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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


240: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/9(日) 16:07:38 ID:CFz6aP7Usc
司祭「しかし大臣の奴め。のらりくらりとしておったが今日中に決められるのじゃろうな?」

アントリア「昨日はそう言っていたがね。なんでも我々の申請を承認待ちの書類に紛れさせて判を押すとか」

司祭「なぜハナからそうせなんだか…」

アントリア「なんだかんだと国王を立ててやるつもりだったんだろう。
お伺いを立てて直接承認してもらえれば、それがなにより望ましい」

司祭「で、それが叶わぬと見て無断で認可を与えようという訳か」

アントリア「そうすれば無理やり議題に上げられるからね。
手際のいい大臣のことだ。すでに力ある上等な役人たちを抱き込んで多数意見を笠に国王を納得させる腹積もりなんじゃないかな」

司祭「毎度、毎度と…人望のない王じゃなぁ。結局は配下に押し負かされとる」

アントリア「君もバックヤードに入って分かったんじゃないか?
高官の圧力が国王の威光に勝っている事実が?」

司祭「わしらの時代は裏表はっきりと分かれておったがなぁ?
今はまさに表裏一体、あからさまになっとる」

アントリア「それだけ自由な時代になったのさ…。
ああしたごろつきまがいを飼い慣らしてる現状に民は当然、不信感を募らせるが、その矛先はどうしても国王にいく」

アントリア「王都の人間はそうでもないが…野放しにされ、納税だけを強いられる田舎民にしてみればおもしろくないだろう」

アントリア「それすらも計算づくで高官たちは国作りをしているのだろうがね」
241: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/9(日) 16:10:54 ID:yTWeyWMdBg
司祭「…もとはと言えば悲劇の町の一件もホビットへの差別を強いる為に見せしめとして滅ぼしたんじゃしな。
あれから民は王国への恐怖心とホビットへの差別意識を強く植え付けられた訳じゃが…いやはや巧妙じゃのう」

アントリア「そういった恐怖や憎しみを国王に向けさせ、ぶつける矛先をホビットに向けさせればすべて丸く収まる訳だよ。
後は権力と自由を手にいれた高官が裏で糸を操るだけの簡単なからくりだ」

司祭「ふん。俗物共が…!」ギリッ

アントリア「まぁ…王と民をないがしろにした構造が僕らにとっては前向きに働く。そういう意味では実にありがたい話だよ」

司祭「ろくに口を開けぬ民から血税を絞り取るだけでは飽きたらず…。
明らかに法を外れたバックヤードのような純利益の上がる資金源を側に置いて、わしら教団と癒着して信者を洗脳した上で更に寄付金だなんだと搾取する、か。
奴らはいったいどこまで財をもて余せば満足するんじゃ?」

アントリア「あればあるだけいいのさ。危機感を持たずに支配欲を満たせる、誰もが描く理想図に他ならないだろう」

司祭「唯一の救いは密接に関係を持ったわしらが王国にあまり縛られぬことくらいか」

アントリア「…我々もまた、その恩恵を受けているだけになんとも言えないがね」

司祭「ほっほっほ!それもそうじゃな!」
242: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/9(日) 16:15:44 ID:CFz6aP7Usc
ガチャッ

シスター「お連れしました!」

カロル「おはようございます!」ペコリ

母「おはよう…ございます」ペコリ

宣教師「……」

アントリア「やあ、おはよう?よく眠れたかな?」

カロル「はい!ベッドがふかふかで気持ちよかったです!」ニコニコ

母「……」

司祭「…まぁ座れ。遠慮はいらんぞ」

カロル「はーい!」ストッ

母「……」ストッ

宣教師「失礼します」ストッ

シスター「食事を暖めておいたんで持ってきますね!」セッセッ
243: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/9(日) 16:17:58 ID:CFz6aP7Usc
アントリア「さて、今日は特に予定もないな」

司祭「わしはちょいと市場を見て廻るかのう。せっかく遠出してきたんじゃ。退屈してはいられん」

アントリア「そうか…。君たちはどうする?」

カロル「?」モグモグ

母「どうするって……」

宣教師「どうもしませんよ。昨晩のように扉の外に見張りを置いて動き回れなくするのでしょう?」

司祭「やっぱりやめたと逃げられては困るでな」

宣教師「…年寄りの冷や水ですね。老婆心もほどほどに?」パクッ

司祭「ぬぅ…!?」イラッ

母「そんなことを聞いてどうするんですの?」ズズッ

アントリア「もし良ければ都見物させてあげようか?」

母「え…!」ピクッ


アントリア「もちろん僕も付き添うが…それでもいいなら」

カロル「へぇ…!」ワクワク

母「でもあたしと坊やが外に出たら騒ぎになるんじゃ…?」

アントリア「修道服に付いているフードで目元を隠しておけば誰も気付かないよ」

カロル「お母さま!行ってもいい?」ワクワク

母「あーら、どうせダメって言っても行くんでしょ?」

カロル「あ…う……や、やっぱりいいや」マゴマゴ

母「え?行かないの?あたしは行くけど…じゃあ坊やだけお留守番ね!」クスッ

カロル「……!ず、ずるい!ボクもいく!」プンスカ

母「うふふ。冗談よ、少しは楽しんだっていいものね?」ニコニコ

カロル「やったー!」パァァ
244: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/9(日) 16:23:56 ID:yTWeyWMdBg
アントリア「決まりだね。食べ終えたら出かけようか。教会の留守はシスターに任せよう」

カロル「はーい!」パクパク

母「ほらほら、焦ってがっつかないの?」

アントリア「味わってお食べ?シスター自慢の手料理だ。なかなかイケるよ?」

カロル「えへへ…ごめんなさい」テレテレ

母「宣教師さまも来ますよね?」

宣教師「…私は遠慮しておきます。どうかお二人、親子水入らずで楽しんできてください」ニコッ

カロル「えぇ!宣教師さまも行こうよ?」

宣教師「すみません。昨日まで色々とありすぎて少し疲れてしまいました…」

カロル「そんなぁ……」シュン

母「わがまま言って困らせちゃダメよ?」

カロル「はーい…」ションボリ

宣教師「私のことなど気にせず楽しんでくださいね?」ニコッ

カロル「うん…」

母「ふふ。寂しがりやさん?」ツンツン

カロル「ち、ちがうよ…!」

宣教師「(なかなか無い機会ですし、二人だけで楽しませた方がいいですよね…)」ニコニコ
245: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/12(水) 14:16:53 ID:l5W1Sce4Lg
―――城下町(時計塔)―――

カロル「わぁぁあ…!おっきいねー!」キラキラ

アントリア「城下の名物の一つ、時計塔だよ。都まで足を運んだからには欠かせない鑑賞物だ」ウンウン

母「石造り…とは違うんですのね?」シゲシゲ

アントリア「この塔は全て鉄で作られているのだよ」

母「まぁ!鉄で?信じられないわ?」

アントリア「苦労したようだよ。莫大な財と人員を注ぎ込んだ上に完成まで20年の月日が流れたそうだ。
装飾は芸術家が手掛け、建築には鉄鋼等を加工する技術に精通した鍛冶屋連が団結して携わった…」

カロル「たくさんの人間が頑張ったから出来たんだね!」

アントリア「そうだとも。たゆまぬ歩みと共に文明の発展を築いていったのは人の叡智の賜物だよ。
この塔のように一つ一つの大事を為し遂げる毎に我々も時代の進歩を感じさせられる。
だが、やがてはこれも過去の物になり、人は更なる時代を先駈けていることだろう。
元学者として歴史を紐解く職務に殉じてきた僕にとっては…これ以上に胸を熱くさせるものはない」ペラペラ

母「は、はぁ…」

カロル「どうしてここに大きな時計を作ったの?」

アントリア「それは実に単純なのだが…名所を一つ建てて他国の旅行者などを呼び込む為だね。
今は平和条約を結んだ同盟国同士での物流交易や異文化交流を盛んにしているが…やはり分かりやすい目玉は必要だ」

カロル「へぇ!お母さま、ボクらにもそういうのってあるの?」

母「どうだったかしら…。昔は部族で住み分けたりしてたみたいだし、今もみんな散り散りに隠れ暮らすのが当たり前だから…これっていう名物は無いんじゃない?」

アントリア「ホビットは自然物を愛し、恵みに寄り添う種族だ。人間とは社会性や生態そのものが異なるのだね」

カロル「ふーん…」ガッカリ
246: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/12(水) 14:21:13 ID:l5W1Sce4Lg
母「あ、あの…そろそろ別の場所に……」

アントリア「? 塔の中に入らないのかね?」

母「え?入るんですか?」

アントリア「単に外から眺めるだけでは面白みに欠けるだろう?」

母「(だって話が長かったんだもの…)」

カロル「入れるの!?」

アントリア「一人につき、銅貨50枚払えば入れるのだよ。我々なら三人だから150枚」

母「お、お金…無いんですけど」

アントリア「…僕が出すが?」

母「で、でも…悪いですし」

アントリア「遠慮はいらないよ?その為に付き添っているのだから?」

母「……」マゴマゴ

アントリア「干からびた年寄りの案内では退屈かもしれないが…財布の紐だけは緩くしてある」ニコッ

母「…や、やっぱりいけません!他人のお金でなんて…!」

カロル「うん。入ってみたいけど迷惑はかけられないもんね?」

アントリア「僕とノワールの夢に協力すると約束してくれた君たちへのお礼だよ。やりたいようにしてるのだ?」

母「け、見物出来るだけでもありがたいですわ?ね?」

カロル「うん!人間の町を歩いて見られるんだもの!楽しいよ?」

アントリア「……無欲だねぇ」
247: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/12(水) 14:29:05 ID:w.7DrG1zg2
アントリア「それならこうしようか。付いてきなさい」スタスタ

母「ど、どちらへ?」スタスタ

カロル「?」タッタッ

アントリア「やあ、三人なんだが入れるかな?」

受付「はい、大丈夫ですよー。お代は銅貨150枚になります」

アントリア「」ジャララッ

受付「はい、確かに。これ三人分の入場証になります」つ【入場証】

アントリア「どうも」パシッ

母「ちょ、ちょっと待ってください…!」アセアセ

アントリア「ほら、首に提げて」つ【入場証】

母「い、いけませんよ…!」アセアセ

カロル「あ、アントリアさん…?」アセアセ

アントリア「…払い戻しは可能かね?」クルッ

受付「はい?出来ませんけど?それから一歩でも塔に入って、一歩でも塔から出たら入場証はお返ししてもらいますよ?
また入りたければ再度、こちらの受付でお金を支払っていただきます。
ちなみに入場証の有効期限は夕方の18時まで。18時を過ぎると塔を閉鎖致しますので、お気をつけください。
18時までに入場証をお返しいただけなかった場合は罰則として銅貨20枚支払ってもらいます。
それから18時を過ぎてもなお塔から出てこなかった場合なども罰則として銅貨20枚支払っていただきます」ペラペラ

アントリア「…ということらしい?」ニヤリ

母「な、なんてセコいやり方なの…!?」アングリ

カロル「あ、あはは…入るしかないね?」アセアセ

アントリア「こういった名所は国が管理してる為、収入が丸々国家予算に流れるのだよ。
なのでこういった悪意ある商法にもお咎めが及ばないのさ」

母「…人間って大変ですのね」シミジミ
248: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/12(水) 14:31:21 ID:l5W1Sce4Lg
―――時計塔(最上階)―――

アントリア「ここは全面にガラスが張ってあるから中の構造がよく解るのだよ。
どうだね?なかなか面白い仕掛けだと思わないかな?」

母「初めて見ますわ…!あれはなんですか?」

カロル「鉄の何かがぐるぐる回ってる?」ジーッ

アントリア「あれは歯車と言うんだ。
密接に入り組んだいくつもの歯車が規則性をもって回転することによって外側に備え付けられた時計の針が共に回る仕組みになっているのだね」

カロル「…人間って器用なんだね!こんなにすごいの初めて!」ドキドキ

母「ホント…!普通に生きてたら多分一生見られなかったわね?」ソワソワ

アントリア「喜んでもらえて嬉しいよ。だがここにはもう一つ仕掛けがある」

カロル「まだ何かあるの!?」ビックリ

母「どんな仕掛けがあるんです?」ワクワク

アントリア「こっちへ来てみたまえ?」

カロル「はーい!」タタタッ

母「坊や!屋内で走らないの!」スタスタ
249: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/12(水) 14:33:00 ID:l5W1Sce4Lg
アントリア「ほら、これを覗いてごらん?」スッ

カロル「うん!」カチッ

母「……?」

カロル「え……うわぁっ!?」ギョギョッ

アントリア「面白いだろう?」

カロル「う、うん!すごい!すごいや!」キャッキャッ

母「な、なに…?なんなの?」

カロル「はい、順番!お母さまも覗いてみて!」グイッグイッ

母「急かさないでちょうだい…。もう!何がそんなに……」カチッ

カロル「」ワクワク

アントリア「クク……」クスクス

母「きゃー!すごい!すごいわ!すごーい!?」キャッキャッ

カロル「あはははは!お母さまったら、すごいしか言ってないじゃない?」ニコニコ

アントリア「それは望遠鏡と言ってね。遠くまで細かに観察できる優れものなのだよ。
塔の最上階から見渡す城下の景色はいかがだろうか?」

カロル「すごくすごかったです!」キラキラ

母「ホント!すごすぎて何がすごいか分からないくらいすごかったですわ!」キャッキャッ

アントリア「うん…あぁっとそうだね…?二人ともすごいから離れようか。ゲシュタルト崩壊しそうだ」

カロル「へ?こんなにすごいのに?」キョトン

母「すごいのに?」キョトン

アントリア「う、うん…。僕はいいんだが誰かがそう言ってる気がするんだ?」
250: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/12(水) 14:34:51 ID:l5W1Sce4Lg
―――城下町(広場)―――

カロル「はー…楽しかった!」ルンルン

母「あんな景色…もう見られないでしょうねぇ」ホクホク

アントリア「また来ればいい。君の力で差別を無くした後にでも……」

カロル「…そうですね。差別が無くなったら、おんなじ仲間にも見せてあげたいです!」ニコッ

母「……」

アントリア「…さて、次はどこへ行こうか?
歴史的な建造物や名所は廻りきれないほどあるが…君たちの年齢から考えると眺めるばかりでは飽きてしまうかな?」

母「うーん…どうでしょう?坊やは何か見たい物はないの?」

カロル「……あっ!」ピカーン

母「何かあったの?」

カロル「ウォルターさんがショーをやってるんだって!見てみたい!」

母「ウォルタさん?誰のことかしら?」

アントリア「……」

カロル「アントリアさんの知り合いって聞きました!見せてもらうことってできますか?」

アントリア「…残念。彼のショーは年に2、3回程度しかやらないのだよ。ちなみに今日は休業だ」

カロル「え?そうなの?」

アントリア「人気がないし、たいしたショーでもない。需要がないのだから自ずと回数も少なくなるのさ。
それよりあそこに何軒かテントが並んでるだろう?
あれらは自家製の串焼き肉や砂糖を薄くまぶした焼きたての甘いパンなど各種、様々な物を目の前で作って出してくれる城下の名所の一つだ」ビッ

カロル「……」ジュルリ

母「……」ジュルリ

アントリア「休業してると分かってウォルターくんに会いに行くか、あそこでおいしい出来立てのお昼ご飯を食べるか、選択は君に委ねようか?」

カロル「……」

母「……」

アントリア「…どうするかね?」
251: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/12(水) 14:37:36 ID:l5W1Sce4Lg
カロル「あーん…んっ!」ガプッ

母「…甘くって生地がシャリシャリしてますね。
それなのに中身はふうわりしていて…こんなにおいしいパン、初めて!」シャリッ

カロル「モグモグ…この串焼きのお肉もおいしいよ?油がジョワーッてするの!」

アントリア「嬉しい感想だね。勧めた甲斐があるよ。広場で噴水を眺めに食べるのも悪くはないだろう?」

カロル「うん!とっても!」モグモグ

母「ありがとうございます。こんな贅沢…なにもかも初めて尽くしで…」ウルッ

カロル「泣いちゃダメだよ。お母さま?親切にしてくれたアントリアさんに悪いでしょ?」サスサス

母「えぇ…分かってるわ…。分かってるけど…!」ウルウル

アントリア「…こんなことで差別を広めた我々の罪が消えるとは思っていないがね。
少しでも報えたのなら、この都見物は無駄じゃなかった」

母「疑ったりしてごめんなさい…」グスッ

アントリア「疑われて当然な事をしてきたのだから仕方ない」

カロル「…よかった。疑いが晴れたら、三人でもっと楽しく廻れるね?」ニコッ

アントリア「そうだとも。心置きなく楽しもうじゃないか?」ニコッ

母「うっ…うっ…うぅぅ」グシッ
252: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/12(水) 14:39:07 ID:l5W1Sce4Lg
―――教会(客室1)―――

宣教師「……」ペラッ

ダガ「……」

マルク「ぐぅぅぅ」ガッ

宣教師「……」ペラッ

ダガ「……咬むな、ビゴパノチェス。いてぇよ…」

マルク「わぐわぐ」ガブッ

宣教師「……」ペラッ

ダガ「いてぇんだよ。ふくらはぎに牙が食い込んでんだよ…」

マルク「グルルルル!」ガブーッ

宣教師「……」ペラッ

ダガ「おい、ガキ…本なんか読むな。なんとかしやがれ」

宣教師「…イヤでしたらよそに行かれては?
マルクくんは置いてきぼりにされて拗ねてますから、しばらくはご機嫌ななめですよ」ペラッ

ダガ「ふ……そうはいかねぇ。てめぇを見張ってなきゃ司祭様になに言われるか分かったもんじゃねぇからな…。
アリアスは司祭様に付いていっちまうしよ…。なんで俺がてめぇなんかと……」ブツブツ

宣教師「聞いてません。イヤならよそに行けばいいと言うのです。読書の邪魔です」ペラッ

ダガ「あぁ!?」ガタッ

マルク「」ガブーッ

ダガ「あががっ!い、いてっ!いってぇ!」ピョンッ

宣教師「(二人は今頃、神官と楽しんでるんでしょうか…)」ペラッ
253: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/12(水) 14:41:16 ID:l5W1Sce4Lg
ガチャッ

シスター「あの…宣教師さんにお客様がお見えになられました」オズオズ

宣教師「私に…?」キョトン

ダガ「あぁ!いてぇ!ケツを咬むな!」ジタバタ

マルク「あんっ!わぅん!」グルルルル

シスター「……な、なにをしてらっしゃいますの?」

宣教師「…お気になさらず」シラーッ

シスター「…と、とにかくお呼びですので」

宣教師「分かりました」スタスタ

ダガ「ま、まちやがっ…うごぉっ!?」

マルク「きゃんっ!きゃんっ!」ガブリンチョ

シスター「(関わり合いになったらいけない気がする)」スタスタ

宣教師「(ご懸命な判断です)」スタスタ

バタンッ

ダガ「クソォォォ!!」ドタドタ

マルク「わんっ!」ダッ
254: 名無しさん@読者の声:2014/2/13(木) 12:54:36 ID:Jt692V/v/E
ダガ哀れwwC
255: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/13(木) 20:43:34 ID:RCXCl5If6k
―――城下町(市場)―――

店主「お客様にはこれなんかおすすめですよー!」パッ

司祭「どれどれ…?」

店主「こちらの眼鏡!お歳を召されたお客様には大変人気な代物となっておりますー!
一度かけてごらんなさい!ショボショボした視界も澄み渡り、遥か遠くの景色まで一望出来るようになっちゃいますから!」

司祭「……」カチンッ

店主「おやおやおや?どうなされました?お買い上げですか!?
そうですよね!?もう歳ですし目なんか見えちゃいませんもんね!?」

司祭「」ブチッ

店主「ありがとうございます!!お代は銅貨120枚になります!!」

司祭「やっかましいぃぃぃぃい!!!!」

店主「!?」ビクビクゥッ

司祭「誰が買うか、こんなもん!?わしを年寄り扱いするでないわ!!」

店主「も、申し訳ございませんでしたー!!」ペコペコ

司祭「ふん!気分が悪い!他を当たるぞ!」ズンズン

アリアス「かしこまりました」スタスタ

店主「あぁっ!お客様!」


店主「トホホ…今日はまだ一個も売れてないのに…」ショボーン
256: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/13(木) 20:45:06 ID:Zn..IGjcXM
司祭「なんじゃ、あれは!人をバカにしとるのか!?」プンプン

アリアス「おっしゃる通りです」

司祭「それにしても…どこも賑わっとるが、その割りには良い店がないのう」

アリアス「あの雑貨屋など込み合ってますが…」

司祭「雑貨屋じゃと?くだらんガラクタの為に並びとうないわい!もっと空いた店はないのか?」

アリアス「そんな基準で選ぶから質の悪い店に入るんじゃないでしょうか……」ボソッ

司祭「む?なんぞ言うたか?」

アリアス「…そういえば司祭様は未だに宣教師を疑ってらっしゃるのですか?」

司祭「…なんじゃ、いきなり?」

アリアス「いえ…ただわざわざ大臣に押し付けたあの娘が戻ってきてしまったのを懸念しておられるのではと」

司祭「ふん!じゃからこそお前たちに見張らせとるんじゃ!いつ本性を表し、癒しの力を狙うか分かったものではないからな!」

アリアス「……」

司祭「…なんじゃ?まだ言いたい事があるのか?」

アリアス「これはわたしの勝手な推測ですが…宣教師は癒しの力に興味を示していないのではないでしょうか?」

司祭「ほっ!なにを言い出すかと思えば!奴は大聖堂でさんざん嗅ぎ回っておったじゃろうが?」

アリアス「…それがもし癒しの力を狙っていた訳ではないとしたら?」

司祭「他に何がある?」

アリアス「分からないです…。けれど彼女から癒しの力を利用しようとする気は感じられませんでした」

司祭「あてにならんな…。だいたいなぜそんな事が分かる?」

アリアス「…女の勘、ですかね」

司祭「…ますますあてにならん。なんでもいいが奴への注意は怠らんようにな」

アリアス「はっ…」
257: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/13(木) 20:47:08 ID:RCXCl5If6k
―――回想(アリアス)―――

宣教師「か、カロルくん…です」ボソッ

宣教師「悪いんですか!?ホビットが好きじゃ悪いんですか!?」

宣教師「知りませんよ!愛に歳の差も種族もありませんもん!いいじゃないですか!?」

――――――

アリアス「……」

司祭「行くぞ!この調子では日が暮れるわい!」

アリアス「はっ…」

司祭「」キョロキョロ

アリアス「そもそも何を探しておいでなのですか?」

司祭「杖を新調したいんじゃが…なかなかいい店が無くてのう」

アリアス「…それでしたらあちらに専門の店がございましたが」

司祭「む?どこじゃ?案内せい!」

アリアス「こちら……ん?」キョトン

司祭「どうした?」

アリアス「見間違いでしょうか…?宣教師に似た娘が憲兵に連れられているような…?」

司祭「なにぃ!?」

アリアス「見えませんか?あそこなのですが…人だかりの向こうに…」

司祭「くっ…ボヤけて分からん」ゴシゴシ

アリアス「老眼鏡…買えばよかったですわね…」ボソッ

司祭「行くぞ!」スタスタ

アリアス「はっ…」スタスタ
258: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/13(木) 20:48:44 ID:Zn..IGjcXM
ザワザワ ザワザワ

憲兵「ほらほら、道を空けた空けた!見せ物じゃないんだぞ!」パッパッ

宣教師「……」スタスタ


司祭「あ、あれは紛れもなく…!一体どうなっとるんじゃ?」

アリアス「…仮にも大臣のお屋敷に忍び込んで連れ出してしまった訳ですし、憲兵が動くのは自然ですわね…」

司祭「…まずいのう。教会におったと知れれば大臣の怒りを喰うのは間違いあるまい」

アリアス「…あの娘もホビットを庇う以上、余計なことは言わないと思いますよ。
なにかしらの理由をつけて誤魔化すんじゃないでしょうか?」

司祭「うむ…。まぁそうなればあやつはまた大臣の屋敷に戻されるだけじゃろうが…憲兵団は小僧も探しとるはずじゃ。
アントリアに相談してすぐにでも安全な場所に隠さねばならんのう」

アリアス「…では神官を探しますか?」

司祭「うむ。お前さんは向こうを探せ。わしは大通りを探ってみる」

アリアス「かしこまりました」ペコリ
259: ◆WEmWDvOgzo:2014/2/13(木) 20:56:16 ID:RCXCl5If6k
―――憲兵団本部(取調室)―――

憲兵「…で、気が付いたらいつの間にか知らない男に連れられていたと」

宣教師「はい」

憲兵「その割りにはあんた、あの男と親しげに話していたじゃないか?」

宣教師「冗談言わないでください!誰があんな変人と!?」カッ

憲兵「分かった分かった…じゃあ教会にいたのはなんでだ?」

宣教師「旅の宣教師のフリをして匿ってもらっていたんです」

憲兵「昨日、一緒だった犯人と子供もか?」

宣教師「犯人は子供が目当てだったようで…私を置いて姿を眩ましてしまいました。
なのでどこにいるのかも分かりませんし、少なくとも教会には来てません」

憲兵「ほんとかぁ?」ジロジロ

宣教師「……」

ガチャッ

団長「失礼するぞ」ズカズカ

憲兵「だ、団長!」ガタッ ピシッ

宣教師「……!」

団長「かしこまらんでよろしい。順調か?」

憲兵「はっ…!そ、それがおかしな証言をしておりまして…」

団長「そうか。では切り上げていいぞ。あとはワシがやる」

憲兵「えっ!いや、しかし…!」

団長「あぁ、別にお前を責めてる訳じゃないぞ?個人的に聞きたい事があるだけだ」

憲兵「は、はぁ…了解しました!では自分は失礼します!」ピシッ

団長「うむ。ご苦労さん」

スタスタ ガチャッ バタンッ
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sage:


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