前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
941: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 21:56:10 ID:50l4o5eNes
ナラ「…ルーボイ、へいき?」オロオロ
ルーボイ「ぜんぜん平気だし!
変態のおっさんに殴られたり大火傷したりして何度も死にかけてっから、こんぐらいへっちゃらだよ!」エッヘン
ラム「…感情なんてなくても目的があれば生きていける。時間は永遠で達成できるまでの道のりは膨大だ」ブツブツ
ラム「仲間なんていない。誰の為でもないけど、これを続けないと…目的がないと…」ブツブツ
ナラ「…ねぇ、ラムくん、へん…」
ルーボイ「…どうしたんだろうな」
ヒメ「や、やっぱりお付き合いするからにはお互いを大事にしないといけないし!
なんかこう…簡単に触れ合うのはふしだらだ…。まずは文通から始めるのが……」ブツブツ
ルーボイ「まだ言ってるのかよ!?目ぇ覚ませ!バカ王子!」
ヒメ「えあっ!?」ビクッ
942: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 21:57:35 ID:zCiLP5rgZc
宣教師「」タタタッ
カロル「」タタタッ
マルク「…わんっ!」
カロル「マルク!平気だった?ケガしてない?」ダキッ
マルク「クゥン!」スリスリ
宣教師「ま、間に合いましたね!」
ルーボイ「宣教師様!」パァァ
ナラ「よかった…!」
ヒメ「遅かったな!そっちはうまくいったのか?」
宣教師「えぇ!皆さん、目を覚ましてくれました!」
カロル「みんなの傷も癒してあげるね?」スッ
フワッ フワッ フワッ
ラム「あ〜あ…また弱らせなきゃ」ボーッ
カロル「ラムくん!もう大丈夫だよ!みんなで帰ろう?」ニコッ
ラム「……」ボーッ
宣教師「様子がおかしいですね…」
ルーボイ「なんか途中からおかしいんだよ?」
ナラ「かんじょうが…ないって」
宣教師「感情が?」
ラム「」シュッ
ズンッ
カロル「っ…!」ブシュッ
943: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:02:44 ID:zCiLP5rgZc
ルーボイ「あぁ!?なにしてんだよ、お前!?」ダッ
カロル「みんなは先に戻ってて!!」
ナラ「か、カロル…」
宣教師「そうですね…。これはホビットの二人の問題です」
ルーボイ「…こいつらの?」
ナラ「…わたしたち、なんにもできないの?」
宣教師「…立ち入ってはならない領域という物もあるのです。私達は先に戻りましょう」
ルーボイ「どうすんだよ!カロルが殺されたらどうすんだよ!?」ガシッ
宣教師「…大丈夫。彼は友達を残して死んだりしません」
ナラ「……ルーボイ、もどろ?」
ルーボイ「ナラまで何言ってんだよ!」
ナラ「ラムくん…わたしにかなしい?ってきいた」
宣教師「そ、その髪はどうしたんですか…!」ハッ
ヒメ「ラムがやったんだよ。しかも落ちた髪を踏みつけた。最低な奴だ」
ナラ「ちが…うよ。さいていじゃないの…。ラムくんはきっと…わからなくなってるだけ」
ヒメ「……?」
ナラ「かんじょうがうすくなって…きもちをおもいだせないんだよ」
宣教師「だからキミを悲しませて…感情を確かめようとした、と?」
ナラ「わかんない…。でも…このままだと、おもいだせなくなるのかも」
宣教師「(先ほどの腕や足の残骸を見る限り…力を使いすぎた為に無気力になっているのかもしれませんね)」
ヒメ「だが現に刺されてるんだ。あのまま二人きりにしておくと……」
宣教師「いざとなれば彼は傷を癒せます。むしろ私達がいて刺激してしまう方が悪影響かもしれません」
ルーボイ「…ちぇっ!俺たち、なんにもしてねーじゃん」
宣教師「そんなことはありません。キミたちが時間を作ってくれたからこそ、二人で話し合う時間が出来たのですから」
マルク「クゥン…」タッタッ
宣教師「さ、行きましょう。団長さん達のお手伝いもしなくてはいけませんから」スタスタ
944: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:04:45 ID:zCiLP5rgZc
カロル「あ、はは……い、痛いよ、ラムくん?」ダラァー
ラム「そう…」ボーッ
カロル「どうし…ちゃったの?元気…ないよ?」プルプル
ラム「疲れないんだ。走っても動いても」グリィッ
カロル「そう…なのっ…?うっ…!」グチュッ
ラム「……」グリグリ
カロル「あぐっ…つあっ!い、いた…!ちょ、ちょっとだけ…抜いてくれない?」
ラム「やだ。治すから」グリグリ
カロル「あうっ!じゃ、じゃあグリグリだけ!おねがい!グリグリだけやめて!?」グチュッグチュッ
ラム「やめないよ」グリグリ
カロル「い、いったいよぉ〜!おねがい!」グチュッ
ラム「…イヤなら怒れば?」ピタッ
カロル「はぁぁ…痛いや…。でもちょっぴり楽になったよ…?えへへ?」ニコッ
ラム「……」グリィッ
カロル「いあっ!いたぁ!?」ビクンッ
ラム「…君も感情がないのかい?」ピタッ
カロル「か、感情…?」ヒクヒク
ラム「……」
カロル「感情はあるよ?笑ったり泣いたり、怒ったり悲しんだりするよ?」ニコニコ
ラム「お腹刺されても怒らない」ズボッ
カロル「うっ…うあ!や、やっと…抜いてくれた?」ブシュッ
945: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:06:13 ID:50l4o5eNes
ラム「僕は君の顔を見るだけでイラつく…んだけどなぁ?なんでかなぁ?」ウーン
カロル「ふふ…なんでだろうね?」フワッ
ラム「あ、治した」
カロル「うん、治したよ。痛いもの?」ニコニコ
ラム「刺さないと」グッ
カロル「刺さなくていいよ!?」アタフタ
ラム「ダメだよ。君にも復讐するんだから」ジッ
カロル「ふ、復讐?」
ラム「だって君は僕から仲間を奪ったじゃないか」
カロル「う、奪ったんじゃなくて…みんなで仲直りしようって言ったんだよ?」
ラム「そうだったっけ。どうでもいいや」シュッ
カロル「あぐぅ!ま、また…!?」ズンッ
ラム「死ねばいいよ。君が死んでくれたら、一つ復讐が終わるから」
カロル「ら、ラムくんが…落ち着くなら、それでも…いいよ?このまま…話そう?」ニコッ
ラム「…話す必要ある?喋ってるだけだよ?」
カロル「え…?そう…なの?」ズキズキ
ラム「ただなんとなく喋ってる。なんにも思ってない。君が死んでも…たぶん、なんにも感じない」グリィッ
カロル「いっ…た…!」ビクンッ
946: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:07:44 ID:50l4o5eNes
ラム「…君は感じる?」ジーッ
カロル「うっく…か、感じるよ?」ダラァ
ラム「……」
カロル「ラムくんが笑ってくれたら嬉しい。怒ってたら怖い…。
悲しんでたらツラいし、悩んでたらボクも一緒に悩みたい?」
ラム「……」
カロル「キミは大切なともだちだから…ボクはキミを大切にしたいんだ?」
ラム「イラつかないなぁ…。おかしいなぁ…」
カロル「ラムくんは感情を無くしたりしてないよ?」
ラム「?」
カロル「たくさん動いたから疲れてるんだよ?ゆっくり休んで疲れを取ろう?」
ラム「…疲れてない。疲れない。生きてる心地がしない」
カロル「……」
ラム「体が疲れないのは便利だよ。でも違和感だらけなんだ。なにも思わないのに…何かがムズムズするんだ」
カロル「それはラムくんが感じてる不安じゃないかな?
なんで?なんで?って思うのも…感情が動いてるからでしょ?」
ラム「……」
カロル「体の傷を治しても…心が弱っていくんだよ。キミの心は不安でたまらないはずだよ?」
ラム「」グリィッ
カロル「んきゃっ!?い、いたいってば!?」ガクッ
ラム「あ、今イラッときた」ハッ
カロル「よ、よかったね…?」ヒクヒク
947: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:09:52 ID:50l4o5eNes
ラム「君にはどうしたって伝わらないさ。僕は苦しかったんだ」
カロル「うん…。分かるよ?苦しかったよね?」
ラム「裏切られたら、お腹がキュッてして…息苦しいくらい胸が締め付けられる」
カロル「そうだね…」
ラム「君が誰よりも僕に近い筈なのに…君が誰よりも僕の邪魔をする」
カロル「うん。ごめんなさい」
ラム「でもいいんだ。なんにもいらない。なんにもない僕には裏切られる相手もいない」
カロル「…シープくんもバンパさんもキミを裏切ったりしないよ?」
ラム「あの二人は死んだ」
カロル「……」
ラム「バンパが切られたってシープが言ってた」
カロル「会ったの…?」
ラム「会ったよ。シープは…僕が殺したから」
カロル「……!」
ラム「裏切ったクセに助けてとか都合よく言うから…イライラしたんだ」
カロル「シープくんもバンパさんも…ずっとラムくんを心配してたよ?
話し合いが終わったら、みんなで探しに行こうって言ってたんだよ?」
ラム「そう。どうでもいいや」
カロル「ラムくん…!」ガシッ
ラム「…なんにも思わない。やっぱり僕は……」
カロル「あるよ!感情ある!ラムくんは感情が無くなったって思い込んで逃げてるだけだよ!」ユサユサ
948: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:22:52 ID:zCiLP5rgZc
ラム「…そんなに動いて痛くないの?」グラグラ
カロル「傷口が開いて痛いよ!痛くても…キミを助けたい!」ユサユサ
ラム「助ける?どうして?僕は助かってるよ?」グラグラ
カロル「ウソだよ!逃げちゃダメ!」ユサユサ
ラム「なんにも思わないし、なんにも感じない。疲れないし、元気にもならない」ブラブラ
カロル「そんなことない!勘違いだよ!」ユサユサ
ラム「復讐する理由もわからない。復讐したかった気がする。
それが生きる目的で…感情があったら僕は君を殺してる」グラグラ
カロル「うっ…!い、いたぁ…」ズキッ
ラム「だから言ったのに」ボーッ
カロル「気にしないで…!キミの話、全部聞くよ…?」タラァ
ラム「生きる目的もわからなくなった。あの感情が思い出せないんだ」
カロル「思い出せないんじゃない!思い出したくないんだ!だから…だから…」
ラム「ねぇ、カロルくん…僕は生きてるのかな?」
カロル「生きてるよ!だから…これからも生きていかなきゃ!」
ラム「…永遠の命をもらったのに…生きてる気がしないよ」ボーッ
カロル「ちゃんと生きてるよ!」
ラム「君を殺したら…殺したかった気持ち、思い出せるかな…」
カロル「ボクを殺したいなら殺してもいいよ!キミの生きる理由になるんなら、ボクを殺す為に生きればいいじゃない!」
ラム「…」チャキッ
カロル「い、い…いいよ!もう力は使わない!ボクを殺してよ!」
ラム「」ヒュッ
ドスッ
949: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:25:02 ID:zCiLP5rgZc
カロル「……!」
ラム「いっ…たぁ…」グチュッ
カロル「な、なん…で!ボクは…うっ…ここにいるでしょ?」ゴフッ
ラム「……」ズボッ
ラム「」シュウウウウウ
ラム「ふぅ…」
カロル「……」
ラム「…痛みは感じる。でも虚しさの方が感じる」
カロル「やめなよ…。自分を傷付けるの」
ラム「殺してって懇願してくるような奴に言われたくない」
カロル「…言われたくないって思えるんじゃない…。イヤなことはイヤって言えるでしょ?」
ラム「……」
カロル「すぐ治る体に頼ってムチャするから…心が疲れてるんだよ…?」
ラム「……」
カロル「」クラッ
ラム「……」
カロル「あはは…血、出しすぎちゃったかな」ドロォ
ラム「力で治せばいいよ」
カロル「いいの?そんなことしたらボク死なないよ?」
ラム「君の方が僕よりムチャしてるよ。なのに君はなんともない。
裏切られた直後に信じるなんて僕にはできない。傷付けられた相手を許すなんてできない」
カロル「……」
ラム「なんにもないって言ったけど、なんにもないのも悪くないかもよ。
なんにもないから苦しまないし、なんにもないから余計な感情に支配されない」
カロル「ほら、やっぱり忘れたいんでしょ?」
ラム「かもね」
950: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:28:44 ID:zCiLP5rgZc
ラム「シープが息絶える寸前まで泣きながら許しを乞う姿は…吐き気がした。
みじめでバカバカしいんだけど…同時に内心、許したくなった自分にも吐き気がした」
ラム「でも手遅れだった。僕は君と違って誰かを癒す力はないから。
ただ苦痛に耐えながら治るのを待つだけの力じゃ瀕死のシープを助けられない」
ラム「旅人に裏切られた時も…甘い言葉にあっさり騙された。
あの屈辱感は忘れられない筈だった。だけどもう他人事みたい」
ラム「両親を村から追い出したアルの連中も…ここが終わったら殺すつもりだった。それすらどうでもよくなった」
ラム「君を見つけたら真っ先に殺すって決めてた。でもどんどん薄れてく」
カロル「……」
ラム「…僕はどうすればよかったんだろう。憎くて憎くてたまらなくて…復讐がしたかっただけなのに…」
ラム「神なんて信じてないけど…もしいるんだとしたら、なんで僕から復讐さえ取り上げるのかな。
空っぽの心と死ねない体で復讐もできないまま、僕はボーッと生きていくのかな」ボーッ
カロル「……しっかりして?さっきはイラッとしたんでしょ?大丈夫だよ…!」
ラム「…もうほっといて」
カロル「ほっとけないよ!」
ラム「どうでもいい…どうでもいい…」クタァ
カロル「……!」カッ
951: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:36:52 ID:zCiLP5rgZc
カロル「どうでもよくなんかないよ!」パシンッ
ラム「いたっ…!」ヒリヒリ
カロル「立って!」グイッ
ラム「…やめて。もういいって」ダラーン
カロル「ラムくんはズルいよ!自分ばっかり復讐とか憎しみに囚われてさ!
たくさんの人間とホビットが死んだのに!どうでもいいなんてダメだよ!」ググッ
ラム「……」カチンッ
カロル「最初は裏切られてきたのかもしれないけど…途中からただの分からず屋だったもん!」
ラム「腕…痛いんだけど…」イラッ
カロル「なら起きてよ!ボクだって血が止まらなくて苦しいんだからね!」グイッグイッ
ラム「癒せばいいだろ…」
カロル「イヤだ!ボクはラムくんみたいに力に甘えない!」
ラム「は…?」
カロル「忘れちゃったからいいやとか!感情ないからどうでもいいやとか!
自分のしてきたことが怖くなって逃げてるなんてラムくんらしくないよ!!」
ラム「はぁ!?」イライラ
カロル「ほら!怒ってる!感情あるんだよ!」
ラム「怒ってないけど!?」スクッ
カロル「立てるんじゃない!なんで座り込んだりするの!そんなに慰められるのがイヤだった!?」
ラム「疲れないからね!立てるよ!」
カロル「ひどい!ボクはホントに心配してたのに!?」
ラム「大きなお世話だね!誰も君に心配してほしいなんて言ってない!」
952: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:45:18 ID:zCiLP5rgZc
カロル「意地っ張り!」
ラム「君がね!」
カロル「う…分からず屋!」
ラム「君がね!」
カロル「あう…う……」
ラム「君がね!」
カロル「うわーん!なんにも言ってないじゃない!」シクシク
ラム「(……!いつもそうだ!気付いたらこいつのペースに……)」ギリッ
ラム「ぼ、僕は君みたいに感情をさらけ出す性格じゃないんだよ!」
カロル「……!」
ラム「なんでもきれいごとで済ませて…そういうところが嫌いなんだ!」
カロル「……」フラッ
バタッ
ラム「カロルくん!?」ガバッ
カロル「っ……!」ドロォ
ラム「…なにしてるのさ!力を使えばいいだろ!?」
カロル「ボクが…死んでも…っ…悲しくないでしょ?」ゴボッ
ラム「…か、悲しくないね!君なんか大嫌いだ!殺してやりたくてしょうがなかったよ!」
カロル「そ…か…」シュン
953: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:47:00 ID:50l4o5eNes
カロル「…また…一緒に笑いたかったな…」
ラム「え……」
カロル「初めて会った時…ラムくん、ボクが抱き締めたら…泣いてたね…?」クスクス
カロル「たったこれだけでおかしいねって…照れ臭そうに言って…」
ラム「…昔のことだよ」
カロル「初めて同じホビットに会えて…わくわくしたんだ…」
ラム「うん…。僕もびっくりした。人間と仲良くできる同族なんて知らなかったから」
カロル「…ボクはあの時からずっと、ともだちだと思ってるよ?もちろん、今も?」ニコッ
カロル「うっ…えほっ!えほっ!」ゴフッ
ラム「カロルくん!?」バッ
カロル「仲直り…したかった…」ハァッハァッ
ラム「力を使いなよ!まだ間に合うんじゃないの!?」
カロル「……」フッ
ラム「〜〜〜!」ワナワナ
ラム「と、ともだちっ…だよ!」
954: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:52:40 ID:50l4o5eNes
ラム「僕もともだちだと思ってる!でも言えなかったんだ!」
ラム「言ったら…何がしたいのか分からなくなると思って!」ジワッ
ラム「人間に復讐しないと…父さんと母さんが死んでしまった意味も無くなる気がして!」ポロッ
ラム「だけど…誰も僕には付いてきてくれなかった!」ブワッ
ラム「みんな復讐より、普通に暮らしたいって…そればっかりだった!」ポロポロ
ラム「…それでも復讐は諦められないんだ!だってそうだろう!?」ポロポロ
ラム「騙されて奪われて裏切られて…ひとりぼっちになって…そんな…そんなのイヤだったんだよ!」ポロポロ
ラム「同族にも…っ!見放されて…」グシッ
ラム「だから…ふあっ!うえっ…羨ましかった!僕より…みんなに慕われる君が!」ポロポロ
ラム「…復讐しか見れない僕と違って…ひぐっ…君は…君は…みんなに…理解されてたから…」ポロポロ
ラム「うぅ…ふえっ!本当は僕だって…こんな生き方、したくなかった…!」ポロポロ
ラム「だから…甘い言葉に…ひんっ…希望があると思って…騙されてきたんだよ…うえっ!」ポロポロ
ラム「ずずっ…はぁっ…普通に暮らしたかったよ…!もっと父さんたちに愛されたかった!迎えに来てくれる約束、守ってほしかった!」ポロポロ
ラム「ともだちも欲しいし、かけっことか…かくれんぼに…混ぜてほしかった!」ポロポロ
ラム「うっ…うあっ…ふぅ!僕だって子供なんだよ…!
復讐なんて…背負いきれないよ…うっ…あぁぁぁぁん!!」ビエーン
955: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/30(土) 22:57:29 ID:zCiLP5rgZc
ラム「言った…だろ!君みたいな…ともだち…ぅぐっ!ほし…かったって!」ガシッ
カロル「……」
ラム「しな…死なないでよ!死なないで!君までいなくなったら、僕はホントにひとりぼっちじゃないか!」ユサユサ
ラム「ともだちだよ!ともだちは…ともだちを裏切らないって…っ…ひっ…言ったじゃないかぁぁ!!」ユサユサ
カロル「裏切らないよ?」パチッ
ラム「わぁぁぁん…ぁぁ………!?」ビクッ
カロル「ともだちだもの!」ニコッ
ラム「ぐすっ…き…君……いつから…」グシグシ
カロル「ラムくんがともだちって言ってくれた時から?」ニコニコ
ラム「も、もしかして…!」ハッ
カロル「…!」ウインク
ラム「っ……!ず、ズルいのは君じゃないか!」ゴシゴシ
カロル「…ごめんね、こんなに泣くと思ってなかったから」オドオド
ラム「……!」カァァ
カロル「ホントの気持ち…聞けて嬉しかったよ?」ダキッ
ラム「」ビクッ
カロル「あの時と同じだね?こうして…二人で気持ちをぶつけた後に仲直りしたでしょ?」ギュッ
ラム「……ひっ」ポロッ
カロル「もう大丈夫だからね?ボクはキミを裏切らないよ?
差別も無くなって普通に暮らせる日が来るから……」ポンポン
ラム「うえっ…ぇっ…ふえぇぇん…!」ギュッ
カロル「ルーボイくんたちとも仲直りしようね?ボクが一緒に謝るから怖がらなくていいよ?」ポンポン
ラム「うんっ…うんっ!」コクコク
カロル「……泣き止んでからにしよっか?」
ラム「ひっ…い…癒しの力で…止めてよ!」グズッ
カロル「え…それはちょっとできないかも?」オロオロ
956: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:16:05 ID:2Wm5GCo/Zk
―――客席最後列―――
カロル「みんなー!」スタスタ
マルク「あんっ!」ハッハッ
宣教師「あ、戻ってきましたか!」
ルーボイ「おせーぞ!待たせんなよな!」プンスカ
ヒメ「よく言うな?おまえが一番、心配してたのに?」
ナラ「あいつへいきかな…へいきかなって…ずっといってたよね?」
ミシング「ルーボイくんは照れ屋さんなのかにゃー?えいっえいっ」ツンツン
ルーボイ「うるせぇ!」プンスカ
団長「お、小童よ!戻ってきたか?
狂った兵達を気絶させて向こうに集めておいたのだが正気に戻してやってくれないか!」スタスタ
カロル「はーい!ちょっと待っててね?」
宣教師「ん…?」ジーッ
カロル「よかった…みんないるね?」
ラム「」コソコソ
カロル「ほら、隠れないで?ボクの背中じゃちっちゃくて、すぐ見つかっちゃうよ?」クスクス
ラム「う、うん…?」オドオド
宣教師「……説得できたんですね?」ニコッ
カロル「ラムくんからみんなに言いたいことあるって?」ニコッ
ラム「……」オドオド
957: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:18:00 ID:2Wm5GCo/Zk
ゾロゾロ ゾロゾロ
ラム「ぜ、全員…集めなくても……」オドオド
カロル「何人いるかじゃないよ?ラムくんの気持ちを素直に言えば…分かってくれる?」
ラム「で、でも怖いよ…。それに緊張して……」ブルッ
カロル「」パシッ
ラム「……!」ギュッ
カロル「ボクがいるよ?」ニコッ
ラム「……手、繋いだままでいい?」オドオド
カロル「うん。いいよ?離さない?」ニコニコ
ラム「……」ギュッ
ルーボイ「早くしろよな!」
ラム「」ビクッ
信者's「」ジロジロ
ラム「……!」ブルッ
教徒's「」ヒソヒソ
ラム「あ…う……」ブルブル
ゴチンッ!
ルーボイ「いてっ!?なにすんだよ!?」クルッ
ヒメ「バカ!バカ!おまえ、ほんとバカ!空気読めバカ!」プンスカ
ナラ「いまのよくない!」キッ
ルーボイ「う……ご、ごめん」シュン
宣教師「キミも私達も今、彼がどういう想いで、この場に立つ決心をしたのか…考え、理解し、話を聞いてあげましょうね?」ナデリ
ルーボイ「……はい」
ラム「……」
カロル「…ね?みんなキミの敵じゃないでしょ?」ニコニコ
ラム「う、うん…」コクッ
958: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:19:52 ID:2Wm5GCo/Zk
ラム「……」チラッ
カロル「…大丈夫!」ニコニコ
ラム「ぼ、僕は…人間を許せなかった。
だから…復讐したくて…カロルくんを利用したり、同族と力を合わせて戦った…」オドオド
ラム「今も…人間を許せるかって言われたら…許せない」
ラム「だけど…復讐に走れば走るほど、みんなが僕から離れてく…」
ラム「不安でたまらなくて…途中から復讐する理由も分からなくなってたんだ」
ラム「でもそう思った時には…もう僕の周りには誰もいなくて…止まることができなかった」
ラム「その時になって初めて後悔したんだ!
あの時、ああすれば…こうしてればって…そればっかり浮かんできて!」
ラム「考えるのをやめたかったんだと思う!
何も考えない、感じない…それが一番、楽だったから!」
ラム「復讐に生きよう!復讐に生きようって言い聞かして…無意識に心を壊そうとしてたんだ!」
ラム「僕の独りよがりな…どうしようもない!
本当にどうしようもないワガママだったけど!」
ラム「そんな僕を…見捨てなかった、ともだちがいる」ジッ
カロル「えへへ」テレテレ
ラム「何度もひどい言葉をぶつけた!何度も人間なんか信じるなって言った!
何度も拒絶して、何度も何度も困らせた!」
ラム「…僕はたぶん間違ってなかった。
でも…間違いを正しさに変える勇気が無かったんだ」
ラム「カロルくんのしたことはすごいと思う。普通だったら絶対ムリだよ」
ラム「人間のともだちを作って、僕らが差別を受けてるって知ってもらって…。
その人間たちがカロルくんに協力して、必死に助けようとしてる」
959: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:22:45 ID:2Wm5GCo/Zk
ラム「僕なんかじゃ…ともだちを作る時点で挫折するよ」
カロル「そんなことない?」ギュッ
ラム「ううん。君はすごいよ。一人の人間と分かり合えるまでに何人に差別される?
理不尽なことが何回降りかかる?よっぽど心が強くないと挫けてしまうよ…」
宣教師「(…本当にその通りです)」ウンウン
カロル「ちがうよ?すごいのは信じてくれた人たちだよ!」
ラム「え?」
カロル「だって…ボクたちを信じると今度は同じ人間から差別される。
ただ仲良くしたいだけなのに…分かってもらえなくなるんだ」
カロル「それでも宣教師さまはボクを信じてくれた!
それに差別を無くそうとしてくれたんだよ!」
宣教師「わ、私…?」ビクッ
カロル「宣教師さまのおかげでルーボイくんとパッチくんっていう大切なともだちができた!」
ルーボイ「ま、まぁな!」エッヘン
カロル「宣教師さまが大聖堂に囚われていなかったらナラにも出会えなかった!」
ナラ「……!」ポッ
カロル「王都に連れてこられた時もツラいことがいっぱいあったけど、宣教師さまと歩いてたら王子さまに会えた!」
ヒメ「それはこじつけじゃないか!?」
カロル「…最初はボクを嫌ってた団長さんも宣教師さまが説得してくれたんだよね?」
団長「あぁ!王子の心が晴れたのを見るまでは信用出来なかったがな?」フフッ
カロル「…ね?ボクの力なんてちっぽけでしょ?」
ラム「……」
960: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/31(日) 20:26:42 ID:YmcwGKzrMY
カロル「ここにいるみんなが僕に関わって大事な物を無くしてる…」
カロル「それでもボクを信じて一緒に戦ってくれる」
カロル「もちろん間違ってることは間違ってるって言われるよ?」
カロル「でもそれはボクを嫌ってるんじゃなくて…ともだちだから言ってくれるんだ?」
カロル「ボクが頑張ってこれたのはみんながいてくれたから…」
カロル「きれいごとや偽善に聞こえるかもしれないけど、ホントなんだ?」
ラム「……」
カロル「数えきれない出会いがある、このまっさらな世界にはたくさんの希望が溢れてるよ?」
カロル「不幸せでも信じる心を持ってたら、ボクらの見る世界はキラキラする?」
ラム「…君の言うことは前向きなだけで中身がスカスカ?」
カロル「う……」ガーン
ラム「でも素敵だと思う?」ニコッ
カロル「…ありがとう!」パァァ
ラム「そうだね。一方的に信じても…一方的に裏切られる時だってある」
ラム「だから僕たちは分かり合えるように…お互いに理解する努力をしなきゃいけないんだ」クスッ
ラム「僕もがんばるよ。君みたいにはできないかもしれないけど信じてみる」
カロル「…ラムくん、すっかり元気になったね?」ニコニコ
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【うpろだ】
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