は坊やと二人で旅してるんです」
漁師「……す、すまねぇ」
母「お気になさらず?もう吹っ切れてますから?」
漁師「…」グイッ
漁師「持ってけ?」つ【魚】
母「まぁ!いいんですか?」
漁師「おう、知らねぇにしろ未亡人にゃ言っちゃならねぇこと言った。詫びだ?」
母「そ、そんな…同情してほしかった訳じゃ…?」オロオロ
漁師「昔から生命豊かな水面には魚たちの泳ぎ遊ぶ陰翳が映るんだ。
この地に網が掛かるのは、つまり母なる海に愛されている証拠だ?」
漁師「海鳴りの景色を西へ西へと進めればごっそり獲れる漁場がある。一匹渡したって俺達の商いは尽きやしねぇ?」ニコッ
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