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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


233: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:23:00 ID:02Flk6/uEY
タンッ クルッ パッ

司会「はーい。エントリーナンバー20番、ガーネットおばさんの準備体操…じゃなくて素敵なダンスでしたぁー。皆さん惜しみ無い拍手をー」ボーヨミ

パチパチ パチパチ

司会「さて、お次はエントリーナンバー21番!おぉ!なんと大会初のお二人での参加になります!
それでは出てきてもらいましょう!ライオネル&リッチーさんです!どうぞ!!」

シャッ シャッ

オオオオオオオオオオオオ

ライオネル「あぁ…なんてことなの?ダーリン?まさかあたくし達がこんな素人に混じって踊らされるなんて!」タタンッ カッカッ

リッチー「僕も同じ気持ちさ、ハニー?だが国王に頼まれたんだ。セレブとお近付きになれるチャンスだよ?」クルルッ シュタッ

ワアアアアアアアアア

ライオネル「そうね、ダーリン?いずれは世界を制するエンターテイナーとして…地べたに足を付くのも経験かしら」シュッ バババッ

リッチー「」スッ パシッ

グルグルグルグル バッ ババッ

ヒューヒュー ブラボー!!

リッチー「そうさ、ハニー?一流の舞踊家たる者、彼らのように地の底で蠢く哀れな亡者たちにも真剣に向き合わないとね?」ヒュッ カカンッ カッカッ

ライオネル「えぇ。さながらあたくし達は地の底に舞い降りし神の化身!」タッ タンタタタンッ

リッチー「貧しく弱々しく愚かしく生臭い有象無象の群れにすら愛を落とす悪戯な堕天使!!」バッ バババッ

ライオネル「手を握って!ダーリン?」ヒュッ クルルッ スッ

リッチー「観客に最高の瞬間をプレゼントしよう!ハニー?」パシッ グワッ

グルグルグルグル パッ ピョンッ

ウオオオオオオ!!

ライオネル「フィ……」シュタッ

リッチー「ナーレ!!」シュタッ

ワアアアアアアアアア!!! ウオオオオオオ!! ヒューヒュー!! キャーキャー!!!

パチパチ パチパチ パチパチ パチパチ
234: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:25:04 ID:02Flk6/uEY
司会「」ポカーン

司会「」ハッ

司会「す、すみません!あまりに魅入ってしまい、我を忘れてました!
それでは審査していただきましょう!ライオネル&リッチーの点数ははたして!?」

審査員's「」ババッ

司会「……!?で、出たああああああああああ!!!
なんと史上初の最高得点、全員一致で満点!1000入りましたあああああああああ!!!!」

ライオネル「当然よね、ダーリン?」ダキッ

リッチー「当然さ、ハニー?」ギュッ

司会「(こ、こいつら素人じゃねぇだろ、絶対……てかまずいなぁ。なにやってんだよ審査員共!)」アセアセ

宣教師「予想以上でしたね?」パチパチ

司教「いやぁ人間技とは思えませんよ」パチパチ

院長8「感涙してしまいました…!」ボロボロ

修道女「あとでサインもらっちゃお!」キラキラ

教徒「司祭様のお知り合いなんですか?」

宣教師「いえ、まったく知りません。私は国王に手紙で助っ人をお願いしただけですので?」

教徒「へぇ…全然知らないけど、あんなすごい人達がいるんだなぁ」

宣教師「知名度の割にお忙しいようでして…大会が終わったらすぐに王都へ戻るみたいですよ」

司会「さ、さぁ…続いてはエントリーナンバー22番……あれ?棄権ですか?じ、じゃあ…その次も棄権?えーっ!?」
235: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:26:30 ID:.ni3VxVP3g
〜〜〜夜〜〜〜

―――領主邸―――

ホルウィ「はぁ〜!?なんじゃ、そりゃあ!?」

司会「し、審査員共が点数を操作すんの忘れて満点出しちゃいまして」アセアセ

ホルウィ「バキャロー!?なにやってんだ!このクソバカが!?」

司会「す、すんません!」

ホルウィ「チキショー!あのアマァ〜…!まさか本物の舞踊家を持ってくるたぁな…町の催しなのに何考えてんだか!?」

司会「も、もしかしたら明日の剣術大会もスッゲーのを呼んでくるんじゃ…?」

ホルウィ「くそっ!あり得るな…!ヴァージス!大丈夫なのか!?」

ヴァージス「ふ〜ん…?助っ人ねぇ…?」キュッキュッ

ホルウィ「剣の手入れなんかしてる場合か!?」

ヴァージス「」ギラッ

ホルウィ「」ビクッ

ヴァージス「楽しませてくれんのかねぇ?」クククッ

ホルウィ「お、おぉ…!なんか頼もしいな!」

司会「ご主人様!ヴァージスさんは元王国兵の中でも優秀な剣術家にだけ与えられる騎士の称号を持った剣士っすよ!」

ホルウィ「そ、そうだよなぁ!楽勝だな!うん!」

ヴァージス「遊びばっかじゃつまらねぇからなぁ…?たまには昔の感覚で切り結びたいものだぜ…?」ギラッ

ホルウィ「ぶははっ!これなら小娘が誰を連れてこようがお構い無しだ!」
236: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:27:50 ID:02Flk6/uEY
〜〜〜朝〜〜〜

―――ホルウィの町(広場)―――

司会「さあさあさぁあああああ!来ましたあああああああああ!!!
皆様お待ちかねの超超超白熱の剣術大会いいいいいい!!!!!」

ウオオオオオオ!!!!!

司会「この場に数多の強者共が凌ぎを削り、己の闘志をぶつけ合うぅうううううう!!!
今回のエントリーはなんと大会史上最高の81人!!!まずはいつも通り8組同時対戦形式の予選会から始めたいと思いますぅうううううう!!!!」

ワアアアアアアアアア!!!!

ザザザザザザッ

ヴァージス「……相変わらず弱そうなのが集まってんな?」クククッ

???「……」

ヴァージス「ん…?見間違えか…?あれは確か…いや、そんな筈は……」ゴシゴシ

司会「さあさあ!出場者が出揃いましたぁああ!!!
それでは始めていただきましょう!!!大予選会、開始ぃいいいいいい!!!!!」

???「」ダッ

ヴァージス「…まぁいい。こんな所にいる訳がねぇさ」ダッ

ドドドドドドッ
237: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:29:08 ID:.ni3VxVP3g
ガンッ カンッカンッ ボコッ バシッ ビシィッ

司教「す、すごいですな…?」オロオロ

宣教師「巡礼での争いを思わせる嫌な光景ですよ…」

教徒「今日も助っ人が?」

宣教師「はい。私の知る限りでとびっきり最強の方をお呼びしました」

修道女「えぇ?どこにいるんですか?」キョロキョロ

宣教師「探さずとも間違いなく決勝の舞台に上がってきますので?」

院長8「す、すごい信頼されてるんですね…?」

宣教師「えぇ。多分ですけど、あの方と1対1で戦って勝てる方はこの世にいないと思います」

司教「……!」ゴクッ

教徒「な、なんかそこまで言い切られると怖い…」

院長8「堅気の人…ですよね?」オソルオソル

修道女「というより、ちゃんと人間なんですよね…?」ビクビク

神父2「ハハハ…司祭様は交友関係が幅広くていらっしゃいますな」

宣教師「ふふふ?」クスッ
238: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:30:17 ID:.ni3VxVP3g
司会「さぁあああああ始まりますよ決勝戦!呼んで字の如く真の勝者が決まります!!!!」

司会「決勝の舞台に上がった栄えある二名はこちら!エントリーナンバー1番!
その立ち振舞いは圧倒的!!もはや闘神と言っても過言ではない!!!!」

司会「我らがホルウィの町の英傑!!!ウッド・ヴァージスぅうううううう!!!!!!」

ワアアアアアアアアア!! キャーキャー!!

ヴァージス「……」ザッ

司会「続きましてエントリーナンバー52番!大会初出場ながら次々と強敵を薙ぎ倒し、決勝へと駆け上がりました!!
はたしてこの勢いで英雄ヴァージスを破って優勝してしまうのか!?
なんとも謎多き武人、ダパーシ・ルフィアスぅうううううう!!!!!」

オオオオオオオオオオオオ!!!!

???「」ザッ

ヴァージス「……ルフィアス!?」ギョギョッ

団長(ルフィアス)「正々堂々、己に恥じぬ戦いにしよう」スッ

ヴァージス「み、見間違いじゃなかったのか…!?」ワナワナ

団長「む?ワシを知っているのか?」キョトン

ヴァージス「あぁ…!?」

団長「すまんが…どこかでお会いしただろうか?」

ヴァージス「お、おぼ…覚えてないのか…!この俺を…!?」

団長「………」ジーッ

ヴァージス「よく見ろ!知ってんだろうが!?」

団長「……め、面目ない」アセアセ

ヴァージス「きぃさぁまぁぁぁあああ………!!!」ビキビキ

司会「それでは始めていただきましょう!決勝戦、開始ぃいいいいいい!!!!」
239: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/17(水) 23:31:59 ID:02Flk6/uEY
ヴァージス「もう昔の俺じゃねぇぞ…!やってやる…やってやるよぉ…!」グッ

団長「本当に申し訳ない。歳のせいか記憶力が、な…」アセアセ

ヴァージス「ざけんじゃねぇえええ!!!」バッ

オオオオオオ!!!

団長「」ペシッ

ポトッ

ヴァージス「えぇぇぇ………あれ?」スカッ

シーン

司会「…は、はたき落とした?」

団長「……?い、いや…あまりに遅い剣だったので軽くいなしてみたんだが…反則なのか?」キョトン

ヴァージス「あ、あぁあま…あまりに遅い…!?」ワナワナ

司会「あ、いや…そうですね。木剣とはいえ、はたき落とした方は初なんで……」オロオロ

団長「そ、そうか…?では仕切り直そう?どうぞ得物を拾ってくれ?」スッ

ヴァージス「……!」プルプル

団長「……?」

ヴァージス「棄権、する」ボソッ

司会「えっ」

団長「えっ」

ヴァージス「俺の敗けだ」クルッ スタスタ

司会「」アゼン

団長「わ、ワシの勝ちでいいのか…?」

シーン

司会「え、えー…じゃあルフィアス選手の優勝です」オロオロ

ワアアアアアアアアア!!!!!!

パチパチ パチパチ パチパチ パチパチ
240: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:39:59 ID:dqvzbTqV8Y
〜〜〜夜〜〜〜

―――ホルウィの町(教会)―――

神父2「なんとかなって良かったですね?」

院長8「は、はい!」

修道女「これで子供たちの居場所が失われなくて済みますよ!」

教徒「本当に良かったですよ!あんなにたくさんの子供たちが野ざらしにされたらどうなってたか!」

院長8「で、ですが…本当に約束は守られるんでしょうか…?」マゴマゴ

宣教師「後の事は団長さんにお任せしてありますのでご安心ください?」

院長8「だ、団長さんが…?」ブルッ

司教「あ、あの方なら確かに安心だな…」ゾクッ

教徒「すごかったですよね…。相手の木剣をペシッと平手打ちしただけではたき落としちゃいましたもんね…?」

修道女「相手の人、すごく強そうに見えたのに…あんなにあっさり……」

宣教師「団長さんは王国軍と憲兵団を束ねる国王直属の私兵ですからね。
お金に目の眩んだ剣士など相手にはなりませんよ」

神父2「そんな大物がよくこんな小さな大会に参加してくださいましたね?」

宣教師「ふふふ。あの方は正義感が人一倍強く、国王の命令に忠実ですから?」

院長8「し、司祭様ほどになれば王族にも頼み事が出来るんですねぇ…」アセアセ

宣教師「そりゃそうですよ…。半ば強引に教団を任されたんですから、これくらいしてもらわないと…」ブツブツ

院長8「…し、司祭様?」

修道女「王族の話になると途端に機嫌が悪くなりますね…?」

司教「そ、そうだな…?何かあったんだろうか…?」
241: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:41:41 ID:GH7i5DEIyQ
―――領主邸―――

ホルウィ「ヴァージスぅぅう!!てめぇどうなってんだぁ!!あぁん!?」ギロッ

ヴァージス「……」

ホルウィ「ビビって棄権したらしいじゃねぇか!?俺は奴らの仲間を殺せと言ったよなぁ!?」

司会「賞金もまるごとかっさらわれるし…これじゃ次回の大会開催も危ういっすよ」

ホルウィ「んなこたぁ分かってんだよ!?それどころか宿の建設も当分見送りだぁ!?」ダンッ

女「えー!?宿が出来たらあたしにオーナーやらせてくれる約束だったのに?ホルウィちゃんの嘘つき!」

ホルウィ「い、いや…そりゃまぁ…なぁ?また別のでいいだろ?」ポンッ

女「やだー!あたしは宿がやりたいの!」

ホルウィ「お、おめぇなぁ…?宿ったってそんな楽じゃねぇんだぜ?名義だけで実権は俺が預かんだからよ…?」

女「可愛いキラキラのお部屋デザインしたかったんだもーん!」プクー

ホルウィ「わ、分かった、分かった?じゃあまた今度な?」ナデナデ

女「今度っていつ!?」

ホルウィ「うっ……」タジタジ

女「今度っていつなのよー!?」

ホルウィ「…お、おい!ヴァージス!てめぇのせいだろうが!?なんとか言えや!?」

ヴァージス「……」

女「うわっ?開き直ってんですけど?キモッ!」

ホルウィ「ちっ…てめぇはクビだ!」

ヴァージス「」ピクッ

ホルウィ「なぁにが騎士だ?そこらへんの剣術家にぼろ負けしやがって…使えねぇ?」グチグチ

司会「どうすんすか?せっかくの儲け話がパァーになっちゃって?」

ホルウィ「けっ!こうなりゃ構いやしねぇ!
町のごろつき連中を雇って孤児院の金食い虫共を無理くり追い出しちまえ!」

司会「荒っぽいっすねぇー」
242: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:43:48 ID:dqvzbTqV8Y
ホルウィ「あぁん?てめぇはいつまで、ここにいんだ?貧乏人に跨がせる敷居はねぇよ!失せろ!」シッシッ

ヴァージス「…手切れ金を頂こうか?」

ホルウィ「はぁ?なに言ってんだ、お前?」

司会「役立たずにやる金はねぇってよ?」

ヴァージス「」チャキッ

ホルウィ「な、なんだよ?脅しか?ヘボ剣士が柄に手ぇ添えたって怖かねぇぞ?」ビクッ

司会「お前さぁ…失せろってのが……」スッ

ヴァージス「」シュバッ

ガシュッ

司会「わか……?」プシャアアアアア

ホルウィ「……!?」ビクビクゥゥッ

司会「ん…ね……っ」バタッ

ヴァージス「」ピシャッピシャッ

女「……キャアアアアアアア!!!!」ダッ

ヴァージス「」ブンッ

ドバッ

女「べふっ!?」ブシャッ

ホルウィ「あ、あいやぁいぃいあぁあぁああ……?」ガタガタ

ヴァージス「旦那……」ジャキッ

ホルウィ「よ、よせっ!よせぇっ!?」ズザザザ

ヴァージス「」スッ

ホルウィ「い、いくらだ!?いくら払えばいい!?」ガタガタ

ヴァージス「金の保管場所に案内しろ…?」

ホルウィ「……!?」

ヴァージス「それとも命と引き換えに金を守るか…?商売人としちゃ…その方が箔が付きそうだな?」クククッ

ホルウィ「わ、かり…ました」ガクッ
243: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:46:34 ID:GH7i5DEIyQ
―――領主邸(金蔵)―――

ホルウィ「(くそっ…!くそぅっ!!今まで貯めに貯めてきた俺様の財産が……)」ワナワナ

チョンッ

ホルウィ「ひぃっ!?」ビクビクゥゥッ

ヴァージス「……」ギロッ

ホルウィ「わ、分かってますよぉ?あ、開けますから…背中に切っ先を当てないでください…!?」ガチャガチャ

カチャッ

ホルウィ「…あ、開きまし…」クルッ

ヒュッ

ホルウィ「んぐぅっ!?」ドスッ

ヴァージス「この金蔵に眠る金銀財宝を失ったお前の命はいくらだ?」グイッ

ホルウィ「んぼぉ!!」ブシュッ

ヴァージス「…生きてる価値さえねぇよ?」クククッ

ドサッ

ヴァージス「ふっ…くふふふ!」プルプル

ヴァージス「クハハハハハハハ!!!」ゲラゲラ

ザッ

ヴァージス「!?」ピクッ

団長「貴様、何をしている!?」ジャキッ

ヴァージス「ルフィアス……」クルッ

団長「答えろ!?」

ヴァージス「見てたのか?」

団長「…5分ほど前に訪れたところ、中から血の匂いが漏れていたんでな!
怪しんで邸内に入ってみれば使用人から下男、下女、料理人に飼い犬まで物の見事に惨殺されていた…!」

団長「町の憲兵に報せようとも考えたが…なにやら話し声が聴こえたので急いで来てみれば…貴様が領主の喉元を突き刺した場面に出くわしたという訳だ!?」

ヴァージス「ふ〜ん…そうか?」
244: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:50:39 ID:dqvzbTqV8Y
団長「大人しく武器を捨てて出頭しろ!事情はそこで聞かせてもらう!」

ヴァージス「お断りだ…?」

団長「ならば容赦せん!切り伏せるまでだ!」ジャキッ

ヴァージス「まぁ待てよ…。お前、本気で俺を覚えてないのか?」

団長「……あぁ、思い出せん」

ヴァージス「ふっ…ククッ!そうか……」

団長「……?」

ヴァージス「俺はお前を忘れた事はねぇぜ…?成り上がりのルフィアス?」

団長「!?」ピクッ

ヴァージス「…そうか、そうか?それくらいはさすがに覚えてたか?」

団長「貴様…なぜ…!?」ワナワナ

ヴァージス「20年前だったか…。
王都の剣術大会で優勝した実績を買われ、城に仕えた平民出身のお前を揶揄したアダ名だったよな?」

団長「まさか…!?」

ヴァージス「…思い出したか?」

団長「ウッド伯爵家のヴァージスか!?」

ヴァージス「くっ…ふっふっ……ようやく気付いたか」

団長「髪を伸ばして無精髭など生やして…物乞い同然の薄汚い身形では気付きようがあるまい?
その蛇のような威圧感漂う目付きだけは変わっておらんがな…」

ヴァージス「…いろいろあったんだよ。こうなっちまうまでに?」クククッ

団長「…18年も姿を眩ませて何をしておったのだ。栄光ある王国騎士団に所属していたお前が?」

ヴァージス「白々しく言ってくれるな?俺の人生を狂わせた張本人の分際で…?」ギロッ

団長「……」
245: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:53:06 ID:dqvzbTqV8Y
ヴァージス「それとも…そんなどうでもいい過去は忘れちまったか?」

団長「…いや、覚えているとも。近衛師団と騎士団の合同演習で行われた親善試合での事だろう?」

ヴァージス「そうさ…?例年通りなら王族、高官、貴族が揃って見守る中で噛ませ犬の平民を高潔なる騎士族が蹂躙する一種のパフォーマンス行事だ?」

団長「…ケダモノ染みた発想だな」フンッ

ヴァージス「近衛は平民からなる下級の志願兵だが…騎士団は名門の家柄から優秀な者のみが選出される誉れ高き精鋭部隊だった!
物心付く前から教育を受け、剣術を極めた高位の剣士だけが入団を許される…選ばれし人間こそが騎士だ!!」カッ

団長「……」

ヴァージス「だがあの日…18年前のあの日に……我々は……」ワナワナ

団長「仕方なかろう?互いに本気で臨んだ結果なのだ?」

ヴァージス「仕方ない…!?仕方ないで済むと思ってるのか!?」

団長「確かにあの日を機に騎士団は解散を命じられ、近衛に吸収されたが…それはワシが決めたのではない。
当時の高官が勝手に話し合い、決定してしまった事だ」

ヴァージス「……!」グッ

団長「騎士団の人間が爵位を剥奪され、御家を取り潰されたのも…全ては恥を隠そうとした高位の貴族供の見栄に他ならん。ワシら近衛を恨むのは筋違いだ?」

ヴァージス「…元はと言えばお前があんな事を言い出さなければ…!」

団長「む…あれか、まぁそれは若気の至りとしか言えんな?」ポリポリ
246: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:57:03 ID:GH7i5DEIyQ
〜〜〜回想(ヴァージス)〜〜〜

キンッキンッ ガキンッ

大臣「ぐふふ!やはり有象無象の平民では騎士の相手にはなりませんな?」

貴族「互いに5人選出し、1人ずつ闘わせる試合方式ですが…まるで歯が立たない?」ニヤニヤ

ヴァージス「」ビュンッ

近衛兵1「ぐわっ!」ガスッ

見届け人「そこまで!勝者、騎士ヴァージス!」バッ

ヴァージス「ククッ!」

オオオオオオォォッ

大臣「いやはやなんとも頼りないですなぁ?
やはり安物の近衛と高級な騎士では刃の重味が違いまする?ねぇ、陛下?」

国王「うむ…」

見届け人「3対0!この試合、騎士団の見事な勝利と……」

団長「待たれよ!!」ザッ

見届け人「!?」

団長「まだ私を含め、2名の雌雄が決しておりません!」

ザワザワ ザワザワ

騎士長「ほざくな!すでに勝敗は決まっている!」

団長「そこで一つ提案がござる!」

見届け人「……?」

団長「この場で私が騎士団の選出兵5名と1度ずつ試合をし、一人残らず敗った暁には…この親善試合、近衛師団の勝利としていただきたく存じます!」

騎士長「なっ…!?」

ヴァージス「……!」
247: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 17:59:23 ID:GH7i5DEIyQ
大臣「んぅ〜?物言いですか?」

団長「いかがでございましょうか?」

騎士長「わ、我らを侮辱しているのか…!?」ワナワナ

大臣「おもしろいですねぇ〜?その申し出、受け入れて差し上げなさい?」

騎士長「だ、大臣殿!?」

大臣「陛下も異存ありませんよねぇ?」

国王「……」

見届け人「で、では改めて騎士団は代表者5名、近衛はルフィアス一人…ということで」

ヴァージス「…成り上がりの分際でなに考えてんだ?」

騎士長「ぬぬぬ…!」ギリギリ

団長「ご理解くださり、感謝致す。それではどなたからでも参られよ?」

ヴァージス「成り上がりが……」ザッ

騎士長「待て!」ガッ

ヴァージス「は…?」

騎士長「私が行く…!あんなひよっこにナメられてたまるか…!」ビキビキィッ

ヴァージス「はっ!」スッ

団長「…一人目が騎士長殿でよろしいのか?」

騎士長「なにぃ!?」

団長「先に大将が敗れれば残りの士気は大幅に割かれますぞ?」

騎士長「き、き…貴様ぁあああ!!もう我慢ならん!?」スラッ
248: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:00:55 ID:GH7i5DEIyQ
見届け人「き、騎士長殿!?真剣は試合の意に反します!お納めください!」

騎士長「知ったことかぁ!!そこに直れ、ルフィアスぅうううう!!!」ダッ

団長「ぬんっ!」ブォンッ

騎士長「いぐぅ!?」ガゴッ

バタッ

見届け人「」ポカーン

ザワザワ ザワザワ

ヴァージス「(真剣を翳して突進する騎士長に怯む事なく頭頂部を捉え、降りおろしざま一刀の下に打ち伏せた…!)」

大臣「ほほぉ〜!これはまた予想外な?」マジマジ

国王「……!」

団長「次!!」

オロオロ オロオロ

ヴァージス「…まぐれとはいえ勝ち星を上げたか。運のいい男だ?」ザッ

団長「まぐれかどうかは己が目で確かめよ」ジャッ

ヴァージス「平民上がりが調子付くでないわ?騎士団は王国最強の部隊だ…!」

団長「……どこからでも掛かってくるがいい?」

ヴァージス「くっ…!」ギリッ
249: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:02:30 ID:dqvzbTqV8Y
ヴァージス「」ハッ

騎士「ぶぐっ!?」バコンッ

ズシャアッ

ヴァージス「(な、なにがどうなって…!?)」ムクッ

見届け人「勝者ルフィアス!この試合、近衛師団の勝利とする!」バッ

団長「」ペコリ

ヴァージス「(ま、ま、まさか……気を失って無様に倒れていたのか!?この私が!?)」

国王「大義であった!近衛師団にはこれからも誇り高き王国兵として責務を全うし、国の守護に励んでもらおう!」パチパチ

大臣「」パチパチ

貴族's「」パチパチ

ヴァージス「そん…な…バカなぁ!?」

団長「」スッ

ヴァージス「」ピクッ

団長「いい試合だった。来年の対抗戦でもまた……」

ヴァージス「ふざけるなぁっ!?」バシッ

団長「……?」

ヴァージス「近衛の平民が…!高貴な騎士に屈辱を与えて満足か!?」

団長「あぁ、満足のいく試合だった。たとえ相手が平民であろうが強者との闘いは武人として胸奮わせる物がある」

ヴァージス「武人…?元は下僕の薪割りが武人か!ハハハ!泥臭さもここまでくれば傑作だな!」

団長「…昔は昔、今は今だ。武人を名乗って何が悪い?」

ヴァージス「私は格式高いウッド家の子息だ!貴様などまた下僕に降格させてやるさ!」

団長「負け惜しみにしろみっともない…。もう少しマシな言い分はないのか?」

大臣「まったく同意見ですよぉ〜?」

ザワッ
250: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:05:39 ID:dqvzbTqV8Y
大臣「騎士と近衛の違いが身分?それはなんとも幼稚じゃございませんか?」

ヴァージス「だぃ…じん…どの?」

大臣「騎士とはすなわち王国最強の称号…それゆえに近衛とは一線を画する存在なのですよぉ〜?」

ヴァージス「ぐっ…」

大臣「しかし結果はどうです?たった一人の近衛に騎士長を含め、5人があえなく敗れましたねぇ〜?」

ヴァージス「さ、再試合を申し出る!先程は油断していたが次こそは……」

大臣「いぃ〜え、結構?敗因はただ一つ、貴方が弱いからです?」ニヤァァ

大臣「恥の上塗りはおよしなさい?潔く退くのもまた騎士道?」

ヴァージス「……!」ガクッ

政務官「しかし幼少より英才教育を受けてきた騎士が下僕上がりの平民に成す術もなく敗れ去るとは…?
これは一度、軍の制度を見直してみる必要がありそうだ?」

大臣「んぅ〜?いっそのこと騎士とかいう名ばかりの称号を剥奪しますか?」

騎士団's「」ビクッ

ヴァージス「ま、待ってくれ!それだけは……」バッ

貴族「黙れ!お前たちが敗れた事で我ら貴族の面子も潰されたのだ!」

ヴァージス「し、しかし……」

貴族「平民に遅れを取るとは貴族らしからぬ過ちよ!こうなれば取るべき手段は一つ!爵位を返上せよ!」

ヴァージス「なっ…」

貴族「平民が平民に敗れたのであれば問題ない?これ以上、我らに恥をかかせてくれるな?」

ヴァージス「〜〜〜!」ワナワナ

団長「お待ち願おう!」

貴族「なんだ、ルフィアス?」

団長「これは剣術家の試合であって身分は関係ござらん!同じ国の民同士で貶め合うなど言語道断!」

貴族「愚かな…これだから平民は?」

大臣「まぁまぁ、ルフィアスの意見も一理ありますよ?この場は幕を閉じましょうか?ねぇ、陛下?」

国王「…うむ」
251: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:07:54 ID:GH7i5DEIyQ
国王「何はともあれ両雄、共に素晴らしい健闘ぶりであった。誉めて遣わそう!」

近衛's「」ハハーッ!!

国王「特にルフィアス…貴殿の剣技の冴えは目を見張るものがあった。
無理を押して迎え入れた余の判断は間違いではなかったな」

団長「ありがたき幸せ!」ザッ

ヴァージス「ぐ…くきき…!」ギリギリ

国王「騎士団も今回は残念だったが…この敗北を期により一層、己の剣に磨きをかけるといい」

騎士団's「ははーっ!」ザッ

国王「高みを目指すには更なる高みを登る人物に教えを乞うのがよかろう」

ヴァージス「」ピクッ

国王「同国の士としてルフィアスに教えを賜るのはどうだろうか?」

ヴァージス「ルフィアスに…!?」

国王「平民の出であろうが持って生まれた才覚はそなたらを上回っておる。
つまらぬ意地は捨て、互いを高め合える程の信頼を築いてみせろ?」

ヴァージス「」プルプル

国王「余はそなたらにも期待しておるぞ?」

ヴァージス「も、もったいのう…ございます…!」ビキビキィッ

………………
252: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/21(日) 18:09:26 ID:GH7i5DEIyQ
―――領主邸(金蔵)―――

ヴァージス「くっ…ふふ!あんなに情けない想いをさせられたのは後にも先にもあの一度きりだ…!」

団長「……」

ヴァージス「分かるか!?お前に俺の苦しみが!?」

団長「…分からん」

ヴァージス「だろうな!?平民の!しかも下僕の成り上がり風情に分かる訳がない!?」

団長「やれやれ…お前たち貴族はなぜそうまでして見栄を張りたがるのだ?」

ヴァージス「なにぃ!?」

団長「つまらん自尊心に囚われなければ今も共に剣士として働けたであろうに?」

ヴァージス「騎士の誇りは平民と違って安くないんだ!貴様の下で働くぐらいなら自害するさ!」

団長「ふん…我々の責務は国の守護であって自尊心を守る事ではない」

ヴァージス「黙れ!誇る物もない哀れな下僕が!?」

団長「国への忠誠がワシの誇りだ」

ヴァージス「抜かすな!」ジャキッ

団長「武器を捨てろと言った筈だ」

ヴァージス「貴様の指図は受けぬ!!」ジリッ

団長「…刃向かうのであれば斬らねばならなくなる」ジャキッ

ヴァージス「ほざけっ!?」ブンッ

団長「」サッ

ヴァージス「小癪な…!」ビュンッ

団長「……」ギィンッ

ヴァージス「守るばかりが貴様の剣か!臆病者め!?」ギギギッ

団長「……ぬん!」ガキンッ

ヴァージス「ぐっ…!」ザッ
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