前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
601: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/15(日) 19:07:25 ID:RvsogzPv8w
ジュージュー
ギャアアアアアア
手下「お前らもこうなりたくなかったら裏切ろうとか考えるなよ?」
ティラーナ「」ウプッ
タワンテ「ヨクご覧なさい?アレが逃ゲタ仲間の末路デス?」
ティラーナ「もう…イヤだ…」
タワンテ「ワタシとの仕事をヤメマスか?アナタもああなりマスよ?」
ティラーナ「」ブンブンッ
タワンテ「デハ頑張らナイと?」
ティラーナ「……」シュン
タワンテ「…ソンナに悲しい顔をシナイデクダサイ?」
ティラーナ「悲しいんです…!」
タワンテ「……」
ティラーナ「残酷なこの世界に…悲しみ以外の感情が生まれないんです…!」ブワッ
タワンテ「オヤオヤ…」
602: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/15(日) 19:10:18 ID:RvsogzPv8w
タワンテ「入りますよ?」ガチャッ
ティラーナ「」ダラー
タワンテ「ティラーナ!?」ガバッ
タワンテ「い、今…血止めを…!」ビリィッ
ティラーナ「やめ…て」ボソッ
タワンテ「エ?」
ティラーナ「…死にたい…」ダラー
タワンテ「バカを言うんじゃアリマセン!死んだッテ何も解決シマセンヨ!」グルグル
ティラーナ「」ボーッ
タワンテ「」ギュッ
タワンテ「コレでヨシ!もう二度と手首ナンカ切ッテはナリマセンヨ?」ペシッ
ティラーナ「っ…なんで?」
タワンテ「ナンデも何も当然の事デショウ?」
ティラーナ「…同族は見捨てるのに…」ボソッ
タワンテ「……ソウデスね?ワタシはヒドイ男デスよ?」
ティラーナ「……」
タワンテ「でも…アナタは唯一、共に生きられる仲間ナノデス」
タワンテ「同胞を見捨て…人間に利用サレテ終える筈だった命を…アナタが照らしてくれた」
ティラーナ「……!」
タワンテ「ワタシにはアナタしかいないンデス…」
タワンテ「お願いデスから…これ以上、ワタシを孤独にシナイデクダサイ」
ティラーナ「…タワンテさん」
タワンテ「生きマショウよ?たとえ幸せにはなれなくても…支えがあれば生きてイケマス?」
ティラーナ「…分かりました。生きましょう…?二人で…?」
タワンテ「ハイ!」ニンマリ
………………
603: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/15(日) 19:16:30 ID:RvsogzPv8w
―――荷車―――
バンパ「結局付いてきやがった…」
ティラーナ「すまない…。恩に着る…」
カロル「大丈夫だよ?ボクたちも最初から舞台に行くつもりだったから?」
ラム「あっさり許して…君って一つも学習しないよね、ホント?」
バンパ「おい、向こうの状況はどうなってんだ?」
ティラーナ「た、たぶん…タワンテさんが拷問を受けてる…殺されてはいないはずだ…」ボソボソ
バンパ「ちっ!ボソボソ喋りやがって…タワンテなんかどうでもいいんだよ!向こうの戦力は?」
ティラーナ「や、約500の人間が…ショーを見てる…。ヘマトバザールは首領のウォルターと二人の手下だけだ」
バンパ「…500か。勝ち目ねぇな」
ラム「観客は相手しなくていい。ヘマトを潰すだけなら十分さ」
シープ「でも観客が襲ってきたらどーするの?」
ラム「…普通の人間なら、まず襲ってはこないよ。むしろ混乱してまともな判断が出来なくなるんじゃないかな?」
バンパ「観客って王国だろ?兵隊わんさかいるんじゃねぇか?」
カロル「そ、それに何万人も教団の人間が来てたよ?」
シープ「えー?やっぱりムリだよー?逃げようよ?」
ラム「ダメだよ!今、逃げても同じ事の繰り返しだ!せめてヘマトだけでも潰さなきゃ!」
カロル「で、でも…もし大人数で乱戦になったら癒しの力だけじゃ間に合わないよ?」
ザワザワ ザワザワ
ラム「作戦通りにやればなんとかなるよ」
コンコン コンコン
バンパ「…合図だ!?」
シープ「あ〜…着いちゃった…!」
ラム「みんな…!息を潜めて…!」
カロル「……!」パッ
ティラーナ「」ゴクッ
604: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 20:43:43 ID:/alaW15cT.
―――舞台―――
ザワザワ ザワザワ
手下2「大変だ!ウォルターさん!」ダダダッ
手下2「ティラーナがどこにもいねぇ!?」
ウォルター「クソがっ!?」
ワイワイガヤガヤ
手下2「あんまり客も待たせらんねぇし…いっそ中止にしませんか?」
ウォルター「……それしかねーやな。一応さっきのでオチは付いたしよ」
手下2「いや、オチってかアレは……ん?」
ウォルター「あぁ?どうした?」
手下2「…おぉ!間に合った!?」
ウォルター「なに…!」
ガタンゴトン ズルズル
605: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 20:45:40 ID:Qm.q8qFlDs
ウォルター「…おっせーじゃねぇか!」イライラ
黒装束1「すみません」
手下2「いいからさっさと開けろ!待たせてんだぞ!?」
黒装束1「はい」ガチャッ
黒装束2「」ガララッ
ウォルター「……!?」バッ ガシッ
手下2「えっ」グイッ
ビュンッ ビュンッ ビュンッ ビュンッ
ザクッ ザクッ ザクッ ザクッ
手下2「ばっ!?ばばばっ!?」ズンッズンッズンッズンッ
ウォルター「……」ポイッ
手下2「ひゅっ!ひゅっ!」ドサッ
ラム「奇襲に気付くなんて、さすがに勘がいいね?」クスッ
バンパ「仲間を盾にするなよ…。相変わらず最低のクソヤローだ!」スタッ
シープ「あれー?おじさん一人だけ?もう仲間はいないの?」キョロキョロ
ウォルター「やってくれたなぁ…!?」ブチブチッ
606: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 20:46:34 ID:/alaW15cT.
ゾロゾロ ゾロゾロ
ウォルター「…あ?」
ラム「お前らに捕まった120の同族、みんな解き放ってあげたんだ?」ニコッ
ウォルター「……」ギロッ
ラム「今までの恨みを全部ぶつけてやる…!」キッ
ウォルター「おーおー?怖い怖い?ヘマトバザールは壊滅、俺も殺されるかもなぁ?」
ウォルター「だが?」チラッ
ズラァァァァ
ウォルター「各国の軍隊が集まるこの日に…お前ら運が無さすぎるぜ?」ニヤリ
ラム「運なんて…最初から信じてない」
ウォルター「ほう?」
ラム「お前たち人間がいる時代に産まれた…それが僕らの不運だ!」
ウォルター「ハッハッハ…そりゃ気の毒になぁ?」ヘラヘラ
607: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 21:01:17 ID:Qm.q8qFlDs
―――客席最前列―――
大臣「んぅ〜?あれもショーの一環ですかなぁ?」
国王「そ、そうは思えん…」
政務官「…イカれた連中のすることだ。計算付くかもしれない。神官はどう思われる?」
アントリア「どう見てもホビットの反逆でしょう?」
政務官「……え?」
アントリア「過激なショーに慣れすぎて感覚が麻痺しているのは致し方ないが…さすがにこの状況は見極めた方がいい?」
大臣「な、なんですとぉ〜!?」ガタッ
国王「何ゆえホビットが!?」
アントリア「なんらかの手違いで大勢のホビットを逃がしてしまったのでは?」
政務官「れ、冷静に構えてる場合か!?」
アントリア「冷静さを欠いている場合でもないと思うがね?」
国王「くっ…そういえば…先ほどからおかしいとは思っていた…!なぜ気付けなんだ!?」ギリッ
大臣「わ、わたくしも頭がボーッとして…」クラッ
政務官「くそ!どうなってる!?」イライラ
アントリア「(…タイマの効能か。この面々を相手に仕込んでいたとは…彼も恐れ知らずだな)」
608: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 21:02:51 ID:Qm.q8qFlDs
アントリア「まだ他国の方々はピンときていない筈だ。事態が悪化する前に避難させたまえ?」
政務官「う、承った!」ダッ
アントリア「大臣は各部隊に知らせ、ホビットを制圧させなさい?」
大臣「お、お任せくだされ!」タップンタップン
国王「贅肉の遅足には任せておけん!余が直接指揮を執ってくれる!」ガタッ
アントリア「陛下は避難なさってください」ガッ
国王「なっ…!」
アントリア「失礼ながら…貴方には荷が重い?」
国王「〜〜〜!」ワナワナ
アントリア「さぁ行きましょう?最前列にいては間違いなく攻撃を受けてしまいます」
国王「余は…!余は…!」
アントリア「恥じる事はありません?貴方が役立たずなのは民も承知しております」スタスタ
国王「…ぶ、無礼者!」カッ
アントリア「死にたければ、そこに残っていたまえ?」ジロッ
国王「う…!」
アントリア「覚悟がないのなら、さっさと逃げてしまえ?」
国王「うぅ…!」スタスタ
アントリア「懸命だ?」スタスタ
609: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 21:04:07 ID:/alaW15cT.
妃「此度の劇は趣向を凝らしておいでですのね?見ていて飽きませんわ?血を吸うのはやりすぎでしたけど?」バッサバッサ
ヒメ「」ゲッソリ
団長「おいたわしや…!」ホロリ
政務官「申し上げます!皆様、即座に護衛を連れて避難していただきたい!」タタタッ
政務官「あれはショーの一環ではございません!ヘマトバザールの不手際により、脱走したホビットの暴走なのです!」
政務官「この場は王国軍、近衛兵団が対処に当たり、責任を持って決着を付けます!」
妃「え!?」
ヒメ「?」
団長「…なんだと!」ガタッ
政務官「この度は誠に申し訳ございません!後程、改めてお詫びさせていただきます!速やかに避難なさってください!」
ウワァァァァッ
ダダダダダダダダッ
妃「イヤァァァァ!?」ダッ
団長「き、妃様!」
団長「(我が子を置き去りに逃げるとは…非常識にも程がある!)」
610: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 21:06:12 ID:/alaW15cT.
団長「王子も安全な場所へ避難してください!」
ヒメ「…あ、あぁ」スクッ
大臣「コヒュー!コヒュー!こ、ここに…いましたか…!」ゼェゼェ
団長「だ、大臣!」
大臣「け、警備体制を解き…すぐさま…ホビットの制圧に向かいなさい!?」ゼェゼェ
団長「し、しかし王子がまだ…!」
大臣「王族なんていくらでも替えが利くんですよ!?それよりも国の名誉を優先なさい!?」プンスカ
ヒメ「……」
団長「き、聞き捨てならん!」イラッ
大臣「あのねぇ〜!?どういう事になってるか分かってます!?」
団長「は!?」
大臣「他国の信頼を今まさに失ってる真っ最中なんですよぉ!一刻も早く解決しなきゃどんどん問題が大きくなるんですよぉ!?」
団長「くっ…!?」
大臣「国家と王子、どちらを優先するべきか考えなさい!」
ヒメ「行け?逃げるだけなら一人で十分だ」
団長「…!」
ヒメ「大臣の言う通りだ。僕なんかより国を優先しろ!」
団長「か、かしこまり…ました!」ダッ
大臣「…わたくしも避難しなければ!さ、王子も?」
ヒメ「」ダッ
大臣「あ、ちょっどこへ…」
タタタッ……
大臣「あ〜あ…ま、いいでしょ。死んでも代わりはいますしね」タッタッ
611: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 21:09:25 ID:/alaW15cT.
―――舞台―――
バキッ ドカッ ガッ ビシッ
ドサッ バタッ ダァンッ!
バンパ「怯むな!怯んだらやられるぞ!」ヒュンッ
ウォルター「ちっ!」ガチィン
シープ「やあっ!」ビュッ
ウォルター「足でも舐めてろ!」ゲシッ
シープ「ぎゅっ!?」ゴスッ
ウォルター「(き、キリがねぇ…!いつまでももたねぇぞ…!)」タッ
ゾロゾロ ゾロゾロ
ウォルター「う…!囲まれてやがる!?」ピタッ
ラム「逃がさないよ?」バッ
ウォルター「しゃらくせぇ!」ビュッ
ラム「ぐあ…!今だっ…!」ズンッ
バンパ「おう!」ヒュッ
ウォルター「おっと!」サッ
バンパ「かわされたか…!」キッ
ラム「ぶふ…!」ゴフッ
「俺たちだっているぞ!」ビュッ
「死ね!」ヒュンッ
ウォルター「らぁ!?」シュバッ
ザシュッ スバッ
ドサッ ドサッ
バンパ「大丈夫か!?」
ウォルター「(全員を相手してたら無理だ…!一か八か…文字通り突破口を切り開くしかねぇわな?)」
ウォルター「(にしても王国の兵隊はなにしてんだ!?なんでさっさと動かねぇ!?)」
612: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 21:10:54 ID:/alaW15cT.
ギャーギャー ギャーギャー
死体「」
ティラーナ「た、タワンテ…さん?」フラッフラッ
ティラーナ「ど…して…」ガバッ
ティラーナ「こんな…こんな…おぞましい姿…!」ブワァッ
ティラーナ「…あなたの面影さえ…ない!」ボロボロ
ティラーナ「ごめんなさい…!」ギュッ
死体「」
兵士1「そこのホビット!速やかに舞台上から降りろ!」
兵士2「言う通りにしなければ攻撃を開始するぞ!」
ガヤガヤ
ティラーナ「うるさい…!」スクッ
兵士1「なんだと?状況を分かっていないのか?こちらは500の兵が…」
ティラーナ「うるさい!」バッ
兵士1「だ、壇上から降りたぞ!構えろ!」スラッ
兵士2「や、やる気か!」スラッ
ザシュッ ザシュッ
兵士1「あ…は……」バタッ
兵士2「は…早い…!」ガクッ
ティラーナ「私だって…ウォルターにナイフ術を叩き込まれた…!実戦だって重ねてる…!」
兵士2「ぐ…!くそっ…!」ググッ
ティラーナ「ナメるな…!」ダッ
ビシャアッ ギャアアアアアア
613: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 21:12:01 ID:Qm.q8qFlDs
ゾロゾロ ゾロゾロ
黒装束1「この人数じゃ壇上に上がれないな」
黒装束2「作戦通りに舞台上は任せて、こっちはやってくる兵隊を食い止めよう!」
オォォォオオォォォオ
ギャリィンッ ズバッ ザシュッ
兵士長「な、なんだ…!こいつら…!」ギギッ
ガキンッ ドスッ
兵士3「へ、兵士長!まずいです!まだ隊列が整っておりません!」ギンッ
兵士長「分かってる!ほとんどが役人を避難させる為に出払ってるんだ!」ビュッ
兵士4「うわっ!う、腕が…!」タラー
兵士3「つ、強くないか!?非力なホビットだろう!?」
兵士5「こ、こいつら実戦慣れしてるんだ…!」アワアワ
兵士長「黙れ!弱音を吐くな!我々とて訓練に訓練を重ね、国に選ばれた精鋭だ!」
兵士4「ぐはっ!」ブシュッ
兵士2「ぎゃんっ!?」ズバッ
兵士長「助勢はまだか!我々だけでは…」
兵士3「はっ!」ザシュッ
兵士5「くっ!」キンッ
兵士長「(く、くそ…くそ…!なぜホビットごときに押されるんだ…!)」
614: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 21:25:42 ID:/alaW15cT.
――――――
団長「実戦経験の差だな…」シゲシゲ
近衛兵1「は?」
団長「我々より先に制圧に向かった別の隊が明らかに押し任されておる」
近衛兵1「はっ!我々も直ちに助勢せねば!」
団長「いや、まだだ」
近衛兵1「え?」
団長「ワシら近衛は全員が揃うまで、この客席周囲に留まり、牽制する!」
近衛兵1「な、なぜ!そうしてる内に兵が倒されてしまいますぞ!?」
団長「見ろ?ホビット共の動きを?」
近衛兵1「は、はぁ」
団長「舞台上を中心として周辺を均等に囲み、主軸となる陣地を形成している?
奴らの背後には大樹が控えており、回り込みも不可能だ。
あれでは兵士たちも攻め場がなかろう?」
団長「…我々が見せた隙はでかい。既に奴らの術中に嵌まってしまった」
近衛兵1「し、しかし時間の問題です!日頃より戦闘訓練を受けている兵士たちがホビットに遅れを取るなどありえません!」
団長「いや、少なくとも向こうの隊では手に負えんだろう?」
近衛兵1「そ、そんな!?」
団長「細かい動きを見ていれば分かる…。ホビット勢は連携がしっかりしている上に余計な武具を身に付けていない分、特有の素早さが存分に活かされている。
そして何よりためらいがない…。死を恐れるどころか傷付いても進んで攻撃を仕掛けてくる…」
団長「対してこちら側は敵に先手を取られ、訳も分からずデタラメに突っ込む兵ばかりだ。
慣れない負傷に戸惑い、焦燥感と恐怖に支配されたまま…哀れにも突進を繰り返し返り討ちに遭っている」
団長「なんせ平和な時代だ…。実戦経験も無く、ただなんとなく剣を振ってきた兵では奴らの陣形は崩せんよ」
615: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 21:28:14 ID:/alaW15cT.
近衛兵1「じゃあどうするんです!?」
団長「慌てるな!」
近衛兵1「……!」
団長「…近衛は隊列を組み、奴らを覆うようにして突進する」
近衛兵1「それじゃ向こうの隊と同じ…」
団長「わかっとらんな?ホビットの作戦は大樹を背にして陣地を作り、ひたすら防衛することだ!」
近衛兵1「?」
団長「混乱した兵士たちは奴らの陣形に気付かず、てんでバラバラに攻めて無駄に兵力を消耗してるのだ!」
近衛兵1「は、はぁ」
団長「奴らは所詮がむしゃらに血を流すケダモノの群れ!数も戦闘力も我々に及ばぬ!」
近衛兵1「で、ですが…事実、劣勢に追い込まれて…」
団長「指揮官の未熟な判断に焦らされ、兵士たちの覚悟が定まっていないからだ!」
団長「冷静に対処し、人海戦術で削っていけば奴らに成す術はない!」
団長「防戦一方、背水の陣で挑むホビットに体力勝負を仕掛ければ…いずれ膝から崩れ落ちる!」
近衛兵1「な、なるほど!」
団長「その為にも部隊を一度集め、指揮する環境下に置かねばならん!
こちらに全近衛兵が集まった時、奴らの息の根を止める!」
近衛兵1「はっ!」
616: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/16(月) 21:32:22 ID:/alaW15cT.
―――平原―――
ドドドドドッ
ウワアアアアアア
ルーボイ「なんだ、あれ?」
ミシング「さぁ?すごい数の馬車が引き返してる?」
ナラ「」クタァ
ルーボイ「ナラー!もう休憩やめよー!俺、あっち気になる!」
ミシング「一緒に走ってた人はとっくに着いてるかもねー?」
ナラ「つ、つかれ…た…ヘトヘト…」クタァ
ルーボイ「ナーラー!?」ユサユサ
ナラ「うぅ…」
ミシング「ルーボイくん、先に行っちゃえば?あたしたちは待ってるから?」
ルーボイ「ちぇ!そうする!」タタタッ
ミシング「元気だなぁ。子供は風の子!」
ナラ「」スヤスヤ
ミシング「あらら?」
ナラ「」スヤスヤ
ミシング「…たまには日向ぼっこもありかなー?」ゴロンッ
ナラ「」クゥクゥ
ミシング「宣教師ったら…こんなかわいい子たちが寂しがってるのにどこで何してんのかしら?」
617: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:08:12 ID:AWtnRkelTY
―――舞台―――
ウォルター「」ゼェッゼェッ
ラム「舞台の広さが仇になったね?疲れてきたんじゃない?」トットッ
ウォルター「(ど、どうなってやがる。一点の群れを集中して切り破ったが…包囲網から全然抜けれねぇ)」チラチラ
ラム「みんな!絶対に円から出さないで!」バッバッ
ウォルター「(…それにあいつは間違いなく胸を刺された筈だ。血痕も生々しく残ってる…なのになぜ動ける?)」ハァッハァッ
バンパ「肩で息し始めたぞ!イケる!」
シープ「ふっふーん!」ランランラン
ウォルター「(お前もだ!顔面に蹴り入れてやったよな!なんで無傷でスキップしてる!?)」ギリィッ
「くらえっ!」ビュッ
「うわああ!」ブンッ
ウォルター「っ…!?」サッ スタッ
ウォルター「(…てか、なんで誰も倒れてねぇんだ?もう10匹は切り殺しただろ?)」
ウォルター「(訳わかんねぇ訳わかんねぇ訳わかんねぇ訳わかんねぇ訳わかんねぇ)」グワングワン
ラム「」クスッ
ウォルター「は?な…に笑ってんだ…?」ゼェッゼェッ
ラム「ふふ。される側になった気分はどう?」クスクス
ウォルター「され…る?」ゼェッゼェッ
ラム「そうさ?今まで何千のホビットを虐殺してきたお前が…ホビットに虐殺されるんだ?」クスクス
ウォルター「この俺が…?ホビットに…?」
ウォルター「……この俺が!ホビットにぃ!?」ブチィッ
618: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:10:48 ID:uhCX0v8puE
ウォルター「遊びは終わりだああああああああ!!?」ダッ
ザシュッ ブスッ グチュッ ズシャァッ
ギャアアアアアア
バンパ「…まだ動けんのかよ!?」アタフタ
シープ「は、はやくカロルお兄ちゃんに看せなきゃ!」ワタワタ
ラム「僕らが相手してる間に傷付いた仲間を運ぶんだ!」
セッセッ セッセッ
ウゥ〜 ウゥ〜
ウォルター「ハッハー!?そこかー!?」ダダダッ
ウワアアアア ザザッ
ラム「あ!道を空けるな!?」ダッ
バンパ「円から出られたら終わりだぞ!シープ!」
ウォルター「ギャハハハハハハ」ダダダッ
シープ「こ、こわ〜い!?」ピュー
バンパ「あーーー!?」
ラム「追え!もう一度囲むんだ!」タタタッ
619: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:11:54 ID:uhCX0v8puE
―――舞台裏のテント―――
カロル「はい!はい!はい!はい!」パシッ パシッ パシッ パシッ
フワッ フワッ フワッ フワッ
カロル「け、ケガしたらボクを触ってください!傷を癒しますから!」
ペタペタペタペタ
カロル「あ、ちょっ!まっ!く、くすぐったい!」ワチャワチャ
ズシャッ バシュッ ギャアアアアア
カロル「」ビクッ
バサッ カランカラン
ウォルター「そういうことか」
カロル「あ…!?」ギクッ
ウォルター「久しぶりだな?元気してたか?」ニタァァ
カロル「あ…は…はは?」ヘラッ
「やめろ!彼に触れるな!」ダッ
「ま、守るんだ!」ダッ
ウォルター「」ニヤリ
ザシュッ ザシュッ
ズシャァッ ズシャァッ
ウォルター「ナイフを使わせりゃ天下無敵だ?よく知ってるよなぁ?」クルクルッ パシッ
カロル「」タタタッ
ウォルター「お?倒れた仲間をどうすんだ?」
620: ◆WEmWDvOgzo:2014/6/17(火) 21:13:03 ID:uhCX0v8puE
フワッ フワッ
ムクリ ムクリ
ウォルター「おーおー?なんだ、そりゃ?とんだ裏技じゃねぇか?何したんだ?」ニヤニヤ
カロル「い、癒しの力…」ジト
ウォルター「はっ!本当にあったとはなぁ?道理で切っても切っても死なねぇ訳だ?」
カロル「…ボクがいる限り、誰も死なせないよ!」キッ
ウォルター「じゃあ俺もちょちょいと癒してもらおうか?マジで限界近いんだ?」ジリジリ
カロル「こ、来ないで…!」スッ
ラム「ダメだ!!」タタタッ
バンパ「よせ!せっかくの苦労が水の泡だ!?」
ウォルター「おっと?近寄んな!こいつを殺すぞ?」チャキッ
カロル「……!」ゴクッ
ラム「くっ!」グッ
シープ「ご、ごめん!ぼくが逃げたから…」
バンパ「まったくだ!なにやってんだよ!?」
ウォルター「早くしろ!俺を回復させんだ!?」ギラッ
カロル「…もうボクらにひどいことしない?」
ウォルター「うるせぇ!いいから回復させろ!」
カロル「約束してくれないならダメ?」
ウォルター「…分かった。二度としねぇ?誓ってもいい?」
カロル「いいよ。信じるから?」
ウォルター「ありがとよ?助けてやった仲だもんな?」
カロル「手、出して?」スッ
ウォルター「ほらよ」スッ
カロル「」パシッ
アァァァァァ
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