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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


267: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/16(日) 20:55:41 ID:QsZCryh2P.
―――美術館―――

カロル「…えへへ!一回来てみたかったんだ?」ルンルン

アントリア「意外だね。まさか芸術に関心を示すとは思わなかった?」スタスタ

母「昔からお絵描きが大好きで、よく落ちてる枝なんかを筆代わりにして地面に書いたりしてたんですよ。
親バカっていう訳じゃないんですけどびっくりするくらい上手でして!」ニコニコ

アントリア「なるほど…。果てはその道を志そうと考えてるのかな?」

母「まさか?あたし達には披露する場がありませんもの…?」クスリ

カロル「…ねぇ、アントリアさん。これ、なんていうの?」

アントリア「それは画家イットル・ネブチェンの『夕食』だ」

カロル「へぇ…」

母「ほんとにただ食卓に料理が並んでるだけの絵なんですね」

カロル「でも見てるとあったかい気持ちになるよ?」

母「…ふふ。そうね?なんだか安心させられるわ?
そのアイル・ネヴァーチェンジさんはどんな方なんですか?」

アントリア「彼の名誉の為に訂正しておこうか。イットル・ネブチェンだ?
階級や身分に左右されがちな華々しい芸術、創作の世界では珍しく…。
貧しい家柄に生まれ育ちながら、その才を認められて個展を開いたり、こういった場に作品を展示されている。
今、都で最も活躍する若き芸術家は誰かと聞けば、まず彼の名前が上がるだろう」

母「苦労なさったからこそ、こんなに暖かい絵が描けるんですのね。きっとその方も素敵な人物なんだわ?」

アントリア「それはどうだろう?噂に聞く限りでは大した偏屈らしいがね」

母「まぁ?ちょっぴり残念です…?」

アントリア「優しい絵を描ける人間が必ず優しいとは限らない。あまり期待しない方がいいな」

カロル「…隣の絵はヘンテコリンだけどおもしろいよ?」

アントリア「ん?あぁ…それは芸術家ランベルヤ卿のご子息、バルガン氏の『高貴なる血族』という作品だよ」

母「うーん…造形っていうのかしら?なんか…全体的におかしくないですか?
足や腕の長さとかもまるでバラバラですし…体もお腹?のところがへこんでたり…背景もたくさんの色をグチャグチャに塗りたくっただけみたいな…」

カロル「んー…。濃い色ばっかり…目がクラクラするなぁ」ムズムズ

アントリア「この作品にもう一つ名前を付けるとするなら…『親の七光り』といったとこかな」ボソッ
268: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/16(日) 21:03:38 ID:X/e8SDb5uw
カッカッ カッカッ

カロル「……?」チラッ

貴族1「…ふんふん、今回も素晴らしい作品が揃っておりますぞ?」チョロリン

貴族2「ふんふん、な・る・ほ・ど?どれもこれもあれもそれもすんばらしい!」チョロリン

カロル「!」プッ

母「どうしたの?吹き出したりして…」

カロル「お、お母さま…あの人間、お髭がチョロリンってしてるよ…?カミナリみたい…?」プルプル

母「はしたないわよ?他人を見て笑ったりしちゃダメじゃない…!」

カロル「だ、だって…見えちゃったんだもん…」プルプル

アントリア「そろそろ抑えた方がいい。こっちへ来るよ?」

母「い、いけない!坊や!もう笑うのやめなさい!」

カロル「うぅ…は、はい」ヒクヒク

貴族1「これはこれは!アントリア神官ではございませんか!ごきげんよう!」カッカッ

貴族2「今日はお付きの者を連れて芸術鑑賞ですかな?」カッカッ

アントリア「えぇ、まぁ…。各々方も?」

貴族1「言わずもがな!我々は芸術には滅法うるさい方でしてな!」

貴族2「こうして足を運んでは物の良し悪しを見比べてやってるのですよ?」

アントリア「ははは…そうでしたか」
269: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/16(日) 21:08:47 ID:QsZCryh2P.
カロル「お、お母さま…笑っちゃいけないんでしょ…?」プルプル

母「だ、だって…!間近で見せられたら…!?」プルプル

貴族1「ムムム?」

アントリア「…いかがなさいました?」

貴族1「…いやいや、後ろの二人がなにやら蹲って震えておりますので?」チョロリン

貴族2「…体調を崩したのか?」

カロル&母「……!」プルプル

アントリア「…あぁ、持病の発作です。少し休めば落ち着くので心配は入りませんよ」

貴族1「はぁ…まぁ他人に移るようなものでないならいいんだが」チョロリン

カロル「ぷっ……」プルプル

母「だ、ダメ…よ。が、我慢なさい…!」プルプル

貴族2「本当にだいじょ……」

アントリア「大丈夫ですとも?」ニコリ

貴族1&2「……」

アントリア「二人ともゆっくり息を吸い込んで…勢いよく吐くんだ。落ち着くまでそれを繰り返しなさい」

カロル「すーっ……」

母「はーっ……」

カロル「すーっ……」

母「はーっ……」

貴族1「……なんなんだ、こいつらは」

貴族2「この場に不相応ですなぁ。神官、連れてくる人間を間違えたのでは?」

アントリア「(人間ではなくホビットなんだがね…)」
270: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/16(日) 21:10:39 ID:X/e8SDb5uw
貴族1「ほうほう!これは新作じゃないか?」マジマジ

貴族2「ふんふん…期待の若き芸術家、バルガンとネブチェンの作品ですか…」ジロジロ

アントリア「確かな目を持つお二方から見て、この二つの作品はどう映りますか?」

貴族1「…ひどい。ひどいなぁ」ポツリ

貴族2「まったく同感!」

アントリア「……」

カロル「…やっぱりみんなも同じなんだね?」コショコショ

母「…あんまり他人の描いたモノにどうこう言いたくないけど、子供の落書きみたいだもの?」コショコショ

貴族1「このネブチェンとかいう庶民の落書き?いやはや芸術とは程遠い!」

貴族2「ただ漠然と食卓に並んだ安っぽい料理の絵など…誰が評価するのか?」

カロル「えっ」

母「まぁっ」

貴族1「ん?」

貴族2「なんだ?」

アントリア「二人とも発作が治まったのだね。よかった、よかった」

カロル「あ、えと…」

母「は、はい!ご心配おかけしてすみません!」アセアセ

貴族1「…ふぅ。気が散るよ」

貴族2「神官…。この二人は外に置いた方がいいのでは?さっきから落ち着いて見れませんよ?」

アントリア「まぁまぁそう言わずに?これ以上、迷惑はかけませんよ」

カロル「ごめんなさい…」シュン

母「(なによ…。偉そうにして…!)」ムッ
271: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/16(日) 21:12:32 ID:X/e8SDb5uw
貴族1「逆にこちらのバルガン氏の作品は素晴らしい!抽象的で何か強い訴えを感じさせる!」

貴族2「ふんふん、こっちの雑な落書きとは違い、濃厚な色味をふんだんに使っており、強烈な印象を受けるが…いやはやどこか繊細さも見られる独特な世界観だ!」

アントリア「ふむふむ。詳しい方にはそう見えるのだね…。僕らは素人なので全く逆の評価を下していましたよ」

貴族1「はっはっは!それは失礼。しかし見る目がないとしか言いようがない!」

貴族2「私どもは幼い頃より数々の名画や彫刻など美しい芸術に触れてきました。評価としてはこちらが正しいと思われますぞ?」

アントリア「…そうでしょうか?ここに展示されている以上、ネブチェン氏の作品も一定以上の評価を受けているのでは?」

貴族1「…まず夕食という作品名からして品がない。内容もそのまんま?
その上、夕食という題材にも関わらず人の姿も描かれておらず殺風景で寂しげな印象だ…。そう思いませんかぁ?」

貴族2「然り!バルガン氏は人も描いており、造形からして想像の上をいく美!すんばらしい!」

貴族1「詰まる所ネブチェンの作品などなんの芸もない写生に過ぎない」

貴族2「視野が狭いというか…陳腐で貧困で芸術的感性の無さを露呈してますよ、これは。
これを評価した専門家もどきの審美眼を問いたいものだ」

貴族1「まぁ加えて言うなら生まれが仇となったんでしょうかねぇ?
陰気で下等な貧民の巣窟、バックヤードなどで育った人間には価値ある芸術など造れっこないんですよぉ…」

アントリア「……」

母「(…結局、貧しい人間が気に入らないだけじゃない?なにが芸術よ!くだらない!)」

貴族1「おっと!ここばかり見ていても仕方ないな!ではごきげんよう!」

カロル「そうかなぁ?ボクはこっちの絵も好きだけど…?」ボソッ

貴族2「」ピクッ
272: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/16(日) 21:16:58 ID:QsZCryh2P.
貴族2「…今、なんと言ったぁ…?」ギヌロォッ

カロル「え?」ビクッ

貴族1「ネブチェンの作品の方が好きだと、そう聞こえた!」

カロル「…は、はい。どっちもいいと思うけど……」

貴族2「神官はまだ分かるが…お前の発言は聞き捨てならないぞ!
さっきから邪魔ばかりしておいて我々の確かな目を疑う気か!?」

カロル「う、疑ったりしない…です。ボクはこっちが好きかなって…?」マゴマゴ

貴族1「あぁ〜…失礼だが生まれは?」

カロル「生まれ?ボクはホビットだから……むぐっ!?」バッ

母「平民です!田舎生まれの!それはもう途方に暮れるくらいの田舎者ですわ!おほほほほ!?」ガシッ

貴族1「…今、ホビットって言わなかったか?」

貴族2「我輩にもそう聞こえたぞ…」

母「まぁ?ホビット?そんなバカおっしゃらないで!?」アタフタ

カロル「んぅーっ!んぅーっ!?」モガモガ

貴族1「ば、バカ…!?」ヒクヒク

貴族2「おい、貴様!誰に向かって……」

アントリア「そこまでだ!」ピシャリッ

貴族1&2「」ビクッ

カロル&母「」ビクッ

アントリア「非常識な振る舞いはよしたまえ。ここは品評会の会場でも無ければ自分の家でもない。館内だ!
芸術を語る者が公共の場で節度も考えずに声を荒げるのはいかがなものだろうか?」

貴族1「…お、おっしゃる通り…」

貴族2「そ、それも…そうですねぇ」ポリポリ

カロル「むぐ……おふぁあふぁわ?」ポンポン

母「すみません…」パッ

カロル「ぷあっ…ご、ごめんなさい…?」ペコッ
273: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/16(日) 21:20:05 ID:QsZCryh2P.
アントリア「美的感覚など人それぞれでしょう…?
自由な見方ができるからこそ様々な発展を遂げられるのが創作物の面白さでは?」

貴族1「ま、まぁ…庶民の感覚になぞらえるとすれば…それも一つの意見としましょうかぁ?」フンスッ

貴族2「庶民の描いた絵を庶民が賛美するというのなら納得だ?
芸術への深い理解と敬意が著しく欠けているのだろうな?」フンスッ

アントリア「いかように解釈していただいても構いませんよ。では僕らはこれで失礼します」スタスタ

カロル「(…なんで決め付けるんだろう?)」

母「坊や?行きましょ?」スタスタ

カロル「…うん」スタスタ

貴族1「…庶民は庶民らしく路上の絵描きにジャリ銭でも撒いてろ」ボソッ

貴族2「ククッ…」ニヤニヤ

カロル「……!」ズキンッ

アントリア「…言わせておけばいい」スタスタ

母「そうよ?相手にしたらダメ!」スタスタ

カロル「う、うん」スタスタ

アントリア「稲妻のような形をした髭を蓄えて人前に立てる彼らの審美眼なんてあてにはならないさ。
芸術を語る前に恥を知るべきだ」クスッ

カロル「ぷっ!」

母「うっ…ふふ…ふ!ち、ちょっと…やめてくださいな…!?」プルプル
274: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:03:48 ID:YvuzyYVhZU
〜〜〜夜〜〜〜

―――教会―――

ガチャッ

シスター「あ、神官!おかえりなさいませ!」

アントリア「ただいま。遅くまで留守にしていてすまなかったね」

カロル「えへへ!」ニコニコ

母「ふふ!よかったわね!」ニコニコ

カロル「うん!ずっと欲しかったんだ!」ギュッ

司祭「遅い!?」

カロル&母「」ビクッ

アントリア「ノワール…帰ってそうそうなんだと言うのだね?」

司祭「宣教師が憲兵に連れていかれたんじゃ!!」

カロル&母「えっ」

アントリア「…詳しく聞かせてくれないか?」

司祭「むっ…そ、それがのう。分からんのじゃよ」ゴニョゴニョ

シスター「昼間に憲兵団の方が訪ねてきまして…。幸い本人は帰ってきたんですけど…」

アントリア「帰ってきた…?」

司祭「うむ。軽く取り調べを受けたが何もないと言っておってなぁ…」ポリポリ

アントリア「…それはおかしな話だな。
こんなにも早く捜査をかけられるとは思わなかったが…。
それ以上にシスターやダガ君もいる中で宣教師君だけが調べを受けて何事もなく帰ってくるというのは…」

司祭「じゃろう?わしもおかしいと思い、問いただしたんじゃが…何もないの一点張りじゃわい」

アントリア「ふむ…なんにせよ本人の話を聞かない事にはどうにもならないな」

司祭「…しかしなぁ。奴はろくに喋ろうともせんぞ?」

アントリア「では頼んだよ?」ポンッ

カロル「えっ」

母「…まぁそうなるわよね」
275: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:05:43 ID:YvuzyYVhZU
―――教会(客室1)―――

ガチャッ

宣教師「……」ペラッ

ダガ「咬むな!咬むなぁぁぁぁ……!ビゴパノチェスゥゥゥゥ!!!!」ジタバタ

マルク「わぐぅぅ!」ガブッ

カロル「ただい…ま?」

母「な、なんか大変なことになってるわね?」ヒクヒク

宣教師「おや、二人ともおかえりなさい?都見物は楽しめましたか?」ニコッ

マルク「あんっ!」パァァ

カロル「う、うん!とっても楽しかったよ?」

母「置いていってごめんなさいね。ちゃんといい子にしてた?」ナデナデ

マルク「わぅんっ!」コクリ

ダガ「…てめぇの目は節穴か?」ズキズキ

母「…マルクの面倒を見てくださってありがとうございました?」ニコッ

ダガ「…お、おう」ドキンッ

母「すみませんけど一度席を外してもらえますか?」

ダガ「あぁ?」

母「アントリアさんがお呼びでしたよ?」

ダガ「そ、そうか…?分かった…」スクッ

母「(あんなに咬まれてたのにピンピンしてるのね…)」

マルク「がうぅぅるるる!!」フシューフシュー

ダガ「う…!で、出てくっつってんだろ!?」ドタドタ

ガチャッ バタンッ
276: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:08:15 ID:UavECGF.sw
宣教師「画材を一式、買ってもらえたんですか?」

カロル「うん!アントリアさんがボクの絵、見たいって言うんだ!」

宣教師「カロルくんは上手ですもんね?ジョーさんもキミの絵を見て感心してましたよ?」

母「ふふ。これ、お土産です?あたしの好みだからお口に合うか分からないけど…」つ【パン】

宣教師「そんな…わざわざすみません」

母「焼いたパンに砂糖をまぶしただけの単純なものらしいんだけど、ことのほか美味しくて…あなたにも食べてもらいたくなったの?」ニコッ

宣教師「ありがとうございます。後でいただきますね!」ニコッ

カロル「ボクからもおみやげ!」つ【ネックレス】

宣教師「純銀製の首輪ですか。高価だったのでは…?」

カロル「アントリアさんにねだってみたの!かわいいから宣教師さまにピッタリかなと思って?」ニコニコ

宣教師「…な、なるほど」

母「あら?お気に召しませんでした?」

カロル「あ…ご、ごめんなさい。ボク…こういうのあんまり知らないから、宣教師さまの趣味に合わないかも」マゴマゴ

宣教師「あ、いや…そうじゃないんです!ただ私はこういった装飾品を身に付けた事がありませんので……。
なんだか照れくさくて、少し戸惑ってしまいました…」アセアセ

母「…きっとお似合いになりますよ?付けてみては?」

カロル「ボクも見たい!付けて、付けて!」

宣教師「そうですね。緊張しますが…付けてみます!」カチャカチャ
277: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:13:19 ID:YvuzyYVhZU
カロル「」ワクワク

母「」ニコニコ

宣教師「…ど、どうでしょう?」チャラッ

カロル「わぁ…!すっごく似合うよ!かわいい!」パチパチ

宣教師「そ、そう…ですか?」モジモジ

母「金と比べて銀の光沢は控えめな印象があるけど…謹み深さがあなたらしくて、とても素敵よ?」ニコニコ

宣教師「あ、あはは…そんな…私など…」テレテレ

カロル「気に入ってくれた?」ニコニコ

宣教師「もちろんです。大切にしますね?」ニコリ

カロル「よかった!」

宣教師「これでキミからの贈り物は二度目でしたよね。前に頂いたカリアムのお花も私の教会に活けてあるんですよ?」

カロル「そうなの?宣教師さま、あんまり嬉しそうじゃなかったから捨てちゃったのかなと思ってた?」

宣教師「捨てたりしませんよ。本当は嬉しくてたまらなかったんですから。
キミからの贈り物は全て私にとって大事な宝物ですよ?」

カロル「…そ、そうなんだ?」テレテレ

母「ふふ。照れてる?」クスクス

カロル「えへへ」テレテレ

宣教師「おやおや」クスクス
278: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:16:11 ID:UavECGF.sw
カロル「あ、そうだ。宣教師さま、今日なにかあったの?」

宣教師「おや…司祭達から聞いたんですか?」

母「アントリアさんに何があったか聞いてくれって頼まれちゃったのよ?」テヘペロ

宣教師「えぇー…それを私に言いますか?」タジタジ

カロル「ドアの外にはマルクがいるから誰かがこっそり聞いたりしないよ?」

ワンッ!!

宣教師「それは頼もしいですね…。さっきまで猛犬と化してましたし…」ヒクヒク

母「ここにはあたし達とあなただけしかいないわ…?ね?教えてちょうだい?」ウインク

宣教師「…うーん。ホントに何もないんですけど」

母「え?司祭さんだから話さなかったんじゃないんですか?」

宣教師「あはは…違います、違います。何もないのにしつこく聞いてくるので少し強めに言いましたが…」

カロル「なーんだ!司祭さまも心配性だね?」

宣教師「あの方は昔からそうなんですよ。おせっかいが過ぎると言いますか…余計な心配が多くて面倒なんです」ブツブツ
279: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:20:03 ID:UavECGF.sw
母「ふふ。思春期の娘とお父さんみたいな関係なのね?」クスッ

宣教師「…つい最近まではそういう信頼もあったのですがね」

カロル「今は信頼してないの?」

宣教師「ないですね」キッパリ

カロル「!?」

宣教師「これは即答させていただきます。何度も信頼を裏切られてきましたから」

母「今は反抗期の娘と空気の読めないお父さんみたいな関係なのね?」

宣教師「…親子で例えられるのは心外です」プイッ

母「あらあら、ごめんなさい?冗談ですから怒らないで?」

宣教師「怒ってはいませんが…」

カロル「また信頼し合えたらいいね!」

宣教師「どうでしょう…。少なくともあの方が考えを改めるまでは出来ないと思います」

カロル「出来るよ、きっと!」

母「ダガさんの時みたいに仲直りしてみたら?」

宣教師「また謎の勝負をさせられるんですか!?」

母「ふふ。いいじゃないですか?ダガさんも許せたんだし、司祭さんも許してあげたら?
険悪な人と一緒にいるのって息苦しくなるもの?」クスクス

宣教師「そもそもダガと仲直りした覚えもありません!」
280: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:21:51 ID:YvuzyYVhZU
―――城―――

政務官「…私からは以上。他になければ、これにて……」

大臣「あぁ、リルラ政務官?もう一つ議題に上げたいのですが?」スッ

政務官「どうぞ」

大臣「陛下には前にお伺いを立てさせていただいたのですがね…。実は伝説の大樹を借りてある式典を行おうと考えているのですよぉ?」

ザワザワ ザワザワ

国王「却下すると申した筈だ!」ジロッ

大臣「えぇ、却下されましたとも。なのですぐに取り下げました!
やはり陛下の意向に添わない興行などすべきではないと!わたくし、そう思うに至りましたところ……」

国王「……?」

大臣「こんな書類が出てきましてなぁ…?」ピラッ

政務官「内容は?」

大臣「大樹を聖地と定め、年に一度、巡礼の場としたいという教団からの嘆願書でしてなぁ」

国王「……」

大臣「もう何年も承認待ちのまま、ほったらかしにされていたようで…たまさか似たような内容だったので判を押して、こうして議題に上げてみた所存です!」

国王「くだらん!あの忌まわしき大樹を聖地にだと?馬鹿も休み休み申せ!」

大臣「んぅ〜…皆様もそのように思われますかなぁ?」

政務官「…事前の連絡も無しに上げる議題ではないでしょうな」

大臣「では却下と?」

政務官「いや、私は賛成だ。あの大樹は長年、国で管理していながら手付かずのままだった。
教団の信者は同盟国にも大勢いるのだ。聖地巡礼といった一つのまとまりある行事を開催すれば、すなわち国交を潤滑に進める起爆剤となろう!」

国王「余は認めんぞ!あの大樹は罪深きホビットが育てた物だ!
あのような呪われた樹を崇め、巡礼するなど正気の沙汰ではない!」ダンッ

ザワザワ ザワザワ
281: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:24:43 ID:YvuzyYVhZU
大臣「…しかしですなぁ?
あの大樹がホビットによって育てられたなんて世に広まっておりませんし、むしろ神様のおわす天へと繋ぐ架け橋であると伝承にはございますぞ?」

国王「元はと言えば我が父の代に仕えた高官がでっち上げた物!伝承など意味を持たん!」

政務官「御言葉ですが…口が過ぎますぞ?その伝承により、我が国は平穏無事に健全な国家を取り戻したのです。
今さらになって全てをさらけ出してしまえば、また無益な争いが生まれ、手にした平和も泡と消えましょうな?」

国王「……」

大臣「陛下は全てがでっち上げだと知りながら、何故ホビットを拒むのです?
便利な種族ではありませんか?汚れてもらうにはうってつけですしねぇ」

国王「黙れ!余の他に却下を推す者はおらんのか!?」

シーン

大臣「では…賛成を推す方は拍手をちょうだいしたい?」

政務官「無論、承認すべきだ!諸君もそう思わないか?」パチパチ

パチパチ パチパチ

大臣「決まりですな?日時の指定は追って連絡致しますので、国交行事の一つであると念頭に入れていただきたい!」

パチパチ パチパチ

国王「……〜〜〜!」ワナワナ

大臣「陛下もそのようにご理解いただけますか?」ニヤリ

政務官「ふっ…くくく…」ニヤニヤ

国王「」ガタッ

大臣「おんやぁ〜?陛下、どちらへ行かれ……」

バタンッ

大臣「やれやれ…」

政務官「さて、これにて終了か。では解散するとしましょう」ガタッ

ガヤガヤ スタスタ ガヤガヤ スタスタ
282: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/19(水) 21:26:30 ID:UavECGF.sw
大臣「政務官殿の鮮やかな弁舌、実にお見事!おかげで皆さんにも納得していただけましたぞ?」

政務官「私にきっかけを作らせただけでしょうに?皆も既に手懐けていたのは明らかだ?」

大臣「なんだ、ご存知でしたかぁ?」

政務官「怖いですなぁ?敵には回したくない…」

大臣「利害が一致する以上は協力関係を築きますよぉ?ですがもし反旗を翻そうものなら…」

政務官「此度のように陛下さえ、力業で黙らせる貴方を目にして妙な気を起こそうとは考えられませんよ」

大臣「ふひひ…それはあなたも同じことでは?」ブヒッ

政務官「なんにせよ国交行事の大幅な拡大は願ってもない。
陛下の意を汲むか、国家の繁栄に尽力するか、天秤にかけた結果としましょうか?」

大臣「わっはっは!政務官殿はまことに弁が立ちまするな!?」ゲラゲラ

政務官「では会食がありますので失礼」スタスタ

大臣「お忙しいようで」

バタンッ

大臣「…さぁて、これで教団のジジイ共も満足だろう。
ヘマトバザールに依頼を済ませて、招待状も用意しなければ…と」スタスタ
283: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:27:34 ID:tVDyKCFPzs
―――城(謁見の間)―――
国王「……」

ヒメ「遅くまでご苦労様です」

国王「誰に断って腰を据えている…?」

ヒメ「玉座とは意外に固いものですね?お尻が痛くなります?」

国王「そこは余の場所だ!」ペイッ

ヒメ「いたた…!乱暴にどかさずとも…今日の習い事は昼前に済ませましたが?」

国王「そんな心配はしておらん…。一人にしてくれまいか?」ストッ

ヒメ「たまにはいいじゃないですか。親子の会話があっても?」

国王「…妃がおろうが?」

ヒメ「母上との会話は胸焼けがいたします。あの方は私を父上の後釜としてしか見ておりませぬ?」

国王「余に何を望んでおる?」

ヒメ「先に申しました通りです」

国王「急に何を言い出すかと思えば…余にはお前が分からんよ」

ヒメ「でしょうね。貴方は僕と接しようとしないのですから」

国王「……」

ヒメ「こうして向き合ってみていかがですか?」

国王「…分からんよ。まるで分からん」

ヒメ「…そうですか」シュン

国王「もういいだろう。お前の気まぐれには十分付き合ってやった…」

ヒメ「気まぐれなんかじゃありません…」ボソッ

国王「一人にしてくれ。誰にも会いたくないのだ」

ヒメ「……イヤです」

国王「いい加減に…!」ガタッ

ヒメ「いけませんか?」ジーッ

国王「うっ…!」ググッ
284: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:29:44 ID:5Hag5NEFy2
国王「……下がれ」ストッ

ヒメ「……」

国王「下がれ!!」ダンッ

ヒメ「…そこまでおっしゃるなら」スクッ

国王「手間を取らすな…」

ヒメ「」スタスタ

国王「……」

ヒメ「」ガチャッ

ヒメ「…父上、最後によろしいでしょうか?」クルッ

国王「はぁ…なんだ?」

ヒメ「貴方にとって僕はどういう存在なのですか?」

国王「質問の意図が分からん」

ヒメ「どういった解釈でも結構です。お答え願えますか?」

国王「…知らん。下がれ」

ヒメ「答えていただけるまで下がりません」

国王「……余の後継ぎだ。それ以上でもそれ以下でもない」
285: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:30:24 ID:tVDyKCFPzs
ヒメ「…後を継ぐのであれば誰でもよいのですか?」

国王「は?」キョトン

ヒメ「僕は紛れもなく貴方の子です。
だからこそ運命に従い、教養を身に付け、貴方の後継者として相応しい人間になろうとしています」

国王「……?」

ヒメ「ですが僕は貴方の事をあまり知りません。
どうすれば貴方にとって大切な存在になれるのか、教えていただきたいのです」

国王「よかろう…。一度しか申さぬ。しかと耳にしておけ」

ヒメ「…はい」

国王「興味がない」

ヒメ「は……?」ドクンッ

国王「満足か?分かったら下がれ。これ以上、父を疲れさせるな…」シッシッ

ヒメ「……」

ヒメ「」ペコリ

バタンッ
286: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/23(日) 22:32:32 ID:tVDyKCFPzs
―――城(通路)―――

団長「……」コキッコキッ

団長「近衛、憲兵の兼任も楽じゃないな。結局こんな時間になってしまったか」フゥー

ヒメ「」ボーッ

団長「…王子!?」ギョギョッ

ヒメ「」ビクッ

団長「な、な…何をしておられるのです!?」タタタッ

ヒメ「なんだ、お前か」

団長「お身体を労ってくだされ!このような吹きさらしに身を置いては冷えてしまわれます!?」

ヒメ「…そういえば」

団長「は?」

ヒメ「お前、僕が城下に降りた時に父上が心配してたと言ってたな?」

団長「え…!む、無論!いてもたってもいられぬご様子で…私共に王子の捜索を指示なされ……」アタフタ

ヒメ「どうせならもっとマシな嘘をつけ」

団長「」ドキンッ

ヒメ「たった今、陛下に会ってきた」

団長「お、お許し…くださいませ…!ワシは…ワシはただ……」ズルッ ガクッ

ヒメ「……」

団長「王子の為を思い…!それだけなのです!決してからかおうと企んだ訳では……」ガバッ

ヒメ「気休めか。お前から見て僕はそんなに哀れなのか?」

団長「い、いえ…滅相もござりませぬ!」

ヒメ「まぁ…概ね正しい。微かでも気に留めてくれたら、なんて淡い期待もあった」
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うpろだ
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