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少年「ボクが世界を変えてみせる」
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1:🎄 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


81:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:19:11 ID:4a/V8q7lfc
少年「おじさん、優しかった…」

母「えぇ、そうね。すっかり女の子だと思われてたわよ?」ニコニコ

少年「もう!からかわないでよ!」

母「うふふ。ごめんなさい」クスッ

少年「……ねぇ」

母「ん?なぁに?」

少年「ボクね、お母さまに内緒だったけど
昨日あのおじさんにぶたれたんだ」

母「……そう」
82:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:20:16 ID:4a/V8q7lfc
少年「昨日はね、ボクが市場でお菓子を見てただけで怖い顔してた」

母「……」

少年「頭巾で隠してたから大丈夫かなって思ったけど、取ってみろって言われて嫌がったら捕まえられて」

少年「たくさんぶたれて、たくさん蹴られた」

少年「謝っても許してくれなかった」

少年「みんな冷たい目をしてたよ」

少年「助けてくれようとした人もボクがホビットってわかったら一緒になってぶったんだ」

少年「すごく怖かった」

母「……」
83:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:21:12 ID:4a/V8q7lfc
少年「でも、今日のおじさん、すごく優しくて…びっくりしちゃった」

母「そうね、とても大事な事よ?」

少年「うん…」

母「そこで見るものだけが真実ではないの。
心は色んな表情をするのよ?」

少年「……そうなの?」

母「心はね、たくさんの感情を持っているの。
喜び、悲しみ、愛、憎しみ」

母「喜びと悲しみの感情は自分だけのもの。
愛や憎しみは誰かに向けられるもの」

母「人間は同じ人間を愛し、獣に草木に空に海、空想的なものだって愛せる。
素晴らしいことよ、でもね」

母「ひとたび憎しみを受け入れてしまえば、心は呑まれてしまうの」

母「喜びも、悲しみも、愛も、ぜんぶ…」

母「そして憎しみは、あたしたちに向けられている」

母「何百…いえ、何千年も前から」
84:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:22:55 ID:BXUEK2.5u2
少年「……どうして?
ボクもお母さまも、悪いことしてないよ?」

母「決まってることなの。
いえ、決められてしまったという方が正しいわ」

少年「……わからないよ」

母「……ごめんなさい。あなたは知らなくていいことなのよ。
ただ忘れないでね、一面だけを見てすべてだと思ってはいけないの」

母「一つの場面での出来事にとらわれてしまうと、あたしたちは憎しみに呑まれるしかなくなってしまう」

少年「うん…」

母「あなたもいずれ分かるわ。
人間とお友達になるつもりならね」

少年「人間とお友達だと、いけないの?」

母「そうじゃないの。あなたにお友達ができたらあたしは嬉しいわ。
でも難しいの、ホビットと人間は…言葉にはできないほどに」

少年「……」

85:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:28:35 ID:BXUEK2.5u2
母「ねぇ坊や。二つ約束して。大事な約束よ?」

少年「うん…」

母「もし悲しくて、やりきれなくなってしまったら終わりにしてほしいの」

少年「人間と友達になるのを…?」

母「そうよ、その時は二人で静かに暮らしましょ?
あなたが憎しみにとらわれてしまわないように…ささやかな幸せを分け合うの」

少年「わかった…」シュン

母「それじゃもう一つの約束ね?
今から会うあなたのお友達が、あなたにとって信じられる人間だったなら…」

少年「……」

母「どんな事があっても信じてあげなさい?
その出会いを大切に、お互いにとってかけがえのない繋がりだと思って、ね?
約束できる?」

少年「…うん!!」パァァ

少年「約束、するよ!」
86:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/28(金) 11:30:43 ID:4a/V8q7lfc
母「じゃあ約束の指切りをしましょ?」スッ

少年「うん!」ピトッ

母&少年「指切りげんまん嘘ついたら針千本のーます!指切った!」

母「約束破ったら本当に飲ませるわよ?」ニヤリ

少年「えっ」

母「冗談に決まってるじゃない?」クスクス

少年「……!」カァァ

少年「や、破らないもん!」
87:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:36:58 ID:wJajIDVNMY
母「さ、行きましょ?」

少年「うん、ボク場所覚えてるから案内するね!」

母「えぇ。お願い」

子供3「おーい、待ってよー!」

少年「ん?」

子供2「へっへーんだ!くやしかったらここまでおいでー!」タタタッ

子供3「くっそー!」タタタッ

母「村の子供たちが遊んでいるのね。あなたも入れてもらったら?」

少年「……ボクはいいよ」

母「あの子たちも喜ぶわよ?」

少年「そうかな…」

母「そうよ!ほら、いってらっしゃい。
お母さんはここで待ってるから」

少年「う、うん。いってくる!」タタタッ

母「」ニコニコ
88:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:38:15 ID:wJajIDVNMY
少年「ねぇ!ボクも仲間に入れて!」

子供2「えぇー!どうする?」

子供3「ボクはいいよ?」

子供2「じゃあお前も入れてやるよ!」

少年「うん、ありがとう!」

子供3「でもなんで女の子なのに"ボク"なの?」

子供2「あっほんとだ!ヘンだぞー!」

少年「なっ…!ボクは女の子じゃ…」

子供2&3「えっ」

少年「」ハッ
89:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:39:50 ID:wJajIDVNMY
子供2「女じゃねーのか?」

少年「う、ううん…女…だよ…」モジモジ

子供2「やっぱり女じゃんか!」

子供3「まぁまぁ」

少年「ごめん…」シュン

子供2「まぁいいや、何して遊ぶ?」

子供3「おいかけっこは飽きたし、かくれんぼでもする?」

子供2「いいな!やろうぜ!」

子供3「キミもかくれんぼでいい?」

少年「うん、いいよ!」ニコニコ

子供2「じゃあお前オニなー!」

少年「うん、わかった!」ニコニコ

子供3「いや、じゃんけんしようよ!?」
90:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:41:09 ID:wJajIDVNMY
少年「え?」

子供3「だってそうしないと不公平じゃない」

子供2「ちぇっ!わかったよ!」

少年「ねぇ」

子供2「ん?なんだよ?」

少年「じゃんけんって何?」

子供2「えっ」

子供3「えっ」

少年「えっ」
91:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:42:44 ID:wJajIDVNMY
子供2「なんだお前、じゃんけん知らねーのかよ?」

少年「うん、誰かと遊ぶのって初めてだから」

子供2「ヘンな奴!」

子供3「まぁまぁ!じゃあ教えてあげるね?
じゃんけんっていうのは…(※省略)」

少年「そうなんだ!おもしろそうだね!」

子供2「そうか?お前の方がおもしろいぞ?」

子供3「ボクもそう思う」

少年「あとかくれんぼっていうのも教えて?」

子供2「えー!?なんにも知らねーじゃん!」

少年「ご、ごめん」

子供3「いいよ?教えてあげる!」
92:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:44:33 ID:wJajIDVNMY
子供3「…っていうのがかくれんぼ!わかった?」

少年「うん、ありがとう!」

子供2「なー!早くやろうぜ?」

少年「待たせちゃってごめんね?」

子供3「じゃあじゃんけんしよう!」

子供2「よーし!最初はグー!」

「じゃんけんぽい!」
93:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:45:47 ID:PHb2NYku.U
少年「あはは。負けちゃった」

子供2「じゃあ俺たち隠れるから1000秒数えろよ!」

子供3「数え過ぎだよ!?
10秒でいいからね?」

少年「えっ…そんないいよ、1000秒数えるルールなんでしょ?」

子供2「……」

子供3「あ、あはは。2くんの冗談だから大丈夫だよ?」

少年「そ、そうだったの?」カァァ

子供2「」キュンッ

子供3「どうしたの?」

子供2「な、なんでもねーよ!」

子供3「……?」
94:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:47:44 ID:wJajIDVNMY
少年「はぁっ…はぁっ…」

子供3「つ、疲れたね…?」ゼェゼェ

子供2「お前らへばってんじゃねーよ!」

子供3「なんで2くんだけあんな元気なんだろ…?」

少年「わかんない…でもすごく楽しいや」

子供2「おーい、もっと遊ぼうぜ!」

子供3「えー!ちょっと休もうよ!」

子供2「なんでだよ!いいから遊ぼうぜー!」

少年「うん、遊ぼ?ボクももっと遊びたい!」ニコッ

子供2「」ドキッ

少年「どうしたの?」キョトン

子供2「う、うるせーよ!」

少年「え…」

子供2「ふんっ」プイッ

子供3「二人ともすごいや、ボクもうへとへとだよ…」
95:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:50:32 ID:wJajIDVNMY
子供3「だめ…ほんとにもうむり…」バタッ

少年「はぁっ…ぼ、ボクも…疲れちゃったよ…」

子供2「次なにするー?」

子供3「ボクらの話聞いてた!?」

少年「ボク…もう戻らなきゃ」

子供2「えー!なんでだよー!?」

少年「だって…お母さまを待たせてるから」

子供2「いいじゃんか!遊ぼうぜ!」

少年「で、でも…」

子供3「まぁまぁ!しょうがないよ」

子供2「……」

少年「ごめんね…?」

子供2「お前なんか知らねー!帰っちゃえよ!」

少年「」ガーン

子供2「バーカ!ブース!」ダッ

少年「……」
96:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:52:27 ID:wJajIDVNMY
子供3「気にしないでね、いつものことだから」

少年「…そうなの?」

子供3「そうだよ、好きな女の子にはああするんだ」

少年「す、好きな女の子…!?」カァァ

子供3「ボクらを教えてくれてる女の宣教師様にも、いつもああなんだ」

少年「そ、そうなんだ…」

子供3「うん、だから気にしないで?お母さん、待ってるんでしょ?」

少年「うん…」

子供2「おい!いつまでいんだよ!さっさと帰れよ!」

子供3「ふふ、素直じゃないんだから」

子供2「はぁ?意味わかんねーし!」

少年「」クスクス
97:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:53:33 ID:wJajIDVNMY
子供2「なに笑ってんだよ!?」

少年「ううん…なんでもない」

子供2「ヘンな奴…」

少年「これ、友達の証だよ。受け取って?」つ【キャンディ】

子供2「」ドキッ

子供3「ありがとう」

少年「ううん、またね?」タタタッ

子供2「お、おう…」ドキドキ

子供3「どうしたの?」ニヤニヤ

子供2「うるせー!!」プンスカ
98:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:54:45 ID:wJajIDVNMY
少年「待たせてごめんね」

母「あら、もういいの?」

少年「うん、お母さまを待たせてるもの」

母「もう…そんなの気にしなくていいのに」

少年「でも…」

母「あなたが子供たちと遊んでるのを見てるだけであたしは幸せよ?」

少年「……うん、ボクも楽しかった!」

母「うふふ、それは良かったわ!日も暮れてきたし行きましょうか?」

少年「そうだね、さっきまであんなに明るかったのに」

母「たくさん遊んだんだもの、しょうがないわ」

少年「楽しい時間は速く過ぎるんだね」

母「そうよ?だから大事にするの」

少年「そうだね…ボク、大事にするよ」

母「えぇ。そうなさい?」

少年「(また遊びたいな…)」
99:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:56:09 ID:PHb2NYku.U
母「それにしても…あの子たちと遊んでるあなた、まるで違和感が無かったわよ?」スタスタ

少年「そうかな?」スタスタ

母「えぇ。誰も14歳の男の子だなんて思わなかったでしょうね」ニコニコ

少年「……そんな事ないもん」

母「あ、今は女の子だったかしら?」ニヤニヤ

少年「っ……!しらない!」

母「うふふ。ところで、どの辺りなの?」

少年「えっと、確か…あっ!あそこだよ!」

母「まぁ、ずいぶん立派な……」ピタッ

少年「お母さま?どうしたの?」

母「これは…教会…?」

少年「うん、そうだよ?」

母「坊や、帰りましょ」

少年「えっ」
100:🎄 ◆WEmWDvOgzo:2012/12/29(土) 10:57:06 ID:PHb2NYku.U
少年「へ?な、なんで?」アセアセ

母「あなたも死んだおじいさまから聞いたでしょう?
教団の人間だけは、絶対にだめよ」

少年「で、でもボクを助けてくれた。いい人なんだよ?」

母「昨日はそうかもしれないけど今日はわからないでしょう?
お母さんはあなたを思って言ってるのよ」

少年「そ、そんな…急にどうして?」アタフタ

母「いいから帰るわよ、さぁ!」グイッ

少年「や、やめて!痛いよ?
それにあの人はそんな人じゃない!」

母「」キッ

少年「」ビクッ

母「ならいってらっしゃい!
行って教団の人間がどんなに酷いか知るといいわ!」

少年「……お母さま…」
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