前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
989: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:51:27 ID:HMvXvjcyOI
………半年前………
―――平原(荷車の仮置き場)―――
カロル「…手、離しちゃイヤだよ?」ギュッ
母「もうあたしに構わないで…!」バッ
カロル「…お母さま」タジッ
母「つくづく分かったの…!あたしがどんなに醜い心の持ち主か…!」ガクッ
カロル「お母さまはキレイだよ!」
母「気休めはよして!もう疲れたの!
こんな不毛な悩みを抱えて…いつまで自分を責めたらいいのよ!?」ワシャッ
カロル「自分を責める必要なんてないじゃない!どうして悩むのさ!」
母「……」ワシャワシャ
カロル「…帰ろうよ。もう大丈夫だから」
母「そんなに帰りたいなら一人で帰りなさいよ!?」パシンッ
カロル「いたっ…!?」ヒリヒリ
母「……!あ、あぁ…!あぁぁぁ……」ブルブル
カロル「へ、平気だよ!痛くないから気にしないで?」アセアセ
母「あたし…あたし…最低……」ズーン
母「う、うあ…わぁぁぁぁん……」ズシャッ
カロル「おか…さま…」ピクッ
カロル「(…ボクがいない間、なにがあったの?)」
カロル「(そんなに疲れるくらい、悩み続けてたの?)」
カロル「(お母さまの為に戦って…やっとみんなを止めてきたのに…)」
カロル「(…もう、どうしたらいいのか分かんないよ)」シュン
990: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:53:21 ID:HMvXvjcyOI
母「うぅえぇぇ…えぇぇん……」グショグショ
カロル「」ピトッ
母「さわらないでっ!」ビシッ
カロル「ごめんなさい…」スッ
カロル「(やっぱり癒しの力でも…心の傷までは癒せないんだ)」
カロル「(この戦いでなんとなく分かった…。たぶんだけど、ボクに癒しの力があるのは人間とホビットの子だから)」
カロル「(人間とホビットが仲良くすれば癒しの力が生まれて…みんなの心を癒してくれるのかもって…そう思った)」
母「もうたくさんよ!こんな汚いあたしなんて…消えてなくなればいい!」ボロッ
カロル「(それでも一番、大切な人を癒せない…)」
『ボクは…誰かを幸せにできないのかな?
不安なんだ。このままだと…お母さまや宣教師さまも不幸にしそうで……。
もう誰とも離れたくない…。
そうじゃないと…きっと変わってしまうもの。
不幸でも…せめて一緒に不幸になれる距離にいたいよ…』
カロル「(そっか…。ボクの答えなんて…決まってたんだ)」ニコッ
991: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 21:57:31 ID:HMvXvjcyOI
母「誰にも顔向けできない!夫にも!お父様にも!力になってくれた…みんなにも!」クシャッ
母「みんなが坊やを幸せにしてあげようと頑張ってるのに……あたしが坊やに憎しみを背負わせたっ…!」ズリッ
母「最低よ…!あたしは…最低の母親よ…!?」ハァハァ
カロル「」ヒシッ
母「さわらないでって…言ってるでしょう!?」バッ
カロル「……」ジーッ
母「〜〜〜!」ガクガク
母「な、なんなの!なんなのよ!?そんな眼で見ないでちょうだい!?」
母「あたしが悪かったの!あの時……なんでああしてしまったのか!」
母「笑えるわよねぇ!?坊やの前ではいいお母さんでいようって…そればっかり考えて、人間を憎まないでなんて言い聞かせたクセに!」
母「最後の最後に出た本音が『もう我慢の限界だから、あたしの代わりに復讐して』よ!?あー笑っちゃう!?」ガシガシ
母「ムリだったのよ!最初から!ホビットのあたしが憎しみを捨てるなんて…できる筈がなかったのよ!?」
母「はは!ははは!アーッハハハハハハハハ!!!!」
カロル「……」ジーッ
母「ははは…は……」ピタッ
母「そんな眼で見るなって言うのが……分からないの!?」バチンッ
母「はぁ…はぁ…イヤでしょ?こんなお母さん…もう終わりね…!」ブルブル
カロル「……嫌わないよ」ジッ
母「っ……!か、帰りなさい!たくさん友達ができたんでしょう!?」
母「もういいじゃない!いつまでお母さんに甘えるつもり!?」
母「あなたが色んな人間に関わるから!騙されてもやめようとしないから!」
母「あたしばっかり悩んで……疲れるのよ!」バチンッ
カロル「っ…ごめ…なさい」ウルッ
母「謝るくらいなら行ってよ!あたしを独りにさせて!?」
カロル「イヤ…だ……」ポロッ
母「分からない子ね!?」バチンッ
992: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 22:02:07 ID:8oOAyDp4lU
カロル「……」ヒリヒリ
母「…お願いだから。分かって?あたし…こんな自分が大嫌いなの…!」ブワァッ
母「昔からそうだった…。フィズスの優しさに救われながら、フィズス以外の人間を心底憎んでて……」ポロポロ
母「でもフィズスにだけは嫌われたくなかったから…気にしてないふりして、性格のいい子を演じてた…?」ポロポロ
母「それが本当のあたし…だいたい、本気で人間に理解を示してたら…」
母「あなたが宣教師さまの教会を訪れた時に…あんな言葉を浴びせかけたりしないでしょう…?」ヘラッ
カロル「…もし、そうだとしても…ボクはお母さまが大好きなの」スタッ
母「来な…いで!?」バチンッ
カロル「っ…お母さまの子でいさせて…?」ヒリヒリ
母「あたしも…あなたが大好きよ!愛してる!愛しすぎるから…ツラいの!」
母「…穢れた心で触れたくないの!だからこのまま消えさせて!お願いよ!?」
カロル「(これはきっとお母さまの思い込みで…この話を聞いても…誰もお母さまを責めないんだろうなー…)」
カロル「(ホントはこのままみんなの所に戻れば…ボク達は幸せになれるのに)」
カロル「(…でもお母さまはボクのいない間、朝になるまでずっと自分を責め続けてたんだ)」
カロル「(少しでも目を離したら…お母さまはホントにいなくなる…)」
カロル「(それだけは絶対にイヤだ…。だったら…もうこうするしか……)」
993: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 22:05:34 ID:HMvXvjcyOI
母「愛しい…愛しいわ…。わたしのかわいい坊や…?」ポロポロ
母「ごめんなさいね…?ダメな……お母さんで!」ポロポロ
カロル「…もう帰ろうなんて言わないよ?」ニコッ
母「うんっ…それで…いいの!坊やは…みんなと幸せに……!」エグッ
カロル「ボクとお母さまだけでいいや?」ニコニコ
母「うっ…ん…うん……え!?」バッ
カロル「みんなに会うのがツラいんだよね?
言葉にはしなくても…責められてるんじゃないかって感じて落ち着かないんでしょ…?」パシッ
母「は、離しっ…」パッ
カロル「離さないよ」ギュッ
母「……ぶつわよ!」キッ
カロル「うん、ぶっていいよ?」ニコニコ
母「」パシンッ
カロル「……スッキリした?」ジッ
母「うっ…うあっう…あぁぁ……」ブルブル
カロル「…ボクがいるよ」ダキッ
母「はっ…はっ…はひっ…はぁぁぁ……」ポロポロ
カロル「ううん…ボクがいるんじゃなくて……ボクにはお母さましかいないもの」ギュゥッ
母「ダメ…よ……みんな…みんなと……しあ、わせに……」ググッ
カロル「…みんなにはみんなの形があるよ。幸せってそういうものでしょう?」ジッ
母「ぼ…や……」ジッ
カロル「ボクとお母さまの幸せが、たまたまこういう形だったんだよ。きっと?」ニコニコ
母「ひ…うぅぅ…うえぇぇぇ……」ボロボロ
カロル「誰にも会わなくていい場所で静かに暮らそうよ。お母さまが望んでたように?」
母「……!」ハッ
母「(坊やが…アントリアにそそのかされた時に…つい出してしまった本音……)」
994: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 22:11:49 ID:HMvXvjcyOI
カロル「先に言っておくね?」
母「ふぇ……?」ポロポロ
カロル「これはお母さまの為に出した答え…。でもお母さまのせいじゃないよ?」
カロル「ボクが決めたことだから…お母さまのせいじゃない?」
母「あ…たしは……最低の……」
カロル「ねぇ、お母さま…」
母「ひんっ…な、なぁに?」ブルッ
カロル「わくわくするね?」
母「ど……して?」
カロル「何も持たないままどこに行くか…何も決めずにまた一から探すんだもの?」
母「せっかく……作った…お友達……お別れ、するの?」グスッ
カロル「……」
母「それで…いいの?」ジッ
カロル「…いいよ。お母さまの為なら…全部捨てられる?」
カロル「前に言ったでしょ?お母さまさえいてくれたら、ホントは何もいらないんだって?」
母「……坊やぁ!」ギュッ
カロル「…あの時は叱られちゃったっけ?でも今なら…分かってくれるよね?」クスッ
カロル「ひっそりといなくなって…こっそりと生きようか?」サスサス
母「坊やぁ…!坊やぁ…!」スリスリ
カロル「(これでいい…。これでいいんだ…)」
カロル「(みんなはボクがいなくても普通に生きていけるけど…お母さまを守ってあげられるのはボクだけだもの)」
カロル「(幸せも不幸せも一緒に…ね。お母さま)」
母「うあぁぁぁぁん…!」グズグズ
カロル「愛してるよ。ボクの愛しいお母さま」ギュッ
………完………
995: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/6(土) 22:17:22 ID:HMvXvjcyOI
約2年近くかかりましたがなんとか終わりました…。
フワッとしたオチで申し訳ございません!
読んでくださった方々、チラ見してくださった方々、今までありがとうございました!
感謝の気持ちでいっぱいです!
最後に支援スレの178さん、支援ありがとうございました!
投稿してる最中に1000に到達しそうで尻込みしていたのですが、なんとか完結できました!
では失礼しました!
996: 名無しさん@読者の声:2014/9/6(土) 22:37:00 ID:ToJhnXhMu6
2スレにまたがる壮大なSS、超乙でした!
とても好きな話でしたので終わるのが寂しい…。
997: 名無しさん@読者の声:2014/9/6(土) 23:49:54 ID:wqFlLRguKA
毎日このSSを読むことだけは欠かさなかったのに、おわっちゃったかー
本当にお疲れ様でした!
感動をありがとう!
998: ◆WEmWDvOgzo:2014/9/8(月) 07:49:23 ID:lnJvZYe7OU
>>996
今まで読んでくださってありがとうございました!
すごく励みになりましたし、走り気味でしたがなんだかんだで終わらせる事ができましたw
寂しく思っていただけるなんて胸いっぱいです…!
本当は50レスくらい余ってたら番外編というか残りの伏線や謎の部分を回収したかったのですが、それが出来なかったのが少し心残りです。
もうこのキャラ達を動かす機会はないんだなーと考えると自分でも寂しいですね。
ともあれ完結できたのは素直に嬉しいので悔いはありません!
ご愛読ありがとうございました!
>>997
毎日読んでくださる方がいたとは…ただただ感謝です!
最後はちょっとハイペースだったのですが、それまでの更新はまばらで…お待たせしていたとしたら申し訳ございません。
読み手の皆さんのおかげで頑張る事ができました!
こちらこそ本当にありがとうございました!
999: 名無しさん@読者の声:2014/9/8(月) 17:10:45 ID:Lp0c8AcZNU
超乙です!
保管庫で1スレ目を発見して
現行追っかけて、ついに完結かぁ
終わってしまったのはさみしいなー
1000: 名無しさん@読者の声:2014/9/8(月) 20:48:45 ID:YuZmBXYrqA
完結おめでとうございます
個人的にバッドエンドなのかハッピーエンドなのかわからない感じなのがさみしくもあります。
いつかまたみんなが笑えたらなと願います
1001: 1001:Over 1000 Thread
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ニニニ(゚Д゚∩コ
|_|⊂ ノ
/ 0
し´
えっ…と、
1001はここかな…と
∧∧ ∧∧
∩゚Д゚≡゚Д゚)| ̄|
`ヽ /)ニニニコ
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∪ ∪
∧∧ ミ ドスッ
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