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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


83: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:08:04 ID:Hp5XrjPulc
カロル「あはは!なーんだ!お母さまったら牢屋で居眠りしてたんだ?」クスクス

宣教師「(我ながら苦しい言い訳でしたが…まぁ信じてもらえたので良しとしましょう)」ホッ

カロル「それからお母さまとは会ってないんですか?」

宣教師「あ、はい…。カロルくんと一緒でないならおそらく、まだ大聖堂にいるのかもしれません」

カロル「……」

宣教師「……?」

カロル「司祭のおじいさまに付いていかないと会えないって言われたよ…?
ひょっとしたらお母さまはこの屋敷にいるのかも?」

宣教師「ふむふむ。それが誘い水だとするならば…私と一緒にいるというのは大臣の奴隷にされている暗喩だと言いたいのですか?」

カロル「うん…。どうかな?」

宣教師「残念ながら…いえ、幸いにもその可能性はありませんね」

カロル「なんで?」

宣教師「私とキミの置かれてる立場から考えて仮にお母様が連れられていたとしたら同じく、ここに閉じ込められてる筈です」

カロル「じゃあここにいないっていうことはお母さまは屋敷にはいないの?」

宣教師「えぇ。少なくとも私はキミのお母様を見てませんから、つまりそういうことになると思いますよ?」

カロル「……!よかったぁ…。ボクたちみたいな目に遭ってないんだね」

宣教師「そうなりますね。多分キミを利用する為に司祭様……司祭の手元に置かれている可能性が高いかと」

カロル「あ…そっか」

宣教師「…まぁ大事な人質ですから手荒に扱ったりはしないでしょう。安心していいと思います」

カロル「うん…」
84: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:10:29 ID:X7On2BumCY
カロル「ねぇ、宣教師さま」

宣教師「なんですか?」

カロル「教団の目的ってなんなんだろう?ボク、どうなるのかな?」

宣教師「……」

カロル「宣教師さまは何か知ってる?」

宣教師「(枯れた伝説の大樹を彼の持つ癒しの力を注ぐことで蘇らせる、というところまでは確実でしょうが…)」

宣教師「(その後は…どうなさるつもりなのでしょうか…。
唯一のヒントはジョーさんと神父様に協力して見つけた布教用の聖書ですが…)」ウーン

宣教師「(まさか大樹を登って神に会い、癒しの力を頂こうと…?)」

宣教師「(いやいや…ありえませんね。さすがに現実味に欠けます……)」

カロル「分からない…よね?」

宣教師「えぇ。お役に立てず申し訳ありません…。私も今まで何一つ聞かされてませんでしたから」

カロル「ううん…ボクね、別にいいんだ。利用されたって」

宣教師「なっ…ダメです!まだ悲観なさってはいけませんよ!
今の段階でしたら十分間に合います!
神官から助け出されたら、なりふり構わず逃げ出しなさい!そうすれば……」

カロル「イヤです。お母さまを置いていけないもの」キッパリ

宣教師「っ…!そうでしたね…!」ギリッ

宣教師「(あぁもう!どうしたらいいんですか!八方塞がり……)」

ガチャッ キィィ

宣教師「」ビクッ

カロル「」ビクッ

???「」ソローリソローリ

宣教師「(来てしまいましたか…!)」
85: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:12:14 ID:X7On2BumCY
宣教師「(うぅ…これからカロルくんの身に起きる出来事を考えたら…目を伏せずにはいられません!)」ギュッ

宣教師「(ごめんなさい!無力で臆病な私を許してください…!)」プイッ

???「」ギロッ

カロル「……だれ?」キョトン

???「いました…!いましたぜー…!」コソコソ

黒装束「ハッハー!お前かぁ!会長が言ってたホビットってのは!?」ズカズカ

手下「ちょいちょい!声がでかいッスよ!バレたらどうすんスか!?」

カロル「」ポカーン

宣教師「えっ?えっ?何が起きてるんですか?知らない声が聞こえますけど」

カロル「えと…わかんない」
86: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:13:31 ID:Hp5XrjPulc
黒装束「安心しな?見た目通り俺達は怪しいモンじゃねぇさ?」

手下「そうそう」ウンウン

カロル「そうなの?」

宣教師「い、いけません!そんないかにも怪しげな風貌の方々を信用しては…!」アセアセ

黒装束「言ってくれるじゃねぇか?お嬢ちゃんよ?」ギロッ

宣教師「」ビクッ

黒装束「本気で怪しいモンなんかじゃねぇぜ。誓ったっていい」

カロル「…それなら教えて?どうしてここに来たの?」

黒装束「決まってんだろうが?お前をかっさらう為さ!」ニヤリ

宣教師「やっぱり怪しいじゃないですか!?」
87: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:14:44 ID:X7On2BumCY
黒装束「うるせぇなぁ、このアマ…ちぃとばかし黙らせるか」

宣教師「な、なにをする気ですか…!?」ブルッ

黒装束「よーし!お前、こいつが喋れねぇように接吻かませ!」

手下「うっひょ!いいんスか!?」

宣教師「ひぃぃ!?」

カロル「せっぷん?」キョトン

宣教師「聞かなくていいです!耳塞いでください!」

カロル「え…でも縛られてるから手が動かせないよ?」オロオロ

手下「ほんじゃまぁ…遠慮なく?」ンゥゥ

宣教師「きゃぁぁ!?い、イヤ!来ないで…!」ググッ

黒装束「ククク…んなブサイクにスーキーぶちかまされりゃお嬢ちゃんも大人しくなんだろ?」ニヤニヤ

宣教師「と、突然来て…初対面の私にこんな仕打ち…!あなたの良心は痛まないのですか!?」

黒装束「あぁ?ちっとも痛まねぇな?」

手下「むしろ興奮するッス。やってやるって気になるッス!」ヌゥゥ

黒装束「ハッハー!黙らすんだからなぁ!しっかり舌を入れんだぞー!?」

宣教師「ムリムリムリムリ!ムリですって!」アタフタ

カロル「や、やめなよ。宣教師さま、嫌がってるじゃない?」オロオロ
88: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:16:18 ID:X7On2BumCY
バァンッ!

執事「誰だ、貴様ら!ここで何をしてる!?」

衛兵「」ジャキッ

黒装束「おーおー?まずいなぁ?見つかっちまったぞ?」

手下「やべっ!」アセアセ

宣教師「は、離しなさい!こんなことをしてる場合ではないでしょう!」

黒装束「それもそうだなぁ?おい、離してやれ!」

手下「ちぇっ」パッ

宣教師「(た、助かりました)」ホッ

執事「…王国の高官であられる我が主人の屋敷に無断で踏みいった罪…。タダで済むと思うなよ?」

黒装束「おーおー。ぞろぞろと…衛兵まで連れて来やがったか」

手下「5人くらいいますぜ…?逃げた方がいいんじゃ?」

執事「ぷっ!ひいっひいっ!バカか、お前は!?
入り口しかない物置小屋で…入り口を塞がれてどうやって出る気だ!?」ゲラゲラ

黒装束「逃げてぇのは山々だが…こいつは会長からの至上命令だからなぁ?」ポリポリ

手下「ち、ちくしょう!やるしかねぇのか!」

執事「貴様らを捕らえたら憲兵に突き出さずに拷問にかけてやる!
俺の鬱憤を晴らす為の肉人形としてなぁ…!ひいっひいっ!」ニタニタ

黒装束「なんだ、捕まえんのか?」

執事「はぁ!?当然だろうが!バカか、お前!?」

黒装束「おい、こいつぁなんとかなりそうだぜ?」ニヤリ

手下「マジッスか!?」

カロル「ちょ、ちょっと待って!ケンカしたらダメだよ!」アセアセ

宣教師「(こ、このままだとカロルくんと私まで巻き添えに…!)」
89: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:18:03 ID:X7On2BumCY
執事「こいつらを捕まえろぉ!!」

衛兵1「」ダッ

黒装束「ハッハー!威勢がいいな!」

手下「ひえっ!向かってきましたぜ!?」

衛兵1「大人しく……」バッ

黒装束「」ヒュッ

衛兵1「し……ぶほぁっ」バシュッ

衛兵1「あ…がふっ」ブバァッ

衛兵1「」ドサッ

執事「えっ」

衛兵's「」ポカーン

黒装束「はっ!」ビュンッ

衛兵2「」ザクッ

衛兵2「」ドサッ

執事「うわったた!?」ビクビクゥゥ

衛兵3「き、貴様!」ジャキッ

黒装束「王国関係の連中ってぇのはヘドが出るほど腐ってやがるが…問答無用で殺しちまわねぇあたり、案外良心的なのかもなぁ?」ニヤニヤ

手下「さっすがウォルターさん!ナイフを使わせりゃ無敵だぜ!」

宣教師「(一人目は虚を突いて首を掻き切り、あっけにとられる二人目の額にナイフを投げて仕留めた…。
凄まじい技術ですが…この方はいったい何者なんでしょう?)」

カロル「あ…あ…!」ブルブル

宣教師「」ハッ

カロル「ダメ…こんなの…ダメだよ…!」ガクガク

宣教師「カロルくん!見てはいけません!」

カロル「……!」ギュッ
90: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:19:29 ID:X7On2BumCY
執事「や、や、や、やれ!ここ殺せ!殺すんだ!」アセアセ

衛兵3「」ジリジリ

衛兵4「」ジャキッ

黒装束「いいのか?さっさと間を積めなくて?」

衛兵3「なにっ……」ピクッ

黒装束「」ビュンッ

衛兵3「くっ!」キンッ

衛兵3「バカめ!不意討ちなど……」ズンッ

衛兵3「は……?」プシュー

衛兵3「」ズルッ ドサッ

黒装束「一本ずつ投げるとは限らねぇだろう?」

衛兵4「わあああああ!!」ダダダッ

黒装束「おっ?」ガッ グイッ

衛兵4「死ねぇぇいぃぃい!!」シュバッ

「ぎやあああああ!!!」ドバッ

衛兵4「(やった!確実に手応えが……)」バッ

手下「うぐっえ…う、ウォル…なん…で……?」ドサッ

衛兵4「なっ…!?」ギョギョッ

黒装束「」ヒュッ

衛兵4「ぎゃはっ!?」サクッ
91: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:21:12 ID:X7On2BumCY
衛兵4「」ブシャァァァ

カロル「ひっ…!な、生暖かい…」ビクッ

黒装束「おーおー?床に垂れたせいでお前まで血だらけだなぁ?」ヘラヘラ

手下「」ズル…ズル…

黒装束「あぁ?なんだ、お前まだ生きてたのか?」

手下「ど、ど…して」ガシッ

黒装束「裾を掴むんじゃねぇよ、きたねぇな」ゲシッ

手下「うぐっ…」

カロル「ぼ、ボク…ボクに触って!」

黒装束「?」

手下「」チラッ

カロル「ボクなら…傷を癒してあげられるから!早く!早くボクに触って!」

手下「うっ」ズル…ズル…

黒装束「ククク!その速度じゃ残り少ない人生使い切っちまうぞ?」

手下「ぐぅ…!」ズル…ズル…

カロル「く、黒い人間も手伝ってあげてよ!ボク動けないから…早くしないと!」アセアセ

黒装束「…さてと、あとはあの野郎だな」スタスタ

カロル「待ってよ!キミの仲間でしょ!?」

手下「あ…ぐっ…げふっ」ゴパァッ

カロル「あぁっ…!」ギッギッ

手下「」

カロル「ウソ…そんな……」

宣教師「……か、カロルくん」

カロル「……!」ワナワナ
92: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:23:07 ID:X7On2BumCY
黒装束「おーしおし、よく逃げ出さなかったなぁ?偉いぞぉ?なでなでしてやろうか?」スタスタ

執事「ひっあひっ!あひゃっ…く、くく来るなぁ…」ガクガク

黒装束「さっきは色々言ってくれたよなぁ?いや、大した勇気だ。誉めて遣わすぜ」

執事「にゃ、にゃにゃぁっ!……ぶしっ!」バタバタ ズルンッ ドテッ

黒装束「足が縺れちまってまともに動けねぇか。まぁいいや」ガシッ

執事「わきゃっ!?」グイッ

黒装束「ククク!拷問してやる…ってか。生憎とそりゃ俺の専売特許だ?」ブチブチ

執事「ひぎぃぃ!!髪…かみ…抜け……」ジタバタ

黒装束「知ってるぜ。今夜、てめぇの主人は遅くまで帰ってこないそうだな?」ブッチィィィ

執事「あがぁぁぁ!!?」バタバタ

黒装束「大袈裟に叫びやがるが…助けを呼んでるつもりか?」

執事「」ギクゥッ

黒装束「さんざバカ扱いしてくれやがったが…お前はバカだよ。一番バカだ」

黒装束「今現在、この屋敷の敷地内にいるのはおおかた使用人やら下男、下女だろ?
小心者なてめぇの事だ。事態に気付いて慌てて屋敷中の衛兵を集めたんじゃねぇか?」

執事「ば、バカめ!そんな訳ないだろう!は、はは早く逃げないと衛兵がわんさか来てお前を取り囲むぞ!?」ハァッハァッ

黒装束「バーカ!それならとっくに囲まれてんだろうが?
それともなにか?ここの衛兵はこんだけ騒ぎが大きくなっても持ち場を離れねぇよう、教育でも受けてんのか?」

執事「……!俺をどうする気だ…!」

黒装束「はは…殺しゃしねぇさ。だが悪いヒヨコは舌を切ってやんねぇとな?」

執事「ま、待て!落ち着け!それを言うならヒヨコじゃなくてスズメ…ちがっ!そうじゃない!まずは話を…」アタフタ

黒装束「舌を出しな。出したくねぇなら口ごと切り裂くか?」スチャッ

執事「そ、それは口裂け女…俺は男……!」

ザクッ
93: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:25:07 ID:X7On2BumCY
執事「ふっぶぐぅぅぅぅぅぅ!!?」ブシュゥゥゥ

黒装束「けっ!舌に切れ目を入れてやっただけだ。死にゃしねぇよ。当分喋れねぇだろうがな?」ビチャッビチャッ

執事「ふっふっうぶっふひゅうぅぅぅう……!!」ボタボタ

黒装束「まぁ頬からイッたからな…。おーいてぇ!見てるだけでいてぇよ!」

執事「ぎゅっひあひゅふぃ」モゴモゴ

黒装束「そんじゃまぁ…一つ約束しようか。お兄さんよ?」ガシッ

執事「ぎひっ!?」グイッ

黒装束「今夜のことはぜーんぶ物置小屋に転がってる死体がやった…。そうだろ?」

執事「……!?」

黒装束「なぁ?」ギラッ

執事「!」コクコク

黒装束「イイ子だぁ?ご主人様にちゃーんと伝えといてくれや?」パッ

執事「ぎゅっひ!」ボトッ

黒装束「あぁ、そうだ?分かってるたぁ思うが…」ギラッ

執事「〜〜〜!」コクコク

黒装束「素直な奴は好きだぜ?」ニヤリ
94: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:32:18 ID:lpXKIBKjK.
―――バックヤード(ヘマトバザール本部)―――

黒装束「おーい、戻ったぞー」バンッバンッ

「あぁ、ウォルターさん!ただいま開けます!」ガチャガチャ

黒装束「どうした?ボーッとしてっと風邪引くぞ?」

カロル「……」

宣教師「(大きい建物ですが、ずいぶん古ぼけた…。まるで廃墟ですね…)」

黒装束「なんだ、なんだ?辛気くせーツラぁしやがって?」ポリポリ

ガチャッ

手下2「お疲れ様でした。どうぞ」

黒装束「おう、遠慮はいらねぇぜ?入れよ?」ズカズカ

カロル「……」

宣教師「カロルくん…。入りましょう?どちらにしろ今晩は身を隠した方が良さそうです」

カロル「……」コクリ
95: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:33:50 ID:lpXKIBKjK.
黒装束「まぁ座ってくつろげや?縛られっぱなしでいたから手足がズタズタだろ?」

カロル「」ポフッ

宣教師「(…趣味の悪い置物が並んでますね。気味が悪い…)」チラッ

黒装束「気になるか?内装は俺の趣味でな。見てて飽きねぇだろ?」

宣教師「ある意味新鮮ですが…どういうつもりなんですか?
床は血飛沫を模した斑点模様で埋め尽くされてますし、柱には苦しそうな顔が今にも蠢きそうにひしめいてますけど」ブルッ

黒装束「ククク!特にあのランベルヤの一番弟子、ヒクタスに描かせた地獄絵図の壁紙なんか、なかなかイカしてるだろ?」

宣教師「(イカれてるの間違いでは…?)」

黒装束「あれは人間の哀れさを暴力のみで例えた作品でな。お気に入りなんだ」

宣教師「人が人をいたぶる絵など見ていて不愉快極まりないですよ…」

黒装束「お嬢ちゃんとはウマが合いそうにねぇな」

宣教師「…どう考えても変ですよね?」

カロル「…うん」コクリ

黒装束「ちなみにお前らが座ってるソファーは曰く付きでな?
今までそれにケツを置いた奴が三人、謎の死を遂げてるらしいぜ?」

宣教師「」ゾクッ

カロル「……」

黒装束「まぁ…俺や他の奴も何回か座ってるけどな。面白そうなんで買ってみりゃ、なんにも起きやしねぇ」

宣教師「…そ、そうですか」ヒクヒク
96: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:35:41 ID:lpXKIBKjK.
宣教師「…なぜ私たちを助け出してくださったのですか?」

黒装束「別にお嬢ちゃんを拐いたかったんじゃねぇさ。本来はそのホビット一匹でよかったんだ」

宣教師「どういう意味です?」

黒装束「そのまんまの意味だよ。俺達はただそいつを連れ出して匿うよう指示されただけだ」

宣教師「指示?誰から指示されたんですか?」

黒装束「何度も言ってんだろうが?会長だよ。会長!俺らの組織で一番えらーいお方だ」

宣教師「組織って…そもそもあなた達は何者なのです?」

黒装束「ん?あ〜…なんつぅんだろうなぁ?
まぁ興行を企画して客前に出るんだから…エンターテイナーってとこか?」

宣教師「興行…サーカスや演劇ということでしょうか?」

黒装束「まぁ括りはそうなるな」

宣教師「ますます分かりません…。そんな方々がなぜ危険を犯してまで見ず知らずの私達を…」

黒装束「だぁから言ってんだろ?俺は指示を受けただけだってよ!」

カロル「…いいよ、そんなの」ボソリ

宣教師「?」
97: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:40:07 ID:lpXKIBKjK.
カロル「どうだっていいじゃない…。助けてくれた理由も…誰なのかだって…」

黒装束「分かってんじゃねぇか?んなの聞いてもしょうがねぇもんなぁ?」

宣教師「…それもそうですね。私達はこれからどうなるのですか?」

黒装束「知らされてねぇな。何があっても手を出すな、逃がすな、とのお達しだ」

宣教師「……」

黒装束「運が良かったな?ついでたぁ言っても助かったんだからよ?」

宣教師「…そうですね。置いていかれたら今頃、大臣の怒りを一手に引き受けていたかもしれません」

黒装束「ククク!あそこに置いといて余計なことをべちゃくちゃ唄われても困るしな」

宣教師「私が言わなかったとしても、あのような乱暴な手口ではすぐに気付かれますよ」

黒装束「ハッ…心配はいらねぇさ?」

宣教師「よく自信が持てますね…」

黒装束「逆に何がそこまで不安を駆り立てるのか伺いたいもんだな?」
98: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:41:27 ID:lpXKIBKjK.
宣教師「あの状況…殺されたお仲間を身代わりに仕立てあげても不自然ですよ。
たった一人の賊が四人の衛兵を返り討ちにして相討ちなんて…」

黒装束「そうか?実際、俺は一人で四人殺ったぜ?」

宣教師「普通なら、ということです。現場に遭遇していない人間が見れば間違いなく単独行動ではないと読むでしょう」

宣教師「それに…私とカロルくんが消えたのも不審に思うでしょうし、何より目撃者の執事がいますから」

宣教師「もしかすれば明日にでも大規模な捜索が行われるかもしれません。
そうなればすぐに見つかって捕らえられてしまいますよ…」

黒装束「くぁ…あぁ」アクビ

宣教師「……!真面目に聞いてるんですか!?」ガタッ

黒装束「あのなぁ、お嬢ちゃん?眠たい話はやめにしようや?
こちとら久々の荒仕事で疲れてんだぜ?」ゴシゴシ

宣教師「なっ…!」イラッ

黒装束「綿密にねちねちこねくり回して完璧に仕上げた計画より、短絡的で単純な方が案外うまくいくんだよ」

宣教師「……!」ムッ

黒装束「おーい!」

ガチャッ

手下3「失礼しまーす。呼びました?」

黒装束「おう、こいつらの寝床を教えてやれ」

手下3「了解でーす」
99: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:44:38 ID:/Q8jyxZM9E
手下3「んじゃ案内すっから?」

宣教師「…では行きましょうか?」

カロル「待って…」

宣教師「カロルくん…?」

カロル「ねぇ、ウォルターさん…でいいんだよね?」

黒装束「おう…?」

カロル「一個…聞いていいかな?」

黒装束「なんだ?便所の場所なら、そいつがまとめて案内するぞ?」

カロル「どうして仲間を見捨てたの?」

黒装束「?」

カロル「あの人間もあなたが殺した衛兵達も…助けようと思えば助けられたんだよ…?」グッ

黒装束「あぁ…?」ジロッ

カロル「ボクが……わぷっ!」モガモガ

宣教師「そこまでです!一度落ち着きなさい!」バッ

カロル「ふぇんほうひはは?」モガモガ

宣教師「(それは言わない方が身の為ですよ!幸いにも相手はキミが力の持ち主だと知らないんですから!)」コショコショ

カロル「……!」
100: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:45:49 ID:lpXKIBKjK.
黒装束「なぁにやってんだ、お前ら?」

宣教師「な、なんでも…!あはは!」ヘラヘラ

カロル「」コクコク

黒装束「何を隠したいんだが知らねぇが…あからさま過ぎて聞き出す気にもならねぇな。もういい!連れてけ!」

手下3「はいはい」

宣教師「ほ、ほら!行きますよ!」グイッ

カロル「ふぁい」モガモガ

黒装束「…おい、チビ」

カロル「?」

黒装束「会長から次の指示を受けるまで…俺は何があってもお前に手を出さねぇ。
だがなぁ…あんまり調子に乗らねぇ方がいい。会長のお許しが出た時に地獄を見るぜ?」

カロル「……」

黒装束「肝に命じとけ。薄汚ねぇホビットちゃんよ?」

宣教師「くっ…!」ギリッ

カロル「……」
101: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:47:06 ID:/Q8jyxZM9E
―――ヘマトバザール本部(客間)―――

宣教師「…さっきはどうしたんです?キミらしくありませんでしたよ?」

カロル「……」

宣教師「気持ちは分かりますが不用意な発言は避けなくては…?
前にも似たような失敗で騒動になりましたよね?」

カロル「宣教師さまこそ…らしくないと思います」ボソッ

宣教師「…と言いますと?」キョトン

カロル「いつもの宣教師さまだったら一緒に止めてくれたのに…あの時は見てるだけだったもの」

宣教師「あの時とは…ウォルターさんと衛兵の混戦中ですか?」

カロル「うん…どうして何も言ってくれなかったんだろうって思ってました」

宣教師「それは…縛られていて動けない状態でしたし、言葉だけではどうにもならない場面だってありますから」

カロル「それでもいつもの宣教師さまなら諦めなかったよ!」

宣教師「え…?」

カロル「ボク…言ったはずだよ。宣教師さまは変わらないでいてくれるから、自然と安心するって…」

宣教師「……」

カロル「でも…やっぱり宣教師さまもちょっぴり変わった気がするな?」

宣教師「か、変わってなど…。私は今でもキミを助けたいと…」

カロル「それだよ、たぶん…」

宣教師「は…?」
102: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:50:43 ID:/Q8jyxZM9E
カロル「いつから…宣教師さまはボクを贔屓するようになったの?」

宣教師「ひ、贔屓…?」オロオロ

カロル「会ったばっかりの頃は誰にだって分け隔てなく接してたじゃない!
ボクもルーボイくんもパッチくんも特別扱いしなかった!」

宣教師「何を言って…るんですか?今ここに二人はいないでしょう?」

カロル「衛兵さん達だってウォルターさんに付いてきた人間だって…関係ないから見捨てたの?」

宣教師「ち、違います!さっきも言いましたがどうにもならない状況だってあるんです!」

カロル「どうにもならないかもしれないけど、どうにかなるかもしれないじゃない!」

宣教師「そんな不確かな希望で…一時の感情に任せていたら、いずれ身を滅ぼしますよ!」

カロル「……!」

宣教師「キミの為にも私は適切な判断をしたまでです!」

カロル「…宣教師さまはもっと考えなんか無くって行き当たりばったりでまっすぐだった!」

宣教師「(私そんな風に思われてたんですか…?)」ガーン

カロル「村に入ったボクが暴力を受けた時だって宣教師さまは教団の人間なのに手当てしてくれた!」

カロル「家を燃やされてお母さまが乱暴された時も…村の人間を説得してボク達を引き取ってくれた!」

カロル「差別を無くす為に司祭さまに訴えてくれた…!」

宣教師「……」

カロル「ボクを手当てした時も…引き取ってくれた時も…宣教師さまは後悔なんかしてなかった!
ずっとみんなが幸せになれるって信じてた!
だから教団に逆らっても差別を無くそうとしてたんじゃないの!?」

カロル「それなのに…後悔するのを怖がって、ボクとお母さまさえ助かればいいって…そう思ってるの?
ボクらの為なら…傷付け合う人達を見捨てるの?」

宣教師「……」

宣教師「キミは私を買いかぶり過ぎてますよ」

カロル「そんなことないよ!宣教師さまは……」

宣教師「落ち着いてください」

カロル「っ…」
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名前:
sage:


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