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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


148: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/3(水) 21:42:34 ID:BXUEK2.5u2
役員「力になれなくてすまねぇだ…」

母「いえ、とんでもないです…?こちらこそ無茶言ってごめんなさい?」

役員「お詫びとしちゃなんだけんど…もう少し滞在するんならオラん家の物置さ貸すから、この村を観光していってほしいべ」

母「そ、そんな…お気になさらず…?」

役員「実はオラ、ここの村長なんだべ。
やっと国がこの村のことさ、目ぇかけてくれたんだが…実のところ、今までとそんなに変わってないべ」

役員「農業さ精出して、いっぱい家畜や作物を生産するけんど…国が注目してんのは村の周辺にあるオイールの樹ばかりで…この村自体が潤う話じゃねぇだよ」

役員「オラ…村さ、でかくしてぇ。んだからホビットもすんなり受け入れたべ。
変化に対応しねぇで古い風習にとらわれちゃ時代と共に老朽化しちまうかんな」

母「……」

役員「んで、ちょーっとばかし面倒かとも思ったんだが…いざ一緒に暮らすといい奴ばっかしだべ。
自然物に詳しいから農業の参考になんし、非力だが人間よりよっぽど素直で働きモンだ」

役員「しかもその辺の草花や昆虫、獣のエキスでホビット独自の調合薬なんかを作ってくれてな。
医術に不足してた村としては大助かりだべ!」

役員「欲を言うと…もっとたくさんのホビットに来てほしいだよ。
差別してきたオラ達がわがままかもしんねぇけど…本当にありがてぇ」

母「」ニコッ

役員「だから旅先であんたらが住み処に困ってるホビットを見かけたら、ここの事さ教えてやってほしいだ!
んで、その為にも…この村を観光して、良いとこも悪いとこも知ってってくんねが?」

母「…喜んで?」ニコニコ
149: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/3(水) 21:48:28 ID:BXUEK2.5u2
〜〜〜夕方〜〜〜

―――山間の村(牧場)―――

母「搾乳を体験させてもらえるなんて良かったわね?」

カロル「うん!初めてやる!」ニコニコ

家畜商「観光してくっても鍬持たす訳にゃいかねぇかんな!ウチの牧場で我慢してけれ!
んじゃぼうず!まずは牛の乳をそーっと握るだ!牛を怒らせねぇようにな?」

カロル「こう…?」ギュッ

家畜商「うんだ!力強く!だけんど優しく!母ちゃんのおっぱいだと思って揉むだ!」

カロル「お母さまのおっぱい……こうかな?」ギュッ

母「あ、あの…他に例えようがなかったんですか…?」カァァ

家畜商「母ちゃんのおっぱいなら傷付けねぇっぺ?そういうこった!」

母「そ、そうでしょうけど…!」

ベルメロ牛1「ンモーッ!」ピシャッピシャッ

カロル「あ、出たよ!お母さまのおっぱい!」キャッキャッ

母「あたしのじゃないでしょう!?」

家畜商「がはははは!ぼうずは筋がいいだな!」

カロル「もう一回!」ギュッ

ベルメロ牛「ンモーッ!」ピシャッピシャッ

家畜商「がはははは!んだんだ!その調子で搾りまくってやるだ!」

母「(な、なんかイヤ……)」ズーン
150: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/3(水) 21:50:20 ID:BXUEK2.5u2
マルク「ばうっ!ばうっ!」タタタッ

羊の群れ「メェ〜!」サササッ

家畜商「おー!あの犬っころ、やるでねぇか!遊び足りてねぇマープ羊達がおとなしく柵に入っただ!」

カロル「マルク〜!すごいって!」フリフリ

マルク「わふー!」エッヘン

家畜商「いやー!たまげた!うちの猟犬達も見習ってほしいべ!」

母「…うふふ」ニコニコ

家畜商「すまねぇだな!シーズンだったらマープ共のふかふかの羊毛で帽子か首巻きでも編んでやったんだが」

母「十分楽しませていただいてますから…」ニコニコ

家畜商「向こうで干し草を積んでるホビットがいるべ?」

ザクッザクッ バサッ

母「えぇ…ここで働いてるんですか?」

家畜商「んだ!あいつは見込みがあるべ!物覚えがいいし力仕事は遅いがマジメにコツコツ働いてくれるだ!」

母「へぇ…」

家畜商「オラな、あいつやクーペさ見るとムカッ腹立つべ!」

母「へ!?」

家畜商「オラたちはなんであんないい奴らを差別してきたんだか…教団のでっち上げさ信じた自分を殴りたくなんだ!」

母「……」

家畜商「これからは腹空かしてるホビットさ雇いまくって腹いっぱい食えるようにしてやんべ!それがオラの罪滅ぼしだ!」

母「…素敵な牧場になりますわ。きっと」

家畜商「ははは!やめてけれ!自分で言ってこっ恥ずかしくなっただ!」テレッ
151: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/3(水) 21:53:51 ID:BXUEK2.5u2
家畜商「犬っころさ、戻してくんねが?マープ共は柵に収まったべ」

母「(あぁ…知らない間に世界が変わってる。とても素晴らしい世界に)」チラッ

カロル「マルク〜!そろそろいいってー!戻っておいでよ!」

母「(未だに信じられないけど…坊やが人間の心を開いたからなのよね?)」

母「(……その坊やを授かれたのもまた、人間だった夫があたしの心を開いてくれたから)」

母「(誰も許せずに塞ぎこんでいたのはあたしだけ……本当に愚かで…どうしようもなかった)」

母「(…憎むのをやめるだけでこんなにも素敵な世界が生まれる……差別のない、助け合える世界が)」

母「……」

カロル「お母さま!」

母「」ビクッ

カロル「? どうしたの?」キョトン

母「な、なんでもないわ?」ニコッ

カロル「おじさまがさっき搾ったミルク飲んでいいよって?」

母「あら!いいんですか?」

家畜商「がはははは!ぼうずが搾ったんだからぼうずのモンに決まってるだ!
金はいらねぇから飲んでってけろ!乳クセェかもしんねぇがな!」

母「お言葉に甘えていただきますわね?」ニコニコ

カロル「やったー!」ワーイワーイ

マルク「はっ!はっ!」シッポフリフリ
152: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/3(水) 21:55:51 ID:4a/V8q7lfc
―――村の居住区―――

クーペ「」パッ

パラパラ パラパラ

クーペ「……」ジーッ

サラァァァ

クーペ「………」

青年ホビット「クーペ?」

クーペ「」ビクッ

青年ホビット「井戸なんか見つめてどうしたんだい?」

クーペ「……喉が渇いたんです」

青年ホビット「そっか。でも井戸水を汲むにも君の腕力じゃ桶縄を引っ張れないだろ?」

クーペ「……」

青年ホビット「僕に任せて!農家の手伝いをするようになってから腕力が付いたんだ!」スッ

クーペ「」ハッ

青年ホビット「」グッグッ

クーペ「だめっ!?」バシッ

青年ホビット「わっ!?」パッ

ヒュッ ボチャンッ

青年ホビット「なに…するのさ?」キョトン

クーペ「あ、その…」オロオロ

青年ホビット「?」

クーペ「ごめんなさい!」ダッ

青年ホビット「あ、ちょっ!」

タタタッ………

青年ホビット「……?」
153: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/3(水) 21:57:59 ID:4a/V8q7lfc
クーペ「はぁ…はぁ…」ゼェゼェ

医術師「なにやってんだ、お前?」ジロッ

クーペ「え…せ、先生?」

医術師「あぁ失礼こきました?ヤブ医者がクーペ様に向かってお前だなんて?」

クーペ「……!」

医術師「さぁてと…麦酒でも買って帰るかな〜」スタスタ

クーペ「待ってください!」

医術師「は?」

クーペ「先生は悔しくないんですか!?」

医術師「……」

クーペ「愛想尽かされて!邪魔者扱いされて!今までたくさん村に貢献してきたのに…!?」

医術師「後から来たよそ者に……しかもホビットに何が分かる?」

クーペ「……!?」

医術師「…オレだって薬は扱える。
お前みたいに作ったりはできないから、わざわざ麓の町で買い付けなきゃならないが」

クーペ「……」

医術師「はっきり言って…人間の薬は未だ発展途上だし体への負担も大きい。
それを考えるとお前はこれからの医術を進化させる貴重な存在だよ」
154: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/3(水) 21:59:24 ID:4a/V8q7lfc
医術師「こんな村でくすぶるべきじゃないし、オレなんかに構ってる場合でもないぜ?」

クーペ「そんなことありません!先生の知識は素晴らしいです!」

医術師「嫌味か?」

クーペ「人の体内に直接、踏み込める先生の腕はもっと称賛されるべきです!」

医術師「オレじゃなくても出来るんだよ。医術師なら誰でもな」

クーペ「…わたしの弟を治してくださったのも先生じゃありませんか!」

医術師「……」

クーペ「弟が足を滑らせて坂を転げた時…肘を打ち付けて骨折しました」

医術師「…まだ治ってねぇだろ」

クーペ「……療養中ですけど確実に良くなってます」

医術師「…良くならなきゃ意味ねぇよ」ケッ

クーペ「先生のおかげで、また腕を動かせそうなんです!」

医術師「骨折くらいで大げさだ」

クーペ「弟もわたしも感謝してます!」

医術師「……そりゃどうも」

クーペ「前の先生に戻ってください!ホビットの弟を迷わず治療してくれたあの時に…!」

医術師「…オレは医術師だ」

クーペ「……!」

医術師「だが…患者がいなけりゃタダの穀潰しだ?」

クーペ「う…あ…」シュン

医術師「…お前がオレから患者を奪ったんだよ?医術師としてのオレを殺したんだ?」

クーペ「すみま…せん」

医術師「……」スタスタ

スタスタ スタスタ………

クーペ「……すみません」
155: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/3(水) 22:03:46 ID:BXUEK2.5u2
―――クーペの家―――

クーペ「…ただいま、ココット」

ココット「あ、おかえり!姉ちゃん!」

クーペ「遅くなってごめん。ご飯作るからね」スッ

ココット「先生のとこ?」

クーペ「うん。先生、まだ調子が悪いみたいだから」テキパキ

ココット「早くよくなるといいね?」

クーペ「…そうだね」トントン

ココット「もう治ったかな?包帯取っていい?」

クーペ「まだダメだよ。先生から完治まで3ヶ月かかるって言われたでしょ」

ココット「う〜…ご飯食べにくいもん」

クーペ「お姉ちゃんが食べさせてあげてるじゃない?」

ココット「…修道院でも遊ばしてくんないもん」

クーペ「あと二週間の辛抱でしょ」

ココット「…ケチ」

クーペ「ケチじゃないよ」

ココット「ふんだ!」ボフンッ

クーペ「ふてくされたってダメ?」

ココット「先生、早く治ったって言ってくれないかなー…」

クーペ「……もうすぐご飯できるから」

ココット「え?あ、うん?」キョトン

クーペ「……」

鍋「」グツグツ
156: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 22:49:55 ID:o6D2/o4bEU
〜〜〜朝〜〜〜

―――役員の家―――

役員「昨日はどうだったべ?楽しめたけ?」

母「えぇ、いろいろ体験させてくださって楽しかったです?」ニコニコ

カロル「ベルメロのミルクおいしかったよ!」

役員「そりゃ良かったべ!今んとこめぼしい観光地みたいなモンはねぇだがウチは農村だべ!
どうせ来てくれるなら農業に興味を持ってほしいかんな!」

母「ホビットは元々、自然に暮らす種族ですから生きていく上で栽培の知恵は欠かせません。
きっと旅先で会ったら喜んで村を訪ねると思いますわよ?」

役員「そりゃありがてぇ!あんた様に頼む事じゃねぇが村の宣伝、よろしくお願いしますっぺ!」ペコッ

母「そんなとんでもない?あたし達も同族として安らげる地を提供していただけるのは嬉しいですもの?」

カロル「こんな村がいっぱいできたらいいのにね!」

役員「くぅ〜!そう言ってもらえっと助かるべ!オラ、もっと村を盛り立てるべ!」

ガチャッ

村人1「村長!大変だ!」

役員「ん?なんだべ?せっかくお客がいらしてるだに?」

村人1「いいからちょっと役場に来てけれ!」

役員「なんかただならぬ様子だべな。分かったべ」

母「あ、あの……」

役員「二人はここで…あ、退屈しちまうだな。いてくれてもいいし出掛けてもいいべ。
だけんど旅立つ前には一声かけてけれ?ちゃんと礼がしてぇだ!」

母「…わ、分かりました?」

役員「ほんじゃ後でな!」スタスタ

カロル「……?」
157: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 22:51:52 ID:g4lCkLBiEw
―――村役場―――

ウゥー ゲホッ ゴホッ クルシイヨー

役員「…な、なんだべ。何があったべ!」

村人1「わかんねぇだよ!朝、畑さ耕すべと思って外に出たらあちこちで人がぶっ倒れてよ!」

憲兵1「一応、不調を訴える物だけ役場に集めてありますが誰か医術師に看てもらわない事には対処できません」

役員「と、とにかくクーペさ呼ぶだ!あの娘ならなんとかしてくれっぺな!」

村人1「それがクーペもいねぇだよ!」

役員「あ、あんだって〜!?」

門番1「クーペちゃんなら見ましたよ」

役員「ほんとけ!どこ行っただ!?」

門番1「ココット君と一緒に村の外に出ました。薬草を探しに行くと……」

役員「こんな時になにやってんだべ〜!?」

ガチャッ

青年ホビット「一応連れてきましたけど…」オロオロ

医術師「はんっ…?」ジロジロ

役員「げげっ!よ、よりによってヤブ医者だべか!?」

医術師「おいおい?口の聞き方に気を付けろよ?倒れてる奴ら…助けてぇんだろ?」

役員「お、おめぇなんぞに何ができるっぺ!?」

医術師「そりゃ症状を診ねぇと分からねぇな?」
158: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 22:57:15 ID:o6D2/o4bEU
役員「大丈夫け?酒びたりのヤブ医者に触らせちまって……」

青年ホビット「だ、だって他にいないじゃないですか…?」

村人2「うっ…ぐぐ…!」プルプル

医術師「……痛みはどこから来てる?」

村人2「む、胸の辺りだべ…!胸焼けが止まらねぇで息苦しいだ…!?」プルプル

医術師「あんたもか?」

村娘1「……!」コクッコクッ

医術師「なんかしら心当たりは?」

村人2「んなもん…ねぇだ!いつも通りだべ…!?」プルプル

医術師「なんでもいいんだぜ?今朝か昨晩の飯でもどの辺で症状が起きたかでも……」

村娘1「そ、い…えば……」

医術師「ん?」

村娘1「水…飲んでから……急に苦しく……」

村人2「はぁっ…うぐっ…お、おらもだ…!井戸の水さ飲んでから…」

村人3「そ、そうだべ…!昨日、カカアが作った雑炊も…井戸水で…!」

医術師「ふーん…水が腐ってたんじゃねぇの?」

役員「村の井戸はちゃんと役員で管理してるだ!」

医術師「んじゃ井戸水になんらか異物でも入ったんじゃねぇか?
毒虫が水に浸かって鱗粉でも混ぜたか…はたまた野鳥の糞でも入ったか」

役員「それはねぇ!井戸水は蓋さ被して清潔に保ってるだ!」

医術師「じゃあ誰かが仕込んだって事になるな?」

役員「バカ言うでねぇ!村人を疑うだか!?」
159: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 22:59:05 ID:g4lCkLBiEw
青年ホビット「あ…!」

医術師「ん?なんか知ってんのか?」

役員「まさかおめぇ…!?」

青年ホビット「ち、違います!昨日の日暮れ時、クーペちゃんが井戸の前にいて…それに様子がおかしかったから…!?」

役員「クーペが!?」

村人1「なんだって!?」

医術師「……」

憲兵1「門番さん、先ほどクーペさんはどちらから出られました?」

門番1「正面口からです!」

憲兵1「では村の憲兵総員で捜索に当たります。
山の地理に詳しい方、どなたか付いてきてもらえますか?」

村人1「んじゃおらが!」

役員「憲兵さん!おねげぇしますだ!絶対にあいつを捕まえてけろ!」

憲兵1「そのつもりです」
160: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 23:00:34 ID:g4lCkLBiEw
役員「クーペの奴…!拾ってやった恩も忘れてぇ!?」

医術師「あいつを捕まえて患者達を治させるのか?」

役員「んな訳ねぇだ!憲兵さんに引き渡すに決まってるべ!」

医術師「……」

役員「おめぇらもだぞ!」

青年ホビット「え?」

役員「ちょーっとばかし甘い顔したら図に乗ってぇ…とんでもねぇ奴らだ!やっぱりホビットはホビットだべ!」

青年ホビット「そんな…!?僕はなんにも…!」

役員「うるせぇ!同じ種族なんだから同罪だべ!」

青年ホビット「……!」

村娘「せ…せい…!たすけ…て……」

村人2「た、たのむべ…!」

医術師「……」

役員「先生!あんただけが頼りだ!村のもんを治してけれ!」

医術師「ヤブ医者に任せていいのか?」

役員「この際、医者ならなんでもいいべ!」

医術師「…やだね」ケッ

役員「え…!?」
161: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/7(日) 23:03:46 ID:g4lCkLBiEw
医術師「クーペが医術を持ってると分かったらそっぽ向いてよ?今度は助けろだ?」


役員「す、すまなかったべ!あん時はどうかしてただ!井戸水に毒を盛るようなホビットを信用したオラ達がバカだった!」

医術師「じゃあ自業自得だな。くたばれ?」

役員「お、おめぇ…それでも医者だかぁ!?」

医術師「…村長さんよ?」

役員「?」

医術師「なんでそんなにこいつらが心配なんだ?」

役員「そ、それは…村長として村人さ心配するのは当然だべ!」

医術師「ちげぇだろ?」

役員「なっ…」

医術師「お前が心配してんのはこいつらの田畑だろ?
この村の名産で町々に卸してる作物や家畜の生産がおっつかなくなるのが怖いだけじゃねぇのか?」

役員「そ、それは…」

医術師「あんたの口癖は村をでっかくしてぇしてぇってそればっかだ?
俺が来た5年前だってそうだ。医術師が欲しいから、この村に留まってくれと懇願してきたよな?」

役員「う……」

医術師「そんで今度はホビットで村興しか…。用無しになったら、よそ者のオレを冷たくあしらってよ?」

役員「…す、すまねぇ」

医術師「頭下げられたってやなもんはやだね?勝手にくたばれ?」

ウゥー ウゥー クルシイヨー

役員「じゃあもういいだ…。おめぇには頼まねぇ」

医術師「……?」

役員「客のホビットなら旅してっからクーペと同じ事ができっぺ!」

医術師「旅のホビット?」
162: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 21:52:13 ID:gNysKHmunk
ガチャッ

役員「まぁまぁ!まぁまぁ!入ってけれ!」

母「あ、あの…あたし達がなにか?」オロオロ

カロル「倒れてる人たち…どうしたの?」

役員「おめぇらホビットだろ?治してほしいっぺ!」

母「……!?」

医術師「おいおい…」シラー

ウゥー ウゥー ウゥー ウゥー

母「(ど、どうしましょ…。坊やが力を使ったら癒しの力の事が……)」

役員「パパーっと薬でも作ってくんろ!」

母「ご、ごめんなさい…。あたし達……」

カロル「」ピトッ

フワッ

村娘「え…?苦痛が…消えたべ?」ムクッ

母「坊や!?」

カロル「ごめんなさい、お母さま。言いたいことは分かるけど…苦しいままにはしておけないよ…」

医術師「」ポカーン

役員「すっスゲェベ!なにしたんだ!?」

母「あ、あれです!その…体のある部分を押すと良くなるあれです!」

役員「つ、ツボ押しけ!?スゲェだな!?」

カロル「う、うん。ツボ押しだよ?」ピトッ

役員「その調子で頼むべ!」

カロル「…は、はーい」
163: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 21:55:55 ID:gNysKHmunk
フワッ フワッ フワッ フワッ

村人's「おぉー!?治ったべー!?」ムクッ

役員「よくやっただ!ぼうずは村の恩人だべ!」

カロル「えへへ…」テレッ

母「うまく誤魔化せたわね?」ウインク

カロル「うん、ありがとう。お母さま?」ニコッ

医術師「こ、こんなデタラメがあるか…!?ホビットって種族はどうなってんだ…!?」

役員「おめぇ様たち、ずっとここにいてくんねが!?」ガバッ

カロル「」ビクッ

役員「おめぇ様がいりゃクーペもヤブ医者もいらねぇべ!そうしてけれ!?」

母「…せっかくの申し出ですけど、それは出来ません」

役員「どうしてだ?人探しなんかやめたらいいべ?」

母「あたし達が探してる方はすごく大切な人なんです。会えないと…一生後悔してしまいます」

役員「んならオラが教団の人に聞いて呼んでもらうべ!それならいいじゃねぇか!?」

母「…探し人は一人じゃないので」

役員「〜〜〜!」ワナワナ

医術師「はんっ!残念だったな?」

役員「うるせぇだ!?」

カロル「ボクたちじゃなくても旅先で会った仲間にちゃんと村のこと教えるよ?」

役員「いらねぇべ!オラはおめぇらが欲しいんだ!」

カロル「へ?」

ガチャッ

憲兵1「お話し中、失礼」

医術師「……」ジッ

クーペ「…先生」ジッ

ココット「…」オロオロ
164: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:04:43 ID:gNysKHmunk
役員「お!捕まえてくれただか!」

憲兵1「すぐ見つかりましたよ。なんせ村の近くにいましたから」

村人2「よくも毒なんか盛ってくれたな!」

村人3「とんでもねぇ悪党だ!」

クーペ「…先生が?」

医術師「いや、オレじゃない?」

クーペ「では…誰が…?」

役員「この二人だべ!」

カロル「あ…昨日の…?」

母「青年たちを諫めてくださった…?」

クーペ「…あなた方が?」パチクリ

役員「クーペ!なんでこんなマネしただ!?」

クーペ「……」

ココット「姉ちゃん…なにかしたの?」オロオロ

役員「正直に言うべ!この恩知らずが!?」

クーペ「…あなた達を戒めたかったから」

役員「はぁ!?戒めぇ!?」

クーペ「わたし達を受け入れてくださったのはありがたく思ってます。とても嬉しかった…」

役員「じゃあなんで毒を盛るだ!?」

クーペ「…あなた達の根本は何も変わっていないと分かったからです」

役員「なにぃ…!」
165: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:07:44 ID:gNysKHmunk
役員「どういうこったべ!」

クーペ「たとえホビットを差別しなくても…同じ人間を差別するんなら意味がない…!
対象が先生に変わっただけで…やってる事はおんなじですよ!?」

役員「な、なにを言うべ!オラ達は……」

クーペ「先生がいらなくなったらわたしを…わたしがいらなくなったら誰かを持て囃して…利用価値があるかないかでしか見てくれない!
この村で5年間も献身的に尽くしてきた先生を意味もなくヤブ医者呼ばわりして…貶めるのをなんとも思わない!」

クーペ「だからいっそ全て壊してしまおうと思ったんです…。
わたしがいらなくなれば…また先生の居場所が出来る筈だから」

医術師「クーペ……」

クーペ「でも失敗しちゃったみたい…すみません、先生。お役に立てなくて?」

ココット「姉ちゃん…」

クーペ「ごめん、ココットは関係ないのに…巻き込んじゃったね?」

ココット「…いいよ!ぼくだって先生にいてほしいもん!」

クーペ「」クスッ

医術師「お、お前ら…」ジワァ

役員「ふざけんでねぇ!そんな理由で村さ騒がしたんか!?」

村人1「なんてはた迷惑な奴だべ!」

村娘「あんたなんか消えちまえ!」

村人2「毒飲まされて、こっちはどんだけ辛かったか!?」

クーペ「……」

カロル「…もういいじゃない?」

役員「なにぃ?」

カロル「みんな治ってクーペさんたちが帰ってきて、ぜんぶ元通り!」

村人's「はぁぁ?」

カロル「いろいろあったけどみんな仲良しだったんでしょ?ケンカはおしまいにしよ!」

ザワザワ ザワザワ
166: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:10:22 ID:U5cFETEcUg
村人1「なんだ、そりゃ?アホけ?」

村人2「なに言ってんだ、おめぇ?」

カロル「ボク…来たはっかりでなんにも知らないけど…この村はすごく暖かくていい所だよ?」

クーペ「わたしもそう思ってたよ…。でも実際は違った。
ここの人間たちは利用価値でしか物事を判断できないの」

役員「お、おめぇ!村を侮辱するなぁ許さねぇぞ!」

ココット「みんなが先生いじめるからだろ!」

村人1「うるせぇだ!ガキはすっこんどけ!」

医術師「どいつもこいつも…」

母「み、皆さん一回落ち着きましょう?」

役員「これが落ち着いてられっか!」

カロル「…もったいないよ。こんなにいい村なのに」

役員「……!?」

カロル「理由は知らないけど仲良くしようって思ったんでしょ?
それってすごく大事なんじゃないかな?」

クーペ「わたしたちは…利用される為に共存を選んだんじゃない。
人間と共存する事で差別が無くなると思ったから…」

カロル「クーペさんたちがもっと心を開いてあげたら、きっと村の人たちも応えてくれるよ?」

クーペ「…わたしに利用価値がある内はね」

カロル「修道院で子供たちが遊んでたり牧場で働いてたり楽しそうにしてたもの。こんなに素敵な村ないよ」

ココット「うん、修道院たのしーよ!みんな遊んでくれるし勉強させてくれるし!」

カロル「ね?楽しいって?」ニコッ

クーペ「……」
167: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/8(月) 22:13:12 ID:gNysKHmunk
カロル「村長さんも村の人たちも利用したいだけなら、こんなに楽しい村にはならなかったんじゃない?」

役員「そうだべ!オラはおめぇらの事も真剣に考えて村作りしてんだ!」

医術師「はんっ?オレをヤブ医者呼ばわりしといて…」

役員「ヤブ医者をヤブ医者っつって何がいけねぇだ!?」

カロル「村長さんはどうして、その人を責めるの?」

役員「ヤブのクセに村に居座るからだべ!」

カロル「村の人たちは?」

村人1「え?」

カロル「この人が嫌いなの?」

村人1「そ、そりゃあ…」

カロル「…この人がみんなになにかしたの?」

村人1「……」

村人2「し、してねぇけど…クーペが薬で治療するようになってから、今まで切ったり縫ったりされてたのが馬鹿馬鹿しくてよ…」

カロル「…じゃあ医術師さまはみんなを傷付けたくて切ったりしてたのかな」

医術師「はぁ?ちげぇよ!?」イラッ

カロル「……」

医術師「ケガ人や病人を救ってやるのがオレの仕事だ!
その為に必要な技術だけを身に付けた!楽しんで患者の体を痛め付けてた訳じゃねぇ!!」

クーペ「そうです!先生はとても優しい方なんです!わたし達にお金が無いのを知っていても弟の手当てをしてくれました!」

ココット「先生のおかげでもう痛くないよ!」

村人's「……」オロオロ
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うpろだ
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