前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
62: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/8(日) 21:05:20 ID:lcY6txYbiA
大臣「ぶふぅ…!ようやく邪魔者が消えてくれた!」フンスッ
大臣「」ギョロッ
宣教師「」ビクッ
大臣「よくもわたくしに吐瀉物をぶちまけてくれたな…!」ピシャッ
宣教師「あ、あなたが…あんなことをするからでしょう…!」ブルブル
大臣「口答えするなぁっ!!」ブンッ
バチィンッ!
宣教師「あっ…!!ぐあっ!?」ヒリヒリ
カロル「!」
大臣「なんとか言ってみたらどうだ?まぁ口も聞けないだろうがなぁ〜?」ピシャッ
宣教師「はっぐ…うぁっ…」ビクンビクン
カロル「せ、宣教師さま…!」
大臣「ぐふふ…本来ならコレは馬を調教する為の鞭なのだぁ…。
貴様のように躾のなってない駄馬にはうってつけだろうが?」グシシ
カロル「やめてよ!宣教師さまがかわいそうだよ!」ジタバタ
大臣「なんだ、お前は?奴隷の…しかも劣悪種の分際で誰に口を利いてる?」
カロル「おじさまは誰なの…?なんで宣教師さまをいじめるの?」オロオロ
大臣「わたくしはお前の主人だよ?主人の顔も覚えられんとは…お前も躾がなっておらんな?」グリィッ
カロル「っ…!だ、だって…今初めて顔を見たから…!」ギュウッ
大臣「口答えするなと言ってるだろうが!」グリグリ
カロル「い、痛いよ…やめて…!」ギュウッ
大臣「踏まれたくなかったら黙って見てるんだな?次に生意気な口を利いたら顔面を踏み潰してやる」グリグリ
カロル「うぅ…うあぁ…!」ググッ
宣教師「やめ…なさい」
大臣「んぅ〜?」ジロッ
63: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/8(日) 21:08:21 ID:VfeFjrjJI6
宣教師「っ…その子は…関係ないでしょう。あなたの服を…汚したのは私です!」
大臣「……」
カロル「宣教師さま…」
大臣「ふん!正義感が強いですなぁ?薄汚いホビットの為に体を張ると?」
宣教師「薄汚いのはあなたです…!」
大臣「…ぐふふ!そういえば先ほどからホビットがあなたを宣教師と呼んでいますが…お知り合いですかなぁ〜?」ニタァァ
宣教師「……!ち、ちが…」
大臣「どうなんだ?」グリィッ
カロル「あぐっ!…ぼ、ボクは宣教師さまのともだち…です」ググッ
大臣「だ、そうですがぁ〜?」ニヤニヤ
宣教師「でまかせです!私はそんな子、知りません!!」
大臣「往生際の悪い…?」
カロル「お、お願い…!ボクのともだちをいじめないで…ください!」
大臣「いいでしょぉ〜…?ならばお前をいたぶる事にしますよ」ニヤニヤ
カロル「へ…?」ゾクッ
宣教師「やめなさい!知らないと言ってるでしょう!」
大臣「今夜はいつもと違った趣向で楽しみましょうか…。
良かったですなぁ?あなたの代わりが見つかって…?」ニヤニヤ
宣教師「……!わ…分かりました!私の体を使ってください!
もう抵抗なんてしません…!あなたの…望む通りにします…だから!」ギッギッ
大臣「いぃぃいえ、結構ですよぉぉ?嫌がる女性を手籠めにするなど紳士のやる事じゃないですからねぇぇぇ?」グシシ
宣教師「お願い致します!させてください!喜んで…あなたに抱かれます!私を抱いてください!」
カロル「宣教師さま…なにを…言ってるの?」ブルブル
大臣「うわははははは!!必死ですなぁ!?」ゲラゲラ
宣教師「(カロルくん…。内心軽蔑なさってるでしょうね…。
…これもキミの為なんです…。せめて…眼を綴じていてください)」
64: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/8(日) 21:10:55 ID:VfeFjrjJI6
大臣「ぐふふ…!お嬢さんの熱意は十分伝わりましたぞ?」
宣教師「…あ、ありがとうございます。どうぞ、いつものように寝室へお連れください。
大臣の為…わ、私に…出来る限りの奉仕をさせていただきたいのです」フルフル
カロル「ダメ…だよ。宣教師さま…ウソついてるもの」
宣教師「……!ウソなんかつきません!見知らぬホビットは黙っていなさい!」
カロル「ボクなんかに気を遣わないで…?そんなの…絶対にダメだよ」
大臣「」ヒュンッ
バチィンッ!
カロル「っ!?」ビクンッ
大臣「おぉ!体が跳ね上がりましたな!?」
カロル「あっ…ぎゃあぁぁぁあぁぁああ!!」ヒリヒリ
宣教師「なにをしているんですか!?あなたは私がお相手すると……」
大臣「ご冗談でしょ?わたくしはねぇ、お嬢さん?初モノにしか興味がないんですよ!」
宣教師「は…!?」
大臣「破瓜の鮮血滴る密な口を…無理やり押し広げるのがたまらないんですよねぇ!」
宣教師「あなた…気は確かですか…?」
大臣「つぅまぁりぃ?処女でないあなたに価値などありまっせ〜ん!」ブー
宣教師「……!」ギリッ
カロル「いたいっ…いたいよぉ…!えぐっ…おかあさまぁ」ブワッ
宣教師「(カロルくん…!)」
大臣「しかぁし…このガキをいたぶればいたぶる程、お嬢さんの表情に魅力が産まれますぞぉ〜?
さっきからあなた…いぃい顔をしている?とてもいい!いい!イイネ!」バッチグー
65: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/8(日) 21:13:18 ID:lcY6txYbiA
宣教師「(このままではカロルくんの身に害が及んでしまう…!
こうなったら挑発して矛先をこちらへ向けましょう)」
宣教師「下衆!女の敵!腐れ外道!ブタ悪魔!
抵抗出来ない女、子供相手に鞭を振るうなど恥を知りなさい!」
大臣「な、なんだとぉ〜?」ブヒィ
宣教師「(あと一押し…!はしたないですが…やるしかありませんね!)」
宣教師「」ペッ
大臣「」ビチャッ
宣教師「(唾を吐きかけられたとあっては…そのつまらない自尊心も粉々に砕ける筈…)」
大臣「ふん…」ゴシゴシ
大臣「」ベロォン ピチャピチャ
宣教師「えっ」
大臣「うーん、マイルドなお味…ごちそうさまでした?」ニンマリ
宣教師「」ゾゾゾゾゾッ
大臣「お嬢さんの唾液、大変美味しゅうございましたぞ?おかわりはありますかな?」
宣教師「きゃあぁぁぁ!?」ゾワァッ
66: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/8(日) 21:16:26 ID:VfeFjrjJI6
大臣「あぁっと…おかわりを頂く前に。うらっ!」ヒュンッ
バチィンッ!
カロル「うあぁぁぁぁああぁあ!!!」プシュッ
大臣「先の暴言…あと三発は必要ですな!」ヒュンッ
バチィンッ
カロル「ぎゃああああ゛あ゛あ゛」ビクンビクン
バチィンッ! バチィンッ!
カロル「あっ…がっ…!うぁっ!ぐっ!」グリンッ
カロル「」ブクブク
宣教師「カロルくん!!」ギッギッ
大臣「わっはっは!泡吹いて気絶しおった!」ゲラゲラ
宣教師「(私…なんてことを…)」
宣教師「(よく考えもしないで…)」グワングワン
67: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/8(日) 21:18:50 ID:VfeFjrjJI6
宣教師「カロル…くん…」
大臣「ぐふふ!素晴らしい!素晴らしい!その顔!失意のどん底に落とされた女の顔はまさしく美しい!」
大臣「(その顔こそを剥製にしたい…!飾りたい!眺めたい!)」
宣教師「なぜ…こんな非道なマネを顔色一つ変えずに出来るんですか…!」ワナワナ
大臣「んぅ〜!答えは単純明快!楽しいからなんですねぇ〜!」
宣教師「っ…!」グッ
大臣「お?何か言いかけました?言わなくてよろしいので?」
宣教師「」ブンブン
大臣「でしょう?そうでしょ?言えませんよねぇ?
言えば全部このガキに降りかかりますもんねぇ?」
宣教師「(卑怯モノ…!人でなし…!うぅ……)」
大臣「疲れましたなぁ。肩が凝ってしょうがない」コキッコキッ
大臣「続きはまた明日の夜にでも?ねぇ?」
宣教師「……!」ワナワナ
大臣「おやすみなさい。今夜は子守唄はいらないそうですぞ?」ニヤニヤ
カロル「」ピクピク
宣教師「……」プイッ
ガチャッ バタンッ
68: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/8(日) 21:27:32 ID:lcY6txYbiA
>>53
ありがとうございます!
おかげさまで1年近くかかりましたが、なんとか2スレ目に突入出来ました!
読んでくださって本当にありがとうございます!
最近、自分の中で宣教師がどんどん汚れてる気がします。当初は清廉潔白なキャラにする筈だったのですが…。
このまま書いてる内に堕ちるところまで堕ちてしまいそうな…SSって難しいです。
独り言失礼しました!
支援ありがとうございました!
69: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/11(水) 20:24:35 ID:HcAMq1STVw
〜〜〜朝〜〜〜
―――城下町(教会)―――
シスター「おはようございます!神官!」
アントリア「ふむ。おはよう…」ヨロヨロ
シスター「…今、帰ったのですか?」
アントリア「まぁね…。知人と会っていたのだ」
シスター「いけませんよ?もうお歳なんですから体を労りませんと…」
アントリア「確かに君の言う通りだ…。いらぬ心配をかけたね」
シスター「いえいえ、お部屋に戻ってゆっくりとお休みになってください」
司祭「そうはいかんな?」ガチャッ
シスター「へ?」
アントリア「ノワールか…。すまないが下がってもらってもいいかな?」
シスター「え…あ、はい」オロオロ
70: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/11(水) 20:26:31 ID:TlNdAXGC3g
司祭「朝まで帰らんとは…お前さんもなかなか遊び人になったもんじゃな?」
アントリア「勘繰りはよしてくれないか?これでも清廉潔白で通しているのでね」
司祭「ふん…よう言うわ。それで…小僧はおったのか?」
アントリア「いたよ。宣教師君と共に無造作に放り込まれていた」
司祭「宣教師もか!?」
アントリア「別におかしい事はない。彼女は大臣に飼われているのだから。
それとも…一度は愛した娘の様子が気になるかね?」
司祭「……知らんな」
アントリア「ははは!君は変わらず頑固者だ」
司祭「やかましい!それより小僧は取り返せそうなのか!?」
アントリア「果報は寝て待て」
司祭「なにぃ!?」
アントリア「少し眠らせてもらうよ。懺悔は君が受けてくれたまえ」スタスタ
司祭「な…な…」ワナワナ
司祭「バカにしとるのかぁ!?」ジダンダ
71: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/11(水) 20:28:08 ID:TlNdAXGC3g
―――教会(客室)―――
ダガ「おら、肉だぞ。食え?」ポイッ
マルク「」ガツガツ
アリアス「借りてる部屋で何してるのよ?非常識ね…」
母「」スヤスヤ
ダガ「ふ…かてぇこと言うな。そういやそいつはまだ目を覚まさねぇのか?」
アリアス「えぇ。薬を飲ませておいたから容態は安定したようだけれど、起きる気配は一向にないわね」
ダガ「あぁ?薬なんかどうやって飲ませんだ?こいつ寝てんだろ?」
アリアス「方法なんていくらでもあるわ。今回は口移しを採用したけれど」
ダガ「く、く、口移しだぁ?お前がやったのか?」
アリアス「他に誰がいるの?」
ダガ「」ゴクリ
アリアス「…また鼻の下が伸びてる。いい加減にしてくれない?」
ダガ「ふ、ふざけんな!伸びてねぇよ!」
母「うぅん…ぼう…や……」スヤスヤ
マルク「わんっ!」ペロリ
72: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/11(水) 20:29:32 ID:HcAMq1STVw
―――大臣の屋敷(物置小屋)―――
宣教師「う…うぅ…」パチッ
宣教師「(体が重い…。この体勢では眠るというより気絶に近い感覚がしますね)」
カロル「あ…おはよう。宣教師さま」
宣教師「おはようございます。カロルくん。傷の具合はいかがですか…?」
カロル「大丈夫!すっかり治ったよ!」
宣教師「(そういえば彼は自然治癒力が異常に高いんでしたね。それも癒しの力に関連しているのでしょうか…?)」
カロル「昨日はいろいろあってあんまりお話できなかったですね?」
宣教師「…そうですね。まさかキミだったとは思いもしませんでしたから」
カロル「えへへ。ボクね?声を聞いてすぐに宣教師さまって分かったよ?」
宣教師「なるほど…では暴れていたのは拘束を解いてほしかった訳ではなかったのですね」
カロル「うん。嬉しくって、つい」
宣教師「…私を恨んではいないのですか?」
カロル「え?どうして?」キョトン
宣教師「だって…司祭様に言われてキミの腕を縛ったのは私ですし、罵声も浴びせかけましたし…」
カロル「うん。そうだったね!」ニコッ
宣教師「う…すみません」
カロル「謝らなくていいよ。だってボク分かってたから!」
宣教師「分かってたって…何をですか?」
カロル「宣教師さまがホントはそんな風に思ってないってこと!」
宣教師「そ、そうですか?キミに力があると分かった時、私は確かにキミを疑っていましたよ?」
カロル「…でも嫌いにはならなかったでしょ?」
宣教師「……!」
カロル「だからいいの!ボク、宣教師さまが大好きだから!」ニコニコ
宣教師「」キュンッ
宣教師「(あ、きました。久しぶりにやられました)」ドキドキ
73: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/11(水) 20:31:54 ID:HcAMq1STVw
カロル「」ニコニコ
宣教師「こんな状況でよく笑っていられますね…」
カロル「宣教師さまといるとちょっと前に戻った気がして。ふふ」ニコニコ
宣教師「(少し前まではかなり前向きな歩みだったのですが、なぜこうなってしまったのか…)」
カロル「また宣教師さまの焼いたビスケット食べたいな」
宣教師「出来ることなら私も焼いてあげたいですよ。あの微笑ましい日が懐かしいです」
カロル「うん。ボクも!」
宣教師「…ルーボイくんとパッチくんと三人で取り合ってくれましたよね。
今思えば…本当に幸せでした。あんな日が続けばと…ただそう願っただけなのに」シュン
カロル「うん…」
宣教師「そういえばルーボイくんとパッチくん…元気にしているでしょうか。会いたいですね?」
カロル「……」シュン
宣教師「おや?どうしました?」
カロル「宣教師さま。話したいことがあるんだ…」
宣教師「? 私でよければ聞きますが」
カロル「実はね……」マゴマゴ
74: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/11(水) 20:34:16 ID:HcAMq1STVw
宣教師「そうですか…。二人とも村も家族も失って途方に暮れていると」
カロル「…ボクが悪いんです。
ボクさえいなかったら旅人だって来なかったし、村に迷惑もかからなかったから」
宣教師「…それで二人に嫌われてしまった、という訳ですね」
カロル「今まで黙っててごめんなさい。宣教師さまに嫌われたくなくて…」
宣教師「嫌いになんてなりませんよ。キミは悪くないんですから」
カロル「でも…旅人はボクとお母さまを狙ってたんだ。だから村の人達を騙して…」
宣教師「…分かりませんね。それとキミがどう結び付くのでしょう?」
カロル「え?だ、だって旅人は…」
宣教師「そんなものはどう考えても騙した旅人が悪いですし、邪な目的だと分かっていて協力した村人が悪いに決まってるじゃないですか?」
カロル「…でもボクがいなかったら村は今も…」
宣教師「仮定の話をしても無意味です。
それを言うならホビットへの価値観が歪められていなければ、そもそも誰も傷付く事などなかったのですから」
カロル「でも…」
宣教師「でもじゃありません。いいですか?カロルくん?
無闇に自分を責めたところで結果が覆る事はないのです!」
カロル「……」
宣教師「たとえ周囲が間違った方向に進んだとしても、それはキミの責任ではありません!
なぜなら結果的に間違っていたとしても行き先を選ぶのは自分自身なのです!」
宣教師「自分で決めた道が崖道だったからといって、自分より平坦な道を選んだ者を恨むのは筋違い甚だしい!そうは思いませんか?」
カロル「は、はい」
宣教師「…ルーボイくんもパッチくんも仕方ありませんね。帰ったら私が説き伏せてあげなければ!」
75: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/11(水) 20:36:59 ID:TlNdAXGC3g
カロル「宣教師さまは…自分を責めたりしないの?」
宣教師「いえ、しますが?」
カロル「えぇっ!?言ってる事とやってる事が違うじゃない!」
宣教師「そういうものですよ。誰かにモノを教えるというのは」
カロル「む、難しいんだね…」
宣教師「えぇ。難しいです…。どうしても矛盾は産まれますし、必ずしも正しいとは限りません」
宣教師「ですが自分の求める理想に自信を持てなければ…教えなど授けられない」
宣教師「だからこそ求める理想を何度も言い聞かせるのです。自分にも…相手にも」
宣教師「そうする事で我々人間は理想を成し遂げるのですよ。
最初からなに不自由なく器用に出来るほど…賢い生き物ではありませんから」ニコッ
カロル「少しだけ…分かった気がする。あきらめない人間は…きっと誰よりも優しいんだよね?」
宣教師「ふふ…。そうですね。たとえ正しくても届くかどうかはまた別のお話です。
普通なら愛想を尽かして投げやりになってしまう…。
それでもなお、真摯に向き合える強さこそが優しさなのだと思います」
カロル「…うん。そうだよ!きっと!」
宣教師「ルーボイくんとパッチくんはまだ幼い…時に思いやりを欠いて誰かに矛を向ける事もあるでしょう。
それならば私は何度でも彼らに教えます。争いの無意味さを…憎しみの愚かさを…」
宣教師「…いずれまた三人で遊べる日が来るよう、私はキミの味方でいます」
カロル「……!」ニコッ
カロル「(宣教師さまは変わってない…。優しくて…かっこいい宣教師さまのままだ)」
カロル「よかった…。ボクの知らない所で変わってなくて」
宣教師「はい?」
カロル「ううん。なんでもないです!」ニコニコ
76: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/11(水) 20:40:52 ID:HcAMq1STVw
ガチャッ
執事「食事をお持ちしました」
宣教師「……!」キッ
カロル「わーい!ボクお腹ペコペコだったんだ!」
執事「では…こちらに置いておきます」トンッ
カロル「……?縄をほどいてくれないと食べられないよ?」キョトン
執事「ぷっ!」
カロル「(あれ…?おかしなこと言ったかな?)」
執事「ぶふっ!くくっ!ひいっひいっ!」プルプル
宣教師「カロルくん…。無駄ですよ」
カロル「へ?」
執事「ば、ば、バカか!貴様は!?」
カロル「ど、どうして?縛られたままじゃ食器も持てないじゃない?」オロオロ
執事「アッハッハ!手掴みでもおこがましい分際で食器ときたか!?」ゲラゲラ
執事「こんなバカな奴隷は初めてだ!ひいっひいっ!」プークスクス
カロル「(何がそんなにおかしいんだろ?)」
77: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/11(水) 20:42:32 ID:HcAMq1STVw
執事「お前ら奴隷ってのはなぁ…」ガシッ
カロル「っ…か、髪…引っ張っ」
執事「こうやって食うんだよぉ!!」グンッ
ガシャアッ!
カロル「あっぐ…な、なにす……」グリグリ
執事「オラァ!這いつくばって!犬みてぇに食うんだよ!」ガッガッ
カロル「ぎっ!たっ!あっう!」バンッ バシャンッ
執事「ほぉらぁ?うまいか?うまいよなぁ?」ニヤニヤ
カロル「……」ボロッ
執事「へっ…俺達はいつもわがままな主人にへいこら従ってんだ?
このぐらいの役得があったってバチは当たらねぇよな?」
カロル「ひ、ひどいよ…。ボクがおじさまに何をしたって言うの…?」
執事「分を弁えねぇから…だっ!」バンッ
ガシャアッ!
カロル「う……あ…」ピクピク
執事「…お前にも食わせてやろうか?」
宣教師「…結構です」
執事「へっ!これに懲りたら二度と生意気な口たたくんじゃねぇぞ?」ペッ
執事「」スタスタ
ガチャッ バタンッ
78: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/11(水) 20:46:48 ID:HcAMq1STVw
宣教師「…カロルくん!大丈夫ですか!?」ギッギッ
カロル「う、うん…。えへへ。血が出ちゃった」ボロッ
宣教師「すみません…。止めてあげられなくて…」
カロル「平気…宣教師さまは悪くないもの」ヨロッ
宣教師「(昨晩の記憶が蘇って…何も言えなかった。言ってしまったら余計に傷付けられるに決まってる、と)」
宣教師「私は…宣教師失格ですね」
カロル「そんなことない…」
宣教師「いいんです。宣教師とは自らの足で悩み苦しむ者に接し、救いを説く者…」
宣教師「しかし今の私にはそれが出来なかった…。
そして、多分…今晩も行われるであろう恐ろしい惨劇を前にしても…私は何も言えないでしょう」
カロル「それでもいい…。ボクは平気だよ?」
宣教師「…何を言ってるんです!昨晩の痛みを…忘れた訳ではないでしょう!?」
カロル「大丈夫…。大丈夫だから」ニコッ
宣教師「……」ズキンッ
カロル「自分を責めたらダメ!そうでしょ?」ニコニコ
宣教師「……」コクリ
カロル「ボクのことなら心配しないで?傷はすぐに治るもの」
カロル「ボク…弱いから泣いちゃうかもしれないけど、ふしぎと何も怖くないんだ」
宣教師「……?」
カロル「宣教師さまは変わらないでいてくれたから。ボクを嫌いにならないでいてくれたから」
カロル「それだけで…弱虫なボクでも…たくさん勇気が湧いてくるの。ふふ!」クスッ
宣教師「……!」
79: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/11(水) 20:50:05 ID:HcAMq1STVw
宣教師「(やはり私は宣教師失格です…)」
宣教師「(何度も過ちを繰り返し、何度心が揺らいでも……)」
宣教師「(最後はいつも彼に気付かされる…。救われるべき彼に…救うべき私が……)」
宣教師「(願わくは…彼こそに真の救いを授けたい…。幸せにしてあげたい…)」
カロル「宣教師さま?」
宣教師「カロルくん」
カロル「…なに?」
宣教師「キミに出会えて良かった。私はキミが大好きです」ニコッ
カロル「ホント?ボクも宣教師さま大好き!」パァァ
宣教師「!」キュンッ
宣教師「(ま、まさか即座にカウンターを喰らうとは…!)」ドキドキ
カロル「どうしたの?」キョトン
宣教師「い、いえ…なんでも」モジモジ
80: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:03:48 ID:Hp5XrjPulc
〜〜〜夜〜〜〜
宣教師「今は何時なんでしょうね」
カロル「うーん。外が見えないと分かんないです」
宣教師「…ですよね」
カロル「うん」
宣教師「……」
カロル「…お腹空いたなー」
宣教師「そうですね…」
カロル「…宣教師さま。どうしたの?」
宣教師「え…な、何がですか?」
カロル「震えてるから…どうしたのかなって…」
宣教師「あ…はは。言われてみれば…!ホントですね…」ブルブル
宣教師「まぁ…こんな状態ですし…」ブルブル
宣教師「疲れが出たのだと思います…」ブルブル
カロル「大丈夫?」
宣教師「…だ、大丈夫ですよ。ありがとうございます」ブルブル
81: ◆WEmWDvOgzo:2013/12/15(日) 22:05:13 ID:Hp5XrjPulc
宣教師「(ここに閉じ込められて何日も経ってますから、もう分かります)」
宣教師「(今は夜…そして大臣がもうすぐやってくる…)」
宣教師「(しかし彼を緊張させてはいけない…。大臣が来るまでは…せめて気を楽にしてもらわなければ…)」
宣教師「(そうでないと…あまりに不憫です)」グッ
カロル「……」
宣教師「そ、そういえばカロルくん…お母様は?」
カロル「」ピクッ
宣教師「?」
カロル「お母さまとは…会ってないです」
宣教師「へ?お母さまと一緒に連れてこられたのではないんですか?」
カロル「……」シュン
宣教師「(あ、あれ?もしかして私…まずい事を聞きましたかね)」オロオロ
カロル「アリアスさんが言ってたんだ?お母さまは宣教師さまといるって…」
宣教師「えっ」
カロル「」ジーッ
宣教師「…す、すみません。私もその…訳の分からない内に連れていかれたので…」
カロル「そう…だよね。やっぱり知らないんだ…」
宣教師「あ、でもですね!最後に会った時は……」
宣教師「」ハッ
カロル「会った時は…?」
宣教師「(い、言えない。体調を崩して気絶していたなんて…。看病したものの顔色は良くないままでしたし)」
カロル「教えて。最後に会った時はどうだったの?」
宣教師「う……」タジタジ
カロル「……」ジーッ
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