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カロル「ボクが世界を変えてみせる」【完結編】
[8] -25 -50 

1: ゆったりペースになりますが! ◆WEmWDvOgzo:2014/11/16(日) 20:09:52 ID:N4jwCkModw
1スレ

少年「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/l10

2スレ

カロル「ボクが世界を変えてみせる」

http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbss/test/mread.cgi/ryu/1385288769/l10

―――あらすじ―――

それは遠い昔のお話
人と人は長い長い争いに身を投じ、互いを許せないまま30年もの月日を互いの血を流すことに費やしました

しかし長い争いはいつまでもいつまでも終わる気配もなく
人を傷付け、愛を蝕み、心は枯れて、命は絶えて、いつしか疲れ果てて……やがては目的さえ見失ってしまいました

そんな終わらない争いの果てに一つのきっかけが巡るのです
それは人と人との争いに無関心だったホビット族に原因があると唱える迷信でした
その迷信はあまりにも唐突で、あまりにも不自然な内容でしたが痩せ細って震える人々、争いに疲れきった国々はホビットに全てを擦り付けて争いを終わらせようと決めたのです

戦争が鎮まった後、各国に迷信を掲げた王国は大規模な宗教団体を立ち上げました
その団体は教団と呼ばれ、戦争を納めた功労者であるノワール・バントン司祭を筆頭に教徒達による布教活動が開始されました

布教の内容はホビット族が人間から゙癒しの力゙と呼ばれる特別な能力を奪ったというもので……
これを軸に様々な悪評を並べ立てて人々の心にホビット族への憎しみを焼き付けます
ありもしない神の作り話にいざなわれ、人々は信者へと洗脳されていきました

それから約40年の間、教団による布教活動は続き、思惑通り人々は順調にホビット族を差別していました
人間はことごとくホビット族の住み処を侵略し、奴隷にしてみたり、愛玩用に飼い慣らしてみたり、時には残酷な拷問を加えて見世物にしたり、罪深き種族と罵って横暴の限りを尽くします


111: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/25(火) 21:52:58 ID:29JW/UwDGk
狼1「ぎゃんっ!?」ドシャッ

マドラス「畜生の分際でいい度胸だぜ?」ジャキッ

兵士6「お見事!」パチパチ

マドラス「ふん…この様子じゃ他の連中も獣に阻まれてるかもな」

頭目「お、狼の群れだけじゃねぇ。グリズリーや山虎の縄張りなんかに入ったら一溜まりもねぇですぜ!」

マドラス「…なら早いとこ見つけないとな。せっかくの懸賞金が獣の餌になったら笑えねぇよ」

兵士7「隊長!報告します!」タタタッ

マドラス「おう」

兵士7「第2小隊、第3小隊、共に連絡が付きません!私の指揮する第4小隊もグリズリーに襲われ、壊滅致しました!」

頭目「だ、だから言ってんだろ!あいつら野生の猛獣は俺らじゃどうにもならねぇ!山狩りを中止した方がいい!」

マドラス「…山の尾根まで行かれたら捜索が困難だな。あまり深追いして遭難しちまったらしょうもねぇ」

頭目「奴らもどうせ非力なホビットだ!狼どころか山犬にだって食われちまうよ!今頃、食い散らされてくたばってるに違いねぇや!」

マドラス「…確かに俺達が危険を犯す理由はねぇな」フムフム

頭目「だろう!?もう解放してくれよ!こうなったら懸賞金なんざいらねぇよ!」

マドラス「よし、お前ら山賊だけで山狩りを続けろ?俺達は下山して山間から回り込む」

頭目「は!?」

マドラス「忘れんじゃねぇぞ?これは一国を揺るがす最重要事項だ?
逃げ出しやがったらてめぇ…地の果てまで追って確実にぶっ殺すからなぁ?」ギョロッ

頭目「な、なんで俺様達が巻き込まれなきゃ……」

マドラス「分かったら行けよ。3秒以内にな?」

頭目「」ハッ

マドラス「3、2、1……」

頭目「ウヒャアアアアア!!!」ダッ

マドラス「へっ…よし、下山するぞ?各隊に伝えろ?」

兵士6「はっ!」
112: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/25(火) 22:00:35 ID:E41Ru0zsdI
>>103
支援ありがとうございます!
これから先もカロルの身に色々起こりますが、どうか応援してあげてください!
113: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/28(金) 21:43:23 ID:SroD4kWui2
―――山脈の尾根(湖畔)―――

マルク「ワンッ!」タッタッ

母「はぁっ…はぁっ…」ザッ

カロル「…もう追ってこないかな?」クルッ

母「ふぅ…だ、大丈夫そう、ね?ありがとう、マルクのおかげよ?」ゼェゼェ

カロル「いいこ!」ナデッ

マルク「クゥン!」デレッ

水鳥「グワッグワッ」パタパタ

カロル「…あ、鳥さんがいるよ?」

母「ホントね?」

マルク「ワンッ!ワンッ!」

水鳥「グワッグワッ!?」タッタッ

カロル「あはは!逃げちゃった?」

母「水鳥と湖……お爺さんが言ってたのはここの事だったのね?」

カロル「おじいさま…こんな高い所まで来てたんだ?」

母「そうねぇ…。見上げたら雲がすぐそばでフワフワ流れてるような…そんな気さえする?」

カロル「ホントだね…」

母「……ここまで登るのに苦労なさったんでしょうね…。
それなのに見ず知らずのあたし達に水鳥のお肉を分けてくれたんだわ…?」

カロル「…うん」

マルク「」ピクンッ

ガサガサ ガサガサ

マルク「ワンッ!ワンッ!」

カロル「?」クルッ

頭目「へぇ…へへ、へ!や、やっと…見つけたぜぇ」ガサッ

母「きゃっ…!?」ギョギョッ
114: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/28(金) 21:50:41 ID:SroD4kWui2
母「さ、山賊…!逃げないと!?」

カロル「待って!様子がおかしいよ?」

頭目「くっ…!うぅ…!」ズキズキ

母「…よ、よく見たらすごい顔色?毒虫にでも咬まれたのかしら…?」

頭目「かはっ…」バタッ

カロル「あっ…」

母「…仲間はいなさそうね?」キョロキョロ

カロル「……」スタスタ

母「……坊や!?」

カロル「……」ピトッ

母「…分かってると思うけど」

カロル「うん…。おじいさまを殺したのはおじさまかも」

母「いいの…?」

カロル「ほっとけないもの」

母「…誰でも助ければいいってものじゃないのよ?」

カロル「見捨てるのは簡単だけど…助けてあげられるなら、そうしたいんだ?」

母「…それなら先に武器を取り上げましょう?なにをするか分からないから……」

カロル「…そうだね」スッ
115: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/28(金) 21:51:52 ID:SroD4kWui2
母「誰かを傷付ける為の道具にお金かけるなんてバカみたい…」ポイッ

ポチャンッ

カロル「……」ピトッ

フワッ

頭目「うっ…ぐぐ!うお…!?」パチッ

カロル「…一人で立てる?」

頭目「な…なにをしやがった…!?か、体が軽く……」ムクッ

カロル「…ナイショ」

頭目「……そうか。あのジジイ、魔法がどうとか言ってたな。あ?俺様のこん棒がねぇぞ?」キョロキョロ

母「危なっかしいから湖に捨てておきましたよ?」

頭目「はぁ!?」

カロル「ねぇ」

頭目「あぁん!?」

カロル「おじいさまを殺したの?」

頭目「へっ…だったらなんだよ?」ニヤリ

カロル「……」

頭目「ぎゃはは!そんな悲しそうな顔すんなよ?どうせおめぇもすぐにジジイと同じ場所に行くんだ?」ニヤニヤ

母「なっ…助けてもらっておいて…!?」

頭目「頼んだ覚えはねぇなぁ?」ニヤニヤ

母「なんて人…!?」

マルク「グルルルル!」フシューフシュー
116: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/28(金) 21:54:44 ID:SroD4kWui2
頭目「おらっ!!」ブンッ

バコォッ!

カロル「うっ…!」ドサッ

母「坊や!?」

頭目「ふいー!体がかりーなぁ!しっかしバカな奴だぜ…?へへへ!」

カロル「……」スクッ

頭目「お!立ったか?んじゃ…うらっ!」ブンッ

ゴッ!

カロル「いぅっ…!」ドサッ

頭目「ぎゃはは!てこずらせやがって!山ん中走らされた分、たっぷり痛め付けてやる…?」ポキポキ

カロル「…そんなにお金が欲しいの?」ムクッ

頭目「あ?決まってんだろ?金ってなぁ人を豊かにする力があんだよ!」

カロル「そうかな…。お金を欲しがってひどいことしてるおじさまは…豊かには見えないよ」

頭目「るせぇ!?俺様だって金がありゃ…こんな山でくすぶってなかったんだよぉ!?」

カロル「……」

頭目「親父もお袋もクソヤローだ!!働き者の弟ばっか可愛がって俺を邪魔者扱いしやがった!?
乱暴でわがままなお前は一家の恥だとも言われた!?」

頭目「乱暴だからなんだ!?わがままにもなるだろう!?
隣の一家がうまそうに豚肉を頬張る陰で俺達は麦雑炊ばっか食ってたんだ!?」

頭目「あんな貧乏農家で冷や飯食いながら一生を使い切るんなら山で略奪してた方がマシだ!!」

母「他の人たちが一生懸命働いて作った作物やお金で贅沢して嬉しいの!?」

頭目「へっ!他人の飯はうめぇぞぉ…?なんの苦労もねぇし手軽でいい?」ニヤァ

母「信じられない!こんな人間を助けて損したわ!?」

頭目「ぎゃははは!おめぇらの懸賞金でたらふく飲んでやらぁ!
マジメで正直な貧乏人なんざクソッ喰らえだ!?」ゲラゲラ
117: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/28(金) 22:11:27 ID:bd.VSVzfCA
頭目「おしゃべりはしめぇだ!金ヅルちゃんよ!?」ニヤニヤ

母「あなたの仲間も懸賞金がどうとか言いながらあたし達を探してたわね…?どういうことなの!?」

頭目「教えたって意味ねぇよぉ?ぎゃはははは!」

母「なによ、それ!勝手に振り回しといて…!」

頭目「知るかよ?バーカ!」

カロル「……」

頭目「えぇ?どうした?黙りこくってよ…?言いてぇ事があんなら言えよ?」ニタニタ

カロル「…なんにも言わないよ?
いろんな幸せがあるから、きっとおじさまは間違ってないんだと思う?」

頭目「なんかムカつく言い方だなぁ?」ジロッ

カロル「誰かの幸せを奪うのがおじさまの幸せなら、ボクはボクの幸せを守るだけ…」

頭目「…守れるもんなら守ってみろよ?」

カロル「……」ジャリッ

頭目「いい加減にくたばれやぁっ!?」ブンッ

ゴキィッ!

頭目「……!?」ピクッ
118: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/28(金) 22:15:35 ID:Ck6no1fVS2
頭目「あ、あ、いあ…うがあああああああ!!?」ゴロンッ

母「……な、なに?」キョトン

カロル「……」ギュウッ

頭目「お、おめぇ…い、石なんか握りやがってぇ…!?あぐぅ…俺様の拳が〜…!」ワナワナ

カロル「…ボクの幸せはお母さまの幸せ……絶対に奪わせないよ」ジッ

頭目「いってぇ〜…!いでぇよぉ〜…」ゴロゴロ

母「自業自得よ…!」

マルク「うぉんっ!」

カロル「…ボクたちは行くよ?そのケガなら自然に癒えるよね?」

頭目「ち、ちくしょう…逃げられると思うなよぉ!?
おめぇらを狙ってんなぁ王国だぁ!?
国王が…ぶっ殺せって…命令してんだぞぉ!?」

カロル「」ピクッ

頭目「うひ、ひひ…へへへ!
王国の傭兵共が…山間から回り込んでる!
どこ逃げたって…同じなんだよぉ!!」ヨロッ

母「…行きましょ」スタスタ

カロル「…はい」スタスタ

マルク「クゥン……」スタスタ
119: ◆WEmWDvOgzo:2014/11/28(金) 22:16:53 ID:Ck6no1fVS2
―――山間の平地―――

パカラッパカラッ パカラッパカラッ

兵士6「隊長!目処は付いているのですか!?」パカラッパカラッ

マドラス「おう、俺は賞金稼ぎだ。賞金首の逃げそうなとこは大体想像が付く」パカラッパカラッ

兵士6「し、しかし山中に潜伏されれば捜索が困難になるのでは!?」パカラッパカラッ

マドラス「山賊を残したのはなんの為だ?」パカラッパカラッ

兵士6「そ、それは…奴らを捕らえる為では?」パカラッパカラッ

マドラス「あんな雑魚連中にはなんも期待してねぇよ。要は例のホビットが動けるルートを制限する為だ」パカラッパカラッ

兵士6「な、なるほど!」パカラッパカラッ

マドラス「山麓方面が獣と山賊で溢れ返ってるなら…奴らの行き先は西の領土を外れる。したら南の山脈を登り続ける筈だ」パカラッパカラッ

兵士6「ま、また山登りですか…」パカラッパカラッ

マドラス「いぃや…?南の山脈には疎らだが人里がいくつかある?」ニヤリ

兵士6「と、ということは!?」パカラッパカラッ

マドラス「あぁ、南の麓からは人が安全に歩けるルートが確保されてる訳だ?
奴らが人里に入るかは知らんが……避けて通るとなれば険しい獣道を行くしかなくなる。
体力的に考えても下山するには正規のルートを使うしかないだろうよ」パカラッパカラッ

兵士6「ほほう?つまりそこを待ち伏せる訳ですね!」

マドラス「まぁな…。もし南の山脈に潜伏されたとしても、そこいらに憲兵付きの人里がある限り、奴らは捕まって正規のルートから下りてくるって寸法さ?」パカラッパカラッ

兵士6「し、しかし役人からは憲兵に先を越されてはならないと!」パカラッパカラッ

マドラス「ふん…!そん時はよ…憲兵をぶっ殺して賞金首を頂いちまえばいいだろ?」パカラッパカラッ

兵士6「……!」ゴクリ
120: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:36:52 ID:gUlMLlO5yg
―――西の国(王宮)―――

ファルージャ「ご足労であったな?面を上げられよ?」

政務官「…いえ、此度の招待、誠に嬉しく思います。女王陛下自ら出迎えて下さるとは夢にも……」スッ

ファルージャ「クスス?客人に礼を尽くすのは当然でありましょう?そうかしこまる必要はないのですよ?」クスッ

政務官「……」ジーッ

ファルージャ「……おや?妾の顔に何か付いておりますかえ?」キョトン

政務官「あ、いや…!」ハッ

ファルージャ「側近?」

側近「はっ!ではリルラ様、女王陛下の隣に席をご用意致しましたので着席ください」

政務官「……!女王の隣、ですか?」アセアセ

ファルージャ「遠慮は要りませんよ?妾と共に余興を楽しみましょう?」

政務官「い、いえ、私は……」ドキドキ

ファルージャ「隣では落ち着きませぬか?」ジッ

政務官「め、滅相も!」

ファルージャ「心ばかりのもてなしでございます…。
目の肥えたリルラ様に楽しんでいただけるか分かりませぬが…」スラリ

政務官「……!?」ドキュンッ

側近「へ、陛下の太ももぉぉ……ゲフンゲフン」

ファルージャ「…どうかご着席願います?」クスリ

政務官「…は、はい」ドギマギ
121: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:38:47 ID:gUlMLlO5yg
ルーラララー ルーラララー

ファルージャ「舞子達も政務官殿に舞踊を御披露目出来て、さぞ光栄に思っているでしょう?」

政務官「は、はぁ…」

ファルージャ「どうかなされまして?」ピトッ

政務官「ふおっ!」ピクンッ

側近「(へ、陛下の清く柔らかな手が太ももを流れるように這って…!う、羨ましすぎるぞおま)」ワナワナ

ファルージャ「クスス……?」ススー

政務官「(な、なんだ、この女……て、手付きがいやらしいとかいう次元ではないぞ…!?)」ゾクゾク

ファルージャ「おや…?舞踊どころでは無さそうな?」チョンッ

政務官「た、戯れが過ぎますぞ…!」ピクンッ

ファルージャ「クスス……そなたがここへ来た目的が変わってしまわれるか……」クスクス

政務官「(よ、妖艶だ…噂は伊達じゃないな。"魔性のファルージャ"……!)」

ファルージャ「余興を眺めながらで結構です。妾の問いに答えていただけまするか?」ジッ

政務官「…む、無論にございます」ドキドキ

ファルージャ「そうか…。では…?」ニタァァ

政務官「……!」

ファルージャ「教えてたもれ?癒しの力はどこにおる?」

政務官「っ…!」
122: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:39:59 ID:MvVpHIxlN.
ファルージャ「ん?まさか知らぬとは言うまいな?」

政務官「癒しの力…と言われましても」

ファルージャ「忌まわしき歴史を覆してまでホビットを受け入れるそなたらの不可思議な素振り…見抜けぬ妾と思うなよ?」

政務官「教団の布教内容には悪意ある改竄が施されていると判明したもので…」

ファルージャ「はぁん…?40年も伝え続けた伝承に誤りがあったとな?」

政務官「…誠に申し訳なく思っております」

ファルージャ「改竄とは…はてさて、どのように?」

政務官「癒しの力などありはしなかった…ということです」

ファルージャ「…ない?」キョトン

政務官「えぇ、ヒメ国王が即位なされて間もなく…ホビットについて調査した結果、癒しの力など存在しないと解りました」

ファルージャ「…それはそれは」

政務官「どなたに聞かされたか存じませぬが…女王陛下の知る情報は全てガセだと思われます」

ファルージャ「…困ったわネェ?」トンッ

政務官「おそらくその者の狙いは我ら王国とそちら西の国の衝突でしょう。決して踊らされてはなりませんぞ」

ファルージャ「……ふぅん」
123: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:44:44 ID:MvVpHIxlN.
ファルージャ「ま、よかろう」

政務官「ご理解いただけて何よりです」

ファルージャ「時に…この西の国では黒魔術が盛んでな?」

政務官「…そのようで」

ファルージャ「儀式には生きた血肉が必要じゃと…市民が拐かされる事件がいくつもあった?」

政務官「…前帝の方針にございましょう?」

ファルージャ「そなたは物を知っているな?我が国の歴史を語れるとは…いやはや感心したものよ?」

政務官「恐縮にございます…」

ファルージャ「そうさな…?
前皇帝は醜い男じゃった……黒魔術に憑りつかれ、幾多の民草を刈り取った紛れもなき罪人よ?」

政務官「…現在でも黒魔術の研究は続けられていると伺いましたが」

ファルージャ「…妾は人の命を何より重んじる人格者じゃ?民草を使った儀式は廃止させた?」

政務官「つまりホビットを使って研究してきた訳ですな…」

ファルージャ「あれらはまことに美しい種族よな?
絹糸のように細く柔らかな髪…透けそうな程に白い肌…琥珀にも似た金色の眼差し……どれも人間とは異なる特徴じゃ?」

政務官「…あまり思うところもございませんな」

ファルージャ「クスス……」

政務官「……?」
124: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:46:22 ID:gUlMLlO5yg
ファルージャ「妾に仕える魔導師が申すには…ホビットという素材は非常に素晴らしいと?」

政務官「…何故ホビットが黒魔術に役立つのです?」

ファルージャ「さぁの…?過程にはこだわらぬ…?妾の興味を引くのは結果のみよ?」

政務官「…まさか黒魔術が実在するとでも?」

ファルージャ「クスス……可能性はある、というだけじゃ?」

政務官「……」

ファルージャ「可能性を秘めておるのであれば…追求する他あるまいて?」

政務官「…陛下は何を望んでおられる?
癒しの力も…黒魔術も…あったとして争いの火種にしかなりますまい?」

ファルージャ「政務官殿は国想いよなぁ?魅力的な力の在処を知りながら欲張ろうとはなさらぬか?」

政務官「…私は役人だ。個人的な感情は持ち出さないよう心掛けております」

ファルージャ「立派も立派?素晴らしい愛国精神よ?」

政務官「役人として忠告致しますが…あまり多くを求めすぎれば破滅へと追い込まれますぞ?」

ファルージャ「ほう?知ったような口振りネェ?」クスリ

政務官「えぇ、そういう方を一度、この目で見ておりますからな」

ファルージャ「フゥ〜…なるほど?しからばなおのこと追求せざるを得なくなってしもうたわ?」

政務官「は?」

ファルージャ「愛国心に勝る真実の愛を教えてあげましょうか…?」ニヤリ
125: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:51:36 ID:gUlMLlO5yg
ファルージャ「妾こそ唯一無二…他の支配者気取りになど代えられぬ絶対的な統治者よ?」

政務官「(…客人に色仕掛けする統治者がいるか)」

ファルージャ「妾は物事に関心のない快楽主義者。政治など全くもって分からぬ?
この口調も適当に見よう見まねで喋っておるだけじゃ?
しかし妾には何一つ必要ない。なぜなら妾が言葉を発すれば可愛い配下たちはそのように動く?」

ファルージャ「側近よ?妾の為に死ねるかえ?」

側近「死ねます!!」

政務官「(忠誠の程を見せたいのか?くだらない…?)」

ファルージャ「フゥ〜?では死んでみせるがいい?」

側近「喜んで!!……っ!」カジッ

政務官「は…!?」

側近「ぐぐ…ぎぎぎ…!がぐぅぅ…!」タラー

ファルージャ「なかなか死なぬなぁ…?衛兵よ?」

衛兵1「ははぁっ!どうぞお使いくださいませ!」つ【剣】

側近「ひ、ひゅあんあ」パシッ

政務官「ば、バカなまねはよせ!」アタフタ

側近「ぅんっ!!」ズブッ

ファルージャ「」ニタァァ

政務官「……!?」

側近「んぐほっ!?んぅんぅ!?」ゴボッ

ビタビタ ビタビタ

側近「ひゅっひゅっ!ひゅっひゅっ…!ひゅっ…ひゅっ……」ゼェハァ

ファルージャ「そなたの忠誠心…しかと見たぞ?お前のような配下を持って妾は誇らしい?」

側近「ふ…ふっ…!」ニコッ

ファルージャ「ゆるりと休め?そして来世でもこのファルージャに尽くしておくれな?」

側近「よろ…ご…んぶはぁっ!?」ブバァッ

バタッ
126: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:55:59 ID:MvVpHIxlN.
ファルージャ「…こういうことじゃ?」ニヤニヤ

政務官「(な、なんなんだ、これは!?まるで正気の沙汰じゃない…!)」

ファルージャ「妾の要求に応える為ならば自害も辞さぬ忠義者らよ?
なればこそ妾は治世を顧みず、好きなように生きられる?」

政務官「か、彼は貴女様の側近なのでは?何ゆえ無意味に死なせ……」

ファルージャ「意味?」

政務官「重要な役職に就く人材を失うのは多大な損失だ…!そんな事も……」

ファルージャ「妾への忠誠を確かめる……この上なく意味があろう?」

政務官「……!?」

ファルージャ「それに…代わりなどいる?有り余るガラクタを使い捨てて何が悪い?」クスッ

政務官「ほ、本気で言っておられるのですか…!?」

ファルージャ「クスス…ほんに従順で愛らしい?
死ねと言われ、その場で自害してしまうのだから…ぷっ」

ファルージャ「アハハハハハハハ!!」ケラケラ

政務官「(な、なんなんだ、この女は……仮にも一国の王じゃないのか!?)」

政務官「あ、貴女には…血も涙もないのか!?」

ファルージャ「はぁん?血も涙も流した事はないが…流すとなれば、さぞ辛く苦しいのであろうなぁ?」ニヤニヤ

政務官「(こんなにも下品で…醜悪なまでに卑しいというのに……)」ジーッ

ファルージャ「誰ぞ?ハニーベリーを?」チョイチョイ

官吏1「」ススッ

ファルージャ「うむ…」パシッ

官吏「」チッチッ シュボッ

ファルージャ「……フゥゥ」スパー

政務官「(所作の一つ一つ、魅せる表情が艶やかで……美しいと思わずにいられない!)」ギリッ
127: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 00:57:52 ID:gUlMLlO5yg
ファルージャ「このハニーベリーなる香料…なんでもそなたらの国で生産された物らしいぞ?」

政務官「…お気に召したようで何より」

ファルージャ「フゥゥ……貿易をしましょうか」スパー

政務官「……?」

ファルージャ「西国と王国、互いの協力関係を築きましょう?」

政務官「…それはつまり同盟に加入すると?」

ファルージャ「クスス…馬鹿を申すな?堅苦しいのは好ましくなかろう?」

政務官「ではどのように?」

ファルージャ「そちらのハニーベリーを大量に頂きたい。もちろん正式な手順を踏まえてな?」

政務官「……?」

ファルージャ「悪い話ではあるまい?」

政務官「こちらとしましても交易はこれからの重要課題…是非ともお願い致します」

ファルージャ「フゥゥ…よいとも?」スパー

ジュッ

ファルージャ「そうなれば…これからは我が西国の人間も気掛かりなくそちらにお邪魔させていただけますネェ?」ニタァァ

政務官「は、はぁ…そうな…っ!?」

政務官「(ま、まさか…!)」

ファルージャ「ハニーベリーならずとも王国の文化に触れれば視野が広まりましょうな?
貿易の際は人手が多くなりまするが…どうかご容赦願おう?」ニヤニヤ

政務官「(や、やはり…開けっ広げに癒しの力の捜索隊を派遣する口実か…!?)」

ファルージャ「共に平穏と繁栄を願って協力していきましょう?」ニヤニヤ

政務官「…い、一度国王に話を通さねばなりません。少々時間をいただけますか?」

ファルージャ「それは構わぬが…我が西の国は友情に篤い民族じゃ?
早速、そちらに祝福の品を送りたい?
配下が代わって足を運ぶかも分からぬが…まさか無下にはしますまいな?」ジッ

政務官「……も、もちろん…です、とも」

ファルージャ「…よろしい?」ニィィッ
128: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:28:35 ID:h173FRh8P2
〜〜〜夜〜〜〜

―――南の山脈(清流の川)―――

ボォォォォオ

カロル「…ん、くっ」ゴクゴク

母「」スッスッ

カロル「ぷあっ…はむっ…くむ……」パクパク

マルク「」ガッガッ

母「…できた!」スッ

カロル「んっ…わぁ!すごーい?」

母「うふふ!オイールの果汁を炙って山兎の皮と蛇の脱け殻を接着した帽子よ!被ってごらんなさい?」つ【皮帽子】

カロル「うん!」カブリ

母「…どう?」

カロル「えへへ…毛がふわふわしててあったかいよ?」ニコッ

母「そう?よかったわ?この辺りは標高が高くて風も冷たいから…少しでも暖かくしないとね?」

カロル「うん…。そういえば山道を歩いてもう2週間くらい経ったけど…意外と辛くないね?」

母「そうねぇ…。元々はあてもなく旅をしながら生活してたから慣れてるのかも」

カロル「ふふ!懐かしいや?昔はよくこうやって枯れ木をくべて焚き火したもんね?」

母「そうそう。地面に木の葉を敷き詰めて寝床を用意したり…獣の食べ散らかした死骸の皮を剥いで毛布を作ったり…亡くなったお父様が教えてくれた知恵のおかげで生活には事欠かないわね…?」

カロル「それに今はマルクがいてくれるから怖い獣に会わないし、遭難もしないよ?」ナデッ

マルク「クゥン?」

母「…そうね。このままでも十分やっていける気がするわ?」

カロル「……うん!そうだね?」ニコッ

マルク「」ガッガッ
129: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:30:34 ID:h173FRh8P2
〜〜〜朝〜〜〜

カロル「……」パチッ

母「……」ウトウト

カロル「(…お母さま、また寝なかったんだ)」シュン

母「……あ」ハッ

カロル「朝になったから交代しよ?周りはボクが見てるからお母さまも休んで?」ムクッ

母「…そうね。この天気なら雨の心配もないし、少し休もうかしら」

カロル「うん!それがいいよ!あとは任せて?」

母「…じゃあちょっとだけ……」ゴロン

カロル「ちゃんと毛布もかけなきゃ寒いよ?」ファサ

母「ありがとう…?」ニコリ

カロル「どういたしまして?」ニコッ

母「……くぅ…くぅ」スヤスヤ

カロル「……」

カロル「(やっていけるって言ってたけど…お母さま、すごく疲れてる)」

カロル「(追われてる不安もあるし…やっぱり山での生活は厳しいもの)」

カロル「(それにしてもなんで王国と教団がボクらを追ってるのかな…)」

カロル「(…なにも言わないでいなくなったの…よくなかったのかも)」シュン

カロル「……」
130: ◆WEmWDvOgzo:2014/12/1(月) 21:34:29 ID:h173FRh8P2
〜〜〜夕方〜〜〜

カァーカァー カァーカァー

母「ん…うぅん?」ゴシゴシ

カロル「あ、起こしちゃった?」グリグリ

母「もう空が赤い…寝過ぎちゃったわね…。なにしてるの?」

カロル「火起こしだよ。いつもお母さまに任せきりだからボクだって頑張らなくちゃ?」グリグリ

母「そんなこと…子供なんだから気を使わなくていいのよ?」

カロル「親子だけど家族でしょ?助け合うのが普通だよ!」グリグリ

母「……」

カロル「気にしないで休んでて?ね?」ニコッ

母「…うん。ありがとう」ニコリ

マルク「あんっ!あんっ!」タタタッ

カロル「おかえりー!見つけてくれた?」グリグリ

マルク「わうんっ」シッポフリフリ

カロル「そっか!」ニコッ

母「あら…どうかしたの?」

カロル「近くに村がないか探してみてってマルクにお願いしたの」グリグリ

母「…ど、どうして?」ビクッ

カロル「…お母さま」

母「な、なに…?」

カロル「…たぶんこのままだとボクたちは静かに暮らせないと思うんだ」

母「そうかしら…?あたしは十分にやっていけてると思うわよ?」

カロル「…こんなに不安な気持ちのままでいいの?」

母「…火、点かないわね。貸してごらんなさい?」スッ

カロル「はい…」スッ

母「」グリグリ
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