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少年「ボクが世界を変えてみせる」
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1: 名無しさん@読者の声:2012/12/23(日) 21:21:41 ID:apUuk9iOiY
むかしむかしのことです。
世界は深い緑が生い茂り、深い青が寄り添うように流れる清らかな一つの円でした。
穢れを知らず、怒りも悲しみもなく、渇くことのない喜びが波立てる大地は
争いを寡黙に、繋がりをおおらかにしました。


802: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:28:18 ID:V3L/v4xpps
宣教師「神父様、どうしても協力していただけませんか?」

神父「ふ、ふざけるな!あんなことをされた後でまだ言うか!」プンスカ

ジョー「自業自得じゃねぇか」

神父「な、にゃにをうっ!?」

宣教師「これでも…協力していただけませんか?」ピラッ

神父「ん?それは…」マジマジ

宣教師「よく見てください」つ【絵】

神父「小僧が描いた…これがなんだと…」マジマジ

神父「…あぁっ!?」

宣教師「」ニッコリ

ジョー「ん?それがどうかし…えぇっ!?」

神父「あの小僧いつの間にぃぃ!?」

宣教師「彼の絵には私と村の子供二人、飼い犬のマルクくんとお母様。そして……」

ジョー「隅っこの余白に神父さんの似顔絵、か。よく描けてるわ。
こんなもんが司祭様にバレたらホビットの仲間扱いだな」

神父「お…おのれぇぇぇいぃぃぃ!!!」

―――一方その頃―――

カロル「くしゅんっ」

カロル「風邪…かな?」

カロル「服が欲しいなぁ。寒いよ…」ブルッ

カロル「……」

カロル「マルク…お母さま…宣教師さま…」

カロル「会いたい…」ギュッ
803: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:30:54 ID:V3L/v4xpps
ジョー「やっと観念したか」

神父「くそぉ…ずる賢い種族め…!すでに罠を張っていたとはなぁ…!」

宣教師「ふふ。優しいカロルくんのことです。あなたを忘れるとかわいそうだと思ったんですよ。きっと?」

神父「余計なお世話だ!」

ジョー「じゃあ納得したとこで続きといくか」

宣教師「そうですね。まずは書斎に入って『大樹』『癒しの力』『ホビット』、三つの言葉が入った本を探しましょう!」

ジョー「はぁ!?」

宣教師「どうしました?」

ジョー「そ、そんなの時間がいくらあっても足んないだろ!
あそこに何千冊の本があると思ってんだよ!?」

宣教師「それぞれの題目ごとに棚が分かれていますから題目を伝承・史実に限定すれば、かなり絞れると思いますよ?」ニコッ

神父「それでも約500冊…。どんなに速読術を備えていても最低4日はかかるな」

ジョー「勘弁してくれよ!自慢じゃないが活字とか読めねぇんだ!」

神父「バカが。本当に自慢にならんな」

ジョー「うるせぇ!だいたい本なんか読み漁ってどうすんだ?」

宣教師「先ほどの話だけでは不明な点ばかりで何も明らかにされていませんし、少しでも手掛かりを見つけなくては…」

神父「…なぜ3つの言葉に限定して探すのだ?」

宣教師「話の流れから察するに『大樹』『癒しの力』『ホビット』、これらが共通して使われているように思えてならないのです」

神父「だが分かったところでどうする?たいした意味も無いかもしれんだろう」

宣教師「いえ、きっと大きな意味を持ちますよ」

神父「バカな。何を根拠に…」

宣教師「では一度整理してみましょう。その上で話し合えば答えは自ずと開けるはずです」
804: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:33:45 ID:uXqH8Y5qJ2
宣教師「経緯は司祭様が教団を立ち上げてから、ですね」

神父「そこまで遡るのか?」

ジョー「まぁまぁ。オツムの出来から考えて、こん中で頼れるのは宣教師さんだけだ。黙って聞こうぜ」

神父「なっ!わ、私の頭脳をナメるなよ!!」

ジョー「あぁ、あんたはすげぇよ。とてもかなわねぇ」

神父「はっはっ!ようやく私の素晴らしさに気付いたか!」エッヘン

宣教師「…いいですか?」

ジョー「続けてくれ」

宣教師「これはアリアス様に聞いたのですが…本来の伝承は古代文字によって暗号化されていて、正確に伝えられたのは何十年か前の事のようです」

神父「うむ。私の生まれる前から伝承は明らかにされていたぞ。
教団を立ち上げて間もない頃、司祭様が解読し、王国に伝えたのだそうな」

宣教師「…そして名声と確固たる地位を築いた司祭様は多くの信者を抱え、それらの過程で得た教えを説いたのでしたね」

神父「だからなんだ?そんなのは教団員ならば常識だろうが?」

宣教師「…おかしいとは思いませんか?
ホビットにまつわる伝承は数多く存在しますが、人間に関する伝承がほとんど上がっていません」

ジョー「…うん。そういえばそうだな」

宣教師「…司祭様が解読した物はなにか、そこを突き詰めてみましょう」

神父「どういう事だ?」

宣教師「もし、これまでの教えが全て迷信だとしたらどうですか?」

神父「め、迷信だと?まだそんな事を言ってるのか?」

宣教師「昼間にジョーさんが話していたじゃありませんか。癒しの力を持つホビットは限られていると」

神父「……!そうか!司祭様は知っていたのだった!これまでホビットが癒しの力を持っていなかった事を!」
805: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/7(水) 10:36:05 ID:uXqH8Y5qJ2
ジョー「なのに教団から発信された伝承、聖典、史実、口頭からはホビットが癒しの力を持っていると伝わったわけだ?」

宣教師「えぇ、つまり伝承そのものが存在すら疑わしいまやかし物である可能性も否めません」

ジョー「それじゃ仮に司祭様はなんの為に、こんな凝った作り話を広めたって言うんだ?」

宣教師「それはおそらく…王国によって歪められたんだと思います」

神父「王国が伝承をでっちあげたと言うのか?そんなバカな!」

ジョー「いや、確かにそんな風な事を言ってたな。王国に利用されたとかなんとか…」

宣教師「ホビットへの差別を促す目的があったのではないでしょうか」

神父「…?」

宣教師「王国が伝承を作り替え、教団に広めさせて人々にホビットは悪という概念を植え付けたかったのではないかと」

ジョー「…そうなると司祭様が王国へ怒りを向けるのも、なんとなく分かるな」

神父「それなら伝承は…なんだったと言うのだ?」

宣教師「解読したモノは伝承とは異なるなにか…」

神父「なにかとはなんだ?」

宣教師「分かりません。ですがその答えが…3つの言葉に繋がる気がするんです」

ジョー「はは。なんだか随分と大きい話になってきたなぁ?」

宣教師「はい。この時点ではあくまで空想の域を出ませんが…」

神父「…だが、なぜ王国がホビットへの差別を促したと?」

宣教師「彼らを追いやる事で人間の世界を拡大したかったのではないですかね…」

神父「それだけの為にか?パッとせん理由だな…」

ジョー「そんなの考えてみても時間の無駄。
なんかしらの理由があった。それだけ分かってりゃいいじゃねぇか?」
806: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/11(日) 18:18:24 ID:.2siRI80Ec
―――森の小道―――
ルーボイ「」ザッザッ

ルーボイ「あいつ…どこまで行ったんだよ!」ザッザッ

ルーボイ「ってかここどこだし!空も暗くなったし帰れねぇじゃねーか!」

ルーボイ「(パッチは道分かるかな。見つけたって帰れなかったら意味ねーよ)」

ルーボイ「腹も減ったし…ん?」ピクッ

ルーボイ「ここって…」キョロキョロ

ルーボイ「やっぱり!宣教師様の教会の近くだ!」

ルーボイ「なーんだ。帰れんじゃん!ひゃっほー!」ウキウキ
807: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/11(日) 18:19:52 ID:SgDEn2PqjI
―――教会―――
ルーボイ「」タッタッ

ズルッ ズルッ

ルーボイ「」ビクッ

ルーボイ「え…?」

パッチ「」ビクッ

ルーボイ「お、お前…!なんでここにいんだよ?」タタタッ

パッチ「……」

ルーボイ「それに…棒なんか持って…」

パッチ「どいて」ドンッ

ルーボイ「……!」

パッチ「!」ガスッガスッ

死体「」ブチャッ

ルーボイ「うぷっ」

パッチ「ぜんぶっ!ぜんぶっ!おまえのせいだっ!」ガスッガスッ

死体「」ブリョッ

ルーボイ「や、やめろよ!」ガシッ

パッチ「っ!」ジタバタ

ルーボイ「やめろって!なにしてんだよっ!」ググッ

パッチ「うるさいっ!邪魔するなよっ…!」バッ

ルーボイ「うわっ!お、お前…どうしちゃったんだよ?」オロオロ

パッチ「関係ないだろ!」

ルーボイ「……!」
808: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/11(日) 18:23:09 ID:SgDEn2PqjI
パッチ「はぁ…はぁ…!」ガスッガスッ

ルーボイ「……」

パッチ「はぁ…はぁ…」

ルーボイ「…なぁ?」

パッチ「はぁ…なに…?」

ルーボイ「何があったんだよ?お前、なんかおかしいぞ…?」

パッチ「おかしい?ふふ…おかしいだって!?」

ルーボイ「」ビクッ

パッチ「おかしくもなるよ…!こんなの!!」ブンッ

ルーボイ「わっ!?」サッ

パッチ「ボクがちゃんとお父さんの言うことを聞いてたら…こんなことにならなかったんだ!!」ブンッブンッ

ルーボイ「あ、あぶねぇな!そんなもん振り回すんじゃねぇよ!」サッサッ

パッチ「いけなかったんだ!ホビットと友達になるなんて!」ブンッ

ルーボイ「うぁ…!」ガスッ

パッチ「はぁ…はぁ…。知ってたら…最初から、友達になんかならなかった…!」

ルーボイ「つつ…」タラー

パッチ「…そうだろ!?」

ルーボイ「か、カロルは…ずっとお前の心配してたぞ…!」ズキズキ

パッチ「ウソだ!!どこにもいないじゃない!?
ボクが一人で逃げ回ってる間に…宣教師様とどっかに行ったんだ!」

ルーボイ「ちが…」

パッチ「ボクは裏切らなかった…!旅人に脅されたって…カロルくんのこと、守ったのに!」

パッチ「約束したから!裏切らない、ずっと友達でいるって!!」

ルーボイ「……」
809: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/11(日) 18:27:04 ID:.2siRI80Ec
パッチ「カロルくん達と一緒に逃げようと思って必死で探したんだ…。
だけど、どこにもいなかった!」

ルーボイ「……」

パッチ「なんでさ…?ボクは苦しくても我慢したよ?
お父さんもお母さんも村のみんなにぐちゃぐちゃにされて…旅人の笑い声を聞きながら、それでも耐え続けたんだ…」ワナワナ

ルーボイ「(村のみんながパッチの父ちゃん達を…?)」

パッチ「ボクはカロルくんを助けようとしたのに…カロルくんはボクを助ける気なんかなかったんだよ…!」

ルーボイ「だ、だから帰らないって言ってたのか?」

パッチ「そうだよ。村のみんなの顔なんて見たくないし、あそこにボクの居場所なんて無い!
誰も信じられなくなって、こんな森の中にひとりぼっちでいたのがどれだけ怖かったか君に分かるの…!?」

ルーボイ「……」

パッチ「分からないんだろ!分かるもんか!」

ルーボイ「(こいつ…そんな大変だったんだ…)」ググッ
810: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/11(日) 18:29:25 ID:.2siRI80Ec
パッチ「正直、ルーボイくんに会えた時はホッとしてた…。ボクらは幼なじみだもんね?」

ルーボイ「お、おう」

パッチ「でも…もう君も信じられない」

ルーボイ「な、殴ったのはごめん…。知らなかったから…」

パッチ「じゃあ…もう分かったよね。ボクに構わないでよ」

ルーボイ「ぱ、パッチ…!聞いてくれよ!」

パッチ「……」

ルーボイ「俺もカロルも宣教師様も…お前が大好きだ!
お前がいないと、俺…俺、楽しくないよ!」

パッチ「かわいそう」ボソッ

ルーボイ「えっ」

パッチ「いじめる人間にいじめられるホビット。かわいそうなのはホビットだって思ってた。
けど…本当はホビットに関わった人間がかわいそうなんだ」

パッチ「父さんが話してた悲劇の町のお話は…そういうことだったんだよ」

ルーボイ「……」

パッチ「かわいそうだよね。ボクも君も…あいつのせいでさ。
あいつがいなかったら、ボク達、ずっと仲良くなれたのに」

ルーボイ「……!」
811: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/11(日) 18:31:10 ID:.2siRI80Ec
パッチ「もう帰りなよ。ここからなら帰れるでしょ?」

ルーボイ「…やだ。帰りたく…ない」プルプル

パッチ「勝手にすれば…?ボクは行くよ」スタスタ

ルーボイ「どこに行くんだよ?」

パッチ「知らないよ…。どうすればいいか分かんない…。
とにかく誰もいない所に行きたいんだ」スタスタ

ルーボイ「……」スタスタ

パッチ「」ブンッ

ルーボイ「うおっ」サッ

パッチ「付いてこないで」

ルーボイ「や…でも…友達だろ?」オロオロ

パッチ「友達だったね。今までは」

ルーボイ「なっ…!今でも友達だっての!」

パッチ「違うよ。君なんか大嫌い」

ルーボイ「え…!」

パッチ「君もカロルも宣教師も…村のみんなだって。嫌いだよ」

パッチ「死んじゃえばいいのに」

ルーボイ「」ドクンッ

スタスタ スタスタ......

ルーボイ「」ガクッ

ルーボイ「」ドサッ

ルーボイ「は…はは…」

ルーボイ「……」ゴロン

死体「」プーン
812: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/12(月) 20:37:50 ID:6Siwn10zKM
―――大聖堂(書斎)―――
宣教師「……」ペラ

神父「」パラパラ

ジョー「くぁ…あぁ…」アクビ

宣教師「ジョーさんもマジメに読んでください!」

ジョー「んな事言われたって…読めねぇ字ばっかだしなぁ」

宣教師「神父様を見習ったらどうですか?もう10冊以上読まれてますよ?」

ジョー「パラパラめくってるだけだろ。本当に読んでんのか?」

神父「チキチキボンボンはやがて性に目覚めたが、その凄まじく歪んだ性癖から世の女性達に忌み嫌われ、挙げ句には芸者殺し野郎とあだ名された。それを見かねたチキチキバンバンが己の体を差し出し、引き込もっていたチキチキボンボンの心を解きほぐした。人々はチキチキバンバンの献身と慈愛に尊敬の念を抱き、チキチキの像を建て、彼女が体を差し出した日をチキチキパンパンの日とした………」スラスラ

ジョー「くっ…音読しやがった」

宣教師「読み込んでおられる証拠です。ジョーさんもしっかり頼みますよ?」ペラ

ジョー「(ろくでもねぇ内容じゃねぇか…。なんの史実だよ!?)」ブツクサ

神父「」ニヤニヤ

ジョー「このやろう…!」

神父「」パラパラ
813: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/12(月) 20:40:53 ID:Ll5Myk1/v.
ジョー「けっ!本なんか読めなくたって死にゃしねぇっつの!」

宣教師「いいから読んでください!何も情報が集まらないでしょう!?」

ジョー「お、怒るなって!はいはい、読むよ。読みますよ!」ペラ

神父「お前みたいなバカにも分かる本があればいいがな」パラパラ

ジョー「なんだと、おっさん!」ガタッ

神父「音読しているだけだが?」

ジョー「バカにすんじゃねぇ!」

神父「バカのクセに勘がいいではないか?」

ジョー「んだと…このクソオヤジ!!」グイッ

神父「うげっ!や、やへろ…!首が…しま……」バタバタ

ジョー「おらぁ!!」ユサユサ

神父「ぎょへ…!」ブラブラ

宣教師「はぁ…」イライラ

ジョー「参ったか!?」ググッ

神父「うぐぐ……」ブンブン

ゴチンッ! バキッ!

ジョー「っ〜〜〜!な、何も分厚い本で殴らんでも…!」グワングワン

神父「わ、私は…被害者だぞ…」グワングワン

宣教師「いい加減になさい。喧嘩は両成敗です!」

ジョー「暴力はダメだって言ったのはどこのどいつだよ…!」

宣教師「時として神は目に余る愚か者に裁きを下されます。頭を冷やす事ですね」

神父「野蛮な…!これだからヘアヌード女などとからかわれるのだ…」ブツクサ

ゴチンッ!!

神父「」ピクピク

宣教師「さ、続けましょうか。この調子では全冊読み終える頃には明け方になってしまいますよ?」ペラ

ジョー「(…おとなしくしとこう)」ブルブル
814: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/12(月) 20:44:29 ID:Ll5Myk1/v.
宣教師「あまり手掛かりとなりそうな書物もありませんね…」パタン

宣教師「どうですか?」チラッ

神父「めぼしい内容は見当たらんな」パラパラ

ジョー「ほとんど読めねぇよ。なんだこれ、しゅう…こい…?」

神父「どれ、見せてみろ?」パシッ

ジョー「……」

神父「バカか、貴様は?これは"贖い"と書いて"あがない"と読むのだ」

ジョー「じゃあ、あんたが読めばいいだろ!俺は読めねぇよ!」

神父「ふっ!いいだろう。文学専門の私に掛かれば速読など容易いことだ!」パラパラ

ジョー「ちっ!」

宣教師「人には得手不得手があるものです。ここは神父様を頼りましょう」

ジョー「あぁ、あぁ!そうだな!」ムスッ

神父「ふむ…。なるほどな」

宣教師「何か分かりましたか?」

神父「あぁ、これは何も関係無さそうだ!」キッパリ

宣教師「」ズルッ

ジョー「ならもったいぶんじゃねぇよ!!」
815: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 02:11:37 ID:ViDpTILY5o
―――大聖堂(通路)―――
トト「はー!疲れた!ほんとアリアス様はコキ使ってくれるよな」スタスタ

トト「ん?」

神父「この書物に行き着くのなら、わざわざ書斎に行く必要があったのか?」スタスタ

宣教師「…改めて原点に立ち返ってみれば、今までとは違う視点から新たなものが見えるでしょう」スタスタ

神父「結局は全ての書物を確認した訳でもなかろう?」

宣教師「いえ、神父様の速読術のおかげでだいぶ絞れましたよ。ありがとうございます」

神父「む…!ま、ままぁな!はっはっは!」

ジョー「…二度と字なんか見たくねぇ」ズーン

トト「ジョー!!」

ジョー「うおっ!?」

宣教師「?」

ジョー「なんだ、トトか。びっくりさせんなよ!」

トト「てめぇ!よくもサボりやがったな!」

ジョー「何がだ?」

トト「とぼけんな!夕方から客人を迎える支度でみんな大変だったんだぞ!」

ジョー「あぁ、そうだっけか?わるいわるい!」

トト「悪いで済むと思ってんのか!こっちが忙しく働いてんのに自分はちゃっかり逢い引きなんかしやがって!」ギリギリ

ジョー「アホ!そんなんじゃねぇよ!」

トト「けっ!どうせ隠れて乳繰り合ってたんだろ!アリアス様に言いつけちゃうからな!?」

ジョー「勝手な報告すんじゃねぇよ!俺がこんなカタブツ頑固女と付き合う訳ねぇだろ!?」

宣教師「……」

ジョー「そっ!それに神父だっているだろ?」

神父「呼び捨てにするなぁ!!」

トト「あ、ほんとだ。ちわっす」ペコリ

神父「気付いとらんかったのか!?」
816: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 02:16:34 ID:J1qc8SjSd6
トト「よくわかんねぇ面子だけど、なにしてたの?」

ジョー「ちょっとした宝探しだ」

トト「宝?なんだそれ?」

ジョー「見つけたらお前にも教えてやるよ」

トト「期待しないで待ってるよ」

ジョー「おう、任せとけ」

トト「あ、そういえばさ、さっきお前を探しに地下牢を覗いたらメスのホビットが具合悪そうにしてたぞ」

ジョー「具合悪そうって…どんな風にだ?」

トト「あー…なんかぐったり床に寝そべってて、妙に息が荒かったな」

ジョー「そうか。知らせてくれてありがとよ」

トト「おう。じゃあおやすみ。明日は客が来るんだからほどほどにしとけよ!」スタスタ

ジョー「あぁ、分かってるよ」

ジョー「で、どうする?」クルッ

宣教師「聞かれるまでもありません」

神父「うむ。疲れたし、そろそろ寝るとするか」

ジョー「勝手にしろ。俺らは地下に行くぜ」スタスタ

宣教師「」スタスタ

神父「な、なにぃ!いちいち見に行くのか!?」タタタッ
817: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 02:18:30 ID:J1qc8SjSd6
―――大聖堂(地下牢)―――
カツンカツン カツンカツン

ジョー「さぁて…」

神父「ん?」

宣教師「どうしま…」チラッ

ダガ「むがむぐ」ギシギシ

宣教師「」ビクッ

ジョー「どうした?」

宣教師「あの方はなぜ全裸な上に縛られているのですか…!?」ゾゾゾッ

ジョー「司祭様がそのままにしとけって言うからよ。
猿轡はいびきがうるせぇから、俺が噛ましといた」

ダガ「むぐ!むぐぉぉ!」ギシギシ

宣教師「ひっ」

ジョー「安心しろよ。あー見えて寝てるから」

神父「…なんともえげつない光景だな」

ジョー「そのうち慣れて何も感じなくなるよ。
見張りってのは、そういう感覚じゃなきゃやってけねぇ」
818: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 02:21:31 ID:ViDpTILY5o
ジョー「どれどれ?」チラッ

母「」ゼーゼー

ジョー「暗くてよく見えねぇな…」

宣教師「お母様!私です!」

母「」ゼーゼー

神父「どうやら意識がないようだな」

宣教師「このままでは何も対処出来ません!私は医術の心得がありますから、開けてください!」

ジョー「…了解!」ジャラ

神父「な、何をしている!」

ジョー「腹括れよ。あんたも俺達もとっくに教団を裏切ってんだ」カチャカチャ

神父「そ、それはそうかもしれんが…まだ間に合うのだぞ!」

ジョー「開いたぜ!」ガチャッ

宣教師「はい!」バッ

母「」ゼーゼー

宣教師「」ピトッ

宣教師「すごい熱ですね…」

ジョー「平気そうなのか?」

宣教師「…おそらく疲れが出たのでしょう。温かくして、氷を当てておくしかありません」

ジョー「じゃあ毛布と敷き布を持ってくるよ。神父さんは食堂から氷を持ってきてくれ」

神父「はぁ…こうなればやけくそだ…」

宣教師「私はお母様を見ています」

ジョー「了解」スタスタ

神父「(くそっ!私は何故こんな事を…!)」カツンカツン
819: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 13:36:26 ID:URWfLfOkaM
―――夢(母)―――
カロル「お母さま!早く!」グイグイ

「きゃっ!ど、どうしたの?そんなにあわてて…」

カロル「いいから!ほら、見てよ!」グイグイ

「分かったから引っ張らないで…」スタスタ

カロル「お待たせ!マルク!」

マルク「わんっ!」

「二人してなんなの?そろそろ何をするか教えてちょうだい?」

カロル「だーめ!まだナイショだよ!ねー?」

マルク「わぅん!」コクコク

「(…今日は特別な日だから、夕飯の支度がしたいんだけど)」

カロル「取ってきてくれた?」

マルク「わふーん!」クイッ

カロル「よしよし。おりこうさんだね!」ナデナデ

マルク「くぅん」スリスリ

「まぁ?かわいいお花ね?」

カロル「うん。小さな穴の中に咲いてたんだ!マルクに取ってってお願いしてたの!」ゴソゴソ

「へー…。最近よく遊びに行くと思ってたら…。その本は?」

カロル「えと…こうやって…!」グッグッ

「まぁ!せっかくのお花をなんで挟んでしまうの!?」

カロル「開けてみれば分かるよ?」つ【アルバム】

「え…」パラリ

カロル「」ワクワク

マルク「」フリフリ

「……!」
820: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 13:38:31 ID:UP/8EGaLio
カロル「どう?押し花でアルバムを作ってみたんだ?」

「すごいわ!こんなに色とりどりのお花が一冊のアルバムに咲き誇ってる!
これを一人で全部集めたの?」

カロル「ううん。マルクも一緒だよ?」

マルク「あんっ!」

「ふふ。そうね。ごめんなさい」ニコニコ

カロル「それ、お母さまにあげる!」

「まぁ。嬉しいわ!でも、いいの?せっかく二人で集めたのに…」

カロル「えへへ!だって今日はお母さまにとって特別な日でしょ?」

「…あたしにとって?」

カロル「もう!忘れちゃったの?」

「えぇ。ごめんなさい…。ちょっと思い出せないわ」

カロル「今日はお母さまが……」

「(だって今日は坊やの……)」

カロル「お母さまがボクを生んでくれた日!」
821: ◆WEmWDvOgzo:2013/8/19(月) 13:39:56 ID:UP/8EGaLio
「……それって坊やの誕生日でしょ?心配しなくても忘れてなんかいないわよ?
今日のために森の中を探し回ってご馳走を準備しておいたんだから!」

カロル「わーい!楽しみ……そうじゃなくって!」プンプン

「な、なに?」

カロル「今日はお母さまがボクを生んでくれた日だから、ありがとうって伝えたくて!」

「それで…アルバムを?」

カロル「うん!」

「…今日は坊やのお祝いしようと思って張り切ってたのに」ガックリ

カロル「…い、イヤだった?」アセアセ

「こんな事されちゃったら、嬉しい日なのに泣けてきちゃうわ…?」ブワァッ

カロル「わっ!な、泣かないで!ボク、お母さまを喜ばせたくて…ごめんなさい!」ペコッ

マルク「くぅん…」シュン

「違うのよ。坊や…」ダキッ

カロル「…お母さま?」

「生まれてくれてありがとう…。あたしのかわいい坊や…。
あなたがいてくれるから、こんな悲しい世界でも…生きていこうって…そう思えるのよ?」ギュッ

カロル「えへへ…。生んでくれてありがとう。お母さまがいてくれるから、ボクは幸せだよ」ポンポン

マルク「はっ!はっ!」ピョンピョン

カロル「もちろんマルクも、ね?」ニコッ

「えぇ。あなたも大切なあたし達の家族よ?」グスッ

マルク「くーん…!」スリスリ

「(誰一人、欠けてはならない大切な家族…。あなた達だけは…絶対に守ってみせる)」

「…二人とも。お家に帰りましょう?今日はとびっきりのご馳走よ?」

カロル「はーい!マルク!どっちが先に帰るか、かけっこしようよ!」タタタッ

マルク「わんっ!」タタタッ

「あらあら、まだ支度も出来てないのに…しょうがない子たちね?」タタタッ

…………………
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sage:


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