むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
87:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:36:58 ID:wJajIDVNMY
母「さ、行きましょ?」
少年「うん、ボク場所覚えてるから案内するね!」
母「えぇ。お願い」
子供3「おーい、待ってよー!」
少年「ん?」
子供2「へっへーんだ!くやしかったらここまでおいでー!」タタタッ
子供3「くっそー!」タタタッ
母「村の子供たちが遊んでいるのね。あなたも入れてもらったら?」
少年「……ボクはいいよ」
母「あの子たちも喜ぶわよ?」
少年「そうかな…」
母「そうよ!ほら、いってらっしゃい。
お母さんはここで待ってるから」
少年「う、うん。いってくる!」タタタッ
母「」ニコニコ
88:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:38:15 ID:wJajIDVNMY
少年「ねぇ!ボクも仲間に入れて!」
子供2「えぇー!どうする?」
子供3「ボクはいいよ?」
子供2「じゃあお前も入れてやるよ!」
少年「うん、ありがとう!」
子供3「でもなんで女の子なのに"ボク"なの?」
子供2「あっほんとだ!ヘンだぞー!」
少年「なっ…!ボクは女の子じゃ…」
子供2&3「えっ」
少年「」ハッ
89:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:39:50 ID:wJajIDVNMY
子供2「女じゃねーのか?」
少年「う、ううん…女…だよ…」モジモジ
子供2「やっぱり女じゃんか!」
子供3「まぁまぁ」
少年「ごめん…」シュン
子供2「まぁいいや、何して遊ぶ?」
子供3「おいかけっこは飽きたし、かくれんぼでもする?」
子供2「いいな!やろうぜ!」
子供3「キミもかくれんぼでいい?」
少年「うん、いいよ!」ニコニコ
子供2「じゃあお前オニなー!」
少年「うん、わかった!」ニコニコ
子供3「いや、じゃんけんしようよ!?」
90:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:41:09 ID:wJajIDVNMY
少年「え?」
子供3「だってそうしないと不公平じゃない」
子供2「ちぇっ!わかったよ!」
少年「ねぇ」
子供2「ん?なんだよ?」
少年「じゃんけんって何?」
子供2「えっ」
子供3「えっ」
少年「えっ」
91:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:42:44 ID:wJajIDVNMY
子供2「なんだお前、じゃんけん知らねーのかよ?」
少年「うん、誰かと遊ぶのって初めてだから」
子供2「ヘンな奴!」
子供3「まぁまぁ!じゃあ教えてあげるね?
じゃんけんっていうのは…(※省略)」
少年「そうなんだ!おもしろそうだね!」
子供2「そうか?お前の方がおもしろいぞ?」
子供3「ボクもそう思う」
少年「あとかくれんぼっていうのも教えて?」
子供2「えー!?なんにも知らねーじゃん!」
少年「ご、ごめん」
子供3「いいよ?教えてあげる!」
92:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:44:33 ID:wJajIDVNMY
子供3「…っていうのがかくれんぼ!わかった?」
少年「うん、ありがとう!」
子供2「なー!早くやろうぜ?」
少年「待たせちゃってごめんね?」
子供3「じゃあじゃんけんしよう!」
子供2「よーし!最初はグー!」
「じゃんけんぽい!」
93:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:45:47 ID:PHb2NYku.U
少年「あはは。負けちゃった」
子供2「じゃあ俺たち隠れるから1000秒数えろよ!」
子供3「数え過ぎだよ!?
10秒でいいからね?」
少年「えっ…そんないいよ、1000秒数えるルールなんでしょ?」
子供2「……」
子供3「あ、あはは。2くんの冗談だから大丈夫だよ?」
少年「そ、そうだったの?」カァァ
子供2「」キュンッ
子供3「どうしたの?」
子供2「な、なんでもねーよ!」
子供3「……?」
94:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:47:44 ID:wJajIDVNMY
少年「はぁっ…はぁっ…」
子供3「つ、疲れたね…?」ゼェゼェ
子供2「お前らへばってんじゃねーよ!」
子供3「なんで2くんだけあんな元気なんだろ…?」
少年「わかんない…でもすごく楽しいや」
子供2「おーい、もっと遊ぼうぜ!」
子供3「えー!ちょっと休もうよ!」
子供2「なんでだよ!いいから遊ぼうぜー!」
少年「うん、遊ぼ?ボクももっと遊びたい!」ニコッ
子供2「」ドキッ
少年「どうしたの?」キョトン
子供2「う、うるせーよ!」
少年「え…」
子供2「ふんっ」プイッ
子供3「二人ともすごいや、ボクもうへとへとだよ…」
95:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:50:32 ID:wJajIDVNMY
子供3「だめ…ほんとにもうむり…」バタッ
少年「はぁっ…ぼ、ボクも…疲れちゃったよ…」
子供2「次なにするー?」
子供3「ボクらの話聞いてた!?」
少年「ボク…もう戻らなきゃ」
子供2「えー!なんでだよー!?」
少年「だって…お母さまを待たせてるから」
子供2「いいじゃんか!遊ぼうぜ!」
少年「で、でも…」
子供3「まぁまぁ!しょうがないよ」
子供2「……」
少年「ごめんね…?」
子供2「お前なんか知らねー!帰っちゃえよ!」
少年「」ガーン
子供2「バーカ!ブース!」ダッ
少年「……」
96:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:52:27 ID:wJajIDVNMY
子供3「気にしないでね、いつものことだから」
少年「…そうなの?」
子供3「そうだよ、好きな女の子にはああするんだ」
少年「す、好きな女の子…!?」カァァ
子供3「ボクらを教えてくれてる女の宣教師様にも、いつもああなんだ」
少年「そ、そうなんだ…」
子供3「うん、だから気にしないで?お母さん、待ってるんでしょ?」
少年「うん…」
子供2「おい!いつまでいんだよ!さっさと帰れよ!」
子供3「ふふ、素直じゃないんだから」
子供2「はぁ?意味わかんねーし!」
少年「」クスクス
97:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:53:33 ID:wJajIDVNMY
子供2「なに笑ってんだよ!?」
少年「ううん…なんでもない」
子供2「ヘンな奴…」
少年「これ、友達の証だよ。受け取って?」つ【キャンディ】
子供2「」ドキッ
子供3「ありがとう」
少年「ううん、またね?」タタタッ
子供2「お、おう…」ドキドキ
子供3「どうしたの?」ニヤニヤ
子供2「うるせー!!」プンスカ
98:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:54:45 ID:wJajIDVNMY
少年「待たせてごめんね」
母「あら、もういいの?」
少年「うん、お母さまを待たせてるもの」
母「もう…そんなの気にしなくていいのに」
少年「でも…」
母「あなたが子供たちと遊んでるのを見てるだけであたしは幸せよ?」
少年「……うん、ボクも楽しかった!」
母「うふふ、それは良かったわ!日も暮れてきたし行きましょうか?」
少年「そうだね、さっきまであんなに明るかったのに」
母「たくさん遊んだんだもの、しょうがないわ」
少年「楽しい時間は速く過ぎるんだね」
母「そうよ?だから大事にするの」
少年「そうだね…ボク、大事にするよ」
母「えぇ。そうなさい?」
少年「(また遊びたいな…)」
99:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:56:09 ID:PHb2NYku.U
母「それにしても…あの子たちと遊んでるあなた、まるで違和感が無かったわよ?」スタスタ
少年「そうかな?」スタスタ
母「えぇ。誰も14歳の男の子だなんて思わなかったでしょうね」ニコニコ
少年「……そんな事ないもん」
母「あ、今は女の子だったかしら?」ニヤニヤ
少年「っ……!しらない!」
母「うふふ。ところで、どの辺りなの?」
少年「えっと、確か…あっ!あそこだよ!」
母「まぁ、ずいぶん立派な……」ピタッ
少年「お母さま?どうしたの?」
母「これは…教会…?」
少年「うん、そうだよ?」
母「坊や、帰りましょ」
少年「えっ」
100:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:57:06 ID:PHb2NYku.U
少年「へ?な、なんで?」アセアセ
母「あなたも死んだおじいさまから聞いたでしょう?
教団の人間だけは、絶対にだめよ」
少年「で、でもボクを助けてくれた。いい人なんだよ?」
母「昨日はそうかもしれないけど今日はわからないでしょう?
お母さんはあなたを思って言ってるのよ」
少年「そ、そんな…急にどうして?」アタフタ
母「いいから帰るわよ、さぁ!」グイッ
少年「や、やめて!痛いよ?
それにあの人はそんな人じゃない!」
母「」キッ
少年「」ビクッ
母「ならいってらっしゃい!
行って教団の人間がどんなに酷いか知るといいわ!」
少年「……お母さま…」
101:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:57:55 ID:wJajIDVNMY
母「お母さんは先に帰るわ。
一緒に帰るなら今のうちよ?」
少年「いい…」
母「そう。勝手になさい?」
少年「うん。勝手にする…」
母「……もう、知らない」スタスタ
少年「……ごめんなさい、お母さま」
102:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:59:21 ID:PHb2NYku.U
ポツン
少年「どうして、こうなっちゃったんだろ…」
少年「さっきまであんなに楽しかったのに…」
少年「お母さま…」ウルッ
少年「……」グスッ
宣教師「どうしました?」
少年「!?」ビクッ
103:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 18:19:12 ID:TlNdAXGC3g
少年「し、神父さま?」
宣教師「なっ…!?
失礼な事を言うんじゃありません!私は女です!」
少年「じゃ、じゃあシスター?」
宣教師「あ、いえ。それは少し近いのですが…違います」
少年「……?」
宣教師「コホン!私は神の教えを説き、広める者…宣教師です!」
少年「宣教師…さま?」
宣教師「はい、宣教師です!」ドヤァ
少年「……」
宣教師「(無反応…だと…!?)」ガーン
104:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 18:20:09 ID:HcAMq1STVw
宣教師「コホン!あ、あなたはなぜ教会の前に?」
少年「えっ?ぼ、ボクは…えっと…」
宣教師「……?」
少年「せ、宣教師さまこそ、どうして?」
宣教師「どうしても何もここは私の教会ですが」
少年「あ、そうじゃなくて…」
宣教師「?」
少年「お日さまも沈んでる時間に帰って来たんだって思って…」
宣教師「あぁ…いつもはもう少し早いのですがね。
趣味で作っているお菓子の材料が切れまして、買いに行っていたのです」
少年「そ、そうです…か」
宣教師「あ、はい」
105:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 18:23:57 ID:TlNdAXGC3g
少年「……」
宣教師「……」
少年「……」
宣教師「(き、気まずい…)」
少年「……」
宣教師「(な、なんでしょう?前にもこんな事があったような…?)」
少年「あの」
宣教師「は、はいっ」ビクッ
少年「ご、ごめんなさい」
宣教師「あ、いや…どうぞ」
少年「昨日のこと、覚えてますか?」
宣教師「ん?」
106:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 18:24:53 ID:HcAMq1STVw
宣教師「昨日の…?」
少年「は、はい」
宣教師「失礼ですが、あなたのような女の子とお会いした事は無いかと…?」
少年「……」バッ
宣教師「か、カツラ…?」
少年「……」
宣教師「……!キミは、昨日の?」
少年「はい、宣教師さまに助けてもらったホビットです」
宣教師「っ……!」
ホビット「覚えて…ますか?」
宣教師「……!」ギュッ
宣教師「……なにを、言っているのですか?」
少年「えっ」
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