前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
427: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 22:42:22 ID:lkD43H9/S.
シスター「…宣教師さんは考えすぎです。
司祭様との間に何があったか分かりませんけど、なんでもかんでも疑惑に結び付けるのはどうかと思いますよ…?」プイッ
宣教師「……」
母「貴女の気持ちはよく分かったわ…。本当にごめんなさい」ペコリ
シスター「分かってくれたんなら…いいです」
宣教師「司祭様も……そうでしたよ」
シスター「え?」
母「……」
宣教師「あの方も孤児や貧しい家の出の修道子を区別しない人格者でした。
むしろ私達のようなみなしごをいじめるお金持ちの修道子を叱り付けてくださいましたよ」
シスター「だったら…」
宣教師「時に話は変わりますが…王国は王都周辺の土地にしか気を配らず、田舎の子供たちは勉学や文字の読み書きなど…まともな教育を受けられる環境を与えてはもらえません」
シスター「……?」
宣教師「税金の徴収と反政運動の取り締まり活動以外で田舎の民には目も向けなかった…」
宣教師「国に頼る事も出来ずに痩せていく土地の暮らしを嘆いた司祭様は私達の布教活動に土地の子供の教育と…怪我人や病人に対する治療を加えました」
宣教師「そのため布教者の資格を得るにあたり、幅広い知識と実践的な医術が必要不可欠となったのです。
覚えなければならない項目が増え、一時は外部からの志願者も来なくなり、付いていけずに教団を去っていく人間も少なくはありませんでした」
宣教師「それからしばらくして自然災害や不運な事故などによって家族を亡くした身寄りのない幼子たちを哀れに思われた司祭様は各地に孤児院を設けました。
身請け先が見つかった者は養子として引き取ってもらい、見つからなかった者は修道子として育てて将来的には外の世界でも生きていけるように取り計らったのです」
宣教師「やがてその子供たちが厳しい修道生活の果てに立派な布教者となった時、いくつもの貧しい土地が人並みの治療と教育を受けられるようになった…」
宣教師「そういった活動が実を結び、今では布教者を志す者も多くなりました。
優秀な孤児の台頭を妬んだ富裕層の見栄や衣食住に悩まされた家が食い扶持を減らす為に行かせた…という良くない噂も聞きますが」
宣教師「何はともあれ人々の間にあった差別意識は薄れ、貧しさに病める土地が救われてきたのは紛れもない事実です。
私も司祭様の信念や行動は素晴らしく称賛されるべきだと思っております」
シスター「そうです!やっぱり教団の教えは間違ってなんかいませんよ!」
宣教師「それでも私には一つだけ疑問があります」
シスター「え?」
428: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 22:46:42 ID:DHWdN/RtSU
宣教師「なぜ、そこまで広く目を向ける視野と勇敢な行動力を併せ持ち、素晴らしい人格まで備えておきながら…ホビットを追いやるのでしょうか」
シスター「…マリーさんには申し訳ないけど、罪深き種族ですから当然です!」
母「……」
宣教師「ではこうしましょう。たとえばホビットが罪深き種族だとして…その理由はなんですか?」
シスター「? それは癒しの力を盗んだから…じゃないんですか?
現にマリーさんの息子さんだって癒しの力が使えるって…」
宣教師「そこまで知っているのなら、アントリア神官と司祭様が来月の巡礼に行く目的もご存知でしょうか?」
シスター「それは…新しい聖地で主へ祈りを捧げるから…」
宣教師「なにも…聞かされていないんですね」
母「みたいね…。きっと教えない方が彼女にはいいと思いますよ?」
シスター「な、なんです?気になるじゃないですか!」
宣教師「いえ…失礼しました。非礼をお詫び致します」ペコリ
母「……」ペコリ
シスター「え…べ、別に構いませんけど…?」
宣教師「…向こうに迷い子がいますよ?」
シスター「え?ほ、ほんとですか?行かなきゃ!」ダッ
宣教師「……」
母「…シスターさんにまで隠してたなんて」
宣教師「話しても信じてはもらえないでしょうね。アントリア神官自身が伝承の存在を否定したことなど…」
母「優しくて暖かい人間だと思ったけど…真意は別にあるのかしら?」
宣教師「分かりません…。ですがもう…後戻りはできないですよ」
母「ふふ。いいわ?それなら目一杯、今を楽しみましょ?」ニコッ
宣教師「そうですね…。解決しない悩みに費やす時間がもったいないです」
429: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 22:48:34 ID:DHWdN/RtSU
―――城下町(市場)―――
カロル「ねぇ、マルク。知ってる?」スタスタ
マルク「くーん?」キョロキョロ
カロル「今日はね?ゴミを一個拾ったら今までした悪いことが一つなしになる日なんだって?」
マルク「」クンクン
カロル「悪いことしなかったらいいのにね?マルクもそう思わない?」
マルク「あんっ!」パクッ
カロル「え?見つけちゃったの?」
マルク「あふー!」シッポフリフリ
カロル「ず、ずるい!お話してたじゃない?」
マルク「」タタタッ
カロル「あ、待ってよ!ボクまだ見つけてないんだから!」
タタタッ……
カロル「……いいもん。ボクの方がたくさん拾うから!」
430: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 22:49:46 ID:DHWdN/RtSU
〜〜〜夕方〜〜〜
―――城下町(広場)―――
カロル「」ションボリ
母「落ち込まないの?坊やも頑張ったんでしょ?」ポンポン
マルク「はっ!はっ!」ピョンピョン
宣教師「マルクくんは嗅覚が鋭いですからね。きっと匂いを辿って集めてきたんでしょう」
カロル「ボクの篭、空っぽだもん…」イジイジ
母「そんなことないわ?ほら!4つも入ってる!
空いた軽食の容器にカビの生えた食べかけのパン!雨に打たれたんでしょうね、字が滲んで読めない本まであるわ?」スッカスカ
宣教師「本なんて特になかなか落ちてないですよね!珍しいので高得点になりますよ、これは!」
カロル「…そうかな」
母&宣教師「そう(よ!/ですよ!)」
カロル「えへへ…ちょっぴり自信出たかも?」テレテレ
母「そうそう。前向きに考えなきゃ坊やらしくないわ?」ニコニコ
宣教師「(それにしても…マルクくんはこれらのゴミをどうやって集めたんでしょう?)」ドッサリ
マルク「くぅん?」
宣教師「(球体のおもちゃにブーメラン、円盤状の物体など投げて遊ぶ物ばかり…やはり犬ならではの趣味なんですかね?)」
マルク「?」
宣教師「ふふ。よく集めましたね。篭いっぱいですよ?」ニコッ
マルク「あんっ!」エッヘン
431: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 22:51:20 ID:DHWdN/RtSU
シスター「はーい!集めたゴミはこちらでお預かりします!
皆さん、篭を係の者に渡してくださーい!」
ワイワイガヤガヤ
信者1「毎年、この時が一番大変ですよね」ガサゴソ
信者2「まあな!」ガサゴソ
信者3「はい、お預かりします。次の方どうぞ」
信者4「そーれ!またどっさりきたぞ!?」ボスッ
信者1「うおー!すげーな!」
信者2「一個一個数えて数を記入しなきゃだ!この間隔で来られちゃ間に合わんぜ?」ガサゴソ
シスター「でしたら口じゃなくて手を動かしましょう!」ビシッ
信者1「し、シスター!?」
シスター「私も手伝いますから!みんなで力を合わせれば間に合います!」ガサゴソ
信者2「素手じゃ汚いから手袋しなよ!」
シスター「手の汚れより、皆さんの1日と引き換えに集められたゴミを数えて少しでも早く結果をお知らせする方が大事ですよ!」ガサゴソ
信者5「おーい!こっちにも持ってこい!手ぇ空いてるの集めて数えとくから!」
シスター「ありがとうございまーす!」
信者1「お、俺たちも負けてらんねーな!」ガサゴソ
信者2「おう!」ガサゴソ
432: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 22:57:04 ID:lkD43H9/S.
アントリア「」スタスタ
司祭「おぉ!アントリアか!今までどこにおったのじゃ?」
アントリア「巡回してただけさ。ところで無事に終わったのかな?」
司祭「うむ。あとは誰がより多くゴミを拾ったか集計を取るだけじゃな。民衆も広場に集まっておる」
アントリア「そうか…。今年も町全体が活気立ってくれたようで何よりだね」
司祭「しかしお前さん、王都で毎年こんなことまでしとったのか?
辺鄙な田舎にいたわしはちっとも知らんかったぞ?」
アントリア「君が癒しの力を手に入れるまでは夢など諦めていたからね。
それならせめて教団としてやるべき事をしようと思ったまでだよ」
司祭「それが贖罪のゴミ拾いか?発想が読めんのう?」
アントリア「人は無自覚になんらかの悪事を働いていて…誰しも心当たりがあるものだよ。
その証拠に一つのゴミにつき、一つの贖罪という名目は民衆にウケているようだ?」
司祭「ほっほっほ!昔からそうじゃったのう?
お前はなんでもそつなく器用にこなし、わしはいつも遅れを取っておったもんじゃ」
アントリア「だが結果的に言えば大事を成し遂げるのは君で…僕はいつも影が薄かった」
司祭「成功においても数より質という訳じゃな!」
アントリア「…君が羨ましかったよ」
司祭「む?」
アントリア「最初は僕の屋敷に拾われた使用人だった君が…いつの間にか僕の背を越して、僕より教育を受けられなかった君が僕よりも駆け上がっていった」
司祭「よさぬか?わしとお前の仲でそんな話…」
アントリア「だが…君を憎らしく思ったり疎んじたことはないよ。
むしろ同じ屋敷で育った君が誇りだったのだ」
司祭「…な、なんじゃ!気色の悪い!」
アントリア「そして最後の最後で共に夢を叶えられる機会に巡り会えた。これほどに胸躍ることはないだろう」
司祭「ふん…わしもじゃよ」ニコッ
アントリア「……」
433: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 22:59:14 ID:DHWdN/RtSU
町長「大変長らくお待たせしました!ただいま集計を終えましたので発表に移りたいと思います!」
ワァーワァー! ワァーワァー!
町長「今年の優勝者は……」
ドキドキ ドキドキ
カロル「誰なのかな!?」ワクワク
母「坊やかもしれないわよ?」
宣教師「(それはないと思いますが…)」
マルク「はっ!はっ!」シッポフリフリ
カロル「マルクなら優勝できるかも!」
母「そうね。篭いっぱいに入ってるもの!」
宣教師「私達も地面を掃いて回りましたから可能性はありますよ!」
町長「…………」
町長「ダガさん!アリアスさん!同時優勝おめでとうございます!」
キャァーキャァー!
カロル「へ?」キョトン
母「」ズルッ
宣教師「」バタッ
マルク「ぐるるるぅ…!」フシューフシュー
434: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 23:00:56 ID:DHWdN/RtSU
町長「おめでとうございます!景品の金の箒を差し上げます!」
アリアス「…いる?」
ダガ「…いらねぇよ」
町長「しかしこれだけのゴミをよく集められましたね?篭3つ分なんて普通じゃ考えられませんよ!」
アリアス「ま、まぁ…」
ダガ「(司祭様にお叱りくらって1週間前から町のゴミ拾いさせられてたなんて言えねぇよ…)」
アリアス「(集めたゴミを回収する日って聞いたから…癒しの力を見張るついでに渡してみたら…)」
町長「ともかく!今年の優勝者はアリアスさん!ダガさんのお二人に決まりました!
参加してくださった町の皆さん、外から訪れた方々もありがとうございました!」
パチパチ パチパチ
カロル「おめでとー!」パチパチ
母「そういえば…あの二人、掃除させられてたんでしたっけ?」
宣教師「…だから不自然なゴミが多かったんですね。
町がキレイ過ぎて危機感を持った親切な人達がゴミを捨てて回ったんでしょう」
カロル「楽しかったね!」
マルク「あんっ!」
435: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/11(日) 23:03:35 ID:DHWdN/RtSU
〜〜〜夜〜〜〜
―――城下町(教会)―――
司祭「教団の人間が優勝するとは何事じゃあっ!?」ガミガミ
アリアス「も、申し訳ありません…」
ダガ「くっ…」
司祭「ああいう時には教団以外の人間に花を持たせねば八百長と疑われかねんじゃろうが!?」
アリアス「おっしゃる通り…返す言葉もありません」
ダガ「(…町の掃除して反省しろって言われたからやってたんじゃねぇか…!)」ググッ
カロル「…なんで司祭さま怒ってるの?」ヒソヒソ
宣教師「大人の事情です」
母「坊やはまだ知らなくていいのよ?」
カロル「…マルク。分かる?」
マルク「」ブンブン
カロル「ボクも…。大人って難しいね?」
マルク「」ウンウン
436: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 22:54:28 ID:zswvbVqyF6
〜〜〜2日後〜〜〜
―――教会(懺悔室)―――
アントリア「これは…?」ピラッ
町娘「ウフフ!どうです?キレイに描けてません!?」
アントリア「…驚いたな。まるで紙の中に君がそのまま入り込んでいるようだ…?」
町娘「びっくりするでしょー?すごいでしょ?」
アントリア「あぁ、今にも動き出すんじゃないかと思うよ。どこの画家に描かせたのだね?」
町娘「画家じゃないですよー!表にいる修道子の子が描いてくれたんですー?」
アントリア「修道子…?」
町娘「あの子すごいですねー?どこの子なんですか?」
アントリア「……ふむ」
町娘「神官?」
アントリア「いや、なんでもないよ…。告白したい旨は?」
町娘「告白?」
アントリア「ここは懺悔室なのだがね?」
町娘「えぇ…と。忘れちゃいましたーなんて?」テヘッ
アントリア「ふむ、悩みが晴れたのか。それはよかった?」
町娘「迷惑…でした?」
アントリア「いや、悩みばかり聞いていると疲れるものだよ。とても微笑ましい?」ニコッ
町娘「ウフフ!やっぱり神官って優しい!」ニコニコ
437: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 22:55:35 ID:zswvbVqyF6
―――城下町(教会の前)―――
ワイワイガヤガヤ
「次あたしね!」
「僕が先だよ?」
「うんにゃ!わっちどすえ?」
「おいどんでごわす!」
「あたしゃっさ!」
ギュウギュウ ギュウギュウ
宣教師「はい、押さないでくださいね!順番ですよ!?」
若者「かっこよく頼むぜ!」キリッ
カロル「はーい!」キュッキュッ
母「お絵描きしてただけなのに…いつの間にか行列ができちゃったわねぇ?」
438: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 22:56:33 ID:/pUKsmKd4s
〜〜〜数時間前〜〜〜
カロル「」カキカキ
ガチャッ
宣教師「おや、外にいたんですか?」
カロル「あ、宣教師さま!おはようございます!」
宣教師「おはようございます」ニコッ
カロル「いい天気だね!お日さまが早起きしてくれたからポカポカして気持ちいいよ?」
宣教師「そうですね。雲も疎らでちょうどよい陽射しです」ニコニコ
カロル「後でマルクとお散歩するんだ!」カキカキ
宣教師「ふふ。きっと飛び上がって喜びますよ?今までお留守番ばかりで拗ねていましたからね?」
カロル「一緒に行きたかったんだけど建物の中に入れちゃダメって言われたから…」
宣教師「今日はどんなお散歩を考えているんですか?」
カロル「この前、王子さまと遊んだ公園に行って!ゴミ拾いの時にマルクが拾ってきたおもちゃでうーんと遊ぶの!」
宣教師「(あのゴミ、もらって帰ったんですね…)」
カロル「あとはお母さまがお弁当作ってくれるから噴水広場でお昼ごはん食べて…町を見て歩きながら帰ろうかなって?」
宣教師「(お、お母様のお手製弁当…マルクくんには申し訳ありませんが、ご冥福をお祈りします)」チーン
カロル「…どうかな?宣教師さまは喜んでくれると思う?」テレッ
宣教師「えぇ。とても楽しいお散歩になると思いますよ?」ニコニコ
439: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 22:58:43 ID:zswvbVqyF6
カロル「」キュッキュッ
宣教師「…それ、たしか」
カロル「アントリアさんが買ってくれた画材だよ?」カキカキ
宣教師「そういえばキミは絵が上手でしたね。外の風景を描いているのですか?」
カロル「うん…。まだ新しいペンに慣れないから練習しようと思って」カキカキ
宣教師「勉強熱心ですね?とても良いことですよ?」
カロル「……」ピタッ
宣教師「どうしました?」
カロル「…前にボクが描いた絵、神父さまが渡してくれたの覚えてる?」
宣教師「もちろん……」
宣教師「」ハッ
カロル「……貴族のおじさまがね?宣教師さまからもらったって言ってたんだ…?」
宣教師「あ、あれは…その……」
カロル「だからボク思ったんだ」
宣教師「う……」
カロル「もっと上手にならなくちゃって!」ギュッ
宣教師「えぇっ!?」ズルッ
カロル「…どうしたの?」キョトン
宣教師「え、いや…てっきり怒ってらっしゃるのかと…」
カロル「なんで怒るの?」
宣教師「だ、だって…せっかく頂いた絵を他人に渡してしまった訳ですし…」
カロル「しょうがないよ。ヘタッピだったんだもの」
宣教師「いえ…絵が嫌いだったのではなく…事情があって…」
カロル「次は気に入ってもらえるようにするね?練習してびっくりさせたいんだ!」
宣教師「…た、楽しみ…です」
宣教師「(うぅ…罪悪感が胸に染みます…。申し訳ございません…)」ガクッ
440: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:00:10 ID:zswvbVqyF6
町娘「お絵描き遊びですか?」
カロル「うん!」
宣教師「あ、教会にご用の方ですか?」
町娘「はい。神官に聞いてもらいたいことがあって」
宣教師「そうですか。どうぞお入りください」スッ
町娘「あ、いいんですよ。急ぎじゃないから?
それにしてもお絵描き遊びなんて懐かしい?
子供の頃はよく目に入ったものを描いたりしましたけど…」
宣教師「彼は絵が得意なんです。特に写生の腕前は画家顔負けですよ?」
町娘「そうなの?それなら一枚描いてもらいたいわ!」
カロル「いいよ!」
441: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:01:03 ID:zswvbVqyF6
カロル「はい!できたよ!」
町娘「ありが…きゃー!」
宣教師「え?」
町娘「え!え!絵…なの?これ?」
カロル「あぅ…」シュン
宣教師「あのー…彼が描いてるのを目の前でご覧になってましたよね?」
町娘「だってこれ…見てください!」バッ
宣教師「は、はぁ…?上手に描けていると思いますが?」
町娘「そ、そうですよ!こ、こんなに上手なんですよ!?びっくりしません!?」
宣教師「あ、そういうことでしたか」
カロル「……!」ギュゥゥッ
宣教師「カロルくん、嬉しい気持ちは分かりますが、そんなに強く抱えるとスケッチブックがクシャクシャになってしまいますよ?」
442: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:02:22 ID:/pUKsmKd4s
宣教師「喜んでもらえてよかったですね?」
カロル「うん!」ルンルン
ガチャッ
母「あら、宣教師様と遊んでたの?」
カロル「あ、お母さま!」
宣教師「おはようございます」
母「二人ともいないから…また何かあったかと思って心配したのよ?」
カロル「あはは…お母さまったら心配性なんだから?」
宣教師「教会を出たりしない限り、そうそう何も起こりませんよ?」
「やい、おまえ!」
母「……?」
カロル「……ボク?」
宣教師「…彼になにか用ですか?」
青年「見てたぞ?さっき町娘さんの絵を描いてたろ?」
カロル「は、はい」
青年「お、俺も描いてくれ…」
カロル「クスッ…いいですよ!」
青年「できれば…その…か、彼女と…一緒に並んでる感じで…」モジモジ
カロル「えっ」
宣教師「それって…あなたの隣に先ほどの彼女がいると仮定して描くということですか?」
青年「そ、そう…だ」モジモジ
母「…もしかしてあの子が好きなのかしら?」
宣教師「だとしたら愛情の種類が危険ですよ」
青年「どうだっていいだろ!?描けるのか、描けないのか!?」
カロル「い、いい…です、よ?」シドロモドロ
443: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:04:28 ID:zswvbVqyF6
青年「おー!お、俺の…俺の隣にあの子が…!?」ワナワナ
カロル「さっきのを思い出して描いてみたんだ?どう?」
青年「あ、ありがとう!ほんっとにありがとう!!」ガシッ ブンブン
カロル「う、うん!ど、どういたしまして?」ブンブン
青年「アァァ…笑顔だァァ…俺の女神がニッコリ…!」ウヘヘヘ
カロル「……!」ゾクッ
宣教師「危険ですね」
母「危険ねぇ」
青年「ひゃっほー!ヒューヒュー!ヒューイ!」ピューン
カロル「……」
宣教師「恋は盲目と言いますが…あそこまでいくとよくないですよね」
母「その内に想いが溢れて過ちを犯さないといいですけど…あら?」
カロル「……」ピキーン
宣教師「固まってますね…」
母「まぁ…この子も恋をしたら分かるでしょうね」
………………
444: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:05:44 ID:/pUKsmKd4s
宣教師「(とまぁそんなこんなで評判が広まって今に至る訳ですが)」
若者「ひょー!すげーな!俺そのものじゃん!?」マジマジ
カロル「気に入ってくれた?」ニコニコ
若者「おう!ありがとな!」
カロル「どういたしまして?」ニコニコ
宣教師「(彼も慣れてきたのか実物の三割増し程の絶妙なバランスで描いてますし)」
母「そろそろお散歩の時間じゃない?」
カロル「あっ!そうだった!」
「やっとあたしの番!」
宣教師「すみません。彼は用事があるので、ここまでとさせていただきます」
「えー!?」
ブーブー ブーブー
カロル「ごめんなさい!マルクが待ってるから行かなくちゃ!」
母「じゃあこれお弁当よ?張り切って作ったから残さず食べてちょうだいね?」つ【お弁当】
カロル「わーい!ありがとう!」パシッ
宣教師「はい!教会に用のない方は帰ってくださいね!解散です!」パッパッ
バラバラ バラバラ
445: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/16(金) 23:07:04 ID:zswvbVqyF6
カロル「いってきまーす!」フリフリ
マルク「わんっ!」シッポフリフリ
母「いってらっしゃーい!暗くなる前に帰ってきてね!」フリフリ
宣教師「迷子にならないように知らない道は避けてくださいね!」フリフリ
カロル「はーい!」タタタッ
マルク「」タタタッ
母「……あっ」
宣教師「……え?」
アリアス「」サササッ
ダガ「クソッ…!まだ飯も食ってねぇのによ…!」ダッ
母「見張られるのも窮屈ですけど見張る方も大変なのねぇ…」
宣教師「まぁそれがあの二人のお仕事ですから」
446: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/18(日) 21:41:33 ID:lG3iGIaQjY
〜〜〜夕方〜〜〜
―――教会―――
ガチャッ
カロル「ただいま!」ドロンコ
マルク「はっ!はっ!」シッポフリフリ
シスター「あ、おかえりなさ…い?」ビクッ
母「おかえりなさい、二人とも!楽しんできた?」ニコッ
カロル「楽しかったよー!お弁当も全部食べたんだ!」ドタドタ
マルク「あんっ!あんっ!」ベタベタ
シスター「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
カロル「」ビクッ
マルク「わう?」キョトン
母「し、シスターさん?」
バンッ
司祭「なんじゃ!何事じゃ!?」
ダダダッ
宣教師「ひ、悲鳴が聞こえてきましたが…!」
ガチャッ
アントリア「……」
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