前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
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―――あらすじ―――
人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。
母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。
しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。
幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。
309: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 21:58:48 ID:iluM/Oud42
アントリア「驚いたな…」
母「え?」
アントリア「いや、珍しい子がいるものでね?」
母「坊やとチャンバラしてた子ですか?」
アントリア「あぁ。まさかこんな場所にいる筈はないんだが…」
母「お知り合い?」
アントリア「見かけた事がある程度だ。普段はお近付きにもなれない相手だよ」
母「…あの子が?」
ヒメ「持ち方でたらめすぎ。あともっと腰引け。あぁ引きすぎだよ!」グイッグイッ
子供1「あ、うん…ごめん」オズオズ
子供2「王子めんどくさい…」ボソッ
カロル「…こうかな?」クイッ
ヒメ「ちがうちがう!そうじゃないって!こうだよ!こう!」ガシッ
カロル「あはは…む、難しいや?」
子供1「あ、オレ帰んなきゃ!昼御飯できちゃう!」
子供2「お、オレも!母ちゃんに怒られる!」
ヒメ「もう帰るのか?庶民のクセに忙しいんだな?」
子供1「そ…その剣やるよ!」ダッ
子供2「じゃあな!」ダッ
ヒメ「いらないよ。本物持ってるし、なんなら余ってるし、逆に分けてやりたいよ」
カロル「またねー!」フリフリ
タタタッ……
ヒメ「…なんか逃げるように帰っていったぞ」
カロル「そう?」
ヒメ「(態度が不自然に見えたけど庶民にはあれが当たり前なのか?)」
310: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 22:02:48 ID:iluM/Oud42
ヒメ「一緒だった二人、今日はいないのか?」
カロル「王子さま!これやってみよ?」ビッ
ヒメ「おまえ受け身かと思ったら意外と他人の話聞かないヤツなんだな」
カロル「あ、ごめんなさい!なんの話?」クルッ
ヒメ「いい、いい。それより…あれ、なんだ?」シゲシゲ
カロル「わかんない!」ニコッ
ヒメ「…わかんない?」キョトン
カロル「遊んでみようよ!」ダッ
ヒメ「遊ぶって…ちょっと待て!どうやって遊んだらいいんだ?」ダッ
カロル「階段があるから上がるんじゃないかな?」トットッ
ヒメ「う……」タジタジ
カロル「王子さまも上がっておいでよ!」
ヒメ「い、いい!オレは下で見てるから!」アタフタ
カロル「……?」
ヒメ「まずはおまえが試せ!」
カロル「王子さまも……」
ヒメ「」ジロッ
カロル「…もしかして高い所が苦手なの?」
ヒメ「」ビクッ
カロル「他のにしよっか?」ニコッ
ヒメ「ば、バッカじゃん!平気だし!ぜんぜん怖くないし!」トットッ
カロル「む、無理して上がってこなくていいよ?」オロオロ
ヒメ「してないし!王族に無理な事なんてないし!」ガタガタ
カロル「(震えてる…)」
311: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 22:04:31 ID:iluM/Oud42
ヒメ「ほら、上がったぞ!どうする!?」ドンッ
カロル「たぶんここから降りるんだと思う。ボクから降りてみるね?」
ヒメ「は、はやく!はやくしろ!」ブルブル
カロル「ふふ!いっくよー!」シュー
カロル「わー!滑ったよ!見た?見た!?」キャッキャッ
ヒメ「…滑ったくらいではしゃぐな!」
カロル「王子さまも滑ってみなよ!結構速くておもしろいよ?」
ヒメ「(上るより降りる方が怖い…)」
カロル「ボクも一緒にやるから?」トットッ
ヒメ「え?」
カロル「二人なら怖くないでしょ?ね?」ウインク
ヒメ「うっ…ば、バカにするなよ?怖い訳じゃないぞ?
オレは王子だからな!高い所からおまえたち庶民を見下ろすのが落ち着くんだ!」ブルブル
カロル「ふふ…そうなんだ?」ガシッ
ヒメ「な、なんだ?庶民のクセにオレの肩を押さえるなんて…無礼だぞ!」バッ
カロル「はいはい!いっくよー!」グッグッ
ヒメ「おっ…押すな…!」アワアワ
シューン!
ヒメ「うわあぁぁぁ……あ?」ストンッ
カロル「ね?そんなに怖くなかったでしょ?」ニコニコ
ヒメ「お、おまえなぁ…!」イラッ
312: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/9(日) 22:06:33 ID:IkYx9owoHI
カロル「全部はじめてで楽しいね!」
ヒメ「ふん…そうかー?どれも子供だましでつまらなかったけど?」ムスッ
カロル「そういえば王子さま、お城にいなくていいの?また憲兵さん達が心配してるんじゃない…?」
ヒメ「…平気だよ。誰も興味ないから」
カロル「そんなことないよ?この前だって……」
ヒメ「おまえは何も知らないだろ?余計なお世話だ?」
カロル「う、うん…」
ヒメ「まぁ母上は激怒してるかな。立て続けに無断で外出してるし」
カロル「え?た、た、大変!ご飯抜きにされちゃうよ?」
ヒメ「ご飯…?あぁ食事のことか?」
カロル「…そうだよ?お母さまは怒ったらご飯食べさせてくれないんだ?」
ヒメ「…よほど貧しい家に生まれたんだな。可哀想に」ウルッ
カロル「ど、どうして泣きそうなの?」ビクッ
ヒメ「いや…そうだな。庶民には庶民の苦労がある。無神経な発言が多くてすまなかったよ」ペコリ
カロル「あ、あれ?泣いてないって言わないの?」オロオロ
ヒメ「正直泣きそうだよ。食事も満足に与えられないなんて…噂には聞いてたけどさ」
カロル「や、やめてよ!お母さまが悪いみたい!そうじゃないもん!」アセアセ
ヒメ「…事情があるのは分かるさ。教団は寄付と施しで賄うんだろ?
さすがにおまえの歳でそんな生活を強いられてるとは思わなかったよ…」
カロル「えっと…キミってボクより年下だよね?」アタフタ
ヒメ「城に来るか?僕が頼めば下仕えくらいには……」
カロル「へ、へいき!だいじょうぶだから!」ブンブンブンブン
ヒメ「そうか…。もし本当に困った時は城を訪ねていいぞ?
僕の知り合いだと言えば悪いようにはしないだろうから」
カロル「あ、ありがとう?でも今は大丈夫だよ?」ヒクヒク
大男「んじゃオレサマを雇ってくれよぅ?」ズシンッ
カロル「へ?……わぁっ!」ビクッ
313: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:36:39 ID:3iR/3Imybo
大男「なぁ?いいだろぅ?そんなガキより腕っぷしは立つぜぃ?」
ヒメ「なんだ、貴様は…誰に許しを得て口を訊いている?」
カロル「(おっきい……)」マジマジ
大男「へへへ!パレードで見た王子様そのものだ?高飛車じゃねぇの?」
ヒメ「…僕の顔を覚えてるのか。庶民はいつも憎々しげに父上を睨み付けている印象しかないが」
大男「オレサマはお金が大好きな貧乏人だからよぅ?あんたみてぇな金ヅルの顔を眺めんのが大好きなんだぁ?」
ヒメ「…物乞いに恵むようなモノは持ち合わせてないぞ」
大男「いやいやぁ?あんたの身体一つで十分だよぅ?」
ヒメ「僕を誘拐して強請る気か?命知らずな男だ?」
大男「命知らずぅ?護衛もいねぇ無防備なガキ一匹拐うのなんてなぁお茶のこさいさいだぜぃ?」
ヒメ「こんな人目に付く場所でか?」
大男「野次馬は多い方がいいぜぃ?オレぁ目立ちたがりだからよぅ?」ニタァ
ヒメ「」トンッ
カロル「え?」
ヒメ「なにボーッとしてるんだ?逃げろ?」ボソボソ
カロル「で、でも…」
ヒメ「…おまえが逃げないと僕も動けないだろ?余計な心配はいいから逃げろ?」
カロル「わ、わかっ……」コクリ
大男「うぉっと?」ムンズッ
カロル「!」フワッ
ヒメ「な、なにを…!」フワッ
大男「なんの相談?オレサマも混ぜてくれよぅ?」ニタニタ
ヒメ「こ、この…無礼者!」ジタバタ
314: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:40:07 ID:3iR/3Imybo
大男「王子様よぅ?世の中甘く見ちゃダメダメ?あんたみてぇなお偉いさんが一人で出歩くとロクなことねぇぜぃ?」ブランブラン
ヒメ「黙れ!」ジタバタ
カロル「は、離して…ください!」ジタバタ
大男「こういう目にあっちゃうから良いとこのボンボンはみーんな護衛を引き連れて歩くんだろぅ?」
ヒメ「目的は僕だろ?無関係の人間を巻き込むな!」
大男「へへへ!あんたよぅ?立場分かってねぇんじゃねーのぅ?」
ヒメ「くっ!」ギリッ
母「何をしてるの!」タタタッ
大男「あぁん?」
ヒメ「……!?」
カロル「お母さま!来ちゃダメ!」
母「二人から手を離しなさい!」
大男「誰だ、おめぇ?」
母「あたしはその子の母親よ!」
ヒメ「……!」パチクリ
大男「へひゃひゃひゃひゃ!おかあちゃ〜ん!?」ゲラゲラ
母「な、何がおかしいのよ!」
アントリア「やれやれ…とんだ場面に遭遇したね」スタスタ
大男「あぁ?おかあちゃんの次は旦那かぁ?」
アントリア「今、思いとどまってくれれば憲兵団に掛け合う事はしないよ?」
大男「大きなお世話だよぅ?教団さんも儲からねぇから公園でガキに寄付金たかるようになったのかぁ?」
アントリア「忠告しておくが金銭目当てならやめた方がいい。見返り以上に手痛いしっぺ返しを喰うよ?」
大男「へへへ!オレサマに怖いもんなんかねぇよぅ!老いぼれと女はすっこんでろぃ!?」
カロル「ぼ、ボクもすっこんでいいですか?」プラーン
大男「おめぇ…ナメてんの?」ギョロッ
カロル「ごめんなさい…」モジモジ
315: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:41:55 ID:3iR/3Imybo
ヒメ「はぁ…分かった。言う通りにする。だからそいつは解放してやれ?」
大男「いいともよぅ?……なーんて言うか、ぶわぁ〜か!!」
ヒメ「……!?」
大男「へへへ!人質は多くたって困らねぇ?」ニタニタ
母「冗談じゃないわ!子供を人質にするなんて情けないと思わないの!?」
大男「思わないのぅ〜!ぎゃははは!」ゲラゲラ
ヒメ「くそっ!離せ!」ジタバタ
大男「いい子だからおとなしくしようねぃ?じゃあな、老いぼれにおかあちゃん!」ズシンズシン
カロル「お母さまー!」ジタバタ
母「坊や!」ダッ
アントリア「待ちたまえ!」ガシッ
母「止めないでください!坊やが…連れてかれちゃう!」
アントリア「分かってる!だが追ったところで我々ではどうにもならない!」
母「あぁ…見えなくなって…!」
アントリア「…問題ないさ。あの巨体で子供を二人抱えて闊歩してるんだ。
嫌でも目立つし通報も受けるだろう。後で目撃証言を集めれば居場所はすぐに割り出せる」
母「そんな悠長に構えてられないですよ!その間に何をされるか分からないじゃない!?」
アントリア「城下に住む人間の8割は教団の純粋な信者だ。バックヤードに逃げたとしても僕の人脈が及ぶ。絶対に助け出す事はできるのだよ?
だが下手に追って大男を刺激してしまい、奴が二人に危害を加える暴挙に出たらどうする?」
母「……!それなら早く!手を打ってください!?」
アントリア「もちろんだ。ノワールと合流して信者の協力を仰ぐ。君は教会に戻って付き人の二人に知らせてくれないか?」
母「分かりました…!頼みましたよ!」ダッ
アントリア「承ったよ…」
アントリア「…厄介な事になったな。なんとしても王国側の人間より先に捕らえなければ…」
アントリア「(それにしてもなぜ王子が……まぁいい。考えるより行動だ)」スタスタ
316: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:46:05 ID:3iR/3Imybo
―――バックヤード(裏通りの酒場)――――
大男「おらぁ!」ポイッ
ヒメ「っ…!」ドサッ
小男「さっさとしやがれ、このぉ!」ドカッ
カロル「いっ…!」ドンッ
大男「へへへ!酒蔵でおとなしくしてろぃ?樽なら好きなだけ空けていいからよぅ?」ニタニタ
小男「ひひひ!兄ぃ!せっかくの酒をガキにはもったいねぇぜ!」
ヒメ「こんな事をしてタダで済むと思うなよ…!」キッ
カロル「うぅ…いたた…」サスサス
大男「たーんまり銭を頂いたら無事に解放してやるよぅ?へへへ!」バタンッ
ヒメ「くそっ!最悪だ!」
カロル「…お酒くさいね」ツーン
ヒメ「狭いし暗いし埃臭いし…まるで馬屋だな!」ドカッ
カロル「…」ペタペタ
ヒメ「なにしてるんだ?」
カロル「壁を触ってるの」ペタペタ
ヒメ「見れば分かるよ…。なんで壁に手を這わせてるのか聞いてるんだ?」
カロル「ボクね、何回か閉じ込められたことがあって…ほら、こうやって壁を触ると薄い部分があるでしょ?叩いてみるとよく分かるよ。王子さまもやってみる?」
ヒメ「いいけど…そんなの調べてどうするんだ?」スッ
カロル「ん…とね。あ、ここかな?」コンッ
ヒメ「?」
カロル「穴を空けたいんだけど何か持ってないかな?」
ヒメ「まさか…壁を壊して出るのか?」
カロル「うん。ここは壁も床も木で出来てるからなんとかなりそうじゃない?」
ヒメ「バカ…!そんなの見つかるに決まってるだろ!」
カロル「音を立てないように少しずつ広げて誰か来そうになったら樽で隠そうよ?一回捕まっちゃうとジッとしてたらなかなか出してもらえないもの?」ペタペタ
317: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:47:53 ID:3iR/3Imybo
ヒメ「捕まったって…さっきからなんの話だ?おまえ、犯罪者なのか?」
カロル「あはは。違うよ?いろいろ誤解されちゃって……」
ヒメ「誤解って…どうしたらおまえみたいなチビが閉じ込められたりするんだよ?」
カロル「…今はいいじゃない。それより何か持ってない?」
ヒメ「……護身用に忍ばせておいた短剣ならあるぞ。あいつらが雑な性格で助かったよ」つ【短剣】
カロル「わぁ…!カッコいい?」キラキラ
ヒメ「そう?無駄に宝飾が散りばめられてて悪趣味じゃないか?」
カロル「でもおとぎ話に出てきそう!こういうピカピカした剣!」
ヒメ「ふぅん…おとぎ話、ねぇ。読まないから知らないけどさ」
カロル「ちょっと借りるね?」スッ
ヒメ「はい」パッ
318: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:50:59 ID:3iR/3Imybo
カロル「ん…!」グリグリ
ヒメ「……」
カロル「んぅ…ぅん!」グググッ
ヒメ「…なにしてんの?」
カロル「い、言ったじゃない?壁に穴を空けるの……ん!」グッグッ
ヒメ「あのなぁ…!壁にグリグリ押し付けたってムリだよ!貸せ!」バッ
カロル「あっ…」パッ
ヒメ「チャンバラの時から感じてたけど、おまえって剣術の素養が一切ないだろ?」
カロル「う、うん。実は刃物を持ったのも初めて…?」テレッ
ヒメ「いいか?柄を握りしめて一気に刺すんだよ。こういう風に…な!」ドンッ
カロル「刺さった!」ビックリ
ヒメ「で、抜いて…」スポッ
ヒメ「刺す!」ドンッ
カロル「王子さま、すごーい!」パチパチ
ヒメ「とりあえず言われた通りにやってみたぞ。小さく四角形に…」スポッ
カロル「すきま風が入ってきてる?きっと外に繋がってるよ!」
ヒュールリラルー
ヒメ「覗いてみるか」チョコン
カロル「どう?」
ヒメ「…おまえって意外と勘がいいんだな。誉めて遣わす!」
カロル「ありがとう!」パァァ
ヒメ「(本当に外に通じてるな…。ここ一階だし、僕とこいつならそんなに大きい穴じゃなくても……)」
ダダダッ
カロル「あ、待って!誰か来るよ?」
ヒメ「樽!空樽、持ってこい!」
カロル「は、はい!」ゴロゴロ
319: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:54:12 ID:3iR/3Imybo
ガチャガチャ バアンッ!
小男「おぅい!なんかこそこそやってんなぁ!」ズカズカ
ヒメ「……」プイッ
カロル「……」プイッ
小男「逃げようったってそうはいかねぇんだからな?分かってんだろな、このぉ?」グリグリ
ヒメ「くっ…!」ギリッ
小男「生意気な目ぇしやがって?なんとか言ってみやがれってんだ?」グリグリ
ヒメ「……!」キュッ
小男「ん?なんだ?こんなとこに樽なんか置いてたか?」
ヒメ「!」ビクッ
カロル「!」ドキッ
小男「……」
カロル「」タタタッ
小男「あ、おぅい!」
カロル「」ピタッ
小男「…あやしい。あやしいぞぉ?なんで樽の前に立ちふさがる?」
カロル「た、樽?樽なんて知らないよ?どこにあるの?」キョロキョロ
小男「お前の真後ろにあんだろがぁ!?」
ヒメ「(バカ…!)」ワナワナ
小男「こいつはあやしいなぁ?あやしいから調べちゃうしかないなぁ?」ジリジリ
カロル「……!」ゴクッ
ヒメ「(こうなったら一か八か、こいつを倒して…!)」チャキッ
小男「ひひひ!誘拐犯と人質の間で隠し事なんかさせねぇよ?」ジリジリ
320: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:56:23 ID:3iR/3Imybo
小男「どけ!その樽になにかあんだろ?」
カロル「」ファサッ
小男「おぅん?なにフードなんか取って……げげぇっ!?」ビクッ
ヒメ「!?」ピタッ
カロル「……」ジーッ
小男「お、お、おま…おまままま……」プルプル
ヒメ「…なんだ?」
小男「いや、まだわからねぇ!松明を点けるか!マッチ…マッチ、と…」シュッシュッ シュボッ
ボォッ
カロル「……」ジーッ
小男「ひ、ひひ!ひひひひひ!まちがいねぇや!ホビットだ!?」
ヒメ「えっ」
小男「あ、兄ぃ!ちょいと来てくれよぉ!?」
カロル「……」
321: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 21:58:28 ID:3iR/3Imybo
大男「なんだぃ!うるせぇなぁ!こちとらどうやって交渉しようか頭ひねってんのによぅ!」ズシンズシン
小男「バッキャロー!兄ぃのバッキャロー!こいつはとんでもねぇんだぜ!」
大男「アニキに向かってバッキャローたぁなんだぃ!?殺されてぇのか!?」ゴツンッ
小男「あだっ!いてて!ちげーよ、兄ぃ!とにかくこいつを見てくれよ!」ヒリヒリ
大男「……?」チラッ
カロル「……」
大男「……異人かぁ?眼の色、変だぞぅ?」
小男「バッキャロー!兄ぃのバッキャロー!そりゃ異人じゃねぇよ!ホビットだ!」ギャーギャー
大男「バッキャロー言うなぃ!つかホビット?マジかよ、マジかよ?オレサマ初めて見るぜ!?」
小男「まちがいねぇよ!おらぁ見たことあんだ!薬売りんとこで粉モノ買いに来る貴族が連れて歩いてんの!
噂通り黄色い瞳で真っ白な肌でチビなんだよ!見てみ!まんまじゃねぇか!?」
大男「」ジロジロ
カロル「」ドキドキ
小男「な!?な!?こりゃめでてぇや!売り飛ばしゃ金貨になるぜ!?」
大男「おめぇよぅ?」
カロル「は、はい!」ピシッ
大男「オス?メス?どっちだぃ?」
カロル「……?」キョトン
大男「どっちか聞いてんだ!?さっさと答えねぇとひん剥いて確かめっぞ!?」
カロル「ひっ!お、男…です…」ビクビク
大男「ハズレじゃねぇか!?メスなら高く売れんのによぅ!?」
小男「いいじゃんか!それでもまともなホビットなら十分、金になるぜ!?」
大男「あぁちくしょっ!どうせならメスだったらよかったのによぅ…!」
小男「そうだ!名案思い付いたぜ!こいつのチンコを切り取っちまえばいいんだ!」
カロル「えっ」
ヒメ「は……!?」ゾワァッ
322: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 22:00:41 ID:63GrbQ9zKk
大男「いいねぃ!バッサリいっちまうかぁ?」
小男「待ってろよ!でっけぇハサミ買ってくるぜ!?」ダッ
カロル「ちょ…ちょっと…」アセアセ
大男「薬売りから痛み無くす薬も買ってこいよぅ!」
小男「おうともよ!任せときなって!」バタンッ
カロル「……うそ?」ポカーン
ヒメ「(どうしよう。自分はやられないって分かってても震えが止まらない…)」ブルブル
大男「なぁ?おかあちゃんいたよなぁ?あれもホビットけ?」
カロル「……!」
大男「へへへ…おかあちゃんだからメスだよなぁ?」
カロル「!」ブンブン
大男「ぶわぁ〜か!首振ったって分かるもんねーだ!」ベロベロバー
カロル「ほ、ホントに違うの!ボク、教会に拾われたんです!」
大男「嘘付いたってダメダメ〜!」ニタニタ
カロル「アントリア神官とお母さ…シスター・マリーが親代わりなんです!みんな人間で…!」アセアセ
大男「本当にぃ…?なんでホビットが教会に拾われんだよぅ?」ジトー
カロル「え、えっと…ボクが金貨200枚で売れて…でも捨てられちゃったんです!」アタフタ
大男「金貨200枚ぃぃぃぃいいい!!?」ギョギョッ
323: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 22:02:50 ID:63GrbQ9zKk
大男「お、おいおい…オレサマをおちょくろうったってそうはいかねぇよぅ?」タジタジ
カロル「ホントです!」パシッ
大男「ひぃっ!手なんか握んじゃねぇ!」ビクッ
カロル「シスター・マリーはホビットなんかじゃないんです!」ギュッ
大男「う……」ムラッ
カロル「信じてよ…!おねがい…!」ジーッ
大男「うぉい!やめろぃ!なんか危ねぇ扉開けそうじゃねぇか!?」バッ
カロル「危ない扉?」キョトン
大男「ちぃっ!このオレサマが男にムッシュムラムラするたぁな…!これが金貨200枚の威力かぃ…!」ダラダラ
カロル「信じてくれるの!?」パァァ
大男「悔しいがよぅ…!たしかにおめぇ200枚貰えるツラしてやがる!」
カロル「ボクはおじさま達の好きにしていいから!
みんなには何もしないでね!約束だよ!?」
大男「うぅ…いちいち思わせ振りなこと言うなぃ!?
オレサマはそっちにはいかねぇかんな!?オレは女が好きなんだ!?」
カロル「? さっきから何言ってるの?」
ヒメ「(醜い葛藤だな…)」
324: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 22:04:41 ID:63GrbQ9zKk
バァンッ!
小男「たっだいまー!たった今ー!でっけぇハサミ買ってきたぜー!」ウキウキ
カロル「」ビクッ
小男「路地に薬売りがいなかったから痛み止め買ってねぇけど我慢すんだぞぉ!?」シャキンッ
カロル「ま、待って…!なにする気なの?」ブルブル
小男「なにってお前のをぶった切るんだよぉ!メスの方が高いからなぁ!」
カロル「やだ…!どうやっておしっこしたらいいのさ!?」ズザァッ
小男「うるせ!おとなしく……」ジャキッ
大男「やめねぇか!」
小男「え?」
大男「傷モンにしたら値が下がるだろうがぃ!?」
小男「あ、そっか!兄ぃは頭がいいんだなぁ!?」
カロル「」ホッ
ヒメ「」ホッ
325: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/12(水) 22:19:46 ID:63GrbQ9zKk
大男「へへへ!王子さまとホビットかぁ?こりゃ一生遊んで暮らせるぜぃ!」
小男「てめぇら絶対逃げんじゃねぇぞ!?
なんかあったら酒樽にぶちこんでアル中にしてやっからなぁ!?」
バタンッ!
カロル「…はあっ!た、助かったね?」
ヒメ「…そうだな」
カロル「あ、えと…ごめん」
ヒメ「なにが?」
カロル「隠すつもりじゃなかったんだ…」
ヒメ「だからなにが?」
カロル「ボクがホビット…っていうこと」
ヒメ「…そんな話は後にしろ。こんな汚い場所にいつまでもいたくないんだ」
カロル「イヤじゃないの?」
ヒメ「…習い事の中に教団の教えも入ってるけど聞き流してるよ。だからホビットがどうとかは知らない」
カロル「…そう」
ヒメ「おまえは僕と一緒にアイスキャンディーを食べた仲だしな?
城だとアレの美味しさが分かるヤツはいないし、そういう意味で言えばおまえは特別だ」
カロル「え?あんなにおいしいのにみんな食べないの?」
ヒメ「僕の周りのヤツは見栄えが良くて高そうに見えればなんでもいいのさ?」
カロル「ふーん…もったいないね?」
ヒメ「…僕は味の分からない上流階級の人間より味の分かるホビットの方が好きだぞ?」ニコッ
カロル「……!」パァァ
326: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/17(月) 21:08:59 ID:qNUcx.7liA
―――城下町(教会)―――
母「お願いします!坊や達を拐った人間を一緒に探してもらえませんか!?」
ダガ「ちっ!なんで俺たちが行かなきゃならねぇんだよ…?めんどくせぇ…!」イライラ
母「そこをなんとか…!あんな凶暴そうな人間に拐われて…何をされるか…!うぅ…!」シクシク
アリアス「もちろんご協力させていただくわ?
城下に住まう教団員の助勢も仰いで全力でお子様の救出に臨みます」
ダガ「はぁ?なぁに言ってんだ?くだら……」
アリアス「ダガ。あなたは司祭様を探しなさい?不審な男が出歩く城下で一人にしておく訳にはいかない」
ダガ「…分かった。司祭様の為だってんならしょうがねぇな」
母「あたしにも何か手伝わせてください!
もう不安でたまらなくて…いてもたってもいられないんです!」
アリアス「必要ないわ?おとなしく待っててくだされば十分?」ニコッ
母「そんな…!こんな状況でおとなしくなんてしてられません!」
アリアス「…自覚してくださる?
ホビットのあなたに事情を知らない人間の前をうろつかれると迷惑なんですよ?」
母「…け、けど」
アリアス「お気持ちだけ頂くわ?後は私共に委ねて…勝手な動きをしないよう心掛けてください?」
母「分かり…ました」シュン
アリアス「ダガ!行くわよ!」スタスタ
ダガ「ふ……」スタスタ
327: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/17(月) 21:10:49 ID:qNUcx.7liA
〜〜〜夜〜〜〜
―――教会(客室1)―――
母「まだかしら…」ズーン
マルク「クゥン…」
シスター「大変なことになっちゃいましたね…」
母「……」フルフル
シスター「気をたしかに持って…きっと大丈夫!」サスサス
母「そ、そうね…。教団の皆さんも手を尽くしてくださってますものね…」
シスター「お子さんがケガ無く帰ってこられるように祈りましょう!お母さんも手を重ねて!」
母「は、はい…。マルク?」
マルク「わんっ!」シュバッ
母「いい子ねぇ…」ナデナデ
シスター「あの…できたら自分の手で…」アセアセ
母「…この子も坊やを心配してますの。ね?」
マルク「…あぅん」ションボリ
シスター「そ、そうですよね!祈りは多い方がいいですよね!」
母「えぇ…」ナデナデ
マルク「……」
328: ◆WEmWDvOgzo:2014/3/17(月) 21:12:52 ID:qNUcx.7liA
―――城下町(広場)―――
憲兵1「…以上が聞き込み調査で得た証言になります!」
憲兵2「現場の証言から分かった特徴は単独による犯行で犯人はかなり大柄な男…。
子供二人を脇に抱えて逃げていった事から衝動的で無計画な…要約すると馬鹿の仕業ですね」
団長「そうか…。なら証言を元に犯人が通ったと思われる箇所に探りを入れろ!
目撃証言を手掛かりに行き先を辿れば居場所も掴める筈だ!」
憲兵3「団長!大通りでの聞き込みを終えました!」タタタッ
団長「ご苦労さん。なにか分かったか?」
憲兵3「はっ!犯人とおぼしき大男が裏通りに入っていくのを見掛けたと!」
団長「…バックヤードか。あそこは管轄の部署が通行証を目印に見張りを立てておるだろ?」
憲兵3「それが…王子の捜索に駆り出されていて見張りが不在だったと…」
団長「ぅ…采配を誤ったか!迂闊だったな…!」ギリッ
憲兵1「王子もとんでもない時に抜け出してくれましたなぁ…」
憲兵2「強盗の件も片付いてませんしねぇ?」
憲兵3「こうも重なると…人員をどう回すかによるだろうなぁ」
団長「…王子は絶対に見つけなければならん。かといって拐われた子供らも疎かには出来ん!」
憲兵1「しかし子供らの身元が判明してないんですよ?」
憲兵2「一人は修道服を着てたみたいですから教団の関係者でしょうね?
もう一人はまだ分かってませんけど…」
憲兵3「なら教会にも……」
憲兵4「団長ー!」ダダダッ
団長「…?」
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