前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
349: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/20(木) 21:51:33 ID:YfxFmfmEbs
アリアス「こうしてる間にも憲兵が調べを終えて向かってきてるかもしれないのよ!?」
ウォルター「ひえー。そら恐ろしいな?んじゃ憲兵が来る前にカタを付けるか!」
アリアス「あなたの目的はなに?金銭目当てなら応じてもいいけれど…?」
ウォルター「いらねぇよ?俺の目的はそのホビットだ!」ビシッ
カロル「もういいってば…!ボクは平気だから!」
アリアス「…どういう事?あなた達、顔見知りなの…?」
ダガ「くっちゃべっててもラチがあかねぇよ!おらぁっ!」ダッ ブンッ
ウォルター「うおいっ!?危ねぇだろうが!?」サッ
ダガ「よけんじゃねぇよ…!」イラッ
ウォルター「てめぇがトロいのがわりーんだろが?」
ダガ「殺す…!」ブチブチィッ
アリアス「はぁー…。面倒だけれどやるしかなさそう…」
カロル「あ、アリアスさんまでなに言ってるの!?」ギョギョッ
350: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/20(木) 21:53:00 ID:YfxFmfmEbs
ウォルター「2対1…か!ククク!」
ダガ「勘違いすんじゃねぇよ…?てめぇの相手は俺だ?」コキッコキッ
アリアス「用心して…。こいつ、多分そこそこ強いわよ?」ジリジリ
カロル「ダメったら!そんな事より戻って王子さまを助けようよ!」アセアセ
ウォルター「中にあのワガママ王子もいるのか?」
カロル「そうだよ!公園で遊んでたら無理やり連れてこられたんだ!」
ウォルター「そいつは災難だったなぁ?」
カロル「あ、そうだ?ボクなんかいいからウォルターさんは王子さまを助けてよ!
それならケンカしなくていいでしょ?」
ウォルター「やなこった?そんなん自業自得だ?」
カロル「どうして!王子さまがケガしたら大変じゃない!」ムッ
ウォルター「お前もこうなってみて分かんねぇか?
あそこまでの身分になると関わっただけでこっちが面倒を背負い込まなきゃならねぇんだよ?
その証拠にお前は巻き添え喰って拐われたんだろうが?」
カロル「……!」
ウォルター「んでもって拐われたお前を取り返す為にまた俺が呼び出し受けてんだぜ?
これ以上、めんどくせぇ事に巻き込むんじゃねぇよ?」
カロル「そ、それはごめんなさい…。
でも少しだけどウォルターさんもお話したでしょ?
その王子さまがすごく怖い目に遭ってて…なんとも思わないの?」
ウォルター「お話?いやいや、とんでもない?愚民Bの俺が王子様と会話なんて〜?もう畏れ多くてたまりませんよぉ〜?」ニヤニヤ
カロル「うぅ〜…!い、いじわるっ!」プンスカ
ウォルター「ぎゃはははは!わるぅござんした〜!
あんなクソガキがどうなろうが痛くも痒くもねぇわなぁ〜?」ヘラヘラ
351: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/20(木) 21:57:01 ID:YfxFmfmEbs
ダガ「おらっ!!」ブンッ
ウォルター「っとと!まぁた不意討ちか?」サッ
ダガ「ふ……ダラダラ喋ってんのがわりー?」ニヤァ
カロル「ちょっ…」
アリアス「」ダッ
ウォルター「はっ?近付かせねぇよ!」ビュンッ
アリアス「くっ!」ゴロンッ
ザクッ
ウォルター「外したか…。いい反射してんなぁ?」チャキッ
アリアス「どこに隠し持ってたのか知らないけれど…女性に刃物を向けるのはどうなの?」
ウォルター「無理すんなよ、おばちゃん?ケガするぜ?」
アリアス「おば……!?」
ダガ「背中がガラ空きだぜ!」ブォンッ ドゴッ
ウォルター「…ぐおっ!」ズダンッ
ダガ「それ、もう一発…!」ブンッ
ウォルター「てぇな…!ほっ!」バウンッ グルッ
バキィッ
ダガ「ごふっ!?」ドターン
ウォルター「ククク!後ろ回しが綺麗に決まったな?こりゃ今日の運勢は花丸だ?」
カロル「」ボーゼン
カロル「」ハッ
カロル「あぁ…どうしよう!だ、誰か!誰か止めて!?」オロオロ
アリアス「…任せなさい。止めてあげるから」スクッ
カロル「アリアスさん!」パァァ
アリアス「私がおばさん?ありえない…!息の根を止めてあげなきゃ…!?」ピクッピクッ
カロル「アリアス…さん?」ゾクッ
352: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/20(木) 21:58:59 ID:xLaDjm5IU.
カロル「落ち着いて!もっとひどくなっちゃうったらぁ!」ズリズリ
アリアス「邪魔!邪魔!邪魔ぁ!離さないとあんたも殺すわよ…!」ズイズイ
カロル「おねがいだから…あれ?待って!誰か来るよ!?」ギョッ
アリアス「殺してやる…!」ズイズイ
カロル「ぜんぜん聞いてない!?」ガーン
ダガ「ふんっ!ちょこまかとうざってぇ…!」ビシッバシッ
ウォルター「当ててみろ、ウスノロがぁ!…あーらよっとぉ!」ガッガッ
カロル「あっちも気付いてない!?」ガガーン
ゾロゾロ ゾロゾロ
団長「ついに突き止めたぞ!鼠賊共め…!」スタスタ
憲兵4「向こうに誰かいるぞ!?」スタスタ
憲兵3「先回りしてた二人かもしれないな!」スタスタ
憲兵5「団長!どうやら交戦中のようです!」スタスタ
団長「急げ!加勢するぞ!」ダッ
憲兵's「はっ!」ダダッ
353: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/20(木) 22:01:01 ID:YfxFmfmEbs
ダダダダダッ
カロル「来ちゃうよ!ねぇ?来ちゃうってば!?」アタフタ
アリアス「殺……え?」ピタッ
ウォルター「ちっ…やめやめ!やめだ!」サッ
ダガ「あぁ?」ギロッ
ウォルター「邪魔が入った!わりーが俺はズラかるぜ!」ダッ
ダガ「待ちやがれ!?」
団長「何をしてる!取り逃すな!」タタタッ
ダガ「はぁ?げげげっ!?」ビクッ
アリアス「ダガ!逃げるわよ!」ダッ
ダガ「お、おうっ!」ダッ
カロル「だから言ったのに…ぜんぜん聞いてくれないんだもの」ポツンッ
団長「!」
憲兵3「どういうことだ!あの二人も逃げたぞ!?」
団長「…犯人を追った訳ではなさそうだ!奴らも捕らえろ!」
憲兵3「ち、ちくしょう!偽物だったのか…!」ダッ
354: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/20(木) 22:06:10 ID:YfxFmfmEbs
憲兵4「子供がいます!拐われた一人かもしれません!」
団長「王子じゃないな…。保護して話を聞くぞ!」
カロル「団長さん!」タタタッ
団長「ワシを知って…お、お前は先日の!?」
憲兵4「ん?この子の眼…なんかおかしくないか?」
憲兵5「どれどれ?」
カロル「早く!王子さまが中にいるよ!ボクらを連れてきた人間も!」
団長「なにぃ!?」
憲兵5「なっ…!」
憲兵4「やっぱりホビットだ!?」
団長「今はどうでもいい!中に突入するぞ!?」
憲兵4「で、ですが!」
団長「ホビットに構う暇はない!王子の安否が先だ!」
憲兵5「団長!奴らはどうします!?」
団長「封鎖してある以上、どうせ裏通りからは出られん!
王子の身柄を最優先に考えろ!他は些末な問題だ!」
憲兵's「ははっ!」
355: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:01:04 ID:VTUPJwu2H6
―――バックヤード(裏通りの酒場)―――
バァンッ!
ダダダダダダッ
カロル「」タタタッ
団長「王子…!」ドタドタ
憲兵's「」ズカズカ
大男「」ピューヒャラリラ
団長「こいつは!?」
カロル「ボクたちを連れてきた人間!もう一人仲間がいて王子さまを閉じ込めてるの!」
憲兵4「こいつは我々にお任せください!縄をかけておきます!」ガッ
憲兵5「左様!団長は奥へ!」ガッ
団長「すまん!頼む!」ドタドタ
カロル「……こっちだよ!」タタタッ
大男「……ぅうん?」パチッ
憲兵4「神妙にしろ!」スラッ
憲兵5「暴れるなよ!?」シュルッ
大男「うへぇっ!?」ビクッ
356: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:04:27 ID:b3J50V5QKY
カロル「王子さま!助けに来たよ!」ガチャッ
団長「ご無事ですか!?」ダンッ
ヒメ「」グッタリ
カロル「えっ」
団長「あ、あ、あぁぁあぁぁあ!?」ガクンッ
小男「は、ははは…俺じゃないもんね…。こいつが勝手に……」ヘナヘナ
カロル「血…血が…いっぱい…?どうして…?」ワナワナ
団長「キサマぁぁぁああ!?このお方に何をしたぁぁぁあ!?」ダッ ガシッ
小男「し、しらねー…こいつが自分でやったんだ…。どっから出したかわかんねぇけど…」ユサユサ
団長「なんだとぉぉおぉぉ…!」ギリッ
カロル「…王子さまの剣だ…」スッ
ヒメ「」ダラーン
団長「そのお方に気安く触れるな!?」ポイッ
小男「ひいっ!?」ドサッ
カロル「教えて……なんでこんなことしたの?」ギュッ
ヒメ「」フワッ
団長「触れるなと言ってるんだ!貴様のようなホビットが…!」
ヒメ「うるさい」ムクッ
団長「えっ」
小男「えっ」
カロル「よかった…。間に合ってくれて」ニコッ
ヒメ「あー痛かった。二度と腹なんか切るもんか」スクッ
団長「あ、あの…?」
小男「マジ?マジ?」
357: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:08:17 ID:b3J50V5QKY
ヒメ「浅く刺すつもりが焦って手元が狂ってさ?」
カロル「自分で自分を傷付けるのはよくないよ?」
ヒメ「…命を救われたな。感謝するぞ。褒美に握手してやろう!」パッ
カロル「どういたしまして!」ギュッ
団長「も、もしや貴様が王子のケガを治したのか…?」
カロル「……」
団長「一体どうやって…そ、そうか!癒しの力だな!?」
カロル「そ、それは…」アタフタ
ヒメ「バーカ!」
団長「は?」
ヒメ「冗談に決まってるだろ?そいつの手から離れる為に死んだふりをしてただけだ?」
団長「では…血は?大量に……」
ヒメ「偽物だ。こんな事もあろうかと鶏の血を懐に忍ばせておいたのさ!すごいだろ!?」
団長「さ、さすが…何時なんどきも万全を期しておられるとは感服致しましてございます!ヒメ様!」パチパチ
ヒメ「その名で呼ぶな!紛らわしいから!」
小男「嘘つけぇ!?俺は見てたんだぞ!おめぇがナイフを取り出して腹かっさばいたのを!?」
ヒメ「名演技だったろ?オレが舞台に立つ日も近いな!」エッヘン
小男「んなアホな…!?」
カロル「ホント。名演技だよね?」クスッ
ヒメ「…まーな!」
団長「え?」
ヒメ「団長!ボーッとしてないでそいつを捕まえろ!部屋から出ようとしてるぞ!」ビシッ
団長「」ハッ
小男「ひぃぃ!」ダッ
団長「ま、待てぃ!!」ダッ
バタンッ
358: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:09:58 ID:VTUPJwu2H6
ヒメ「…行ったか」
カロル「遅くなってごめんね?」
ヒメ「ホントだよ!なにしてたんだか?」ジトー
カロル「そ、それは……えーと?」アセアセ
ヒメ「おかげでこっちは死にかけた!」プンスカ
カロル「あ、やっぱり…?」
ヒメ「何がやっぱりだ?気付いてたクセに?」
カロル「えへへ?」テレテレ
ヒメ「さっきのあれ、癒しの力なのか?」
カロル「知ってるの?」
ヒメ「教えを聞き流しててもそれぐらい知ってるさ?常識だろ?」
カロル「常識なんだ…」
ヒメ「ホントにあるんだな。びっくりしたよ?」
カロル「ボクにしか出来ないんだって?アントリア神官が言ってた!」
ヒメ「ホビットは全員、使えるんじゃないのか?」
カロル「ううん、ボクだけなの。なんでかは分かんないけど」
ヒメ「…ふーん?おまえだけが?」ジロジロ
カロル「?」キョトン
ヒメ「そんな特別には見えないぞー?へなちょこだし?」
カロル「そこまでハッキリ言わなくたって…」ヒクヒク
359: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:11:17 ID:b3J50V5QKY
ヒメ「ずーっと言いそびれてたけど」
カロル「うん、なに?」
ヒメ「…一回しか言わないからよく聞け!」ジーッ
カロル「……?」
ヒメ「すっごくありがたい言葉だぞ!この重みは金貨を積み上げて宝飾品を散りばめても敵わないからな!」
カロル「そんなに?期待していい?」ニコッ
ヒメ「…そう言われると、少し困る?」モジモジ
カロル「いいよ、言ってみて!すっごく期待してるから!」ニコニコ
ヒメ「むっ!う、うるさい!やっぱりなしだ!」プイッ
カロル「えー?気になるよ?」クスクス
ヒメ「…ホントは大したことじゃない。恥ずかしいし…」マゴマゴ
カロル「ホントは聞いてほしかったりして?」
ヒメ「…おまえってホントめんどくさいヤツだな!?」ムキー
カロル「ボクじゃないでしょ?王子さまが素直じゃないんだもの?」キョトン
ヒメ「な、なんだとぉ…!」ギリギリ
360: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:13:05 ID:b3J50V5QKY
ヒメ「…巻き込んで悪かったな!」ムスッ
カロル「気にしてないよ?それより無事でよかったね!」ニコッ
ヒメ「ふん!」
カロル「それで言いたい事ってなーに?」
ヒメ「」スッテンコロリン
カロル「大丈夫!?まだ痛むの!?」ビクッ
ヒメ「…だから!今言っただろ!?」スクッ
カロル「?」
ヒメ「巻き込んで悪かったな!それだけだ!!」
カロル「えー?あんなにもったいぶったのに!?」
ヒメ「王族が頭を下げてやったんだぞ!?それ以上の何を期待してたんだ!?」
カロル「うーんと…世界の半分をくれるとか?」
ヒメ「やれるかぁ!?だいたい世界の半分もらってどうするんだよ!?」
カロル「お母さまがお家欲しがってたから」
ヒメ「家なら別に世界の半分じゃなくてもいいだろ!?」
カロル「おっきい方がお得じゃない?」
ヒメ「大きすぎるだろ!?もらっても逆に困るだろ!?」
361: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:20:42 ID:b3J50V5QKY
ヒメ「おまえと話すと疲れるな!」プンスカ
カロル「そう?ボクはとっても楽しいな!」ニコニコ
ヒメ「……!お、オレは話術が巧みだからな!わははは!」
カロル「あ、照れてるんだ?」クスッ
ヒメ「はぁ!?」
カロル「ちょっぴり分かってきたんだ?王子さまが自分のこと、オレって言う時は無理してるって?」
ヒメ「してない!!オレはいつも自然体だ!!」ムキーッ
カロル「ふふ!そうかもね?」ニコニコ
ヒメ「…勝手に思ってろ!」
カロル「あはは!ごめんなさい!怒らないで?」
ヒメ「もういい…!それにしてもこんな大事になってはもう城を脱け出せないかもな…。はぁ。帰りたくない」ションボリ
カロル「ボクも…たくさん叱られそうで怖いや」ズーン
団長「そうは参りませんぞ!」
ヒメ「ん?早かったな?もう捕まえてきたのか?」
団長「お待たせして申し訳ない!犯人はすでに取り押さえ、連行致しました!
さぁ王子も城に戻りますぞ!妃様も大層心配しておられますでな!」
ヒメ「はぁ…。行くか」トボトボ
カロル「うん」スタスタ
362: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:23:03 ID:b3J50V5QKY
―――バックヤード(城下町裏通り)―――
団長「なにぃ!?逃げた連中を取り逃がしただとぉ!?」
憲兵1「我々と同様の制服を着用していたものですから…ついうっかり」
憲兵2「通しちゃいました…」
団長「うっかり通しちゃいました…じゃなかろうがぁ!!」ガァーッ
ヒメ「まぁまぁ、それくらいにしてやれ。奴らは僕を拐った犯人とは無関係だ」
団長「し、しかし!怪しいことに代わりはありませんぞ!
こういった事は徹底しませんと民にも示しが付かんのです!」
ヒメ「危ない連中じゃないのは僕が保証する。それでいいだろ?」
団長「何を根拠におっしゃるんです!?」
ヒメ「あれはこいつを助けようとしてただけだ。そうなんだろ?」
カロル「」コクンッ
団長「…なら何故、王子を一緒に救い出さなかったのか説明してもらおうか!?」ギロッ
カロル「え…?」
団長「言えんのか?なんぞ後ろ暗い事でもあるんだな?
いや、待てよ?もしかすれば貴様は最初から犯人とグルで…憲兵に化けていた二人も協力者だったんじゃあるまいな?
そう考えれば辻褄も合うというものよ!
こうしてる今も王子を監視し、仲間に合図を送ってるのであろうが!?」ガミガミ
カロル「あの…よくわかんなくて…」オロオロ
団長「言い淀むとは分かりやすくボロが出たな?決まりだ!
貴様も牢に放り込み、徹底的に追及してやろう!
仲間の居場所も誘拐を命じた黒幕の存在も洗いざらい調査してやるからな!そのつもりでいろ!」ガミガミ
憲兵1「だ、団長…その辺にしておいた方が…?」アセアセ
憲兵2「そうですよー。決めつけはよくないです」
団長「犯人の仲間をみすみす逃した間抜け共はすっこんでいろ!」
363: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:24:55 ID:b3J50V5QKY
カロル「団長さん!落ち着いてください?ボクは王子さまを拐ったりしないですよ?」アセアセ
団長「見苦しい!元はと言えばあんなずさんな計画で王子を拉致するなどおかしいと思ってたんだ!
おそらくは酒場の兄弟が身柄を確保し、憲兵に偽装した二人へ受け渡す予定だったのだろう!
だがなんらかの手違いで裏切り…もしくは別に計画していた組織の邪魔が入ったのだな?」ペラペラ
カロル「そ、そうじゃないんです!」アセアセ
団長「まぁいい?言い訳など街角に群れなす吟遊詩人共の嘯く夢だ愛だの唄ほどに聞き飽きた?
後は本部でじっくり取り調べればいい話だ?
事件の全容を明らかにし、まとめて逮捕した暁には全員を極刑に処してやるぞ!楽しみにしていろ!」ビシィッ
カロル「(どうしよう…?ぜんぜん分かってくれない…)」シュン
憲兵1「団長…その推理はちょっとぶっ飛びすぎてるような…?」
憲兵2「そうですよー。全部疑ってかかってたら事件も解決しませんし家に帰れないじゃないですかー!」
団長「ワシの推理が間違ってると?」ギロッ
憲兵1「いや、おっしゃりたい事は重々承知してますがあんまり事件性に幅を持たせてしまうと解決まで長引きますし…。
まずは捕らえた犯人を追及するとして、そのホビットは一旦置いときませんか?」
憲兵2「自分もそう思います!なにより新婚なんで早く帰って妻の手料理が食べたい!」
団長「…それもそうだな。ではワシは王子を城へ送ってこよう。
お前たちはホビットを連行し次第、犯人の尋問に当たれ!」
憲兵1「はっ!」ピシッ
憲兵2「団長、尋問に人員を割いてもしょうがないですし自分は先に帰宅しても……」
団長「抱える案件は一つではなかろうが?書類の整理を済ましておけ!」
憲兵2「あんまりだ…」グスンッ
364: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:27:12 ID:VTUPJwu2H6
団長「では参りましょうか?」
ヒメ「……」
団長「王子?」
ヒメ「……」
憲兵1「さぁお前も来い!」ガシッ
カロル「ぼ、ボクじゃないったら!」グッ
ヒメ「離してやれ!」
憲兵1「は?離し……」
ヒメ「命令だ。今すぐそいつから手を離せ!」
憲兵1「はっ!」パッ
カロル「……」ホッ
団長「王子!何をお考えに…其奴は貴方を貶めようとですな?」
ヒメ「笑わせるな?おまえの不確かな空論に賛同できると思うか?」
団長「…聞き捨てなりませぬな!これはれっきとした経験に基づく勘であり……」
ヒメ「どんなに経験を積んでも勘は勘だ。そんなの僕が認めない」
団長「む、むむっ!で、ですが主人の手を離れたホビットや野良のホビットの始末はどちらにせよ我々の預かるべき問題であって…!」
ヒメ「そいつは自力で主人の元に帰れる。そうだな?」
カロル「う、うん!帰り道は覚えてるよ?」
ヒメ「よし?じゃあ問題なし!」
団長「大有りではございませんか!罪深いホビットを敢えて野放しにされるなど次期国王としてあるまじき行為ですぞ!?」
ヒメ「あるまじき行為だとしたらどうする?僕を捕らえて裁くのか?」
団長「滅相もございません!将来、貴方様に仕える立場として、その神聖なるおみ足を土で汚さぬよう足場を清らかに保とうと心掛けている次第!」
ヒメ「はぁ…言い回しがややこしくてよく分からないけどなんとなく伝わったよ。
でも何を言われても曲げる気はないからな?」
365: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/23(日) 21:40:43 ID:VTUPJwu2H6
団長「どうしても?」
ヒメ「どうしてもだ」
団長「どぉ〜〜〜しても…ですな?」
ヒメ「あぁ」
団長「…申しましたな?」
ヒメ「くどいぞ?」
団長「かしこまりました!では国王に相談していただきましょう!」
ヒメ「なっ…!」
カロル「国王って…王子さまのお父さま?」
団長「…もし国王の許しを得られたならワシも諦めが付くというもの!」ジロッ
カロル「」ビクッ
ヒメ「…本気で言ってるのか?父上は大のホビット嫌いだぞ?」
団長「僭越ながら…貴方はまだ国王ではござらん?
つまりワシ共に命令できる権限をお持ちでないのです!
だが我々は貴方のお望みを最大限に尊重し、叶えたいと存じております。
しからばワシに命令を下せる現国王のお力添えを賜ったらよろしい!」
カロル「王子さま…」オロオロ
ヒメ「…理不尽な正論に織り交ぜて不利な状況を押し付ける。これだから大人は嫌いなんだ」ムスッ
団長「それもこれも全ては貴方様を思ってのこと!
さぁ今度こそ参りましょう?そして見事、父君を説得なされ!」
ヒメ「こいつも城に入れていいのか?」クイッ
カロル「え?ボクもお城に入っていいの!?」パァァ
団長「…いいでしょう?ただし国王が其奴を捕らえよ、もしくは始末せよと申されれば…ワシはためらいなく実行に移しますぞ?」
ヒメ「命と引き換えになりそうだけど…どうする?」
カロル「わーい!お城!お城!お母さまと宣教師さまにも自慢しちゃおっ!」ピョンピョン
ヒメ「…団長、こいつが僕を拐えるほど賢いと思うか?」
団長「オホンッ…ま、まぁ犯人ではないと確信しましたがホビットである以上、罪深いのです!」
366: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 21:55:53 ID:0HxDtJds0Y
―――城下町(城門前)―――
カロル「大きい門だね!ここから入るの?」ソワソワ
ヒメ「僕らが入るのはこっちの小さい方だ」ビシッ
カロル「なーんだ、ちょっぴり残念かも?」
ヒメ「贅沢言うな?この大きな門は大勢の来客や式典用で普通に出入りする時は小さい方を使うんだよ」
カロル「…大きい門はどうやったら開くの?押したってビクともしないんじゃない?」
ヒメ「屈強な兵士が数十人集まってやっと押し開けるくらいだからな。
外から入る場合は先に知らせて開けっ放しにしておいてもらうんだ。まぁ滅多に使わないけど」
カロル「へぇ…!ボクもこっちから入ってみたいなぁ!」キラキラ
団長「口を慎め、愚か者が!?」
カロル「」ビクッ
団長「ホビットの分際で正門から入りたいだと?
貴様らは城に入れるだけでも奇跡なのだ!ありがたく思え!」
カロル「(神父のおじさまみたい…?)」
団長「城内では静かにするのだぞ。それから靴を脱げ!ホビットに土足でまたがせる敷居はない!」ガミガミ
カロル「はーい…」ヌギヌギ
ヒメ「わざわざ脱がなくても最初会った時みたいにフードで隠せばいいじゃん」
カロル「あ、そっか」ファサッ
367: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 21:57:50 ID:.zQQ4y5jKw
ヒメ「…そういえば今夜はホールで舞踏会があるんだったな。父上も参加なさってるのか?」
団長「…無論にござる。会が終われば陛下は会食に移られますので機会は今しかないでしょうな」
ヒメ「忙しくしてらっしゃるんだな…。まぁ当然か」
団長「本来でしたら貴方も舞踏会でお客様方に演舞を披露しなければならなかったのですぞ?」ジトー
ヒメ「なんなんだ。そのイベント…ただの辱しめじゃないか」
カロル「今からでも間に合うんじゃない?行ってみようよ!」
ヒメ「バカ言うな!僕は絶対やだからな!?」
団長「…いいかもしれませんな」
ヒメ「えっ」
カロル「ほら!団長さんも言ってるよ?」
団長「こうしてはいられない!中に参りましょう!」ガチャッ
カロル「わーい!王子さまの踊りたのしみー!」ピョンッ
ヒメ「ま、待て…!待てったら…!僕に踊れって言うのか!?」アタフタ
団長「どうされました?入られないので?皆々様も待ちわびておりますぞ?」キョトン
ヒメ「ち、父上を説得するのが先だ!」
カロル「いこ!」パシッ
ヒメ「えっ」グンッ
カロル「」タッタッ
ヒメ「えっえっ」タタッ
368: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/30(日) 21:59:16 ID:0HxDtJds0Y
アリアス「……!?」ワナワナ
ダガ「城に入っていきやがったな?どうなってんだ?」
アリアス「何が起こってるのか分からないけれど…確実に良い方向には向いてなさそうね!」
ダガ「せっかく助け出したはいいが、とんだ邪魔が入りやがったからな…」
アリアス「後は戻るだけだったのになんなの…!あの黒装束の男は…!?」
ダガ「ドブネズミのクソガキは知り合いだったらしくてよ。たしか…ウォルターだとか?」
アリアス「…このまま帰れないわよ!」
ダガ「どうすんだよ?」
アリアス「向こうに信者の家があるから、そこで着替えましょ!もうこの服は使えないわよ!」
ダガ「…信者便利だな、おい」
アリアス「えぇ!信仰って大事よ!」ダッ
ダガ「……」ダッ
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