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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


118: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:50:44 ID:nhkhr2ewlE
カロル「…ねぇ、そろそろ教えてよ。なんで泣いてたの?」

男の子「アイスキャンディ食べたいから」

ウォルター「ん?」

宣教師「はい?」

カロル「アイスキャンディ?」

男の子「あそこ。売ってるだろ?」ビシッ

カロル「あ、あの氷の棒のことかな?」

男の子「氷の棒って言うなよ!アイスキャンディおいしいんだぞ?」

宣教師「つまり…アイスキャンディ欲しさに道の真ん中で泣きわめいて…声をかけてきた人に買ってもらおうと?」

男の子「うん。すごい計画だろ!分かったら買え!イチゴ味だぞ!」

ウォルター「おーおー。ちょい待ってろ?今、俺が真っ赤なイチゴエキスをドバーッと……」ゴソゴソ

宣教師「おやめなさい。往来でナイフを取り出すんじゃありませんよ」

カロル「宣教師さま。宣教師さま」グイグイ

宣教師「どうしました?」

カロル「た、食べてみたい…です?」モジモジ

宣教師「えっ」

カロル「ダメ…ですか?」ウルッ

宣教師「」キュンッ
119: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:52:15 ID:nhkhr2ewlE
宣教師「ウォルターさん」

ウォルター「?」

宣教師「手持ちはありますか?」

ウォルター「…あぁ?」ジロッ

宣教師「残念ながら私、無一文なんですよ。持ち物は没収されてしまいましたから」

ウォルター「……何が言いたい?」

宣教師「この子たちにアイスキャンディを……」

ウォルター「却下だ」

宣教師「なぜです!?恵まれない子供たちに一筋の愛を…!」

ウォルター「初対面を庶民扱いするお坊っちゃんが恵まれてねぇと思うかよ?」

宣教師「な、ならせめてカロルくんだけでも!」

ウォルター「話が変わってんだろうが」

男の子「いいから買え、愚民」

ウォルター「とりあえず人気のない場所に連れてくぞ。話はそれからだ」

???「おい!貴様らぁ!?」

男の子「」ビクッ
120: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:53:41 ID:nhkhr2ewlE
憲兵「団長!いました!」

団長「貴様らぁ!そのお方に何をしているぅ!?」

宣教師「な、なんですか!あなた方は!?」

団長「すぐにそのお方から離れろぉ!?捕らえられたくなくばなぁ!?」

宣教師「何を言って…!?」

ウォルター「おとなしくしろ…」コショコショ

宣教師「え?」

ウォルター「そいつら憲兵団だ…。バレたらやべぇ…」コショコショ

宣教師「……!」

ウォルター「あちらさん、まだ気付いちゃねぇ…。適当にハイハイ言って見逃してもらうぞ…」コショコショ

宣教師「分かりました…」コクッ

団長「貴様らは旅の宣教師か?」

ウォルター「そうそう。そうなんですよ!このクソガ…お坊っちゃんとはなんら関係がないんで?」

宣教師「泣いてるのを見かけまして…泣き止ませようと声をかけただけなんです」

男の子「ウソつけ。ジンギスカン鍋にして食うだの、頬を張りたいだの言ったクセに」

団長「き、貴様ら!それはまことか!?」

ウォルター「ハハハ。ジェシー?この子は何を言い出すんだろうね?」HAHAHA

宣教師「誰がジェシーですか、誰が…」

団長「この方をどなたと心得る!?貴様らなどが気安く触れていいお方ではないのだぞ!?」

男の子「いいよ、いいよ。その通りだけど。庶民だからしょうがないよ」マァマァ

団長「いいえ、なりませぬ!」

ウォルター「いやーすみません。無知な庶民なんで大目に見てくださいな」

宣教師「(貴族の子息でしょうか…。妙に身形がいいとは思ってましたが)」
121: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:57:40 ID:nhkhr2ewlE
団長「この方はなぁ!国王様の第一子、ヒメ様だぁ!!」

宣教師「エェェェェェエ!!!?」

ザワザワ ザワザワ

ウォルター「お姫様だったのか!?」

ヒメ「王子だけど名前がヒメなんだよ。オレだって気にしてんだよ」

団長「さぁヒメ様!こちらへ!父君もご心配なされてますぞ!?」

ヒメ「あれ?もう一人は?」キョロキョロ

ウォルター「お?そういやぁ…いなくなってんな?」

宣教師「え…カロルくん?」キョロキョロ

団長「ヒメ様!聞いてます!?」
122: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:59:19 ID:nhkhr2ewlE
団長「ヒメ様!帰りますぞ!?」

ヒメ「やだね。オレはアイスキャンディを食べる任務の真っ最中だ。オレの計画に狂いはない」

団長「そんなもの!城に戻れば、もっとよいおやつがございます!?」

ヒメ「口を慎め、愚か者!アイスキャンディこそ至高!我が身に生命の息吹きを与えし鼓動なり!」

団長「ははーっ!申し訳ございません!」フカブカ

宣教師「(何を言ってるのかよく分からない)」

ウォルター「おーおー!いたぞ?」

宣教師「カロルくんですか?どこに?」

ウォルター「店の前でアイスキャンディ眺めてらぁ?なぁにやってんだか…」

ヒメ「あ、ズルいぞ!」ダダダッ

団長「ヒメ様ぁぁぁ!?追え!追えぇぇい!!」

憲兵「はっ!」ダッ

憲兵2「ヒメ!」ダッ

憲兵3「お待ちを!」

団長「誰だぁ!王子をヒメと呼び捨てた輩はぁ!?」

宣教師「(ややこしい…)」

ウォルター「とりあえずあいつを連れてずらかるか。めんどくせぇ」

宣教師「あ、カロルくんがこっちを見ましたよ!ここは私がジェスチャーで…」
123: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 09:00:44 ID:gvQ8CaIXqU
宣教師「に・げ・る!こっ・ち・き・て!」バッバッ

カロル「?」

宣教師「は・や・く!」バッバッ

カロル「」コクリ

宣教師「伝わりましたね!」

ウォルター「あのジェスチャーでかぁ?」ジロッ

カロル「」バッバッ

宣教師「……あれ?」

ウォルター「笑顔で手招きしてんな。分かりやすく『早くおいでよ』って口パクしてんぞーぅ」

宣教師「そんな…」ガクッ
124: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 09:03:44 ID:gvQ8CaIXqU
ヒメ「おい!おまえ!オレを差し置いて行くなよ!」

カロル「待ちきれないんだもの!」ニコニコ

団長「ヒメ様ぁぁぁ!」

ヒメ「団長うるさい。どっか行け」

団長「!?」

宣教師「はぁ…」トボトボ

ウォルター「」スタスタ

カロル「あっ!宣教師さまー!ウォルターさん!」ブンブン

ヒメ「遅いぞ、庶民A、B。アイスキャンディが溶けるだろうが」

宣教師「」イラッ

ウォルター「」ビキビキ
125: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 09:09:34 ID:gvQ8CaIXqU
店主「は、はははははひい!しょ、しょしょしょしょしょうお待ちおまちハマチイクラウニ」ガタガタブルブル

ヒメ「落ち着け、まだ何も言ってないし」

カロル「どの味にしよっかな!」ワクワク

ヒメ「イチゴとブドウとリンゴがあるぞ。オレはもちろんイチゴだ!」

カロル「へー!」

店主「苺と葡萄と林檎があります!味です!」ビクビク

ヒメ「言ったじゃん?」

カロル「じゃあボクはブドウにする!」

店主「かしこかしこまりましたかしこー!」パパッ

ヒメ「一回しか言わないから聞いとけよ。オレは……」

ヒメ「イチゴだ!!」ドンッ!

店主「ひいい!覇王色の覇気ぃぃ!?」

宣教師「(あ、何か今まで守り続けたモノが崩れたような…なんとも言えない感覚が…)」
126: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 09:13:30 ID:nhkhr2ewlE
店主「ど、どぞ」つ【アイスキャンディ×2】

カロル「ありがとうございます!」パシッ

ヒメ「苦しくないぞ!」パシッ

団長「それを言うなら苦しゅうないでございます。ヒメ様」

カロル「お姫さまなの?」

ヒメ「…勘違いさせるから名前で呼ぶのやめろ」

団長「はっ!失礼しました!」

カロル「おいしいね?」ペロペロ

ヒメ「うん。やっぱりイチゴこそ至高なりけり」ジュッポジュッポ

団長「王子、はしたのうございます」

ヒメ「うるさい。アイスキャンディはしゃぶるのがいいんだ!
溶けて垂れた甘い雫を丹念に舌で舐め取るのが甘美なんだ!」

団長「お言葉が更にはしたのうございます」

ヒメ「あーもう!好きに食わせろ!だからイヤなんだ!」

カロル「?」ペロペロ

店主「あのー…恐れながらお代を頂戴していないのですが?」

ヒメ「お代は庶民が出すよ。ねー?」

宣教師「…だそうですよ、庶民Bさん?」

ウォルター「ちっ!いくらだ?」

店主「銅貨10枚になります」

ウォルター「血税だけじゃ飽きたらずアイス代まで搾りやがって…まったく王族ってのは強欲だぜ」ジャラッ

店主「1、2…〜10枚、と。はい、まいどあり!」
127: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 09:17:49 ID:nhkhr2ewlE
―――城下町(広場)―――

ヒメ「」ジュッポジュッポ

カロル「すごいね。勢い」ペロペロ

ヒメ「王族と庶民では性能が違うのだよ。アイスキャンディをしゃぶるスピードでオレに敵うヤツはいない!」ジュッポジュッポ

カロル「…あ、溶けてきちゃった」ペロペロ

ヒメ「ゆっくり食べ過ぎだよ。もっと早く食わないと全部溶けちゃうぞ!」

カロル「う、うん」ペロペロ

ヒメ「アイスキャンディは時間が勝負だからな!」ジュッポジュッポ


団長「…すまんな。旅の宣教師一行よ。どうやらワシの勘違いだったらしい」

宣教師「いえいえ、お気になさらず。お立場を踏まえれば仕方ないですよ」

団長「む…そう言っていただけるとありがたい」

ウォルター「あの王子様はしょっちゅう城を脱け出すので?」

団長「いや…初めてだ。ワシも朝、脱け出したと聞いて腰が抜けたよ」

ウォルター「…その割りには違和感がねぇんですなぁ」

宣教師「確かに…身形はいいのに中身はわんぱくな普通の男の子ですよね」

団長「……」

ウォルター「どうされたので?」

団長「いや、ワシは憲兵団の団長であると同時に…城の近衛兵団の団長もしておってな…。
王子には剣術や礼儀作法等、御教授させていただいておるのだが……」
128: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 09:20:44 ID:gvQ8CaIXqU
ヒメ「ちぇっ。もう無くなったよ」ペロリ

カロル「あんなに急ぐんだもの?」ペロペロ

ヒメ「これ見よがしに…!」ギリッ

カロル「ふふ!おいしいなー?」ヘラヘラ

ヒメ「あっ!自慢したな!庶民のクセに!パパに言いつけるぞ!?」

カロル「あはっ!ごめん、ごめん。ヒメくんも食べる?」

ヒメ「庶民がべろべろ舐めたのなんか食わないよ!バッチぃな!」ムキーッ


団長「長年仕えておるが…あんな王子は初めて見た」

宣教師「……」

ウォルター「普段は違うんで?」

団長「うむ。第一に王子は笑わない、というよりも感情を表に出さない」

宣教師「あそこまで感情表現豊かな子…ではなく王子様が?」

団長「いつも物静かで…良く言えば落ち着いており、悪く言えば暗いお方だ」

ウォルター「ハッハ!人は見かけによらないもんだ!」

団長「国王からは早急に連れ戻すよう言われたが…」

宣教師「……」

団長「あの王子があんなにも楽しそうにしている…。ワシは…もう少しだけ見ていたい」

宣教師「」クスッ
129: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:34:30 ID:WaxinZxJMc
カロル「ヒメは王子さまなの?」

ヒメ「まぁな。そんなことよりおかわりを所望する。なおイチゴ味以外は認めん」

宣教師「庶民Bさーん?」

ウォルター「王子はともかくてめぇが庶民B言うな。殺すぞ」

カロル「すごーい!ボク王子さまって初めて見た!」

ヒメ「オレの周りの空気中に漂う気品で気付くだろ、普通。よっぽど鈍感なんだな」

カロル「きひん?それってどこにあるの?」キョロキョロ

ヒメ「おまえ、その発言一歩間違ったら極刑だからな?」

宣教師「(どこから見ても生意気な庶民の子にしか見えません)」

ウォルター「気品の意味も知らねぇで…」

団長「(……いつもは漂っておられる気品がまったく見えん。おいたわしや)」

ヒメ「今なんか言ったか?」ジロッ

ウォルター「あ?」

ヒメ「団長、そいつ死刑」ビシッ

団長「はっ!そいつを押さえろ!」

憲兵's「ははーっ!」バッ ガシッ

ウォルター「はぁぁぁぁぁ!?」ググッ

ヒメ「おい、愚民。許してほしいか?」ニヤニヤ

ウォルター「当たり前だろうがぁぁ!?俺がなにしたってんだ!?」

ヒメ「口の聞き方悪すぎ。いいよ、やっちゃって?」

団長「はっ!ここでは民衆の目に入ります!一度、連行してから刑に処すとしましょう」

ウォルター「ち、ちくしょうめ!」

カロル「お、王子さま。ボクが代わりに謝るから許してあげてよ…」オロオロ

ヒメ「えー。しょうがないなー。じゃあイチゴジュース買ってこいよ。それで帳消しにするから」

ウォルター「(この俺をオモチャにしやがって…クソガキめ…!)」ワナワナ
130: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:38:10 ID:gpeu.5Rw8g
カロル「王子さまはなんで外にいるの?」

ヒメ「たまには庶民の生活を覗いてからかってやるのもおもしろいと思ったんだ」

カロル「へー」ゴクゴク

ヒメ「ん、うまし。やっぱりイチゴは究極なりけり」ゴクゴク

ウォルター「……」

宣教師「私とカロルくんの分までありがとうございます」ゴクゴク

ウォルター「王子様たっての頼みだからな…」イライラ

団長「ついでにワシの分まで…感謝する」ゴクゴク

ウォルター「てめぇ分かっててやりやがったな?」ギリッ

団長「…知らんなぁ?」ニヤニヤ

ウォルター「(殺す…)」
131: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:39:59 ID:WaxinZxJMc
ヒメ「おまえ、名前は?」

カロル「ボク?カロルだよ!」

ヒメ「ふーん。団長、オレは帰らないぞ」ゴクゴク

団長「い、いや…しかし…」

ヒメ「しかし?」ギロッ

団長「父君も心配なされておりますし城も混乱の最中にあります。城下にいては御身に危険がないとも限りません」

ヒメ「……」

団長「どうか…それを飲み終えましたらご同行願います」

ヒメ「…じゃあ、もう飲まない」トンッ

団長「でしたら、このまま連れ帰るまでです」

ヒメ「ふん。おまえなんか死刑だ」ムスッ

団長「ご理解くだされ…。貴方の身は…将来の国の命に繋がるのです」

ヒメ「そんなの…おまえら大人のエゴだ」

団長「ヒメ様…」

ヒメ「城に帰ってなんとする?僕がいるからなんになる?
僕なんかいなくても…こうして国は生きている」

宣教師「(口調…?いや…雰囲気そのものが…変わった?)」

ヒメ「お前らがただ無意味に騒ぎ立てるだけだ。誰も僕なんか必要としていない」

団長「杞憂にございます。民も王国に仕えし我々も貴方を必要としておりますとも」

ヒメ「…見ろ。活気に溢れ、波立つ人々の姿を?」

団長「……」

ヒメ「仮にも自国の王子がこうして城下に降りているのに誰も僕に気付かなかった」

団長「……!」

宣教師「う…」タジ

ウォルター「……」ポリポリ

カロル「……」
132: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:42:32 ID:gpeu.5Rw8g
ヒメ「…いいじゃないか。僕じゃなくても」

団長「何をおっしゃいます!?」

ヒメ「疲れたんだ。王子として生きていくのは」

団長「なりません!誰ぞに聞かれては……」

ヒメ「聞かせてやりたいな。にやけ面の高官共に…そいつらに操られる無力な国王に…何も知らない無関心な民草に…」

ヒメ「この国の未来を担うべき次期国王は…庶民に憧れを抱く愚かしいガキなのだと」

団長「おやめください!?」アセアセ

宣教師「恐れながら…王子様」

ヒメ「なんだい。庶民A?」

宣教師「むっ!…コホンッ!あ、あなたは王子である事が不満なのですか?」

ヒメ「不満だね。この上なく」

カロル「どうして?王子さまってスゴいじゃない?」

ヒメ「…庶民はいいよ。気楽で」

カロル「え?」

ヒメ「必要以上に持ち上げられて…必要以上の教養を植え付けられる。
言葉にしてみればなんてことないけど実際は地獄だよ」

団長「お気持ちは重々承知致しております…。しかし、だからといって先の発言は無責任と存じますぞ?」

ヒメ「無責任だと?」キッ

団長「そうではござりませんか!行く末は国の頂点に君臨する貴方が……」

ヒメ「ふざけるなぁぁぁあ!!!!」

カロル「ひっ!」ビクッ

団長「」ビクゥッ

宣教師「っ!」ビクビクゥッ

ウォルター「(っるせぇなぁ…)」キーン
133: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:46:25 ID:WaxinZxJMc
ヒメ「責任だと?僕の年齢でそんなモノを持ってる奴がこの国に何人いる!?」

団長「……!?」

ヒメ「僕だって自由が欲しいんだ!息苦しさを感じない安らぎの中で気ままに暮らしたい!」

ヒメ「当たり前の事を望んでるだけじゃないか!貴様ら大人が責任を押し付けるな!!」

団長「お…王子…」

ヒメ「不要に豪華な調度品も…黙して付き従う家来も…打算的な貴族連中も…それらしく見せる為の習い事も…うんざりだ!?」

ヒメ「僕は庶民に生まれたかった…!高すぎる地位などいらなかったんだ!」

ヒメ「僕に言わせれば…これは差別だ。なぜ僕だけが自由に生きてはならないのか…」

団長「……」

宣教師「聞き捨てなりませんね」ズイッ

ヒメ「…なんだと?」

宣教師「貴方がおっしゃるのは単なる甘えです。決して差別などではありません」

ヒメ「甘え…だと?」

宣教師「貴方はいずれ国を背負って立つのです。たとえ望まなかったとしても…」

ヒメ「お前も責任を押し付けるんだな。庶民も貴族も…根は同じか」

宣教師「責任を持たない人間など誰一人としていませんよ。自分だけが特別?思い上がりも甚だしい」

ヒメ「ふん。それならこいつは?」ビシッ

カロル「……?」キョトン

ヒメ「もちろんこいつも責任を持ってるんだな?どんな責任か教えてくれないか?」

宣教師「……か、カロルくん。言ってあげなさい。キミの責任を!」

カロル「うーん…」

ヒメ「やっぱり責任などないんじゃないか!聖職者が偽りを話すとは…子供騙しに乗せられる僕だと思うなよ!」

宣教師「い、いやその…急に言われても…ド忘れしちゃいますよねー」

カロル「あ!一個だけあったよ!」ポンッ

宣教師「!」

ヒメ「ふぅん…言ってみろ?」
134: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:49:22 ID:WaxinZxJMc
カロル「幸せになること!それがボクの責任だよ!」ニコッ

ヒメ「」ポカーン

宣教師「」ガクッ

団長「な、なんじゃそりゃ…」フラッ

ウォルター「ククク!」ニヤニヤ

カロル「あれ?みんなどうしたの?」

ヒメ「…アホ。バカ。グズ。マヌケ。おまえ責任の意味知らないだろ」

宣教師「いいえ、見方を変えてよーく目を凝らせば立派な責任です!」

ヒメ「これのどこが責任なんだよー!?幸せになりたいなんて誰でも思ってる事だろー!?」ガーッ

カロル「ううん、ちゃんと責任だよ?」

ヒメ「はぁ!?意味わかんないし!バカじゃん!おまえバカじゃん!」ムキーッ

カロル「お母さまに言われたもの。子供を幸せにするのが親の役目で幸せになるのが子供の役目って。これって責任でしょ?」

ヒメ「」ズキンッ

宣教師「……なるほど!」

カロル「ボクの持ってる責任はこれだけしかないから…王子さまみたいに重たくないけど、簡単そうで難しいんだよ?」

ヒメ「……」ワナワナ

カロル「…幸せは形がないから、手放しやすいんだ。
それでも何度だって、諦めずに見つけなきゃね。責任ってそういうモノなんでしょ?」ニコニコ

ヒメ「くっ…!」
135: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:53:34 ID:gpeu.5Rw8g
ヒメ「…幸せにするのが親の役目?幸せになるのが子の役目?
だったら…父上は責任なんか果たしてないじゃないか!」

カロル「……?」

ヒメ「僕はもう…ずっと父上に会ってない…。幸せになんか…されてない。
だったら僕だって責任を放棄してもいいはずだ!」

カロル「どうして?会いに行けばいいじゃない?」

ヒメ「行ったさ…何度も…父上のいる部屋の扉を叩いた…」

カロル「部屋に入れてくれないの?」

ヒメ「……!いつも部屋にはいないんだ!どの時間に行っても…!父上は玉座に腰を据えてる!」

カロル「それならそっちに行けば…」

ヒメ「違う…!違う…!違う!!」

カロル「何が違うの?」

ヒメ「玉座にいるのもパレードや式典の催しで隣に座ってるのも…父上なんかじゃない!国王だ!」

カロル「へ?」

ヒメ「親子の会話が出来ないのに会ったって…意味ないだろ」

カロル「……会話はどこでも出来ると思うけど。相手が目の前にいたら」

ヒメ「あー!だからそーじゃなくてだな…!」イライラ

ヒメ「はぁ…いいや。やっぱ庶民には分からないだろうな。高貴な血族の悩みなんて」

カロル「なんで?ボク間違ってる?」

宣教師「間違ってはいませんよ。ただ…正しいからと言ってまかり通るものでもありません」

ヒメ「そーゆーこと。もうこの話終わり!つまんないし!」

ウォルター「けっ!すっかり元の調子だな?」

ヒメ「うるさいぞ。愚民B」

ウォルター「格下げしてんじゃねーよ」
136: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:55:44 ID:WaxinZxJMc
宣教師「貴方の言いたい事は分かりましたが…やはり甘えに過ぎないと思いますよ。私は?」

ヒメ「うるさい。終わりだって言っただろ!黙ってもう一本アイスキャンディを買ってこい!」

宣教師「買えませんよ。持ち合わせもありませんし」

ヒメ「役立たず!じゃあ愚民B!」

ウォルター「てめぇのほじった鼻くそでも食ってろ」

憲兵「貴様らぁ!王子に向かってなんという口の聞き方を!?」

団長「…まぁまぁ落ち着け」ガッ

憲兵「しかし!今のは目に余りますぞ!」

団長「…王子は気にしておられんよ。見ろ」


ヒメ「いいからアイスキャンディ!」プンスカ

ウォルター「(あーうるせぇ)」ウンザリ

宣教師「いい加減になさい!冷たいおやつばかり食べてるとお腹壊しますよ!」

カロル「ぼ、ボクも…」モジモジ

宣教師「ウォルターさん、アイスキャンディ2本追加です」

ウォルター「うぜぇ…」


団長「ほれ」

憲兵「た、確かに怒ってはいないようですが…」

団長「むしろご機嫌じゃないか。素晴らしいことだ」ニッコリ
137: ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 17:59:52 ID:WaxinZxJMc
〜〜〜〜〜〜
団長「王子…そろそろお戻りにならねば?」

ヒメ「……」

団長「王子…」

ウォルター「俺たちも用があるんだ。いい加減ガキのお守りはしてらんねぇやなぁ?」

団長「彼らもこう申しております。十分お戯れになられたのでは?」

ヒメ「もったいないな。王族のオレ様と話せる機会なんてもうないのにさ」

宣教師「私たちにはもったいなさ過ぎてお腹いっぱいです。胃もたれすらしました」

ウォルター「永遠にあばよ。二重人格小僧?」ヘラヘラ

ヒメ「ふん!」プイッ

カロル「また一緒に食べようね。アイスキャンディ!」ニコニコ

ヒメ「…気が向いたら、また城下に降りてやってもいいぞ?」ニコッ

カロル「うん!会えたらいいね?」ニコニコ

団長「さぁ…王子?」

ヒメ「…僕に命令するな。行くぞ」

団長「はっ!失礼致しました!」

ウォルター「さぁて…俺たちも…」

団長「あぁ、暫し待て」

ウォルター「お?」

団長「実は昨夜、さるお方のお屋敷に強盗が入ってな。捜査も兼ねて動いていたのだ。
念のため君達にも事情聴取したい。協力していただけるか?」

ウォルター「……」

宣教師「」ギクッ

カロル「」ブルッ

団長「…何か知っておいでかな?」

ウォルター「いや…喜んで協力するぜ?聖職者たる者、悪がのさばるのは許せねぇなぁ?」

団長「ありがたい。時間は取らせないので安心してくれ」
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sage:


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