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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


156: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 22:49:55 ID:o6D2/o4bEU
〜〜〜朝〜〜〜

―――役員の家―――

役員「昨日はどうだったべ?楽しめたけ?」

母「えぇ、いろいろ体験させてくださって楽しかったです?」ニコニコ

カロル「ベルメロのミルクおいしかったよ!」

役員「そりゃ良かったべ!今んとこめぼしい観光地みたいなモンはねぇだがウチは農村だべ!
どうせ来てくれるなら農業に興味を持ってほしいかんな!」

母「ホビットは元々、自然に暮らす種族ですから生きていく上で栽培の知恵は欠かせません。
きっと旅先で会ったら喜んで村を訪ねると思いますわよ?」

役員「そりゃありがてぇ!あんた様に頼む事じゃねぇが村の宣伝、よろしくお願いしますっぺ!」ペコッ

母「そんなとんでもない?あたし達も同族として安らげる地を提供していただけるのは嬉しいですもの?」

カロル「こんな村がいっぱいできたらいいのにね!」

役員「くぅ〜!そう言ってもらえっと助かるべ!オラ、もっと村を盛り立てるべ!」

ガチャッ

村人1「村長!大変だ!」

役員「ん?なんだべ?せっかくお客がいらしてるだに?」

村人1「いいからちょっと役場に来てけれ!」

役員「なんかただならぬ様子だべな。分かったべ」

母「あ、あの……」

役員「二人はここで…あ、退屈しちまうだな。いてくれてもいいし出掛けてもいいべ。
だけんど旅立つ前には一声かけてけれ?ちゃんと礼がしてぇだ!」

母「…わ、分かりました?」

役員「ほんじゃ後でな!」スタスタ

カロル「……?」
157: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 22:51:52 ID:g4lCkLBiEw
―――村役場―――

ウゥー ゲホッ ゴホッ クルシイヨー

役員「…な、なんだべ。何があったべ!」

村人1「わかんねぇだよ!朝、畑さ耕すべと思って外に出たらあちこちで人がぶっ倒れてよ!」

憲兵1「一応、不調を訴える物だけ役場に集めてありますが誰か医術師に看てもらわない事には対処できません」

役員「と、とにかくクーペさ呼ぶだ!あの娘ならなんとかしてくれっぺな!」

村人1「それがクーペもいねぇだよ!」

役員「あ、あんだって〜!?」

門番1「クーペちゃんなら見ましたよ」

役員「ほんとけ!どこ行っただ!?」

門番1「ココット君と一緒に村の外に出ました。薬草を探しに行くと……」

役員「こんな時になにやってんだべ〜!?」

ガチャッ

青年ホビット「一応連れてきましたけど…」オロオロ

医術師「はんっ…?」ジロジロ

役員「げげっ!よ、よりによってヤブ医者だべか!?」

医術師「おいおい?口の聞き方に気を付けろよ?倒れてる奴ら…助けてぇんだろ?」

役員「お、おめぇなんぞに何ができるっぺ!?」

医術師「そりゃ症状を診ねぇと分からねぇな?」
158: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 22:57:15 ID:o6D2/o4bEU
役員「大丈夫け?酒びたりのヤブ医者に触らせちまって……」

青年ホビット「だ、だって他にいないじゃないですか…?」

村人2「うっ…ぐぐ…!」プルプル

医術師「……痛みはどこから来てる?」

村人2「む、胸の辺りだべ…!胸焼けが止まらねぇで息苦しいだ…!?」プルプル

医術師「あんたもか?」

村娘1「……!」コクッコクッ

医術師「なんかしら心当たりは?」

村人2「んなもん…ねぇだ!いつも通りだべ…!?」プルプル

医術師「なんでもいいんだぜ?今朝か昨晩の飯でもどの辺で症状が起きたかでも……」

村娘1「そ、い…えば……」

医術師「ん?」

村娘1「水…飲んでから……急に苦しく……」

村人2「はぁっ…うぐっ…お、おらもだ…!井戸の水さ飲んでから…」

村人3「そ、そうだべ…!昨日、カカアが作った雑炊も…井戸水で…!」

医術師「ふーん…水が腐ってたんじゃねぇの?」

役員「村の井戸はちゃんと役員で管理してるだ!」

医術師「んじゃ井戸水になんらか異物でも入ったんじゃねぇか?
毒虫が水に浸かって鱗粉でも混ぜたか…はたまた野鳥の糞でも入ったか」

役員「それはねぇ!井戸水は蓋さ被して清潔に保ってるだ!」

医術師「じゃあ誰かが仕込んだって事になるな?」

役員「バカ言うでねぇ!村人を疑うだか!?」
159: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 22:59:05 ID:g4lCkLBiEw
青年ホビット「あ…!」

医術師「ん?なんか知ってんのか?」

役員「まさかおめぇ…!?」

青年ホビット「ち、違います!昨日の日暮れ時、クーペちゃんが井戸の前にいて…それに様子がおかしかったから…!?」

役員「クーペが!?」

村人1「なんだって!?」

医術師「……」

憲兵1「門番さん、先ほどクーペさんはどちらから出られました?」

門番1「正面口からです!」

憲兵1「では村の憲兵総員で捜索に当たります。
山の地理に詳しい方、どなたか付いてきてもらえますか?」

村人1「んじゃおらが!」

役員「憲兵さん!おねげぇしますだ!絶対にあいつを捕まえてけろ!」

憲兵1「そのつもりです」
160: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 23:00:34 ID:g4lCkLBiEw
役員「クーペの奴…!拾ってやった恩も忘れてぇ!?」

医術師「あいつを捕まえて患者達を治させるのか?」

役員「んな訳ねぇだ!憲兵さんに引き渡すに決まってるべ!」

医術師「……」

役員「おめぇらもだぞ!」

青年ホビット「え?」

役員「ちょーっとばかし甘い顔したら図に乗ってぇ…とんでもねぇ奴らだ!やっぱりホビットはホビットだべ!」

青年ホビット「そんな…!?僕はなんにも…!」

役員「うるせぇ!同じ種族なんだから同罪だべ!」

青年ホビット「……!」

村娘「せ…せい…!たすけ…て……」

村人2「た、たのむべ…!」

医術師「……」

役員「先生!あんただけが頼りだ!村のもんを治してけれ!」

医術師「ヤブ医者に任せていいのか?」

役員「この際、医者ならなんでもいいべ!」

医術師「…やだね」ケッ

役員「え…!?」
161: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 23:03:46 ID:g4lCkLBiEw
医術師「クーペが医術を持ってると分かったらそっぽ向いてよ?今度は助けろだ?」


役員「す、すまなかったべ!あん時はどうかしてただ!井戸水に毒を盛るようなホビットを信用したオラ達がバカだった!」

医術師「じゃあ自業自得だな。くたばれ?」

役員「お、おめぇ…それでも医者だかぁ!?」

医術師「…村長さんよ?」

役員「?」

医術師「なんでそんなにこいつらが心配なんだ?」

役員「そ、それは…村長として村人さ心配するのは当然だべ!」

医術師「ちげぇだろ?」

役員「なっ…」

医術師「お前が心配してんのはこいつらの田畑だろ?
この村の名産で町々に卸してる作物や家畜の生産がおっつかなくなるのが怖いだけじゃねぇのか?」

役員「そ、それは…」

医術師「あんたの口癖は村をでっかくしてぇしてぇってそればっかだ?
俺が来た5年前だってそうだ。医術師が欲しいから、この村に留まってくれと懇願してきたよな?」

役員「う……」

医術師「そんで今度はホビットで村興しか…。用無しになったら、よそ者のオレを冷たくあしらってよ?」

役員「…す、すまねぇ」

医術師「頭下げられたってやなもんはやだね?勝手にくたばれ?」

ウゥー ウゥー クルシイヨー

役員「じゃあもういいだ…。おめぇには頼まねぇ」

医術師「……?」

役員「客のホビットなら旅してっからクーペと同じ事ができっぺ!」

医術師「旅のホビット?」
162: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 21:52:13 ID:gNysKHmunk
ガチャッ

役員「まぁまぁ!まぁまぁ!入ってけれ!」

母「あ、あの…あたし達がなにか?」オロオロ

カロル「倒れてる人たち…どうしたの?」

役員「おめぇらホビットだろ?治してほしいっぺ!」

母「……!?」

医術師「おいおい…」シラー

ウゥー ウゥー ウゥー ウゥー

母「(ど、どうしましょ…。坊やが力を使ったら癒しの力の事が……)」

役員「パパーっと薬でも作ってくんろ!」

母「ご、ごめんなさい…。あたし達……」

カロル「」ピトッ

フワッ

村娘「え…?苦痛が…消えたべ?」ムクッ

母「坊や!?」

カロル「ごめんなさい、お母さま。言いたいことは分かるけど…苦しいままにはしておけないよ…」

医術師「」ポカーン

役員「すっスゲェベ!なにしたんだ!?」

母「あ、あれです!その…体のある部分を押すと良くなるあれです!」

役員「つ、ツボ押しけ!?スゲェだな!?」

カロル「う、うん。ツボ押しだよ?」ピトッ

役員「その調子で頼むべ!」

カロル「…は、はーい」
163: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 21:55:55 ID:gNysKHmunk
フワッ フワッ フワッ フワッ

村人's「おぉー!?治ったべー!?」ムクッ

役員「よくやっただ!ぼうずは村の恩人だべ!」

カロル「えへへ…」テレッ

母「うまく誤魔化せたわね?」ウインク

カロル「うん、ありがとう。お母さま?」ニコッ

医術師「こ、こんなデタラメがあるか…!?ホビットって種族はどうなってんだ…!?」

役員「おめぇ様たち、ずっとここにいてくんねが!?」ガバッ

カロル「」ビクッ

役員「おめぇ様がいりゃクーペもヤブ医者もいらねぇべ!そうしてけれ!?」

母「…せっかくの申し出ですけど、それは出来ません」

役員「どうしてだ?人探しなんかやめたらいいべ?」

母「あたし達が探してる方はすごく大切な人なんです。会えないと…一生後悔してしまいます」

役員「んならオラが教団の人に聞いて呼んでもらうべ!それならいいじゃねぇか!?」

母「…探し人は一人じゃないので」

役員「〜〜〜!」ワナワナ

医術師「はんっ!残念だったな?」

役員「うるせぇだ!?」

カロル「ボクたちじゃなくても旅先で会った仲間にちゃんと村のこと教えるよ?」

役員「いらねぇべ!オラはおめぇらが欲しいんだ!」

カロル「へ?」

ガチャッ

憲兵1「お話し中、失礼」

医術師「……」ジッ

クーペ「…先生」ジッ

ココット「…」オロオロ
164: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:04:43 ID:gNysKHmunk
役員「お!捕まえてくれただか!」

憲兵1「すぐ見つかりましたよ。なんせ村の近くにいましたから」

村人2「よくも毒なんか盛ってくれたな!」

村人3「とんでもねぇ悪党だ!」

クーペ「…先生が?」

医術師「いや、オレじゃない?」

クーペ「では…誰が…?」

役員「この二人だべ!」

カロル「あ…昨日の…?」

母「青年たちを諫めてくださった…?」

クーペ「…あなた方が?」パチクリ

役員「クーペ!なんでこんなマネしただ!?」

クーペ「……」

ココット「姉ちゃん…なにかしたの?」オロオロ

役員「正直に言うべ!この恩知らずが!?」

クーペ「…あなた達を戒めたかったから」

役員「はぁ!?戒めぇ!?」

クーペ「わたし達を受け入れてくださったのはありがたく思ってます。とても嬉しかった…」

役員「じゃあなんで毒を盛るだ!?」

クーペ「…あなた達の根本は何も変わっていないと分かったからです」

役員「なにぃ…!」
165: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:07:44 ID:gNysKHmunk
役員「どういうこったべ!」

クーペ「たとえホビットを差別しなくても…同じ人間を差別するんなら意味がない…!
対象が先生に変わっただけで…やってる事はおんなじですよ!?」

役員「な、なにを言うべ!オラ達は……」

クーペ「先生がいらなくなったらわたしを…わたしがいらなくなったら誰かを持て囃して…利用価値があるかないかでしか見てくれない!
この村で5年間も献身的に尽くしてきた先生を意味もなくヤブ医者呼ばわりして…貶めるのをなんとも思わない!」

クーペ「だからいっそ全て壊してしまおうと思ったんです…。
わたしがいらなくなれば…また先生の居場所が出来る筈だから」

医術師「クーペ……」

クーペ「でも失敗しちゃったみたい…すみません、先生。お役に立てなくて?」

ココット「姉ちゃん…」

クーペ「ごめん、ココットは関係ないのに…巻き込んじゃったね?」

ココット「…いいよ!ぼくだって先生にいてほしいもん!」

クーペ「」クスッ

医術師「お、お前ら…」ジワァ

役員「ふざけんでねぇ!そんな理由で村さ騒がしたんか!?」

村人1「なんてはた迷惑な奴だべ!」

村娘「あんたなんか消えちまえ!」

村人2「毒飲まされて、こっちはどんだけ辛かったか!?」

クーペ「……」

カロル「…もういいじゃない?」

役員「なにぃ?」

カロル「みんな治ってクーペさんたちが帰ってきて、ぜんぶ元通り!」

村人's「はぁぁ?」

カロル「いろいろあったけどみんな仲良しだったんでしょ?ケンカはおしまいにしよ!」

ザワザワ ザワザワ
166: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:10:22 ID:U5cFETEcUg
村人1「なんだ、そりゃ?アホけ?」

村人2「なに言ってんだ、おめぇ?」

カロル「ボク…来たはっかりでなんにも知らないけど…この村はすごく暖かくていい所だよ?」

クーペ「わたしもそう思ってたよ…。でも実際は違った。
ここの人間たちは利用価値でしか物事を判断できないの」

役員「お、おめぇ!村を侮辱するなぁ許さねぇぞ!」

ココット「みんなが先生いじめるからだろ!」

村人1「うるせぇだ!ガキはすっこんどけ!」

医術師「どいつもこいつも…」

母「み、皆さん一回落ち着きましょう?」

役員「これが落ち着いてられっか!」

カロル「…もったいないよ。こんなにいい村なのに」

役員「……!?」

カロル「理由は知らないけど仲良くしようって思ったんでしょ?
それってすごく大事なんじゃないかな?」

クーペ「わたしたちは…利用される為に共存を選んだんじゃない。
人間と共存する事で差別が無くなると思ったから…」

カロル「クーペさんたちがもっと心を開いてあげたら、きっと村の人たちも応えてくれるよ?」

クーペ「…わたしに利用価値がある内はね」

カロル「修道院で子供たちが遊んでたり牧場で働いてたり楽しそうにしてたもの。こんなに素敵な村ないよ」

ココット「うん、修道院たのしーよ!みんな遊んでくれるし勉強させてくれるし!」

カロル「ね?楽しいって?」ニコッ

クーペ「……」
167: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:13:12 ID:gNysKHmunk
カロル「村長さんも村の人たちも利用したいだけなら、こんなに楽しい村にはならなかったんじゃない?」

役員「そうだべ!オラはおめぇらの事も真剣に考えて村作りしてんだ!」

医術師「はんっ?オレをヤブ医者呼ばわりしといて…」

役員「ヤブ医者をヤブ医者っつって何がいけねぇだ!?」

カロル「村長さんはどうして、その人を責めるの?」

役員「ヤブのクセに村に居座るからだべ!」

カロル「村の人たちは?」

村人1「え?」

カロル「この人が嫌いなの?」

村人1「そ、そりゃあ…」

カロル「…この人がみんなになにかしたの?」

村人1「……」

村人2「し、してねぇけど…クーペが薬で治療するようになってから、今まで切ったり縫ったりされてたのが馬鹿馬鹿しくてよ…」

カロル「…じゃあ医術師さまはみんなを傷付けたくて切ったりしてたのかな」

医術師「はぁ?ちげぇよ!?」イラッ

カロル「……」

医術師「ケガ人や病人を救ってやるのがオレの仕事だ!
その為に必要な技術だけを身に付けた!楽しんで患者の体を痛め付けてた訳じゃねぇ!!」

クーペ「そうです!先生はとても優しい方なんです!わたし達にお金が無いのを知っていても弟の手当てをしてくれました!」

ココット「先生のおかげでもう痛くないよ!」

村人's「……」オロオロ
168: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:21:39 ID:gNysKHmunk
役員「だ、だからなんだべ!?関係ねぇべ!?」

クーペ「関係ないですって…!?」

役員「おめぇの治療がクーペよりヘタクソなのに変わりねぇべな!?」

医術師「ぐっ…!」ギリッ

クーペ「優劣なんて付けられません!投薬と手術ではそもそも分野が違うのですから!」

カロル「よく分かんないけど…助けてあげたい気持ちがあって、ちゃんと治してたんだよね?それで十分じゃない?」

医術師「そうさ!自慢じゃないが…世話になってる村人の為だ!軽いケガは無償で手当てしてきた!そうだよな!?」

村娘1「ま、まぁ……」マゴマゴ

医術師「切ったり縫ったりとか言うがな!
そこまでやらなきゃならない程、あんたらの命が危うい場面があったんだ!
思い出してみろ!畑を食い荒らすイノシシに襲われた村人がぶっ飛ばされて裂傷を負ったよな!?」

村人3「う……」

医術師「あのまま血を流し続けたら間違いなく死んでたぞ!?
傷口をパッカリ開いたまま日常生活を送れると思ってんのか!?
こんな不衛生極まりない山ん中じゃ未知の菌がダバダバ入り込んで3日ともたずにくたばるだろうぜ!?」

村人3「く、クーペは…薬草を張っ付けるだけで治しただ…」モゴモゴ

クーペ「浅い傷でしたら時間を掛けられますから薬液を浸した薬草を患部に張るだけでいいかもしれません。
ですが重傷を負って急を要する場合、応急措置をして何日も様子を…なんてゆっくりしてられないんです!」

村人3「そ、そんなの…よくわからねぇべ」

医術師「血の流れをせき止めるには出口を塞いじまうのが一番だ。
命に危険が迫る緊急時ともなれば、一刻の猶予もない。
流血が最も早く人体を衰弱させるんだ。多少は強引であっても…縫合はやむを得ない」

村人3「う、うぅ……」

医術師「あんたらの恐れる医術ってのはな…元を正せば先人達が様々な重傷や病に立ち向かって得た知恵だ。
その中で何度も失敗と成功を繰り返し、多くの犠牲を生んできたかも分からんが…少なくとも医術は人が人を救う為に備わったものなんだよ!」

村人's「」オロオロ

医術師「オレはこの仕事を誇りに思ってた!だからこそ悔しかったんだ!
なんも分かってねぇ連中にけなされて…人を凌ぐ知恵を持ったこいつが現れて…医術師としての誇りをズタズタに引き裂かれた!」

医術師「酒なんか飲んだ事もなかったが…案外いいもんだな。
シラフでいたら今頃オレは……お前らへの憎悪に狂ってぶっ壊れてたろうぜ?」ググッ

村人's「……」ウグッ
169: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:25:01 ID:gNysKHmunk
役員「だから関係ねぇべさ!もうおめぇらなんかいなくても…オラ達にはぼうずがいるべ!」

クーペ「その子が…?」

カロル「?」キョトン

役員「ぼうずはな!ツボを押すだけで病を治しちまうだ!おったまげっぞ!?」

医術師「…ふん、オレやクーペを見限って今度はガキに任せんのか?」

役員「オラぁ村をでっかくするだ!その為には新しくていいモンをじゃんじゃん取り入れて、古くて使えねぇモンはどんどん捨ててくだ!」

クーペ「……そんなやり方、間違ってますよ。わたし達はあなたの村の備品じゃありません」

役員「うるせぇだ!ポンコツは黙ってろ!」

カロル「ねぇ、村長さん」ポンポン

役員「なんだ!?」

カロル「村にお医者さまが二人いたらいけないの?」

役員「……?」

カロル「一人だけだとたくさんケガしたらいっぱいいっぱいになっちゃうよ?
でも二人いたらその分、たくさんのケガとか病気、治してあげられるんじゃないかな?」

役員「ん…そ、そりゃそうだが…こんな小さな村でそんなたくさんのケガ人が……」

カロル「今日は10人くらい苦しんでたじゃない?」

役員「そ、それはこいつが毒を…!」

カロル「…小さな村だから大きなことにならないって言うけど…村長さんは村を大きくしたいんでしょ?」

役員「そうだ!でっかくするだ!」

カロル「それならこの先、人もホビットも増えるよね?もっとたくさんのお医者さまが必要だと思わない?」

役員「うーん…言われりゃそうだな…」

カロル「クーペさんがみんなに毒を飲ませたのって、もしかしたらそれを教えてあげたかったからなのかも?」

クーペ「……?」

カロル「今日みたいになったら一人だと大変だよって?
だから村にお医者さまが二人いた方がいいよって…そう言いたかったんだと思うの」
170: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:30:13 ID:gNysKHmunk
役員「ほ、ほんとけぇ?」

カロル「そうなんでしょ?」ニコッ

クーペ「ち、ちがいます!わたしは……」

ココット「そうだったんだ!姉ちゃん、すごい!」

クーペ「え…?」

ココット「おかしいと思ったんだ!どんなことがあったって姉ちゃんが誰かを傷付けるわけないもん?」ニコニコ

クーペ「っ…!」ズキン

医術師「…そういうことにしとけよ?弟の手前だ、余計なことは言わない方がいい?」コショコショ

クーペ「先生……」

役員「どうなんだべ?はっきりするべ!」

カロル「村の為なんだもんね?」

クーペ「…そう、です」

ザワッ

村人1「じゃ、じゃあクーペはオラ達の為に…?」

村娘1「そうだべ…よくよく考えたら毒なんか盛る子じゃねぇべ…」

村人2「そ、そうだったんか…。気付けなくてごめんな」

村人3「先生もすまねぇ…。オラぁ死にかけた時、すぐに駆け付けてくれたもんな」

村娘2「…二人がそんなに考えてただなんて知らなかっただ。わりぃ」

クーペ「い、いえ……」

医術師「ま、まぁな……」ポリポリ
171: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:33:22 ID:U5cFETEcUg
カロル「村長さん、やりすぎかもしれないけど村の為だもの。許してあげようよ?」

役員「…う、うーん」

母「もう十分なんじゃないですか?
お二人の想いも村の方々に伝わりましたし…村長さんも納得するべきだと思いますよ?」

役員「で、でもなぁ…」

母「それからあたしと坊やは残りませんから?
お二人を追い出したら村にお医者様がいなくなってしまいますわよ?」

役員「そ、そりゃ困るだ!山ん中はしょっちゅう獣が村に入ってくるだぞ!」

母「でしたら村長さんも今までの暴言をお二人に謝って許しを得た方がいいんじゃないかしら?」

役員「う……」

カロル「…どんな理由があってもいらないなんて言われたら悲しいよ?
村長さんが村を大きくしたいのは分かるけど…住んでるみんなが幸せじゃないといい村にはならないと思うな?」

役員「……」

カロル「ボクはこの村が大好きだよ?こんなに優しく受け入れてくれたの初めてだもの?
だからもっと大きくなって!もっともっと幸せいっぱいな村にしてほしいんだ?」ニコッ

役員「そ、そうか…?」

カロル「うん。だからね、焦らないでゆっくり?
みんなで暮らすんだから…一人で急ぎすぎないで?」

役員「そうだ…な」ガクッ
172: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:35:47 ID:U5cFETEcUg
役員「すまねぇ。オラが間違ってただ。
やっぱり二人がいねぇと…オラも村人たちも不安だべ。
村人やオラの数々の暴言、どうか許してくんねぇか」ペコッ

クーペ「……」

医術師「……」

役員「お、オラだって本当はこんな事ばっか言いたくねぇだ…。
だども国がようやく動いてくれて、今までみてぇな自給自足の貧乏生活からやっと脱け出せそうなんだ。
ちっぽけな村を大きくして…もっと人を増やして…豊かになりゃあ…あんなひもじい想いをしなくても済むと思っただ」

母「……」

役員「20年前の事だべ。すげぇ嵐に見舞われて…村の作物がぜーんぶダメになっちまった。
そん時は獣や魚も山からいなくなって…オラ達は食うものもなくて川の水を飲んだり、土を掘り返して木の根や虫を食って飢えを凌いだべ」

役員「麓の町に援助を求めもしただが…どこも貧しくてよ。そっぽ向かれちまった。
まぁそれでも必死に節約さしてなんとか生き延びたべ」

役員「だども…乳飲み子や幼子らはそうもいかねぇ。ちっちゃい体には辛い環境を生きてく気力はなかったべ。
女衆もロクに食ってねぇから乳は出ねぇし、栄養の付くもんはどこにもねぇ。
しかたねぇから水ばっか飲ましてる内に…1週間もしねぇで死んじまっただよ」

カロル「かわいそう……」グシッ

村人1「くっ…!」

役員「オラはあん時の悔しさを忘れられねぇ。貧乏なままじゃ同じ過ちを繰り返すだけだべ。
だから…村さでかくして、嵐が来ようが地面がドシンドシン揺れようがへっちゃらな村にしたかったんだ」

クーペ「…村長さん」

役員「…すまねぇな。オラの勝手に巻き込んじまって…いつの間にか見た目の大きさにこだわり過ぎてたかもしんねぇ」シュン
173: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:42:30 ID:gNysKHmunk
医術師「はんっ…くだらねぇな」ケッ

役員「う……」

医術師「…オレは許さねぇぞ。あんたも村の連中も?」

役員「…本当に申し訳ねぇだ」

医術師「もう無償でなんてやらねぇよ。これからはバンバン治療費ふんだくってやるから…そのつもりでいろ?」

村人1「え…?」

村人2「残ってくれるだか?」

医術師「しゃあねぇだろ?オレみたいなヤブを雇ってくれんのなんか…この村くらいのもんだ?」ニッ

村娘1「せ、先生…!」

村娘2「ありがとうございますだ…!」

クーペ「わたしも…ここに残らせてくれませんか?先生と一緒に働きたいんです」

医術師「ふっ」

役員「そりゃ願ってもねぇ!こちらこそ頼みますだ!」ペコッ

青年ホビット「無事に収まったみたいですね」

役員「あ、その…すまねぇ。さっき言ったことは本気にしねぇでけろ?」オロオロ

青年ホビット「気にしてませんよ。あの子の言うように僕らもこの村が大好きですから?」ニコッ

役員「うっ…くぅぅ…!オラぁ…なんちゅーひでぇ事を言っちまっただ…!」グシグシ

青年ホビット「一緒に村を大きくしましょう!人間もホビットも手を取り合って立派な村へと成長させるんです!」

村人1「んだな!村長ばっかしに任せて役場をほったらかしてたオラ達もわりーだ!」

村娘1「せっかくホビットさ村に迎えたんだべ!よその村にはねぇ行事とか農作をいっぱいしてくべ!」

村人2「そうだ!村の会合にホビット連中も加えて話し合えばおもしれぇ事じゃんじゃん閃くかもしんねぇだ!」

ココット「じゃあさ、じゃあさ、お祭りとかしよーよ!」

村人3「お、いいだな!いっちょ村を上げて恒例の祭りでも作るべ!」

役員「……!」

カロル「」ニコッ

母「ふふ…?」クスッ
174: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:46:54 ID:U5cFETEcUg
〜〜〜夜〜〜〜

―――役員の家―――

役員「今日は本当にすまねぇだ!村の問題に付き合わしてよ!」

カロル「平気だよ!みんな仲直りしてくれてよかったね?」ニコニコ

役員「んだな…。オラぁ村さ、村さって息巻いて…村をダメにしちまうとこだった」

母「次に訪れる日が待ち遠しいほど…この村の未来は希望に満ち溢れてますわね?」

役員「オラ頑張るだよ…。もう村人達を置いてきぼりにゃしねぇ」

カロル「そうだね。それがいいと思う!」

母「えぇ、一人でたくさん考えると行き詰まるし、せっかく考えてたこともあんまり出来なかったりして疲れちゃうものね?」

カロル「うん!みんなで一つずつやりたいことを出し合えたら、もっとたくさんのこと考えられるし、やりたいこともすごく早く決められるよ?」

役員「んだな…その通りだ。オラも分かってなかった訳じゃねぇんだけんど……」

母「村のことを真剣に考えるのはいいですけど…村長さんが一人で焦ってイラついてたら村の皆さんにも伝染して楽しい雰囲気もピリピリさせてしまいますわよ?」

役員「……」

母「あら…?」

役員「またちょっとばかし昔話してもいいだか?」

母「…構いませんよ?」

カロル「?」
175: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:52:42 ID:gNysKHmunk
役員「…ありゃ思い出したくもねぇが……。
幼子らが餓死しちまって…なんもする気が起きねぇ時に若者らが立ち上がってくれたんだどもよ」

役員「数年もしたら…ほとんどがオラ達を捨てて山を降りてった」

母「まぁひどい…!」

役員「この村は古臭くて安定もしねぇありきたりな農村だ…。
使い古されたもんは新しい可能性に見放されるのがオチだべ…」

役員「みんなも薄々気付いてるだ…。このままじゃ村の寿命は長くねぇ。
オラ達の世代がくたばるのも時間の問題だ」

役員「……そうなっちまう前になんとかしたかっただ。
オラ達がガキの頃にはしゃぎ回った野山に人っ子一人いなくなったら…親父様達が守ってくれた村がなくなったら……死んだ子らも浮かばれねぇべ」

役員「なによりそんな悲しいこと……想像したくもねぇ」グッ

カロル&母「……」

役員「焦りたくもなるだよ…。オラにとっちゃ村が一番の宝物だ。ふるさとだけは手放せねぇ」

カロル「…だからかな」

役員「へ?」

カロル「ボクね、村長さんがクーペさんたちを責めてた時も…なんだかイヤな感じがしなかったの」

役員「……?」

カロル「村長さんの気持ちが…ホントに一生懸命に思えたから」

役員「そ、そうだべか?」

カロル「…何かに夢中になると周りが見えなくてつまずいちゃうじゃない?
村長さんはそんな感じがしてたんだ?」

役員「……かもしんねぇな」

カロル「ボクも自分のしたいことばっかり夢中になって…たくさんの人達を傷付けてきたから…ちょっぴり分かるの?」ニコッ

役員「…えれぇ苦労してんだなぁ」

カロル「…村長さんは気付けたから、もう大丈夫だよ?
ボクは少し遅かったから取り戻すのに時間が掛かりそう…」

役員「……ありがとな。なんか励みになったべ」

カロル「えへへ!よかった?」ニコニコ

母「っ……」グッ
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