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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


681: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:19:45 ID:imv0BbiqFU
ギャーギャー ギャーギャー

グイグイッ グイグイッ

ヒメ「痛いってもう!なんでオレを挟むんだよー!王子だぞ、王子!無礼だろー!」

カロル「は・な・し・て・よ〜!?」ググッ

ラム「君が離せばいいだろ!?」ググッ

カロル「ラムくんの…分からず屋!」ググッ

ラム「カロルくんこそ…わがままだ!」ググッ

カロル「王子さまに謝らないなら…離さないから!」ググッ

ラム「ごめんごめん。これでいい?」ググッ

カロル「ちゃんと…謝ってよ!」ググッ

ヒメ「ちぎれるちぎれる!ちぎれるって!?」ピーン

ラム「」パッ

カロル&ヒメ「えっ」ズルッ

すってんころりん!

カロル「いた…た…」ゴロリ

ヒメ「き、急に離すな!?」プンスカ
682: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:20:55 ID:x2Uy2NZngQ
ラム「君はなんでそこまでして人間を庇うの?」

カロル「…ラムくんこそ協力してくれた王子さまにいじわるしないでよ」ムスッ

ラム「……」

カロル「人間もホビットもおんなじだもの。憎み合うのはよくないよ」ムクッ

ラム「でも君は戦うって決めたじゃないか?」

カロル「ボクたちを騙したり、いじめたりする人間とは戦うよ?」

ラム「そんな中途半端な気持ちでいるから騙されるんじゃないの?」

カロル「なんでも疑ってたら何もできないよ?信じてみてからでも遅くないでしょ?」

ラム「…信じて騙されてたら意味ないだろ」

カロル「王子さまは騙したりしないもの!」

ラム「証拠は?」

カロル「証拠?」キョトン

ラム「騙さない保証はあるか聞いてるんだよ」

カロル「あるよ!友達だもん!」

ラム「ふーん。言ってみなよ?どんな証拠?」

カロル「へ?だから…友達だよ?」

ラム「?」

カロル「友達は友達を裏切らない!そうでしょ?」ニコッ

ラム「…またきれいごと?いい加減聞き飽きたんだけど?」

カロル「違うもん!ホントなの!」
683: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:22:29 ID:imv0BbiqFU
ラム「くだらないね?君はそうやって今までも周りを巻き込んできたんだろ?」

カロル「う…」グサッ

ヒメ「おい、お前!さっきから黙って聞いてれば!」

ラム「なに?」ジロッ

ヒメ「カロルはお前らの為に言ってるんだぞ!なんにも分かってないだろ!?」

ラム「違うね?カロルくんは頭が悪いだけさ?」

カロル「」グサッグサッ

ヒメ「オレが人質になってるのは何もお前らを回復させる為じゃない!人間とホビットの争いを止める為だ!」

ラム「……?」

バンパ「な、なんだって?」

シープ「止まる訳ないじゃん?」

ヒメ「オレを人質にして兵士たちと交渉する筈だったんだよ!」

ラム「……!」

ヒメ「それをお前があんなこと言うから台無しだ!」

ラム「そう…だったの?」

カロル「うん…。兵士さんたちも戦いたくない筈だもの。これ以上、命を賭けてもしょうがないじゃない…」ズーン

ラム「…悪いけど反対だね。僕は人間と和解したくない」

カロル「ラムくんの意地っ張り…?」イジイジ

ラム「…なおさら安心したよ。そんなの最初から願い下げだ」
684: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:24:56 ID:x2Uy2NZngQ
ヒメ「ならどうするんだ?一人残らず命を落とすまで戦うのか?」

ラム「人間が…ね?」

ヒメ「確実に負けるぞ?」

ラム「それを決めるのは君じゃない」

ヒメ「最初にいた人数を知らないが…見た目どのくらい減ってる?」

カロル「……40人くらいかな」

ザワザワ ザワザワ

ヒィィィィィイイ!

ラム「…そ、それは」

「そ、そういえば…かなりいなくなってる!」

「さっき死体が転がってるの見たぞ!」

ザワザワ ザワザワ

カロル「ボク一人で回復させるのにも限界があるんだよ?」

ヒメ「当たり前だ!命を落とさない戦争なんてない!」

「あ…うああ…!」

「し、死にたくない!」

ヒメ「死にたくないなら和解しろ!もう十分だろ!?」

シープ「で、でも〜…」

バンパ「…痛いとこ突かれたな?ヘマトに捕まってた奴らは死に敏感だ?」

ラム「こいつは人間だよ?和解なんてさせると思うかい?」

ザワザワ ザワザワ

ラム「油断させようとしてるのさ?僕には分かるよ?みんなだって今まで甘い言葉に騙されてきただろ?」

「た、確かに…そうかもな」

「そ、そうだよ!人間はいつもそうだ!」

ヒメ「…お前らの命は僕が保証する!」

ホビット's「えっ」
685: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:26:33 ID:imv0BbiqFU
ヒメ「僕は王子だ!将来は国を統べる立場にある!」

ラム「騙されるな!」

ヒメ「約束する!僕が国王に即位したらホビットへの価値観を見直して人間と共存できるようにしてみせる!」

ザワザワ ザワザワ

「し、信じていいのか…?」

「ま、まさか?嘘に決まってるって?」

ヒメ「嘘じゃない!僕を信じろ!」

カロル「ボクからもおねがい!王子さまを信じて!」

ラム「信じちゃダメだ!」

カロル「いつまでこんなことを続けるの?ボクたちは争う必要なんてないんだよ!?」

カロル「ホントに人間が憎いの!?命を奪わないと消えない憎しみなの!?」

カロル「もうやめようよ!こんなにたくさんの血を流して、まだ意地を張るの!?」

シーン

ラム「み、みんな…」

カロル「人間に怯えて隠れ暮らしてた毎日を思い出してよ?辛かったでしょ?」

カロル「人間から歩み寄ってくれたんだよ?あとはボクたちが一歩踏み出すだけでいいんだ!」

カロル「人間とかホビットとか気にするのはやめようよ!同じ命でしょう!?」

シーン

カロル「ずっとこのままでいいの!?ずっとずっと…ずっとこのままだよ!?」
686: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:28:47 ID:imv0BbiqFU
スタスタ スタスタ

カロル「!」

「お、おれ…和解したい」

「わたしも……」

「ほ、本当は戦いたくなかった…」

「…人間が改めてくれるなら」

ゾロゾロ ゾロゾロ

カロル「みんな…!」パァァ

ヒメ「ハハハ!やったな!」パァァ

ラム「……!」ギリッ

バンパ「あ〜あ…みんな向こう側に立っちまった」

シープ「…なんかぼくらだけ仲間外れみたいじゃない?」

黒装束1「」スタスタ

黒装束2「」スタスタ

ラム「」ジロッ

バンパ「お前らもか?」

黒装束1「悪いな」スタスタ

黒装束2「ラムの考えも分かるけどカロルの言い分も間違ってない」スタスタ

シープ「べーっだ!あっち行っちゃえ!」シッシッ

ヒメ「…意地張ってないで来いよ?」

ラム「お前らの口車には乗らない」

バンパ「ふん…」

シープ「…の、のらないぞー!」アセアセ
687: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:30:10 ID:x2Uy2NZngQ
カロル「ラムくんたちもおいでよ!仲直りしよ?」

ラム「……」プイッ

カロル「…二人は本当に戦いたいの?」

バンパ「…それを聞かれちゃな?」

シープ「…た、戦いたくは…ないけど…」

カロル「人間の町って楽しいよ?石のお家とか鉄の塔とか地面から水が噴き出す広場があったり、おいしい食べ物もいっぱいあるんだ!」

バンパ「く、食い物か…」ジュルリ

シープ「そういえば…二日もごはん食べてない」グー

カロル「お店とかたくさん並んでて珍しい物がすごくあって!お祭りとかもするの!」

バンパ「へ、へぇ…そうなのか」

シープ「楽しそう…」

カロル「ホントだよ?ね?」

ヒメ「そうそう!それに武芸や芸術、他にもダンスとか運動なんかの競技で一番を決めるコンテストだってあるんだぞ!」エッヘン

バンパ「おぉ!俺、力なら自慢できるぞ?」ワクワク

シープ「踊るのやってみたいなー!」ワクワク
688: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:31:46 ID:imv0BbiqFU
カロル「ふふふ!こっちへおいでよ?」ニコニコ

バンパ「え、えーと」チラッ

ラム「……」

シープ「ら、ラム?な、なんかさ…楽しそうな気もしない?」

ラム「じゃあ行けば?」

バンパ「お、お前も来いよ!俺ら3人、兄弟みたいなもんじゃねーか?」

シープ「うん!うん!」コクコク

ラム「二人は好きにしたらいいよ。僕は行かない」

バンパ&シープ「……」シュン

カロル「もっとあるよ!」

バンパ「……」

シープ「……」

カロル「ホビットと人間が一緒に暮らせばお互いに楽しいことを共有できるでしょ?」

ラム「……」

カロル「一緒に楽しめる遊びもいっぱい考えてさ!みんなが幸せでわくわくする毎日にしようよ!」

カロル「そういう風に暮らしていったら、いつか好き嫌いも無くなって人間もホビットも仲良しになれるよ!」ニコッ

ヒメ「そうだな!」ウンウン

バンパ「仲良し、か…。想像もつかねぇな」

シープ「…でもこんなに戦った後に仲良くなんてなれっこないよ」

ヒメ「そんなの恨みっこなしだ。ケンカなんてどっちも悪いんだからな」

ヒメ「ただ…失うモノが多すぎた。だからもうやめよう。ここで許し合えないと、また逆戻りするだけだぞ?」
689: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:33:16 ID:imv0BbiqFU
バンパ「ラム…どうだ?」

ラム「は?なにが?」

バンパ「俺はいいと思うんだよ。なんてーか、もう…いいと思う」

ラム「」チラッ

シープ「ぼ、ぼくも…バンパの言うとーりかなーって…」モジモジ

ラム「ふーん…まだ夢を見るんだ」

バンパ「…見たくもなるだろ?なんにもねぇんだから?俺らには?」

ラム「……」

バンパ「底の破れた靴で歩き回って…腹空かしてよ…。
着た切り雀で冷たい風にさらされながら野宿するのにも…疲れたんだ」

シープ「足音とか馬の鳴き声がすると人間がいると思って…ヘトヘトでも移動したりして全然休めなかったもんね?」

バンパ「ちょこっとでいいんだよ。デケー夢は見ねぇ。ホントちょこっとでいいんだ」

バンパ「暖けぇ飯が当たり前に出てきて、足りなきゃおかわりして、他愛なくその日にあった事を話しながら皿やお椀を空っぽにしてよ?」

バンパ「ちゃんと沸かした湯で体を流してスッキリしたら歯でも磨いて、お日様のぬくもりを感じられる毛布にくるまって…うるせぇイビキでもかきながら、いつも通りの変わらない朝を待つ…」

バンパ「最高じゃねーかよ?お前だってそう思うだろ?」

シープ「えー…それはなんかおじさんみたいでやだなー?もっと色々あるじゃん?」

バンパ「だからお前はガキなんだよ!安定してた方がいいだろ?」

ヒメ「叶うさ!」

シープ「……」

バンパ「……」

ヒメ「絶対に叶う!安定もときめきも…誰にだって手に入れられる!」

カロル「ふふ!」ニコニコ
690: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/29(日) 16:35:20 ID:x2Uy2NZngQ
ラム「行ってきなよ」

バンパ「……」

シープ「……」

ラム「僕が決めることじゃないしね?二人の意思で決めればいいよ?」

バンパ「…お、俺は」

シープ「」タタタッ

バンパ「シープ…!?」ギョギョッ

ヒメ「よし?えらいぞ!」

シープ「…ごめんね」チラッ

ラム「……」

バンパ「ら、ラム!やっぱり俺らも!」

ラム「"俺ら"?勝手に僕を入れないでくれる?」

バンパ「い、いいじゃねーか!これっきりにしてまともな生活送ろうぜ?」

ラム「僕を気遣って行けないなら…消えてあげる」クルッ

バンパ「はぁ?消えるって…どこに消えんだよ!」

ラム「」スタスタ

バンパ「おい!ラム!」

シープ「そっち来た方向と逆だよ!?」

カロル「ラムくん!」

スタスタ スタスタ……

ヒメ「放っておけよ。いくら説得しても聞かないんだから」

カロル「…ラムくん」
691: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:22:48 ID:reOEUJ6NnU
ヒメ「おい!近衛師団長!」

団長「ははっ!」ピシッ

ヒメ「どうやら僕を解放するには条件があるらしい。呑まないと王子である僕の命が危ない!」

団長「かしこまりました!なんなりとお申し付けください!」

ヒメ「今すぐ全員、武器を捨てて戦いを中止しろ!」

団長「御意!」ポイッ

カランカラン

近衛兵1「だ、団長?よいのですか!」

団長「…王子の命令が聞こえなかったのか?」ギロッ

近衛兵1「大臣たちにどう言い訳するおつもりです!」

団長「この国で最も重いのは王族の言の葉よ?高官の出る幕などない!」

近衛兵1「し、しかし…」

団長「まぁ聞け!」

ザワザワ ザワザワ

団長「我が国には考える者が少なすぎる!何を思い、何をすべきか、己に問う決断力があまりに欠けている!」

団長「押し付けがましい平穏と引き換えに窮屈な暮らしを強いられ、不信感を口にする者は少なくない!だがあくまで口にするだけだ!」

団長「非常時に陥れば扉を固く閉ざし、窓越しに眺めながら外は危ない、きっと誰かがなんとかする…無関心を是とした究極の堕落だ!」

団長「己を知り、己に問え!高官に命令されたから動くのではなく、誰に従うべきかを考えろ!」

団長「真に国を想い、民を想い、我々を正しく導いてくださるのは誰だ!?」

近衛兵1「……」
692: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:25:38 ID:reOEUJ6NnU
団長「…過去に悲劇の町や辺境の村が焼かれた。
そのどれもが目を背けたくなるような惨劇だったそうな」

団長「その時の話を泥酔した高官が高笑いしながら語ってくれた。
真っ赤に燃え上がる炎が町を覆い尽くすサマは美しく、何度見ても飽きぬとな?」

近衛兵1「」ブルッ

団長「それにワシは憲兵という職業柄、様々な事件を扱い、同時に闇へと葬ってきた」

団長「年に数回はどこぞで行方不明者が出て、その捜索が真実に近付くたびに圧力が掛かり……」

団長「式典の際には高官の前を横切った老人が衛兵に切り捨てられ…。
ある喫茶店では働き盛りの若者が不意に貴族の衣服に水をこぼしてしまい、死刑になった」

団長「ある時には貧しい家の少女が僅かな小遣いを貯め、誕生日に父親への贈り物に一本の安い酒を買った…。
家路までの道のりを駆け足で向かっていた少女は馬の足音に気付かず…無残にも轢かれてしまった」

団長「人の行き交う城下で構わず馬を走らせていたのはやはり貴族のバカ息子で…もちろん罪は裁かれる事なく…。
幸いにして少女のケガは浅く、命に別状は無かったが…。
あろうことかバカ息子は少女の不注意によって馬から落ちてしまうところだったと言い張り、罰として親子を王都から追放した!」

近衛兵1「……」

団長「その全てが…変わりなく今も続いている!」
693: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:27:27 ID:tCV0j5N4Sw
団長「これだけじゃない!捨てられたホビットが噴水広場に置かれていた事件を思い出してみろ!」

近衛兵1「…貴族が飼うのに飽きて捨てたんでしたっけ?」

団長「そうだ!あの時のホビットの首に提げられたメッセージカードには手書きでこう記されていた……」

『貧しい人への贈り物。好きにしていいよ(はぁと)』

団長「……あのホビットは結局、死骸となって保護された。鬱憤を晴らす道具として人々の虐待を受けたからだ」

団長「民衆から石を投げられ、殴打され、唾を吐きかけられ…ワシが通報を受けて現場に走った時には両手両足をへし折られて口にはガラスの破片が詰まっていた」

団長「…凄惨な虐待を行った若者たちは嬉々として事情聴取に応じてくれたよ。ホビットを殺してもおとがめはないからな」

団長「若者たちの暴行はたった20分ほどの出来事で…元々弱っていた為にすぐ死んでしまったと。
現場を見ていた民衆は止める事もせず、通りすぎたり立ち止まって見物したり…そんなものだったそうな」

近衛兵1「あれは…ホビットの話ですし」

団長「あぁ。確かにワシ自身、他人事のように思っていたよ。だが…今思い返すとおぞましい…!」

近衛兵1「……」

団長「…貴族の遊びに民衆が乗せられ、誰一人として疑う事なくホビットに憎しみをぶつけた。
まるで我々の生きる時代を具体化しているような…そんな恐怖を覚えたのだ」

近衛兵1「え?」

団長「ホビットが悪ならば…先ほど話した高官、貴族の振る舞いはなんだ?」

近衛兵1「……」

団長「この中にもいるのではないか?奴らに苦しめられた経験がある者は?」

近衛兵7「も、申し上げます」

団長「言ってみろ!」
694: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:38:38 ID:tCV0j5N4Sw
近衛兵7「私の友人はバックヤードに住んでいて、表通りを歩くと、いつも奇異の目にさらされてからかわれていました」

近衛兵7「それと言うのも貴族たちが裏通りの住人を日陰者呼ばわりする風潮が表通りにまで浸透してしまったからです」

近衛兵7「結果、病んでしまった彼は家を出なくなり、友人の私が訪ねても未だに話にすら応じようとしません」

近衛兵7「私は家族ぐるみで彼と付き合いがありましたから…とても悲しく思いました」

団長「…奴らにしてみれば庶民の存在などホビットと変わらんのだよ。身分と利害でしか物事を考えられんのだ」

近衛兵8「私の姉も…大層な美人で人当たりもよく、城下ではそれなりに知られていて…二十歳の時に恋仲になった相手と結婚したのですが…」

近衛兵8「…突然、相手が別れを申し出て姉は泣く泣く実家に戻って参りました」

近衛兵8「その数日後に大臣の屋敷から使者が来て、姉に招待状を寄越したのです」

団長「で、どうなった?」

近衛兵8「…姉は帰ってきませんでした。それどころか姿すら見られません。大臣にお伺いしたところ、そんな招待状は知らないの一点張りでして…」

団長「…だいたい想像はつく。招待状を差し出した使用人、姉共に行方不明、捜索困難の為、未解決のまま終息…よくある話だ」

近衛兵9「わ、私は田舎の生まれでして!家族で林檎園を営んでいたんです!」

団長「うむ」

近衛兵9「ある日、村に立ち寄った大手の商家がうちの林檎を買い取ってくれたんですが…林檎に虫が入っていたと文句を付けまして…」

近衛兵9「商家のヤツめ。それから方々に悪い噂を流しやがって、たちまちの内に噂は広まり、おかげで私たちの育てた林檎は買い手が無くなりました!」

近衛兵9「収入が激減してしまい、とても林檎園を続けていけなくなった私達家族に…商家は買収を持ち掛けたんです!」

近衛兵9「断ろうにもどのみち破滅は目に見えていて…結果、最安値で土地を手放すことになりました」

近衛兵9「…私の生まれ育った林檎園は今じゃ大臣の別荘になっていて、そこで密やかに愛人を連れ込んでは大人数で淫らな会に興じているそうです」

団長「なるほどな。最初から裏に大臣が潜んでいて息の掛かった商家に命じ、手頃な土地を安く手にいれる算段だった訳か」

近衛兵1「知らなかった…。そんなことが…」

団長「皆の気持ちはよく伝わった。ワシも同様に悔しく思う…。
だからこそ正しい指導者を迎えて、この歪んだ王国の仕組みを変えねばならん」

団長「武器を捨てよう。我々が戦うべき相手はホビットではない。そして我々が従うべきは…高官などでもない!」

ポイッ ポイッ カランカラン カラカラ カンッ
695: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:45:13 ID:reOEUJ6NnU
団長「ヒメ様!理解を得られましたぞ!」

ヒメ「名前で呼ぶな!」

団長「も、申し訳ございません」

ヒメ「よし!これでオレは人質じゃなくなった!いいな?」

カロル「うん!人質じゃなくなった?」ニコニコ

ヒメ「みんな舞台から降りろ。向こうに避難してる奴らを説得しに行くぞ!」

バンパ「…ほ、ホントに信用していいんだろうな?」

ヒメ「あぁ!もちろんだ!」

シープ「…に、にらんでるけど?」

近衛兵10「……」ギロッ

ヒメ「……」

団長「こら!貴様!」

近衛兵10「…今まで敵だった奴らと急に仲良く出来ませんよ」

近衛兵11「王子を抱き込んだからって偉そうにすんじゃねーぞ!腐れホビットが!」

ザワザワ ザワザワ

ヒメ「なんだとぉっ!?」カッ

カロル「いいよ、王子さま?」

ヒメ「よくない!」

カロル「まだ慣れないのはしょうがないよ?少しずつ時間をかけて分かってもらおう?」

ヒメ「…そ、それは分かる!でもあの言い方はないだろ!」

カロル「いいの、いいの?もっとひどい言い方、たくさん知ってるもの?」ニコニコ

ヒメ「…それでよく和解する気になれるよな」
696: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:47:29 ID:reOEUJ6NnU
近衛兵10「…おい、腐れホビット!信用が欲しければ何かしら証明してみせろ?」

バンパ「くっ…」

カロル「証明って?」

近衛兵10「お前が我々に逆らわない証明だよ」

近衛兵11「たとえば…そうだな?そこのお前?」

シープ「」ビクッ

近衛兵11「そのガキを殴ってみろ!」

シープ「で、できないよ!」

近衛兵10「じゃあ信用しねぇ?ひゃひゃひゃ!」ゲラゲラ

ヒメ「…おい?いい加減に……」

カロル「いいよ?」

ヒメ「え?」

カロル「シープくん、ボクをぶって?」

シープ「え?や、やだよ?」

カロル「へいきだから、ね?」ウインク

シープ「うぅ〜」プルブル

カロル「頑張って!」

シープ「う、うりゃー!」バシンッ

カロル「……!」ヒリヒリ

シープ「ご、ごめん!」アタフタ

カロル「ううん?気にしないで?」ニコッ
697: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:49:55 ID:tCV0j5N4Sw
ヒメ「ほら、やったぞ?気は済んだか?」

近衛兵11「まだ足りませんよ?全然本気で叩いてませんしね?」ニヤニヤ

近衛兵10「おい?今度はお前だ!」

バンパ「はぁ?」イラッ

近衛兵10「そいつの指の爪を一本ずつ剥がせ?それが出来たら信用してやる?」

近衛兵11「あぁ、さっきのショーでやってたやつか?」

バンパ「……!?俺にヘマトと同じ事しろって言ってんのか!?」

近衛兵10「いいからやれよ?腐れホビットの分際でもったいぶんじゃねー!」

ヒメ「団長、そいつらを切り捨てろ」

団長「その言葉を待っておりました」ヒョイッ

近衛兵10「ひえっ」

近衛兵11「お、おぉう?俺たちはみんなの為にこいつらが信用できるか試して……!」

カロル「いいよ!」

全員「えっ」ザワッ
698: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:51:38 ID:reOEUJ6NnU
カロル「はい?ボクの爪を剥がして?」スッ

バンパ「できるか!?」

ヒメ「やめろ?こいつらは切り捨てるから」

カロル「…せっかく戦わなくていいのに命を捨てることないよ?」

バンパ「はぁ?こいつらのどこに救いようがあんだ!」

カロル「ホントに信じられないのかも?だってさっきまで戦ってたんだよ?」

バンパ「だ、だからってこんな奴らに従ってたまるか!」

カロル「…いいじゃない。ボクを痛め付けるだけで信じてもらえるなら?」

バンパ「あのな!爪を剥がすってどんな事か知ってんのか?お前はヘマトにいたことがねぇから…」

カロル「じゃどんなことなのか教えて?はいっ!」スッ

バンパ「…カロル。お前は同族の為にやってるんだろうけど、それは違うからな?」

カロル「……」

バンパ「和解するのと媚びへつらうのとじゃ全然意味が違うぞ?」

カロル「…今は和解出来なくてもきっかけになれたら、それでいいよ?」

バンパ「お前なぁ…」

カロル「ボクにできることなら、なんでもしたいんだ?おねがい?」

バンパ「くっ……」タジッ

カロル「大丈夫だよ?傷は治せるし、痛くてもバンパさんを嫌ったりしないから?」
699: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:57:01 ID:reOEUJ6NnU
カロル「えへへ」ニコニコ

バンパ「(なんでそんな屈託なく笑えんだよ…。最低なことさせられてんのに…)」

近衛兵11「さっさとやれ!」

ヒメ「やらなくていい!」

シープ「ば、バンパ…どうするの?」オロオロ

バンパ「やる訳ねーだろ?」

カロル「じゃあ自分でするね?」ググッ

バンパ「やめろっつの!」ガシッ

カロル「あ…で、でも…」パッ

バンパ「そんなことしても奴らには響かねーよ」

カロル「でも…」シュン

団長「ワシは認めるぞ!」

近衛兵1「私もだ!」

近衛兵10「は、はぁ?」

「おれも!」

黒装束1「認める」ウンウン

シープ「ぼくだって!」

オレモダ! ワタシモダ!

近衛兵11「な…アホか!?なんでこんな奴らに言いくるめられてんだ!」
700: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/30(月) 21:59:24 ID:tCV0j5N4Sw
ヒメ「…おい」

バンパ「なんだよ?」

ヒメ「もしかしたら僕ら人間にも信用できない奴が紛れてるかもな?」ニヤリ

バンパ「……!へへ!」

ヒメ「公平にお前らの要求も呑んでやるぞ?」

バンパ「そうだな?誰か代表して爪を剥がしてもらうか?」ニヤリ

近衛兵10&11「」ビクッ

団長「ほう?ならば貴様らにやってもらうか?」

近衛兵10「あ、いや…」

近衛兵11「し、信用します!信用させてください!」

団長「いぃや、信用してるようには見えん!互いの爪を剥がし合え!」

近衛兵10「で、できませんよ…」

団長「彼はやろうとしたのだぞ?」

近衛兵11「う……」

カロル「団長さん、もういいよ!責めないであげて?」

団長「…いいのか?」

カロル「うん。別に怒ってないもの。そんなに責めたらかわいそうだよ」

バンパ「お人好しにも程があるぞ!」

ヒメ「まぁ…こういう奴だしな?」ニコッ

近衛兵10「ありがとう!ありがとう!」ヘコヘコ

近衛兵11「すみませんでしたぁ!」ヘコヘコ

団長「…他者の苦痛を嘲笑う人間に兵は務まらん。王都に戻ったら、まず腐りきった根性を叩き直してくれる!」ギロッ

近衛兵10&11「ひえっ!」ブルブル
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名前:
sage:


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うpろだ
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