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少年「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1: 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


885: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/18(水) 22:10:00 ID:IWbPBuUNEE
アントリア「行き場もなくさまよったノワールは見知らぬ森の中で疲れはてて、草むらに横たわって眠ったのだそうだ」

アントリア「そして目を覚ますと数匹のホビットが彼を取り囲んでいた」

宣教師「(そういえばカロルくんのお母様が言ってましたね。ホビットは森に住まう種族だと)」

アントリア「ノワールは怯えながらも必死に助けを求めた」

宣教師「助けてもらえなかったのですか?」

アントリア「…助けてもらえないだけならまだよかったろうね」

宣教師「……?」

アントリア「ホビットは傷付いて動けない彼を流れの激しい川に放り込んだのだ。
自分たちの縄張りに人間を置いておく訳にはいかないと言ってね」

宣教師「なっ…!」

アントリア「濁流に押し流されて気が付いた頃には王国領に辿り着いていた。
冷えきった体と朦朧とする意識をなんとか起こし、川を離れたところで力尽きたのだと?」

宣教師「(ものすごい生命力ですね…)」

アントリア「さすがに彼もその時ばかりは死を覚悟したらしいがね。
運良く、たまたま馬車で通りかかった父上が拾ったのだよ」

宣教師「ということは…司祭様は神官の家で過ごしたんですか?」

アントリア「亡くなった父上は変わり者でね。たまたま拾った見知らぬ子供を誕生日の贈り物として僕にくれたのだ」

宣教師「司祭様は物扱いなんですね」

アントリア「物なら単純で助かるが彼は扱いにくかったよ」

宣教師「…なんとなく分かります」
886: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/18(水) 22:15:48 ID:oAdlPUadgE
宣教師「(司祭様にそんな過去があったなんて…)」

司祭「大臣め!ようやっと寝間に入りおったわい!」ガチャッ

アントリア「クックッ!ご苦労だったね?」

宣教師「」ジーッ

司祭「む?なんじゃ?」

宣教師「い、いえ…」

司祭「……?変な奴じゃな?」

アントリア「さて、僕も寝るとしようかな」

司祭「そうか。では寝間に案内してやろうかの」

宣教師「……」

アントリア「年寄りの長話に付き合わせてすまなかったね?」

宣教師「あ…とんでもありません」

司祭「む?なんの話じゃ?」

アントリア「なに、つまらない話さ」

司祭「……?」

宣教師「……」

司祭「…お前も寝ておけ。庭園の宴も終わった頃じゃろう?」

宣教師「はい…」

宣教師「(司祭様がホビットも王国も憎んでいる理由は分かりましたが、なぜそこまで癒しの力に執着するのでしょうか…)」
887: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/23(月) 11:55:20 ID:kql6e53rLY
―――大聖堂(応接間の隠し部屋)―――
ガチャッ

アリアス「ナラ。迎えに…」

カロル「」プニィ

マルク「」グニョン

ナラ「ぷっ」

カロル「あっ!今笑ったでしょ?」

マルク「わんっ!」

ナラ「…うぅ」モジモジ

アリアス「……」

カロル「あ、アリアスさん!」

ナラ「」ビクッ

マルク「わんっ」

アリアス「…あなた達、なにしてるの?」

カロル「にらめっこしてたんです」ニコニコ

ナラ「……」ビクビク

アリアス「(…ずいぶん呑気なのね。まぁ良い傾向だけれど)」

カロル「アリアスさんもにらめっこする?」

アリアス「遠慮しておくわ。ナラ?」

ナラ「はい…」

カロル「…どうかしたの?」

アリアス「もう遅いからナラを部屋に戻すのよ」

カロル「え…そんな時間だったんだ。気付かなかった」
888: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/23(月) 11:58:24 ID:ndq7pVhfUU
カロル「おやすみ。ナラ?」ニコッ

ナラ「……」

アリアス「…あなたは返事もまともに出来ないの?」

ナラ「」ビクッ

カロル「叱らないであげて?ボク、怒ってないですから…」

アリアス「そう…」

ナラ「」ウジウジ

カロル「アリアスさんもおやすみなさい」ニコッ

アリアス「おやすみなさい。良い夢を…」バタンッ

マルク「わぅぅん…」

カロル「ナラ…どうしたんだろ?」

マルク「クゥーン…」

カロル「…明日はもっと笑ってくれるといいね?」

マルク「」コクコク
889: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/23(月) 12:01:49 ID:ndq7pVhfUU
―――大聖堂(通路)―――
アリアス「いつの間にあんな顔ができるようになったの?」ニコッ

ナラ「……」

アリアス「普段の無口なあなたからは想像できない…。卑屈で…媚びていて…引きつった笑みのあなたからは…?」

ナラ「」ブルブル

アリアス「ダメじゃない?誰が心を開いていいと言ったの?」ニコニコ

ナラ「ごめんなさい…」

アリアス「あなたも知ってるわよね?アレはホビットなのよ?
人間じゃない…。ホビットなの?」ニコニコ

ナラ「はい…」

アリアス「教えも熱心に受けないあなたを置いてあげてるのは何故だと思う?」ニコニコ

ナラ「……」

アリアス「それは…こういう時の為でしょう?」ギロッ

ナラ「ひっ…」ビクッ

アリアス「ホビットを楽しませるのは結構よ?でもあなたはそうじゃないでしょう?」

ナラ「はい…」

アリアス「あなたが少しでも集中出来るように私から助言をしてあげましょうか?」

ナラ「……?」

アリアス「あのホビットはもうすぐいなくなる…。二度と会える日は来ないの」

ナラ「……!なんで!!」

アリアス「声を荒げるなんて珍しいわね。よほど情が深いのかしら?」

ナラ「…ちが…ます」

アリアス「…肝に銘じておきなさい。ホビットと人間は異なる生き物。交わることはないのよ」

ナラ「……」

アリアス「…部屋には一人で戻れるわよね?」

ナラ「」コクリ
890: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/26(木) 20:24:25 ID:hwbXPlLH2c
―――夢(宣教師)―――
……逃げろ!早く!早くしろ!

……なんで私達が!?一体何をしたと言うの!?

……町を出るんだ!ここにいては殺されてしまう!

……無理よ!湖に囲まれたこの町に逃げ場なんてないわ!?

……火が放たれたぞ!王国は本気でこの町を消すつもりだ!

……あぁ!あぁ!あぁぁぁぁ!!

……希望を捨てるな!出口が無いのなら、いっそ湖に飛び込もう!

……待って!子供がいないの…!

……諦めろ!どうせ助からない!

……誰か、誰か手を貸してくれ!妻が怪我をしてるんだ!

……構うな!助かりたい奴は生き残る事だけを考えろ!

……騎馬隊が迫ってきたぞ!

……早く飛び込むんだ!

バシャッ! バシャバシャッ! ボチャンッ!

……うがぁぁ…!く、苦しい!

……なんだぁ!何か…変だぞ!?

……み、水を飲むな!毒が入ってるのかもしれない!

……ぶくぶく

…矢が!矢が放たれだふっ!?

……一人も、生かさない気なの…か…

……ぶくぶく ぶくぶく
891: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/26(木) 20:29:03 ID:pqeXbqy9pQ
〜〜〜〜〜〜
???「ここが例の町か。本来は美しい町であったろうに…」スタスタ

「」グスングスン

???「む…?」スタスタ

「ひっく…ひっく…」グスングスン

???「…お前さんはこの町の子かね?」

「うっ…うえぇぇん…」ブワァッ

???「何があった?泣いてばかりでは分かるまい?」

「ヒック…グスン!おじいさんは誰なの?」

???「わしは神に仕えし人間じゃ。恐れる必要などないのじゃよ?」

「…ほんと?」グスン

???「本当じゃとも。何があったか話してみなさい」

「…わたしが外にお花を摘みに行ってたら、みんないなくなってたの」

???「ふむ…」

「ねぇ、どうして?どうして町が無くなったの?どうしてみんないなくなったの?」

???「…わしでは答えられんな」

「おじいさんは神に仕える人間なんでしょう?神様は教えてくれないの?」

???「神が人に教えるのは…いずれも答えに近いものであって答えではない。
あくまで、それを見つけるのは自分自身なのじゃ」

「……」

???「お前さんの町がなぜこうなったかは…いずれ自分自身で見つけられよう。
それよりも今はお前さんがどう生きるのかを考えねばな」

「イヤだよ…。お父さんもお母さんも…お兄ちゃんもいないなんてやだ」

???「ならばどうする?ここに残るのか?」

「……」
892: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/26(木) 20:34:36 ID:pqeXbqy9pQ
???「お前さんのような子供が一人で生きていけるほど、生易しい世の中ではないぞ?」

「生きてたって…みんなも町も戻らないもん」

???「だったらなんじゃ?死ぬとでも言うのか?」

「…それでもいいよ。みんなに会えるなら」

???「ふむ。あの世で再会とな…。はたしてお前さんの家族は望むかの?」

「知らないよ…知らないけど、しょうがないから」

???「しょうがない?」ピクッ

「だって!どうしたらいいの!?
いきなり一人になったって分かんないよ!」

???「やっかましいぃぃぃぃぃ!!!!」

「」ビクッ

???「ケツの青いガキの分際で命をやすやす捨てようなど片腹痛いわぁぁぁ!!」

「…!?」ドギマギ

???「お前さんがどうしても死ぬと言うのなら、わしは断固阻止するぞ!?」

「どう…して?」

???「どうしてもこうしてもあるかっ!とにかくお前さんの生きる場所はわしがくれてやる!
そこでもまだ死にたいとほざくのなら、勝手に死ねばええわい!」

「」キョトン

???「向こうに馬車を待たせとる!行くぞ!」スタスタ

「」ポカーン

………………
893: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/29(日) 21:33:24 ID:nCTLVGdIG2
―――大聖堂(広間)―――
ワイワイガヤガヤ

ジョー「へー!司祭様にそんな過去がなぁ…」

宣教師「…はい。まさか私と似たような境遇にいたなんて思ってもみませんでした」

ジョー「王国を憎む訳だよ。えげつねぇにも程がある」

宣教師「…そういえば神父様は?いらっしゃらないみたいですが…」

ジョー「あのおっさんなら二日酔いで寝込んでるよ。昨日は飲めねぇクセに意地張って飲んでたから」

宣教師「それはまた…あの方らしいと言いますか…」

ジョー「そんな事より聞きてぇんだけどさ。あんたは王国を恨んでないのか?」

宣教師「私ですか?」

ジョー「あぁ。あんたも王国に故郷を滅ぼされたんだろ?」

宣教師「……。特にないです。司祭様のように復讐に走る気もありませんし」

ジョー「…ま、そうだろうな。考えてみりゃあんたはそんな人じゃねぇか」

宣教師「…許せない方ならいますがね」ボソリ

ジョー「ん?なんだって?」

宣教師「い、いえ…なんでもありません」ゴニョゴニョ

ジョー「それにしても王国まで一枚噛むとなると、ますます話がでかくなるなぁ…」

ナラ「」トコトコ

ジョー「ん?よう!昨日のちっこいのじゃねぇか?」

ナラ「」ビクッ

宣教師「?」
894: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/29(日) 21:35:34 ID:nCTLVGdIG2
ジョー「またあのボウズんとこに行くのか?」

ナラ「」コクリ

宣教師「ジョーさん、この子は?」

ジョー「修道子だよ。なんでもアリアスの命令で、あんたの好きなホビットの部屋に入り浸ってるらしいぜ?」

宣教師「なんですか、その誤解を招きそうな言い方は…。要は監視でしょう?」

ジョー「こんな子供に何させてんだかってハナシだよな?」

宣教師「カロルくんでしたら監視など付けなくてもおとなしくしていそうなものですが」

ナラ「……!カロル…しってる、の?」

宣教師「えぇ。私は彼の友達ですから」

ナラ「もしかして…せんきょうし、さん?」パチクリ

宣教師「おや、彼から聞いたのですか?」

ナラ「うん。すごく…やさしくて、だいすきなひと…いってた」

宣教師「なっ…」カァァ

ジョー「ヒュー!隅に置けねぇな、あんたも?」ニヤニヤ

宣教師「ふ、ふざけないでください!」

ジョー「あのボウズに会いたくなってきたんじゃねぇか?」ニヤニヤ

宣教師「っ…!知りません!」プイッ

ナラ「……」
895: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/29(日) 21:37:48 ID:nCTLVGdIG2
ジョー「くくく…!」ニヤニヤ

宣教師「コホンッ!お名前は?」

ナラ「な、ナラ…」モジモジ

宣教師「ふふ。かわいらしいですね。カロルくんは元気にしてますか?」

ナラ「」コクリ

宣教師「それは良かった。仲良くしてあげてくださいね?」ニコッ

ナラ「……」

ジョー「なんか言いたそうな顔だな?」

ナラ「…ホビット、なかよくできない」

宣教師「?」

ナラ「アリアスさまが…いってた」

ジョー「あの冷血オバタリアンか…」

ナラ「せんきょうしさん、どうして…なかよくするの?」

宣教師「…あなたはカロルくんが嫌いですか?」

ナラ「……ちがう!」ブンブン

宣教師「そうでしょう?でしたら自ずと答えは見える筈です」

ナラ「?」

宣教師「誰かの言葉ではなく…自分の気持ちに従いなさい。あなたがしたいようにすればいいのです」

ナラ「でも…おしえも…」

宣教師「教えはあくまで参考程度のモノですよ。
そこから何を思い、どうするのかはあなたが決めること。違いますか?」

ジョー「そうそう。てめぇの人生なんだからてめぇの好きにさせろってハナシだよ」

ナラ「……」
896: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/29(日) 21:39:51 ID:nCTLVGdIG2
ナラ「…わたし、カロルがすき」

宣教師「そうですか!」ニコリ

ジョー「ライバル登場だな?」ニヤニヤ

宣教師「いい加減にしなさい。本の角で叩きますよ?」

ジョー「じょ…冗談だって」タジタジ

ナラ「……いなくなるもん」

宣教師「……?」

ジョー「はぁ!?」

ナラ「アリアスさまがいってた…」

宣教師「……」

ジョー「ナラちゃんに教える事はねぇだろうに…!あのおばさん…とことん冷めてんな!」

ナラ「カロル…いなくなったら、またひとりぼっち」ウルッ

宣教師「……」

ジョー「う……」タジタジ

ナラ「もっといっしょにいたい。ずっと…ずっと」ウルウル

宣教師「…顔を上げてください?」

ナラ「…」スッ

宣教師「先はどうあれ、今を大切にしなければ始まりませんよ?」

ナラ「……」

宣教師「たくさんの思い出を作りなさい。あなたの気持ちの赴くままに?」ニコリ

ナラ「」コクリ
897: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/29(日) 21:41:47 ID:joc1CoqX1k
――――――

ジョー「いいのか?あんな事言っちまって?」

宣教師「……」

ジョー「その場しのぎもいいとこだ」

宣教師「黙っていても彼女は悩み続けますよ」

ジョー「…それもそうか」

宣教師「私たちは出来る限りの事をしましょう?あの親子を助けられるように…」

ジョー「無理だな」

宣教師「なっ…」

ジョー「内心分かってんだろ?」

宣教師「……」

ジョー「教団と王国に隠された真実は暴けたし、伝承も迷信だって分かった。
あとはこの事実を俺たちの足と声で伝えてくだけだ」

宣教師「えぇ。王国の圧政は教団の洗脳あってのもの。人々の呪縛が解ければホビットに向けられた矛先は王国に傾く筈です」

ジョー「じゃあ今から伝えて廻るとして…何年、いや何十年かかる?」

宣教師「それは…」

ジョー「そんなことしてる内にボウズ達は司祭様に利用されて消されるぞ」

宣教師「……!」

ジョー「人間ってのはそんな単純じゃないぜ。分かるだろ?
ハナから信じてもらえねぇ前提で話して廻るんだ。下手したら一生掛かっても洗脳は解けないかもしれない」

宣教師「分かってます…。私が任されていた村の人間も…耳を貸してくれませんでしたから」

ジョー「俺だって…あんたがいなきゃ一生ホビットを憎んだままだった」

宣教師「……」
898: ◆WEmWDvOgzo:2013/9/29(日) 21:44:41 ID:nCTLVGdIG2
ジョー「だから言える。世界中歩き回ったって信じてくれる人なんか、ほんの一握りだ」

宣教師「無謀だと分かってるなら…どうして協力しようと思ったんですか?」

ジョー「…あんたがいるからだろ?」

宣教師「え?」

ジョー「あんたなら…こんな馬鹿げたやり方でも何か変えられる気がしたんだ」

宣教師「私が…?」

ジョー「あぁ。自分じゃ気付いてないかもしれないが、あんたの言葉には嘘がない。
妙に説得力があるっていうか…うまく言えないけど、自然と信じてみたくなるんだよ」

宣教師「そんな…大げさですよ。私はただ言いたい事を言ってるまでです」

ジョー「その素直さがいいんだよ。俺には分かる」

宣教師「…私には分かりません」

ジョー「はは。だろうな?」

宣教師「……」

ジョー「けど…どう頑張っても信じさせるには時間が要る」

宣教師「…ですが、あの親子には時間がありません」

ジョー「そういうことだ。王国と教団が動き出しちまっちゃ、もう諦めるしかない」

宣教師「……」

ジョー「差別に苦しんでるホビットはあいつらだけじゃないしな」

宣教師「…私は諦めません」

ジョー「……」

宣教師「カロルくんとお母様に…約束しましたから」

ジョー「はぁ…あんたも頑固だな…?」
899: ◆WEmWDvOgzo:2013/10/9(水) 13:07:56 ID:mhRd5op86s
ジョー「俺はそろそろ戻るぜ」

宣教師「……」

ジョー「とりあえず頭に入れといてくれよ?」

宣教師「…なにか方法を考えてみます」

ジョー「…まぁ、あんたがそうしたいって言うならそれでいいけどさ。
多分、どうしようもないんじゃないか?」

宣教師「……」

ジョー「…なんか思い付いたら教えろよ。俺に出来ることなら協力するから」

宣教師「はい…。ありがとうございます」

ジョー「んじゃ、またな!」スタスタ

宣教師「えぇ。また…」

スタスタ スタスタ……

宣教師「はぁ…弱りましたね」

「悩みでもあって?」

宣教師「はい。実は……え?」

アリアス「私でよければ聞きましょうか?」ニコリ

宣教師「…いつからそこに?」

アリアス「たった今来たところだけれど?」

宣教師「…そうですか」

アリアス「何かあったのなら聞かせてもらえない?」

宣教師「あなたには関係ありません」

アリアス「冷たいのね。とても悲しく思うわ?」

宣教師「…何か用ですか?」

アリアス「えぇ。司祭様があなたを呼んでいるわ。付いてきなさい」

宣教師「…分かりました」スクッ
900: ◆WEmWDvOgzo:2013/10/9(水) 13:10:19 ID:EGaUv6OiD6
―――大聖堂(応接間の隠し部屋)―――
カロル「うーん。こっち!」パシッ

ナラ「ふふ」

カロル「あ……」ガーン

ナラ「クスクス…。またわたしのかちだね?」ニコッ

カロル「ナラはババ抜きが得意なんだね?」

ナラ「ううん。とくいじゃないよ。カロル…よわいんだもん」クスクス

カロル「えぇっ!そんなことないよ!もう一回やろ?」

ナラ「うん。いいよ」

マルク「クゥーン!」スリスリ

ナラ「え?」

カロル「マルク、どうしたの?」

マルク「わん!わん!」

ナラ「な、なに?」オロオロ

カロル「…退屈になっちゃったのかな?」

ナラ「そう、なの?」

マルク「うぅぅ〜…!」ジーッ

ナラ「……」

カロル「待ってて。終わったら一緒に遊ぼう?」

マルク「……」ジーッ

ナラ「……」
901: ◆WEmWDvOgzo:2013/10/9(水) 13:17:03 ID:EGaUv6OiD6
カロル「また負けちゃった…」

ナラ「ふふ。かおにでやすいから…」

カロル「そうかな?ちゃんと分からないようにしてるのに?」

ナラ「だってババをもってると、ババしかみてないもん」

カロル「え…そうだったんだ。気を付けなきゃ」アセアセ

マルク「わんっ!」

カロル「あ、ごめんね?マルクも遊ぼっか!」

マルク「」ブンブン

カロル「…そうじゃないの?」

マルク「うぅ〜…わんっ!」

ナラ「」ビクッ

ナラ「……」

マルク「」ジーッ

ナラ「やっぱり…ダメだよ、ね」

カロル「へ?」

ナラ「…わたし、ウソついてるの」

カロル「ウソ…?」

マルク「くーん…」

ナラ「カロルはだまされてる。アリアスさまは…じゆうにするっていってたけど、ホントはちがうの」

カロル「違うって、なにが違うの?」キョトン

ナラ「わからないけど、アリアスさまは…なにかかくしてる。
だって…わたしにカロルをみはれっていった」

カロル「ど、どうして?見張らなくたって、お母さまと帰れるならおとなしくしてるよ?」オロオロ

ナラ「かえれ…ないよ。それにおかあさんにもあえないとおもう…」

カロル「え…?」ドクンッ
902: ◆WEmWDvOgzo:2013/10/9(水) 13:19:52 ID:mhRd5op86s
ナラ「わたしはカロルをあんしんさせてっていわれて…なにも、しらないけど」

カロル「…ナラはボクを騙してたの?」

ナラ「ち、ちが…!アリアスさまが…!」

カロル「……」

ナラ「わたし…じゃない。しんじて…?」

カロル「…もう分からないよ。誰を信じたらいいのさ」シュン

ナラ「ちがう!わたし、カロルがすきだよ!ともだち、だから!」

カロル「頼まれたから…友達のふりをしてたんじゃないの?」

ナラ「カロル…」

カロル「…ごめん」

マルク「」スリスリ

カロル「…へいき。心配しなくていいよ。傷付いたり…しないから」ナデナデ

マルク「クゥーン…」

ナラ「…さっき、せんきょうしさんにあった」

カロル「宣教師さま…?」

ナラ「うん。カロルのこと、はなしたよ」

カロル「…そうなんだ?なんて言ってたの?」

ナラ「なかよくしてあげてって、やさしくわらいながらいってくれた」

カロル「…そっか。宣教師さま、会いたいな」
903: ◆WEmWDvOgzo:2013/10/9(水) 13:22:18 ID:mhRd5op86s
ナラ「カロルは…わたしのこと、きらいになった?」

カロル「嫌いになんてならないよ。ナラは悪くないもの」

ナラ「……」

カロル「でも…ちょっとだけ悲しいかな。自然になかよくなれた気がしたから」

ナラ「…せんきょうしさんにね。きいてみたの」

カロル「?」

ナラ「どうしてホビットとともだちなの?って…」

カロル「……」

ナラ「そしたらね。じぶんのきもち、しんじなさいっていってた」

ナラ「しゅぞくも、おしえも、かんけいない。じぶんがすきなら…それでいい」

ナラ「わたしはカロルがすきだから、そのきもちにしたがうの」

カロル「うん…」

ナラ「もういっかい、きかせて?カロルはわたし、きらい?」

カロル「…そんなことない。大好きだよ?」ニコリ

ナラ「あり…がとう」

カロル「(そうだよね。理由なんていらないんだよ。きっと…)」

カロル「(ボクと仲良くしてくれる人間に…理由なんてない筈だもの)」

ナラ「どうしたの?」

カロル「なんでもないよ。それより、もっと遊ぼうよ?」

ナラ「うん!」

マルク「……」
904: ◆WEmWDvOgzo:2013/10/9(水) 18:36:09 ID:W53Y4Ns4ZQ
―――大聖堂(礼拝堂)―――
アリアス「連れて参りました」

司祭「うむ。ご苦労じゃったな」

宣教師「…私に何か?」ジト

司祭「ほっほっほ。まぁまぁ。そう警戒するな?」

宣教師「警戒など…」

司祭「ところで宣教師よ。これからどうする?」

宣教師「どうする…とおっしゃいますと?」

アリアス「あなたが布教を行っていた村の話は聞いたわよね?」

宣教師「はい。断片的でしたから、あまり把握出来ていませんが…」

司祭「ふむ、そういえば全ては説明していなかったのう?」

アリアス「端的に話せば例の村では布教を行えない」

宣教師「(もとより布教するつもりもありませんが…)」

アリアス「ある旅の人間が村人にタイマを勧めたのよ。それで今、村は管理出来る状態にないの」

宣教師「タイマ…?ま、まさかあのタイマですか!?」

司祭「…ほう。知っておったか?」

宣教師「知らない筈がありません!あれは…人の手に渡ってはならない物でしょう!」

アリアス「残念だけれど、それが渡ってしまったのよ」

宣教師「村人に勧めた旅の人間は何者なんですか!」

司祭「分からん。ただ、どうやらお前さんの親しくしていたホビットを狙っとったらしいわい」

宣教師「…二人を?」

司祭「そやつはお前がホビットを匿った日に村に入り込んだようじゃ。
まさか村を担当していたお前が、そんなことにも気付かなんだとはな?」

宣教師「そ、そんな…私が来た時には誰も旅人の話など…」

司祭「それはそうじゃろう?村人たちはお前がホビットを匿ってる事を知っていたのじゃから、信用など失っておったに違いない」

宣教師「……」
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