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少年「ボクが世界を変えてみせる」
[8] -25 -50 

1:🎄 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


817:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 02:18:30 ID:J1qc8SjSd6
―――大聖堂(地下牢)―――
カツンカツン カツンカツン

ジョー「さぁて…」

神父「ん?」

宣教師「どうしま…」チラッ

ダガ「むがむぐ」ギシギシ

宣教師「」ビクッ

ジョー「どうした?」

宣教師「あの方はなぜ全裸な上に縛られているのですか…!?」ゾゾゾッ

ジョー「司祭様がそのままにしとけって言うからよ。
猿轡はいびきがうるせぇから、俺が噛ましといた」

ダガ「むぐ!むぐぉぉ!」ギシギシ

宣教師「ひっ」

ジョー「安心しろよ。あー見えて寝てるから」

神父「…なんともえげつない光景だな」

ジョー「そのうち慣れて何も感じなくなるよ。
見張りってのは、そういう感覚じゃなきゃやってけねぇ」
818:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 02:21:31 ID:ViDpTILY5o
ジョー「どれどれ?」チラッ

母「」ゼーゼー

ジョー「暗くてよく見えねぇな…」

宣教師「お母様!私です!」

母「」ゼーゼー

神父「どうやら意識がないようだな」

宣教師「このままでは何も対処出来ません!私は医術の心得がありますから、開けてください!」

ジョー「…了解!」ジャラ

神父「な、何をしている!」

ジョー「腹括れよ。あんたも俺達もとっくに教団を裏切ってんだ」カチャカチャ

神父「そ、それはそうかもしれんが…まだ間に合うのだぞ!」

ジョー「開いたぜ!」ガチャッ

宣教師「はい!」バッ

母「」ゼーゼー

宣教師「」ピトッ

宣教師「すごい熱ですね…」

ジョー「平気そうなのか?」

宣教師「…おそらく疲れが出たのでしょう。温かくして、氷を当てておくしかありません」

ジョー「じゃあ毛布と敷き布を持ってくるよ。神父さんは食堂から氷を持ってきてくれ」

神父「はぁ…こうなればやけくそだ…」

宣教師「私はお母様を見ています」

ジョー「了解」スタスタ

神父「(くそっ!私は何故こんな事を…!)」カツンカツン
819:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 13:36:26 ID:URWfLfOkaM
―――夢(母)―――
カロル「お母さま!早く!」グイグイ

「きゃっ!ど、どうしたの?そんなにあわてて…」

カロル「いいから!ほら、見てよ!」グイグイ

「分かったから引っ張らないで…」スタスタ

カロル「お待たせ!マルク!」

マルク「わんっ!」

「二人してなんなの?そろそろ何をするか教えてちょうだい?」

カロル「だーめ!まだナイショだよ!ねー?」

マルク「わぅん!」コクコク

「(…今日は特別な日だから、夕飯の支度がしたいんだけど)」

カロル「取ってきてくれた?」

マルク「わふーん!」クイッ

カロル「よしよし。おりこうさんだね!」ナデナデ

マルク「くぅん」スリスリ

「まぁ?かわいいお花ね?」

カロル「うん。小さな穴の中に咲いてたんだ!マルクに取ってってお願いしてたの!」ゴソゴソ

「へー…。最近よく遊びに行くと思ってたら…。その本は?」

カロル「えと…こうやって…!」グッグッ

「まぁ!せっかくのお花をなんで挟んでしまうの!?」

カロル「開けてみれば分かるよ?」つ【アルバム】

「え…」パラリ

カロル「」ワクワク

マルク「」フリフリ

「……!」
820:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 13:38:31 ID:UP/8EGaLio
カロル「どう?押し花でアルバムを作ってみたんだ?」

「すごいわ!こんなに色とりどりのお花が一冊のアルバムに咲き誇ってる!
これを一人で全部集めたの?」

カロル「ううん。マルクも一緒だよ?」

マルク「あんっ!」

「ふふ。そうね。ごめんなさい」ニコニコ

カロル「それ、お母さまにあげる!」

「まぁ。嬉しいわ!でも、いいの?せっかく二人で集めたのに…」

カロル「えへへ!だって今日はお母さまにとって特別な日でしょ?」

「…あたしにとって?」

カロル「もう!忘れちゃったの?」

「えぇ。ごめんなさい…。ちょっと思い出せないわ」

カロル「今日はお母さまが……」

「(だって今日は坊やの……)」

カロル「お母さまがボクを生んでくれた日!」
821:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 13:39:56 ID:UP/8EGaLio
「……それって坊やの誕生日でしょ?心配しなくても忘れてなんかいないわよ?
今日のために森の中を探し回ってご馳走を準備しておいたんだから!」

カロル「わーい!楽しみ……そうじゃなくって!」プンプン

「な、なに?」

カロル「今日はお母さまがボクを生んでくれた日だから、ありがとうって伝えたくて!」

「それで…アルバムを?」

カロル「うん!」

「…今日は坊やのお祝いしようと思って張り切ってたのに」ガックリ

カロル「…い、イヤだった?」アセアセ

「こんな事されちゃったら、嬉しい日なのに泣けてきちゃうわ…?」ブワァッ

カロル「わっ!な、泣かないで!ボク、お母さまを喜ばせたくて…ごめんなさい!」ペコッ

マルク「くぅん…」シュン

「違うのよ。坊や…」ダキッ

カロル「…お母さま?」

「生まれてくれてありがとう…。あたしのかわいい坊や…。
あなたがいてくれるから、こんな悲しい世界でも…生きていこうって…そう思えるのよ?」ギュッ

カロル「えへへ…。生んでくれてありがとう。お母さまがいてくれるから、ボクは幸せだよ」ポンポン

マルク「はっ!はっ!」ピョンピョン

カロル「もちろんマルクも、ね?」ニコッ

「えぇ。あなたも大切なあたし達の家族よ?」グスッ

マルク「くーん…!」スリスリ

「(誰一人、欠けてはならない大切な家族…。あなた達だけは…絶対に守ってみせる)」

「…二人とも。お家に帰りましょう?今日はとびっきりのご馳走よ?」

カロル「はーい!マルク!どっちが先に帰るか、かけっこしようよ!」タタタッ

マルク「わんっ!」タタタッ

「あらあら、まだ支度も出来てないのに…しょうがない子たちね?」タタタッ

…………………
822:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/21(水) 21:35:22 ID:sf2O.3nUgE
―――大聖堂(地下牢)―――
母「うぅん…あたしの…かわいい坊や…」ギュウ

「!」

母「んぅ……へ…?宣教師…さま?」ギュウ

宣教師「目が…覚めましたか?」ムギュ

母「ご、ごめんなさい!」パッ

宣教師「あ、いえ…お気になさらず…!」アタフタ

ジョー「ぷっ…くく…!」プルプル

神父「」グーグー

宣教師「むっ」カチンッ

ジョー「とっくに成人してる女が…か、かわいい坊やだってよ…!くくく…!」ニヤニヤ

神父「」グースカピー

バキッ! ゴインッ!

ジョー「」ピクピク

神父「っ!?っ!?っ!?」メダパニ

宣教師「ふぅ」

ジョー「あ、あんたなぁ…3人で苦労して探した本を武器にすんなよ……」ズキズキ

宣教師「私物をどのように使おうと私の勝手では?」

神父「(な、なんだ?何が起こったのだ?よく分からんが後頭部がとにかく痛い…!)」ズキンズキン

母「お、おほほ…」ヒクヒク
823:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/21(水) 21:37:15 ID:sf2O.3nUgE
母「あなた達…どうしてここに…?」

宣教師「…お母様が体調を崩していると聞いたものですから」

ジョー「寝具と氷水は俺達が持ってきたんだぜ?」

神父「ふあぁ…」アクビ

母「眠たそうになさってますけど、一体いつから…?」

ジョー「昨日の夜からかな。交代で看てたんだ」

母「まぁ…!ご迷惑をおかけしてすみません!」

神父「まったくだ…!」ブツブツ

宣教師「…とんでもありません。今は体を休める事に集中なさってください」

母「ありがとうございます…」

ジョー「いいってことよ!なっ?」ドンッ

神父「うっ!ゲホッゲホッ!い、痛いではないか!貴様ぁ!!」

母「ふふ…」クスクス
824:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/21(水) 21:39:02 ID:CxkaNjJgs6
母「」ゴホッゴホッ

宣教師「大丈夫ですか!?」ガバッ

ジョー「意地を張ってろくに飯も食わねぇからだ。熱もあんだし、おとなしく寝てろよ?」

母「気を遣わないで…?このくらい、旅をしていた頃は何度もありましたし、だいぶ熱も引きましたから…」

宣教師「無理はいけませんよ…。今日からきちんと食事を摂ってくださいね?」

母「あたしなんていいんです…。それより、坊やは…?」

宣教師「……」

母「…宣教師様?」

宣教師「……」

母「…坊やはどうしているの…!?」

宣教師「今は別の所にいます…。お母様もカロルくんも必ず出してあげますから、心配は入りませんよ」

母「……?」

宣教師「その為にここにいるジョーさんと神父様も協力してくださってます」

母「…本当に?」

ジョー「まぁ、そうなんのかな?」

神父「勘違いするな!私は貴様の息子のせいで巻き込まれただけだ!」

母「……」

宣教師「安心してお休みになってください。あとは私達に任せて…」

母「…ありがとうございます」ホロリ
825:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/21(水) 21:42:53 ID:CxkaNjJgs6
母「あたしにも何か出来ることはありませんか?
ここに籠っていると不安で…なんでもいいから協力したいんです」

宣教師「…そんな。お母様は無事に出られるよう、体調を整えるのに専念していただければ…」

母「…いてもたってもいられないの。早くあの子の顔が見たくて…」

宣教師「お気持ちは分かりますが…」

ジョー「じゃあさ、マリーさんは本当に癒しの力を持ってないのか?」

母「……?持ってませんよ?」

宣教師「急にどうしたのです?」

ジョー「なんか腑に落ちないんだよな…。母親のあんたに無い力を息子が持ってるってのがさ」

神父「うむ…。確かにな。遺伝や体質的なものであれば、母親の貴様が持ってないのはおかしい」

母「…そう言われても」

宣教師「それは私も考えていましたが…何か条件があるのだと思います」

神父「条件?」

宣教師「そうですね…。例えば環境とか…思い当たる節はありませんか?」

母「特には…。あたし達のような暮らしを強いられた同族はたくさんいる筈ですし…」

神父「…同族の中にそういう力を持った者はいなかったのか?」

母「聞いた事がないわ…。あの子がなぜそんな力を持ってるのか、あたしも不思議でしょうがないんです」

ジョー「ますます分からねぇな。そうなってくると、そもそも癒しの力ってなんなんだ?」

神父「頭がおかしくなりそうだ…。今まで常識として捉え、深く考えていなかったが改めて考えると訳が分からん」

宣教師「…私も最初はそうでした。正直のところ、今も分かっていません。
ですが実在する力である以上、そこになんらかの理があるはず」

母「…ごめんなさい。あたしが何か知っていたら…」

宣教師「いえ、お母様のせいでは…あっ」ポンッ

宣教師「…お母様。これを見ていただけませんか?」つ【本】

母「…それは?」

宣教師「我々教団が布教の際に用いる聖書(>>1-4)です。この内容に心当たりが無いかと思いまして」

母「…力になれるかは分からないけど、あたしに出来ることなら」
826:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/21(水) 21:45:42 ID:sf2O.3nUgE
母「…聞いた事もないお話ねぇ」パラリ

宣教師「やはり、そうですか…」

母「あたし達ホビットにまつわる樹のお話と言ったら…"アピシナの樹"くらいだけど。関係も無さそうですし」

宣教師「アピシナの樹…?」

母「はい。あたし達の種族に伝わる古いおとぎ話です」

ジョー「そんな樹、聞いたことあるか?」

神父「いや、無いな。そもそも聖書に乗っている大樹も遠い昔に枯れ果てたとされている」

ジョー「そうなのか?」

神父「うむ。癒しの力を奪った後に神の裁きを恐れたホビットが、この世界と神のおわす天界を繋ぐ大樹を隔てる為に枯らせたとな」

ジョー「へー。やっぱ名ばかりじゃなくて、ちゃんと神父やってんだな。俺は大雑把にしか覚えてねぇや」

神父「これぐらい今や常識だぞ…!?」

宣教師「その樹の言い伝えとは、どんなお話なのです?」

母「それは…」
827:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/21(水) 22:26:54 ID:CxkaNjJgs6
………………
むかしむかしのおはなしです
森に棲むアピシナという名の若いホビットがいました

ある日のことです
いつものように森をお散歩していると、とつぜん空から一粒の種が降ってきたのです
ふしぎに思ったアピシナは鳥のイタズラかと空を見上げてみましたが、陽気なお日さまの他に生き物の影は見当たりません
好奇心旺盛なアピシナは空から降ってきた摩訶不思議なその種を育ててみることにしました

その種は一生懸命世話をする内に芽を出し、やがてスクスクと成長して樹となり、それはそれは大きな実を付けました
アピシナは喜んで樹をよじ登り、実を摘むと瑞々しい果実を頬張りました
それはかぶり付くと小気味良い音がして、口いっぱいに甘い果汁が広がり、えもいわれぬ幸せです
アピシナは自分が育てた実をみんなにも食べさせてあげようと思い、樹の下に同じホビットや人間、獣達も招いて一つずつ分け与えました

すると実を食べた人間が目を輝かせ、「この甘い実が欲しい。その樹をくれ」と頼んできます
困ったアピシナは「樹はあげられません。食べたいのなら一緒に育てましょう」と持ちかけました
人間は少し不服そうにしていましたが頷いて、それからは一緒に樹を育てることになりました

アピシナと人間は1日ごとに分担して樹を世話すると決めました
一緒に育てる仲間が出来たと思うと嬉しくなって、張り切って樹の世話に励みます
ですが人間はなぜだか、一向に世話をしようとはしません
やり方を教えても、愛想よく頷くだけでどこかへ遊びに行ってしまうのです
しかたなくアピシナが人間の分まで世話をして実が成ると、平然とやって来て食べようとします
あきれたアピシナは「約束を破ったのだから実はあげません」とはっきり言いました
すると怒った人間は無理やり実をもぎ取って、さっさと逃げてしまうのでした
828:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/21(水) 22:29:38 ID:sf2O.3nUgE
約束を破られた上に育て上げた実を奪われたアピシナは愛想が尽き、あの人間に食べられるくらいならと樹の世話をやめてしまいます
それを知った人間はおいしい実が食べられなくなると、慌ててアピシナに謝りました
ですが一度約束を破った人間をアピシナも許す気にはなれません

しかたなく人間はアピシナが手放した樹を自分で世話をすることにしました
アピシナはその様子をこっそりと木陰から見ています
今まで世話をしてこなかった人間はどうしていいか分からず、樹の下であたふたとするばかり
かわいそうに思ったアピシナは、やはり人間を許してあげようと思いました

育て方を一からコツコツと教えてあげた甲斐あって、実を付ける頃には人間だけでも世話が出来るようになっていました
分かれた枝のそれぞれにたくさんの実が成って、二人は大喜びです
さぁ食べようとアピシナが実を取りによじ登ろうとすると、人間が立ちふさがって登らせてくれません

ふしぎに思ったアピシナが理由を聞くと、人間はふてぶてしく「お前は途中から来たんだから、この樹はオレのものだ」と言います
ムッとして言い返すと人間は枝を一本折って、その枝でアピシナの頭をつついて追い払ったのです
邪魔なホビットがいなくなったと満足した人間はおいしい実をお腹いっぱいになるまで、たらふく食べました

それからも人間はアピシナに教わった通りに世話をし続けます
しかし実が成るどころか、だんだんと樹は痩せ細っていくのです
驚いた人間は必死に手入れしましたが、むなしくも見る間に樹は枯れてしまいました
人間はもう一度アピシナに頼もうとしましたが、探し回っても姿はなく、鳥に聞いても獣に聞いても首をかしげるばかり
途方に暮れた人間はおいしい実を泣く泣く諦めました

その頃アピシナはというと、新天地に移って新しい樹を育てていました
もしものために実を食べる時には必ず種を取っておいたのです
アピシナは新しい土地でもみんなに実を振る舞っていました
よくばりな人間のいない樹の下で獣や鳥たちとおいしい実を囲んで幸せに暮らしましたとさ

めでたし めでたし……

…………………
829:🎄 名無しさん@読者の声:2013/8/22(木) 17:13:22 ID:o0.iqJu5Wk
C
830:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/24(土) 08:11:34 ID:.TjughmmcA
>>829
支援ありがとうございます!
831:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/26(月) 20:46:38 ID:.KbjG3TjXA
母「というお話です」

神父「なんだ、その全面的に人間だけを悪者に仕立てた話は?気分の悪い…」

ジョー「ま、そこはお互い様だろ。俺はむしろホビットも人間も似たり寄ったりだって分かって安心したぜ?」

宣教師「その樹は今もあるのですか?」

母「そんな…。これはおとぎ話ですから、ホントにある訳じゃ…」

宣教師「……」

神父「それにしてはやけに具体的な語り口で構成された話だな」

ジョー「その話に余談みたいのはないのか?」

母「父が言うには…アピシナの樹は愛情を注がないと育たない…そう言ってた気がするわ」

宣教師「愛情…?」

神父「…戯言を抜かしおって。気持ちで育てば苦労などない!」

ジョー「いや、農家の息子やってた俺にはよく分かるよ。作物ってのは生き物だ。
いい加減な気持ちで育てたら、その程度のモンしか出来ない。そういうもんさ」

母「…こんなお話じゃお役に立てないですよね」

宣教師「いえ、そんなことはありませんよ。参考にさせていただきます」

母「そうですか。よかった…」

宣教師「…申し訳ないのですが、私達はそろそろ行かなくてはなりません。
どうか安静になさっていてくださいね?」

母「どこへ行かれるのです?」

宣教師「今日は客人がいらしてますので、ご挨拶に伺うんです」

ジョー「毎度のことながら、総出で出迎えさせるなんて傲慢だよな。"お客さん"もよ」

母「……?」

神父「貴様ぁ!口を慎まんか!王国の方々がわざわざ足を運んでくださるのだぞ!
めんどくさがるなど以ての外だ!」

ジョー「はっ!あんなのは言ってみりゃしがらみだよ。しがらみ!はた迷惑なだけさ!」

母「王国…!?」ガタガタ
832:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/26(月) 20:49:48 ID:TgNiQQVscQ
母「」ガタガタ

宣教師「…お母様!?」

母「いやっ!イヤァァァ!!」ガクガクブルブル

神父「」ビクッ

ジョー「な、なんだ、なんだ?」

宣教師「…先に行っててください。私はお母様を落ち着かせてから行きます」

母「イヤよ…!あなた…!行かないで!!」ガタガタブルブル

ジョー「あ、あぁ!そうした方が良さそうだな…!」

神父「…訳の分からん。これだからホビットは」

母「これ以上…なにも奪わないで!!」

宣教師「……」

神父「おい!意味の分からん事をガタガタ騒ぐな!牢を開けたのがバレるだろうが!?」

ジョー「そんなのいいから行くぞ」グイッ

神父「お、おい!なにをする…!」ズルズル

ジョー「じゃ、後は頼んだぜ」スタスタ

神父「や、やめろ!私をなんだと思ってるんだ!?」ズルズル

宣教師「……」
833:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/26(月) 20:52:11 ID:.KbjG3TjXA
宣教師「……」

母「いやっ…イヤよ…!」ブルブル

宣教師「」ダキッ

母「」ビクッ

宣教師「」ギュッ

母「」ブルブル

宣教師「……」ポンポン

母「」ブルブル

母「」フルフル

母「」ピタッ

母「……」

宣教師「…大丈夫。私が付いてます」

母「……」

宣教師「あなたから、もうなにも…失わせたりしません」

母「信じさせて…くれますか?」

宣教師「えぇ。神に誓って」

母「……」ギュッ
834:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/26(月) 20:53:37 ID:.KbjG3TjXA
―――大聖堂(庭園)―――
ワイワイガヤガヤ

ジョー「…相変わらず大したもんだよ。馭者に馬を駆らせて、優雅な籠車でご登場ときた。
俺らが死ぬ気で働いたって、あんな贅沢を味わう機会はないだろうな」

神父「うむ。圧巻だったな」

ジョー「馬にまたがった御付きの兵隊っぽいのが取り囲んでたな。迫力はあったよ」

神父「今回は人数も多い。正門から潜る事が出来ない為に東側の門から入ったようだが…。
あの馬や籠車を敷地内に入れてしまったとなると、やはり誰かしらに役目が回ってくるのだろうな」

ジョー「勘弁してくれよ。王国御用達のお馬様方を世話して、籠車が痛まねぇように手入れしとけってのか?」

神父「まぁ…その辺はシスター達がやってくれるだろう」

ジョー「だといいけどな」

神父「ところで…よかったのか?奴らを二人にして?」

ジョー「宣教師さんなら、なんとかしてくれるさ」

神父「情にほだされて逃がしでもしたらどうする気だ?」

ジョー「あの人は考えも無く早まったまねをするほどバカじゃない。
そん時は、何か理由があると思って諦めようぜ?」

神父「ふざけるな!巻き込んでおいて、罪人にさせられるなど御免だぞ!」

ジョー「仲間のよしみで飯くらいはまともなモンを出してやるよ。牢の見張りは俺だからな」

神父「誰が仲間だ!?」イライラ
835:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/26(月) 20:59:46 ID:.KbjG3TjXA
ワイワイガヤガヤ

ジョー「立食パーティーが始まるぜ。宣教師さんには悪いけど、先に腹ごしらえといくか!」

神父「ホビットの面倒など見ているからだろう!自業自得だ!」

シスター1「ワンちゃーん!お魚さんですよー?」

神父「ん…?」チラッ

マルク「わんっ!」ピョンピョン

シスター2「お腹空いたもんねー。いっぱい食べていいのよー!」

シスター3「ほら、あーんして?」つ【魚】

マルク「」パクッ

シスター3「きゃっ!ワンちゃんたらせっかちなんだから!」

シスター2「食いしん坊なワンちゃんも…かっわいぃぃぃ!!」ダキッ

マルク「?」モグモグ

シスター1「あっ!ずるい!あたしもだっこしたーい!」

神父「(あの犬、まだおったのか…)」

ジョー「お!うまそうな魚だな!」

神父「…クラクネスか。パーティーだというのに安上がりな食材を…。司祭様も相変わらず倹約に精を出しておられるようだな」

ジョー「同じ安物にしたって今日は給仕の連中の気合いが違う。食い甲斐があるじゃねぇか!」

アリアス「失礼」スッ

ジョー「へ?あっ!て、てめぇは…!」

アリアス「ごめんなさいね。意地汚く餌に群がってたのにお邪魔して?」ニコニコ

ジョー「な、なんだとぉ…!」

神父「これはアリアス様ではありませんか。おはようございます」ペコリ

アリアス「…昨日の夕方から見かけなかったけれど、どこに?」

神父「言われました通り、宣教師と行動を共にしておりました!」

ジョー「ちっ…」

アリアス「無愛想な男ね。ここで話すのもなんだし、人気の無い場所へ行きましょう?」
836:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2013/8/26(月) 21:11:34 ID:MP0y9eWMw6
アリアス「…ここなら、あまり人は来ないかしら」

神父「は、はぁ」

ジョー「けっ!わざわざ歩かせやがって。なんの用だよ?」

アリアス「そうね…。お客様への挨拶まで姿も見せないで何をしていたのか…。ぜひ聞かせてもらいたくて?」ニコリ

神父「そ、それは…」

アリアス「見張りのトトから聞いたわ。なんでも宝探しをしてたんですってね?」

ジョー「あのおしゃべり野郎…!」

アリアス「ずいぶん楽しそう。私も入れてくださらない?」

ジョー「冗談よせよ。独り身のあんたにゃ、お宝よりフィアンセ探しがお似合いだ」

アリアス「……。遠回しな言い方じゃ理解出来ないようね?」

神父「こ、こいつは学がありませんからな!
さっきから何をとち狂ったのか、無礼な口の利き方を…」アセアセ

ジョー「……」

アリアス「率直に言うわ。何を嗅ぎ回っているのか、答えてもらう」ズイッ

神父「あ、いや…あの…」タジタジ

ジョー「俺たちに構う暇があんなら、司祭様の傍にいたらどうだ?あんたは付き人だろ?」

アリアス「気遣いはいらないわ?
司祭様なら、王国の方々と御歓談なさってる。その間、あなたの話を聞いてあげる時間は十分にあるわ?」

ジョー「そうかよ。だがあんたに教える義務はねぇな」

アリアス「義務ならあってよ?私はあなた達より位が高いのだから?」

ジョー「俺たちは何も嗅ぎ回ってねぇ。だから答える義理もねぇ。話は終わりだ」
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名前:
sage:


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