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カロル「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/24(日) 19:26:09 ID:j5u3Ryt06o
前スレ
(少年「ボクが世界を変えてみせる」)
http://llike-2ch.sakura.ne.jp/bbs/test/mread.cgi/2ch5/1356265301/1-50


―――あらすじ―――

人間によるホビットへの差別が当然のように行われる時代
人里を離れ、森の中で静かに暮らしていたホビットの親子がおりました。
母親の名はマリー。子供の名はカロル。
二人はささやかな幸せを願って、穏やかな日々を送っていました。

母は今の生活に満足していました。
もちろん森の中での生活は不自由で贅沢とは無縁なものでしたが多くを望まない母にとっては愛する我が子と生きていけるだけで幸せだったのです。

しかしカロルは違いました。
もちろん愛する母と生きるのに不満はなく、彼自身も多くを望もうとは考えません。
ですが彼にとって一つだけ足りないものがあったのです。
それは友達という存在でした。

幼心に自分たちの置かれた立場は分かっていたつもりでした。
人目を逃れて生きるホビットには仲間もなく、心を通わせる相手を見つけるのはとても難しいと。
それでも小さな身体に宿る希望は膨らむばかりです。


101:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:47:06 ID:/Q8jyxZM9E
―――ヘマトバザール本部(客間)―――

宣教師「…さっきはどうしたんです?キミらしくありませんでしたよ?」

カロル「……」

宣教師「気持ちは分かりますが不用意な発言は避けなくては…?
前にも似たような失敗で騒動になりましたよね?」

カロル「宣教師さまこそ…らしくないと思います」ボソッ

宣教師「…と言いますと?」キョトン

カロル「いつもの宣教師さまだったら一緒に止めてくれたのに…あの時は見てるだけだったもの」

宣教師「あの時とは…ウォルターさんと衛兵の混戦中ですか?」

カロル「うん…どうして何も言ってくれなかったんだろうって思ってました」

宣教師「それは…縛られていて動けない状態でしたし、言葉だけではどうにもならない場面だってありますから」

カロル「それでもいつもの宣教師さまなら諦めなかったよ!」

宣教師「え…?」

カロル「ボク…言ったはずだよ。宣教師さまは変わらないでいてくれるから、自然と安心するって…」

宣教師「……」

カロル「でも…やっぱり宣教師さまもちょっぴり変わった気がするな?」

宣教師「か、変わってなど…。私は今でもキミを助けたいと…」

カロル「それだよ、たぶん…」

宣教師「は…?」
102:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:50:43 ID:/Q8jyxZM9E
カロル「いつから…宣教師さまはボクを贔屓するようになったの?」

宣教師「ひ、贔屓…?」オロオロ

カロル「会ったばっかりの頃は誰にだって分け隔てなく接してたじゃない!
ボクもルーボイくんもパッチくんも特別扱いしなかった!」

宣教師「何を言って…るんですか?今ここに二人はいないでしょう?」

カロル「衛兵さん達だってウォルターさんに付いてきた人間だって…関係ないから見捨てたの?」

宣教師「ち、違います!さっきも言いましたがどうにもならない状況だってあるんです!」

カロル「どうにもならないかもしれないけど、どうにかなるかもしれないじゃない!」

宣教師「そんな不確かな希望で…一時の感情に任せていたら、いずれ身を滅ぼしますよ!」

カロル「……!」

宣教師「キミの為にも私は適切な判断をしたまでです!」

カロル「…宣教師さまはもっと考えなんか無くって行き当たりばったりでまっすぐだった!」

宣教師「(私そんな風に思われてたんですか…?)」ガーン

カロル「村に入ったボクが暴力を受けた時だって宣教師さまは教団の人間なのに手当てしてくれた!」

カロル「家を燃やされてお母さまが乱暴された時も…村の人間を説得してボク達を引き取ってくれた!」

カロル「差別を無くす為に司祭さまに訴えてくれた…!」

宣教師「……」

カロル「ボクを手当てした時も…引き取ってくれた時も…宣教師さまは後悔なんかしてなかった!
ずっとみんなが幸せになれるって信じてた!
だから教団に逆らっても差別を無くそうとしてたんじゃないの!?」

カロル「それなのに…後悔するのを怖がって、ボクとお母さまさえ助かればいいって…そう思ってるの?
ボクらの為なら…傷付け合う人達を見捨てるの?」

宣教師「……」

宣教師「キミは私を買いかぶり過ぎてますよ」

カロル「そんなことないよ!宣教師さまは……」

宣教師「落ち着いてください」

カロル「っ…」
103:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2013/12/18(水) 21:56:07 ID:/Q8jyxZM9E
宣教師「これまでがどう写っていたのかは知りませんが…私も少なからず現実を知ったつもりです」

宣教師「キミの言う通り、今はあなた達を救ってあげられればいい、と思っているのも否めません」

宣教師「…それはいけないことですか?」

カロル「…宣教師さまが望んだのはホントにそれだけなの?」

宣教師「……?」

カロル「その言い方だと…ルーボイくん達と仲直りさせるって言ってくれたのも…ボクの幸せの為に聞こえるよ」

宣教師「」ハッ

カロル「そんなの間違ってる…。二人は大事な友達だけど、ボクが幸せになる為の道具じゃないもの」

宣教師「カロルくん…」

カロル「宣教師さまは…ホビットのボクが可哀想だから特別扱いするの?」

宣教師「!」ピシッ

カロル「教えてよ…。宣教師は正しい教えを説く者だって教えてくれたのは宣教師さまでしょ…?」

宣教師「位を剥奪された私は…もはや宣教師ではありませんよ」

カロル「……!?」

宣教師「キミの前では出会ったままの私でいたかった…。穢れのない…信頼を置ける人間でありたかった…」

宣教師「…ですが、やはり拭えないものですね。奥底までこびりついたどす黒い汚れは?」

宣教師「キミの目から見た私は…もうあの頃の私ではないんですね?」

カロル「宣教師さま…」

宣教師「ごめんなさい。せっかく変わらないと言ってくださったのに…」

バンッバンッ

「うるせぇぞ!!騒ぐんじゃねぇよ!!」バンッバンッ

宣教師「…色々なことが起こりすぎて疲れましたね。時間も時間ですし、寝ましょうか」

カロル「…はい」
104:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:29:09 ID:/2BLhTPjUo
〜〜〜朝〜〜〜

宣教師「」シャコシャコ

宣教師「んっ」クイッ

宣教師「あー…」ガラガラ

宣教師「ぺっ」バシャッ

宣教師「虫歯になってないといいのですが…」マジマジ

宣教師「うんうん。問題なし」

カロル「」スタスタ

宣教師「おや、カロルくん?早起きですね?」ニコッ

カロル「おはよう…ございます」ペコリ

宣教師「早起きは三文の得と言いましてね?とても良い行いなんですよ?」

カロル「…そう、なんだ」

宣教師「どうぞ、こっちへいらっしゃい。私はもう済みましたから」

カロル「う、うん」トコトコ

宣教師「手洗い場が部屋に付いてるなんて、まるで宿さながらですね?」つ【歯ブラシ】

カロル「ありがと…」スッ

宣教師「ちゃんと磨かないといけませんよ?歯に虫がくっついて突っついてきますからね?」

カロル「…そ、そうなの?」ビクッ

宣教師「えぇ。虫に歯を掘られたら大変です。大きな穴を空けられてバイ菌を埋め込まれますから」

カロル「ち、ちゃんと磨かなくちゃっ」シャコシャコ

宣教師「うがいも忘れないようにしましょうね」

カロル「ふぁーい!」シャコシャコ
105:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:30:39 ID:N7x8tWnKvM
カロル「」アーン

宣教師「ふむふむ」ジーッ

カロル「ほ、ほう?うひあはいえふは?」アーン

宣教師「……」

カロル「」ドキドキ

宣教師「うん!問題なし!バッチリですよ!」ニコッ

カロル「はぁー!よかったー!」ホッ
106:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:32:27 ID:N7x8tWnKvM
カロル「……」ポフッ

宣教師「居心地は悪くありませんが退屈ですね?」

カロル「う、うん」プイッ

宣教師「…もしかして避けられてます?私?」

カロル「」ビクッ

宣教師「……」

カロル「さ、避けたり…しないです」ビクビク

宣教師「…せめて目を合わせて言ってくれませんか?」

カロル「ご、ごめんなさい」

宣教師「…キミの中で変わってしまった私はイヤですか?」

カロル「ち、違う!そんなんじゃない!」アセアセ

宣教師「ふふふ。別にいいんですよ?」ニコニコ

カロル「ほ、ホントに…違うから」

宣教師「…では私に色々言ってしまったから気まずいとか…ですかね?」

カロル「…うん」

宣教師「気にしないでください?
キミに言われた事で見えてくるものもありますし、私はいい勉強になったと思ってますよ?」

カロル「ホント?」

宣教師「はい。お互いになんでも言い合える関係に近付けたと考えましょう?」

カロル「!」パァァ
107:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:41:18 ID:N7x8tWnKvM
宣教師「そういえば…ここに来る前、ナラにも会いましたよ」

カロル「うん。ナラから聞いた!」

宣教師「よかったですね。お友達が増えて?」

カロル「えへへ」ヘラヘラ

宣教師「…ナラはアリアスに命令されたみたいですが」

カロル「知ってたんだ…」

宣教師「えぇ。本人から聞きました」

カロル「宣教師さまはどう思う…?」

宣教師「私の見解を聞いてもしかたありませんよ?どう捉えるかはキミ次第です」

カロル「そっか…。ボクは…信じてるよ。ともだちだって」

宣教師「ふふ。いいんじゃないですか?」

カロル「……?」

宣教師「キミもほんの少し変わりましたよ…というより成長したと言った方が正しいでしょうか?」

カロル「そうかな?」

宣教師「他人を疑うようになりました。少し前のキミならわざわざ私に確認しようとはしませんでしたが…。
きっと私の知らない間にいろいろ体験したのでしょうね」


カロル「……」

宣教師「大丈夫ですよ。ナラもキミを信じてます」

カロル「……」
108:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:43:13 ID:/2BLhTPjUo
コンコン

宣教師「はい」

「ウォルターさんがお呼びだ!」

宣教師「行きましょうか?」

カロル「…う、うん」ビクビク

宣教師「脅されたのが気になりますか?

カロル「ちょっぴり…怖いです」

宣教師「私が付いてますよ?」

カロル「でも…」

宣教師「」ポンッ

カロル「……?」

宣教師「」ナデナデ

カロル「…な、なに?」

宣教師「ふふふ」ニコニコ

カロル「?」キョトン

宣教師「気楽にしてていいのです。キミはまだ小さいんですから?」ニコニコ

カロル「……?」

宣教師「そばに大人が付いてる時は頼りにしてください」ニコニコ

カロル「宣教師さま…」

「なにやってんだ!呼んでるってんだろが!!」ドンッドンッ

宣教師「はいはい。今出ます」

カロル「……」
109:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:44:50 ID:/2BLhTPjUo
黒装束「おう。遅かったじゃねぇか。まぁ座れや?」

宣教師「失礼します。…昨晩と同じ格好なんですね?」ストッ

カロル「し、しつれいします」ストッ

黒装束「どこがだ?まるっきり変わってんだろうが?」

宣教師「(全身真っ黒でよく分からないんですが…)」

黒装束「てめぇらこそ、着替えねぇのか?」

宣教師「私たちは着替えがないんです。おかげで頂いた修道服もボロになってしまいましたし…」ボロッ

カロル「ボクも教団にもらった布地の服しかないです」

黒装束「はぁぁ?みすぼらしいなぁ、おい?俺のお下がりでもくれてやろうか?」

宣教師「いえ、結構です」キッパリ

黒装束「…可愛げのねぇ」

カロル「(スミだらけの服しか無さそう…)」
110:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:46:09 ID:/2BLhTPjUo
宣教師「それで…わざわざ呼び出してどういうつもりですか?」

黒装束「どういうつもりって喧嘩売ってんのか、おめぇは?
俺はお前らの命の恩人だぞ?なおかつ匿ってやってんだぞ?」

宣教師「…頼んだ覚えはありません。あなた達が勝手にした事です」

黒装束「…生意気なお嬢ちゃんだな?ブタの怒りを買う訳だ?」

宣教師「……」

カロル「? 宣教師さま、ブタに怒られたの?」キョトン

黒装束「なぁに言ってんだ?お前もブタにこっぴどくやられたんだろうよ?」

カロル「ボク知らないよ?ブタが怒るようなことしてないもの?」

宣教師「えーとですね…」

カロル「宣教師さま、ブタになにしたの?エサを取り上げちゃったの?」

宣教師「あ、いや…そうじゃないんですよ」

黒装束「だからブタってのは大臣だ。お前を買った奴だよ」

カロル「えっ」

黒装束「……?」

カロル「あのおじさま、人間じゃなくてブタだったの!?」

黒装束「もういい。話が進まねぇよ。お前らを呼び出したのはだな……」オホンッ

カロル「ねぇ、ブタって人間になれるの?」グイッ

宣教師「な、なれませんよ。ものの例えですから?ね?」アセアセ

カロル「えー!でもあの人、言ってたよ!」

黒装束「……聞けや」
111:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:47:45 ID:/2BLhTPjUo
宣教師「私達を…教会に?」キョトン

黒装束「おう。とりあえずこれに着替えろ」つ【修道服】

宣教師「……私、すでに着てるんですけど」

黒装束「そんなボロいの着たまま出歩けないだろうが?」

宣教師「というかなぜ教会なのです?」

黒装束「…教会の神官が会長と旧知の知り合いなんだとよ」

宣教師「アントリア神官が?」

カロル「じゃあボクらを助けたのはアントリアさんが頼んでくれたからなの?」

黒装束「…まあそうなるが」

宣教師「ふむふむ。神官が言ってたのはこの事だったんですね」

黒装束「てっきりガキをショーに使うと思ったんだがな…」

カロル「ショー?ボクが?」

黒装束「…おっと。なんでもねぇんだ。いいから早いとこ着替えな」

カロル「はーい」
112:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/2(木) 21:49:30 ID:/2BLhTPjUo
宣教師「…久しぶりに着替えられたのに新鮮味がありません」

カロル「えへへ!宣教師さまとおそろいだね?」ニコニコ

宣教師「ふふふ!そうですね?」ニコッ

ウォルター「よーし!着替えたな?」

宣教師「どうしたんです?あなたまで修道服など…」

ウォルター「こうすりゃ教団の一行にしか見えねぇだろ?カモフラージュってぇやつだ!」

カロル「ボクだけ帽子が付いてる?」クイッ

ウォルター「フードだ、バカ。いいから被っとけ!」

カロル「う、うん。目を隠すんだよね?」ファサッ

ウォルター「目一杯深く被れ。憲兵に見つかったら終わりだからな」

宣教師「もう憲兵が動いてるんですか?」

ウォルター「決まってんだろ?大臣の屋敷に強盗に入ったんだぜ?」

宣教師「……」

ウォルター「むしろ昨日の内に踏み込まれててもおかしかぁねぇ?
強運に感謝しなくちゃぁなぁ?」

宣教師「昨夜は問題ないと自信満々におっしゃってたじゃないですか?」

ウォルター「ハッハー!知るか、そんなもん!人生なんざ時の運だ!どう転ぶか分かりゃしねぇよ?」

宣教師「そんな適当な…」
113:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:43:00 ID:nhkhr2ewlE
―――城下町―――

ワイワイガヤガヤ

ウォルター「はぐれんじゃねーぞ!」スタスタ

カロル「(フードで前がよく見えない…)」スタスタ

宣教師「はぐれないように手を繋いで歩きましょうか?」パシッ

カロル「うん!」ギュッ

ウォルター「絶対に目を見られんじゃねーぞ?騒ぎになりかねないからな?」

カロル「靴は脱がなくていいの?」

宣教師「なぜ脱ぐ必要があるんです?」

カロル「司祭さまが言ってたもの。ホビットは靴を履いたらダメって?」

ウォルター「あぁ…そりゃアレだな?
ホビットを人間と同じ扱いにする訳にはいかねーから奴隷とかにも靴を履かせねぇし、服も無地の長袖、長裾しか着せねぇ事になってんだ」

宣教師「…勝手なものですね」

カロル「そういえば奴隷って何をするお仕事なの?」

ウォルター「ん…まぁコキ使われるのが仕事だろうな?」

宣教師「私が読んだ文献では採掘場や巨大な建設物の急な製造などで労働力として集められるのが主だと…」

ウォルター「あいつら貴族はよく分からんぜ。
最近じゃ社交界で小綺麗なホビットを見せびらかすのが流行りだとかよ?」

宣教師「…もはや奴隷じゃない気がするんですが」

ウォルター「そういやてめぇは金貨200枚の値が付いたらしいぜ。良かったなぁ?」

カロル「喜んでいいのかな?」

宣教師「たぶん…」
114:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:44:35 ID:gvQ8CaIXqU
男の子「えーん!えーん!」ビエーン

カロル「?」ピタッ

宣教師「おや…泣いてますね?」

ウォルター「なにやってんだ!行くぞ?」

男の子「うあーん!」ビエーン

カロル「……」

宣教師「誰も声をかけないなんて薄情ですね…」

ウォルター「迷子にでもなったんじゃねぇか?いいから行くぞ?」

男の子「あーんあんあん!!うわーん!!」ビエーン

カロル「ねぇ、あのまんまじゃかわいそうだよ」

宣教師「うーん…ですが憲兵や人の目もありますし、あまり関わり合いにならない方が…」

ウォルター「ありゃ構ってもらいたいだけだな。うっとうしいクソガキだぜ」

男の子「うわーん!……うわーん!」チラッチラッ

宣教師「こっち見ましたね?」

ウォルター「なりふり構わなくなったな」

カロル「どうしたのか聞こうよ?」

ザワザワ ジロジロ

「かわいそうに…聞いてやれよ」

「教団のクセに泣いてる子供ほっとくのかよ。最低だな」

「神に仕える人がそれでいいんですかー?」

宣教師「…周りがざわつき始めましたね」

ウォルター「ちっ!目立っちまったな…。早いとこずらかって……」

カロル「ねぇ、キミ。なんで泣いてるの?」スタスタ

ウォルター「あぁ!?」

宣教師「(ふふふ。キミなら、そうすると思ってました)」クスリ
115:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:46:18 ID:gvQ8CaIXqU
カロル「大丈夫?どこか痛いの?」ナデナデ

男の子「グスッ…やっと声かけてくれた…」グシグシ

ウォルター「本音それか。やっぱり構ってもらいたかっただけじゃねぇか!」

男の子「だ、だって…あんなに泣いてる子供がいたら普通は誰かしら話しかけるじゃないか?それが人の道だろ?」

宣教師「したたかな子ですね…。声をかけて損した気がします」

カロル「あはは…まぁまぁ。泣いてたのはホントなんだから?」アセアセ

男の子「そうだそうだ!」アッカンベー

ウォルター「…こんなガキほっといて行こうや?」

宣教師「賛成です」

カロル「えっ」

男の子「うわーん!」ビエーン
116:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:47:52 ID:nhkhr2ewlE
男の子「あーん!神父さんたちが哀れな子羊を見捨てるー!?」ビエーン

カロル「あ、また泣かせちゃった…。大丈夫だよ、見捨てたりしないから?」ナデナデ

ウォルター「哀れな子羊たぁ傑作だ。ジンギスカン鍋にして食ってやろうか?」

宣教師「…わがままな子ですね。これが洗脳教育による民度の低下というものでしょうか」

カロル「二人ともいじわるしちゃダメ!」

男の子「そうだぞ、庶民が!」オシリペンペン

ウォルター「そのケツ、ハンマーでぶち砕いてやろうか?」イラッ

宣教師「庶民呼ばわりするならせめて上品に振る舞いなさい。下品ですよ?」

男の子「お兄ちゃーん!こいつらいじめるー!?」ダキッ

カロル「うんうん。普段は優しいんだよ?」ナデナデ

宣教師「キミはその子の態度に疑問を覚えないのですか?」ヒクヒク

カロル「シャイなんだよ?照れくさいんだもんね?」ニコニコ

男の子「そうそう」ホジホジ

ウォルター「人前で鼻くそほじるような野郎に恥じらいなんざあると思うか?」

男の子「黙れ、貧民。お兄ちゃん、なんとか言ってよー」ペタァッ

カロル「えっ?えっ?」ビクッ

宣教師「カロルくん!?」ビクビクビクゥッ

男の子「あ、ごめん。ハンカチ無かったからお兄ちゃんの服にくっつけちゃった」

カロル「い、い、いい…よ?はは…ははは…」ズーン
117:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:49:39 ID:gvQ8CaIXqU
ウォルター「もう十分だな。そのガキをメッタ刺しにするか行くか決めろや?」

宣教師「行きましょう」

カロル「新しい服…汚しちゃった」グスンッ

男の子「アイスキャンディ食いたい!買え!」

ウォルター「クソガキが」

宣教師「…邪念が沸々と湧いてきますね。この子の頬を張りたくて仕方ありません…」イライラ

男の子「やってみろよ。パパに言いつけるからな」シュッシュッ

ウォルター「連れてこいよ。親子共々串刺しにしてやらぁな?」

カロル「ボクの服…」ズーン
118:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:50:44 ID:nhkhr2ewlE
カロル「…ねぇ、そろそろ教えてよ。なんで泣いてたの?」

男の子「アイスキャンディ食べたいから」

ウォルター「ん?」

宣教師「はい?」

カロル「アイスキャンディ?」

男の子「あそこ。売ってるだろ?」ビシッ

カロル「あ、あの氷の棒のことかな?」

男の子「氷の棒って言うなよ!アイスキャンディおいしいんだぞ?」

宣教師「つまり…アイスキャンディ欲しさに道の真ん中で泣きわめいて…声をかけてきた人に買ってもらおうと?」

男の子「うん。すごい計画だろ!分かったら買え!イチゴ味だぞ!」

ウォルター「おーおー。ちょい待ってろ?今、俺が真っ赤なイチゴエキスをドバーッと……」ゴソゴソ

宣教師「おやめなさい。往来でナイフを取り出すんじゃありませんよ」

カロル「宣教師さま。宣教師さま」グイグイ

宣教師「どうしました?」

カロル「た、食べてみたい…です?」モジモジ

宣教師「えっ」

カロル「ダメ…ですか?」ウルッ

宣教師「」キュンッ
119:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:52:15 ID:nhkhr2ewlE
宣教師「ウォルターさん」

ウォルター「?」

宣教師「手持ちはありますか?」

ウォルター「…あぁ?」ジロッ

宣教師「残念ながら私、無一文なんですよ。持ち物は没収されてしまいましたから」

ウォルター「……何が言いたい?」

宣教師「この子たちにアイスキャンディを……」

ウォルター「却下だ」

宣教師「なぜです!?恵まれない子供たちに一筋の愛を…!」

ウォルター「初対面を庶民扱いするお坊っちゃんが恵まれてねぇと思うかよ?」

宣教師「な、ならせめてカロルくんだけでも!」

ウォルター「話が変わってんだろうが」

男の子「いいから買え、愚民」

ウォルター「とりあえず人気のない場所に連れてくぞ。話はそれからだ」

???「おい!貴様らぁ!?」

男の子「」ビクッ
120:🎏 ◆WEmWDvOgzo:2014/1/3(金) 08:53:41 ID:nhkhr2ewlE
憲兵「団長!いました!」

団長「貴様らぁ!そのお方に何をしているぅ!?」

宣教師「な、なんですか!あなた方は!?」

団長「すぐにそのお方から離れろぉ!?捕らえられたくなくばなぁ!?」

宣教師「何を言って…!?」

ウォルター「おとなしくしろ…」コショコショ

宣教師「え?」

ウォルター「そいつら憲兵団だ…。バレたらやべぇ…」コショコショ

宣教師「……!」

ウォルター「あちらさん、まだ気付いちゃねぇ…。適当にハイハイ言って見逃してもらうぞ…」コショコショ

宣教師「分かりました…」コクッ

団長「貴様らは旅の宣教師か?」

ウォルター「そうそう。そうなんですよ!このクソガ…お坊っちゃんとはなんら関係がないんで?」

宣教師「泣いてるのを見かけまして…泣き止ませようと声をかけただけなんです」

男の子「ウソつけ。ジンギスカン鍋にして食うだの、頬を張りたいだの言ったクセに」

団長「き、貴様ら!それはまことか!?」

ウォルター「ハハハ。ジェシー?この子は何を言い出すんだろうね?」HAHAHA

宣教師「誰がジェシーですか、誰が…」

団長「この方をどなたと心得る!?貴様らなどが気安く触れていいお方ではないのだぞ!?」

男の子「いいよ、いいよ。その通りだけど。庶民だからしょうがないよ」マァマァ

団長「いいえ、なりませぬ!」

ウォルター「いやーすみません。無知な庶民なんで大目に見てくださいな」

宣教師「(貴族の子息でしょうか…。妙に身形がいいとは思ってましたが)」
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sage:


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