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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


786: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/1(金) 21:47:21 ID:m2G6ZP8gio
――――――

村人1「まぁたヘタレやがって!使えねぇガキだな!」

ラム「…すみ…ません」ゼェゼェ

村長「今日もやってるな!」スタスタ

村人1「村長!おはようございます!」ペコリ

ラム「……」ジッ

村長「やあ、この村には慣れたかね?」

ラム「…慣れました」

村人1「村長が声かけてくだすったのに気のねぇ返事だな!」

村長「調子はどうだ?」

ラム「…普通です」

村人1「村長!こいつ使えないんです!力仕事やらせてもすぐ倒れるし…」

村長「はっはっは!まだ小さいしな?大きくなればマシになるよ?」

村人1「ダメですよ!ホビットは成長してもチビのまんまですから?」

村長「あぁ、そうだった!はっはっは!」

ラム「……もう平気です」スクッ
787: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/1(金) 21:52:47 ID:m2G6ZP8gio
村長「ところで…なんか臭わないか?」スンスン

ラム「?」

村人1「村長!こいつです!」ビッ

ラム「……」

村長「あぁ、君か!なんかくさいと思ったら…ちゃんと体を洗わないとダメじゃないか?風呂嫌いは不潔の象徴だよ?」

村人1「言ったって無駄ですよ。衣服もロクに洗わないからボロになっちまって…」

ラム「…だって」ボソッ

村長「え?」

ラム「……」モジモジ

村人1「なんだよ?」

ラム「…あ、雨水で生活してますから」

村長「だらしないのを言い訳にしない?君のせいでアルの村がくさいくさいと囁かれたらどうする?」

ラム「そ、それなら…僕にも水を分けてください。体を洗うにしたってアワの実がないと…」

村長「…君は住居と食事と仕事だけでは飽きたらず、村の大切な水や貴重なアワまで寄越せと言うのか?」

村人1「ホビットって生き物はなんでこうも恩知らずなんだか…」

ラム「…最近は雨も降らないから、飲み水にも困ってます。こんなに暑いのに水も飲めないと…倒れるのは普通だと思います」

村人1「自分がだらしないのを棚に上げて言い訳してますよ?いいご身分ですね?」

村長「…あのな。雨が降らなくて水が足りないのは村人たちも同じなんだ?君だけが不平を漏らしてはいけないよ?」

ラム「分かってます…けど」

村長「強欲は心を弱くする。君の下品な感覚が、その汚れた服や体臭に出ているのではないかな?」

ラム「……」グッ

村長「引き続き、村の為に働いておくれ。君が立派な働き手になってくれたら、その時は水の分配も視野に入れよう」スタスタ

ラム「」ペコッ

金に眩んで僕を引き取った村長が決まって口にするのは欲望への戒めだった。
説得力の欠片もないけど、それっぽくしてれば許されるのが人間の価値観だって理解できるようになったのはもう少し成長してから。
……僕が村を出るのはまだ先のこと。水は最後まで分けてもらえなかった。
788: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/1(金) 21:56:48 ID:m2G6ZP8gio
――――――

行商「はぐっ…んむ…」ガツガツ

行商「しけた村だぜ。せっかく王都で仕入れた香料やら飾り物、嗜好品を売ってやろうってのに…実にならないからいらねぇだと?」チッ

行商「王都の土産物ってだけで田舎暮らしにゃ手の届かねぇ代物だぞ。貧乏人は見る目が無くてどうしようもねぇ!」

行商「あむっ!むしゃっ!」ガツガツ

ラム「」ジーッ

行商「…あ?」ジロッ

ラム「」サッ

行商「おい?なにじろじろ見てんだよ?薄汚いホビット!」

ラム「」グーッ

行商「ぷふっ!でっけー腹の虫だなぁ?」ニヤニヤ

ラム「…あ、あの」

行商「しっかしまぁ…このご時世に未だにホビットを置いとくたぁ奇特な村だぜ」

ラム「す、すみません」オズオズ

行商「はぁ?」

ラム「く、薬って…ありますか?」モジモジ

行商「薬?なんの?」

ラム「……」カァァ

行商「なにもじもじしてんだ?気色わりーな?」

ラム「その…お、お腹…痛くて…」グッ

行商「下痢か?」

ラム「……!」コクッ

行商「ぶはっ!きったねー!飯食ってんだよ、こっちは!」

ラム「すみません…」ペコッ
789: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/1(金) 22:04:17 ID:m2G6ZP8gio
行商「ま、売り物じゃねぇが持ってるぜ。旅に病気や怪我は付き物だからな。備えあればホニャララってやつだ」ゴソゴソ

ラム「ほんとですか!?」パァァ

行商「お代は銅貨160枚でいいぜ」

ラム「え…?」

行商「は?」

ラム「お、お金…ないです」

行商「は?」

ラム「……」

行商「おいおい…てめぇ、ふざけてんの?」

ラム「……」オロオロ

行商「ちぃっ!こちとらわざわざ辺鄙な田舎の農村まで歩いてよ。出稼ぎに来たってのになんも売れやしねぇ。
その上、クソッタレのホビットに話しかけられて飯が不味くなった!なのに薬をタダで寄越せってかぁ!?」

ラム「お、お仕事…手伝います。だから…」

行商「いらねぇよ!失せろ!」ドカッ

ラム「うあっ!」ドサッ

行商「ふてぶてしい野郎だ!また来やがったら肥溜めに沈めてやるからな!」

ラム「あっぐっ…!」キュルキュル

行商「へっ…クソッタレにはちょうどいいかもしれねぇがよ?」ニヤニヤ

ラム「う、うぅ…」ググッ ヨロッ

僕が病気や怪我をしても村の人間が助けてくれないことは知ってた。
外の人間なら、もしかすると…一縷の望みに縋ってみたけど、なにも変わらない。
あの村が異常だったんじゃなくて人間っていう種族そのものが異常なんだって改めて分かっただけだった。
790: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/3(日) 22:30:26 ID:65EH6cs1nU
ラム「」フラッフラッ

村の女の子「あっ!いたいたー!」

ラム「」ビクッ

村の男の子1「おめーどこにいたんだよ?探したんだぞ?」

ラム「……」

村の男の子2「今日もおれたちとあそぼーぜ!」

ラム「…仕事、あるから」ヨロッヨロッ

村の男の子1「はぁ?しらねー!」

村の男の子2「なんか生意気じゃん?」

村の女の子「暑いからじゃない?水浴びさせよーよ!」

村の男の子1「へへっ!また井戸に落っことすか!」

ラム「いい…かげんに…してよ」ボソッ

村の男の子1「は?」

ラム「そうやって…嫌がらせばっかして…楽しい?」キッ

村の男の子1「……」

村の男の子2「……」

村の女の子「……」

ラム「ふん…」スタスタ
791: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/3(日) 22:32:12 ID:65EH6cs1nU
ポツン

ラム「……!」キュルキュル

ラム「おなかがいたいよぉ…!」キュルキュル

バンッバンッ

ラム「……!?」ムクッ

ラム「は、はい」ガチャッ

村人1「うらぁっ!」ブンッ

ラム「ぶべっ!?」ガンッ

村人2「この恩知らずがぁ!?」ビュンッ

村人1「叩きのめすぞ!」ブンッ

バキッ ドカッ ゴスッ ズゴッ

村長「はっはっは!やれやれ!もっとやれ!恩知らずにはお仕置きが必要だ!」
792: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/3(日) 22:33:28 ID:65EH6cs1nU
ラム「」ビクンッビクンッ

村人1「」ペッ

ラム「」ビチャッ

村人2「反省してんのかぁ?このぉ?」ズシッ

ラム「ゆ…ゆる…して……」グリィッ

村長「君はなぜお仕置きされたか分かってるか?」

ラム「……」ピクピク

村長「子供たちを泣かしたそうじゃないか?」

ラム「え…?」

村人1「子供たちが泣きついてきたぞ!お前がいじめるから怖いってな!」

村人2「どこまで恩知らずなんだ!お前のせいで村の雰囲気は悪くなるばっかりだ!」

ラム「ぼくじゃ…ない……」

村長「君は村に恩を返そうという気がないのか?だから仕事も手を抜いて、不平不満を口にして、か弱い子供たちをいじめるのか?」

ラム「ぼくじゃない…!」ググッ

村長「今日は食事抜きだ。頭を冷やすんだな」クルッ

スタスタ スタスタ……

ラム「ぼくじゃないのに…!」プルプル


陰湿で苛烈な虐待にさらされる毎日。何度も死のうと思った。
生きる目的を見失うと、生きてる理由がない。
だけど僕は生きる目的を持ってたから死ねなかった。

それは離ればなれになった両親と再会すること。
村の人間は口を揃えて両親が僕を捨てたと言うけれど、僕はしっかりと覚えてた。
二人のぬくもりと約束を……

旅人「おんやぁ?こんな夜更けに何をしてるんだい?お子さまはおねんねする時間だろう?」

ラム「……!」

だけど1年前……あの男と出会ってから僕を取り巻く環境は大きく変化した。
あいつの名前はアイリ・ワルド。
飄々とした物腰と軽快な語り口で村人と親しくして村に溶け込んだ図々しい旅人。
ホビットの僕にも気さくな変わり者で、何から何までうさんくさい人間だった。
793: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/4(月) 21:48:28 ID:zkWTOajlAU
――――――

旅人「なぁ、ラム。こないだの話、考えてくれたか?」プカー

ラム「タバコくさい」ムスッ

旅人「こいつはタバコじゃない?タバコよりもっとイイ物だ?」スパー

ラム「なんでもいい。くさいからあっち行って」シッシッ

旅人「ん〜。この良さが分からないようじゃ、まだまだ背は伸びないな?」ジュッ

ラム「うるさい!」

旅人「ま、それは置いといてだ?」

ラム「……」

旅人「外はいいぞ〜?こんな狭苦しい村にいるより、ずっと楽しいし、麗しい美女と出会える可能性がグッと増える?」

ラム「…おじさんはなんで僕を誘うのさ?」

旅人「頑張ってるお子ちゃまを見ると助けてやりたくなるのさ?」

ラム「うさんくさい…」ジト

旅人「うさんくさくないよ〜?俺は正義の使者だよ〜ん?」

ラム「もっとうさんくさい!」

旅人「…そういえばラムは両親の帰りを待ってるらしいな?」ニヤリ

ラム「……!だ、誰から…!」

旅人「さぁ〜?誰だったかな〜?」

ラム「くっ!」イラッ

旅人「自分の足で両親を探してみるってのもいいんじゃないか?」

ラム「…待ってるって約束した」

旅人「これは俺の勘だがな。多分ここには戻ってこないぞ」

ラム「なんでお前に分かるんだよ…」

旅人「そういうもんさ」

ラム「……」
794: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/4(月) 21:51:02 ID:65EH6cs1nU
旅人「しっあわっせは〜あるいてこーない。だーからあるいていくんだね〜」ララー

ラム「……僕、仕事あるから」スクッ

旅人「ん〜。えらいね。あくせく働くなんてバカらしくて俺にはマネできんよ」シュボッ

ラム「働いたことないの?」

旅人「好きなこと以外はしたくない。楽して生きたい。一ヶ所に落ち着いちゃしがらみに左右される」

ラム「(ダメな人間だ…)」ガーン

旅人「着の身着のまま〜あてもなく〜向かう先は風吹く方角〜。
さまよい〜たゆたう〜時を知りながら〜渡り歩くひとりぼっちの根なし草〜」ラララー

ラム「…ほっとこ」スタスタ

旅人「(う〜ん…あと一押しってとこか)」
795: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/4(月) 21:53:07 ID:zkWTOajlAU
――――――

ラム「」ガスッガスッ

村人1「…ようやくサマになってきたな。おかげで俺もくつろげる」ズズッ

村長「はっはっは!精が出るな!」スタスタ

村人1「村長!こんにちは!」コトンッ

村長「なんだ、ホビットにやらせて休憩か?」

村人1「村長もお茶しますか?」

村長「お言葉に甘えようかな」ストッ

村人1「どうぞ」トクトク コトッ

村長「なんだかんだで引き取ってから5年か。早いものだ」ズズッ

村人1「最初はなーんもできなくて扱いに困りましたよ」

村長「そうだな。王国に知れたら…とビクビクしてたが税の徴収にやってきた兵も何も言わないし、これで一安心だ」

村人1「そういえばあいつ…ヨングの一家が泊めてる旅人と仲良くしてましたよ」

村長「…旅人?」

旅人「いないいな〜い…ばあっ!?」ヒョッコリ

村長「うわぁっ!?」ビクッ

旅人「噂の旅芸人でござーい?」ニヤリ

村長「旅芸人!?」ビクビク

旅人「よっこらせ!相席するよ?」ガタンッ

村人1「…ど、どうぞ」ビクビク

旅人「」ドッカ

村長「あ、あの…テーブルに足を投げ出されては…」オズオズ

旅人「」シュボッ

村人1「き、禁煙…なんですけど…」ボソボソ

旅人「」スパー プカプカ
796: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/4(月) 21:56:26 ID:zkWTOajlAU
村長「な、なにか…ご用ですか?」オドオド

旅人「酒、もしくはつまみ。それともなければ、その両方を頂こうか?」ニヤリ

村長「あ、あんた…いきなり何をおっしゃって…!」

旅人「おやぁ?遠慮しすぎたか?」

村人1「ぶ、不躾にも程がある!」ガタッ

旅人「ん〜?」チラッ

村人1「ひ、他人の敷地に入っておいて態度が悪いぞ!」

旅人「ふぅ〜…おおらかだって聞いたからねぇ?」スパー

村人1「火を消せ!」

旅人「オーケェイ」ジュッ

村人1「あっぢぃ!?」ピョンッ

村長「ひえっ!?」ドタッ

旅人「まぁまぁ座って座って?」

村長「あ、あんた…!?」
797: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/4(月) 22:01:41 ID:zkWTOajlAU
旅人「時に村長?このアルの村は実に平凡でちんちくりんでなーんにもない最高につまらない村だ?」

村長「な、なにもないつまらなさこそが…」

旅人「アルの村の財産?」

村長「そうです!」

旅人「つまらない理念だ」

村長「な、なんですと!?」

旅人「あればあるだけいいもんさ。人の欲望は満たされないように出来ている?
えらいえらい神様が決めた仕組みに逆らっちゃ〜いけない?」

村長「強欲は下品で卑しくて争いを招く!」

旅人「そんなに無力で無能な無欲が好きならば…ホビットの一匹や二匹、快く差し出してくれちゃったりするのかなーん?」

村長「ホビット!?」

旅人「あのこじんまりとした畑でセッセカセカセカ鍬を振るがんばり屋さんだよぉ?」

村長「……あ、あれは預かり物でして」

旅人「ほーう?だったらこっちも奥の手を出さないとな?」ドンッ

村長「そ、それは…!」ハッ

旅人「無欲で通してる村長には刺激が強すぎるかな?」シュルッ ザラァァ

村長「っ…!」ゴクリ

旅人「…まん丸ツヤツヤ金ぴか!完璧なフォールム!人を惑わす妖しい魅力…虜になったらやーめられなーい!?」

村長「……!」カネゴン

旅人「こういうやり口はお嫌いかね?」ニヤァァァ

村長「いえ…!」ギラギラ

旅人「(やっぱこれが一番楽だな)」

その日の夜、村長たちが来て村を出ていくよう言ってきた。
旅人がお金を出して僕を買ったらしい。
少し迷ったけど…旅人を信用してた僕は一緒に旅をすることにした。
この村で我慢し続けるよりは…旅をしながら両親を探す方がいいと思ったから。
798: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/4(月) 22:15:20 ID:65EH6cs1nU
料理「」ズラァァァ

旅人「記念すべき旅立ちだ?まずは腹ごなしして友情を深めようじゃないの?」カチャカチャ

ラム「……」ジーッ

旅人「あらま?お腹空いてない?じゃあ代わりにいただ……」ヒョイッ

ラム「」ペシッ

旅人「あたっ!」ヒリヒリ

ラム「」ガシッ バクッ

ラム「」クッチャクッチャ

旅人「(食い方きたなっ!)」

ラム「」ゴクンッ

旅人「お味はいかが?お坊っちゃん?」

ラム「初めて食べる味。なんていうの?」

旅人「鴨の蒸し焼き。王都じゃ…まぁ庶民的。田舎じゃご馳走だな」カチャカチャ

ラム「ふーん…ていうかさ、なんでまだウチにいるの?」

旅人「野宿は嫌いなんだ。急ぐような旅でもないし、夜明けに発とう?
あぁ、そうだ!村の人間に別れを告げてきてもいいんだぞ?」モグッ

ラム「…そんな相手いない」

旅人「これからは楽しいぞ?愉快なお友達がいるんだからねぇ?」

ラム「友達いたの?」キョトン

旅人「いるじゃないか?目と鼻の先に?」カチャカチャ

G「」カサッ シュタタタタ

ラム「あ、ほんとだ…。おじさんの親友がいる?」ジーッ

旅人「そいつだと思ってるなら、君は俺という人物を相当誤解してるよ」

ラム「え?ちがうの?」

旅人「どうしたもんかねぇ…。早速、歩幅がズレちまってる…?」ポリポリ

ラム「」バクッ
799: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/4(月) 22:18:02 ID:zkWTOajlAU
旅人「」ガブガブ

ラム「…なに飲んでんの?」

旅人「ふいー!んあ?」グビッ

ラム「もしかして酒?」

旅人「いんや?葡萄のジュースさ?」ピチョッ

ラム「飲むのはいいけど、ここで吐いたりしないでよ?後始末とかしたくないし?」

旅人「まぁまぁ堅いこと言わない?トウモロコシのスープもイケるよん?」チョイチョイ

ラム「」ガシッ ズズッ ゴクゴク

旅人「トウモロコシのジュースじゃないんだがねぇ…。まるでお皿が平らなコップだ?」シラー

ラム「ふはー」フゥッ

旅人「オヤジか!」

ラム「……」ガシッ バクッ クッチャクッチャ

旅人「あーあーダメダメ!手掴みなんて汚い汚い!ハンカチ貸したげるからフキフキキュッキュッしなさい!」つ【ハンカチ】

ラム「…めんどくさっ」ボソッ

旅人「やれやれ…反抗期だねぇ。子を持つ親の苦労が沁みるよ」

ラム「勝手に親ヅラするなよ」ジロッ

旅人「うーん…こりゃ手が掛かりそうだ」グビッ

夜が明けて僕らは旅立った。
別れを言う相手もいないし、荷物も無かったから、誰にも会わずにそっと村を離れられた。

この旅の中であいつは両親を探す協力をしてくれる…そう思ってた。
村での生活は理不尽だったけど最低限、生きていける環境は整ってて…それらを失う怖さはあったけど、旅慣れてる人間がいるのは心強かった。
だけど僕は今でも自分の選択を後悔してる…。
あんなことになるなら、村にいた方がまだマシだった。
800: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:13:32 ID:YmcwGKzrMY
ラム「なんなの…ここ?」キョロキョロ

旅人「旅の幕切れさ?」ニヤリ

ラム「えっ」

ガシャンッ

ラム「ちょっと?なにしてんの?ちょっと?」ガチャガチャ

ラム「あ、開かない…!」

バンパ「…やめとけ。疲れんだけだぞ?」ポンッ

ラム「…え!?」クルッ

バンパ「よう、新入り?俺はバンパだ?よろしくな?」

ラム「…同族?」

バンパ「ったりめぇだ!見りゃわかんだろ?」

ラム「……」

バンパ「お前もあいつに騙されて来たのか?」

ラム「バンパ…さんも?」

バンパ「俺は貴族とかいう嫌味ったらしくて気取った人間に使われてたんだけどな…。
あいつが主人を説得して俺を買い取ったんだ。そんで言われるままに付いてくりゃ…このありさまだぜ」

ラム「……!」

辿り着いたのは名前も分からない寂れた町。
ここに泊まると言われて入ってみたら、大きめの柵に囲まれたおんぼろのテントに閉じ込められた。
その中には何人か同族もいて…話を聞く内に騙されてたんだって気付いた。
801: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:15:01 ID:2Wm5GCo/Zk
それから数週間経って……あいつはまた現れた。

旅人「いい子にしてたか?」バサッ

ラム「……」

バンパ「ちっ…俺らをどーする気だ?」

旅人「さぁて…それを知るにはちょいと時間が掛かる?
だがお利口さんにしてたら、余計な時間は使わなくて済む?」ニヤニヤ

ラム「…騙したの?」

旅人「騙されちゃった?」ププッ

ラム「信じてたんだよ…。おじさんのこと?」

旅人「俺も信じてるさ、相棒?んも〜愛してる?ちゅっちゅっ!」ナゲキッス

ラム「」ゾワッ

バンパ「…クソヤロウが」

旅人「よう、バンパ!元気にしてたか?」

バンパ「こっから出しやがれ!」ガシャッガシャッ

旅人「いやぁー元気でなによりだ」

ラム「父さんと母さんには会えないんだね…」

旅人「あ〜らぁ〜?会えると思ってたんだねぇ?おめでたいヤツ?」

ラム「……」

旅人「恨み節ならいくらでも聞いてやるぞ?儚い命にも吠える時間くらいは残されてる?」

ラム「なんにもいいことなかった…」

旅人「……」

ラム「サイアク…」フッ

旅人「元気出せ!まだ若いんだから、これからこれから!」

バンパ「この…!」イラッ

旅人「またな、親愛なる友よ!あっははは!」バサッ
802: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:18:49 ID:YmcwGKzrMY
ウォルター「ハッハー!あいつらか、新品のホビットってなぁ?」バサッ

ラム「……」ズーン

旅人「なかなかイイ目をしてるだろう?」

ウォルター「あぁ、いいじゃねぇか…。
切れ長な目がいっちょ前に生意気さを醸してていたぶり甲斐がありそうだ?」ニタァ

バンパ「クソー!出しやがれ!」ガッシャガッシャ

ウォルター「あっちはホビットにしちゃガタイがいいな。
ああいうのが屈伏するサマは趣旨を分かりやすくさせる。いたぶり甲斐もありそうだぜ?」

旅人「あんたそればっかだねぇ」

ウォルター「殺り甲斐を見出だすのが俺らの商売だろうが?」

旅人「なんにしても今回はイキのいいのが集まったからね。お駄賃は弾んでもらうよ?」

ウォルター「はっ!ワルドよ?
てめぇは目利きと確実さにかけちゃ言うことなしだが、時間をかけすぎなんだよ?」

旅人「ウォルターさんは急ぎすぎる?もう少し楽しむ余裕があってもいいと思うがね?」ヘラヘラ

ウォルター「なにぃ?」ギロッ

旅人「じっくりと築き上げた信頼をぶち壊された時の絶望は人もホビットも変わらない。
その瞬間に見せる表情にこそ、俺はロマンを感じるね?」

ウォルター「…性格わりーなぁ?
痛め付けて苦痛に歪む表情を眺めるのがいいんじゃねぇか?」

旅人「…あんたも大概じゃないかねぇ」

ウォルター「まぁいいやな。いくらだ?」

旅人「必要経費込みこみで金15枚。びた一文まけないよん?」

ウォルター「あぁ…?」ピキィッ
803: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:22:53 ID:YmcwGKzrMY
旅人「うちの客層は暇をもて余した成金が大半だ?
今夜の収益を見込んでも…決して高いとは思えんね?」

ウォルター「俺にそんな口を聞けるのはてめぇくらいのもんだぜ?えぇ?運び屋さんよ?」

旅人「なんせ10年来の付き合いだ?
ヘマトの創立メンバー同士、仲良くガッポリつるんでこうじゃないの?」

ウォルター「ちっ…しかたねぇな?」

旅人「そう嫌な顔するなよ?チケットも完売してるんだろう?」

ウォルター「すっとぼけんじゃねぇ?三割は会長に回さなきゃなんねぇんだよ!」

旅人「ククク!会長、ねぇ?まだあの人に使われる気か?」

ウォルター「…なんだと?」

旅人「もう俺達だけで十分にやってけるんじゃないか?
そりゃ最初は資金援助やら顧客の紹介やら王国の正式な認可承認の根回しと…いろいろ世話になってきたが」

ウォルター「……」

旅人「あの人も立場があるしねぇ。逆に俺達との付き合いをネタに脅してやれば……」

ウォルター「分かってねぇな?」

旅人「ん?」

ウォルター「会長は別格だ。俺はあの人が恐ろしくてたまんねぇよ」

旅人「ほー…こいつはたまげた。あんたから恐ろしいなんて言葉が出るとは?」ポカーン

ウォルター「るせぇ、んなこたぁいい!まずは恐怖心から覚えさせろ?
本番で暴れられて客に危害でも加えられたらたたまんねぇからな?」

旅人「よく言うよ?あんたみたいな怪物相手に一暴れしようなんて猛者はいないだろう?」

ウォルター「ククク!そうでもねぇさ?
死に物狂いのキチガイほどおっかねーヤツはいねぇ?」

旅人「なるほど。そんじゃまぁ今日は見学といこう?
あいつらにしてみても後学の為に知っておいて損はない?」

ウォルター「そうか。じゃあ今夜、舞台袖で見してやれよ」
804: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:28:24 ID:2Wm5GCo/Zk
――――――

ワーワー! ギャーギャー!

ウォルター「ハッハー!今宵も血の香りをご所望かな!?」

ウオオオオ!

ウォルター「ならば期待に応えよう!
嘶く雷鳴にも似た悲痛の叫びを余すことなく体感するがいい!」

ウォルター「今日の演目は血で血を洗う世にも恐ろしい夫婦の愛憎劇!
究極にまで研ぎ澄まされた愛が憎しみへと昇華される時、互いの眼に映る世界は混沌とした殺意に満ち溢れる!!」

ウォルター「愛好家の皆様の中にも浮気やへそくり…後ろめたいことがあるようなら、今夜はベッドで機嫌を伺った方がいいかもな?」ニヤリ

ハハハハハハ!

ウォルター「うーし!とっとと始めちまうかぁ!持ってこいや!」

手下1「うらぁ!暴れんじゃねーぞ!」グイッ

ホビット夫「イヤダァァァ!タスケテェェ!」ズルズル

ホビット妻「あなたぁ!!あなたぁ!?」ズルズル

ウォルター「涙と鼻水でグシャグシャじゃねぇか?
せっかく姿形は美しい種族って評判なのにもったいねぇな?」
805: ◆WEmWDvOgzo:2014/8/5(火) 21:30:21 ID:YmcwGKzrMY
ギィィコ ギィィコ

ホビット夫「うぎゃあああああああ!?」ブシュッ

手下1「母ちゃんの為ならえーんやこらさっさとぉ!」ギィィコギィィコ

ホビット妻「やめてぇ!?夫を離してぇ!?」ジタバタ

ウォルター「…おい、離してやれや?」クイッ

手下1「うっす!」ピタッ

ホビット夫「あぁうぐぅ…!いぃぃ…!腕がぁ…腕千切れるぅぅ…!」ブシャァァァ

ホビット妻「あ、あなたぁ…」

ウォルター「旦那の代わりに奥さんがやるってよ?」

ホビット妻「え!?」

手下2「うっす!ノコギリ貸せ!」

手下1「あいよ」つ【ノコギリ】

ホビット妻「え?いや、いやだっ!イヤダァァァ!!!」ジタバタ

ウォルター「おーおー…大事な女房がああ言ってるが…旦那はどうする?」

ホビット夫「」ブンブンッ

ウォルター「クックッ…薄情なこって?」ニヤリ
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うpろだ
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