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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


802: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:18:49 ID:YmcwGKzrMY
ウォルター「ハッハー!あいつらか、新品のホビットってなぁ?」バサッ

ラム「……」ズーン

旅人「なかなかイイ目をしてるだろう?」

ウォルター「あぁ、いいじゃねぇか…。
切れ長な目がいっちょ前に生意気さを醸してていたぶり甲斐がありそうだ?」ニタァ

バンパ「クソー!出しやがれ!」ガッシャガッシャ

ウォルター「あっちはホビットにしちゃガタイがいいな。
ああいうのが屈伏するサマは趣旨を分かりやすくさせる。いたぶり甲斐もありそうだぜ?」

旅人「あんたそればっかだねぇ」

ウォルター「殺り甲斐を見出だすのが俺らの商売だろうが?」

旅人「なんにしても今回はイキのいいのが集まったからね。お駄賃は弾んでもらうよ?」

ウォルター「はっ!ワルドよ?
てめぇは目利きと確実さにかけちゃ言うことなしだが、時間をかけすぎなんだよ?」

旅人「ウォルターさんは急ぎすぎる?もう少し楽しむ余裕があってもいいと思うがね?」ヘラヘラ

ウォルター「なにぃ?」ギロッ

旅人「じっくりと築き上げた信頼をぶち壊された時の絶望は人もホビットも変わらない。
その瞬間に見せる表情にこそ、俺はロマンを感じるね?」

ウォルター「…性格わりーなぁ?
痛め付けて苦痛に歪む表情を眺めるのがいいんじゃねぇか?」

旅人「…あんたも大概じゃないかねぇ」

ウォルター「まぁいいやな。いくらだ?」

旅人「必要経費込みこみで金15枚。びた一文まけないよん?」

ウォルター「あぁ…?」ピキィッ
803: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:22:53 ID:YmcwGKzrMY
旅人「うちの客層は暇をもて余した成金が大半だ?
今夜の収益を見込んでも…決して高いとは思えんね?」

ウォルター「俺にそんな口を聞けるのはてめぇくらいのもんだぜ?えぇ?運び屋さんよ?」

旅人「なんせ10年来の付き合いだ?
ヘマトの創立メンバー同士、仲良くガッポリつるんでこうじゃないの?」

ウォルター「ちっ…しかたねぇな?」

旅人「そう嫌な顔するなよ?チケットも完売してるんだろう?」

ウォルター「すっとぼけんじゃねぇ?三割は会長に回さなきゃなんねぇんだよ!」

旅人「ククク!会長、ねぇ?まだあの人に使われる気か?」

ウォルター「…なんだと?」

旅人「もう俺達だけで十分にやってけるんじゃないか?
そりゃ最初は資金援助やら顧客の紹介やら王国の正式な認可承認の根回しと…いろいろ世話になってきたが」

ウォルター「……」

旅人「あの人も立場があるしねぇ。逆に俺達との付き合いをネタに脅してやれば……」

ウォルター「分かってねぇな?」

旅人「ん?」

ウォルター「会長は別格だ。俺はあの人が恐ろしくてたまんねぇよ」

旅人「ほー…こいつはたまげた。あんたから恐ろしいなんて言葉が出るとは?」ポカーン

ウォルター「るせぇ、んなこたぁいい!まずは恐怖心から覚えさせろ?
本番で暴れられて客に危害でも加えられたらたたまんねぇからな?」

旅人「よく言うよ?あんたみたいな怪物相手に一暴れしようなんて猛者はいないだろう?」

ウォルター「ククク!そうでもねぇさ?
死に物狂いのキチガイほどおっかねーヤツはいねぇ?」

旅人「なるほど。そんじゃまぁ今日は見学といこう?
あいつらにしてみても後学の為に知っておいて損はない?」

ウォルター「そうか。じゃあ今夜、舞台袖で見してやれよ」
804: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:28:24 ID:2Wm5GCo/Zk
――――――

ワーワー! ギャーギャー!

ウォルター「ハッハー!今宵も血の香りをご所望かな!?」

ウオオオオ!

ウォルター「ならば期待に応えよう!
嘶く雷鳴にも似た悲痛の叫びを余すことなく体感するがいい!」

ウォルター「今日の演目は血で血を洗う世にも恐ろしい夫婦の愛憎劇!
究極にまで研ぎ澄まされた愛が憎しみへと昇華される時、互いの眼に映る世界は混沌とした殺意に満ち溢れる!!」

ウォルター「愛好家の皆様の中にも浮気やへそくり…後ろめたいことがあるようなら、今夜はベッドで機嫌を伺った方がいいかもな?」ニヤリ

ハハハハハハ!

ウォルター「うーし!とっとと始めちまうかぁ!持ってこいや!」

手下1「うらぁ!暴れんじゃねーぞ!」グイッ

ホビット夫「イヤダァァァ!タスケテェェ!」ズルズル

ホビット妻「あなたぁ!!あなたぁ!?」ズルズル

ウォルター「涙と鼻水でグシャグシャじゃねぇか?
せっかく姿形は美しい種族って評判なのにもったいねぇな?」
805: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:30:21 ID:YmcwGKzrMY
ギィィコ ギィィコ

ホビット夫「うぎゃあああああああ!?」ブシュッ

手下1「母ちゃんの為ならえーんやこらさっさとぉ!」ギィィコギィィコ

ホビット妻「やめてぇ!?夫を離してぇ!?」ジタバタ

ウォルター「…おい、離してやれや?」クイッ

手下1「うっす!」ピタッ

ホビット夫「あぁうぐぅ…!いぃぃ…!腕がぁ…腕千切れるぅぅ…!」ブシャァァァ

ホビット妻「あ、あなたぁ…」

ウォルター「旦那の代わりに奥さんがやるってよ?」

ホビット妻「え!?」

手下2「うっす!ノコギリ貸せ!」

手下1「あいよ」つ【ノコギリ】

ホビット妻「え?いや、いやだっ!イヤダァァァ!!!」ジタバタ

ウォルター「おーおー…大事な女房がああ言ってるが…旦那はどうする?」

ホビット夫「」ブンブンッ

ウォルター「クックッ…薄情なこって?」ニヤリ
806: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:31:26 ID:2Wm5GCo/Zk
ホビット妻「あなたぁ!助けてぇ!夫婦でしょう!?」

ホビット夫「……」プイッ

ホビット妻「なんとか言いなさいよ!ねぇ!?」

ホビット夫「……」

ウォルター「やれ?」クイッ

手下2「へいへい!いっちゃうよー!?」ザクッ ギィィコ

ホビット妻「アァァァァバハァァァ!!!?」ブシュッ

ホビット夫「ひぃぃ!?」

ホビット妻「あばはっ!?あなだぁ!?たずけでぇ!?」ブシュッブシュッ

ホビット夫「す、すまん!すまん!ゆるしてくれぇ!?」ペコペコ

ホビット妻「あぁぁあた!?ゆるざない!?じごくに…おちろぉ!!」ギャーギャー

手下1「へへへ!ウォルターさん、ひどすぎ!」

ウォルター「絆なんてのはちょろいもんさ。だからこそ壊してやりたくなる?」フンッ

ウオオオオオオオオ!
807: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:32:29 ID:2Wm5GCo/Zk
ラム「……!」ギチギチ

バンパ「なんだよ、これ…なんなんだよぉ!?」ギチギチ

旅人「おいおい、舞台袖で叫ぶんじゃないよ?客に聞かれたらどうする?」

バンパ「俺たちもあれをやられんのか!?」

旅人「さぁね〜?そん時によって演目は変わるから?」

ラム「ひっ!?」

ウオオオオ! ウオオオオ!

旅人「おぉ!ぶちギレた妻にノコギリを持たせたか!今回は危険な演出に挑んだなぁ?」

バンパ「う…だ、旦那の首にノコギリ引いてやがる…」ゾォッ

ラム「あ、あぁぁ…!」ブルブル

旅人「奥さんやるねぇ〜!」ヒュー

バンパ「や、やめ…ろ。やめてくれぇ!」ジタバタ

旅人「おっと?縛られてんだから下手に動くと縄が食い込んでキツいぞ?」

バンパ「なんであんなの見て歓声が上がんだよ!?どいつもイカれてんじゃねーのか!?」

旅人「至って普通の反応だよーん?」

ラム「……!?」

旅人「おっ!次の演目に移ったね!ちゃーんと見て勉強すんだぞー?」
808: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:38:54 ID:2Wm5GCo/Zk
手下3「シャキシャキ歩けやぁ!」ドカッ

ヤグ「ぐっ!」ズダンッ

ファリアン「きゃっ!」ビタァッ

ウォルター「さぁて…泥沼の愛憎劇の次はもっと泥沼の愛憎劇でいくか?」

ヤグ「」ギチギチ

ファリアン「」ギチギチ

ウォルター「クックッ!てめぇに選ばせてやるよ?」グイッ

ヤグ「くっ…」ギロッ

ウォルター「これから受ける拷問を一人で背負い込むか、それとも奥さんに押し付けるか?」

ヤグ「…やるならやれ、木偶の坊?」

ウォルター「」ブンッ バゴォッ

ヤグ「うごっ!?」ズガァァン

ウォルター「こいつのかかとに釘を打て?いってぇぞぉ〜?」ニヤリ

手下1「うっす!」ガシッ

ファリアン「夫にさわらないで!」

手下1「はぁ?」

ファリアン「わたしが身代わりになる!夫には手を出さないで!」

ヤグ「俺だ…。俺が受ける…!妻には手を出すな!」ググッ

手下1「って言ってますけど?」

ウォルター「ハッハー!んじゃいっぺんにやっちまえ!」

手下1&2「わっかりましたー!」スッ ガシッ

ウォルター「もしよろしければお客様方はどっちが先にくたばるか予想してくださいな!夫か妻か…はたまた同時か!?」

ヤグ「ふざけるなぁ!?やるなら俺をやれぇ!?」ジタバタ

ファリアン「どちらかが耐えきったら解放する約束でしょう!この人でなし!?」ジタバタ

ウォルター「その愛がどこまで続くか見せてもらうぜ、ご両人?」ニヤニヤ

ヒューヒュー ヒューヒュー
809: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:42:48 ID:2Wm5GCo/Zk
ラム「」ガタガタブルブル

バンパ「お、おい…大丈夫か?」

ラム「やっめろぉ!?やめろぉ!?」ジタバタ

旅人「あんまりうるさくすんとお前も一足早く舞台に上げられちゃうぞー?」

ラム「あの二人はぁ!!あの二人は僕の…!」ジタバタ

旅人「」ピクッ

手下3「おい、ワルド!そいつ黙らせろ!ウォルターさんがうるせぇってよ!」スタスタ

旅人「はいよ」シュッ

ガツンッ

ラム「ぶっ!?」ダンッ

旅人「……」ニヤリ

手下3「見学は静かにさせろよ!」

旅人「すまないね?次からは猿轡を噛ましとくよ?」

手下3「たく!」スタスタ

ラム「」

バンパ「こ、後頭部蹴りあげるのはやりすぎだろ!死んだんじゃねぇのか!?」オロオロ

旅人「こんな形で再会を果たすとは…運もなかなか侮れない?神様も凝った演出をするもんだねぇ?」

バンパ「はぁ!?どういう意味だよ!?」ギチギチ

旅人「あれはラムの両親だよ。さっきの反応からして間違いない」

バンパ「え!?」

旅人「……」

バンパ「じ、じゃあお前…こいつが両親の苦しむとこを見ないように気を使ったのか…?」

旅人「まっさかぁ〜?」ヘラヘラ

バンパ「……?」

旅人「イイ事思い付いてな?お楽しみはこれからさ…ククク!」ニヤニヤ
810: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:55:47 ID:2Wm5GCo/Zk
ラム「」パチッ

ラム「」ガバッ

ラム「っ!?」ズキズキ

旅人「おはよう」

ラム「」ビクッ

旅人「寝汗がひどいな?体流してきたら?」

ラム「……ここは…?」サスサス

旅人「宿屋だが?」

ラム「…宿屋?」キッ

旅人「どうした?怖い顔して?」

ラム「バンパは?ショーは!?」

旅人「ん〜?なんの話だ?」

ラム「お前に騙されて…変なショーを見せられたんじゃ…」ボソッ

旅人「は?騙す?ずーっと一緒に旅してきた仲じゃないか?」

ラム「何週間も汚いテントに閉じ込めておいて…!」

旅人「夢と現実がごちゃ混ぜになってんじゃないの〜?
昨日、うっかり転んだ拍子に頭を強く打って気絶したの覚えてないか?」

ラム「え…!?」

旅人「ぜんぜん起きないから町まで抱えて走って宿まで取って寝かせてやったんだぞ?」

ラム「……そ、そうなの?」

旅人「そうなのって…ひどいなぁ?40過ぎのおじさんをこんだけ走らせといて?」

ラム「…ご、ごめん」

旅人「変な夢でも見たのか?」

ラム「うん…。怖い夢を見てたみたい。もう大丈夫」
811: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:57:08 ID:2Wm5GCo/Zk
旅人「あぁ、そうだ!病み上がりに元気付けようと思って贈り物を用意したんだった?」ゴソゴソ

ラム「なに?」

旅人「ほい、受け取れ!つまらない物だが…喜んでもらえたら嬉しいよ」ポイッ

ラム「…小袋?」パシッ

旅人「中を覗いてごらんよ?」

ラム「」シュルリ

ラム「…え……」ビクッ

パサッ

旅人「あー落とした!ダメじゃないか!大切に扱わなきゃ!」

ラム「なにこれ…!?」ガタガタ

旅人「君の両親の形見なんだからぁ〜?」ニヤニヤ

ラム「ぼく……の…?」ガチガチ

旅人「そうだよぉ〜?ほぉら?」ガシッ ズルッ

ラム「ひぃっ!?」ズサァッ

旅人「どこからどう見ても君の両親の目玉じゃないか〜?黄色い瞳なんてそうそうあるもんじゃない?」つ【目玉×4】

ラム「あ…あ……あれは…夢じゃ…!?」

旅人「夢?」

ラム「だ、だって…ここは宿屋で…ショーなんてなくて……」ブルブル

旅人「あぁ、そうそう。言い忘れた?
あれは夢じゃないし、ここはヘマトの支部だし、ショーもとっくに終わってる?」

ラム「!?」

旅人「君の両親も…ノンキにおねんねしてる間に殺されちゃった?」ニヤリ

ラム「わあああああああ!!!!」

旅人「ぎゃははははははは!!!!」ゲラゲラ
812: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 22:01:48 ID:2Wm5GCo/Zk
ガチャッ

ラム「うわあ!!うわあ!!ああああああああ!!!」ダンッダンッ

ウォルター「茶番は終わったか?」

旅人「ひぃっひぃっ!み、見なよ、こいつの絶叫…おっかしくてしょうがない!?」ゲラゲラ

ウォルター「クックッ!なぁにやってんだ?てめぇでてめぇの頭を叩きつけてよ?」

ラム「」バッ

旅人「ひぃっひぃっ!……え?」ズルンッ ドタッ

ラム「ころしてやるっ!?」ガバッ

旅人「わっとと!?」

ラム「おまえなんか!しんじたぼくが!ばかだった!」ブンッ

旅人「あたっ!あたたっ!」パッ

コロコロ

ウォルター「おーおー大事な目ん玉転がっちゃったぞ?」

ラム「」ハッ

旅人「」グワシッ

ラム「っ…」グッ

旅人「喉仏を潰されたくなきゃ俺の上から降りろ?」ググッ

ラム「……!」プルプル

旅人「…降りるんだ?ほんとに潰しちゃうぞ?」ググッ

ラム「……!」スッ

旅人「よーし、いい子だ」パッ ムクッ

ラム「」ゲホゲホ
813: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 22:03:42 ID:2Wm5GCo/Zk
ウォルター「んじゃテントに戻すか」

旅人「その前に…」スッ

ウォルター「あ?」

ラム「あ…!」

旅人「」グシャッ

ラム「あああああ!?」

ウォルター「おいおい…踏み潰してんじゃねぇよ?床が汚れんだろうが?」

旅人「床の張り替え賃くらいは弁償するさ?」グシャッグシャッ

ラム「」ヘナッ

旅人「…いい顔するじゃないか?おじさん大満足だ?」ニコッ

ウォルター「この為だけにこんな手の込んだ事してんだから、てめぇもぶっ飛んでるよなぁ?」

旅人「あんたも嫌いじゃないだろう?」

ウォルター「ハッハー!まぁな!」

旅人「そうだ、ラムの感想を聞かせてほしいな。最高のサプライズだったろう?」

ラム「ああ…うあうあ…」ボーッ

旅人「あらま?」

ラム「と…さん。かぁ…さん」バタッ

ウォルター「お?倒れた?」

旅人「この程度で気絶するかね?」


………………
814: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/10(日) 22:06:08 ID:bjclyxBH9c
宣教師「……」

ルーボイ「……」

マルク「」シッポフリフリ

ラム「少しは分かってもらえた…?」

宣教師「…壮絶ですね」

ラム「お前みたいな偽善者のきれいごとに揺れるほど…軽くはないんだよ。僕の恨みはね」

宣教師「」シュン

ルーボイ「なら、なんで信じようとしたんだよ!?」

ラム「は?なにが?」

ルーボイ「カロルに言われて信じようとしただろ!いい人間もいるって!」

ラム「っ…!」ギクッ

ルーボイ「カッコつけてっけど…ホントはお前も友達が欲しかったんじゃねぇの?」ジトー

ラム「なっ…!」

宣教師「そうなんですか?」パァァ

ラム「そんな訳ないだろ!?あれは単なる気まぐれ!好奇心!バカな人間をからかって遊んでたんだよ!」

宣教師「……そう、ですか」ガクッ

ラム「なに落ち込んでんの?僕が本気でそんな風に考えてるとか思ってた?」

宣教師「…今はまだ信じられないですよね。
正直、キミの過去を聞いた後では掛けられる言葉も見つかりません」

ラム「今は?そんな日は一生来ないね!」

宣教師「…今のキミに必要なのは信じる勇気ではないでしょうか。
ですが…誰かを信じ、裏切られてきた過去がその勇気を恐ろしく歪めてしまったのでしょう」

ラム「」ムッ
815: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/10(日) 22:07:58 ID:bjclyxBH9c
宣教師「すでに目標さえ見失っているのではありませんか?」

ルーボイ「そうだ!なんかやけっぱちだし!?」

ラム「だから…知った風な口を聞くな!」

宣教師「目的を見失うと生きていく理由がない。そう言いましたよね?」

ラム「……」

宣教師「復讐を終えた今、キミが掲げる目標とはなんですか?」

ラム「とことん復讐するだけさ」

宣教師「その憎しみを向ける相手はいないはずです!」

ラム「人間も同族も敵だ!」

宣教師「なぜ同族まで恨むのですか…!せめて同じように苦渋を強いられてきた仲間ぐらいは信じてもいいでしょう!?」

ラム「あいつがいるからだよ!カロルが僕を同族から遠ざけたんだ!」

宣教師「カロルくんが…?」

ルーボイ「あいつがそんなことする訳ねぇだろ!」

ラム「うるさい!全部あいつが悪いんだ!あいつが同族も人間も選べないから…!」ギリッ

マルク「うぅ〜…わんっ!」グルルルル

ラム「吠えるな!黙れ!何も喋るな!イラつくんだよ!獣まであいつの味方するのか!?」

宣教師「て、敵や味方と区別するから争いが生まれてしまうのです!もっとおおらかに…」

ラム「おおらか!?一番嫌いな言葉だ!!」

宣教師「っ…!」タジタジ

ラム「別にいいさ!どうせ僕は悪者だ!孤独なんて寂しくない!」

宣教師「…たった一人で復讐を続けるおつもりですか!」

ラム「ホビットに生まれて良かった事が一つだけあるよ?僕にはまだまだ時間が余ってる?」

宣教師「人間より寿命が長いとはいえ、永遠ではないのですよ?」

ルーボイ「えいえん……」ボソッ
816: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/10(日) 22:12:35 ID:bjclyxBH9c
宣教師「限りある時間を無駄に浪費するだけです!
それに途中で命を落とす危険だってある!
そこまでして他者を陥れるなんて…まったく無意味ではありませんか!?」

ラム「お前に心配されたくない!」

ルーボイ「なぁ、宣教師様」

宣教師「な、なんですか?」

ルーボイ「そういえば茂みに隠れながら聞いてたんだよ。司祭様とアリアス様が話してんの」

宣教師「…え?」

ルーボイ「永遠の命が手に入るとか…あれってなんなの?」

宣教師「」ハッ

ラム「永遠の命…!?」

ルーボイ「いや、今そんな話だったから気になって?宣教師様、なんか知ってる?」

宣教師「な、なぜこの言い合いの最中にそんな話題を持ち出すんですか、キミは!?」

ルーボイ「だ、だって気になったから!」

ラム「そういえば……」ポワンポワン

宣教師「(ま、まずいです…!こんな状況でそんな話を聞いたら、きっと…!)」ジッ

ラム「そっか、だからあのおじいさん…必死に実の近くまで這ってたんだ」

宣教師「言っておきますが永遠の命なんて夢物語に過ぎませんよ。実在しない代物です!」

ラム「…でもそれがあったら、全員いなくなるまで僕の復讐は続けられるよね?」

宣教師「ふ、普通に考えれば分かりそうなものですがね?あり得ませんよ、そんな話?」アセアセ
817: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/10(日) 22:19:40 ID:m2G6ZP8gio
ラム「」スッ

宣教師「」ガシッ

ラム「…なに?」グッ

宣教師「どこへ行くのですか?」ジッ

ラム「永遠の命、もらっちゃおっかな?」クスッ

宣教師「ですから永遠の命なんてありませんって」ギュッ

ルーボイ「そ、そうだぞ!司祭様の話なんか嘘っぱちだかんな!」

ラム「なーんだ」フゥッ

宣教師「…分かってくれまし……」ホッ

ラム「ううん、全然分かんない」ゴソッ

宣教師「はい?」

ラム「」ジャキッ

宣教師「なっ…!ま、まだそんな危ない物を…!?」ビクッ パッ

ラム「バイバイ」ダッ

宣教師「は、刃物をしまい…じゃなくて待ちなさい!」アワアワ

ルーボイ「宣教師様、なんで離しちゃうんだよ!」アタフタ

宣教師「えぇ!?そ、そもそもキミがあんな話をするから…!?」

ラム「」タタタッ

宣教師「あぁ…!」

ルーボイ「おーい!」

タタタッ………
818: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/10(日) 22:29:12 ID:bjclyxBH9c
ルーボイ「お、追っかけてくる!」ダッ

宣教師「いいです!行かなくていいです!」ガシッ ズズズッ

ルーボイ「な、なんでだよぉ…!」グッグッ

宣教師「き、キミは!ナラたちを連れてカロルくんのいる場所に向かいなさい!
向こうがどうなってるか把握して…出来ることなら王国の方々に事情を説明するのです!」ギュッ

ルーボイ「?」

宣教師「カロルくんが王子と共に高官や教団、他国に交渉しているのなら少しでも有益な情報を欲しているに違いありません。
真実をナラと一緒にいるシスターにも伝え、カロルくんの言葉が嘘でないと分かるように証人に立ってあげるのです?」

ルーボイ「そ、そっか」

宣教師「…向こうにはまだアントリア神官がいる筈です。
たとえ王子を味方に付けても一筋縄ではいかないでしょう」

ルーボイ「宣教師様はどうすんの?」

宣教師「私はラムくんをもう一度説得してきますから、キミは急いでカロルくんの助けに向かってください?」

ルーボイ「分かった!シスターの姉ちゃんにも頼んでみる!」

宣教師「お願いします」ニコッ

ルーボイ「ところでアントリアって誰?」

宣教師「」ズルッ

ルーボイ「なんでずっこけんだよ?」

宣教師「き、キミは教団に入ったのに高位に属する方を存じてないのですか…!?」

ルーボイ「へっへー!宣教師様に教えてもらった事だけで入団できた!」ニカッ

宣教師「…ま、まぁ修道子の入団模試ですからね。基礎的な教えで十分ですよね」ゲンナリ
819: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/13(水) 23:04:01 ID:xYIBIDxiOA
―――客席最後列―――

アントリア「耳が遠くてね。しっかり聞き取れなかったようだ…。申し訳ないが今一度よろしいかな?」

ヒメ「お前の思い通りにはさせない!そう言ったんだ!」

アントリア「…この状況を立て直す術があるとでも?
どう足掻いてもこの国の崩落は免れないだろう?」

ヒメ「国なんかでよければ貴様らにくれてやる!」

アントリア「潔いのはありがたいが…他に何を守るものがあるのだね?」

ヒメ「…ともだちだ!」キッ

アントリア「とも……だち…?」ポカーン

ヒメ「団長!」

団長「ははっ!」

ヒメ「カロルを救出して舞台の仲間と合流しろ!巡礼地の外まで逃がしてやれ!」

団長「はっ……ん?王子はどうなされるおつもりか?」

ヒメ「僕にはまだ果たすべき使命が残ってる!」

団長「し、使命…とは?」

アントリア「くっ…クハハハハハハ!」

ヒメ「何がおかしい!?」

アントリア「こうしてる今も血を流し、渇れる事の無い涙に沈む民を…生まれもって課せられた責任を…果ては肉親である母君さえ投げやりに放って…守るものがともだちとはね?
はたしてこれ以上に滑稽な話が後にも先にもあっただろうか!?笑わずにはいられないよ!ハッハッハ!」

ヒメ「…その全てを奪おうと言う貴様に笑われる筋合いはない!」

アントリア「……」ピタッ

ヒメ「アントリア!貴様に決闘を申し込む!」キッ

アントリア「……?」キョトン

ヒメ「我が父のかたき……いや、王国に仇成す逆賊を成敗する!
この重い役目を全う出来る人物など…オレの他に誰がいる!?」

アントリア「ほう?」クスッ
820: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/13(水) 23:07:05 ID:yYh9Yksw9A
団長「な、何をおっしゃって…我々がこの場を放棄してしまえば誰が貴方様を守れると言うのです!?」

ヒメ「光栄に思えよ、アントリア?
王国、最後の王子となるこのオレと心中出来るんだからな?」ニヤッ

アントリア「ふっふっ!子供の発想力はまったく…奇想天外で驚かされる?
新たな国に用意された貴重な席を蹴り倒すばかりか、この老いさらばえた身に決闘を申し込まれるとは?」クスクス

ヒメ「…悔いはない。元より枷となる身分など捨ててしまいたかったしな。
貴様の愚かな野心が…僕を自由にしてくれた。それだけは感謝しておこう!」

団長「なりませぬ!でしたらワシめが残り、王子が舞台に避難なさってくだされ!」

ヒメ「分かってくれ、団長。こいつの言った事が本当なら、どのみち僕は追われる身となるだろう」

団長「し、しかし…!」

ヒメ「逃亡を続けたとしても陽の目を見る機会は得ずにのたれ死ぬか、捕らえられて処刑されるかの二者択一だろうな」

団長「ぐっ…くく…!」

ヒメ「そんな厄介者が紛れれば幸せにしてやると約束したホビット族も身動きを制限されてしまうだろう。
最悪はあいつらまで一緒に捕らえられて晒し者にされるかもしれない」

団長「わ、ワシが守ります!
ワシが貴方様の道を切り開く剣となり、御身に危機が迫れば鎧ともなりましょう!」

ヒメ「どっちを選んでも、ここで別れるのにか?」

アントリア「ふむ。強力な武具も身に付けてなければ力を発揮できないだろうね?」クスッ

団長「ぬぅ……!」ギリッ
821: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/13(水) 23:11:44 ID:yYh9Yksw9A
ヒメ「大丈夫だ、心配するな。おかげでこんなにも心が晴れた」

団長「お、王子…」

ヒメ「ほんの少しの間だけど父上とも和解出来て…いろいろな話ができた。
お前が影で僕の近況を逐一伝えていてくれた事もな?」

団長「…わ、ワシはただ王族に仕える身として当然の事をしたまで」

ヒメ「父上からは口止めされてたんだろ?何も知らずに責めたりして悪かったな?」

団長「め、滅相もございません…!」

ヒメ「民や高官、貴族は僕達を張りぼての王族と小馬鹿にして嘲笑う。
でもそんな中で…お前だけが敬い続けてくれた。その優しさに救われたんだ?」

団長「お、お…おうじぃ…!」ジーン

ヒメ「こんなわがままでみっともない僕によく仕えてくれた。
ホビット族を逃がしてやった後は…自分の為に生きてくれ」

団長「そ、そんな…!ワシは…ワシは…!」ジワァ

ヒメ「…泣くヤツがあるか」クスリ

団長「な、なれば…ワシもここで王子と共に…!」

ヒメ「ダメだ!」

団長「なにゆえか!ワシも武人のはしくれ!死に場所は己で…!」

ヒメ「救ってほしいんだ、あいつらを…。これはお前にしか頼めない務めだ」

団長「な、なぜそこまで…!」

ヒメ「お前に感謝しているのと同じくらい、僕はあいつに感謝してる。
だから生きてほしい。お前にもカロルにも?」

団長「くっ……!か、かしこまりました…。意思は硬いとお見受けする…」ガクッ

ヒメ「頼む。わがままもこれっきりだ?」ニコッ

団長「必ず…必ずや助けに戻ります!危険と感じたら即座に身を隠すのですぞ!?」

ヒメ「案ずるな。お前から培った武術が体に染み着いてる。それにいざという時は恥を捨てて逃げるさ?」

団長「し、しかし…」グッ

ヒメ「くどいぞ?」ジトー

団長「くっ…ご、御武運を…祈っております!!」ダッ
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