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少年「ボクが世界を変えてみせる」
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1:🎄 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


960:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:26:04 ID:2f6ATVrpfk
バンパ「やっと獣道を抜けたな」ザッザッ

シープ「ね、ねぇねぇ?いつまで歩くの?ぼく疲れちゃったよ」ゼーゼー

ラム「あと少しだから頑張って?」

バンパ「…見えたぞ!」

シープ「えっ!どこ?どこ!?」キョロキョロ

バンパ「あの丘の先に旗が見えるだろ!アレは俺達の種族を表す"青い実"の刻印だ!」

シープ「ホントだー!」キラキラ

ラム「……」

バンパ「行こうぜ!早く!」タタタッ

シープ「オッケー!」タタタッ

ラム「あ、二人とも…」

バンパ「チンタラしてたら置いてくぞー!」タタタッ

シープ「ラムも早く来なよー!」タタタッ

ラム「(おかしい。何かが…)」

ラム「(エルマーはホビットが隠れて暮らす集落の筈なのに…わざわざあんなに目立つ旗を付けるのかな)」

ラム「……」

ラム「」タタタッ
961:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:27:33 ID:2f6ATVrpfk
―――エルマー?―――

バンパ「お!入り口に誰か立ってるぞ?」

シープ「…人間?」

バンパ「いや、あれは同族だよ。説明して入れてもらおうぜ」スタスタ

シープ「…ぼくたち、ホントにここまで来たんだねー!やっと仲間に会えるんだ!」スタスタ

門番「」ビクッ

バンパ「そう警戒すんな!見ての通り同族だ!」

門番「……」

バンパ「どうした?」

門番「」ボソッ

バンパ「なんだって?聞こえないぞ?」

シープ「様子が変だよ?」

ラム「二人とも!」タタタッ

バンパ「ん?あぁ、やっと来たか!見ろよ、ちゃんと同族がいるぜ!」

ラム「…あ、ホントだ。僕の勘違いだったのかな」

シープ「ねぇ、通してよ?ぼくらは仲間でしょ?」

門番「誰から聞いてここに来た…!?」ボソボソ

バンパ「誰からって…同族から聞いたんだ。ここがホビットの集落だって」

シープ「あのお爺さん、一人で旅をしてたよね?今も元気かなー?」

門番「…げろ!…やく!」ボソボソ

シープ「え?なに?」キョトン

ギィィ バンッ

門番「」ビクッ
962:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:29:51 ID:Ou70Vp7aU.
バンパ「お、門が開いたぞ!」

ラム「待ちなよ。誰かいる…」

???「ようこそ、愛すべき同胞達!心から歓迎致します!」ニコニコ

門番「た、タワンテさん!」アセアセ

タワンテ「何をしてるんですか、ティラーナ!アナタの仕事は門を守るコト!
人間なら追い返し!同族なら受け入れる!違いますカ!?」

門番「……」

タワンテ「見なサイ。愛すべき同胞達がとても困ってル!」

ラム「……」

タワンテ「失礼しまシタ。どうぞお入りくだサイ!」

バンパ「それじゃ入ろうぜ?」

シープ「うん!」トコトコ

ラム「……」スタスタ

タワンテ「ティラーナ!門を閉じておきなサイ!アナタの役割をわすれないように!ネ!」

門番「…わかり…ました」

ギィィ バタンッ
963:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:31:23 ID:2f6ATVrpfk
タワンテ「ワタシが案内しますからネ!付いてってくだサイ!」スタスタ

ラム「案内?」スタスタ

タワンテ「皆にもアナタ達を紹介したいのデス!同胞がやって来るのは珍しいので!」

ラム「珍しいって…どうしてです?同族なら、まずここを目指すんじゃ…」

バンパ「たどり着けないんじゃねーか?俺らだって1年以上掛かったし危ない橋も渡ってきたろ?」

タワンテ「かもしれません」

シープ「あんまり家もないし…誰も歩いてない?」キョロキョロ

ラム「うん…。僕も気になってた」

タワンテ「そういうものデス」

バンパ「まさかほとんど誰も住んでないってんじゃないだろうな?」

シープ「タワンテさん、どうなの?」

タワンテ「心配はいりません。すぐに同胞に会えますから」
964:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:33:27 ID:Ou70Vp7aU.
タワンテ「…着きましたよ」

バンパ「着きましたって…何にもないじゃないか?」

タワンテ「……」

シープ「冗談やめてよ!ぼく、もうクタクタなんだから!」

ラム「え…?」ピクッ

ゾロゾロ ゾロゾロ

黒装束「ハッハー!ようこそ、愚かなホビット達よ!」ガサッ

ラム「……」

バンパ「は…!?」

シープ「ちょ、ちょっと!なにこれ…!?」アタフタ

黒装束「野郎共!このマヌケな3匹を捕らえな!」バッ

手下1「」ジリジリ

バンパ「うおっ!ふ、ふざけんな!」ダッ

ラム「シープ!走れるかい!?」ダッ

シープ「う、うん」タッタッ

手下2「逃げ場なんかねぇよ!おとなしく捕まりやがれ!」パシッ

シープ「ひっ!」ググッ

バンパ「シープを離せ!」バキッ

手下2「あうっ!?」ドカッ

バンパ「チャッチャと走れ!捕まるぞ!?」ガシッ タタタッ

シープ「わっ!ひ、引っ張らないでよ!」タタタッ
965:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:37:02 ID:2f6ATVrpfk
黒装束「おとなしく捕まっておけば痛い目に遭う必要もないんだがなぁ?」

タワンテ「諦めきれないんでしょう。せっかく手に入れた自由を」

黒装束「ハッハッハ!そういうモンか!?お前らホビットは好きだもんなぁ?無駄な努力が…!」

――――――

手下3「へぇっへっへ!追い詰めちゃったぞぉ〜?」ジリジリ

ラム「…うるさい。デブ」トンッ

手下4「後ろは壁。前にはナイフを持った俺達。さぁどうする?」

ラム「」スッ

手下3「おぅっ!おぅっ!?ひざまづいたぞぉ!?泣いて許しを乞うつもりかぁ〜!?」ブヒヒ

ラム「誰がお前らなんかに…」

手下4「素直にしとけば加減してやらんでもなかったが…バカな奴だ」ダッ シュバッ

ラム「」サッ バウッ

手下4「ぐあっ…目が…!このガキ…砂を…!」ギュッ ゴシゴシ

ラム「」タタタッ

手下3「ほーい!逃がさないよーん!」バッ

ラム「」バウッ

手下3「おっと、同じ手を喰うか!」サッ

ラム「」シュッ ガツンッ

手下3「ごぼほぉっ!?」ズルッ バタッ

ラム「潰れちゃった?」クスリ

手下3「(こ、このガキぃ…!き、きき…た…玉ぁぁ…蹴りやがったぁ!?)」アガアガ

ラム「バイバイ」タッタッ
966:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:39:22 ID:Ou70Vp7aU.
ラム「(バンパ達と合流しなきゃ)」タタタッ

???「逃がしませんよ」ヒュッ

ザクッ!

ラム「えっ…!?」ドサッ

タワンテ「諦めなサイ。ナイフが太ももに突き刺さってます。もうその足は使えませんヨ」スタスタ

ラム「た、タワン…テ?」ドクドク

タワンテ「こうしないとワタシがお仕置きされるんデス」ガッ グイッ

ラム「あっ…ぐっ!」ブチブチ

タワンテ「スミマセン。愛すべき同胞…許してください」

ラム「離せっ…!離せよ…!」ジタバタ

手下4「味な真似を…!」ゴシゴシ

手下3「うぐぅ…ゆ、ゆるさねぇ!こいつの玉、握り潰してやるぅ!」エグッ グシッ

タワンテ「…とりあえずウォルター様に報告しましょう」

手下3「ちぃっ」

手下4「それもそうだな?さっさと持ってくぞ」

タワンテ「ハイ」ズルズル

ラム「うあっ!ぐぅ!」ズズズ
967:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:43:46 ID:2f6ATVrpfk
―――エルマー?(門前)―――

バンパ「おい!開けろ、開けろよ!?」バンッバンッ

バンパ「っ…ダメだ!押しても引いてもビクともしないし門番も反応しねぇ!」

シープ「あいつらが来たよ!?」

手下1「へっ」スタスタ

手下2「言ったよな?逃げ場なんかねぇと?」スタスタ

バンパ「うぅ…くそがっ!こうなったら俺が時間を稼ぐ!シープ、お前は壁をよじ登って出るんだ!」

シープ「む、ムリだよー!あんな高い壁…!」

バンパ「じゃあどうすんだ!?ここまで来て、また自由を手放すのか!?」

シープ「」ビクッ ブルブル

バンパ「それが嫌なら死ぬ気で逃げろ!!無理でも壁から這い上がれ!!」

シープ「……!」ダッ ガッ ヨジヨジ

バンパ「けっ!」ダッ

手下1「お、あちらさんから向かってくるぞ?」

手下2「手間が省けていいや!やっちまえ!」
968:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:48:23 ID:Ou70Vp7aU.
バンパ「おらっ!」ビュッ

手下1「ぎゃっ!?」ドスンッ

手下2「な、なんだ、こいつ…!」

バンパ「(大したことねぇな…。これならラムの奴も逃げれてんだろ)」

黒装束「おーおー手こずってんなぁ?」スタスタ

手下2「ウォルターさん!」

バンパ「(親玉はあいつだな…。ならあいつさえ倒しちまえば…)」

黒装束「狩人が獲物に狩られてちゃ世話ねぇよ」

手下2「す、すんません」

黒装束「指、小指でいいから」クイッ

手下2「へ?あ、いや…でも…!」アタフタ

黒装束「ん?耳がいいのか?勇気のある奴だな?」

手下2「……!ゆ、指で…お願いします!」スッ

黒装束「」ヒュンッ ビシュッ

手下2「あっ…あっ!あうぅぅぅ……!」ブシュー

黒装束「おーしおし、止血なんかすんじゃねーぞ?骨を剥き出しにしてよーく風に当てとくんだ?」

手下2「は、はい…!」プルプル

黒装束「後で剥き出しになった指の骨をヤスリで削ってやるからなぁ?楽しみだなぁ?」

手下2「あ、あぁふぅぅ」ジョー
969:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 20:51:15 ID:Ou70Vp7aU.
黒装束「そんじゃ遊ぶか?」ニヤリ

バンパ「狂ってやがんな…」

黒装束「狂ってるくらいがマトモなんだよ。俺達の仕事はな」

バンパ「胸くそ悪い野郎だぜ…!」ダッ ブンッ

黒装束「お?なんだ、こりゃ?メガトンパンチか?」パシッ

バンパ「な、なにぃ!?」グイッ グイッ

黒装束「ハッハー!」ブンッ

バンパ「ぐは…!」バキッ

黒装束「運がいい時に来たなぁ、お前ら?」

バンパ「あぁ…!?」ヨロッ

黒装束「本当ならちょっとばかし遊んでから組織に持って帰るんだが…なんでも今度行うショーはでかいようでな?
最高の催しを届ける為に綺麗なままのホビットを集める事になってんだ」

バンパ「お前…!まさかヘマトか!?」

黒装束「なんだ?俺達の組織を知ってんのか?」

バンパ「……」

黒装束「あぁ?さてはお前ら脱走しやがったんだな?」

バンパ「だったらどうした!?」

黒装束「どうしたもこうしたもあるか。もったいないから再利用するだけだ。
せいぜい自分の出る演目に期待してな?主役を張りたきゃ悲痛な叫びを客に聴かせてやるこった?」

バンパ「なにが演目だ…!あんなモン、ただの虐殺じゃねぇか…!」

黒装束「価値観の相違ってやつか?まぁいいわな?」
970:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 21:01:23 ID:Ou70Vp7aU.
黒装束「しかし愚かだな?せっかく抜け出せたのにこんなとこに来るとはよ?」

バンパ「黙れ!お前らが先回りしてるとは思わなかったんだよ!」

黒装束「先回りだと?ハッハッハ!こいつは傑作だな!?」ゲラゲラ

バンパ「何がおかしいんだ!?」

黒装束「お前勘違いしてるよ?ここはな、最初から俺達の場所なんだ」

バンパ「!?」

黒装束「確かにここにはエルマーなんて集落もあったがとっくに滅ぼされてんだよ」

バンパ「じゃあ…タワンテさんは!?門番のティラーナは!?あいつら同族じゃねーのか!?」

黒装束「紛れもなく薄汚いホビットだぜ?」

バンパ「だったらなんでここにいんだよ!?おかしいだろうが!?」

黒装束「あいつらには俺達の拷問ショーに出さないって条件で協力させてんの。
迷いこんできたホビットを誘い込むのがあいつらの役目さ?」ヘラヘラ

バンパ「そんな…!同族を…売ったってのか!?」

黒装束「そう珍しい話でもないだろ?
俺たち人間も騙し合い、奪い合う。お前らホビットも例に漏れずってやつだよ」

バンパ「人間なんかと一緒にすんな!俺は…俺たちはな…!」ワナワナ

黒装束「人間だの、ホビットだの…区別すんのが好きだなぁ?王国も教団も…そしてお前らも?」

バンパ「あぁ!?」イラッ

黒装束「俺に言わせりゃニワトリかハトかくらいの違いしかねーよ。
いくら名前を付けても括りはおんなじ鳥だ」ニヤリ

手下4「あっ!いたいた!ウォルターさん!こっちは捕まえましたぜ!」スタスタ

黒装束「おーしおし、んじゃこっちもパパっと終わらせっか」ズイッ

バンパ「……!」
971:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/15(金) 21:03:35 ID:Ou70Vp7aU.
―――エルマー?(外)――

シープ「な、なんでことするの…?」ググッ

門番「おとなしくしろ…。縛りにくい」シュルシュル ギュギュッ

シープ「同じ仲間でしょ!助けてよ!?」ギシギシ

門番「」ボソッ

シープ「え…?」

門番「忠告はした…。入ったのはお前らだ」ボソボソ

シープ「こんな所だなんて思わなかったから!知ってたら入らなかったよ!」

門番「一度入ったら…もう出せない。出したらワタシとタワンテさんが罰を受ける…」ボソボソ

シープ「一緒に逃げようよ!?そうすれば……」

門番「ダメだ…。ヘマトは追ってくる…。捕まったら…恐ろしい」ボソボソ

シープ「平気だって!そんな簡単に見つかったりしないよ!」

門番「…ヘマトは今、ホビットを大量に欲しがってる…。
次のショーは大舞台で王国を交えてやるから…数を増やさないとワタシとタワンテさんがショーに出される…」ボソボソ

シープ「……!」

ギィィ バンッ

黒装束「そういうこった?」ポイッ ドサッ

バンパ「」ピクッ ピクッ

ラム「はぁっ…ぅくっ…」ドクドク

シープ「ラム!!バンパ!!」ギシギシ

黒装束「そいつらを馬に括り付けろ。組織に持ち帰るぞ」

門番「」コクリ
972:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/17(日) 21:12:07 ID:5tYfNPQVjY
―――大聖堂(東門)―――

ダガ「…まだ馬車の影も見えねぇ内から門を解放していいのか?怪しい人間が侵入したらどうするつもりなんだ?」

アリアス「…司祭様のやる事に文句を付けるの?」

ダガ「そんなんじゃねぇよ。ただな、俺達は付き人だぞ?
なんでこんな雑用紛いの扱いを受けなきゃならねぇんだ?」

アリアス「司祭様の気短な性分は今に始まったことじゃないでしょう?
それに教徒にも表向きは王都で講演会を行うと言ってあるけど…」

ダガ「ふ…実際はなぁ?」

アリアス「間違ってもその先を言わないでね?」ジロッ

ダガ「あぁ…分かってるよ。誰が聞いてるとも知れねぇしな」

アリアス「なんにしても雑用に近い役目を私達に任されるのは自然のなりゆきだと思わない?」

ダガ「ちっ…」

パカラッパカラッ パカラッパカラッ

アリアス「…いらっしゃったみたい。司祭様とホビットを呼んでくるわ?」

ダガ「あぁ…」

アリアス「くれぐれも失礼のないように出迎えなさい?」スタスタ

ダガ「うるせぇ。さっさと行ってこい」
973:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/17(日) 21:14:57 ID:5tYfNPQVjY
―――大聖堂(応接間の隠し部屋)―――

ガチャッ

カロル「おはよう、ナ……ラ?」キョトン

司祭「ナラじゃなくて悪かったのう、小僧?」

カロル「お、おじいさま…」

マルク「」グルルルル

アリアス「私もいるのだけれど?」

カロル「…おはようございます」ペコリ

司祭「ほっほっほ!かしこまらずともよい!行くぞ?」

カロル「行くって…どこへ?」

アリアス「あなた達が安心して暮らせるように住み処を見つけてあげたのよ?」

カロル「お母さまは…?お母さまも一緒ですよね…?」

アリアス「あなたの母親は宣教師が一足先に連れていったわ?」

カロル「え?二人がボクを置いていったんですか?」

アリアス「違うわ?あなたの母親に新しい住み処を見てもらって…納得してからあなたも連れていく手筈なの」

カロル「…そんなの、おかしいですよ」プイッ

アリアス「(…めんどくさいガキ。だから嫌いなのよね、マザコンって)」イライラ

司祭「…小僧」

カロル「……?」

司祭「付いてこなければ、どのみち母親には会えんぞ?それでもいいんじゃな?」

カロル「…やっぱり、騙してたの?」ボソリ

司祭「…付いてくるのか?来ないのか?」

カロル「…わか…りました」シュン

司祭「安心せい。犬も連れていってやるわい?」ニヤリ
974:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/17(日) 21:17:24 ID:OqXv9TpU5w
―――馬車―――

パカラッパカラッ パカラッパカラッ

アリアス「」ペラッ

司祭「……」ジロジロ

カロル「わぁっ!すごいや!草原が動いてるよ!」キラキラ

マルク「わんっ!わんっ!」シッポフリフリ

アリアス「(バカな子…草原が動く訳ないじゃない。中にいるからそう見えるのよ…)」ペラッ

カロル「あはは!揺れてるよ!」キャッキャッ

マルク「あんっ!」パァァ

司祭「なんじゃ、こいつは…?さっきまで浮かない顔をしとったクセに?」コショコショ

アリアス「癒しの力を持つホビットとはいえ中身は子ども…という事でしょうね」ペラッ

司祭「…どういう神経の持ち主じゃ?」ジロジロ

カロル「あっ!ねぇ、見てみて!今ボクらが住んでた森が見えたよ!」

マルク「」ハッハッ

司祭「(緊張感のない奴め…。うるさくてかなわん!)」
975:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/17(日) 21:19:54 ID:OqXv9TpU5w
パカラッパカラッ

カロル「馬車って楽しいね!」ニコニコ

マルク「くぅーん!」コクリ

司祭「…これならダガの方に乗っておけばよかったわい」

アリアス「馭者に言って止めさせますか?今なら、まだ乗り換えられますが?」

司祭「む……わざわざそこまでしとうないわ」

カロル「止めてっ!!」

司祭「」ビクッ

馭者1「」ビクッ

ズズッ ズズズズズ ガタンッ

馬「ヒヒーン!」ブルルッ

アリアス「……!?」

司祭「あ、あ、危ないじゃろうが!?何を考えとる!?」ドキドキ

カロル「降りよ?あの子ケガしてるみたい!」

司祭「な、なんじゃ?」

カロル「」ピョンッ ストッ

司祭「ま、待てい!?」ガチャッ

アリアス「止めておいてもらえる?」

馭者1「は、はぁ…?」キョトン
976:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/17(日) 21:22:47 ID:5tYfNPQVjY
???「……」グッタリ

カロル「……!?」

司祭「これは…むごい有り様じゃな」

アリアス「息はしてるようだけれど全身の皮膚が焼け爛れてるし、まず助からないでしょうね」

カロル「そんなっ…!」

マルク「」クンクン

司祭「やはり畜生よな…。死体の肉を食らいたがっとる?」

カロル「なっ…!マルクはそんなことしません!」ムッ

マルク「」グイッグイッ

カロル「え?マルク…この子の匂いを知ってるの?」

マルク「わぅん!」コクリ

カロル「も、もしかして……」ゾクッ

???「」

カロル「おねがい…間に合って…!」ガバッ ギュッ

???「」シュゥゥゥ

アリアス「爛れていた皮膚が…再生して…!?」ギョギョッ

司祭「ほう…!力を使いこなせるようになったか!」

アリアス「(これが癒しの力…?もっと神秘的なものを想像してたけれど案外単純なのね…?)」ビクビク
977:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/17(日) 21:24:54 ID:5tYfNPQVjY
???「ぐっ…うぅ…」ピクッ

カロル「……やっぱりキミだったんだね」

ルーボイ「あ…!」

カロル「…ルーボイくん」シュン

司祭「ほう?知り合いか?」

カロル「はい…村の友達です」

ルーボイ「カロル…!」

カロル「ルーボイくん、いったい何があったの?」

ルーボイ「し、知らねぇよ!パッチを見つけて……い、いろいろあって!
村に戻ったらなんか火が燃え上がってて…!母ちゃんが……いや、とにかく逃げて…」アタフタ

ルーボイ「なんか…知らねぇけど、夢見てた…」

カロル「そっか…。もっと早く見つけられなくてごめんね。苦しかったでしょ?」ションボリ

ルーボイ「ていうか…えっ?えっ?俺、なんで生きてんの?」マジマジ

カロル「ボクが治したんだ?癒しの力…っていうので?」ニコッ

ルーボイ「癒しの力?」

カロル「うん。ボクの持ってる力なんだって?まだよくわかんないんだけど、ね…」

ルーボイ「(え、まてよ…癒しの力なんて…ないんじゃねーの…?)」

ルーボイ「(だって…全部、ウソで…ホビットを悪者にするから…癒しの力があって…ホビットは癒しの力…盗んでなくて…)」グワングワン

カロル「でも…ルーボイくんが助かってホントによかった!」ニコニコ

ルーボイ「は…?」ピクッ

カロル「?」パチクリ

ルーボイ「なんだよ、それ…」ボソリ

カロル「な、なにが?」オロオロ

ルーボイ「お前…ウソ付いてたのになんで笑ってんの?」

カロル「…え?」
978:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/17(日) 21:27:08 ID:OqXv9TpU5w
ルーボイ「せ、宣教師様が言ってたんだぞ!癒しの力はお前らを悪者にするためのウソだって!」

カロル「ぼ、ボク…知らなかったから」シュン

ルーボイ「…お前、宣教師様を騙したのかよ?」

カロル「ち、ちがうよ…!」

ルーボイ「じゃあ…じゃあなんなんだよ…」グッ

カロル「えと…ボクも何て言ったらいいか…」マゴマゴ

ルーボイ「た、頼むよ…カロル」

カロル「……?」

ルーボイ「ちゃんと教えてくれよ…!俺、俺…!」ググッ

ルーボイ「お前が信じられなかったら、俺にはもう…なんにも無いんだよ!」

カロル「ルーボイくん…」

ルーボイ「父ちゃんも母ちゃんも死んじゃってさぁ!パッチにも嫌われたよ!?
村だって燃えちゃったし…分かるよな!?」

カロル「……」

ルーボイ「だからさ…。お前だけは信じさせてよ?いいだろ?」

カロル「実は……」

司祭「悪いがそんな時間はないぞ?」
979:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/11/17(日) 21:29:46 ID:5tYfNPQVjY
ルーボイ「あ、司祭様…!」

司祭「災難じゃったのう…。しかしもう心配は入らぬ。その足で大聖堂を訪ねよ?」ポンッ

ルーボイ「大聖堂に…?」

司祭「お前さんはわしら教団で引き取る。あそこにはお前さんぐらいの歳の子もたくさんおるからな」

ルーボイ「ま、待ってよ…。そんな…いきなり言われたって分かんないよ!」オロオロ

司祭「大丈夫、大丈夫じゃからな?」ナデナデ

ルーボイ「…ちゃんと教えてくれよ!このままじゃイヤだよ!」

司祭「…聞き分けのない小僧じゃのう?」イラッ

ルーボイ「なぁ!カロル!どうなんだよ!?」

カロル「…もう少しだけお話してもいいですか?」

司祭「ならん。時間の無駄じゃ」

カロル「じゃあ…ボクはここに残ります。おじいさま達だけで行ってください」

司祭「なにぃ…!?」

カロル「ともだちと話すのは…無駄な時間じゃないですから!」

司祭「ぬぅぅ…!あ、アリアス!」

アリアス「いいのですか?神官からはなるべく刺激しないようにと…」

司祭「構わんから連れていけ!」

アリアス「…かしこまりました」
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名前:
sage:


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