前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
901: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/27(水) 21:39:02 ID:4uUio4emvs
ギンッ キキンッ ガッ キンッ
宣教師「あの…カロルくん、さっきの詠唱みたいなのは自分で考えたんですか?」スタスタ
カロル「ううん?ボクじゃなくってヒメくん!その方がかっこいいからって?」スタスタ
宣教師「あぁ〜…どうりで?」チラッ
ヒメ「な、なんだよ?」スタスタ
宣教師「王子って意外と微笑ましいですよね」ヒソヒソ
ルーボイ「あれ3回も練習させてたんだぜ?」ヒソヒソ
ナラ「なにもいわなくても、つかえるのに……となえる…ひつよう、ある?」ヒソヒソ
ヒメ「なんか分からないけど、おまえら死刑だ!」ジャキッ
カロル「あのセリフ、ボクは好きだよ!」ニコニコ
ヒメ「……そ、そうか!気に入ったなら良かった!アッハッハ!」スチャッ
宣教師「」ヒソヒソ
ルーボイ「」ヒソヒソ
ナラ「」ヒソヒソ
ヒメ「そこ!ヒソヒソするな!?」
902: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/27(水) 21:40:40 ID:rORptvKkmE
―――平原―――
ラム「ふはぁっ…ふふふ?」ダラダラ
アントリア「ま、参ったな?」
ラム「ふ、ふふふ…ふふ…?」ドチャッドチャッ
アントリア「腕を切っても足を切っても頭を割っても這い上がる…。その執念はどこから来るのだね?」トットッ
ラム「し……ね…しね…しね!しねぇ!?」バッ
ズドッ!
アントリア「……!」グッ
ラム「ごぼっ…!」ビチャビチャ
アントリア「…心臓を貫かれては成す術もない。そうだろう?」
ラム「ぇ…あぁ…!」パクパク
アントリア「はぁっ!!」ズブブッ
ラム「べぼぼぼぼぼ!!?むばぁっ!?」ガクガク
アントリア「僕は紳士だ…痛くないように優しく抜いてあげよう?」グッ
ラム「ざ…ぜい!」ブバァッ
アントリア「」ズボッ
ラム「ざぜ…!ざぜい!ぱぁっ!?」ゴッパァ
アントリア「ざぜい…?」
ラム「ざぜい!ざぜい!ざぜい!ざぜい!ざぜい!」ハッハッ
アントリア「……?」
ラム「ざぜい!ざいぜい!さいぜい!さいせい!さいせい!」シュウウウウウ
アントリア「なぜ…死なない…?」
ラム「ざいぜっ!いぃっ!?」シュウウウウウ
アントリア「実を食べたとは言え、ありえない…」ブルッ
ラム「ハァァァァ……」シュウウウウウ
アントリア「僕とノワールは…こんなおぞましい力に手を出そうとしていたのか…!?」ガクガク
903: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/27(水) 21:43:18 ID:4uUio4emvs
ラム「あははっ!再生完了!」グッパッ
アントリア「……」フルフル
ラム「震えてるね?どうかしたの?」
アントリア「は、初めてでね…。実際に目にしたのは…?」
ラム「……?」
アントリア「痛みは感じないのかね…?」
ラム「痛いに決まってる」
アントリア「ど、どんな感覚なのだね?徐々に失われた部分が再生されていくのは…?」
ラム「身体中の肉を無理やり引き伸ばされてる感じかな?傷が塞がった瞬間は物凄く快感だけど?」
アントリア「そ、それは…耐えられるものなのかい…?」
ラム「無理だと思うよ?普通の奴なら精神がもたないんじゃない?」
アントリア「」ゾクッ
ラム「僕はとにかく声を出してみたけど?気が紛れると思ってさ?」
アントリア「ほ、ほう?」
ラム「まぁ復讐したくて永遠の命を手にいれたんだから…こんなことくらいで精神ヤられる訳にはいかないんだよね?」
アントリア「き、君は…生き物が踏み込んでいい範囲を越えている…」
ラム「なんならおじいさんも試してみる?」
アントリア「い、いや…」
ラム「なぜ怖がるの?こんなに素敵な力を見て?」
アントリア「素敵な力?とんでもない?」カタカタ
ラム「は?」
アントリア「君は呪われたんだよ…!アピシナの呪縛に…!」
ラム「アピシナ?誰それ?」
アントリア「あ…あ…わあぁぁぁあああ!!!」クルッ
アントリア「あぁぁぁぁぁあああ!!!」ダッ
ラム「…逃がさないってば?」ダッ
904: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/27(水) 21:45:40 ID:4uUio4emvs
ガキンッ キンッ ギィンッ
団長「……」ジーッ
ミシング「あぁーん…戦うお仲間の背中に熱い視線を送るお姿も…す・て・き!」ウットリ
近衛兵34「ヒィィィィハァァァァァアアアア!!!!!」ザウッ
ミシング「はい来ましたよー!おじさま、どうぞ!」
団長「むん!」ビシッ
近衛兵34「あああ……っ」ガクッ ドサッ
ミシング「きゃー!手刀だー!首トンってした!?初めて見たけど本当に気絶するんだー!?」キャーキャー
団長「…うむ。やはりそうか」フムフム
ミシング「やはりそうかって顎に手を当てるの渋すぎー!」キャーキャー
信者5「…この人さっきから、うるさいな」シラー
教徒2「そうですね…」シラー
団長「すまんが君らに一つ頼みがある?」
ミシング「はーい!なんでもどうぞ!」
信者5「は、はい!」
教徒2「な、なんでしょう?」
団長「脱いでくれないか?」
ミシング「えっ」ピシィッ
団長「悪いが急いでほしい。試したい事があってな?」
信者5「た、試したいったって…」タジタジ
教徒2「こんな状況じゃ布一枚でも身を守る物がないと…」タジタジ
ミシング「もー!おじさまったら気が早いんだからー!でもそんな大胆なところも魅力的ー!?」ヌギヌギ
団長「上着だけでいい。教団の紋章を外せばおそらくは……」
ミシング「え?全部じゃなかったの?」ピタッ
信者5「す、すごいな。この人…?」
教徒2「よくこんなとこで脱ごうと思えますよね」
905: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/27(水) 21:47:07 ID:rORptvKkmE
ガキンッ ギャリィッ ガチィッ
ミシング「あ、あれ?なんか…?」ドキドキ
信者5「襲ってこない…?」キョトン
教徒2「というより、見向きもしなくなったんじゃ…?」キョロキョロ
団長「…これでよし!」スタスタ
ミシング「あ、おじさま!?」
団長「奴らは修道服を着た人間にしか襲いかからんようだ。もうワシの背に隠れる必要はない?」
信者5「そ、そうだったのか!」
教徒2「でもなんで修道服?」
団長「奴らを動かしている黒幕がそう暗示させたのだろう」
ミシング「け、けど!けど!おじさまがいないとミシングちゃん、こっわーい?」キャピキャピ
団長「君らはなるべく危険を回避しながら他の修道服を着た人に呼び掛けてくれ。ワシは引き続き、狂った兵士の鎮圧に尽力しよう」スタスタ
ミシング「そ、そんな〜!?」ガビーン
信者5「すごっ!よく気付いたな?」
教徒2「でも確かに向こうの兵士様たちも戦ってますが…切られてる人は少ないですよね」
ミシング「失恋かにゃー…」シクシク
信者5「そうと決まれば俺達も!」スタスタ
教徒2「はい!呼び掛けに励みましょう!」スタスタ
ミシング「あれれ?誰も慰めてくれない感じ?」
スタスタ スタスタ………
ミシング「ま、いいや!あたしも協力しなくちゃ!」タタタッ
906: 名無しさん@読者の声:2014/8/27(水) 22:31:08 ID:hr96cHLUoI
ミシングたんを嫁にください
支援
907: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/28(木) 20:14:30 ID:H.kvyPRca6
―――平原―――
宣教師「…結構歩いてみましたが神官の姿が見当たりませんね」キョロキョロ
ヒメ「相変わらず追っかけっこが絶えないけどな。近衛だけで200はいるから、キリがない」スタスタ
近衛兵35「あああええん!!」ブンッ
近衛兵36「うぉー!!」シュバッ
ワァァァ ヒィィィィ
ルーボイ「うわ!まただぞ?」
カロル「止めなくちゃ!」
ナラ「…うん!」
ヒメ「じゃあ動きを止めてくるから待ってろ」スタスタ
宣教師「物怖じしないんですね…。私なんて足がすくみかけているのですが」
カロル「怖いけど、ボクたちがやらないといけないもの!」
宣教師「それはそうかもしれませんが…子供たちが勇ましく戦ってるのに不甲斐ない気持ちでいっぱいです」
ルーボイ「でもよ!宣教師様がいると楽しいよな!」
ナラ「うん!こわいのより、たのしいがいっぱい!」
宣教師「おお…神よ!どうかこの天使たちの純粋な心が褪せないまますくすくと育ってくださいますように…!」ジーン
ルーボイ「プッ…大げさだし!」ニヤニヤ
ナラ「やっぱり…おもしろい!」クスッ
カロル「宣教師さまの方が純粋だね?」ニコニコ
908: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/28(木) 20:19:54 ID:H.kvyPRca6
宣教師「それにしても彼はどうやって気付いたんでしょう?癒しの力で正気に戻せると?」
ルーボイ「前におんなじの見たから知ってんだよ!俺の村で村人のみんなもああなったから!」
ナラ「やまい…だったら、なおせるかもって…やってみたら、だいせいかい?」
宣教師「なるほど!そういう発想も出来ますね?」
ルーボイ「あいつ、ああ見えて意外と頭いいんだぜ?会ってもねぇのにパッチが生きてるってのも当てたし!」
宣教師「うーん…常識に欠けた言動や行動が非常に目立ちますが…道徳的な部分を学ばせれば、意外な秀才になれる可能性も……」
ヒメ「ないない。絶対ありえない」スタスタ
ナラ「あ、おひめさま」
ヒメ「王子だ!?」ムキー
宣教師「…なぜありえないと?」
ヒメ「あいつはバカでマヌケでドジでおまけにグズでノロマな奴だから、直感的に何か感じたら衝動に任せて突っ走るだけのアホだ」
ルーボイ&ナラ&宣教師「!?」ギョギョッ
ヒメ「ん?なんだよ?後ろになにか……」クルッ
カロル「……!」ウルウル
ヒメ「も、もう癒してきたのか!?」ビクゥッ
カロル「そんな風に思ってたの…?」ウルウル
ルーボイ「しらねー?」プイッ
ナラ「わたしたち…むかんけい、だよ?」サッ
宣教師「他人のせいにするのはいかがなものかと?」
ヒメ「お、おまえら!ちょっとは庇ってくれてもいいだろ!?」
カロル「うわーん!!ひどいよー!?」ビエーン
ヒメ「あぁ!泣くな!アントリアを探すんだろ!?」アタフタ
ルーボイ「あーあ、泣かした!いーけないんだ!いけないんだー!」
ナラ「せーんせーにーいっちゃーおー」
宣教師「では私が指揮を担当しますのでお二人は声高らかに合唱をお願いします」スッスッ
ヒメ「おまえらなぁ!?」
909: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/28(木) 20:23:51 ID:H.kvyPRca6
???「」タタタッ
ヒメ「いい加減にしろ!悪かったって言ってるだろ!?」ムキー
カロル「わーん!ヒメくんがおこったー!?」ビエーン
宣教師「はい、では一斉に!」スッスッ
ルーボイ&ナラ「いーけないんだーいけないんだー!せーんせーにーいっちゃーおー!」ソプラノ
ヒメ「あぁ!うるさいな、もう!?」
近衛兵37「ふんがっ!」ダッ
ヒメ「ってうわああ!?カロルぅ!?」ハッ
カロル「グスッ…え?」キョトン
ダッ バッ ドカッ
近衛兵37「ふがっ!?」ドタッ
マルク「がぅぅ!わんっ!わんっ!」ガッ
カロル「マルク!?」
ルーボイ「あぁぁ!?」
宣教師「主人の危機に駆け付けるなんて、さながら忠犬バチコンですね!」
ルーボイ「どこ行ってたんだよ!マルク!」
宣教師「どこって…危険なのでキミが置いてきたのでは?」
ルーボイ「ちげー!ナラと合流する時、急いで走ってたら置いてった!」
ナラ「かわいそー…」
マルク「うぅー…!」ガブガブ
近衛兵37「ふがああ!?」
宣教師「…マルクくん、怒ってますよ?」
ルーボイ「う…やっぱ犬、苦手かも?」タジタジ
910: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/28(木) 20:28:50 ID:Ei6luXh5hM
カロル「はい?」ピトッ
近衛兵37「ふ、ふが?おいら…なんで?」フワッ
マルク「グルルルル!」ギロッ
ルーボイ「ひえっ!?」
宣教師「多分、あれは『ケガして疲れてるボクを、よくも置いてったな』っていう目ですね?」フムフム
ルーボイ「ご、ごめん!急いでたからしかたなかったんだよ!?」ブルブル
マルク「ばうっ!ばうっ!」
ルーボイ「ひぃ!?」ビクゥッ
宣教師「マルクくん、後ろを見てください?」
マルク「わう?」クルッ
カロル「……」ジーッ
マルク「」ハッ
カロル「マルク!」
マルク「クゥン……!」ウルウル
カロル「マルクー!」ダッ
マルク「わうーん!」ダッ
バッ ダキッ ギュウウウウ
カロル「助けてくれてありがとう?ずっとボクを探してたの?」ギュッ
マルク「クゥーン!」コクコク
ナラ「いちばんなかよし…だね?」ニコニコ
宣教師「一番も二番もありませんよ?みんな仲良しこよしです?」ニコニコ
ルーボイ「助かった…」ドキドキ
ヒメ「ついでにオレも助かった…。泣き止んでくれないかと思ったよ」ドキドキ
911: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/28(木) 20:30:29 ID:Ei6luXh5hM
スタスタ スタスタ
ヒメ「だいぶ離れたけど、誰もいないな?」
マルク「わんっ!あぅん!」ハッハッ
カロル「どうした……の…!?」ビクッ
宣教師「あ、あれはまさか!?」
ルーボイ「兵隊が倒れてんぞ!?」
ナラ「だれか、たたかってたのかな…」ゾォッ
マルク「」タタタッ
カロル「あ、マルク!」ダッ
ヒメ「お、おい!迂闊に近付くな!意識があったら襲ってくるかもしれないだろ!」
宣教師「周囲に人影は見られません。血の匂いも香りますし、すでに亡くなっているのでは…」
ルーボイ「ラムか!?」
宣教師「分かりません。正気に戻った兵の方がラムくんを取り押さえようとして返り討ちに遭ったのかもしれませんし…アントリア神官の仕業なのかもしれません…」
ヒメ「どっちにしても奴らがここにいたのは間違いないな!」
カロル「みんな!見て!こんなの拾ったよ?」タタタッ
ナラ「……?ふく?」キョトン
カロル「うん、それから…」チラッ
ルーボイ「なんだよ?」
カロル「ちょっと…宣教師さまに来てもらっていいかな?」シュン
宣教師「……?」
912: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/28(木) 20:34:09 ID:H.kvyPRca6
腕や足の残骸「」
宣教師「……!」
カロル「細くて短いから大人のじゃないと思う…」
マルク「」クンクン
宣教師「そ、そうですね…。修道子が襲われたのでしょうか…?」
カロル「…これ?」スッ
宣教師「そ、それは……!?」ギョギョッ
眼球「」コロン
宣教師「む、むごすぎます…!子供たちには見せられません!」ブルッ
カロル「うん…。そうだね」
宣教師「…な、なぜこれを私に?」
カロル「みんなには見せたくなかったから…大人の宣教師さまに言おうと思ったの」
宣教師「…分かりました。私が責任を持って土に……」
カロル「ううん。ちがうんだ?宣教師さまに言いたいのは…これって全部じゃないよね?」
宣教師「全部…ですか?」
カロル「うん。腕とか足はあるけど…全部じゃない」
宣教師「い、言われてみれば!?」キョロキョロ
カロル「あとこの眼…瞳を見て?」
宣教師「……?暗くてよく……?」ゴシゴシ
カロル「はい、近くで見て?」ヒョイッ スッ
宣教師「わっ!な、なんで近付けるんですか!無闇に触ってはいけませんよ!」ビクッ
カロル「瞳が黄色いでしょ?」
宣教師「……た、たしかに?」
カロル「ラムくんのだよ。これ、全部」
宣教師「ラムくんの…!?」
カロル「マルクに匂いを覚えさせてるから、これですぐ見つけられるよ」
913: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/28(木) 20:42:02 ID:BTDVpUAdHc
オーイ! フタリトモー!
カロル「みんな呼んでる。今のお話は二人のナイショね?」
宣教師「内緒に?」
カロル「うん。ボクが切られた腕を元通りにした時も急に人間の顔色が変わったんだ。
もしラムくんが同じこと出来るって知ったら、ボクみたいに石を投げられるかもしれないでしょ?」
宣教師「…カロルくん」シュン
カロル「宣教師さまになら見せてもなんにも言わないかなって?」ニコッ
宣教師「それは構いませんが…私はどうすれば?」
カロル「みんなになんて言えばいいか分からなくて…」
宣教師「分かりました…。彼らには私から説明してみます」
カロル「ありがとう!」
宣教師「…キミは」
カロル「え?」
宣教師「…ラムくんを救済できると思いますか?」
カロル「きゅーさい?どうかな?ラムくんって何歳なんだろう?」キョトン
宣教師「いえ、そうでなく…彼の心を救えると思いますか?」
カロル「……」
宣教師「私は…何もしてあげられません。
彼はキミのように素直に受け入れてはくれませんでした…」
カロル「…宣教師さまもラムくんとお話したの?」
宣教師「はい…。彼の過去も聞かされました。
それは壮絶で…とても言葉にはならないものでした」
カロル「そっか。なんとなくだけど分かるよ」
宣教師「絶望の淵で彷徨ったまま、更に闇の奥深くへ進んでいく彼を救い上げる術があるのか…私には分からないのです」
カロル「…そうだね。今のラムくんはきっと…何を言っても分かってくれないと思う」
宣教師「それでもキミは彼を救いたいと願っているのでしょう…?」
カロル「うん。ラムくんにも幸せになってほしいんだ?」
914: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/28(木) 20:44:37 ID:BTDVpUAdHc
カロル「宣教師さまは誠実な人だから悩んでしまうよね…。
どうしたらいいか…どうもしない方がいいのかなって…」
宣教師「……」
カロル「でもね。悩まなくていいんだよ?」
宣教師「……へ?」
カロル「…宣教師さまは優しい人間だもの。
いつだって誰かに目を向けて…たくさんの悩みを抱えてる人?」
宣教師「そ、そんな…私は…」
カロル「宣教師さまがそのままでいてくれるのってみんなの支えになってると思うよ?」
宣教師「わ、私は…何も成し得ていません。きれいごとを言って……それだけです」
カロル「実際に誰かを救えるのはアントリアさんとか司祭さまみたいな人かもしれないね?」
宣教師「そうですよ…。私なんて…」
カロル「でも心から信じてみたいって思えるのは宣教師さまみたいな人だよ。ボクはそう思う」
宣教師「……!」
カロル「ラムくんもキラキラしすぎてて眩しかったのかも?」
宣教師「」ウルッ
カロル「救ってあげたい…。その気持ちがあって…でも諦める理由の方がたくさんあって…それでも諦めない。
ボクもみんなも、そんな宣教師さまが大好きなんだ。だから宣教師さまは悩まなくていいんだよ?」
宣教師「うっ…うぅ…」ホロリ
カロル「……」ニコッ
マルク「はっ!はっ!」スリスリ
カロル「あ、匂い覚えたの?」
マルク「わんっ!」クイックイッ
カロル「あっちだって?宣教師さま?」
宣教師「…は、はい」グシグシ
915: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/28(木) 20:46:21 ID:TgNiQQVscQ
>>906
ミシング「きゃー!ねぇ、ねぇ、聞いてよー!あたし求婚されちゃった!?」バシバシ
宣教師「いたっ!痛い!痛いですよ!背中バシバシしないでください!?」ヒリヒリ
ミシング「どうしよー?あたしにはダンディーなおじさまがいるのにぃ…求婚なんて困っちゃう?
でも揺れちゃう乙女心?どうして?どうして?あたしって罪な女なのー!?」キャーキャー
宣教師「球根の贈り物ですか?懐かしいですね…。大聖堂の庭園で植えた球根も咲き誇る頃でしょうか…?」シミジミ
ミシング「ちがうもーん!贈るんじゃなくて貰われる方だもーん?」
宣教師「……」
ミシング「ん?どしたのー?」
宣教師「よくよく考えたら…ここどこですか?」キョロキョロ
ミシング「あー…なんかさ、やってみたかったんだって?こういうの?」
宣教師「…こういうのって、どなたが?」
ミシング「クライマックスも近いしねー!思えば長かったなー?
しかもミシングちゃんってば登場しないまま2つ目突入だよ?ひどくなーい?」
宣教師「はい?」
ミシング「…ま、いっか!もし売れ残っちゃったらもらってねー!安くしとくよー?」フリフリ
宣教師「あの…」
ミシング「なーんちゃって!それじゃまったねー!」ダーッ
宣教師「あ、ちょっ……」
ポツン
宣教師「あ、あの…あんなですけど快活でいい人なので…えーと、お、お幸せに?」ヒクヒク
宣教師「……」
宣教師「すみません、帰り道、案内していただけませんか?」
コッチコッチー
宣教師「!?」
宣教師「あなた、わざと置いていきましたね!?」ダーッ
916: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 18:53:10 ID:3tudtLsmHQ
―――平原―――
団長「」スタスタ
近衛兵1「団長!狂った兵の動きはあらかた止まりました!」
団長「うむ。ご苦労さん」
ミシング「おっじっさっまー!!」ダダダッ
団長「」ビクッ
ミシング「ぴょーん!」バッ
団長「うおっ!?あ、あぶない!?」ドッ
ミシング「きゃー!お姫様抱っこ!?あたし達ってばまだ会って間もないのに……逆に感激ー!?」キャーキャー
団長「…し、信者や教徒には伝えてくれたのか?」スッ
ミシング「あーん!降ろし方まで紳士的でクセになっちゃいそー?」ストッ
近衛兵1「お、おモテになりますねー!う、羨ましいー?アハハハハ?」ツツー
団長「」ギロッ
近衛兵1「も、申し訳ございません」
団長「おっほん!」
ミシング「ちゃーんと伝えてきましたよー?みんなで伝えて回ってるんで多分、すぐに全員に……」ピタッ
団長「……?そ、そうか」
ミシング「……」ガタガタ
団長「ど、どうした?」
ミシング「あ、あは…あはは…あたしったら、なに浮かれちゃってんだろ…」ウルッ
団長「は…?」
ミシング「伝え…たんですけど…ぜんぜん間に合わなかったり…怖くて泣いてたのかな。修道子の女の子が……目の前で……」ガチガチ
団長「……」
ミシング「あたし…死んでしまった人達に……なんにもしてあげられなかった…」ポロッ
917: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 18:55:17 ID:banBor1Vxw
団長「辛い思いをさせてしまったな…」
ミシング「辛いのは…あたしじゃないもん…」グスッ
団長「だが君の呼び掛けがなくては助からなかった人もいるだろう…?」
ミシング「」ブルブル
団長「ワシも…救いたかったモノが山ほどある。今日だけでも…な」
ミシング「……」
団長「」ポンッ
ミシング「え…?」ファサッ
団長「…せめて救われた命に報いよう。出来る限り力になってやるんだ?」ナデナデ
ミシング「(優しく髪を撫でる分厚い手のぬくもりが革手袋越しに伝わってはわわわわわ)」アワアワ
近衛兵38「団長!ここにおられましたか!」
団長「む?どうした?」パッ
ミシング「うひらうひら…しぃあわせぇ〜…」アヘアヘ
近衛兵1「あの〜…さっきまでと態度が変わってません?」ポンポン
ミシング「癒しの力よりも強力な愛の力にミシングちゃん、メロメロなのです!」キラリンッ
近衛兵1「……」
918: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 18:57:34 ID:3tudtLsmHQ
近衛兵38「王子より伝言を承りました!」
団長「おぉ、王子からか。狂った連中は修道服にしか反応せんから、ケガはするまいが…何か不測の事態に出くわしたか?」
近衛兵38「ははっ!それが…」
団長「……?」
近衛兵38「信者と教徒を可能なだけ集めて指定した場所に待機させろとの事で!」
団長「はぁ?」
近衛兵38「それから…なるべく静かに…身を潜める感じでとも…おっしゃってました」
団長「はぁ!?平原だぞ!?どうやって身を潜めろと!?」
近衛兵38「いえ、場所はかなり離れているのですが…林の方だそうです」
団長「林ぃ!?どこまで離れてるんだ!?」
近衛兵38「わ、分かりやすいように小石を撒いておいたそうなので…それを頼りに…」
団長「小石なんぞいくらでも落ちてるだろうが!?それに草だらけで足元なんか見えんぞ!?」
近衛兵38「わ、私に言われましても」
団長「はぁ…王子のワガママも困ったものだな。分かった。ワシがなんとかしよう」ヤレヤレ
ミシング「あたしも付いていきまーす!」ハイハーイ
団長「…そ、そうか」
近衛兵38「こちらは我々にお任せを!」
団長「あぁ、よろしく頼む」
919: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 19:03:03 ID:banBor1Vxw
―――林―――
アントリア「はっはっはっ…はぁっ!はぁっ!」ゼェゼェ
ラム「…よく走れるね。いい歳なんだから無理はよくないよ」スタスタ
アントリア「な…ぜっ!僕を…はぁっ!し、執拗に…狙うのかね!?」ゼェゼェ
ラム「ん?人間だから?」
アントリア「教団は……司祭が…創った!」
ラム「へぇー」
アントリア「教団への…復讐は達した…はずだ!?」ゼェゼェ
ラム「そうだね」
アントリア「見逃して…くれ!僕は…ホビットの差別を…促しては…いないんだ!」ゼェゼェ
ラム「あっそ?じゃあ死のっか?」スタスタ
アントリア「よせ…!?」ビクッ
「わんっっ!!」タタタッ
ラム「は?」クルッ
マルク「はっ!はっ!」ザッ
ヒメ「やっと見つけたぞ!観念しろ!」ザッ
ルーボイ「ラム!いい加減にしねぇとダメだろ!やりすぎなんだよ!」ザッ
ナラ「ひとを…きずつけるの…かなしい、いっぱい!やめよ…?」ザッ
ラム「…あれ?君……」
ヒメ「あぁ、癒してもらったよ。おまえに刺された傷が深くて、あと一歩で死ぬとこだった!」
ラム「なーんだ?死ねばよかったのに?」
ヒメ「なんだと!?」ムカッ
ラム「君らだけじゃないだろ?あいつはどうしたの?」
ルーボイ「あいつは……」
920: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/29(金) 19:08:16 ID:3tudtLsmHQ
アントリア「」ダッ
ラム「あ!」ハッ
アントリア「こんな…こんな…形で…終われないんだよ…!」タタタッ
ラム「待てよ!」スッ
マルク「うぉんっ!!」バッ
ラム「うわっ!?」ピタッ
ヒメ「待つのはおまえだ!」ジャッ
ルーボイ「へへーんだ!通さねぇかんな!」バッ
ナラ「……!」ジッ
ラム「はぁ?どいてよ?」ジロッ
マルク「グルルルル…!」フシューフシュー
ルーボイ「どかねーよーだ!」
ナラ「あのひとは…せんきょうしさまとカロルが…なんとかするの」
ヒメ「さっきの借りを返してやる!」
ラム「ふーん…まぁいいや。どうせ全員殺すから」シラー
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