むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。
860:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/2(月) 21:29:27 ID:LLuv63mkU2
アントリア「シチュエーションとしてはこれ以上のモノはない筈です。集客力も十分に見込みがある」
大臣「だ、だがなぁ…。あの大樹は……」
アントリア「分かっているとも。あれはかつてホビットが育ててきた物…。
残念ながら、立ち入りは禁じられている」
大臣「う、うむ。国王はホビットを憎んでおられる。あの大樹も快く思ってはいませんよ」
アントリア「かといって差別を促す為には聖書に載せられた大樹の存在は必要不可欠だ。
だからこそ枯れた大樹を燃やす事も無く、あのままにしておられるのだね」
大臣「そうです!誰にも触れられぬよう厳重に管理して、ね!」
アントリア「」ゴクゴク
大臣「そこで我々富裕層に親しまれるヘマトの興行などを実行すれば、国王の怒りを買いますぞ!?」
アントリア「何を恐れているのだね?」
大臣「は…?」
アントリア「国を司るのはどなたか?」
大臣「そ、それは…国王に決まって……」
アントリア「言うなれば…国王は旗だ」
大臣「旗…?」キョトン
アントリア「…国を象徴する高貴なる旗。何を差し置いても国王こそが掲げられねばならない」
大臣「そ、そうですな」
アントリア「ならば…その旗を両の手に握り締め、天へ翳すのはどなたかね?」
大臣「そ、それは……」
アントリア「大臣。あなたでしょう?」
大臣「えっ」
861:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/2(月) 21:34:33 ID:rNg5ExPvj.
大臣「わ、わたくし…ですと?」キョトン
アントリア「改めて言うまでもないでしょう?あなたこそが国王という旗を握っておられるのだ」
大臣「わ、わたくし…が?」ドキドキ
アントリア「伝説の大樹とヘマトバザールのショーは莫大な材を国にもたらす。
それならば誰よりも国家に重きを置くあなたは…国の歩むべき未来を先駈け、保身も欲もかなぐり捨てて道を開くだろうと思うのだよ?」
大臣「わたくしが…国を…」ブツブツ
アントリア「あなたは答えに辿り着いた筈だ。国を司る真なる王はどなたか?」ニヤリ
大臣「…ご、ご冗談を!あまりからかわんでくだされ!」アセアセ
アントリア「すまないね。年甲斐も無く喋りすぎました…」
大臣「まったくですな!わたくしが真の王などと…いやはやなんとも!」
アントリア「あながち、まんざらでも無さそうだがね?」
大臣「いやいや!」
司祭「(表情が全てを物語っとるわい。腹の底では既に冠を被っておろうに…)」
大臣「ぐふふ!ぐふ!」ニンマリ
宣教師「(これが…私たち人間の上に立つ者なんて…)」
大臣「しかしなぁ…。いや、やはりというべきか…神官は見る目がありまするな!」
アントリア「…伊達に歳を喰ってませんからね?」
大臣「ワッハッハ!いいでしょう!
愛する国の為…国王の為ということであれば、誠に不本意ながら、わたくしめが引き受けましょうぞ!」ニヤニヤ
アントリア「感謝するよ。あなたを見込んで正解だった」
司祭「(モノは言い様じゃな…。ともあれ、これで全ての準備が整ったか)」
宣教師「(こんな醜い人達の為に…カロルくん達を犠牲にはさせない…!)」
宣教師「(あの親子は私が絶対に守ってみせる…!)」
862:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/2(月) 21:42:11 ID:rNg5ExPvj.
>>855
幸せになれるかどうかは…どうなんでしょう?(笑)
もし良ければホビット親子の運命を見届けてあげてください!
支援ありがとうございました!
863:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/4(水) 19:04:56 ID:Dhvz5ObIgc
―――大聖堂(応接間の隠し部屋)―――
カロル「わぁ…!おいしい!」パァァ
ナラ「」ジーッ
カロル「……?ボクの顔になにか付いてる?」キョトン
ナラ「」ハッ
カロル「?」モグモグ
ナラ「」プイッ
カロル「…ねぇ、ナラちゃん!」
ナラ「!?」ズザァッ
カロル「ど、どうしたの?隅っこに何かあった?」オロオロ
ナラ「」ビクビク
カロル「?」
ナラ「」ビクビク
カロル「もしかしてボクがこわいの?」
ナラ「!」
カロル「…そうなんだ」シュンッ
ナラ「!!」
カロル「ごめんね。もう話しかけたりしないから…」
ナラ「ぁ…ぅ…」
カロル「……」ズーン
ナラ「ち、ちが…ちが…ぅ…」
カロル「え?」
ナラ「わた…し…」
カロル「なぁに?」
ナラ「わ、わ…たし…じょうずに、しゃべ、れない。から」モジモジ
864:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/4(水) 19:08:45 ID:5Jf7tolYuw
ナラ「しゃべったら…へん…。で、でも…へんって、いわれたく…ない」モジモジ
カロル「なんで?変じゃないよ?」キョトン
ナラ「うそ…。へんって…いいたいん…でしょ?」ジト
カロル「ううん。変って思わないよ」
ナラ「ほん、と?」ジーッ
カロル「ナラちゃんはどうして変だと思うの?」
ナラ「だって…み、みんな…いう」
ナラ「へんって…いう、もん」プイッ
カロル「クスクス……変なの!」
ナラ「」ピクッ
カロル「すっごく変だよ!」クスクス
ナラ「やっぱり…へん」シュンッ
カロル「うん。だってナラちゃんは変じゃないのに、自分は変だって思い込んでるもん」
ナラ「……?」
カロル「お喋りするのが苦手なのって変じゃないでしょ?
それが変なら、お勉強が苦手な子もお絵描きが苦手な子も野菜が食べれない子もみんな変になっちゃうもの」
ナラ「……」
カロル「苦手ってさ。直せるんだよ!ボクも苦手なことばっかりだけど、少しずつ直してるんだ!」
カロル「えっとぉ…字の読み書きでしょ?あと…いつも道に迷ってて、道を覚える練習もしたよ!」
ナラ「……」
カロル「そうだ!嫌いだった芋虫も食べれるようになったんだよ!」ニコッ
ナラ「(いもむし!?)」
865:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/4(水) 19:12:19 ID:5Jf7tolYuw
カロル「ボクでも出来たんだから、ナラちゃんもきっと直せるよ!」
ナラ「む、むり、だよ。わたし…おともだち…いない」
カロル「え?」
ナラ「おしゃべり…したい、けど…れんしゅう、できない」
カロル「そうなんだ…。人間も、みんなが友達じゃないんだね…」
ナラ「…みんなは、ナラ、へんだ…から、あそばないって」ウルウル
カロル「……」
ナラ「わたし、も…あそ…びたい。でも…あそんで、くれないから…ひとりぼっち…」ウルウル
カロル「ボクも…ナラちゃんの気持ち、分かるよ?」
ナラ「……?」
カロル「ボクもホビットだから…友達なんていなかったもん」
ナラ「……」
カロル「寂しいよね。独りって…とても……」
ナラ「……」コクリ
カロル「泣きたくなるけど…そういう時はお母さまがギュってしてくれるんだ。
よしよしって撫でてくれて、お母さまのぬくもりが冷たい心を暖めてホッとする…」
ナラ「…ぃ…ぃ…な」
カロル「ナラちゃんにもお母さんがいるでしょ?」
ナラ「いる…けど、いない」
カロル「?」
866:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/4(水) 19:15:19 ID:5Jf7tolYuw
ナラ「ママ…。わたし、を…すてた」
カロル「……!」
ナラ「ぱ…パパは…いない、よ。わ…たし、しら…しらない、ひとの…こども、だから」
カロル「」ズキンッ
ナラ「しょうがなくて、うんだって…ママ、いってた。あいし…て、ないんだって」
カロル「…ごめん」
ナラ「ちが…あな、あなたの…せいじゃ、ない」オロオロ
カロル「…」
ナラ「あやまら、ないで…」
カロル「ボク…誤解してた。人間はみんな幸せなんだって、そう思ってた」
ナラ「しあ…わせ?」
カロル「なんでボクたちばっかりツラい想いをするんだろうって…人間はずるいって、少しだけだけど、思ってた」
ナラ「ホビット…だから?」
カロル「うん…。ホビットに生まれてなかったら、幸せだったのかもなんて考えたこともあるよ。
お母さまには絶対言わなかったけど…人間に憧れてた」
ナラ「…わた、し。あなた…うらやましい」
カロル「……」
ナラ「ひとり、ぼっちじゃ…ないなら、なんでも…いい。あなた…うらやましい」
カロル「でもホビットだよ?」
ナラ「いい…。ホビットでも…いい。わたし…ホビットが、いい」
カロル「……」
ナラ「きらわれて、いきるなら…にんげんより…ホビットが、マシだ…もん」
867:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/4(水) 19:18:31 ID:Dhvz5ObIgc
カロル「うーん。そうかな?」
ナラ「そう、だ…よ」
カロル「ナラちゃんの話を聞いたら、ボクは人間でもホビットでも変わんないって思ったよ?」
ナラ「…なん…で?」
カロル「種族の違いなんて関係ない。キミはキミだもの」
ナラ「じゃ…わた、し…このまま…なの?」シュンッ
カロル「ナラちゃんは変われるよ?今は少し、勇気が出せないだけ!」
ナラ「……?」
カロル「分かり合えるはずだよ。いつか…みんなと仲良しになれる!」
ナラ「わた…しは…できない。だれも、なかよく…してくれない」モジモジ
カロル「ううん!出来るよ!」
ナラ「うそ…うそ、だよ。だれが……」
カロル「ボクがナラちゃんの友達になる!」
ナラ「」パチクリ
カロル「あ…えと、ボクはホビットだから…キミがイヤじゃなかったらだけど!」アセアセ
ナラ「ぁ…ぅ…」パクパク
カロル「…イヤかな?」ドキドキ
ナラ「う、うれ…しい」モジモジ
カロル「っ…!」
ナラ「ともだち…なりたい!」モジモジ
カロル「…うん!よろしくね!」ニコッ
ナラ「」ドキッ
868:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/4(水) 19:21:08 ID:5Jf7tolYuw
ナラ「わたし、ナラ…よ、よろし…く」
カロル「ボクはカロル!カロルって呼んでね!」
ナラ「ぅ、うん…。わかった…。か、か、カロル…!」モジモジ
カロル「なぁに?ナラちゃん?」
ナラ「」カァァ
カロル「えへへ。なんだか照れくさいね?」ニコニコ
ナラ「」モジモジ
カロル「どうしたの?」キョトン
ナラ「わたし…も」
カロル「へ?」
ナラ「ナラが、いい。ナラって…よんで、ほしい」
カロル「うん。いいよ!ナラ!」ニコニコ
ナラ「」ドキッ
カロル「ねぇねぇ!ここって出れないの?」
ナラ「……?」
カロル「ここだと、ちょっぴり狭いよね?せっかく友達になれたんだから、お外で遊びたいなー?」キョロキョロ
ナラ「!」ドキドキ
ナラ「でれる…よ?」
カロル「ホント!?」パァァ
ナラ「うん…。アリアスさまに…あずかった」つ【鍵】
カロル「じゃあ遊びに行こうよ!ボク、村の友達からいろんな遊びを教えてもらったんだ!」
ナラ「どんな…遊び?」
カロル「じゃんけんと…かくれんぼでしょ?あと鬼ごっこ!」
ナラ「(じゃんけん…?)」
カロル「広いお庭があるから、そこで遊んだら楽しいよ!」
ナラ「!」パァァ
869:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/9(月) 15:42:52 ID:4jRYvwqKz2
―――大聖堂(庭園)―――
ジョー「ふいー!今日はよく眠れそうだぜ」ホロヨイ
神父「へはうぃわうりはおふ〜」デイスイ
ジョー「それにしても…威張ってる割には下戸だったんだな。おっさん…」
神父「にょふふ。おらぁがしゃんとしぃねん…あたしゃおねむだよ〜」バタッ
ジョー「おい、んなとこで寝るな!?」
シスター1「あら?ワンちゃんったらお寝坊さん?」
シスター2「かっわっ……」
シスター3「い〜〜〜い!!」
シスター1&2&3「きゃぁ〜〜〜!!!」ピョンピョン
マルク「」スヤスヤ
ジョー「(…そういや宣教師さん、おせーな。まだマリーさんに付いてやってんのか?)」
トト「はぁ〜!公に酒が飲めるなんてたまんねぇな、ジョー!」
ジョー「ん?あぁ、そうだな!」
トト「今日は飲み明かすぞー!」
ジョー「…まだ夕方だぞ?気が早すぎだろ?」
トト「はぁ?このままぶっ通しに決まってんだろ!」
ジョー「はぁ?勘弁してくれよ!ほとんど寝てないんだぜ!?」
トト「ダメだ!昨日はお前のせいで遅くまで準備させられたんだぞ!酒の席くらい付き合えよ!」
ジョー「(唯一酒を楽しめる日っつっても、みんな悪酔いしすぎだろ…)」
870:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/9(月) 15:49:55 ID:ur1V531DUI
スタスタ スタスタ
トト「ん…おい、ジョー!あれ…」トントン
ジョー「誰かが裸踊りでも始めたのか?」グビグビ
トト「ちげーよ!あれだって!」
ジョー「なんだよ。しつ……!?」
カロル「人がいっぱいいるね?」キョロキョロ
ナラ「き、きょうは…パーティーだから」モジモジ
ジョー「な、なんでボウズが…!?」
カロル「あっ!」タタタッ
ナラ「」ビクッ
シスター1「なに、この子?」
シスター2「きゃー!かわいい!新しく入った修道子かしら?」
カロル「マルク!」
シスター1「マルクってお名前なの?」
マルク「わんっ!」ピョンピョン
シスター2「きゃー!ワンちゃん起きた!」
カロル「わっ」ドサッ
シスター3「あらまぁ。乗し掛かっちゃダメでしょ、ワンちゃん!」
マルク「」ペロペロ
カロル「あはは!くすぐったいよ!」ニコニコ
ナラ「か、カロ…ル?」ビクビク
カロル「くすぐったいったら!もう!そんなに寂しかったの?」ナデナデ
シスター1「ワンちゃんとお知り合いなの?」
シスター2「きゃー!もしかして…ワンちゃんを飼ってる子!?」
シスター3「へ?それって……」
シスター1&2&3「ホビット!?」
871:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/9(月) 15:52:19 ID:4jRYvwqKz2
シスター1「き、キャー!?」タタタッ
シスター2「わ、わわ…!誰か!誰かー!!」タタタッ
シスター3「ホビットよー!ホビットが脱け出したわ!」
トト「よーし!俺が取っ捕まえてやる!」ダッ
ジョー「待て!俺がなんとかする!」ダッ
トト「はぁ?自分ばっかいい格好しようったってそうはいかねぇぞ?」タタタッ
ジョー「ち、ちげーよ!いいから待てって!」タタタッ
カロル「?」
ナラ「か、カロル!」ガシッ
カロル「平気だよ!おばさまは見方を変えるって言ってたじゃない?」ニコッ
ナラ「」オロオロ
マルク「わぅ?」
トト「捕まえた!」ガシッ
カロル「へ?」キョトン
ナラ「か、かろ……」アセアセ
ジョー「はぁ…。なぁにやってんだか」
トト「ちょくちょく出てきやがって!なんなんだ、お前は!」
カロル「ボクらは遊びに来ただけだよ?」
トト「はぁ?なに言ってんだ、お前?」
カロル「アリアスさんが約束してくれたんだ!もうボクたちは自由だって!」
トト「???」クエスチョン
872:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/9(月) 15:56:35 ID:4jRYvwqKz2
ジョー「一緒にいるちっこいのは?」ジロッ
ナラ「」ビクッ
ジョー「…お前がボウズを出したのか?」
ナラ「」ビクビク
ジョー「はぁ…。とにかく今すぐ戻れ。ここには貴族の方たちも……」
兵士3「何事か!」
兵士4「ホビットだそうだな?」
ジョー「ちっ…」
カロル「(鎧だ…。かっこいい!)」キラキラ
貴族「たまらんなぁ。ネズミにうろつかれては…?」スタスタ
トト「(やべぇぞ…。よりによって、この人かよ…!)」
ジョー「申し訳ない。我々のミスです。すぐに牢に押し込めますんで」ペコリ
貴族「その必要はない。余興には打ってつけだ?」スラッ
ジョー「はっ…!?」
貴族「ネズミを押さえろ。ちょうど新調した剣の切れ味を試したかったんだ?」ジャキッ
兵士3「了解しました」ガシッ
カロル「!?」
貴族「フッフッフ!さながらモルモットといったとこか?」スッ
ジョー「ち、ちょっと落ち着いて…!」アセアセ
兵士4「暴れるな!!」ググッ
カロル「あ、あぶないってば!やめてよ…!」ギシギシ
ナラ「か、カロル!いやがってる!やめて…!」オロオロ
マルク「グルルルル…!」フシューフシュー
「何をしているの!?」
873:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/9(月) 16:01:04 ID:ur1V531DUI
貴族「…誰だぁ?私を呼び止めたのは…。口の聞き方がなっとらんなぁ?」クルッ
アリアス「司祭様の付き人をしております。アリアスと申します。
恐れ入りますが、ここは教団の敷地内。たとえホビットとはいえ、血を流すのは許されません」
兵士4「貴様!この方をどなたと心得る!」
アリアス「都が誇る芸術家、侯爵家ランベルヤ卿のご子息、バルガン様でございますね?」
バルガン「フッ!なかなか心得ているようだな?」
アリアス「高名なる卿の名を存じ上げない者など、この敷地内には一人としていません」ペコリ
バルガン「…なるほど。もっともだ?」
アリアス「お目汚し、失礼いたしました。どうか、この場は収めていただけませんか?」
バルガン「……」
兵士3「卿の前に薄汚いホビットをうろつかせた責めはどうするつもりだ!」
アリアス「」ストッ
バルガン「…なんの真似だ?」
アリアス「どうか…ご容赦願います」ドゲザ
バルガン「フッ!女の身で、そこまでするか?」
アリアス「……」
バルガン「」チャキッ
バルガン「興が醒めた…。飲み直すぞ」スタスタ
兵士3「え…」スタスタ
兵士4「は、はい!」パッ
カロル「……!」トトッ
874:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/9(月) 16:04:22 ID:4jRYvwqKz2
アリアス「……」スクッ
カロル「助けてくれてありがとう!おばさま!」
マルク「わんっ」ペコリ
ジョー「お、おい……」
ナラ「」ビクビク
アリアス「勝手に出歩いてはダメでしょう?」
カロル「ごめんなさい……」
アリアス「あの方々は王国の人間だから、少し誤解があったみたいね」
カロル「うん。みんな慌ててたからびっくりしちゃった」
アリアス「まだ全員に説明出来ていなかったの。ごめんなさいね」
カロル「ううん!平気だよ!」
アリアス「なるべく無断で外出しないで?騒ぎになってはいけないし、王国の目もあるから」
カロル「はーい…」
マルク「くぅん…」
ナラ「」ションボリ
アリアス「トト。彼を部屋に戻して」
トト「あ、はい!付いて来い!」スタスタ
カロル「うん!マルク、おいで?」スタスタ
マルク「わんっ!」タタタッ
シスター1「あーん…ワンちゃんが行っちゃう…」
シスター2「うえーん!」
シスター3「しょうがないわよ。ホビットの犬だもん」
875:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/9(月) 16:10:26 ID:ur1V531DUI
アリアス「ふぅ…。よくよく使えないわね、あなたも」ボソッ
ジョー「ちっ…」
アリアス「…私に頭を下げさせておいて、その態度はどうなのかしら?」
ジョー「う……」
アリアス「私が来なければ今頃、お客様方の前で血が流れていた。そうなってしまえばパーティーどころでは無くなるのよ?」
ジョー「す、すんません」
アリアス「…間違いなく司祭様にまで責めが及んだでしょうね。これだけの醜態を晒せば、教団は王国に意見出来なくなるわ。
私達の布教に制限がなされて、今後の活動に支障をきたす…。あなたにその責任が取れて?」クドクド
ジョー「ぐっ…!」
アリアス「ナラ!」
ナラ「ひっ…」ウルウル
アリアス「」パシンッ
ナラ「ん…!」ヒリヒリ
アリアス「鍵はあなたに渡していた筈よね?なぜホビットを外に出したの!?」
ナラ「ご、ごめ…なさい」ポロポロ
ジョー「…こ、子供相手になにもそこまでやんなくても…」アセアセ
アリアス「関係ないのだから黙っていなさい。ナラ…あなたに任せた筈よね?」
ナラ「ほ、ホビット…みはる…」
アリアス「そうよ?それがなぜ、こんな事になっているの?」
ナラ「……」
アリアス「答えなさい」
ナラ「とも…だち」
アリアス「……?」
ナラ「いっしょに…あそ、ぼうって…」
アリアス「(…まさかナラが…短時間で心を開いたと言うの…!?)」
876:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/9(月) 16:12:49 ID:4jRYvwqKz2
アリアス「(純粋で疑いを知らないからこそ人の心の境界を容易く越えられる。
それがあの少年の強味であり、人間の持たざる力。油断がならないわね…)」
ナラ「」プルプル
アリアス「鍵は没収させてもらう。あなたも部屋に戻りなさい」
ナラ「」つ【鍵】
ジョー「部屋ってボウズが閉じ込められてるとこか?」
アリアス「そうよ」
ジョー「あんた…この子まで監禁する気かよ?」
アリアス「時間になればナラを出して修道子たちの大部屋に戻すわ」
ジョー「そしたら、この子は寝る時以外はずっとボウズに付きっきりじゃねぇか。自分の時間も与えられねぇ!」
アリアス「それでいいのよ。ナラに時間なんて必要ないわ」
ナラ「……」
ジョー「あんた、なに言ってんだ…!?」
アリアス「この子は誰とも心を通わせない。いえ、通わせられないと言った方が正しいかしら」
ジョー「なっ…」
アリアス「同じ修道子達からも相手にされていないし、かといって教えを熱心に受け入れる訳でもない。
簡単に言えば、彼女ははぐれ者なの。いつもボーッとしているだけで、なんの才も無い不要な子」
ナラ「もど…り…ます」ダッ
ジョー「あっ!」
ナラ「」タタタッ
877:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/9(月) 16:18:02 ID:ur1V531DUI
ジョー「……最低だな。あんた…!」
アリアス「好きに取って構わないけれど、ナラにとってもいい機会でしょう?
親に捨てられて、拾われた教団でも居場所が無かったあの子を受け入れてくれる相手といられるのだし?」
ジョー「…その唯一の相手といられる時間も、そう長くはねぇんだろ?」
アリアス「それもそうね…。まぁホビットにしか相手にされないような子は、初めから神に愛されていないのよ」
ジョー「結局、身勝手に利用してあの子の心を弄んでるだけじゃねぇか!」
アリアス「さっきまであの子の顔も知らなかった分際で意見しないでもらいたいわね?
自己満足の善悪を押し付ける暇があったら、自分でなんとかしてみたら?」
ジョー「……!」
アリアス「しがらみにまとわりつかれた大人に出来る事なんて限られてるのよ。
その証拠にあなた、達者な口とは裏腹に足が震えてるわよ?」
ジョー「…くそ!」ガクガク
アリアス「あなたは今まで通り、必要なことだけに集中なさい。
罪人を見張って、金を手にして、生活を維持するだけの日常に…ね」
ジョー「(くそっ!くそっ!くそっ!)」
アリアス「くれぐれもお客様の機嫌を損ねないように。せいぜいパーティーを楽しみなさい」スタスタ
ジョー「」ワナワナ
シスター1「ワンちゃーん…!」グスン
シスター2「神様ー!かわいいペットをくださーい!」
シスター3「神様にくだらないこと祈らないの!」
神父「ぐがー…ぐごー…」スヤスヤ
シスター1「グスン…なんでこの人、芝の上で寝てるの?」
ジョー「(宣教師さん…絶対にあいつらをぎゃふんと言わせてやろうぜ!)」
878:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/15(日) 20:43:21 ID:Dhvz5ObIgc
―――大聖堂(応接間の隠し部屋)―――
カロル「えへへ。怒られちゃったね」
ナラ「……」
カロル「どうしたの?元気ないよ?」
ナラ「へい…き」
マルク「クゥーン」スリスリ
ナラ「…!」ビクッ
カロル「マルクも心配だって?」
ナラ「う…うん」
カロル「あ、そうだ!これ食べる?」つ【パン】
ナラ「……?」
カロル「こっそりもらってきたんだ!」ニコニコ
マルク「はっ!はっ!」シッポフリフリ
カロル「ふふ。マルクにも、ちゃんとあるよ!」つ【ローストチキンの切れ端】
マルク「」ハムッ モグモグ
ナラ「」パクッ
ナラ「…おいしい」パァァ
カロル「元気出た?」ニコニコ
ナラ「うん…」ニコニコ
カロル「アリアスさんが許してくれたら、今度はいっぱい遊ぼうね!」
ナラ「そう…だね」
マルク「」モグモグ
ナラ「(カロルはあんなこと…あったのに、こわくないのかな)」
879:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/9/18(水) 21:50:02 ID:oAdlPUadgE
―――大聖堂(広間)―――
宣教師「」ズーン
アントリア「お疲れのようだね?」
宣教師「神官…」
アントリア「大臣が可愛がる度に引き攣る君の顔は見ものだったよ?」
宣教師「お、思い出させないでください!」アセアセ
アントリア「クックッ!すまないね…」クスクス
宣教師「…この先、私に純白のドレスを着る機会はないでしょうか…?」フッ
アントリア「ハハ…そこまで思い詰める事はないよ。
君ほど魅力的な女性なら、きっといい人が現れるとも」
宣教師「気休めはよしてください…」グスン
アントリア「あんなものは言ってみれば事故だよ。気に病むことはないさ」
宣教師「さんざん腰を撫で回された上に胸をまさぐられて…とても事故では済ませられません!」
アントリア「やれやれ、大袈裟だな…?」
宣教師「悪かったですね!どうせ下品な男の方には分かりませんよ!?」
アントリア「クックッ!下品ときたか。君もなかなか言うようになったな?」
宣教師「っ!失礼しましたね…!」プンスカ
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