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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


401: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/20(日) 21:41:56 ID:qfFCeBbWBA
―――城下町(憲兵団本部前)―――

団長「さっきのはなんだったのだ?」スタスタ

カロル「うーんと…道を聞かれて…」スタスタ

団長「…明らかに今、考えてるだろう?」

カロル「ち、ちがうもんっ!ホントに道を聞かれただけ!」アセアセ

団長「はぁ…好きにしろ」

カロル「あ、ここかな?」ビッ

団長「…その隣だ。適当にはぐらかそうとせんでもこれ以上は聞かんよ」

カロル「えへへ…」テレテレ

団長「王子の手前もあることだしな」

カロル「……?」

団長「まぁ宣教師の娘を釈放したらワシらも二度と会う機会はないだろうが…最後に王子に伝えておきたい事などはあるか?」

カロル「へ?どうして?」

団長「言わんでも分かるだろう?仮にも王子だぞ?」

カロル「関係ないんじゃないかな。会いたいって思ったら会いに行けるもの?」

団長「どうやってだ?」

カロル「?」キョトン

団長「だから…」

カロル「団長さんって変わってるね」クスッ

団長「なっ…!」

カロル「ともだちに会うのに理由なんていらないじゃない?」クスクス

団長「友人である前に王子なのだぞ!」

カロル「王子さまだけどともだちだよ?」

団長「…水掛け論だな!」

カロル「水かけよう?」キョトン

団長「ぐぬっ!」イラッ
402: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/20(日) 21:44:18 ID:qfFCeBbWBA
―――憲兵団本部(留置所)―――

宣教師「釈放…ですか?」キョトン

団長「うむ。さるお方のお達しでな」カチャカチャ

宣教師「…いいのですか?こんな形で逃がしてしまっても?」

団長「元々君の拘留は正当な手順を踏んでおらんしな。任意同行までの記録しか残ってないから問題ないのだ」

宣教師「で、先ほどから気になってはいたのですが…なぜキミがここに?」ヒクヒク

カロル「早く宣教師さまに会いたかったんだもの!捕まってるって聞いたから心配したよ?」

団長「それもさるお方の命でな。同行して送るように言われたのだ」ガチャッ

宣教師「そうですか…。勝手なマネをしてすみません」シュン

団長「出ろ。後は知らん」

宣教師「あの…さるお方とは誰だったのでしょうか?」スッ

団長「君には関係ない。帰りなさい」

カロル「王子さまだよ!」

宣教師「……!」

団長「バカもんっ!あれだけ言うなと言っておいただろうが!」

カロル「だって今度会ったらお母さまと宣教師さまも一緒だもの!お礼しなきゃ!」

宣教師「」クスッ

団長「そんな気軽に会えるかっ!」

宣教師「…よかったですね。カロルくん」

カロル「え?」

宣教師「また一つ素敵な出会いがあって…?」ニコッ

カロル「…うん!」ニコッ
403: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/20(日) 21:56:51 ID:HlYmJmIaQw
団長「…くだらん話は帰ってからやれ!ワシももう帰るぞ!」スタスタ

宣教師「……団長さん!」

団長「む?」

宣教師「昼間に私が言ったことを覚えてますか?」

団長「…あ、あぁ」

宣教師「王子の出した答えを知った今もあなたの思いは変わりませんか?」

団長「…変わらん。ワシはワシだ!」

宣教師「……」

カロル「? なにかあったの?」

団長「…だが理由無く悪と定めるのは浅はかかもしれんな。
これからは一憲兵として、もう少し目を凝らしてみるとしよう」

宣教師「…それを聞いて安心しました。では失礼します」ペコリ

カロル「おやすみなさい!団長さん!」ペコリ

団長「…二度とここへは来るんじゃないぞ。貴様らの取り調べは骨が折れそうだ!」

スタスタ スタスタ………

団長「……」

団長「(あの娘の言葉が真実だとするなら…高官共の振る舞いも納得がいくが…)」

団長「(だとするなら狙いが分からんな…。王国と教団の関係も非常に曖昧で…とても利点があるとは思えん)」

団長「(しかしあの娘の言葉が全て嘘なら…王子は騙されている事になる)」

団長「(ワシのした事は本当に正しかったのか…。今さら考えても遅いのだが)」

団長「ふう…部下達を帰してワシも休むか」スタスタ
404: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/27(日) 22:21:54 ID:RUqqFWTb4w
―――城(1階の個室)―――


国王「……友人が出来た?」

ヒメ「はい。大臣から紹介していただきました」

国王「…またもや奴の差し金か。息子まで使うとは手の込んだ嫌がらせだな?
どこぞの名家の令嬢か、はたまた貴族の子息か知らんが…何しろ大臣の息がかかっておるのだろう?」

ヒメ「相手は年齢の近いホビット族の少年です」

国王「!?」ピクッ

ヒメ「一応、報告だけ……」

国王「戯け者!」ガタッ

ヒメ「」ビクッ

国王「ホビットだと…!?貴様、後継者としての自覚はあるのか!?」ダンッ

ヒメ「……!」

国王「ゆくゆくは王となろう者がいったい何をやっているのだ!?」

ヒメ「」ワナワナ

国王「最近は無断で城下を歩き回り、今日などならず者に拐かされたそうだな?」

ヒメ「し、知って…くださっていたのですか?」

国王「愚か者!余が存じぬとでも思うたか!全ては近衛師団長より知らされておるわ!」

ヒメ「そう…ですか…!」パァァ

国王「そのホビットとは手を切れ!余は認めんぞ!」

ヒメ「…父上は教団の伝承を信じているのですか?」

国王「……?」

ヒメ「初めて…僕をまともに叱ってくれた唯一の話題ですから…気になったんです」

国王「……」

国王「信じるも何も…そんな伝承は初めから存在しない」

ヒメ「えっ」
405: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/27(日) 22:23:42 ID:RUqqFWTb4w
ヒメ「ウソ…なのですか?」

国王「余の後を継げば…やがて聞かされるであろうがな。
あれは先代の頃に高官が作り替えた全くのでたらめよ」

ヒメ「なぜ…わざわざそんな作り話を…」

国王「戦争を止める為だ」

ヒメ「戦争!?」

国王「終わらない争いと呼ばれ、落としどころを失った…我々人間が犯した最大の過ちよ」

ヒメ「待ってください!そんな話…王立図書館のどの歴史書にも載っていませんでした!」

国王「抹消されたのだよ。他の国も同様に隠しておる」

ヒメ「戦争が起こった事実を隠しきれるとは思えません!」

国王「その為の伝承だ。ホビット族を表舞台に放り、人々の関心を反らして戦争を収める口実としたのだ」

ヒメ「おかしくはありませんか?急にホビットが悪だと教えられて…どうして信じられるのです?」

国王「どの国も疲れきっていたのだ…。
長い戦いはやがて目的を見失い、兵はなぜ戦っているのかも分からなくなっていた」

国王「民にとっても家族を徴集され、肉親の死を悼む間もなく侵略の足音が迫り、眠れない日が続いていたはずだ」

国王「現在の同盟国も以前は敵対国だった…。考えてみるがよい?
いくつもの国が同時に一つの争いを始める…その時点で既に収拾が付かないのは明白であろう?」

ヒメ「……」コクリ

国王「ただ無意味に血を流し、無慈悲に続く…恐ろしい時代ではないか」

国王「終わらせたかったのだ…。皆、その一心で戦っていた」

ヒメ「分かります…。でも平和を取り戻したいから戦うなんて…不毛だと思います」

国王「…たしかにな。だからと言ってやめてしまえば敵国の攻撃にさらされ、滅びを待つのみだ」

ヒメ「だから信じた…いや、信じたふりをして戦争をやめたんですね」

国王「あまりに馬鹿げてる。しかし…人間を悪にすれば人間同士で争わねばなるまい。
ホビット族は一縷の望みだったのだ。我々が生き残るにはそれしかなかった」

ヒメ「……」
406: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/27(日) 22:25:59 ID:RUqqFWTb4w
ヒメ「戦争が起こったきっかけはなんだったのですか?」

国王「知らぬ…。余の生まれた年には戦争は収まりつつあったのでな」

ヒメ「…いつの話なのですか?」

国王「今から40年以上も前だ」

ヒメ「…なら未だにその時代を生きた人がいるのですね」

国王「うむ。誰も語ろうとはせんがな…」

ヒメ「どうしてですか?」

国王「戦争について語れば死罪となるからだ。一人が語れば…一つの町が消える」

ヒメ「一つの町が…?」

国王「悲劇の町を知っておるか?」

ヒメ「話には聞いています。たしか…ホビットを匿った為に消された…」

国王「…あれがそうだ。何人かの生き証人が町の人間に話したのが漏れて消された」

ヒメ「……!」

国王「たしかに一人の少女が幼いホビットと関わったのは事実だが…それまで人間の村や町にホビットが暮らしているのは当たり前であった」

国王「真相は戦争について知った町の口封じよ」

ヒメ「…かわいそう、ですね」

国王「ふ…いかに大人びても感想は子供そのものだな」

ヒメ「う……」マゴマゴ
407: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/27(日) 22:28:38 ID:RUqqFWTb4w
ヒメ「…父上がホビットを忌み嫌うのは真実を隠す為なのですか?」

国王「それもある…」

ヒメ「他にも理由が?」

国王「…ホビットは戦争の最中、侵略され故郷を失った人間や傷付き、さまよう兵士を襲っては物品を強奪していた。
その対象は弱った人間で…子供や妊婦、老人も例外ではなかった」

ヒメ「そ、そんな!そんな卑劣な行為を…!?」

国王「これを伝承を紐解いたとされる現教団の長、ノワール・バントン司祭から聞かされてな。
報いを受けて当然の種族だと判断した」

ヒメ「僕も…許されない行為だと思います」

国王「…しかし高官共は今さらになってホビットを利用した交易などを広げようとしている!
飼育用に売買する施設を作り、見せ物として痛め付けるショーを許可し、果てはホビットが育てたとされる禁忌の大樹を巡礼し、崇めようというのだ!」ダンッ

ヒメ「それではまるで…ホビットを人間の社会に組み込むようなものじゃ…」

国王「その通りだ!どのような形であれ、ホビットと人間は一定の距離を保たねばならぬ!
各国がホビットに付加価値を付けてしまえば必ず独占を謀る国が現れるのだ!
そうなればいずれは…ホビットを巡る争いが起きるやもしれぬ!」

国王「同じ手は二度と使えぬ…。必要悪としてこれまで通りにしていればいいものを……」

ヒメ「父上の力で止められないのですか…?」

国王「それができれば苦労はない…」

ヒメ「…国王がなぜ!」

国王「……人望だ。余には圧倒的に人望が足りぬ。
ノワール司祭が名声を得てから王族は戦争を収められなかった無能として当時の民衆の支持を無くした」

国王「先代は発言力を失い、高官共はそれに乗じて政から王族を外しにかかった。
余が父の死を期に王となった時には…余を助ける者は一人もいなかった」

ヒメ「……」

国王「お前を突き放してきたのは…お前を嫌ってのことではない。
ただ…見られなかったのだ。無能な父を…子にまで蔑まれたくはなかった」

ヒメ「ち、父上…」

国王「お前は…余のようにはなってくれるな…」

ヒメ「……」
408: ◆WEmWDvOgzo:2014/4/27(日) 22:30:42 ID:Axcp.Zm7gQ
国王「…寄れ」

ヒメ「?」

国王「一度…我が子を抱いてみたかったのだ」

ヒメ「父上…」

国王「…嫌か?」

ヒメ「そんなこと…ありません」スッ

国王「そうか…」パッ

ヒメ「……」ヒシッ

国王「……」ギュッ

ヒメ「……」ギュッ

国王「…すまなかった」ナデナデ

ヒメ「」ウルッ

国王「……」ナデナデ

ヒメ「……!」ポロポロ

国王「なぜ泣く…?」

ヒメ「ずっと…ずっと知りたかったから」ポロポロ

国王「……?」

ヒメ「貴方のぬくもりを…ずっと…!」ポロポロ

国王「…そうか」ナデナデ

ヒメ「うっ…うぅっ…!」グシッ

国王「……」
409: 名無しさん@読者の声:2014/5/6(火) 17:51:40 ID:zozq3JZnwE
応援している
是非完結させて欲しい
410: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/7(水) 22:16:17 ID:qZ7k2dc.Lc
―――城下町(教会)―――

司祭「今までどこをほっつき歩いとったぁ!?」ガーッ

宣教師「あなたには関係ないでしょう」ツーン

司祭「若い娘がこんな夜中に外出などしていい訳がないじゃろがぁ!!」

アントリア「まぁまぁ、ノワール。二人とも無事に帰ってきたのだから良しとしようじゃないか?」

司祭「お前は黙っとれ!」

宣教師「いい加減にしてくれませんか?私はあなたの娘じゃないんですよ?」

司祭「やっかましいぃぃぃぃ!!!!孤児だったお前を拾って育ててやったのはわしじゃぞ!!」

宣教師「やかましいのはあなたです!ずっと騙していたくせに今さら…!」

司祭「騙してなどおらんわい!お前が無知だっただけじゃろうが!」

宣教師「よく言いますね!散々とぼけておいて!」

アントリア「ノワール…親子の情は捨てたのではなかったのかな?」

シスター「神官…こっちも」

母「うえーん!ぼうやぁ…!もう会えなくなるかと思ったわぁ…!」ボロボロ

カロル「な、泣かないで!大丈夫!ボク元気だから!」アセアセ

母「ごめんなさい…!お母さんが付いてたのに怖かったでしょう…!」ギュゥゥ

カロル「う…く、苦しい…よ…!?」キュゥッ

シスター「どうしましょう」

アントリア「さて、どうしたものかな」

ガチャッ

アリアス「た、ただいま…戻りました!」ゼーッゼーッ

ダガ「ひ、必死に探したんですが…あいつらアジトを変えやがったみたいで…!」ゼーッゼーッ

アントリア「おかえり。彼なら宣教師君と帰ってきたよ」

アリアス&ダガ「えっ」

司祭「貴様ら、そこに直れぇい!!」

アリアス&ダガ「」ビクゥッ
411: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/7(水) 22:18:00 ID:qZ7k2dc.Lc
〜〜〜朝〜〜〜

―――教会(客間2)―――

アントリア「」モグモグ

カロル「」パクパク

母「」ゴクゴク

宣教師「」パクッ

シスター「(な、なんでこんなに静かなの…?お料理の味付け、失敗しちゃったかな…)」

司祭「30分で連れ戻す?笑わせおって…この役立たず共が!」ブツブツ

ダガ「……」

アリアス「……」

司祭「なんとか言ったらどうじゃ?えぇ?それでもワシの付き人か?」

ダガ「(ようやくいいとこ見せれる絶好の機会だったってぇのに…)」

アリアス「(王都に来てからいいことが一つもない…)」

シスター「(あ、これが原因だったんだ)」

アントリア「(相変わらず気難しいな。ノワールは…)」

カロル「(庇ってあげたいけど…司祭さまって怒ると怖いんだもの)」

母「(せっかく無事に解決したのになごめる空気じゃないわね…)」

宣教師「(あぁ…気まずい…)」

マルク「(わんっ…)」
412: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/7(水) 22:19:31 ID:4h2SWJYiI6
司祭「だいたい貴様らは何かにつけて…」ブツブツ

母「ご、ごちそうさま!部屋に戻りますわね?」ガタッ

カロル「ぼ、ボクも」ガタッ

宣教師「ごちそうさまでした」ガタッ

バタンッ

司祭「む?」

アリアス「そ、そういえば信者たちに宛てた手紙、届いたか確認しないと?」ガタッ

ダガ「お、俺もだ!」ガタッ

司祭「待たんか!話はまだ…!」

バタンッ

司祭「……」

シスター「わ、わたし洗い物しなきゃ!」ソソクサ

バタンッ

司祭「……なんじゃ?」

アントリア「…僕も用があるので失礼するよ」ガタッ

司祭「そ、そうか」

バタンッ

司祭「……」ポツン

司祭「(なんじゃ…どいつもこいつもよう分からん)」
413: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/7(水) 22:20:56 ID:qZ7k2dc.Lc
―――教会(客室1)―――

カロル「サクッ…司祭さま、昨日からずっと怒ってるね」

母「サクッ…そうねぇ。ちょっぴりお二人がかわいそうだったわ?」サクッ

宣教師「あの方も根がしつこいですから。
ところで1日経ってしまいましたがお味はいかがですか?」

カロル「おいしいよ!ボクね、宣教師さまが作ってくれるビスケットって一番大好き!」

母「サクサクしててとってもおいしいですよ?」ニコッ

宣教師「よかった…。久しぶりに作ったものでドキドキしてたんです」ホッ

母「あたしにも今度レシピを教えて?一緒に作りましょうよ?」ニコニコ

宣教師「え…は、はい…!」ドキンッ

カロル「お母さまも作ってくれるの?わーい!楽しみー!」パァァ

宣教師「(なぜ彼はお母様の手料理がマズ……ではなく独特なことに抵抗がないのでしょうか?)」

マルク「わぅあぅあぅあぅあぅん…!」ガクガクブルブル

宣教師「(マルクくんなんてあんなに分かりやすく抵抗を示しているのに…)」
414: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/7(水) 22:22:27 ID:qZ7k2dc.Lc
カロル「それでね!王子さまが団長さんにビシッと言ってくれたんだ!」

母「まぁ?そうなの?」ニコニコ

宣教師「ふふ。高飛車な子だと思ってましたが…実は思慮深く頼もしい一面もあったんですね?」

カロル「今度会ったら二人も紹介するね!」

母「そうね。お母さんもちゃんとお礼がしたいわ?」

宣教師「おみやげにビスケットを焼いてあげましょうか」

カロル「えへへ。きっと喜ぶよ!」

マルク「わんっ!わんっ!」シッポフリフリ

カロル「え?マルクは…ごめん。お城の中だからお留守番かも…」

マルク「わふんっ」ムスッ

カロル「お、怒らないでよ!しょうがないでしょ!」

母「あぁ…なんて幸せなのかしら」

カロル「へ?」

マルク「くぅん…?」

宣教師「……」

母「みんな無事にケガ無く帰ってきてくれて…こうして他愛ないおしゃべりに花を咲かせられる時間ができたんだもの…。
たったそれだけの事かもしれないけど、この束の間の安らぎが何よりも愛しいわ?」ニコッ

カロル「…ごめんなさい。ボクが心配ばっかりかけるから…」

宣教師「そうではありませんよ。カロルくん」

カロル「え?」

宣教師「なんの皮肉もなく本当に心から思ったことを言っているのです。そうですよね?」

母「そうよ?お母さんはね、坊やと宣教師様とマルクと普通に過ごせて…それだけで充分なの」

マルク「あんっ!」ウンウン

カロル「……」
415: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/7(水) 22:28:16 ID:qZ7k2dc.Lc
母「こんな時間がずっと続いてくれたらいいのに…」

カロル「安心して。お母さま」

母「……?」

カロル「もっとたくさんの安らぎをみんなと与え合える日が来るから」

母「へ…?」

カロル「ボクらホビットが人間と分かり合えたら…幸せな時間が増えるから」

母「そう…ね。その為に…」

宣教師「最後の試練が待っています。ここを乗り越えられれば…」

カロル「うん!大樹を咲かせよう!それが終わったら、みんなで幸せに暮らすんだ!」

宣教師「(私が守ってあげないと…もしも騙されていた時に純粋なお二人は気付けないでしょうから)」

母「(アントリアさんの人となりは信用できるけど…危ないと分かったら、この子だけは逃がしてあげなくちゃ)」

マルク「(わんっ…)」
416: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/7(水) 22:31:22 ID:qZ7k2dc.Lc
>>409
すごく励みになります。本当にありがとうございます。
もう少しで完結させる予定です。
417: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/8(木) 22:04:15 ID:Mk.DSYjor2
―――バックヤード(ヘマトバザール本部)―――

ウォルター「急に来られちまったもんで埃被った部屋に案内する羽目んなったが…。
まさか会長…あんたが自分の足で訪ねてくるたぁ思いませんでしたぜ?」

アントリア「…君にはいつも無理を言って困らせているからね。たまには直接ねぎらわせてくれないか?」

ウォルター「ククク!恐れ入るぜ…?
しっかしなぁ…。あんたまで来るたぁ聞いてねぇぞ?」ギロッ

政務官「私も来たくて来た訳じゃない。こんな薄気味悪い廃墟にな」

アントリア「よさないか?立場は違えど人種は変わらないのだから」

ウォルター「へっ!違いねぇわな!」

政務官「これと同じに扱われるのは心外だな。あくまで共存共栄だ…」

アントリア「…そういうことにしておこうか」

ウォルター「ヘマトバザール、教団、王国のNo.2が揃い踏みだぁ?こりゃドデカイ予感しか感じねぇわなぁ…!」

政務官「王都三大勢力による完全なる密談…あってはならない…許しがたい大事件だな」

アントリア「大それた話だね。
この広い世界を駆け巡る時の流れに問うのなら…。
これほどにちっぽけで…無意味な時間などありはしないと目もくれずに過ぎ去っていくのだろう」

政務官「…我々の存在など時代の断片に過ぎない、という訳か。
なるほど、学者らしい見解だ?」

ウォルター「難しいこたぁ分からねーが…会長は学はあってもロマンがねぇな」
418: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/8(木) 22:06:16 ID:L9X.2dTP/E
ウォルター「俺ぁ会長の望みとあらばいくらでも働きますぜ?
なんたってこんな楽しい商売に引き入れてくれただけじゃねぇ?
俺たちのようなド変態を合法化してくれたのはあんただ?」

政務官「私もだ。貴方には隠しきれない弱味を握られると同時に…抱えきれない報酬を頂いている」

アントリア「君たちはとてもよく出来た人間だよ…。
感謝に行動を伴える真心と利害を重んじる柔軟な姿勢をバランスよく持っている」

アントリア「片や血を好み、他人の痛みを己の快楽に結び付けるどうしようもないならず者……」

ウォルター「ククク!そのならず者を野に放ったのは会長、あんたでしょうが?」ニタニタ

アントリア「片や国の為、民の為と嘯き、有り余る財と権力を欲しいままにする影の支配者……」

政務官「誤解を招く言い方はよしてもらいたいな。
そういう貴方は教団の幹部として善良な民に手を差し伸べる神のしもべ、という表の顔を持ちながら……」

ウォルター「俺らみてーな極悪人を裏で操ってやがる…最悪の冒涜者だ!」

アントリア「その通り。たが…もうすぐで僕の出る幕も無くなる」

政務官「どういうことかな?」

アントリア「長年、僕の助言を受け入れ、順調にのし上がってくれた君たちには本当に感謝しているのだよ。
おかげで親友と誓い合った夢も現実へと迫りつつある」

ウォルター「…話が読めねぇな」

アントリア「僕はこの計画を期に表舞台からも裏側からも姿を消そうと思うのだ」

政務官「なっ…!」ガタッ
419: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/8(木) 22:08:24 ID:Mk.DSYjor2
政務官「お待ちください!貴方にはまだ…!」

アントリア「…もう僕は用済みではないかな?
仕組みは作ってあげた。後は君の腕次第だよ、リルラ政務官?」

政務官「これから他国に目を向けようという時に貴方がいなければ…!」

アントリア「元々僕はしがない学者だ…。政に携わる才などありはしないのだよ」

政務官「困ります!今の王国はバラバラそのもの!曲者揃いの高官を手玉に取り、動かせるのは貴方しかいない!」

アントリア「ハハッ!自信を持ちたまえ、リルラ君?
確かに僕も助言はしてきたが…その全てを実行に移し、成功させてきたのは紛れもない君自身の力だよ。
数々の功績を振り返り、一役人から政務官まで這い上がった自分を見直してみなさい?」

政務官「……!」クラッ

アントリア「自ずと答えは見える筈だ。君は自分を過小評価し過ぎている」

政務官「あ、あぁ…あぁ…」グワングワン

アントリア「君は恐ろしく弁舌が立ち、他の高官に一目置かれる存在だ。
誰も君を疑わない。君自身も疑われる余地など一つもない。王国きっての凄腕じゃないか?」

政務官「そう…だ。そうだった。私は…この国の未来を担う唯一無二の存在…」グワングワン

アントリア「そうとも。やはり分かっていたのだね?心配などいらないようだ?」

政務官「…あぁ。もはや貴方は不要だ。自ら消えてくれるのならありがたい限りだな」

アントリア「これは手厳しい言われようだ…?」クスクス

ウォルター「(いつ見ても気味がわりーな。会長の人心掌握術だきゃ…)」
420: ◆WEmWDvOgzo:2014/5/8(木) 22:10:18 ID:L9X.2dTP/E
アントリア「ところでリルラ君。手はずはどうなったのかね?」

政務官「ふふっ!この私がしくじるとでも?」ドヤァッ

アントリア「(効き目が強すぎたかな…)」

政務官「無論、適宜遂行した。あのブタ大臣め…おだて上げてやればその気になってくれたよ。
即座に陛下を黙殺し、勝手にコトを進めてくれた上に此度の権利を国交担当の私に譲ってくれるというこの上ない手の尽くしようだ…」

ウォルター「こっちも数は用意したぜ。いつでもショーに取りかかれる」

アントリア「どちらも手際よくやってくれたようだね。日取りは?」

政務官「1ヶ月後だ。急に決まっただけに難しかったが…なんとか同盟国の役人を呼び寄せ、国交行事という名目を保てる最短の期間を確保した」

アントリア「…なるほど、ショーはどんな演目を考えている?」

ウォルター「ククク!ハデなモンを考えてありますわ…。まともな精神じゃ立ち直れねぇくらい強烈なショーをねぇ?
しっかりとお言いつけ通り、客の意識はこっちに向けさせときやすよ」

政務官「私はあくまでお膳立て、か。計画実行の日にはショーの観客になるな…」

アントリア「…クックッ!実に待ち遠しいよ!」

ウォルター「おーおー?会長が声出して笑うなんざ珍しいな?」

アントリア「失敬だな?嬉しければ笑うさ。僕も一人の人間だ?」
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名前:
sage:


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